説明

バリアブルリラクタンス型レゾルバ

【課題】外部磁束の影響を排除する。
【解決手段】複数のティース51を有し、1相の励磁巻線と2相の検出巻線61,62が設けられたステータ50と、回転に伴い、ティース51とのギャップパーミアンスが正弦波状に変化するように形状が選定されたロータ20とを備えるバリアブルリラクタンス型レゾルバにおいて、ティース51の数を軸倍角当たり6個とし、6個のティース51(T1〜T6)のうち、電気角で180°離れた2個のティースT1,T4に2相の検出巻線のうち、一方の検出巻線61を同じ巻き方向で巻回し、残る4個のティースT2,T3,T5,T6に他方の検出巻線62を巻回する。他方の検出巻線62の巻き方向は電気角で180°離れたティースで同じとし、隣り合うティースで逆とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はティースを有するステータとロータとの間のギャップパーミアンスの変化を利用して回転角度の検出を行うバリアブルリラクタンス型レゾルバに関する。
【背景技術】
【0002】
図8はこの種のレゾルバの従来例として、1相励磁・2相出力のレゾルバの構成概要を示したものである(例えば、特許文献1,2参照)。円環状をなすステータ10の内周にはティース11が周方向に配列されて形成されており、このステータ10内にロータ20が位置されている。ロータ20の形状はステータ10のティース11とロータ20との間のギャップパーミアンスがロータ20の回転に伴い、正弦波状に変化するように構成されている。図8中、30はロータ20が取り付けられているシャフトを示す。
【0003】
レゾルバはこの例では軸倍角1とされ、ステータ10には90°間隔で4個(軸倍角の4倍)のティース11が配置されている。図9に示した表は4個のティース11にT1〜T4の番号を図8に示したように付与して、これらT1〜T4のティースに対する1相の励磁巻線及び2相の検出巻線の巻き方向の一例をCW(時計回り),CCW(逆時計回り)で示したものであり、表では2相の検出巻線のうち、一方の検出巻線をA相巻線とし、他方の検出巻線をB相巻線として表記している。
【0004】
図9の表に示したように、1相の励磁巻線は隣り合うティースで巻き方向が逆になるように全てのティースT1〜T4に巻回される。A相巻線は電気角で180°離れた2個のティースT1,T3に巻き方向が逆になるように巻回され、B相巻線も同様に電気角で180°離れた2個のティースT2,T4に巻き方向が逆になるように巻回される。一つのティースにはA相,B相の一方の相の検出巻線のみが巻回され、検出巻線の巻数は全てのティースにおいて等しくされている。なお、図8中、41はA相巻線を示し、42はB相巻線を示す。励磁巻線の図示は省略している。また、S1,S2はA相巻線41及びB相巻線42によって得られる検出出力(出力電圧)を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−164435号公報
【特許文献2】特開2002−168652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したレゾルバのように、ステータに配置されるティース数が軸倍角の4倍とされた1相励磁・2相出力のレゾルバにおいては、歪のない良好な励磁磁束分布を得るべく、励磁巻線は一般に隣り合うティースで巻き方向が逆になるように、CW,CCW交互に全てのティースに巻回されている。そして、このような励磁巻線の巻き方向の制限から、検出巻線(A相巻線,B相巻線)は電気角で180°離れた2個のティースで巻き方向がCW,CCWと逆になるように巻回されている。
【0007】
しかるに、このような検出巻線の空間的配置と巻き方向では、例えばモータや他の要因により、外部磁束がシャフト30から流れてきて、図8中に矢印で示したように磁束φがロータ20を介してティース11に流れる場合、外部磁束の影響を強く受けてしまうといった問題があった。
【0008】
即ち、ティース11とのギャップパーミアンスがロータ20の回転に伴い変化するので、ロータ20が回転することによりシャフト30からティース11へ流れる外部磁束は変化し、これにより検出巻線に外部磁束に起因する電圧が発生する。
【0009】
図10はロータ20の回転に伴うA相巻線のティースT1及びT3における磁束の変化と、それらが加算された結果を示したものであり、図10より磁束のDC成分はキャンセルされるものの、AC成分は加算により振幅が2倍になることがわかる。
【0010】
同様に、図11はロータ20の回転に伴うB相巻線のティースT2及びT4における磁束の変化と、それらが加算された結果を示したものであり、A相巻線と同様、磁束のDC成分はキャンセルされるものの、AC成分は加算により振幅が2倍になっている。
【0011】
このように、従来の検出巻線の空間的配置と巻き方向では、ロータ20が回転することにより変調された磁束の影響を全て加算してしまう構成となっているため、外部磁束の影響を強く受け、レゾルバの角度精度が低下するといった問題があった。また、特に高速回転において検出出力(出力電圧)に対する影響が顕著となり、これにより例えばレゾルバの検出出力が後段の処理回路(変換回路)の入力範囲を超えてしまうといったことが生じていた。
【0012】
一方、このような外部磁束の影響を排除するためには、電気角で180°離れたティースの検出巻線の巻き方向を同じにすればよいが、この場合、レゾルバとして成立するためには励磁巻線の巻き方向をこれら2つのティースで逆(CWとCCW)にする必要がある。
【0013】
しかしながら、ティース数が軸倍角の4倍のレゾルバで、このような励磁巻線の巻き方向を採用すると、励磁巻線はCWとCW、またはCCWとCCWというように同じ巻き方向が隣り合う箇所ができてしまい、この結果、励磁磁束分布が歪んで大きな誤差が発生する要因となってしまう。
【0014】
この発明の目的はこのような問題に鑑み、外部磁束の影響を排除することができるようにし、かつ励磁巻線の巻き方向を隣り合うティースで逆にすることができるようにしたバリアブルリラクタンス型レゾルバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明によれば、複数のティースを有し、1相の励磁巻線と2相の検出巻線が設けられたステータと、回転に伴い、ティースとのギャップパーミアンスが正弦波状に変化するように形状が選定されたロータとを備えるバリアブルリラクタンス型レゾルバにおいて、ティースの数が軸倍角当たり6個とされ、6個のティースのうち、電気角で180°離れた2個のティースに、2相の検出巻線のうち、一方の検出巻線が同じ巻き方向で巻回され、残る4個のティースに他方の検出巻線が巻回され、他方の検出巻線の巻き方向は電気角で180°離れたティースで同じとされ、隣り合うティースで逆とされる。
【0016】
請求項2の発明では請求項1の発明において、励磁巻線は隣り合うティースで巻き方向が逆になるように6個のティースに巻回される。
【0017】
請求項3の発明では請求項1又は2の発明において、一方の検出巻線と他方の検出巻線の1ティース当たりの巻数の比が1:1/√3とされる。
【0018】
請求項4の発明では請求項1又は2の発明において、一方の検出巻線と他方の検出巻線の1ティース当たりの巻数が等しくされ、変換回路に入力される一方の検出巻線の出力電圧と他方の検出巻線の出力電圧の入力ゲインの比が1:1/√3とされる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、外部磁束の影響を排除することができ、よって外部磁束の影響により角度精度が低下するといった問題やレゾルバの検出出力が処理回路の入力範囲を超えてしまうといった問題を解消することができる。
【0020】
また、ティース数を軸倍角の6倍としたことで、励磁巻線の巻き方向を隣り合うティースで逆にすることができ、これにより歪のない励磁磁束分布を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明によるレゾルバの一実施例の構成概要を示す図。
【図2】図1に示したレゾルバの励磁巻線及び検出巻線(A相,B相)の巻き方向の一例を示す表。
【図3】図1に示したレゾルバにおける外部磁束の影響を説明するためのグラフ(その1)。
【図4】図1に示したレゾルバにおける外部磁束の影響を説明するためのグラフ(その2)。
【図5】図1に示したレゾルバの、レゾルバとしての機能を説明するためのグラフ(その1)。
【図6】図1に示したレゾルバの、レゾルバとしての機能を説明するためのグラフ(その2)。
【図7】レゾルバの検出出力が入力される回路を示すブロック図。
【図8】従来の1相励磁・2相出力のレゾルバの構成概要を示す図。
【図9】図8に示したレゾルバの励磁巻線及び検出巻線(A相,B相)の巻き方向の一例を示す表。
【図10】図8に示したレゾルバにおける外部磁束の影響を説明するためのグラフ(その1)。
【図11】図8に示したレゾルバにおける外部磁束の影響を説明するためのグラフ(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0023】
図1はこの発明による1相励磁・2相出力のバリアブルリラクタンス型レゾルバの一実施例として、軸倍角1のレゾルバの構成概要を示したものである。
【0024】
この例では円環状をなすステータ50の内周には60°間隔で6個のティース51が配列形成されており、即ちティース数は軸倍角の6倍とされている。ステータ50内には図8に示した従来例と同様、シャフト30に取り付けられたロータ20が位置されている。ロータ20の形状は図8におけるロータ20の形状と同じとされている。検出巻線はA相巻線とB相巻線とよりなる。図1中、61はA相巻線を示し、62はB相巻線を示す。なお、励磁巻線の図示は省略している。
【0025】
図2に示した表は6個のティース51にT1〜T6の番号を図1に示したように付与して、これらT1〜T6のティースに対する励磁巻線及び検出巻線(A相巻線、B相巻線)の巻き方向の一例を、前述の図9に示した表と同様に示したものである。
【0026】
図2の表に示したように、1相の励磁巻線は隣り合うティースで巻き方向が逆となるように、CW,CCW交互に全てのティースT1〜T6に巻回されている。A相巻線は電気角で180°離れた2個のティースT1,T4に同じ巻き方向で巻回され、B相巻線は残る4個のティースT2,T3,T5,T6に巻回されている。B相巻線の巻き方向は電気角で180°離れたティースで同じとされ、隣り合うティースで逆とされている。これにより、この例ではティースT2,T3,T5,T6にはCCW,CW交互に巻回されており、ティースT1,T4の巻き方向は共にCWとされている。
【0027】
このように、この例ではティース数を軸倍角当たり6個とすることで、励磁巻線は隣り合うティースで巻き方向が逆になるように全てのティースに巻回することができ、かつ検出巻線(A相巻線、B相巻線)は電気角で180°離れたティースでの巻き方向を同じにすることができるものとなっている。これにより、励磁磁束分布の歪が発生せず、外部磁束の影響を排除できるものとなっている。
【0028】
図3及び図4はこのような検出巻線の空間的配置と巻き方向に対して、外部磁束が例えばシャフト30から流れてきてロータ20を介してティース51に流れる場合の磁束の影響を、前述した図10及び図11と同様、示したものであり、図3はA相巻線のティースT1,T4における磁束の変化と、それらが加算された結果を示し、図4はB相巻線のティースT2,T3,T5,T6における磁束の変化と、それらが加算された結果を示す。
【0029】
図3及び図4よりA相巻線及びB相巻線いずれにおいても、位相が180°ずれた磁束を単純に足し合わせることになり、磁束のAC成分はキャンセルされることがわかる。一方、磁束のDC成分は加算されて残るものの、検出巻線は磁束の変化率を電圧として出力するのでDC成分は電圧として出力されず、よって外部磁束の影響を完全に排除することができる。
【0030】
一方、図5及び図6はレゾルバとしての機能を説明すべく、A相巻線及びB相巻線の出力電圧を各ティースに分けて示したものである。
【0031】
ここで、ロータ20が電気角θ回転した場合のティースT1の出力電圧Vを、
=−cosθ
とすると、A相巻線のもう一方のティースT4の出力電圧Vも、
=−cosθ
で表され、よってA相巻線の出力電圧は、
+V=−2cosθ …(1)
となる。
【0032】
一方、B相巻線のティースT2,T3,T5,T6の出力電圧V,V,V,Vは、
=−Ksin(θ−π/6)
=−Ksin(θ+π/6)
=−Ksin(θ−π/6)
=−Ksin(θ+π/6)
と表される。但し、KはA相巻線に対するB相巻線の巻数比とする。
【0033】
B相巻線の出力電圧は、
+V+V+V=−2K{sin(θ−π/6)+sin(θ+π/6)}
=−(2√3)Ksinθ …(2)
となる。
【0034】
ここで、A相巻線とB相巻線の出力電圧の振幅を同じにするためには、式(1),(2)より、
K=1/√3
とすればよく、即ちA相巻線とB相巻線の1ティース当たりの巻数の比を1:1/√3とすることで、A相巻線によって得られる出力電圧S1(=V+V)とB相巻線によって得られる出力電圧S2(=V+V+V+V)の振幅を一致させることができる。
【0035】
一方、このようにA相巻線とB相巻線の1ティース当たりの巻数を変えるのではなく、同じ巻数とし、後段の変換回路の入力ゲインを変えるようにしてもよい。
【0036】
図7はこの場合の構成を示したものである。A相巻線の出力電圧S1はアンプ71を介して変換回路80に入力され、B相巻線の出力電圧S2はアンプ72を介して変換回路80に入力される。従って、アンプ71とアンプ72のゲインの比を1:1/√3とする。これにより、変換回路80に入力されるA相巻線とB相巻線の出力電圧の振幅を同じにすることができる。
【0037】
以上、軸倍角1の場合を例に、この発明の実施例を説明したが、軸倍角は2以上であってもよく、軸倍角が2以上の場合でも例えば図2の表に示した励磁巻線及び検出巻線の巻き方向を繰り返すことで外部磁束の影響を受けないレゾルバを得ることができる。
【符号の説明】
【0038】
10 ステータ 11 ティース
20 ロータ 30 シャフト
41 A相巻線(検出巻線) 42 B相巻線(検出巻線)
50 ステータ 51 ティース
61 A相巻線(検出巻線) 62 B相巻線(検出巻線)
71,72 アンプ 80 変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のティースを有し、1相の励磁巻線と2相の検出巻線が設けられたステータと、回転に伴い、前記ティースとのギャップパーミアンスが正弦波状に変化するように形状が選定されたロータとを備えるバリアブルリラクタンス型レゾルバであって、
前記ティースの数は軸倍角当たり6個とされ、
前記6個のティースのうち、電気角で180°離れた2個のティースに、前記2相の検出巻線のうち、一方の検出巻線が同じ巻き方向で巻回され、残る4個のティースに他方の検出巻線が巻回され、
前記他方の検出巻線の巻き方向は電気角で180°離れたティースで同じとされ、隣り合うティースで逆とされていることを特徴とするバリアブルリラクタンス型レゾルバ。
【請求項2】
請求項1記載のバリアブルリラクタンス型レゾルバにおいて、
前記励磁巻線は隣り合うティースで巻き方向が逆になるように前記6個のティースに巻回されていることを特徴とするバリアブルリラクタンス型レゾルバ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のバリアブルリラクタンス型レゾルバにおいて、
前記一方の検出巻線と前記他方の検出巻線の1ティース当たりの巻数の比が1:1/√3とされていることを特徴とするバリアブルリラクタンス型レゾルバ。
【請求項4】
請求項1又は2記載のバリアブルリラクタンス型レゾルバにおいて、
前記一方の検出巻線と前記他方の検出巻線の1ティース当たりの巻数が等しくされ、
変換回路に入力される前記一方の検出巻線の出力電圧と前記他方の検出巻線の出力電圧の入力ゲインの比が1:1/√3とされていることを特徴とするバリアブルリラクタンス型レゾルバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−210121(P2012−210121A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75340(P2011−75340)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】