説明

バブラー管式レベル計測方式の計装制御装置

【課題】精度よくバブラー管の詰りを検知することができるバブラー管式レベル計測方式の計装制御装置を提供する。
【解決手段】ヘッダ11と、このヘッダより供給される計装用圧縮空気の流量を監視及び調整する第1流量調節計12と、加湿器13と、ドリップフィード用の純水の流量を監視及び調整する第2流量調節計15と、計装用圧縮空気が、微量の純水とともに供給されるバブラー管16と、タンクの水位を計測するレベル伝送器17と、制御装置20とを備えたバブラー管式レベル計測方式の計装制御装置10において、制御装置20は第1流量調節計12から計測信号を入力し、その計測信号が示す第1流量調節計12を通過する計装用圧縮空気の流量が所定の計測レベルを逸脱するとバブラー管16に詰りが発生した判定することでバブラー管16の詰りを検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み燃料の再処理工場で発生する高レベル廃液濃縮流体等スラッジ流体を取扱うタンクの水位をバブラー管式レベル計測により測定する計装制御装置に係わり、特にバブラー管の詰りを検出して除去するバブラー管式レベル計測方式の計装制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高レベル廃液濃縮流体等のスラッジ流体を取扱う計測制御装置は、特許文献1および特許文献2のように、バブラー管を用いてタンク内の水位を測定している。このバブラー管を用いたレベル計測では、バブラー管に計装用圧縮空気を供給し、バブラー管内の圧力とタンク内の空間の圧力を測定し、その圧力差(差圧)からタンク内の水位を計算する事で(水位≒差圧÷液体密度)、タンク内の水位測定を実現している。
【0003】
ところで、タンク内の高レベル廃液濃縮流体から析出する溶質である硝酸ナトリウム等の結晶がバブラー管内先端で成長すると、バブラー管の詰りが生じ、正確な水位測定ができなくなる。この詰りを防止することを目的として、たとえば、特許文献2記載の計測制御装置では、加湿器を設け、計装用圧縮空気を加湿器を通じて加湿するような構成となっている。さらに、実機においては、流量調節計により流量調整され、加湿された計装用圧縮空気とともに、微量の純水を計装配管に供給するシステム(以下本システムをドリップフィードという)となっている。
【0004】
また、バブラー管の詰り検知方法としては、特許文献3および特許文献4のように、バブラー管の圧力変動時間波形の周波数解析により検知する方法も提案されている。特許文献3では、固有振動数の上昇によりバブラー管の詰りを検知し、特許文献4では、高周波数成分の減衰によりバブラー管の詰りを検知している。また、特許文献5のように、バブラー管の圧力の急上昇によりバブラー管の詰りを検知する方法も提案されている。
【0005】
さらに、特許文献3では、圧縮空気と洗浄液をバブラー管先端に供給して詰りを除去する方法が、特許文献5では、パルスブロー装置を設け、所定流量でパルス的に空気をブローして詰りを除去する方法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭59−48624号公報
【特許文献2】特開平6−109895号公報
【特許文献3】特公平8−7130号公報
【特許文献4】特開2002-005772号公報
【特許文献5】特開2001−264228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来技術には次のような問題があった。
【0008】
上述のように、バブラー管の詰りが生じることがあり、正確な水位測定のために、バブラー管の詰りを検知して除去する必要がある。特許文献3〜5記載の計装制御装置は、いずれもバブラー管の圧力の変動に基づいてバブラー管の詰りを検知している。しかし、高レベル廃液濃縮流体等のスラッジ流体を取扱うタンクの場合、タンクの圧力は運転状況に応じ負圧から正圧まで大きく変動することがある。その結果、タンク内の圧力変動が差圧変動を惹起し、正常時(=詰っていない時)であるのに異常時(=詰っている時)であると誤って判別する可能性があり、バブラー管の詰りを精度よく検知することができなかった。
【0009】
本発明の目的は、精度よくバブラー管の詰りを検知することができる計装制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、圧縮機から圧縮空気が供給され、計装用圧縮空気の供給源を形成するヘッダと、このヘッダより供給される計装用圧縮空気の流量を監視及び調整する第1流量調節計と、この第1流量調節計を通過した計装用圧縮空気を所定の湿度に加湿する加湿器と、ドリップフィード用の純水の流量を監視及び調整する第2流量調節計と、タンク内の液中に挿入され、前記加湿器を通過した計装用圧縮空気が、前記第2流量調節計を通過した微量の純水とともに供給されるバブラー管と、前記バブラー管内の圧力と前記タンク内上部空間の圧力との差圧に基づいてタンクの水位を計測するレベル伝送器とを有するバブラー管式レベル計測方式の計装制御装置において、前記第1流量調節計から監視信号を入力し、第1流量調節計を通過する計装用圧縮空気の流量が所定の計測レベルを逸脱すると前記バブラー管に詰まりが発生した判定することで前記バブラー管の詰まりを検知する制御装置を備えることものとする。
【0011】
このように構成した本発明においては、第1流量調節計を通過する計装用圧縮空気の流量を測定してバブラー管の詰りを検知するので、タンク内の圧力が運転状況に応じ大きく変動しても、精度よくバブラー管の詰りを検知することができる。
【0012】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記加湿器から前記バブラー管に計測用圧縮空気を導く第1配管と、前記ヘッダと前記第1配管を接続し、前記ヘッダから前記バブラー管に直接前記ヘッダ内の圧縮空気を供給する事を可能とする第2配管と、前記第1配管に設けられ、前記ヘッダと前記加湿器を隔離する第1電磁弁と、前記第2配管に設けられ、前記ヘッダと前記バブラー管を隔離する第2電磁弁と、前記第2流量調節計の2次側に設けられた第3電磁弁とを更に有し、前記制御装置は、前記バブラー管の詰りを検知しないときは、前記第1及び第3電磁弁を開、前記第2電磁弁を閉とし、前記バブラー管の詰りを検知すると、前記第1及び第3電磁弁を閉、前記第2電磁弁を開とすることで自動でパージ洗浄するものとする。
【0013】
これにより自動でバブラー管のパージ洗浄を行い、詰りを除去することができる。
【0014】
また、ドリップフィード用の純水のヘッダへの逆流を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、精度よくバブラー管の詰りを検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0017】
〜構成〜
図1は、本発明の一実施の形態である計装制御装置を示す構成図である。
【0018】
本実施の形態の計装制御装置は符号10で示されており、この計装制御装置10はタンク43内の高レベル廃液濃縮流体の水位を測定するものである。タンク43は、例えば使用済み燃料の再処理工場で発生する高レベル廃液の濃縮及び容積減少のため蒸発処理を行う高レベル廃液濃縮缶の容器である。
【0019】
計装制御装置10は、圧縮機41から圧縮空気が供給されるIAヘッダ11と、このIAヘッダ11より供給される計装用圧縮空気の流量を監視及び調整する第1流量調節計12と、この第1流量調節計12を通過した計装用圧縮空気を所定の湿度に加湿する加湿器13と、純水貯留タンク42から供給されるドリップフィード用の純水の流量を監視及び調整する第2流量調節計15と、タンク43内の液中に挿入され、加湿器13を通過した計装用圧縮空気が第2流量調節計15を通過した微量の純水とともに供給されるバブラー管16と、バブラー管16内の圧力とタンク43内上部空間の圧力との差圧に基づいてタンク43の水位を測定するレベル伝送器17とを備えている。
【0020】
IAヘッダ11と加湿器13は配管21により接続され、加湿器13とバブラー管16は配管22により接続され、純水貯留タンク42とバブラー管16は配管27により接続され、第1流量調節計12は配管21に設けられ、第2流量調節計15は配管27に設けられている。バブラー管16とレベル伝送器17のHポート(高圧ポート)は高圧導管28により接続され、タンク43とレベル伝送器17のLポート(低圧ポート)は低圧導管29により接続されている。
【0021】
また、IAヘッダ11と配管22は配管27と配管22との接続点の上流側で配管23を介して直接接続され、配管22の加湿器13から配管23の間の配管部分22aに第1電磁弁31が設けられ、配管23に第2電磁弁32が設けられ、配管27の第2流量調節計15の下流側の配管部分27bに第3電磁弁33が設けられている。
【0022】
配管27の第2流量調節計15の上流側の配管部分27aからは配管26が分岐して加湿器13に至り、手動弁34を開けることで加湿器13に加湿用の水(純水)が補給される。
【0023】
計装制御装置10はさらに制御装置20を備え、制御装置20は、第1流量調節計12から計測信号を入力して、所定の演算をし、第1電磁弁31、第2電磁弁32及び第3電磁弁33にそれぞれ開閉信号を出力する。
【0024】
図2は、制御装置20の処理内容を示すフローチャートである。
【0025】
図2において、制御装置20は、第1電磁弁31及び第3電磁弁33を全開、第2電磁弁32を全閉にし、第1流量調節計12から計測信号を入力することで、第1流量調節計12による計装用圧縮空気の流量計測を開始する(ステップS1)。次いでその計測信号が示す流量(第1流量調節計12の通過流量)が設定値以上かどうかを判定し(ステップS2)、設定値以上であれば、詰りは発生していないと判断して、第1流量調節計12による計装用圧縮空気の流量計測を継続し(ステップS3)、設定値以上でなければ、計測レベルを逸脱しバブラー管16に詰りが発生したと判定し、第1電磁弁31を全閉、第2電磁弁32を全開、第3電磁弁33を全閉とするような開閉信号をそれぞれ出力する(ステップS4)。
【0026】
ここで、第1流量調節計12は、バブラー管16に詰りが発生していない通常時においては、予め設定された流量(約50ml/min)を加湿器13に供給しているが、バブラー管16に詰りが発生した場合は、第1流量調節計12の流量が徐々に小さくなり、完全に詰った場合は流量値は0ml/minとなる。よって第1流量調節計12の流量が、例えば25ml/minとなったことをもってバブラー管16に詰りが発生したと判定する。そして、第1電磁弁31を全閉、第2電磁弁32を全開、第3電磁弁33を全閉とすることにより、自動でバブラー管16のパージ洗浄が行なわれるとともに、そのときのドリップフィード用の純水のIAヘッダ11への逆流を防止することが可能となる。
【0027】
次いで、制御装置20は、所定時間経過後、第1電磁弁31を全開、第2電磁弁32を全閉、第3電磁弁33を全開とするような開閉信号をそれぞれ出力し(ステップS5及びS6)、ステップS2の処理に戻って第1流量調節計12の通過流量の監視を再開する。ここで、所定時間とは、バブラー管16のパージ洗浄により詰りが除去されると想定される時間である。
【0028】
〜動作〜
バブラー管16に詰りが発生していない通常時は、第1電磁弁31及び第3電磁弁33は全開、第2電磁弁32は全閉であり(図1中、黒塗りの弁は全開、白抜きの弁は全閉を意味する)、図1中、点線矢印で示すように計装用圧縮空気と純水が流れ、レベル伝送器17によりタンク43の水位を測定する。
【0029】
すなわち、バブラー管16に詰りが発生していない時の第1流量調節計12の通過流量は25ml/min以上であり、制御装置20はステップS2の判定を肯定し、第1電磁弁31及び第3電磁弁33は全開、第2電磁弁32は全閉のままとする。このとき、IAヘッダ11を供給源とする計装用圧縮空気は、配管21及び第1流量調節計12を経由して加湿器13へと流れ、加湿器13により加湿された後、配管22を経由して、配管27からの微量の純水とともにバブラー管16へと導かれ、タンク43内の液中にパージされる。
【0030】
このときのバブラー管16内の圧力は高圧導管28を介してレベル伝送器17のHポートに導かれ、タンク43内上部空間の圧力は低圧導管29を介してレベル伝送器17のLポートに導かれ、レベル伝送器17はそれらの差圧に基づいてタンク43の水位を測定する(水位≒差圧÷液体密度)。
【0031】
図3は、バブラー管16に詰りが発生した時の計装制御装置10の動作説明図である。
【0032】
バブラー管16に詰りが発生した場合は、第1電磁弁31及び第3電磁弁33が全閉、第2電磁弁32が全開になり、図3の点線矢印と太線で示すようにパージ洗浄用の圧縮空気が流れ、バブラー管16の詰りが除去される。
【0033】
すなわち、バブラー管16に詰りが発生すると、第1流量調節計12の通過流量は25ml/min未満となり、制御装置20はステップS2の判定を否定し、第1電磁弁31及び第3電磁弁33は全閉、第2電磁弁32は全開とする。これにより、IAヘッダ11内の圧縮空気は配管23を経由して直接配管22からバブラー管16に供給され、自動でバブラー管16のパージ洗浄が行われ、詰りが除去される。またこのとき第3電磁弁14が全閉になるので、ドリップフィード用の純水のIAヘッダ11への逆流を防止することができる。
【0034】
〜効果〜
図4は、比較例として、電磁弁を手動操作する場合の計装制御装置を示す図である。この比較例では、本実施の形態における制御装置20は設けられておらず、その代わりに電磁弁操作スイッチ36が設けられ、かつ、第3電磁弁33の代わりに手動弁37が設けられている。図中、図1及び図3に示した要素と同等なものは同じ符号を付している。
【0035】
比較例では、作業員がバブラー管16の詰りを検知すると、電磁弁操作スイッチ36を手動操作して、第1電磁弁31を全閉に、第1電磁弁32を全開にするとともに、手動弁37を全閉にすることで、バブラー管16のパージ洗浄を行い、かつ、ドリップフィード用の純水のIAヘッダ11への逆流を防止する。しかしながら、この場合は電磁弁操作スイッチ36及び手動弁37の手動操作が必要であるばかりでなく、作業員がバブラー管16の詰りを検知するためには、第1流量調節計12、第2流量調節計15及びレベル伝送器17を常時監視する必要があり、運用効率が低下する。
【0036】
また、バブラー管16の詰り検知をレベル伝送器17により測定した差圧を監視することにより行うことも考えられる。しかしこの場合は、タンク43の圧力は運転状況に応じ負圧から正圧まで大きく変動することがあり、その結果、タンク43内の圧力変動が差圧変動を惹起し、正常時(=詰っていない時)であるのに異常時(=詰っている時)であると誤って判別する可能性があり、バブラー管16の詰りを精度よく検知することができない。
【0037】
これに対し、本実施の形態では、上述したように、制御装置20は、バブラー管16の詰まりを検知すると、自動でバブラー管16のパージ洗浄を行い、詰りを除去するので、運用効率の低下を防止することができる。
【0038】
また、本実施の形態においては、第1流量調節計12を通過する計装用圧縮空気の流量を測定してバブラー管16の詰りを検知するので、タンク43内の圧力が運転状況に応じ大きく変動しても、精度よくバブラー管16の詰りを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態である計装制御装置を示す構成図である。
【図2】制御装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図3】バブラー管に詰りが発生した時の計装制御装置の動作説明図である。
【図4】本発明の比較例である電磁弁を手動操作する場合の計装制御装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0040】
10 計装制御装置
11 IAヘッダ
12 第1流量調節計
13 加湿器
15 第2流量調節計
16 バブラー管
17 レベル伝送器
20 制御装置
21 配管
22 配管
23 配管
26 配管
27 配管
28 高圧導管
29 低圧導管
31 第1電磁弁
32 第2電磁弁
33 第3電磁弁
34 手動弁
36 電磁弁操作スイッチ
37 手動弁
41 圧縮機
42 純水貯留タンク
43 タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機から圧縮空気が供給され、計装用圧縮空気の供給源を形成するヘッダと、このヘッダより供給される計装用圧縮空気の流量を監視及び調整する第1流量調節計と、この第1流量調節計を通過した計装用圧縮空気を所定の湿度に加湿する加湿器と、ドリップフィード用の純水の流量を監視及び調整する第2流量調節計と、タンク内の液中に挿入され、前記加湿器を通過した計装用圧縮空気が、前記第2流量調節計を通過した微量の純水とともに供給されるバブラー管と、前記バブラー管内の圧力と前記タンク内上部空間の圧力との差圧に基づいてタンクの水位を計測するレベル伝送器とを有するバブラー管式レベル計測方式の計装制御装置において、
前記第1流量調節計から監視信号を入力し、第1流量調節計を通過する計装用圧縮空気の流量が所定の計測レベルを逸脱すると前記バブラー管に詰まりが発生した判定することで前記バブラー管の詰まりを検知する制御装置を備えることを特徴とするバブラー管式レベル計測方式の計装制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のバブラー管式レベル計測方式の計測制御装置において、
前記加湿器から前記バブラー管に計測用圧縮空気を導く第1配管と、
前記ヘッダと前記第1配管を接続し、前記ヘッダから前記バブラー管に直接前記ヘッダ内の圧縮空気を供給することを可能とする第2配管と、
前記第1配管に設けられ、前記ヘッダと前記加湿器を隔離する第1電磁弁と、
前記第2配管に設けられ、前記ヘッダと前記バブラー管を隔離する第2電磁弁と、
前記第2流量調節計の2次側に設けられた第3電磁弁とを更に有し、
前記制御装置は、前記バブラー管の詰りを検知しないときは、前記第1及び第3電磁弁を開、前記第2電磁弁を閉とし、前記バブラー管の詰りを検知すると、前記第1及び第3電磁弁を閉、前記第2電磁弁を開とすることで自動でパージ洗浄することを特徴とするバブラー管式レベル計測方式の計装制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−300183(P2009−300183A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153341(P2008−153341)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】