説明

バブリング装置およびそれを用いた高炉又は転炉集塵水の処理方法

【課題】噴射口が閉塞し難く安定した曝気処理を可能とするバブリング装置を提供すること。
【解決手段】バブリング装置は、圧縮気体を受け入れて第1噴射口から噴射する第1ノズル部材と、前記圧縮気体を受け入れて第2噴射口から噴射する第2ノズル部材とを備え、第1および第2ノズル部材は圧縮気体が第2噴射口から第1噴射口の周辺に噴射されるように配置されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バブリング装置およびそれを用いた高炉又は転炉集塵水の処理方法に関し、詳しくは、気体と液体を効率よく接触させる曝気処理に用いられるバブリング装置とそれを用いた高炉又は転炉集塵水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この発明に関連する従来技術としては、高炉から排出されるガス中に含まれる粉塵を湿式集塵器で集塵し、粉塵を捕集した集塵水に苛性ソーダを添加してpH調整を行うことにより集塵水中に溶解した鉄、カルシウム、マグネシウムなどの金属イオンを不溶性の水酸化物に変化させて集塵水中に析出させた後、高分子凝集剤を添加し、シックナーで他のダストと共にスラッジとして沈殿させ、スラッジと分離した処理水を湿式集塵器での集塵に再利用する集塵水の処理方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、この発明に関連する従来技術としては、高炉又は転炉から排出されるガス中に含まれる粉塵を湿式集塵器で集塵し、粉塵を捕集した集塵水を曝気することにより集塵水中に溶解したカルシウムイオンを不溶性の炭酸カルシウムとして集塵水中に析出させた後、高分子凝集剤を添加し、シックナーで他のダストと共にスラッジとして沈殿させ、スラッジと分離した処理水を湿式集塵器での集塵に再利用する集塵水の処理方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭49−133209号公報
【特許文献2】特開2001−70987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄鉱石から銑鉄を生産するのに用いられる高炉や、銑鉄を精錬して鉄鋼を生産するのに用いられる転炉から排出されるガスは大きな熱エネルギーを有し、また炉内の反応により生じた有用なガスを含んでいる。
このため、高炉や転炉から排出されるガスは回収されて熱源や燃料に再利用されるが、多量の粉塵を含んでいるため効率よく回収して再利用するには、ガス中に含まれる粉塵を予め除去しなければならない。
【0006】
ガス中に含まれる粉塵の除去には湿式集塵器が用いられ、粉塵を含むガスに大量の処理水を吹きつけてガス中の粉塵を捕集している。
粉塵を捕集した集塵水は、循環水系において粉塵を除去する処理が施された後、粉塵の捕集に再利用されるか、或いは、環境に悪影響を及ぼさないように水処理されたうえで排水される。
しかしながら集塵水は、ガス中に含まれる炭酸等を吸収した際にpHが低下しており、pHが低下した集塵水は循環水系の設備を腐食させたり排水処理に悪影響を及ぼす等、様々な問題を引き起こすためpH調整が必要である。
【0007】
集塵水のpH調整には、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなど、水溶液中で強塩基性を示す水酸化化合物が一般に用いられている。
しかしながら、pH調整にこれらの水酸化化合物を使用し続けると、集塵水の循環水系における塩類濃度が高くなり過ぎ、循環水系にスケールが付着し易くなるため、頻繁な換水(排水と給水)が必要となる。
【0008】
また、転炉から排出された集塵水は鉄イオンによって黄褐色に着色されており、着色された集塵水を外部に排出することは環境保全上の観点から好ましくないため、この鉄イオンを除去する必要がある。
【0009】
集塵水のpH調整に水酸化物が用いられた場合、集塵水中の鉄イオンは不溶性の水酸化鉄に変化して集塵水中に析出する。
しかしながら、循環水系に設けられた沈殿槽であるシックナーからこのような水酸化鉄を含むスラッジを排出して屋外に野積みすると、水酸化鉄が大気中の酸素と反応して激しく燃焼し、非常に危険な状態となる。
【0010】
そこで、集塵水の循環水系において、集塵水に対して曝気処理を行うことにより、集塵水から炭酸を追い出してpHを上げたり、集塵水中の鉄イオンを酸化させて不溶性の酸化鉄として集塵水中に析出させることが試みられている。
曝気処理は多数の噴射口が形成されたバブリング装置を循環水系に設置し、集塵水中で空気又は酸素のような気体を噴射口から噴射させることにより実施される。
【0011】
しかしながら、集塵水中で曝気処理を行うと、短期間のうちにスケールが付着して噴射口が閉塞され、曝気処理が実施できなくなる。
このため、集塵水に対して曝気処理を行うにはバブリング装置の頻繁なメンテナンスや交換が必要となり、長期間にわたって安定した曝気処理を行うことは非常に困難であった。
【0012】
この発明は以上のような事情を考慮してなされたもので、噴射口が閉塞し難く安定した曝気処理を可能とするバブリング装置とそれを用いた高炉又は転炉集塵水の処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、圧縮気体を受け入れて第1噴射口から噴射する第1ノズル部材と、前記圧縮気体を受け入れて第2噴射口から噴射する第2ノズル部材とを備え、第1および第2ノズル部材は圧縮気体が第2噴射口から第1噴射口の周辺に噴射されるように配置されてなるバブリング装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、圧縮気体が第2ノズル部材によって第1噴射口の周辺に噴射されるので、第1噴射口の周辺において渦流の発生が抑制されて第1噴射口にスケールが付着し難くなり、また仮に付着したとしても圧縮気体の圧力により機械的に剥離させることができ、第1噴射口の閉塞を防止できる。これにより、安定した曝気処理を可能にするバブリング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るバブリング装置の正面図である。
【図2】図1に示されるバブリング装置の平面図である。
【図3】図1に示されるバブリング装置の底面図である。
【図4】図1に示されるバブリング装置のA−A矢視断面図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】本発明の実施形態に係るバブリング装置を構成するドーム形容器単体の平面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るバブリング装置を構成する継ぎ手単体の正面図である。
【図8】図7に示される継ぎ手の底面図である。
【図9】本発明の実施例1に係る曝気処理が実施された転炉集塵水の循環水系を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明によるバブリング装置は、圧縮気体を受け入れて第1噴射口から噴射する第1ノズル部材と、前記圧縮気体を受け入れて第2噴射口から噴射する第2ノズル部材とを備え、第1および第2ノズル部材は圧縮気体が第2噴射口から第1噴射口の周辺に噴射されるように配置されてなることを特徴とする。
【0017】
この発明によるバブリング装置において、圧縮気体とは、加圧された気体全般を意味し、気体の種類は特に限定されない。
よって、本発明のバブリング装置は様々な気体を液体と効率的に接触させる目的で用いることができ、また曝気処理とは水と空気との接触だけでなく、様々な液体と気体との接触を含む。
また、圧縮気体には少量の液体が含まれていることが好ましく、少量の液体を圧縮気体に含ませて第1および第2噴射口から噴射させることにより、気体の接触効率を高めることができ、さらには噴射される液体がもたらすエロージョンの作用により第1および第2噴射口にスケールが成長することを効果的に抑制できる。
【0018】
また、圧縮気体が第2噴射口から第1噴射口の周辺に噴射されるとは、第1噴射口に対するスケールの付着を防止するために、第1噴射口の周囲に生じる渦流を打ち消すことができる程度の圧力と流量を有する圧縮気体を第2噴射口から第1噴射口の周辺に向けて第1噴射口の噴射を妨げることなく噴射することを意味する。
よって、第1噴射口と第2噴射口との距離、第1噴射口に対する第2噴射口の噴射角、および第1噴射口と第2噴射口の口径などの諸条件は、上記の作用が効果的に奏されるように圧縮気体の圧力や流量に応じて適切に調整される。
【0019】
この発明によるバブリング装置において、第1ノズル部材は、圧縮気体を受け入れる受入れ口と前記第1噴射口とを有する蓄圧容器を備えることができる。
このような構成によれば、圧縮気体をいったん蓄圧容器にためてから第1噴射口を介して噴射するので噴射状態が安定し良好な曝気処理が可能となる。
【0020】
第1ノズル部材が蓄圧容器を備える上記構成において、蓄圧容器は、中央に前記受入れ口を有する底板部材と、底板部材の上に密閉して設置されるドーム形容器とから構成され、第2ノズル部材はドーム形容器の頂上部から突出して設けられてもよい。
【0021】
このような構成によれば、第2ノズル部材がドーム形容器の頂上部から突出して設けられるので、第2噴射口から噴射された圧縮気体が第1噴射口の周辺に噴射されるように第2ノズル部材の第2噴射口を第1ノズル部材の第1噴射口へ向けて配置し易くなる。
【0022】
第2ノズル部材がドーム形容器の頂上から突出して設けられる上記構成において、第1噴射口はドーム形容器の頂上部を中心とする同芯円上に形成された複数の第1貫通孔からなり、第2ノズル部材はドーム形容器に連通して設けられた筒状体と、筒状体の上端に嵌め込まれる蓋とを備え、第2噴射口は第1貫通孔に対応して前記蓋の周囲に放射状に形成された複数の第2貫通孔からなっていてもよい。
【0023】
このような構成によれば、第1噴射口がドーム形容器の頂上部を中心とする同芯円上に形成された複数の第1貫通孔からなるので、蓄圧容器にためた圧縮気体をドーム形容器の周囲に均一に分散させて噴出させることができ、より効率的な曝気処理が可能となる。
【0024】
また、第2ノズル部材がドーム形容器に連通して設けられた筒状体と、筒状体の上端に嵌め込まれた蓋とから構成されるので、蓄圧容器にためた圧縮気体を第2ノズル部材へも供給できるようになる。このため、第1および第2ノズル部材に対する圧縮気体の供給経路が共通となり、第2ノズル部材用に圧縮気体の供給経路を別途設ける必要がなくなる。
【0025】
さらには、第2噴射口が複数の第1貫通孔に対応して蓋の周囲に放射状に形成された複数の第2貫通孔によって構成されるので、ドーム形容器の頂上部を中心に同芯円上に形成された複数の第1貫通孔へ向かって複数の第2貫通孔から圧縮気体をそれぞれ噴射させることができ、各第1貫通孔にスケールが付着することを防止できる。
【0026】
第2ノズル部材がドーム形容器に連通して設けられた筒状体と、筒状体の上端に嵌め込まれた蓋とから構成される上記構成において、前記受入れ口と筒状体は前記ドーム形容器の中心軸と同軸であってもよい。
【0027】
このような構成によれば、圧縮気体の受入れ口と筒状体がドーム形容器の中心軸と同軸に設けられるので圧縮気体を効率よく第2ノズル部材へ供給できる。これにより、圧縮気体を各第2貫通孔から各第1貫通孔の周辺に向けて安定して噴射することが可能となり、第1貫通孔にスケールが付着することをより確実に防止できる。
【0028】
また、蓄圧容器が底板部材とドーム形容器とから構成される上記構成において、ドーム形容器は表面が鏡面仕上げされていてもよい。
このような構成によれば、ドーム形容器の表面が平滑になるのでスケールが機械的に付着し難くなり、第1噴射口にスケールが付着することをより効果的に防止できる。
【0029】
この発明は別の観点からみると、この発明による上述のバブリング装置を用い、高炉または転炉から排出されるガスに含まれる粉塵を捕集した集塵水の循環水系で前記集塵水に酸素を含む気体で曝気処理を行うことを特徴とする高炉または転炉集塵水の処理方法を提供するものでもある。
【0030】
この発明による上記の処理方法によれば、粉塵を捕集した集塵水に対して酸素を含む気体で曝気処理を行うので、集塵水の酸素濃度が高めて集塵水に含まれる炭酸を大気中に追い出し、集塵水のpHを循環水系の設備や排水処理に悪影響を及ぼさない程度まで上げることが可能となる。
また、集塵水中の酸素濃度が高められるので、集塵水に含まれる鉄イオンを不溶性の酸化鉄に変化させて集塵水中に析出させることができる。
これにより、苛性ソーダ、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の水酸化化合物の使用量を減らしつつ、集塵水のpH調整と鉄イオンの除去を行うことができ、集塵水の着色を防止できるだけでなく循環水系における塩類濃度を低く抑えることができる。
【0031】
そして、集塵水の着色が防止されることにより排水処理が容易になるばかりでなく、塩類濃度を低く抑えることにより循環水系の各種設備にスケールが付着することを抑制でき、換水(排水と給水)の頻度を下げることができる。
よって、集塵水の循環水系の運転に係るコストが抑えられるだけでなく、環境に優しい操業が可能となる。
さらには、スラッジに含まれる水酸化鉄の量が減るので、野積みされたスラッジが大気中の酸素を反応して激しく燃焼して発熱するといった危険な事態も防止できる。
【0032】
この発明による上記の高炉または転炉集塵水の処理方法において、酸素を含む気体は空気であってもよい。
空気を用いることにより、純酸素や窒素などの特殊な気体を利用する場合と比較して曝気処理に要するコストを抑えることができる。
特に集塵水が高炉集塵水の場合は、転炉集塵水と比較して集塵水中に含まれる鉄イオンの濃度が低く着色を生じていないため、少なくとも集塵水から炭酸を追い出してpHを高めることができれば曝気処理の目的は達成される。
このため、空気を用いる方法は集塵水が高炉集塵水である場合に特に有用である。
【0033】
この発明による上記の高炉または転炉集塵水の処理方法において、酸素を含む気体は純酸素であってもよい。
純酸素を用いることにより、集塵水の酸素濃度を速やかに高めることが可能となり、鉄イオンの酸化反応を促し、集塵水に含まれる鉄イオンを相当の確実性をもって不溶性の酸化鉄として集塵水中に析出させることができる。
特に集塵水が転炉集塵水の場合は、高炉集塵水と比較して集塵水中に含まれる鉄イオンの濃度が高く着色を生じているため、純酸素を用いて曝気処理を行うことが集塵水から鉄イオンを除去して着色を取り除くうえで好ましい。
【0034】
この発明による上記の高炉または転炉集塵水の処理方法において、循環水系は集塵水に含まれるダストを沈殿させるためのシックナーを備え、曝気処理は集塵水が前記シックナーに流入する前に行われるのが好ましい。
というのは、集塵水がシックナーに流入する前に曝気処理を行うことにより、集塵水がシックナーに流入する時点では集塵水中の鉄イオンを不溶性の酸化鉄に変化させて析出させることができ、シックナーで酸化鉄を速やかに沈殿させることができるからである。
なお、シックナーでは酸化鉄および他のダストを効率よく沈殿させるために高分子凝集剤を用いることができる。
【0035】
集塵水がシックナーに流入する前に曝気処理を行う上記構成において、循環水系は集塵水がシックナーに流入する前に粒径の大きな比重の重い塵芥を予め除去するためのコンディショナー槽をシックナーの上流側に備え、曝気処理は前記コンディショナー槽内で行われてもよい。
コンディショナー槽内で曝気処理を行うことにより、バブリング装置から噴射される気体と集塵水との接触時間を十分にとることができ、効率よく曝気処理を行うことが可能となる。
【0036】
以下、図面に基づいてこの発明の実施形態に係るバブリング装置について説明する。
【0037】
本発明の実施形態に係るバブリング装置について図1〜8に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態に係るバブリング装置の正面図、図2は図1に示されるバブリング装置の平面図、図3は図1に示されるバブリング装置の底面図、図4は図1のA−A矢視断面図、図5は図4の要部拡大図、図6は本発明の実施形態に係るバブリング装置を構成するドーム形容器単体の平面図、図7は本発明の実施形態に係るバブリング装置を構成する継ぎ手の正面図、図8は図7に示される継ぎ手の底面図である。
【0038】
図1〜4に示されるように、本発明の実施形態に係るバブリング装置1は、圧縮気体を受け入れて第1噴射口3から噴射する第1ノズル部材2と、前記圧縮気体を受け入れて第2噴射口5から噴射する第2ノズル部材4とを備え、第1および第2ノズル部材2,4は圧縮気体が第2噴射口5から第1噴射口3の周辺に噴射されるように配置されている。
【0039】
図1および図4に示されるように、第1ノズル部材2は、圧縮気体を受け入れる受入れ口6と、第1噴射口3とを有する蓄圧容器7を備えている。そして、蓄圧容器7は、中央に受入れ口6を有する底板部材8と、底板部材8の上に密閉して設置され所定の高さH1を有するドーム形容器9とから構成されている。
底板部材8とドーム形容器9はいずれもステンレス(SUS316)からなり、ドーム形容器9は表面がクロムめっきされている。なお、クロムめっきする代わりに、鏡面処理されていてもよい。
【0040】
また、図1および図2に示されるように、第1噴射口3はドーム形容器9の円形の頂上部9aの同芯円11a,11b,11c上に形成された所定の直径D4(図5参照)を有する30個の第1貫通孔10から構成されている。
【0041】
詳しくは、図1および図2に示されるように、ドーム形容器9の頂上部9aの中心を中心に異なる直径D1,D2,D3で、ドーム形容器9のフランジ部9d(図4および図6参照)に対して所定の高さH2,H3,H4をそれぞれ有する3つの同芯円11a,11b,11cが設定され、各同芯円11a,11b,11c上に10個の第1貫通孔10が等間隔に形成されている。
【0042】
そして、各同芯円11a,11b,11c上に形成された第1貫通孔10は、ドーム形容器9の頂上部9aの中心から放射状に配列されている。つまり、図2に示されるように、各同芯円11a,11b,11c上に形成された第1貫通孔10は、ドーム形容器9の頂上部9aの中心から外側へ向かって直線状に一列に並ぶように配列されている。
【0043】
一方、図1および図4に示されるように、第2ノズル部材4はドーム形容器9の頂上部9aから上方へ突出するように設けられている。
第2ノズル部材4はドーム形容器9に連通して設けられたステンレス製の筒状体12と、筒状体12の上端に嵌め込まれたステンレス製の蓋13とから構成されている。そして第2噴射口5は、第1貫通孔10の配列に対応して蓋13の周囲に放射状に形成された所定の直径D5(図5参照)を有する10個の第2貫通孔14から構成されている。
【0044】
つまり、図2に示されるように、第2貫通孔14は頂上部9aの中心から放射状に配列された第1貫通孔10の配列と一致するように蓋13の周囲に等間隔に形成されている。
また、図5に示されるように、各第2貫通孔14は、第1貫通孔10の周辺へ向かって圧縮気体を噴射できるように、水平方向から所定角度θだけ下へ向くように形成されている。
【0045】
図1および図4に示されるように、筒状体12は、外側の表面に雄ねじが形成されると共に、両端から等距離となる位置にナット状のフランジ部12aが形成された中空のパイプであり、受入れ口6と同軸になるように継ぎ手15および第1パッキンリング16を介してドーム形容器9に装着されている。
【0046】
詳しくは、図5、図7および図8に示されるように、継ぎ手15は内周に雌ねじが形成されると共に外周に雄ねじが形成された筒状体で、一端にフランジ部15aが形成されている。
そして、図7および図8に示されるように、継ぎ手15のフランジ部15aにはドーム形容器9との対向面に位置決め用の突起15bが形成されている。
一方、図6に示されるように、ドーム形容器9の上部開口9bには継ぎ手15の突起15bと係合する切り欠き9cが形成されている。
【0047】
図5に示されるように、継ぎ手15は、フランジ部15aの突起15bがドーム形容器9の切り欠き9cに嵌まるように第1パッキンリング16を介してドーム形容器9の上部開口9bに挿入され、ドーム形容器9の内側から第2パッキンリング17を介してフランジナット18で固定されている。
そして、筒状体12はフランジ部12aが継ぎ手15のフランジ部15aに当接するまで継ぎ手15にねじ込まれている。
【0048】
また、図1および図5に示されるように、ドーム形容器9から突出して設けられた筒状体12の上端には蓋13が装着されている。図1および図5に示されるように、蓋13は外周の下端側にナット状のフランジ部13aが形成され、内周に雌ねじが形成された袋ナット状で、筒状体12の外周に形成された雄ねじと螺合することにより装着されている。
【0049】
図5に示されるように、蓋13の装着にあたっては、所定角度θだけ下方へ向いた第2貫通孔14の延長線上に各同芯円11a,11b,11c(図1および図2参照)上に形成された第1貫通孔10が位置するように、ドーム形容器9の頂上部9aに対する第2貫通孔14の高さH5が調整されなければならない。
また、図2に示されるように、蓋13は、第2貫通孔14がドーム形容器9の頂上部9aの中心から放射状に配列された第1貫通孔10の配列と一致するように筒状体12に対して固定されなければならない。
【0050】
そこで、本実施形態ではドーム形容器9(図5参照)の頂上部9aに対する第2貫通孔14の高さH5が適切となり、かつ第2貫通孔14が第1貫通孔10の配列と一致する位置で蓋13が固定されるよう、筒状体12の外周に予め螺合させられた止めナット19と蓋13のフランジ部13aとを適切な位置で互いに締め付けることにより筒状体12に対する蓋13の位置決めが図られている。
【0051】
このように第2ノズル部材4が装着されたドーム形容器9は、図1および図4に示されるようにゴム製のパッキン20を介して底板部材8上にボルト21およびナット22によって固定されている。
詳しくは、図4に示されるように、パッキン20には受入れ口6と同形の貫通孔20aが形成され、また、ドーム形容器9にはその周縁が外側へ折り曲げられたフランジ部9dが形成されている。
【0052】
そして、底板部材8の受入れ口6とパッキン20の貫通孔20aが一致するように底板部材8上にパッキン20が載置され、さらにパッキン20とフランジ部9dが当接するようにパッキン20上にドーム形容器9が載置されている。
また、ドーム形容器9のフランジ部9dにはドーム形容器9をパッキン20へ押さえつけるようにステンレス製の押さえリング23が被せられている。
【0053】
押さえリング23、パッキン20および底板部材8には、ボルト21を通すための貫通孔(図示せず)がそれぞれ形成されており、押さえリング23側からボルト21が通され、底板部材8側からナット22によって固定されている。
このようにして、ドーム形容器9の周縁に形成されたフランジ部9dは、押さえリング23とパッキン20との間に挟まれ、底板部材8の上にドーム形容器9が密閉して設置されている。
【0054】
なお、本実施形態では、第1噴射口3を構成する第1貫通孔10の数を30個、第2噴射口5を構成する第2貫通孔14の数を10個としたが、第1貫通孔10と第2貫通孔14の数はこれに限られるものではなく、目的に応じて様々に変更できる。
具体的には、本実施形態において第1貫通孔10と第2貫通孔14の数は、例えば、次のように設定できる。
【0055】
第1噴射口3を構成する第1貫通孔10の数:n1=p×q
第2噴射口5を構成する第2貫通孔14の数:n2=q
ここで、pはドーム形容器9の頂上部9aの中心を中心とする同芯円の数、qは各同芯円上に形成される第1貫通孔の数である。
つまり、本実施形態において、第2貫通孔5の数は、各同芯円上に形成される第1貫通孔10の数と一致することとなる。
【0056】
(実施例1)
実施例1として、図1〜5に示されるバブリング装置1と実質的に同様の構成を有するバブリング装置を転炉集塵水の循環水系に設置し集塵水に対して曝気処理を行った。
【0057】
転炉集塵水の循環水系の概要について図9に基づいて説明する。図9は実施例1に係る曝気処理が実施された転炉集塵水の循環水系を模式的に示す説明図である。
【0058】
図9に示されるように、転炉30から排出されたガスは1次集塵装置31および2次集塵装置32を通って図示しない回収装置へ送られる。
1次および2次集塵装置31,32ではガスに含まれる多量の粉塵を除去するために大量の処理水が吹きつけられ、ガス中に含まれる粉塵が処理水に捕集される。
具体的には循環水系の処理水槽39からポンプ40により2次集塵装置32へ処理水が供給され粉塵を捕集する。2次集塵装置32で粉塵を捕集した集塵水はその後、ポンプ41により1次集塵装置31へ供給されてさらに粉塵を捕集する。
【0059】
1次および2次集塵装置31,32で粉塵を捕集した集塵水は、ガス中に含まれる炭酸によりpHが大きく低下し、また集塵水の着色の原因となる鉄イオンを多量に含んだ状態で第1コンディショナー槽33へ流入する。
【0060】
第1コンディショナー槽33では、集塵水に含まれる粒径の大きな比重の重い塵芥を自然沈降させ、第1コンディショナー槽33からオーバーフローした集塵水が第2コンディショナー槽34へ流入する。
第2コンディショナー槽34では、第1コンディショナー槽33で除去しきれなかった塵芥を自然沈降により除去する。
なお、第1および第2コンディショナー槽33,34の底に溜まった塵芥は定期的に排出され、屋外に野積みされる。
【0061】
第2コンディショナー槽34からオーバーフローした集塵水には、集塵水のpHを上昇させると共に、集塵水中の鉄イオンを水酸化物に変化させて集塵水中に析出させるための苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)が添加される。
苛性ソーダが添加されると、集塵水中の鉄イオンは次の式(1)および式(2)に示す反応を生じ、不溶性の水酸化鉄に変化して集塵水中に析出する。
【0062】
Fe2+ + 2OH- → Fe(OH)2 (1)
【0063】
Fe3+ + 3OH- → Fe(OH)3 (2)
【0064】
その後、集塵水はカチオン系高分子凝集剤がさらに添加されたうえでシックナー35に流入する。
シックナー35において、集塵水中に析出した水酸化鉄は、高分子凝集剤の作用により他のダストと共にフロックを形成し、シックナー35の底にスラッジとして沈殿する。
【0065】
シックナー35の底に沈殿したスラッジは排泥ポンプ36により排出され、脱水機37で脱水された後、野積みされる。
また、脱水機37でスラッジと分離された処理水はポンプ38により第1コンディショナー槽33へ戻される。
なお、野積みされたスラッジに含まれる水酸化鉄は大気中の水分と酸素により次の式(3)および式(4)に示すような燃焼反応を起こし、激しく発熱する。
【0066】
Fe(OH)2 + H2O + 1/2O2 → Fe(OH)3 (3)
2Fe(OH)3 → Fe23 + 3H2O + 熱 (4)
【0067】
一方、シックナー35からオーバーフローした上澄みの処理水は処理水槽39へ溜められた後、ポンプ40により再び2次集塵装置32へ供給され、粉塵の捕集に再利用される。
【0068】
以上が、実施例1に係る曝気処理が実施された循環水系の主な概要であるが、本実施例において、集塵水に対して曝気処理を行った目的は次の通りである。
(1)循環水系で曝気処理により鉄イオンを不溶性の酸化鉄に変化させて集塵水中に析出させることにより、集塵水の脱色を図ると共に、野積みされたスラッジに含まれる水酸化鉄の量を減らし、スラッジ中の水酸化鉄が大気中の水分および酸素と反応し激しく燃焼して発熱することを防止する。
(2)曝気処理により集塵水に含まれる炭酸を大気中へ追い出して集塵水のpHを上昇させ、pH調整のために添加している苛性ソーダの使用量を減らす。
【0069】
本実施例では集塵水に対して曝気処理を行うにあたり、図9に示されるように、図1〜5に示されるバブリング装置1と実質的に同様の構成を有するバブリング装置101を第1コンディショナー槽33に2基設置した。
第1コンディショナー槽33は深さ約3250mm、容積約24.7m3の円形水槽で、中心に集塵水を流入させる流入筒33aが設けられている。第1コンディショナー槽33の上端側の内周にはオーバーフローした集塵水を受け止める樋33bが形成されている。
本実施例では2基のバブリング装置101を水面からの深さが1500mmとなるように流入筒33a内に2基設置した。
【0070】
本実施例において用いられたバブリング装置101は、図1〜5に示されるバブリング装置1と実質的に同じ構成を有するものの、第1貫通孔と第2貫通孔の数が異なる。
【0071】
本実施例で用いられたバブリング装置101の第1および第2貫通孔の数は次のように設定された。
第1貫通孔の数:n1=p×q
第2貫通孔の数:n2=q
ここで、pはドーム形容器の頂上部の中心を中心とする同芯円の数、qは各同芯円上に形成される第1貫通孔の数であり、本実施例のバブリング装置101ではp=3、q=6に設定された。
つまり、3つの同芯円に第1貫通孔がそれぞれ6個ずつ計18個形成され、第2貫通孔は各同心円上の第1貫通孔の数と一致するように6個形成された。
【0072】
ドーム形容器の高さ(H1(図1参照))は60mmとされ、ドーム形容器の頂上部の中心を中心とする3つの同芯円の直径(D1,D2,D2(図2参照))は65mm、80mm、95mmにそれぞれ設定された。
また、ドーム形容器のフランジ部に対する3つの同芯円の高さ(H2,H3,H4(図1参照))は58mm、47mm、27mmにそれぞれ設定された。
【0073】
一方、ドーム形容器の頂上部に対する第2貫通孔の高さ(H5(図5参照))は35mmに設定された。
また、第1貫通孔の直径(D4(図5参照))は1.5mm、第2貫通孔の直径(D5(図5参照))は2.0mm、水平方向に対する第2貫通孔の下方傾斜角(θ(図5参照))は40°に設定された。
【0074】
曝気処理は、2基のバブリング装置101に対し、純酸素(酸素濃度:99.5%)を60〜70Nm3/hr、工業用水を25〜30ml/minの流量で供給することにより行われた。
純酸素は、工場内の酸素配管42から減圧弁43および流量計44を介して各バブリング装置の受入れ口へ繋がる共通の配管へ供給され、また、工業用水は工水タンク45からポンプ46および流量計47を介して受入れ口の手前で前記配管に供給された。
なお、バブリング装置101に対し、純酸素だけでなく工業用水を一緒に供給するのは、純酸素と工業用水を第1および第2貫通孔から一緒に噴出させることにより集塵水と純酸素との接触効率が高められ、さらには純酸素と共に噴出する工業用水がもたらすエロージョン作用により第1および第2貫通孔の周囲にスケールが成長することを抑制できるからである。
試験中、集塵水の流量は400m3/hrであり、集塵水のpHは9.5〜10.0を維持するように調整された。曝気処理の有無による集塵水および処理水の水質の変化は次の表1に示される通りであった。
【0075】
【表1】

【0076】
表1から明らかなように、第1コンディショナー槽33で酸素による曝気処理を行ったことにより、苛性ソーダ添加のみによる処理同様に、目標とするpHにコントロールでき、また、水中の鉄(全鉄、溶存鉄)および濁度、SSの除去が十分に行われていた。
【0077】
このように、試験中、集塵水のpHコントロールが適切に実施され、集塵水中の鉄イオンが十分に除去されたため、曝気処理の前後を通して処理水に着色は認められなかった。
なお、曝気処理により集塵水中の鉄イオンが除去されたのは次の式(5)および式(6)に示すような酸化反応が生じ、不溶性の酸化鉄に変化して集塵水中に析出したためと考えられる。
【0078】
Fe2+ → Fe3+ + e- (5)
4Fe3+ + 3O2 → 2Fe23 (6)
【0079】
そして、集塵水系で多くの鉄イオンを酸化鉄に変化させることができたため、曝気処理を開始して以降、野積みしたスラッジに激しい発熱は認められなくなり、作業環境の改善が図られた。
【0080】
また、集塵水のpHを9.5〜10.0に維持するためにシックナー35の手前で添加していた苛性ソーダの量は、曝気処理が実施されなかった期間は1日あたり平均2199kgであったが、曝気処理が実施された期間中は1日あたり平均461kgとなり、曝気処理により苛性ソーダの使用量を約80%減少させることができた。
【0081】
これは、曝気処理により集塵水中の溶存酸素濃度が上昇し、集塵水中に溶存できなくなった飽和状態の炭酸が大気中に追い出され、苛性ソーダのような水溶液中で強塩基性を示す水酸化物に頼ることなく集塵水のpHを上昇させることができたためと考えられる。
【0082】
なお、本発明のような第2ノズル部材を備えない通常のバブリング装置で曝気処理した場合は、およそ3日でスケールの付着やスラッジの堆積により噴射口が閉塞し、曝気処理を実施できない状態に陥ったが、本実施例で用いたバブリング装置101は2ヶ月間にわたって閉塞せずに使用を継続できた。
【0083】
また、純酸素を用いた曝気処理により、処理水中の溶存酸素が増加し、粉塵の捕集に再利用された際に転炉ガス中の酸素濃度を爆発濃度まで押し上げることが懸念されたため、処理水の溶存酸素濃度についても試験期間中に確認した。
結果は次の表2に示す通りであり、純酸素による曝気処理の有無で溶存酸素濃度に顕著な差は認められなかった。
【0084】
【表2】

【0085】
(実施例2)
実施例2として、図1〜5に示されるバブリング装置と実質的に同様の構成を有するバブリング装置を高炉集塵水の循環水系に設置し集塵水に対して曝気処理を行った。
本実施例において曝気処理を行った目的は、集塵水のpH調整のために添加している苛性ソーダの使用量を減らすことである。
【0086】
高炉集塵水は、転炉集塵水よりも着色の原因となる鉄イオンの含有量が低く、集塵水の着色はそれほど問題とならないため、上述の実施例1のように鉄イオンを酸化させて集塵水中に析出させることは本実施例の主目的ではない。
つまり、本実施例では、曝気処理により集塵水から炭酸を追い出して集塵水のpHを上昇させることができればよいため、実施例1のように純酸素ではなく空気によって曝気処理を行った。
【0087】
高炉集塵水の循環水系は図6に示す転炉集塵水の循環水系とほぼ同様であるが、2つのコンディショナー槽(第1および第2コンディショナー槽33,34)ではなく単独のコンディショナー槽が用いられている点が異なる。
【0088】
本実施例では、図1〜5に示されるバブリング装置1と実質的に同様の構成を有するバブリング装置を、コンディショナー槽の流入筒に水面からの深さが1000mmとなるように1基設置した。
【0089】
本実施例において用いられたバブリング装置101は、図1〜5に示されるバブリング装置1と実質的に同じ構成を有するものの、第1貫通孔と第2貫通孔の数が異なる。
【0090】
本実施例で用いられたバブリング装置の第1および第2貫通孔の数は次のように設定された。
第1貫通孔の数:n1=p×q
第2貫通孔の数:n2=q
ここで、pはドーム形容器の頂上部の中心を中心とする同芯円の数、qは各同芯円上に形成される第1貫通孔の数であり、本実施例のバブリング装置ではp=3、q=4に設定された。
つまり、3つの同芯円に第1貫通孔がそれぞれ4個ずつ計12個形成され、第2貫通孔は各同心円上の第1貫通孔の数と一致するように4個形成された。
【0091】
ドーム形容器の高さ(H1(図1参照))は60mmとされ、ドーム形容器の頂上部の中心を中心とする3つの同芯円の直径(D1,D2,D3(図2参照))は65mm、80mm、95mmにそれぞれ設定された。
また、ドーム形容器のフランジ部に対する3つの同芯円の高さ(H2,H3,H4(図1参照))は58mm、47mm、27mmにそれぞれ設定された。
【0092】
一方、ドーム形容器の頂上部に対する第2貫通孔の高さ(H5(図5参照))は35mmに設定された。
また、第1貫通孔の直径(D4(図5参照))は1.5mm、第2貫通孔の直径(D5(図5参照))は2.0mm、水平方向に対する第2貫通孔の下方傾斜角(θ(図5参照))は40°に設定された。
【0093】
曝気処理は、バブリング装置に対し、空気を20〜50Nm3/hr、工業用水を100ml/minの流量で供給することにより行われた。バブリング装置に対する空気と工業用水の供給方法は実施例1と同様である。
バブリング装置に対して空気と一緒に工業用水を供給するのは、実施例1と同様、空気と工業用水を第1および第2貫通孔から一緒に噴出させることにより集塵水と空気との接触効率が高められ、さらには空気と一緒に噴出する工業用水がもたらすエロージョン作用により第1および第2貫通孔の周囲にスケールが成長することを抑制できるからである。
試験中、集塵水の流量は550m3/hrであり、集塵水のpHは6.6を維持するように調整された。曝気処理の有無による集塵水および処理水の水質の変化は次の表3に示される通りであった。
【0094】
【表3】

【0095】
表3から明らかなように、コンディショナー槽で空気による曝気処理を行ったことにより、苛性ソーダ添加のみによる処理同様に、目標とするpHにコントロールでき、また、水中の全鉄、亜鉛(全亜鉛、溶存亜鉛)、濁度およびSSの除去が十分に行われていた。
【0096】
これにより、集塵水のpHを6.6に維持するために添加していた苛性ソーダの量は、曝気処理が実施されなかった期間は1日あたり平均2500kgであったが、曝気処理が実施された期間中は1日あたり平均670kgとなり、曝気処理により苛性ソーダの使用量を約73%減少させることができた。
【0097】
なお、本発明のような第2ノズル部材を備えない通常のバブリング装置で曝気処理した場合は、およそ半月でスケールの付着やスラッジの堆積により噴射口が閉塞し、曝気処理を実施できない状態に陥ったが、本実施例で用いたバブリング装置は6ヶ月間にわたって閉塞せずに使用を継続できた。
【0098】
以上、本発明のバブリング装置を用いた高炉または転炉集塵水の処理方法について説明したが、本発明によるバブリング装置は、高炉や転炉の集塵水の処理だけでなく、曝気処理を必要とする様々な液体の処理に好適に利用できる。
【0099】
また、上述の実施例1および2では酸素または空気に工業用水を加えて曝気処理を行ったが、これは噴射口から気体だけでなく液体を一緒に噴射させることにより、液体の衝突による緩やかなエロージョンを噴射口の周辺で発生させ、噴射口に付着しようとするスケールや堆積物を機械的に剥離させる効果を強めるためである。
【符号の説明】
【0100】
1,101 バブリング装置
2 第1ノズル部材
3 第1噴射口
4 第2ノズル部材
5 第2噴射口
6 受入れ口
7 蓄圧容器
8 底板部材
9 ドーム形容器
9a 頂上部
9b 上部開口
9c 切り欠き
9d,12a,13a,15a フランジ部
10 第1貫通孔
11a,11b,11c 同芯円
12 筒状体
13 蓋
14 第2貫通孔
15 継ぎ手
15b 突起
16 第1パッキンリング
17 第2パッキンリング
18 フランジナット
19 止めナット
20 パッキン
20a 貫通孔
21 ボルト
22 ナット
23 押さえリング
30 転炉
31 1次集塵装置
32 2次集塵装置
33 第1コンディショナー槽
34 第2コンディショナー槽
35 シックナー
36 排泥ポンプ
37 脱水機
38,40,41,46 ポンプ
39 処理水槽
42 酸素配管
43 減圧弁
44,47 流量計
45 工水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮気体を受け入れて第1噴射口から噴射する第1ノズル部材と、前記圧縮気体を受け入れて第2噴射口から噴射する第2ノズル部材とを備え、第1および第2ノズル部材は圧縮気体が第2噴射口から第1噴射口の周辺に噴射されるように配置されてなるバブリング装置。
【請求項2】
第1ノズル部材が、圧縮気体を受け入れる受入れ口と前記第1噴射口とを有する蓄圧容器を備える請求項1記載のバブリング装置。
【請求項3】
蓄圧容器が、中央に前記受入れ口を有する底板部材と、底板部材の上に密閉して設置されるドーム形容器とから構成され、第2ノズル部材がドーム形容器の頂上部から突出して設けられる請求項2記載のバブリング装置。
【請求項4】
第1噴射口はドーム形容器の頂上部を中心とする同芯円上に形成された複数の第1貫通孔からなり、第2ノズル部材はドーム形容器に連通して設けられた筒状体と、筒状体の上端に嵌め込まれる蓋とを備え、第2噴射口は第1貫通孔に対応して前記蓋の周囲に放射状に形成された複数の第2貫通孔からなる請求項3記載のバブリング装置。
【請求項5】
前記受入れ口と筒状体が前記ドーム形容器の中心軸と同軸である請求項4記載のバブリング装置。
【請求項6】
ドーム形容器は表面が鏡面仕上げされてなる請求項3〜5のいずれか1つに記載のバブリング装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のバブリング装置を用い、高炉または転炉から排出されるガスに含まれる粉塵を捕集した集塵水の循環水系で前記集塵水に酸素を含む気体で曝気処理を行うことを特徴とする高炉または転炉集塵水の処理方法。
【請求項8】
酸素を含む気体が空気である請求項7記載の高炉または転炉集塵水の処理方法。
【請求項9】
酸素を含む気体が純酸素である請求項7記載の高炉または転炉集塵水の処理方法。
【請求項10】
循環水系は集塵水に含まれるダストを沈殿させるためのシックナーを備え、曝気処理は集塵水が前記シックナーに流入する前に行われる請求項7〜9のいずれか1つに記載の高炉または転炉集塵水の処理方法。
【請求項11】
循環水系は集塵水がシックナーに流入する前に粒径の大きな比重の重い塵芥を予め除去するためのコンディショナー槽をシックナーの上流側に備え、曝気処理が前記コンディショナー槽内で行われる請求項10に記載の高炉または転炉集塵水の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−86161(P2012−86161A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235645(P2010−235645)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(505112048)ナルコジャパン株式会社 (8)
【出願人】(000154727)株式会社片山化学工業研究所 (82)
【Fターム(参考)】