説明

バリアフィルム及びバリア性積層材料

【課題】親水性の基材層にアンカー層、水性塗布剤からなるガスバリア層を積層してなるバリアフィルムで、ガスバリア層の積層後の伸縮が小さく、優れたガスバリア性を有するバリアフィルム及びそれを用いたバリア性積層材料を提供することにある。
【解決手段】基材層の一方の面にアンカー層、ガスバリア層を積層してなるバリアフィルムにおいて、該基材層が温度40℃、相対湿度90%の条件下で24時間暴露した時のフィルムの流れ方向の収縮率が0.3%未満で、幅方向の伸率が0.7%未満の二軸延伸ナイロンフィルムからなり、該ガスバリア層がEVOH樹脂と無機フィラーとの混合物を水/アルコール系溶媒中に分散させてなる水性塗布剤を用いて形成したものからなり、バリア性積層材料がそのバリアフィルムに少なくともシーラント層を積層した積層体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や医薬品などの包装分野で使用されるバリアフィルム及びそれを用いたバリア性積層材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品などの包装分野で使用されるバリアフィルムとしては、通常、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルムあるいはポリエステルフィルムなどの単層フィルムが良く使用されるが、ガスバリア性が十分でない場合は前記単層フィルムからなる基材層にバリア性塗布剤を塗布、乾燥してなるガスバリア層を積層した多層フィルムが使用されている。前記バリア性塗布剤が有機溶媒を含有するものの場合、製造時に有機溶媒が大気中に放出され、環境汚染の原因になるなどの弊害があり、バリア性塗布剤としては水性のものが多く使用されている。しかし、基材層が親水性のフィルムの場合、フィルムにガスバリア性を有する水性塗布剤を塗布し、乾燥した時にフィルムが収縮したり、あるいは伸びてしまい、結果的に良好なガスバリア性が得られない問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、親水性の基材層にアンカー層、水性塗布剤からなるガスバリア層を積層してなるバリアフィルムで、ガスバリア層の積層後の伸縮が小さく、優れたガスバリア性を有するバリアフィルム及びそれを用いたバリア性積層材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1に係る発明は、基材層の一方の面にアンカー層、ガスバリア層を積層してなるバリアフィルムにおいて、該基材層が、温度40℃、相対湿度90%の条件下で24時間暴露した時のフィルムの流れ方向の収縮率が0.3%未満で、幅方向の伸率が0.7%未満の二軸延伸ナイロンフィルムからなり、該ガスバリア層がエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂と無機フィラーとの混合物を水/アルコール系溶媒中に分散させてなる水性塗布剤を用いて形成したものからなることを特徴とするバリアフィルムである。
【0005】
本発明の請求項2に係る発明は、上記請求項1記載のバリアフィルムのガスバリア層側に少なくともシーラント層を積層した積層体からなることを特徴とするバリア性積層材料である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のバリアフィルムは、基材層の一方の面にアンカー層、ガスバリア層を積層してなるバリアフィルムにおいて、該基材層が、温度40℃、相対湿度90%の条件下で24時間暴露した時のフィルムの流れ方向の収縮率が0.3%未満で、幅方向の伸率が0.7%未満の二軸延伸ナイロンフィルムからなり、該ガスバリア層がエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂と無機フィラーとの混合物を水/アルコール系溶媒中に分散させてなる水性塗布剤を用いて形成したものからなっているので、水性塗布剤からなるガスバリア層を積層後も寸法が安定しており、且つ、優れたガスバリア性を有している。前記バリアフィルムのガスバリア層側に少なくともシーラント層を積層した積層体からなるバリア性積層材料は、ガスバリア性が求められる各種の包装分野で広く利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のバリアフィルム及びそれを用いたバリア性積層材料を実施の形態に沿って以下に説明する。図1は本発明のバリアフィルムの一実施形態を示す側断面図であり、バリア
フィルム(10)は厚み方向に順に、基材層(11)、アンカー層(12)、ガスバリア層(13)を積層した構成である。前記基材層(11)とアンカー層(12)の間に印刷層を設けても良い。
【0008】
前記基材層(11)は、温度40℃、相対湿度90%の条件下で24時間暴露した時のフィルムの流れ方向の収縮率が0.3%未満で、幅方向の伸率が0.7%未満の二軸延伸ナイロンフィルムからなっており、その上に水性塗布剤を用いて所定層を形成しても伸縮が小さく、良好なものが得られる。汎用的に使用されている二軸延伸ナイロンフィルムは、温度40℃、相対湿度90%の条件下で24時間暴露した時のフィルムの流れ方向の収縮率は0.3%以上で、幅方向の伸率は0.7%以上であり、その上に水性塗布剤を塗布すると、乾燥時に伸縮が大きく起こり、良好なものが得られない。
【0009】
前記アンカー層(12)は、基材層(11)とガスバリア層(13)間の密着性を向上させる為に設けるもので、使用する塗布剤は密着性向上がはかれるものであれば特に限定されず、例えば、ポリウレタン系アンカー剤などが使用可能である。積層方法は公知のグラビアコート法で実施し、塗布量は0.2〜0.5g/m2(乾燥状態)が好ましい。
【0010】
前記ガスバリア層(13)は、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂と無機フィラーとの混合物を水/アルコール系溶媒中に分散させてなる水性塗布剤を用いて形成したものからなっている。前記無機フィラーとしては、モンモリロナイトや雲母等が使用可能で、EVOH樹脂と無機フィラーの混合割合は、EVOH樹脂/無機フィラー=50/50〜70/30(重量部比)が好ましい。積層方法はグラビアコート法、ロールコート法、エアーナイフコート法等の方法で塗布剤をコートし、塗布量は0.4〜1.0g/m2(乾燥状態)の範囲が好ましい。
【0011】
印刷層を設ける時は、一般的に包装材料の印刷に使用されるインキ、例えば、セルローズ系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルローズ/ポリアミド混合系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ゴム樹脂、環化ゴム樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂等の樹脂からなるバインダー樹脂に顔料及び溶媒を添加し、混練した各種タイプのインキを用いて形成する。
【0012】
本発明のバリアフィルムは、基材層として上記記載の物性の二軸延伸ナイロンフィルムを使用しているので、その上にアンカー層を介してエチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂と無機フィラーとの混合物を水/アルコール系溶媒中に分散させてなる水性塗布剤を用いてガスバリア層を積層しても、ガスバリア層の積層後の伸縮が小さく、ガスバリア性も優れている。さらに、製造時に有機溶剤が大気に放出されることが無く、環境汚染が避けられる。
【0013】
図2は本発明のバリア性積層材料の一実施形態を示す側断面図であり、バリア性積層材料(20)は、厚み方向に順に、基材層(11)の片面にアンカー層(12)、ガスバリア層(13)を積層してなるバリアフィルム(10)、接着剤層(14)、シーラント層(15)を積層した構成である。
【0014】
前記接着剤層(14)としては、一般的にドライラミネート用接着剤として使用される二液硬化型ポリウレタン系接着剤などを使用し、塗布方法としてはグラビアコート法、ロールコート法などで塗布する。接着剤の塗布量は1〜5g/m2(乾燥状態)である。
【0015】
前記シーラント層(15)は、ポリオレフィン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂フィルムからなっており、使用されるポリオレフィン系樹脂は、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、エチレン・α−オレフィン共重
合体樹脂などのエチレン系樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、ポリプロピレン・α−オレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂などの選択が可能であり、また、これらのオレフィン系樹脂をグラフト重合などにより酸変性した変成ポリオレフィン樹脂も使用可能である。上述したポリオレフィン系樹脂の単体又は2種以上からなるブレンド物でもかまわない。
【0016】
本発明のバリアフィルムを具体的な実施例をもとに詳しく説明する。
〈アンカー層(12)の塗布剤の準備〉
ポリウレタン系アンカー剤(サカタインクス(株)、商品名:N−1/R−1)を酢酸エチルで固形分10重量%になるように調整した塗布剤を準備した。
【実施例1】
【0017】
基材層(11)のフィルムとして、巻き取り状の厚さ15μmのニ軸延伸ナイロンフィルム(東洋紡績(株)、銘柄:ハーデンN2102)を使用し、多色印刷機で、そのハーデンN2102フィルムの片面に、ポリアミド系印刷インキを用いて所定形状の印刷層を部分的に繰り返し積層し、さらに全面に前記準備した塗布剤を用いて、塗布量0.2g/m2の乾燥被膜からなるアンカー層(12)を積層し、その上に水性塗布剤(サカタインクス(株)、商品名:エコステージGB−6)を全面に塗布後、温度90℃で乾燥して塗布量0.5g/m2 の乾燥被膜からなるガスバリア層(13)を積層して、本発明のバリアフィルムを作成した。
【0018】
以下に、本発明の比較用の実施例について説明する。
【実施例2】
【0019】
基材層のフィルムとして、巻き取り状の厚さ15μmのニ軸延伸ナイロンフィルム(ユニチカ(株)、銘柄:ONU)を使用した以外は、実施例1と同様にして比較用のバリアフィルムを作成した。
【0020】
<評価>
実施例1の本発明のバリアフィルム及び実施例2の比較用のバリアフィルムを、ガスバリア層積層後に室温(25℃)で保存し、経時で印刷ピッチを測定して、バリアフィルムの伸縮を評価した。さらにそれぞれのバリアフィルムの酸素透過度を測定した。その結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

表1に示すように、実施例1の本発明のバリアフィルムはガスバリア層を積層した後室温(25℃)に放置した直後及び室温(25℃)で120時間放置後も流れ方向の伸縮がほとんど無く、酸素透過度も小さく、バリア性が優れていた。一方、実施例2の比較用のバリアフィルムはガスバリア層を積層した後室温(25℃)に放置した直後及び室温(25℃)で120時間放置後も流れ方向が共に収縮していた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のバリアフィルムの一実施形態を示す側断面図である。
【図2】本発明のバリア性積層材料の一実施形態を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10…バリアフィルム
11…基材層
12…アンカー層
13…ガスバリア層
14…接着剤層
15…シーラント層
20…バリア性積層材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層の一方の面にアンカー層、ガスバリア層を積層してなるバリアフィルムにおいて、該基材層が、温度40℃、相対湿度90%の条件下で24時間暴露した時のフィルムの流れ方向の収縮率が0.3%未満で、幅方向の伸率が0.7%未満の二軸延伸ナイロンフィルムからなり、該ガスバリア層がエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂と無機フィラーとの混合物を水/アルコール系溶媒中に分散させてなる水性塗布剤を用いて形成したものからなることを特徴とするバリアフィルム。
【請求項2】
請求項1記載のバリアフィルムのガスバリア層側に少なくともシーラント層を積層した積層体からなることを特徴とするバリア性積層材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−160515(P2007−160515A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355788(P2005−355788)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】