説明

バランサ装置の組み付け構造

【課題】クランクケース、特にその開口近傍の剛性を高めることができるとともに、締結部とオイルとの干渉を避け、開口を通じてオイルパンにオイルを円滑に流下させることのできるバランサ装置の組み付け構造を提供する。
【解決手段】本願発明に係る内燃機関のバランサ装置23の組み付け構造としては、オイルを流下させるための開口32bが形成されたクランクケース13にバランサ装置23が組み付けられる。クランクケース13において、開口32bの周縁部33aに鉛直方向上方に突出する凸部35を形成するとともに、同凸部35にはバランサ装置23をクランクケース13に締結する締結部37を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内燃機関のクランクシャフトを収納するクランクケースに、ピストンの往復動に伴う振動を低減するバランサ装置を組み付け可能とするバランサ装置の組み付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、ピストンの往復動がコネクティングロッド及びクランクシャフトにより同クランクシャフトの回転運動に変換される。ここで多くの内燃機関にあっては、特許文献1に記載されるように、このクランクシャフトを支持するシリンダブロックの下方にバランサ装置が組み付けられ、このバランサ装置によりピストンの往復動に伴う振動を低減するようにしている。また一般に、クランクシャフトはその下方において一部がクランクケースに収納されているが、こうしたクランクケースにはオイルパンにオイルを流下させるための開口が形成されている。そして、こうしたクランクケースにバランサ装置を組み付ける場合、バランサ装置はこの開口と重なるかたちで配設されるとともに開口の周縁部においてクランクケースに締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009‐24515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなバランサ装置の組み付け構造において、クランクケース、特にその開口近傍の剛性を高めるうえではバランサ装置と開口の周縁部との締結部を増やすことが望ましい。しかしながら、締結部が増加すると、その締結部とオイルとの干渉が避けられず、オイルの流れがその締結部によって乱されるようになる。したがって、開口を介してオイルパンに流下するオイルの円滑な流れが阻害されることとなる。その結果、オイルパンにおけるオイルの気泡率が高くなり、オイルをポンプによって効率よく吸引することができなくなるおそれがある。
【0005】
この発明は上記実情に鑑みてなされたものでありその目的はクランクケース、特にその開口近傍の剛性を高めることができるとともに、締結部とオイルとの干渉を避け、開口を通じてオイルパンにオイルを円滑に流下させることのできるバランサ装置の組み付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、オイルを流下させるための開口が形成されたクランクケースにバランサ装置が組み付けられるバランサ装置の組み付け構造において、開口の周縁部には鉛直方向上方に突出する凸部が形成されるとともに、その凸部にはバランサ装置をクランクケースに締結する締結部が形成されてなることをその要旨とする。
【0007】
上記構成にあっては、クランクケースの開口の周縁部とバランサ装置とを凸部に設けられた締結部にて締結させるようにしているため、クランクケース、特にその開口近傍の剛性を高めることができる。更に、オイルは凸部を避けるようにして流れ、開口から流下するようになるため、オイルと締結部との干渉を避けることができ、オイルを開口を通じて円滑にオイルパンに流下させることができるようになる。したがって、オイルと締結部とが干渉して同オイルの円滑な流れが乱されることに起因する気泡率の発生を抑制することができ、オイルをポンプによって効率よく吸引させることができるようになる。しかも、開口の周縁部は他の部位と比較してその剛性が相対的に低くなる傾向にあるが、こうした凸部を形成することにより、同開口の周縁部の剛性を更に高めることができ、ピストンの往復動やクランクシャフトの回転運動等に伴うクランクケースの振動についてもこれを好適に抑制することができるようになる。
【0008】
また、請求項2記載の発明によるように、凸部はこれを開口に向かって延伸する態様にて形成することが望ましい。こうした構成を採用すれば、凸部の上面におけるオイルが同凸部の両側に流れ落ちやすくなる。その結果、締結部にオイルが到達し難くなり、オイルと締結部とが干渉して同オイルの円滑な流れが乱されることを一層抑制することができる。
【0009】
ところで、こうした凸部を形成するようにした場合、凸部によってオイルの流れが規制されるため、凸部の片側に偏在した状態でオイルが流れるようになる等、その流路域が狭められる懸念がある。この点、請求項3記載の発明によるように、凸部をクランクシャフトの回転軸に沿って延伸する形状を呈するものとすれば、クランクシャフトの回転に伴ってオイルは凸部を跨ぐようにして分散するため、オイルは凸部の両側を流れて開口に流下するようになる。したがって、凸部によってオイルの流路域が狭められてしまう状況を緩和することができ、オイルを円滑に開口からオイルパンに流下させることができるようになる。
【0010】
また、請求項4記載の発明によるように、クランクケースには、複数のシリンダから流下するオイルを開口に案内する案内部が凸部を挟む態様にて形成されることが望ましい。こうした構成を採用すれば、より多くのオイルが開口に流れ込む部位において、上述したようなオイルと締結部とが干渉して同オイルの円滑な流れが乱されることに起因する気泡の発生を一層効果的に抑制することができる。
【0011】
また、請求項5記載の発明によるように、クランクケースにおいて、凸部の鉛直方向下方に空間を形成する構成を採用すれば、その空間を例えば工具の作業用空間とする等、各種作業用の空間として利用することが可能になる。また、こうした空間を形成して凸部を中空構造とすることにより、中実構造の凸部を形成するようにした構成と比較してクランクケースの重量低減を図ることができるようにもなる。
【0012】
また、請求項6記載の発明によるように、凸部は締結部に向かう方向とは異なる方向に下る傾斜部を有するものとすれば、凸部におけるオイルが傾斜部を通じて流れ落ちることで締結部に到達し難くなるため、オイルと締結部とが干渉して同オイルの円滑な流れが乱されることを一層好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るバランサ装置の組み付け構造を採用した内燃機関を示す模式図。
【図2】バランサ装置が組み付けられたクランクケースの平面図。
【図3】(a)は、図2のA−A’断面図、(b)は、図2のB−B’断面図。
【図4】バランサ装置が組み付けられたクランクケースの裏面図。
【図5】(a)は、第2実施形態におけるA−A’断面図、(b)は、第2実施形態におけるB−B’断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明に係るバランサ装置23の組み付け構造を、車両に搭載される直列4気筒の内燃機関10において具体化した第1実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0015】
図1に示されるように、内燃機関10は、複数のシリンダ21a,21b,21c,21dを有するシリンダブロック11と、このシリンダブロック11の上部に組み付けられるシリンダヘッド12とを備えている。なお、この内燃機関10は過給機を搭載する火花点火内燃機関である。シリンダブロック11の下部にはクランクシャフト22の一部を収納するクランクケース13が組み付けられるとともに、同クランクケース13の下部にはオイルを貯留するためのオイルパン14が組み付けられている。オイルパン14は、一部のシリンダ21dを除く各シリンダ21a〜21cの下方に位置してクランクケース13を下方から覆っている。なお、内燃機関10には、その一端に変速機15が組み付けられている。
【0016】
各シリンダ21a〜21d内にそれぞれ設けられたピストン(図示略)はコネクティングロッド(図示略)を介してクランクシャフト22に連結されている。
また、シリンダブロック11において、各シリンダ21a〜21dの鉛直方向下方(以下、単に「下方」と示す)には、変速機15に回転力を伝達するクランクシャフト22が回転可能に支持されている。このクランクシャフト22には、同クランクシャフト22と一体回転するドライブギア22aが設けられている。このドライブギア22aはバランサ装置23のドリブンギア23aと噛合されている。なお、このクランクシャフト22は、クランクケース13により下方から覆われている。
【0017】
クランクケース13には、クランクシャフト22の下方に位置するようにしてバランサ装置23が組み付けられている。ピストンの往復動に伴う振動を低減するバランサ装置23は、一部のシリンダ21b,21cの下方において、クランクケース13の下方側から組み付けられている。
【0018】
次に、このクランクケース13について詳しく説明する。
図2に示すように、クランクケース13は、その横断面が凹形状を呈するものであり、その取付面13aがシリンダブロック11の下面に対して複数のボルト13bにより締結されている。また、クランクケース13は内側にはシリンダブロック11の下端を収容可能な収納部31が形成されている。この収納部31は、クランクケース13の各シリンダ21a〜21dの下方に位置している。以下、各シリンダ21a〜21dに対応する(各シリンダ21a〜21dの下方に位置する)収納部をそれぞれ第1収納部31a〜第4収納部31dと便宜上区分する。また、クランクケース13の一端側には、クランクシャフト22が位置する半円状の切欠13cが形成されている。
【0019】
クランクケース13の底面34には、オイルパン14にオイルを流下させるための一対の開口32a,32bが形成されている。一方の開口32aは、第1収納部31aの底面34に形成されている。また、他方の開口32bは、第2収納部31bから第3収納部31cにかけてそれらの底面34に形成されている。また、開口32bの周縁部33には、クランクケース13を下方から、開口32bの一部を覆うようにバランサ装置23が組み付けられている。
【0020】
ここで、2つのシリンダ21c,21dからクランクケース13の収納部31に流下したオイルは、開口32bからオイルパン14に流下する。
また、クランクケース13には、第3収納部31cから第4収納部31dにわたって底面34から鉛直方向上方(以下、単に「上方」という)に向かって突出する凸部35が形成されている。この凸部35は、上方からみて矩形状であり、その長手方向Yが開口32bに向かっている。つまり、凸部35は、開口32bに向かって延伸する態様で形成されている。また、この凸部35が形成される底面34のうち、凸部35の両側に位置する部分は、2つのシリンダ21c,21dからクランクケース13の収納部31に流下したオイルを開口32bに案内する案内部34aとして機能する。また、この案内部34aは、凸部35を挟むように設定されている。
【0021】
また、凸部35は、図2及び図3(a)に示すように、開口32bに向かって、下方に傾斜する傾斜部35aと、案内部34aよりも高い位置に水平な上面部35bとが連続するように形成されている。そして、開口32bの周縁部33aが、案内部34aにおける開口32bの周縁部33bよりも高い位置となる。
【0022】
凸部35における開口32bの周縁部33aには、バランサ装置23を締結するための締結部37が形成されている。この締結部37は、その上面が案内部34aよりも高い位置に設定されている。また、締結部37は、周縁部33bよりも開口32b方向に向かって延伸した態様である。締結部37は、バランサ装置23の締結部25とともにボルトにより締結されることで、バランサ装置23がクランクケース13に組み付けられる。
【0023】
また、図3(b)に示すように、凸部35において、開口32bに向かう両側縁35c,35dには鉛直な側壁が形成されている。この側壁によってオイルの流れ方向が短手方向Xから長手方向Y、すなわち開口32bに向かう方向に変化する。また、凸部35は、その長手方向Yがクランクシャフト22の回転軸に沿った態様である。
【0024】
また、クランクケース13において、凸部35の下方には、図3(b)及び図4に示すように、空間36が形成されている。この空間36は、内燃機関10と変速機15とを組み付けるための工具を挿入して組付作業をするための作業用空間とされている。
【0025】
また、図4に示すように、バランサ装置23において、そのハウジング24には、これをクランクケース13に締結するための締結部25が形成されている。この締結部25は、ハウジング24の端部に設けられ、バランサ装置23の締結部37にボルトによって締結されている。なお、本実施形態において、締結部25の他にも、バランサ装置23を締結するための締結部が形成されている。なお、図4においては、この発明に関係する締結部25のみに符号を付し、他の締結部の符号については省略する。
【0026】
また、クランクケース13の下部には、オイルパン14を組み付けるためのフランジ38が形成されている。周縁部33bからフランジ38にわたる内壁は、鉛直に連続する平面となる。
【0027】
次に本実施形態の作用について説明する。
潤滑や冷却に供されたオイルは、各シリンダ21a〜21dの内壁やクランクシャフト22から、それらの下方に位置するクランクケース13に流下する。なお、これらオイルはクランクシャフト22の回転の影響によって上方から斜めに流下する傾向がある。
【0028】
ここで、クランクケース13において、そのシリンダ21aから第1収納部31aに流下したオイルは、主に、開口32aからオイルパン14に流下する。また、シリンダ21bから第2収納部31bに流下したオイルはその大部分が開口32bの周縁部33cからオイルパン14に流下する。更に、2つのシリンダ21c,21dから第3収納部31c、及び第4収納部31dに流下したオイルはその大部分が矢印C1,C2に示すように、凸部35の両側縁35c,35dに沿って長手方向Yに流れ、案内部34aにより案内されて周縁部33bから開口32bに至り、同開口32bからオイルパン14に流下する。このように、案内部34aには複数のシリンダ21c,21dからオイルが流下するため、底面34の他の部分と比較してオイルの流量が多い傾向がある。
【0029】
また、凸部35の上面部35bに付着したオイルは、長手方向Yよりも短手方向Xに溢れやすく、案内部34aに向かって流れ落ちやすい。
特に、クランクシャフト22の回転により、短手方向X1に向かって上方から斜めに流下したオイルは、凸部35の一側縁35cでは凸部35に乗り上げにくく、図2の矢印C1にて示すように一側縁35cに沿って長手方向Yに流れる方向を変えることとなる。その一方で、凸部35の上面部35bに流下したオイルは、矢印C2に示すように、そのまま短手方向X1に流れ、案内部34aに流れ落ちやすい。
【0030】
このように、開口32bの周縁部33aに凸部35が形成されることで、案内部34a、周縁部33bを介して開口32bにオイルが流下するとともに、締結部37にオイルが到達し難くなる。特に、締結部37が案内部34aよりも高い位置となるため、締結部37にオイルが到達し難くなる。
【0031】
また、周縁部33bからフランジ38にわたり、鉛直方向に平面となるように内壁が形成されているため、開口32bの周縁部33bからのオイルは、フランジ38の内壁により流下を阻害されることなく、滑らかにオイルパン14に流下することとなる。そして、オイルパン14に貯留されたオイルは、モータ(図示せず)によりオイルパン14の吸引口から各部に供給され、ピストンの往復動、クランクシャフト22の回転運動等が潤滑に行われることとなる。
【0032】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)上記実施形態に構成にあっては、クランクケース13の開口32bの周縁部33aとバランサ装置23とを凸部35に設けられた締結部37にて締結させるようにしているため、クランクケース13、特にその開口32b近傍の剛性を高めることができる。また、この内燃機関10は過給機を搭載するため、クランクシャフト22から取り出されるトルクが比較的大きく、そのクランクケース13にクランクシャフト22等を通じて作用する外力も大きい。この点、本実施形態の構成によれば、そうした外力に起因した開口32bの変形を好適に抑制することができる。更に、オイルは凸部35を避けるようにして流れ、開口32bから流下するようになる。このため、オイルと締結部37との干渉を避けることができ、オイルを開口32bを通じて円滑にオイルパン14に流下させることができるようになる。したがって、オイルと締結部37とが干渉して同オイルの円滑な流れが乱されることに起因する気泡率の発生を抑制することができ、オイルをポンプによって効率よく吸引させることができるようになる。
【0033】
(2)しかも、開口32bの周縁部33aは他の部位と比較してその剛性が相対的に低くなる傾向にあるが、こうした凸部35を形成することにより、同開口32bの周縁部33の剛性を更に高めることができる。したがって、ピストンの往復動やクランクシャフト22の回転運動等に伴うクランクケース13の振動についてもこれを好適に抑制することができるようになる。
【0034】
(3)また、凸部35はこれを開口32bに向かって延伸する態様にて形成することにより、凸部35の上面(上面部35b)におけるオイルが同凸部35の両側の案内部34aに流れ落ちやすくなる。その結果、締結部37にオイルが到達し難くなり、オイルと締結部37とが干渉して同オイルの円滑な流れが乱されることを一層抑制することができる。
【0035】
(4)ところで、こうした凸部35を形成するようにした場合、凸部35によってオイルの流れが規制されるため、凸部35の片側の案内部34aに偏在した状態でオイルが流れるようになる等、その流路域が狭められる懸念がある。しかしながら、この点においては、凸部35をクランクシャフト22の回転軸に沿って延伸する形状を呈するものとしているため、クランクシャフト22の回転に伴ってオイルは凸部35を跨ぐようにして分散し、オイルは凸部35の両側の案内部34aを流れて開口32bに流下するようになる。したがって、凸部35によってオイルの流路域が狭められてしまう状況を緩和することができ、オイルを円滑に開口からオイルパン14に流下させることができるようになる。
【0036】
(5)また、クランクケース13には、複数のシリンダ21c,21dから流下するオイルを開口32bに案内する案内部34aが凸部35を挟む態様にて形成される。これにより、より多くのオイルが開口32bに流れ込む周縁部33bにおいて、上述したようなオイルと締結部37とが干渉して同オイルの円滑な流れが乱されることに起因する気泡の発生を一層効果的に抑制することができる。
【0037】
(6)また、クランクケース13において、凸部35の鉛直方向下方に空間36を形成すると、その空間36を例えば工具の作業用空間とする等、各種作業用の空間36として利用することが可能になる。しかも、こうした空間36を形成して凸部35を中空構造とするようにした構成と比較してクランクケース13の重量低減を図ることができるようにもなる。
【0038】
以下、本発明に係る内燃機関10のクランクケース13の構造を具体化した第2実施形態について、図5を参照して説明する。尚、第1実施形態との相違点を中心に説明し、先の第1実施形態の構成と同一の構成には同一の符号を付す。また、図5(a)は、図2を第2実施形態に適応させた場合におけるA−A’断面図であり、図5(b)は、図2を第2実施形態に適応させた場合におけるB−B’断面図である。
【0039】
図5に示されるように、クランクケース13には、第1実施形態における凸部35と同じ位置に凸部39が形成されている。この凸部39は、図5(a)に示すように、開口32bに向かって、上方に傾斜する傾斜部39aと、案内部34aよりも高い位置に水平な上面部39bとが連続するように形成されている。このため、開口32bの周縁部33aが、案内部34aにおける開口32bの周縁部33bよりも高い位置となる。また、傾斜部39aは、開口32bの周縁部33aとは逆方向に向かって下るため、傾斜部39aや上面部39bに付着したオイルは周縁部33aから離間する側に流れ落ちやすい。また、図5(b)に示すように、締結部37は、その上面が凸部39の上面部39bの上面と同じ高さに設定されている。なお、凸部39において、開口32bに向かう両側縁39c,39dには、第1実施形態と同じように、鉛直な側壁が形成されている。
【0040】
このような構成において、凸部39の傾斜部39aにおけるオイルは、傾斜によって開口32bから離間する側に向かって流れ落ちやすくなる。このように、凸部39は締結部37から離間する方向に下る傾斜部39aを有するものとすれば、凸部39におけるオイルが傾斜部39aを通じて流れることで締結部37に到達に難くなるため、オイルと締結部37とが干渉して同オイルの円滑な流れが乱されることを一層好適に抑制することができる。
【0041】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態において、凸部35の上面部35bよりも低い高さに締結部37を形成したり、凸部39の上面部39bと同じ高さに締結部37を形成したが、これに限らず、例えば、上面部よりも高い高さに締結部37を形成してもよい。また、例えば、締結部37は、凸部に囲まれていればより好適であり、案内部34aよりも高くなくてもよく、案内部34aとの位置関係も問わない。
【0042】
・上記実施形態において、凸部35,39は鉛直な側壁を有するものとしたが、これに限らず、例えば、短手方向Xに向かって下るように傾斜する傾斜部を有するものとしてもよい。これにより、上方からのオイルが凸部35,39(傾斜部35a,39aや上面部35b,39b)から短手方向Xに向かうようになるため、オイルを案内部34aに流れ落ちやすくすることができ、より一層、オイルと締結部とが干渉して同オイルの円滑な流れが乱されることを避けることができる。
【0043】
・上記実施形態において、傾斜部35a,39aと上面部35b,39bとを連続させて凸部35,39を形成したが、これに限らず、例えば、傾斜部35a,39aがなく、案内部34aよりも高い位置に上面部のみを形成してもよい。また、例えば、上面部35b,39bがなく、案内部34aよりも高い位置に傾斜部のみを形成してもよい。また、例えば、案内部34aよりも高い位置に締結部37を形成したが、これに限らず、例えば、開口32bの周縁部33bにおける凸部35,39に締結部を形成していれば、案内部34aと同じ高さであってもよい。
【0044】
・上記実施形態において、上方からみて矩形状である凸部35,39を形成するようにしたが、これに限らず、例えば、開口32bに近づくにつれて、幅が狭くなる台形状の凸部を形成するようにしてもよい。これにより、開口32bに近づくにつれて、上方からのオイルが傾斜部35a,39aや上面部35b,39bから案内部34aに流れ落ちやすくすることができ、より一層、オイルと締結部とが干渉して同オイルの円滑な流れが乱されることを避けることができる。もちろん、矩形状でなくても三角形状であってもよい。また、上記実施形態において、上方からみて左右対称の形状に凸部35,39を形成したが、これに限らず、左右対称でなくてもよい。つまり、凸部35,39は、開口32bに向かって延伸していると好適である。なお、矩形状でない凸部において、上記実施形態における長手方向は、凸部が延伸する方向に相当する。
【0045】
・上記実施形態において、案内部34aの幅が均等になるようにクランクケース13を形成したが、開口32bに近づくにつれて、平面の幅が広くなるように形成してもよい。これにより、開口32bに近づくにつれて、オイルの流量を多くすることができる。したがって、案内部34aにおけるオイルが傾斜部35a,39aや上面部35b,39bに乗り上げることなく、より一層、オイルと締結部とが干渉して同オイルの円滑な流れが乱されることを避けることができる。
【0046】
・また、上記実施形態において、上方からみて左右対称の形状に案内部34aを形成したが、これに限らず、左右対称でなくてもよい。この場合、例えば、クランクシャフト22等からのオイルの流量によって、一方を相対的に広く、他方を相対的に狭くしてもよい。
【0047】
・また、例えば、設計の都合上、クランクケース13とバランサ装置23との締結部をポンプの吸引口の上方に配設せざるを得ない場合であっても、本実施形態にかかるバランサ装置の組み付け構造を採用すれば、ポンプの吸引口近傍における気泡率の上昇を極力抑制することができる。
【0048】
・上記実施形態にあっては、クランクシャフト22を下方から覆うクランクケース13に、凸部35,39を形成したが、これに限らず、例えば、クランクシャフト22を支持しつつ、下方から覆うクランクケースに凸部を形成してもよい。
【0049】
・上記実施形態において、過給機を搭載する火花点火内燃機関を用いた内燃機関10に本発明を適用したが、過給機を搭載していない内燃機関や、ディーゼル機関等の火花点火内燃機関以外の内燃機関にも同様に適用することができる。なお、ディーゼル機関であると、クランクシャフト22から取り出されるトルクが比較的大きく、そのクランクケース13にクランクシャフト22等を通じて作用する外力も大きくなる。
【0050】
・上記実施形態において、直列4気筒の内燃機関10に本発明を適用したが、これに限らず、例えば、シリンダの数は問わず、3気筒以下、5気筒以上であってもよい。また、例えば、シリンダの配列も、直列型ではなくても、V型、水平対向であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…内燃機関、11…シリンダブロック、12…シリンダヘッド、13…クランクケース、14…オイルパン、21a〜21d…シリンダ、22…クランクシャフト、23…バランサ装置、24…ハウジング、25…締結部、31…収納部、31a…第1収納部、31b…第2収納部、31c…第3収納部、31d…第4収納部、32a,32b…開口、33…周縁部、34…底面、34a…案内部、35,39…凸部、35a,39a…傾斜部、36…空間、37…締結部、38…フランジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを流下させるための開口が形成されたクランクケースにバランサ装置が組み付けられるバランサ装置の組み付け構造において、
前記開口の周縁部には鉛直方向上方に突出する凸部が形成されるとともに、同凸部には前記バランサ装置を前記クランクケースに締結する締結部が形成されてなる
ことを特徴とするバランサ装置の組み付け構造。
【請求項2】
前記凸部は前記開口に向かって延伸する態様にて形成される
請求項1に記載のバランサ装置の組み付け構造。
【請求項3】
前記凸部は前記クランクケースに収納されるクランクシャフトの回転軸に沿って延伸する態様にて形成される
請求項2に記載のバランサ装置の組み付け構造。
【請求項4】
前記クランクケースには、複数のシリンダから流下するオイルを前記開口に案内する案内部が前記凸部を挟む態様にて形成される
請求項2又は請求項3に記載のバランサ装置の組み付け構造。
【請求項5】
前記クランクケースには、前記凸部の鉛直方向下方に位置する空間が形成される
請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載のバランサ装置の組み付け構造。
【請求項6】
前記凸部は前記締結部に向かう方向とは異なる方向に下る傾斜部を有してなる
請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載のバランサ装置の組み付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−2308(P2013−2308A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131468(P2011−131468)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】