説明

バリアントドメイン抗体

本発明は、ドメイン抗体に関し、該ドメイン抗体は、その結合の効力またはレベルが改良されるように改変されたフレームワーク領域を有する。特に、本発明は、フレームワーク配列に変更が加えられているTNFαと結合するドメイン抗体、およびこれらのドメイン抗体を含む構築物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
出願データ
本出願は、2008年8月14日に出願されたオーストラリア特許出願第2008904175号、2008年8月14日に出願された米国特許出願第61/089019号および2009年5月13日に出願されたオーストラリア特許出願第2009902142号に関連し、これらからの優先権を主張し、これらの特許出願のそれぞれの内容全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、改変されたフレームワーク領域を有するドメイン抗体に関する。特に、本発明は、TNFαと結合するドメイン抗体と、これらのドメイン抗体を含む構築物とに関する。
【背景技術】
【0003】
抗体に由来する、天然に存在する最小の機能的結合成分は、「ドメイン抗体」(または「dAb」)としても知られる単一可変ドメインである。これは、抗体の重鎖または軽鎖の可変ドメインであり得る(「VH」または「VL」とよばれる)。単離された可変ドメインの機能的な能力は、マウスVH遺伝子のクローン化されたレパートリーが細菌において発現され、1つまたは複数の抗原と特異的に相互作用することが示されたときに初めて証明された(Wardら、1989)。
【0004】
単一可変様ドメイン(single variable-like domain)は、Fc等価定常ドメインに装填されてラクダ(VHHとして知られる)および軟骨魚(例えばサメにおけるV-NAR)で天然に存在し(Hamers-Castermanら、1993、DooleyおよびFlajnik、2005、ならびにStreltsovら、2004)、相補的VLドメインなしで同族抗原(cognate antigen)と結合できる(Muyldermansら、1994)。ヒトでは、天然におけるこのような単鎖免疫グロブリン分子の存在は、重鎖と軽鎖のバランスが取れていない合成に関連し、多発性骨髄腫のような悪性障害に付随する(Jones、1848)。
【0005】
可変遺伝子鎖シャッフリング法およびファージディスプレイのような選択法を用いるコンビナトリアルライブラリーの開発により、そこから種々の抗原に特異的なヒト可変ドメインが選択されているヒトdAbライブラリーを作製することが可能になった。得られたdAbは、通常は相補的に対形成されるヒトドメインを単離することに付随する凝集の問題を回避した。さらに、ヒト可変ドメインの利用により可能な低い免疫原性は、治療上の応用のためのdAbを開発することを可能にした(Holtら、2003)。
【0006】
ドメイン抗体は、これらが、疾患に関連する分子を特異的に標的にするように工学的に改変し得るので、治療薬のための良好な候補である。これらは、細菌、酵母および哺乳動物系で良好に発現されるというさらなる利点を有する。サイズが小さいので(11kDa〜15kDaの範囲)、ドメイン抗体は、増進された組織透過を有する可能性がある。さらに、治療上重要な血清半減期は、ドメイン抗体構築物中に工学的に作製された(WO04/058820A2)。
【0007】
腫瘍壊死因子アルファすなわちTNFαは、免疫調節、感染および炎症において中心的な役割を演じる多機能サイトカインである。TNFαの通常のレベルは免疫恒常性にとって重要であるが、TNFαの過剰生成は、関節リウマチ、クローン病および乾癬を含む多数の疾患の病因に関連づけられている。過剰のTNFαの活性を遮断することが、効果的な治療ストラテジーとして確立されている。
【0008】
ヒトTNFαを標的にするドメイン抗体について記載されている。これらは、ヒトVL dAb(WO2005/035572)、VHH由来dAb(WO2004/041862)、およびTNFα標的ペプチドを提示するための足場として用いられるVHドメインのフレームワークからなるTNFαdAb(Qinら、2007)を含む。
【0009】
抗体およびdAbの抗原結合親和性を改良することに向けられる工学的な努力は、より一般的には、抗原と特異的に接触する超可変領域すなわち相補性決定領域(「CDR」として知られる)に焦点を当てている。CDRは、可変ドメインの表面上に曝露されて抗原結合のための相補性表面を提供する伸長βループを形成する。2つのβシートに折りたたまれる保存配列の4つのフレームワーク領域によって3つのCDRが挟まれている。フレームワーク残基は、CDRループを装填するための足場を提供し、CDRループの位置決めをすることにより、抗原結合に直接的または間接的に影響することもある(Fischmannら、1991およびTulipら、1992)。いくつかのフレームワーク残基は、フレームワーク残基とCDR残基との間に原子間相互作用を形成することにより、CDRループの高次構造を直接変更し得る(Kettleboroughら、1991、FooteおよびWinter、1992ならびにXiangら、1995)。
【0010】
本発明は、抗体工学の分野に関係する。本発明は、具体的には、改良された機能を有する特定のフレームワークバリアントを含むドメイン抗体について記載する。本発明は、ヒトTNFαを標的にし、治療上の応用のためのこのようなドメイン抗体を開発するためのドメイン抗体の開発にさらに関係する。
【0011】
本明細書において著者らが言及する参考文献の詳細な一覧が本記載の最後にアルファベット順にまとめられている。
【0012】
本明細書における任意の従来技術についての言及は、この従来技術がオーストラリアにおける共通一般知識の一部分を形成するとの認識でも、いかなる形態での示唆でもなく、このような認識または示唆としてみなされるべきでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】オーストラリア特許出願第2008904175号
【特許文献2】米国特許出願第61/089019号
【特許文献3】オーストラリア特許出願第2009902142号
【特許文献4】WO04/058820A2
【特許文献5】WO2005/035572
【特許文献6】WO2004/041862
【特許文献7】WO2007/087673
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/0101005号
【特許文献9】WO2000/023471
【特許文献10】WO08/072075A2
【特許文献11】WO00/63243A1
【特許文献12】WO98/56906A1
【特許文献13】米国特許第6,818,418号
【特許文献14】WO96/04378A2
【特許文献15】WO99/16873A1
【特許文献16】WO06/040129A2
【特許文献17】米国特許第7,166,697号
【特許文献18】WO90/07861
【特許文献19】WO92/01047
【特許文献20】WO88/08453
【特許文献21】WO90/05785
【特許文献22】WO99/02671
【特許文献23】米国特許第5,580,734号
【特許文献24】米国特許第5,641,670号
【特許文献25】米国特許第5,733,746号
【特許文献26】米国特許第5,733,761号
【特許文献27】米国特許第5,851,198号
【特許文献28】米国特許第5,839,446号
【特許文献29】WO98/53847
【特許文献30】米国特許第4,309,989号
【特許文献31】米国特許第4,767,402号
【特許文献32】WO94/16970
【特許文献33】WO98/35888
【特許文献34】米国特許第4,668,218号
【特許文献35】EP237507
【特許文献36】WO97/25086
【特許文献37】WO94/08552
【特許文献38】米国特許第5,458,135号
【特許文献39】WO94/06498
【特許文献40】米国特許第5,404,871号
【特許文献41】WO97/22376
【特許文献42】米国特許第4,239,754号
【特許文献43】米国特許第4,925,673号
【特許文献44】米国特許第5,879,681号
【特許文献45】米国特許第5,871,753号
【特許文献46】米国特許第5,514,670号
【特許文献47】米国特許第5,849,695号
【特許文献48】米国特許第5,814,599号
【特許文献49】米国特許第3,773,919号
【特許文献50】米国特許第5,770,222号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Kabatら、「Sequence of Proteins of Immunological Interest」、US Department of Health and Human Services
【非特許文献2】Remington’s Pharmaceutical Sciences、A.Osol
【非特許文献3】「Drug Permeation Enhancement」;Hsieh, D. S.編中のJungingerら、59〜90頁、Marcel Dekker, Inc. New York 1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、抗原結合効率、中和効力またはその他の特徴を改良するために、dAbのフレームワーク領域に1つまたは複数の置換が加えられているdAbに関する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の態様において、本発明は、未改変dAbのフレームワーク配列が配列番号1に示すとおりであり、改変dAbがD1A、D1Y、D1K、I2L、I2P、Q3Y、Q3F、Q3D、Q3H、S7A、S7G、S7D、S7Q、S7N、S9A、S10A、S10L、L11Q、S12A、S12L、S12V、S12T、S12Q、S14A、D17Y、D17H、R18D、R18S、T20Y、T22A、T22Y、T22Q、T22H、T22K、Q38H、P40D、K42A、K42S、K42H、P44L、K45S、K45L、K45Y、K45D、K45H、I48A、Y49S、Y49D、Y49H、G57A、G57S、G57L、G57Y、G57Q、G57H、G57K、P59A、P59S、P59D、P59H、S60A、S60G、S60L、S60Y、S60D、S60Q、S60H、S60P、S60K、R61H、F62Y、T69D、D70Q、L79A、L79G、L79S、L79Y、L79V、L79D、L79Q、L79H、L79K、F83A、F83S、F83L、F83Y、F83Dおよびそれらの保存的置換ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの置換を含む、改変dAbを提供する。
【0017】
第2の態様において、本発明は、フレームワーク領域中の少なくとも1つのアミノ酸が置換された配列番号1を有し、配列番号1のdAbと比較して改良されたTNFα中和効力を有する、TNFαと結合するdAbを提供する。
【0018】
第3の態様において、本発明は、フレームワーク領域中の少なくとも1つのアミノ酸が置換された配列番号1を有し、配列番号1のdAbと比較して改良されたTNFα結合および/または改良されたタンパク質発現レベルを有する、TNFαと結合するdAbを提供する。
【0019】
第4の態様において、本発明は、フレームワークが3位、7位、12位、60位、79位、83位およびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの位置にて少なくとも1つのアミノ酸置換を含むように改変されているVLフレームワークアクセプター配列を含むVLドメイン抗体を提供する。
【0020】
第5の態様において、本発明は、本発明の第1、第2または第3の態様のdAbをコードする核酸分子を提供する。
【0021】
第6の態様において、本発明は、本発明の第5の態様の核酸分子を含む形質転換細胞を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】Y49バリアントのTNFα結合ELISAデータを示す図である。49位に置換を有するバリアントの結合の結果を示すTNFα結合ELISAの代表的なヒストグラム。
【図2】L929中和アッセイのハイスループット5点フォーマットを用いて得られた代表的なTNFα中和データを示す図である。
【図3】フェリチンdAb Fcバリアントのフェリチン結合ELISAデータを示す図である。凡例において、「Fe dAb Fc」は、フェリチンdAb Fcタンパク質を表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、抗原結合効率、中和効力またはその他の特徴を改良するために、dAbのフレームワーク領域に1つまたは複数の置換が加えられているdAbに関する。
【0024】
第1の態様において、本発明は、未改変dAbのフレームワーク配列が配列番号1に示すとおりであり、改変dAbがD1A、D1Y、D1K、I2L、I2P、Q3Y、Q3F、Q3D、Q3H、S7A、S7G、S7D、S7Q、S7N、S9A、S10A、S10L、L11Q、S12A、S12L、S12V、S12T、S12Q、S14A、D17Y、D17H、R18D、R18S、T20Y、T22A、T22Y、T22Q、T22H、T22K、Q38H、P40D、K42A、K42S、K42H、P44L、K45S、K45L、K45Y、K45D、K45H、I48A、Y49S、Y49D、Y49H、G57A、G57S、G57L、G57Y、G57Q、G57H、G57K、P59A、P59S、P59D、P59H、S60A、S60G、S60L、S60Y、S60D、S60Q、S60H、S60P、S60K、R61H、F62Y、T69D、D70Q、L79A、L79G、L79S、L79Y、L79V、L79D、L79Q、L79H、L79K、F83A、F83S、F83L、F83Y、F83Dおよびそれらの保存的置換ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの置換を含む、改変dAbを提供する。
【0025】
用いられる3文字コードにおいて、最初の文字は、未改変dAb構築物中のアミノ酸を示し、最後の文字は、置換アミノ酸を示し、真ん中の数字は、残基の位置を示す。例えば、S60Aは、60位にて単一置換を有するdAbバリアントであって、未改変dAb中のセリンがアラニンに置き換えられたバリアントを表す。未改変dAbのアミノ酸位置についての本明細書での言及は、免疫学的対象のタンパク質の配列のKabatデータベース(「Sequences of Proteins of Immunological Interest」; US Department of Health and Human Services)で定義されるアミノ酸の番号付を参照する。Kabat番号付けは、当該技術分野において、典型的に、「Kabat規則」とよばれる。複数のアミノ酸置換を含む本発明に記載されるバリアントは、「_」により分けられた一連の3文字コードにより表される。例えば、S60A_F83Yは、未改変dAbの60位および83位で見出されるセリンおよびフェニルアラニンがそれぞれアラニンおよびチロシンに置き換えられた2重置換を含むdAbバリアントである。
【0026】
配列番号1に示す配列において、フレームワーク領域は、1〜23、35〜49、57〜88および98〜108の残基である。
【0027】
本発明の種々の形態において、改変ドメイン抗体は、L79G、L79S、L79Y、L79K、L79D、L79A、L79Q、L79VおよびL79Hからなる群より選択される置換;ならびに/またはS60G、S60A、S60D、S60L、S60H、S60Q、S60Y、S60PおよびS60Kからなる群より選択される置換;ならびに/またはS12T、S12L、S12V、S12AおよびS12Qからなる群より選択される置換;ならびに/またはF83Y、F83L、F83A、F83SおよびF83Dからなる群より選択される置換;ならびに/またはP59A、P59S、P59DおよびP59Hからなる群より選択される置換;ならびに/またはG57S、G57Q、G57H、G57A、G57L、G57YおよびG57Kからなる群より選択される置換;ならびに/またはQ3F、Q3Y、Q3HおよびQ3Dからなる群より選択される置換;ならびに/またはS7A、S7N、S7G、S7QおよびS7Dからなる群より選択される置換を含む。
【0028】
第2の態様において、本発明は、フレームワーク領域中の少なくとも1つのアミノ酸が置換された配列番号1を有し、配列番号1のdAbと比較して改良されたTNFα中和効力を有する、TNFαと結合するdAbを提供する。
【0029】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態において、置換は、D1A、D1Y、D1K、I2L、I2P、Q3F、Q3Y、Q3D、Q3H、S7A、S7D、S7Q、S7G、S7N、S9A、S10A、S10L、S12A、S12L、S12Q、S12V、S12T、S14A、R18D、T22A、K42A、K45S、Y49H、G57S、G57Q、G57H、P59A、P59S、P59D、S60G、S60A、S60L、S60D、S60Q、S60H、F62Y、L79G、L79S、L79Y、L79D、L79K、F83A、F83L、F83S、F83Yおよびその保存的置換ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0030】
本発明の種々の形態において、ドメイン抗体は、L79G、L79S、L79Y、L79KおよびL79Dからなる群より選択される置換;ならびに/またはS60G、S60A、S60D、S60L、S60HおよびS60Qからなる群より選択される置換;ならびに/またはS12T、S12L、S12V、S12AおよびS12Qからなる群より選択される置換;ならびに/またはF83Y、F83L、F83AおよびF83Sからなる群より選択される置換;ならびに/またはP59A、P59SおよびP59Dからなる群より選択される置換;ならびに/またはG57S、G57QおよびG57Hからなる群より選択される置換;ならびに/またはQ3F、Q3Y、Q3HおよびQ3Dからなる群より選択される置換;ならびに/またはS7A、S7N、S7G、S7QおよびS7Dからなる群より選択される置換を含む。
【0031】
ドメイン抗体は、複数の置換を含んでよい。これらの複数の置換は、S60A_F83Y、Q3Y_S12L、S12L_S60A_L79Y_F83Y、S7Q_S60A、S7Q_S12L、Q3Y_S7Q、S12L_L79Y_F83Y、Q3Y_S60A、S12L_S60A_F83Y、S7Q_L79Y_F83Y、Q3Y_S12L_S60A_F83Y、Q3Y_S7Q_S12L_S60A、Q3Y_S60A_F83Y、Q3Y_S7Q_S12L、Q3Y_S7Q_S12L_L79Y、Q3Y_S12L_L79Y、Q3Y_L79Y、S7Q_S12L_S60A_F83Y、L79Y_F83Y、Q3Y_S12L_L79Y_F83Y、S60A_L79Y_F83Y、S7Q_S12L_L79Y_F83Y、Q3Y_S7Q_S12L_S60A_L79Y_F83Y、Q3Y_S7Q_S60A、Q3Y_S7Q_S60A_L79YおよびS12L_S60A_L79Yからなる群より選択してよい。
【0032】
第3の態様において、本発明は、フレームワーク領域中の少なくとも1つのアミノ酸が置換された配列番号1を有し、配列番号1のドメイン抗体と比較して改良されたTNFα結合および/または改良されたタンパク質発現レベルを有する、TNFαと結合するdAbを提供する。
【0033】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態において、置換は、S7A、L11Q、D17Y、D17H、R18S、T20Y、T22Y、T22Q、T22H、T22K、Q38H、P40D、K42S、K42H、P44L、K45L、K45Y、K45D、K45H、I48A、Y49S、Y49D、Y49H、G57A、G57S、G57L、G57Y、G57Q、G57H、G57K、P59S、P59D、P59H、S60A、S60L、S60Y、S60D、S60Q、S60H、S60P、S60K、R61H、T69D、D70Q、L79A、L79S、L79Y、L79D、L79Q、L79H、L79K、F83A、F83Y、F83Dおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0034】
置換は、S7A、Y49H、G57S、G57Q、G57H、P59S、P59D、S60A、S60L、S60D、S60Q、S60H、L79S、L79Y、L79D、L79K、F83A、F83Yおよびそれらの組み合わせからなる群より選択されるのが好ましい。
【0035】
第4の態様において、本発明は、フレームワークが3位、7位、12位、60位、79位、83位およびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの位置にて少なくとも1つのアミノ酸置換を含むように改変されているVLフレームワークアクセプター配列を含むVLドメイン抗体を提供する。
【0036】
本発明のこの態様の好ましい実施形態において、ドメイン抗体は、3位のY、7位のQ、12位のL、60位のA、79位のY、83位のYおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのフレームワーク置換を含む。
【0037】
上記のように、第4の態様における参照位置番号は、Kabat番号付け規則を用いる。当業者に周知のように、VLおよびVHフレームワークアクセプター配列を提供するいくつかのデータベースが容易に利用可能である。これらのデータベースの例は、Kabat(www.kabatdatabase.com/;JohnsonおよびWu、2001)、IMGT(http://imgt.cines.fr/;Lefranc、2003)およびVBase(http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/;Retterら、2005)データベースを含む。
【0038】
好ましい実施形態において、dAbは、Fc領域またはシステイン置換を有するかもしくは有さない、WO2007/087673(その開示は参照により組み込まれる)に記載されるような改変Fc領域に付着する。改変Fcに付着した未改変抗TNFαdAbの配列を、配列番号2に示す。切断型CH1と改変ヒンジが、XEPKSZDKTHTCPPCPA(配列番号3)(式中、Xはバリン、ロイシンまたはイソロイシンであり、Zは存在しないかまたはシステイン以外のアミノ酸である)であることがさらに好ましい。ある実施形態において、改変Fcは、配列番号6または配列番号7である。
【0039】
dAbが他のドメインに付着している場合、タンパク質全体を、本明細書において「dAb構築物」という。
【0040】
第5の態様において、本発明は、本発明の第1、第2または第3の態様のdAbをコードする核酸分子を提供する。
【0041】
第6の態様において、本発明は、本発明の第5の態様の核酸分子を含む形質転換細胞であって、該細胞が核酸分子を含む細胞を提供する。
【0042】
形質転換細胞は、原核細胞または真核細胞のいずれであってもよい。細胞が細菌細胞である場合、細菌自体を、その開示が本明細書に参照により組み込まれる米国特許出願公開第2005/0101005号およびWO2000/023471に記載されるように治療用に用いてよい。
【0043】
ある実施形態において、核酸分子は、配列番号8〜配列番号708に示す配列を有する。
【0044】
本発明は、フレームワーク領域において置換が加えられている改良dAbについて記載する。このことは、特定のフレームワークの位置が効力およびその他の特徴を改良するという重要性を強調する。本発明のdAbは、特定の位置での置換が、1より多いアミノ酸クラスのアミノ酸を用いてなされる場合に、改良された機能を示す。本発明は、可変免疫グロブリンドメインにおける1位、3位、7位、12位、57位、59位、60位、79位および83位(Kabat番号付け規則を用いる)にて利用されるアミノ酸をよく考慮することの価値を教示する。これらの位置は、本明細書において「ロバストな」という。
【0045】
さらに別の態様において、改良dAbは、VL dAbにおける9位、10位、12位、14位、18位、42位、79位および83位でのバリアントである。これらは、記載されるフレームワーク置換が、その原子がこれらのCDR残基から6オングストローム(6Å)を超えて存在する残基にて生じるdAbバリアントである。従来技術は、CDR残基から空間的に離れたこれらの残基が、抗原と直接相互作用しそうになく、よって、dAbとその抗原との相互作用に影響しそうにないことを教示する。
【0046】
本明細書に記載する場合、「ドメイン抗体」または「dAb」とは、ある所定の抗原と特異的に結合する単一免疫グロブリン可変ドメインのことをいう。dAbは、いずれのその他のドメインからも独立して抗原と結合する。しかし、この用語が用いられる場合、dAbは、dAbによる抗原結合のために必要とされない他のドメインとのホモ多量体またはヘテロ多量体として存在でき、すなわち、dAbは、さらなるドメインから独立して抗原と結合する。dAbは、重鎖可変ドメイン(VH)または軽鎖可変ドメイン(VL)であってよい。dAbは、抗体分子において見出される多くのドメインのうちの1つである1つの単一可変ドメインを表す。本発明のdAbはVLであり、さらに、これはカッパサブクラスのものである(Vκ)。
【0047】
ドメイン抗体またはドメイン抗体構築物は、抗体ではない。ドメイン抗体またはdAbは、抗体内の1つのドメインである。「抗体」は、4量体多重ドメイン糖タンパク質である。抗体は、免疫グロブリン鎖の同一の2つの対からなり、それぞれの対は1つの軽鎖と1つの重鎖を有する。カッパまたはラムダのサブクラスであり得る(VκまたはVλ)免疫グロブリン軽鎖は、2つのドメイン、すなわちN末端可変ドメイン(VL)とC末端にて1つの定常ドメイン(CL)を含むが、重鎖は、4つのモジュラードメイン、すなわちN末端可変ドメイン(VH)と、その後に続く3つの異なる定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3)を含む。軽鎖および重鎖の可変ドメインは一緒に、抗原との結合を担う。抗体の抗原結合表面は、2つの可変ドメインにより提供されるが、dAbの抗原結合表面は、dAbの1つの単一ドメイン内に存在する。本明細書に記載される改良dAbが、その抗原結合表面が2つの可変ドメインのうちの1つにのみ完全に含まれる抗体分子のサブセットに関連し得ることは、本発明の範囲内である。
【0048】
単離されているかまたはされていないdAb構築物または抗体内のドメイン抗体は、3つの超可変領域または相補性決定領域(またはCDR)で分けられた4つの「フレームワーク」領域からなる。可変ドメインにおけるフレームワーク領域およびCDRの範囲は、定義されている(Kabatら、「Sequence of Proteins of Immunological Interest」、US Department of Health and Human Servicesを参照されたい)。種々の軽鎖および重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されている。フレームワーク残基は、CDRを位置決めして支持する足場を形成し、CDRが次いで、抗原特異性および結合能力を決定する。CDRは、抗原結合を主に担う。各重鎖および軽鎖のCDRは、典型的に、CDR1、CDR2およびCDR3とよばれ、N末端から開始して逐次的に番号付けされ、特定のCDRが存在する鎖によっても典型的に同定される。つまり、VL CDR1は、軽鎖の可変ドメインからのCDR1である。
【0049】
本発明で記載される場合、「フレームワークバリアント」とは、本明細書において、未改変配列中の1つまたは複数のアミノ酸残基の置換により、未改変の可変ドメインまたはdAbからアミノ酸配列が異なる可変ドメインまたはdAbのことをいう。本発明は、フレームワークバリアントについて記載する。バリアントは、フレームワーク領域およびCDRがどのように定義されるかに関係なく、フレームワーク領域内にある。例えば、定義がKabat規則の配列に基づくアラインメント、またはChothiaの構造に基づく定義、または抗体免疫グロブリンドメインのアラインメントをT細胞受容体ドメインと統一するIMGTおよびAHoスキームを利用するかである(Kabatら、1983、ChothiaおよびLesk、1987、Lefrancら、2003ならびにHoneggerおよびPluckthun、2001)。本発明を記載するために用いられるアミノ酸残基の番号付けは、Kabat規則により定義されるものに従う。
【0050】
本明細書で用いる場合、「タンパク質」および「ポリペプチド」は、交換可能に用いられ、アミノ酸残基の鎖についての言及を含む。
【0051】
本明細書で言及するアミノ酸は、アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リジン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、スレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)およびバリン(V)と記載される。
【0052】
アミノ酸「置換」とは、未改変タンパク質配列中の元来のアミノ酸を、タンパク質配列中の同じ位置で第2のアミノ酸により置き換えることをいう。本発明のフレームワークバリアントは、置換バリアントである。つまり、未改変の可変ドメインまたはdAbの特定の残基またはアミノ酸は、その他の19の天然に存在するアミノ酸の1つで置き換えられる。この置換は、ポリペプチドまたはタンパク質配列の長さを変更しない。本明細書において記載されるバリアントは、ポリペプチドの長さが変更され得る挿入または欠失バリアントではない。
【0053】
置換は、元来のアミノ酸と第2のまたは置き換わるアミノ酸とが類似の化学的および/または物理的特性(例えば電荷、構造、極性、疎水性、親水性)を有する場合に、「保存的」であるとみなされる。それ自体として、保存的置換はタンパク質の活性を実質的に変更しない。機能的に類似のアミノ酸を与える保存的置換は、当該技術分野において周知である。以下のクラスはそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:
(1)A、GおよびS
(2)N、Q、S、T、Y、K、R、H、DおよびE
(3)Q、N
(4)D、E
(5)K、R、H
(6)A、V、L、I、P、F、W、M、C、G
(7)Y、F、W
(8)C、SおよびT。
【0054】
本明細書で言及するタンパク質の「ロバストな」残基または位置は、保存的アミノ酸として上記で定義される1より多いアミノ酸クラスのアミノ酸に置換でき、それでもまだ機能を保持する残基または位置のことである。
【0055】
用語「ホットスポット」は、変動が増加する部位である可変ドメインのCDRまたはフレームワーク領域のタンパク質配列の一部分を意味する。CDRは、それら自体が高頻度可変性の領域であるとみなされるが、本発明においては、特定の部位またはホットスポットが、ある種の置換変異を受けるフレームワーク領域中に存在できることがわかった。
【0056】
本発明の改良dAbは、免疫グロブリン可変軽鎖ドメインまたはVLのものである。これは、Vκサブクラスのものである。本発明はdAbのフレームワーク領域中のアミノ酸の置換に関し、かつこれはCDRであり、抗原結合表面を含むフレームワーク残基ではないので、本発明に記載されるdAbは、全ての抗原特異性のVL dAbに広くあてはめることができる。抗原は、ヒトもしくは非ヒトタンパク質、核酸、脂質または炭水化物であってよい。
【0057】
本発明の改良dAbは、VκサブクラスのVLドメインのものである。免疫グロブリン可変軽鎖ドメインは、VκまたはVλのサブクラスのいずれかものであってよい。改良dAbを、ラムダサブクラスのVL dAbにもあてはめ得ることは、本発明の範囲内である。
【0058】
本発明で提供される改良dAbは、ヒトdAbである。つまり、未改変dAbの配列は、ヒト軽鎖可変ドメインのうちの1つである。改良dAbは、ヒト化dAb、CDR移植dAb、合成ヒト化(synhumanised)dAb、霊長類化dAb、ラクダ由来抗体フラグメントおよびそれらのバリアントにあてはめることもできる。
【0059】
本発明の改良dAbバリアントは、単離して用いても、例えばタンパク質の一部分のみを含むその他のドメインと付着させてもよい。本発明の好ましい実施形態において、改良dAbは、ヒトまたは非ヒト霊長類の重鎖免疫グロブリン定常領域に付着する。ヒトまたは非ヒト霊長類重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgEおよびIgA(ならびにそれらのサブタイプ)からなる群より選択してよい。
【0060】
改良dAbは、その他のドメインと付着してよい。その他の付着されるドメインは、別のdAb、Fabフラグメント、scFvドメイン、ラクダ、サメおよびいくつかの魚類に由来するVHHまたはV-NARドメインのような抗体ベースまたは抗体様のドメインであってよい。その他のドメインは、天然または人工的結合特異性を有する非抗体タンパク質ドメインであってよい。改良dAbに付着し得る天然結合特異性を有する天然に存在するタンパク質ドメインは、TNF受容体スーパーファミリーのもの、例えばTNFRI(p55)、TNFRII(p75)、95、DCR1、DCR2、DR3、DR4、DR5、DR6、EDAR、NGFR、RANK、LTβR、FN14、HVEM、CD27、CD30、CD40、4-1BB、OX40、GITR、BCMA、TACI、BAFFR、XEDAR、TROY、RELTのような受容体、ならびにオステオプロテジェリンおよびDCR3のような可溶性受容体の細胞外ドメインを含む。さらに他のものは、成長ホルモン、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、インターロイキン(IL-2、-4、-5、-6、-7、-10、-12、-13、-14、-15、-16、-18、-21、-23、-31)、塩基性FGF、IGF-1、ケラチノサイト成長因子、インスリン、LIF、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、EpoおよびTPO、リンホトキシン、TRAIL、TGF-β、VEGF-2、レプチン、インターフェロン(IFN-α、-βおよび-γ)、副甲状腺ホルモン、ドルナーゼアルファ、TACE、トロンビン、シグナル伝達タンパク質のPDZモジュール、接着分子および酵素を含む。人工的に導かれた結合特異性を有するタンパク質ドメインは、トランスフェリンに基づく足場(Transbody;WO08/072075A2)、プロテインAのZドメインからの3ヘリックス束(Affibody(登録商標);WO00/63243A1)、ヒトC型レクチンドメイン(Tetranectin;WO98/56906A1)、III型フィブロネクチン第10ドメイン(AdNectin(商標);米国特許第6,818,418号)、トリプシンインヒビターのKunitz型ドメイン(WO96/04378A2)、アンキリンリピートタンパク質、リポカリン(Anticalin(登録商標);WO99/16873A1)、γクリスタリンまたはユビキチン分子(Affilin(商標);WO06/040129A2)、トリプシンインヒビターII(Microbody)および細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)に由来する免疫グロブリン様ドメインまたはその改変バリアント(Evibody(商標);米国特許第7,166,697号)を含む。さらに、ポリペプチド中に1より多いドメインを一緒に付着させることは、2つ以上のアミノ酸残基を含むリンカーポリペプチドを用いて達成できる。このようなリンカーポリペプチドは、当該技術分野において周知である(Holligerら、1993を参照されたい)。
【0061】
別の態様において、改良dAbは、血清アルブミンのようなタンパク質またはポリマー(例えばPEG)に複合させてよい。代わりに、dAbは、治療薬の共有結合の存在により免疫複合されてよく、天然もしくは改変シュードモナス(Pseudomonas)またはジフテリア毒素、カリチアマイシンのような細胞毒、それら自体が薬理学的組成物を含有する被包化剤(例えばリポソーム)、放射活性剤ならびにその他の標識(例えば酵素レポーター)を含み得る。
【0062】
本発明は、dAb構築物に改良された機能を与えるdAb中の特定のアミノ酸置換に関する。これらの変異を生成するために用いる方法は、広範囲でありさまざまである。本実施形態において用いられる方法は、採用し得る多くの経路のうちの1つである。この場合、それにより、本発明の改良dAbが含む置換は、ある所定のヒト可変ドメインまたはドメイン抗体に直接組み込まれる。置換を、分子生物学の標準的な技術を用いて直接導入して、このようなDNA配列を調製してよい。部位特異的突然変異誘発およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術による置換は、当該技術分野において周知である。例えば、予め存在する可変領域を用いるもののようなオリゴヌクレオチド特異的合成を用いてよい(Jonesら、1986、Verhoeyenら、1988およびRiechmannら、1988)。T4 DNAポリメラーゼを用いるギャップヌクレオチドの酵素による充填を用いてよい(Queenら、1989およびWO90/07861)。この方法論は、少数のバリアントを産生する。1回に生成できるバリアントの数をさらに増やすために、エラープローンPCRを用いて、置換バリアントの小さいライブラリーを創出することができる(CadwellおよびJoyce、1992、Hawkinsら、1992、Fromantら、1995)。高い多様性のライブラリーを作製するための方法は、可変遺伝子間または代わりに可変遺伝子ライブラリー間で組換えを行うことができるDNAシャッフリングを含む(Stemmerら、1994、Harayama、1998、Zhaら、2003)。鎖シャッフリングは、可変重鎖および軽鎖の逐次的な置き換えを含む代替法である(Kangら、1991bおよびMarks、2004)。dAbの大きいライブラリーが、ある所定の標的に対する選択のために用いられる場合、再編成された可変遺伝子を用いる天然ライブラリーを、ヒトB細胞から採集できるか(Marksら、1991およびVaughanら、1996)、または半合成ライブラリー(Knappickら、2000)を含む合成ライブラリーを、オリゴヌクレオチドクローニングヒト免疫グロブリン可変遺伝子から調製できる(HoogenboomおよびWinter、1992、Barbasら、1992、Nissimら、1994、Griffithsら、1994、ならびにde Kruifら、1995)。
【0063】
本発明の改良dAbは、親和性成熟技術により同定してよい。当業者は、抗体およびdAb、Fab、scFvおよびそれらの変形のような抗体ベースのフラグメントを親和性成熟させるために用いられる多数の分子工学的なアプローチおよび方法に詳しいと考えられる。典型的には、CDRは、ランダム突然変異誘発(Jacksonら、1995、van den Beuckenら、2003、Zahndら、2004、Leeら、2004、Yauら、2005)または標的突然変異誘発(Yeltonら、1995、Schierら、1996、Thompsonら、1996、Boderら、2005、Hoら、2005、Yoonら、2006)において標的にされる。標的突然変異誘発法の例は、軽鎖および重鎖の個別のCDRが逐次的に改変され、その後、最良の候補同士が組み合わされる2ステッププロセスを含むCDRウォーキングである(Yangら、1995、Wuら、1998)。代わりに、変異を配列全体にわたって作製して、例えばCDRおよびフレームワークホットスポットを同定できる。このことは、エラープローンPCR(van den Beuckenら、2003、Zhangら、2005、Thomら、2006、Finlayら、2009)またはミューテーター細菌株内での抗体遺伝子のin vivo伝達(Irvingら、1996およびLowら、1996、Coiaら、2001)のようなin vitro DNA増幅により達成できる。改良のための特異的またはホットスポット残基のターゲティングは、アラニンスキャニング(CunnighamおよびWells、1989、Ashkenaziら、1990、Chatellierら、1995、Weissら、2000、Koideら、2007)または特異的位置での側鎖官能基の役割が同定されるホモログショットガンスキャニング(Vajdosら、2002、Muraseら、2003、Palら、2005)のような技術を用いて実験的に決定できる。
【0064】
抗体:抗原複合体の3次元構造が入手可能である場合(例えばx線結晶構造解析により得られる)、アミノ酸同士の分子相互作用は、変異のためのアミノ酸残基の選択を促進できる。アミノ酸置換が、機能を改良するために抗体の3次元構造を変更できることが知られている(KastおよびHilvert、1997、Chenら、1999、Valjakkaら、2002、Barderasら、2008)。本発明に記載されるドメイン抗体のような抗体およびそのフラグメントの3次元モデルは、通常、入手可能であり、当業者によく知られている。選択された候補配列の可能性のある3次元高次構造を明らかにして示すコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べることにより、標的抗原の認識において役割を演じる可能性のある残基の分析が可能になる。
【0065】
改良dAbは、当業者に知られるディスプレイ技術を用いて、標的抗原に対して生成して選択することもできる。例えば、バクテリオファージラムダ発現系を、バクテリオファージプラークまたは溶原菌のコロニーとして直接スクリーニングしてよいか(Huseら、1989、CatonおよびKoprowski、1990、Mullinaxら、1990、Perssonら、1991)、またはより一般的に用いられるものは、核酸が、それが発現するポリペプチドに連結されることを可能にする選択ディスプレイ系である。これらの方法のうちの1つは、多様なタンパク質配列が糸状バクテリオファージの表面上に、典型的にはバクテリオファージコートタンパク質との融合体として提示されるか、またはラムダファージカプシド(ファージボディ)上に外で提示されるファージディスプレイ技術である。これらのプロセスを行うための方法は、当該技術分野において周知である(ScottおよびSmith、1990、McCaffertyら、1991、WO92/01047、Kangら、1991a、Clacksonら、1991、Lowmanら、1991、Burtonら、1991、Hoogenboomら、1991、Changら、1991、Breitlingら、1991、Marksら、1991、Barbasら、1992、HawkinsおよびWinter、1992、Marksら、1992、Lernerら、1992)。ポリペプチドのライブラリーを作製するためのその他の系は、ライブラリーメンバーのin vitro合成のために無細胞酵素装置を用いることを含む。例えば、RNAディスプレイ(TuerkおよびGold、1990、EllingtonおよびSzostak、1990)、安定化ポリソーム複合体(WO88/08453、WO90/05785)または油中水型エマルジョンにより形成されたマイクロカプセル(WO99/02671、TawfikおよびGriffiths、1998)中でのin vitro翻訳。
【0066】
本発明の改良dAbは、いくつかの方法で特徴決定してよい。当業者は、多数の利用可能な方法を認識している。いくつかの例は、これらに限定されないが、固体支持体へ抗原を付着させること(例えば酵素結合免疫アッセイを用いるか、または表面プラズモン共鳴分析による)、標識剤を用いる溶液中(例えばビオチン付加、放射性標識または蛍光タグ付加)、および欠乏または減算手順を用いること(例えばFACS分析;Daughertyら、1998、Ridgwayら、1999、van den Beuckenら、2003)を含む。
【0067】
別の態様において、標的抗原の活性または機能についてのアッセイは、標的抗原の測定可能な活性もしくは機能としてアッセイまたは定量してよい。標的抗原の活性または機能についてのアッセイは、例えば、結合アッセイ、細胞活性化、細胞死滅、細胞増殖、細胞シグナル伝達、酵素活性、リガンド依存性内部移行、細胞生存および遺伝子発現の促進を含む。本発明は、抗原TNFαを標的にするフレームワークバリアントについて記載する。活性は、L929細胞のTNFα媒介細胞毒性を用いてアッセイできる。
【0068】
分子について言及するときに用いられる用語「中和」は、分子が、標的抗原の測定可能な活性または機能に干渉することを意味する。分子が標的抗原の測定可能な活性または機能を低減させるならば、その分子は中和性である。標的抗原がTNFαである本発明のいくつかの態様において、中和活性は、L929細胞毒性アッセイを用いて評価できる。例えば、マウスL929細胞は、ヒトTNFαの細胞毒性効果に対して、用量依存的な様式で感受性である。TNFαを阻害または遮断する能力は、L929細胞のTNFα媒介性細胞毒性の中和により定量できる。TNFαを阻害する能力、またはTNFα阻害剤としての活性は、「効力」とよばれ、本発明の改良dAbの活性または効力が、このアッセイにおけるTNFαの効果を阻害するその能力のことをいう。
【0069】
本発明のdAbの標的抗原に対する結合活性は、いくつかの異なるアッセイにおいて測定し得る。このような結合アッセイは、当業者に周知である。これらは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および表面プラズモン共鳴(SPR)による分析を含む。結合アッセイは、上記の2つの分子間の相互作用の強さの測定を可能にする。
【0070】
用語「解離定数」または「KD」は、2つの分子間の相互作用の強さ、本発明においてはdAbまたはdAbバリアントの、その標的抗原に対する親和性のことをいう。「KD」は、平衡における解離定数であり、モル濃度の単位を有する。抗体またはdAbの、抗原に対する親和性は、任意の適切な方法を用いて実験的に決定できる(例えばBerzofskyら、1984およびKuby、1992;ならびに本明細書に記載される方法)。
【0071】
本明細書で用いる場合、「核酸」または「核酸分子」は、1本鎖、2本鎖、3本鎖のいずれかのデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドポリマーまたはこれらの任意の組み合わせについての言及を含む。本発明の核酸分子は、mRNA、hnRNA、tRNAもしくは任意のその他の形態のようなRNAの形態、またはそれらに限定されないが、cDNAおよびクローニングにより得られるかもしくは合成されたゲノムDNAを含むDNAの形態、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。本発明の核酸分子は、dAbまたはdAbバリアントもしくは特定の部分についてのコード配列を含む核酸分子、および上記のものとは異なるヌクレオチド配列を含むが、遺伝コードの縮重性により本明細書に記載されるかかつ/または当該技術分野において知られる少なくとも1つのdAbまたはdAbバリアントをまだコードする核酸分子を含み得る。遺伝コードは当該技術分野において周知である。つまり、本発明の特定のdAbもしくはdAbバリアントまたは特定の部分をコードするこのような縮重核酸バリアントを作製することは、当業者にとっては日常的である。
【0072】
「形質転換細胞」により、本発明の核酸分子を含む細胞を意味する。形質転換細胞は、大腸菌(E. coli)のような原核細胞または酵母もしくは哺乳動物細胞のような真核細胞であってよい。形質転換細胞自体は、その開示が本明細書に参照により組み込まれる米国特許出願公開第2005/0101005号およびWO2000/023471に記載されるように、治療用に用いてよい。
【0073】
さらに、形質転換細胞を、本発明のdAbまたはdAbバリアントFcタンパク質の生成において用いてよい。このような場合、適切な宿主細胞系を、改良dAbをコードするDNA配列の発現のために用いてよい。これらは、細菌、植物、酵母、昆虫および哺乳動物の細胞であってよい。当業者は、大腸菌およびその他の細菌宿主、ならびにCOS-1(例えばATCC CRL 1650)、COS-7(例えばATCC CRL-1651)、HEK293、BHK21(例えばATCC CRL-10)、CHO(例えばATCC CRL 1610)を含む適切な哺乳動物宿主細胞を含むタンパク質の発現のための多数の発現系に詳しいと考えられる。BSC-1(例えばATCC CRL-26)、SP2/0-Ag14(例えばATCC CRL 1851)、HepG2細胞、YB2/0細胞、NS0、Per.C6、EBx、HeLa細胞などは、例えばAmerican Type Culture Collection(ATCC、Manassas、VA、USA.)から容易に入手可能である。
【0074】
代わりに、本発明の核酸は、本発明のドメイン抗体または特定の部分もしくはバリアントをコードする内因性DNAを含む宿主細胞において(操作により)オンにすることにより、宿主細胞において発現させることができる。このような方法は、全体が本明細書に参照により組み込まれる例えば米国特許第5,580,734号、第5,641,670号、第5,733,746号および第5,733,761号に記載されるように当該技術分野において周知である。
【0075】
本発明は、本発明のdAbを、医薬的に許容され得る担体とともに含む組成物も提供する。
【0076】
本発明は、対象に、本発明のdAbまたはこのようなdAbもしくはdAb構築物を含有する組成物の有効量を投与するステップを含む、ヒト対象におけるヒトTNFα活性を特徴とする障害を治療する方法も提供する。
【0077】
典型的には、ヒトTNFα活性を特徴とする障害は、炎症;炎症性疾患; 敗血症性ショック、内毒素ショック、グラム陰性敗血症および毒素ショック症候群を含む敗血症;関節リウマチ、若年性関節炎、リウマチ性脊椎炎、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、変形性関節炎および痛風性関節炎、アレルギー、多発性硬化症、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎、乾癬、類天疱瘡およびネフローゼ症候群を含む自己免疫疾患;黄斑変性、血管新生関連眼疾患(特に加齢性黄斑変性)、ブドウ膜炎、ベーチェット病を含む眼の炎症性状態;感染による発熱および筋肉痛ならびに感染の2次的な悪液質を含む感染性疾患;移植片対宿主疾患;腫瘍成長または転移、血液系腫瘍;喘息、成人性呼吸促迫症候群、ショック肺、慢性肺炎症性疾患、肺サルコイドーシス、肺線維症および珪肺症を含む肺疾患;クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患;心障害、うっ血性心不全;ウェゲナー病、巨細胞性動脈炎を含む血管疾患;炎症性骨障害、アルツハイマー病のような中枢神経系障害;坐骨神経痛のような末梢神経系障害、肝炎、血液凝固障害、熱傷、再潅流傷害、子宮内膜症、ケロイド形成および瘢痕組織形成からなる群より選択される。
【0078】
投与経路は、静脈内、筋内、急速投与、腹腔内、皮下、呼吸器、吸入、局所、鼻、膣、直腸、頬側、舌下、鼻内、真皮下および経皮であってよい。
【0079】
典型的には、病態の治療は、組成物中に含まれるdAb、特定の部分もしくはバリアントの比活性に応じて、用量あたり患者のキログラムあたり平均で少なくとも約0.01〜500ミリグラムの範囲が合計となる少なくとも1つのdAb、特定の部分もしくはバリアント、好ましくは単回もしくは複数回の投与あたり患者のキログラムあたり少なくとも約0.1〜100ミリグラムのdAb、特定の部分もしくはバリアントである、少なくとも1つのdAb組成物の有効量または投与量を投与することにより行われる。代わりに、有効血清濃度は、単回または複数回の投与あたり0.1〜5000μg/mlの血清濃度を含み得る。適切な投与量は、医療従事者に知られており、もちろん、特定の疾患状態、投与される組成物の比活性、および治療を受ける特定の患者に依存する。所望の治療の量を達成するために、反復投与、すなわち特に監視されたかまたは計量された用量の個別の反復投与を提供する必要がある場合があり、ここで、個別の投与は、所望の1日用量または効果が達成されるまで反復される。好ましい用量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99および/もしくは100mg/kg/投与、またはその任意の範囲、値もしくは分数を所望により含むことができるか、あるいは単回もしくは複数回の投与あたり0.1、0.5、0.9、1.0、1.1、1.2、1.5、1.9、2.0、2.5、2.9、3.0、3.5、3.9、4.0、4.5、4.9、5.0、5.5、5.9、6.0、6.5、6.9、7.0、7.5、7.9、8.0、8.5、8.9、9.0、9.5、9.9、10、10.5、10.9、11、11.5、11.9、20、12.5、12.9、13.0、13.5、13.9、14.0、14.5、4.9、5.0、5.5、5.9、6.0、6.5、6.9、7.0、7.5、7.9、8.0、8.5、8.9、9.0、9.5、9.9、10、10.5、10.9、11、11.5、11.9、12、12.5、12.9、13.0、13.5、13.9、14、14.5、15、15.5、15.9、16、16.5、16.9、17、17.5、17.9、18、18.5、18.9、19、19.5、19.9、20、20.5、20.9、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、96、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500および/もしくは5000μg/mlの血清濃度、またはその任意の範囲、値もしくは分数の血清濃度を達成するようなものであり得る。
【0080】
代わりに、投与される投与量は、特定の物質の薬物動態の特徴ならびにその投与の形式および経路;レシピエントの年齢、健康状態および体重;症候群の性質および程度、同時治療の種類、治療頻度ならびに所望の効果のような既知の因子に応じて変動できる。通常、有効成分の投与量は、体重1kgあたり約0.1〜100mgであり得る。通常、投与あたり0.1〜50、好ましくは0.1〜10mg/kg、または遅延放出形態が、所望の結果を得るために有効である。
【0081】
限定しない例として、ヒトまたは動物の治療は、本発明の少なくとも1つのdAb、特定の部分またはバリアントの1回または周期的投与量として、1日あたり0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90もしくは100mg/kgのような0.1〜100mg/kgを、第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39もしくは40日のうちの少なくとも1日に、または代わりにもしくはさらに、第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51もしくは52週のうちの少なくとも1週に、または代わりにもしくはさらに、第1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20年の少なくとも1年に、あるいはこれらの任意の組み合わせに、単回、注入または反復容量を用いて提供できる。
【0082】
内部投与に適する剤形(組成物)は、通常、単位または容器あたり約0.1ミリグラム〜約500ミリグラムの有効成分を含有する。これらの医薬組成物において、有効成分は、組成物の全重量を基にして約0.5〜99.999重量%の量で通常存在する。
【0083】
非経口投与のために、dAb、特定の部分またはバリアントは、医薬的に許容され得る非経口媒体とともにまたは別個に提供される液剤、懸濁剤、乳剤または凍結乾燥散剤として処方できる。このような媒体の例は、水、食塩水、リンゲル液、ブドウ糖溶液、および1〜10%ヒト血清アルブミンである。リポソームおよび不揮発性油のような非水性媒体も用いてよい。媒体および凍結乾燥散剤は、等張性(例えば塩化ナトリウム、マンニトール)および化学的安定性(例えば緩衝剤および防腐剤)を維持する添加剤を含有してよい。製剤は、既知のまたは適切な技術により滅菌される。
【0084】
適切な医薬的担体は、この分野における標準的な参考書であるRemington’s Pharmaceutical Sciences、A.Osolの最新版に記載される。
【0085】
本発明のドメイン抗体は、液剤、乳剤、コロイドもしくは懸濁剤として、または乾燥散剤として担体中で、吸入または本明細書に記載されるかもしくは当該技術分野において知られるその他の方法による投与に適する種々のデバイスおよび方法のいずれかを用いて送達できる。
【0086】
非経口投与のための製剤は、一般的な賦形剤として、滅菌水または食塩水、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコール、植物起源の油、水素化ナフタレンなどを含有できる。注射のための水性または油性の懸濁剤は、適切な乳化剤または湿潤剤と懸濁化剤を既知の方法に従って用いることにより調製できる。注射用剤は、水溶液または滅菌注射用溶液または溶媒中の懸濁剤のような非毒性で非経口投与可能な希釈剤であり得る。用い得る媒体または溶媒としては、水、リンゲル液、等張食塩水などが可能である。通常の溶媒または懸濁溶媒として、滅菌不揮発性油を用い得る。これらの目的のために、天然、合成もしくは半合成の脂肪油または脂肪酸;天然、合成もしくは半合成のモノまたはジまたはトリグリセリドを含む任意の種類の不揮発性油および脂肪酸を用いることができる。非経口投与は当該技術分野において知られており、それらに限定されないが、注射の通常の手段、米国特許第5,851,198号に記載されるガス加圧無針注射デバイス、および米国特許第5,839,446号に記載されるレーザ穿孔デバイス(これらの全体は本明細書に参照により組み込まれる)を含む。
【0087】
本発明は、非経口、局所、皮下、筋内、静脈内、関節内、気管支内、腹腔内、嚢内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、子宮頸管内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心臓周囲内、腹膜内、胸膜腔内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、髄腔内、滑液包内、胸腔内、子宮内、膀胱内、病巣内、急速投与、膣、直腸、頬側、舌下、鼻内、または経皮の手段による、少なくとも1つのdAb、特定の部分またはバリアントの投与にさらに関する。dAb、特定の部分またはバリアント組成物は、特に液剤または懸濁剤の形態で非経口(皮下、筋内、静脈内、関節内など)投与用に;特にクリームおよび坐剤のような半固形の形態で局所、膣または直腸投与用に;特に錠剤またはカプセル剤の形態で頬側または舌下投与用に;あるいは特に散剤、点鼻薬もしくはエアロゾルまたはある種の薬剤の形態で鼻内用に;あるいは特に皮膚構造を改変するかまたは経皮パッチ中の薬物濃度を増加させるためのジメチルスルホキシドのような化学エンハンサー(「Drug Permeation Enhancement」;Hsieh, D. S.編中のJungingerら、59〜90頁、Marcel Dekker, Inc. New York 1994、全体が本明細書に参照により組み込まれる)またはタンパク質およびペプチドを含有する製剤の皮膚上への塗布を可能にする酸化剤(WO 98/53847)を用いるゲル、軟膏剤、ローション剤、懸濁剤またはパッチ送達系の形態、あるいはエレクトロポレーションのような一過性の輸送経路を創出するかまたはイオン導入のような皮膚を通して荷電薬物の移動性を増加させるための電界の印加、あるいは超音波導入のような超音波の印加(米国特許第4,309,989号および第4,767,402号;上記の出版物および特許は全体が本明細書に参照により組み込まれる)で経皮用に調製できる。
【0088】
肺投与のために、好ましくは、少なくとも1つのdAb、特定の部分またはバリアント組成物は、肺または洞の下気道に到達するために効果的な粒子サイズで送達される。本発明によると、少なくとも1つのdAb、特定の部分またはバリアントは、吸入による治療薬の投与用に当該技術分野において知られる種々の吸入または鼻のデバイスのいずれかにより送達できる。患者の洞腔または肺胞にエアロゾル化された製剤を沈着できるこれらの装置は、定量噴霧式吸入器、ネブライザー、乾燥粉末発生器、噴霧器などを含む。dAb、その特定の部分またはバリアントの肺または鼻投与を行うために適するその他のデバイスも、当該技術分野において知られている。全てのこのようなデバイスは、dAb、特定の部分またはバリアントをエアロゾルで分配するための投与に適する製剤を用いることができる。このようなエアロゾルは、溶液(水性および非水性の両方)または固体粒子のいずれかを含み得る。Ventolin(登録商標)定量噴霧式吸入器のような定量噴霧式吸入器は、典型的には、噴霧ガスを用い、吸息中の始動を必要とする(例えばWO94/16970、WO98/35888を参照されたい)。Turbuhaler(商標)(Astra)、Rotahaler(登録商標)(Glaxo)、Diskus(登録商標)(Glaxo)、Spiros(商標)吸入器(Dura)、Inhale Therapeuticsにより販売されるデバイスおよびSpinhaler(登録商標)粉末吸入器(Fisons)のような乾燥粉末吸入器は、混合粉末の呼吸始動を用いる(米国特許第4,668,218号Astra、EP237507 Astra、WO97/25086 Glaxo、WO94/08552 Dura、米国特許第5,458,135号Inhale、WO94/06498 Fisons、全体が本明細書に参照により組み込まれる)。AERx(商標)Aradigm、Ultravent(登録商標)ネブライザー(Mallinckrodt)およびAcorn II(登録商標)ネブライザー(Marquest Medical Products;米国特許第5,404,871号Aradigm、WO97/22376)のようなネブライザー(上記の参考文献は全体が本明細書に参照により組み込まれる)は、エアロゾルを溶液から生成するが、定量噴霧式吸入器、乾燥粉末吸入器などは、小粒子エアロゾルを生成する。市販されている吸入デバイスのこれらの具体的な例は、本発明の実施のために適する具体的なデバイスの代表であることを意図し、本発明の範囲を限定することを意図しない。好ましくは、少なくとも1つのdAbまたは特定の部分もしくはバリアントを含む組成物は、乾燥粉末吸入器または噴霧器により送達される。本発明の少なくとも1つのdAb、特定の部分またはバリアントを投与するための吸入デバイスのいくつかの望ましい特徴がある。例えば、吸入デバイスによる送達は、有利には、信頼性があり、再現性があり、正確である。吸入デバイスは、良好な呼吸のために、小さい乾燥粒子、例えば約10μm未満、好ましくは約1〜5μmを所望により送達できる。
【0089】
少なくとも1つのdAb、特定の部分またはバリアントの経口投与用の製剤は、腸壁の透過性を人工的に増加させるためにアジュバント(例えばレゾルシノールならびにポリオキシエチレンオレイルエーテルおよびn-ヘキサデシルポリエチレンエーテルのような非イオン界面活性剤)と同時投与され、酵素による分解を阻害するために酵素阻害剤(例えば膵臓トリプシンインヒビター、ジイソプロピルフルオロホスフェート(DFF)およびトラジロール)を同時投与することを頼みにする。経口投与用の固形型剤形の活性構成化合物は、スクロース、ラクトース、セルロース、マンニトール、トレハロース、ラフィノース、マルチトール、デキストラン、デンプン、寒天、アルギネート、キチン、キトサン、ペクチン、トラガカントガム、アラビアゴム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、合成もしくは半合成ポリマーおよびグリセリドを含む少なくとも1つの添加剤と混合できる。これらの剤形は、その他の型の添加剤、例えば不活性希釈剤、ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、パラベン、ソルビン酸のような防腐剤、アスコルビン酸、α-トコフェロール、システインのような抗酸化剤、崩壊剤、結合剤、増粘剤、緩衝剤、甘味料、矯味矯臭剤、香料なども含有できる。
【0090】
錠剤および丸剤は、腸溶コート調製物にさらに加工できる。経口投与用の液体調製物は、医薬的使用が許可されている乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、懸濁剤および液剤の調製物を含む。これらの調製物は、当該分野で通常用いられる不活性希釈剤、例えば水を含み得る。リポソームも、インスリンおよびヘパリンの薬物送達系として記載されている(米国特許第4,239,754号)。より最近では、混合アミノ酸の人工ポリマーのマイクロスフェア(プロテイノイド(proteinoid))が、薬品を送達するために用いられている(米国特許第4,925,673号)。さらに、米国特許第5,879,681号および第5,871,753号に記載される担体化合物は、生物活性剤を経口送達するために用いられ、当該技術分野において知られている。
【0091】
粘膜表面を通しての吸収のために、少なくとも1つのdAb、特定の部分またはバリアントを投与する組成物および方法は、複数のミクロン以下の粒子を含むエマルジョン、粘膜接着性高分子、生物活性ペプチドおよびエマルジョン粒子の粘膜接着を達成することにより粘膜表面を通しての吸収を促進する水性連続相(米国特許第5,514,670号)を含む。本発明のエマルジョンの投与のために適する粘膜表面は、角膜、結膜、頬側、舌下、鼻、膣、肺、胃、腸および直腸経路の投与を含み得る。膣または直腸投与用の製剤、例えば坐剤は、賦形剤として、例えばポリアルキレングリコール、ワセリン、カカオ脂などを含有できる。鼻内投与用の製剤は固体であり得、賦形剤として例えばラクトースを含有できるか、または点鼻剤の水性もしくは油性の溶液であり得る。頬側投与のために、賦形剤は、糖類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム。プレゲリナチン化(pregelinatined)デンプンなどを含む(米国特許第5,849,695号)。
【0092】
経皮投与のために、少なくとも1つのdAb、特定の部分またはバリアントは、リポソームまたはポリマーナノ粒子、マイクロ粒子、マイクロカプセルもしくはマイクロスフェア(そうでないと記載しない限り、集合的にマイクロ粒子という)のような送達デバイスに被包される。ポリ乳酸、ポリグリコール酸のようなポリヒドロキシ酸およびそのコポリマー、ポリオルトエステル、ポリ無水物ならびにポリホスファゼンのような合成ポリマー、ならびにコラーゲン、ポリアミノ酸、アルブミンおよびその他のタンパク質、アルギネートおよびその他のポリ多糖のような天然ポリマー、ならびにそれらの組み合わせで作られたマイクロ粒子を含むいくつかの適切なデバイスが知られている(米国特許第5,814,599号)。
【0093】
本発明のドメイン抗体を、対象に、長期間にわたって、例えば1回の投与からの1週間〜1年の期間で送達することが望ましい場合があり得る。種々の遅延放出、デポーまたはインプラント剤形を用いることができる。例えば、剤形は、体液中での溶解性が低い化合物の医薬的に許容され得る非毒性の塩、例えば(a)リン酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンモノもしくはジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などの多塩基酸の酸付加塩;(b)亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウムなどのような多価金属カチオンまたは例えばN,N’-ジベンジル-エチレンジアミンもしくはエチレンジアミンから形成される有機カチオンとの塩;あるいは(c)(a)と(b)との組み合わせ、例えばタンニン酸亜鉛塩を含有し得る。さらに、本発明の化合物、または好ましくはすぐ上で記載したような比較的不溶性の塩を、注射に適するゲル、例えばごま油を含む例えばモノステアリン酸アルミニウムゲル中に処方できる。特に好ましい塩は、亜鉛塩、タンニン酸亜鉛塩、パモエート塩などである。注射用の別の型の遅延放出デポー製剤は、ポリ乳酸/ポリグリコール酸ポリマー、例えば米国特許第3,773,919号に記載されるような遅延分解性の非毒性で非抗原性ポリマー中に被包のために分散された化合物または塩を含有する。化合物または好ましくは上記のもののような比較的不溶性の塩は、特に動物用のコレステロールマトリクスシラスティックペレット中に処方することもできる。さらなる遅延放出、デポーまたはインプラント製剤、例えば気体または液体リポソームは、文献において知られている(米国特許第5,770,222号およびRobinson編、1978)。
【0094】
以下で言及する全ての科学的引用物、特許、特許出願および製造業者の技術的説明書は、本明細書に参照によりその全体が組み込まれる。
【0095】
文脈がそうでないことを必要としない限り、本明細書を通して、語句「含む」または「含み」もしくは「含んで」のような語尾変化は、述べられた要素もしくは整数または要素もしくは整数の群を含むことを意味するが、いずれのその他の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群を排除することを意味しないと理解される。
【0096】
そうでないと記載しない限り、本発明は、変動し得る特定の処方成分、製造方法、投与計画などに限定されないと理解される。本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を記載する目的のためだけであり、限定することを意図しないことも理解される。
【0097】
本明細書で用いる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確にそうでないと示さない限り、複数の態様も含むことに注意されたい。つまり、例えば、「標的」との言及は、単一の標的および2つ以上の標的を含み、「オリゴデンドロサイト」との言及は、単一のオリゴデンドロサイトおよび2つ以上のオリゴデンドロサイトを含み、「製剤」との言及は、単一の製剤および2つ以上の製剤を含むなどである。
【0098】
本発明を、以下の限定しない実施例によりさらに説明する。
【実施例1】
【0099】
重要なフレームワークバリアントの同定
フレームワークバリアントの設計
その機能が改良されたドメイン抗体構築物における重要なフレームワーク残基を同定するために、定方向突然変異誘発アプローチを行った。改良されたタンパク質の機能は、中和効力、抗原結合効率および/または発現レベルであった。
【0100】
未改変ドメイン抗体構築物は、ヒトTNFαを標的にする可変軽鎖(VL)ドメイン抗体(dAb)、改変ヒンジ領域およびヒトIgG1の重鎖定常領域を含むが、定常領域は切断型CH1ドメインを有する(WO2007/087673)。未改変dAb構築物は、本明細書において、「TNFαdAb Fc」という。TNFαdAb Fcは、配列番号2の配列を有する。
【0101】
ドメイン抗体Fc構築物のVLドメイン、またはTNFαdAb Fcの相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク残基を、Kabat規則(Kabatら、「Sequence of Proteins of Immunological Interest」、US Department of Health and Human Services)の定義およびコンセンサス配列を用いて同定した。
【0102】
TNFαdAb Fc構築物のVLドメインのフレームワーク領域に、単一置換変異を作製した。それぞれの「野生型」残基を、9つのアミノ酸のうちの1つに置換した。選択したアミノ酸は、20アミノ酸により提供される主要な側鎖化学の代表である。9アミノ酸およびそれらの側鎖機能の型は:
アラニン(A)、小さい;
セリン(S)およびヒスチジン(H)、求核性;
グルタミン(Q)、アミド;
アスパラギン酸(D)、酸性;
リジン(K)、塩基性;
ロイシン(L)およびプロリン(P)、疎水性;ならびに
チロシン(Y)、芳香族
である。
【0103】
VLドメインのCDR内またはCDRにある程度隣接する残基は、変異させなかった。野生型残基が9つの代表アミノ酸の1つである場合に、残りの8残基への置換を作製した。合計で、78のフレームワーク残基を変異させ、単一置換変異を含む640のバリアントを、TNFαdAb Fc構築物のVLドメインにおいて作製した。
【0104】
バリアントをコードする遺伝子フラグメントを、哺乳動物細胞内での発現のために最適化した。これらを、合成オリゴヌクレオチドおよび/またはPCR生成物から組み立て、哺乳動物細胞発現のために適するベクターにクローニングした。最終的なDNA構築物を、配列決定により確認した。
【0105】
TNFα結合ELISAを用いる1回目のスクリーニング
単一置換変異を含むフレームワークバリアント、および未改変のTNFαdAb Fc構築物を、標的抗原であるヒトTNFαに結合するそれらの能力について、TNFα結合ELISAにおいて評価した。
【0106】
バリアントを、CHOK1細胞系の浮遊バリアントを用いて一過的に発現させた。この実施例において、小規模一過的形質移入を、Freestyle(商標)MAX CHO形質移入法(Invitrogen;24ウェルプレートフォーマットでの2ml形質移入)を用いて行った。形質移入の6日後に、形質移入細胞の馴化培地を遠心分離により採集し、以下のELISAにおいて試験した。
【0107】
TNFα結合ELISA
96ウェル平底プレート(MaxiSorp(商標)、Nunc(商標))を、組換えヒトTNFα(CytoLab;1μg/ml)でカーボネート被覆緩衝液(35mM炭酸ナトリウム、15mM炭酸水素ナトリウム、pH 9.6)中で4℃にて1晩被覆した。プレートを、0.05%Tween-20含有PBS(PBS-T)、次いでPBSで3回洗浄した。プレートをブロッキング溶液(PBSで希釈した1% w/v BSA)中で室温にて2時間インキュベートした。PBS-TおよびPBSで3回洗浄した後に、50μlの馴化培地および50μlの希釈緩衝液(PBSで希釈した1% w/v BSA)をウェルに加えて、室温にて2時間インキュベートした。プレートをPBS-TおよびPBSで3回洗浄し、次いで、2次抗体HRPヤギ抗ヒトIgG(H+L;Zymed(登録商標)、希釈緩衝液で1:2000に希釈)とインキュベートした。室温にて1時間インキュベートした後に、プレートを3回上記のようにして洗浄し、次いで、100μlの3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン(TMB;Sigma Aldrich(登録商標))溶液をウェルに加えた。発色を室温にて行い、50μlの1M塩酸で停止し、吸光度を450nmにて読み取った。
【0108】
図1は、49位での置換を有するフレームワークバリアントの結合の結果を示すTNFα結合ELISAの代表的なグラフである。Table 1(表1)は、スクリーニングした640のバリアントについてのELISAの結果を列挙する(A450nmの値)。
【0109】
【表1A】

【表1B】

【表1C】

【表1D】

【表1E】

【0110】
TNFα結合ELISAを用いるこの1回目のスクリーニングにより、単一置換変異に耐容性があるフレームワークバリアント、すなわち発現され、分泌され、標的抗原であるヒトTNFαと結合するそれらの能力を保持したバリアントが同定された。
【0111】
TNFαにより誘導される細胞毒性の中和についてのバリアントの2回目の試験
TNFαdAbバリアントのサブセットを選択し、TNFα媒介細胞毒性の中和におけるそれらの効力を、マウスL929細胞系において評価した。
【0112】
中規模形質移入(30ml)を行って、L929アッセイのために十分な量のタンパク質を得た。バリアントを、CHOK1細胞系の浮遊バリアントにおいて、Freestyle(商標)MAX CHO形質移入法を用いて一過的に発現させた。形質移入の6日後に、形質移入細胞から馴化培地を遠心分離により採集し、上清を0.22μmメンブレンフィルタを用いてろ過した。TNFαdAbバリアントを、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。試料を載せた後に、PBSを用いて未結合のタンパク質を洗い流し、0.1Mクエン酸pH3.5を用いてバリアントを溶出し、1M Tris(pH9.0)を加えて画分を中和した。試料濃縮器(例えばMicrocon(登録商標)YM-30ユニット;Millipore(登録商標))を用いて、バリアントを濃縮し、緩衝液をPBSに交換した。タンパク質濃度を、ビシンコニン酸アッセイ(BCA(登録商標);Pierce(登録商標))により決定した。
【0113】
ハイスループット5点L929中和アッセイ
TNFαdAbバリアントのRPMI培地(10%胎児ウシ血清および2mM L-グルタミンを含有)中での半対数系列希釈を、50μl容量で、6.25μg/ml〜0.124μg/mlの範囲で、96ウェル平底プレート中の5つのウェルにわたって調製した。試験ウェルのそれぞれに、25μlのヒトTNFα(1.5ng/ml)、25μlのアクチノマイシンD(40μg/ml)および50μlのL929細胞(5×105細胞/ml)を加えた。対照は、11ウェルにわたる3125pg/ml〜0.172pg/mlの範囲のTNFα標準曲線、TNFαを含まないウェル(100%生存率)および細胞を含まないウェル(バックグラウンド)を含んだ。アッセイプレートを37℃にて5% CO2湿潤インキュベータ中で20時間、次いで30μlの3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テラゾリウム(MTS)/フェナジンエトサルフェート(PES)を加えた後にさらに2時間インキュベートした。吸光度を492nmにて読み取り、生存曲線を、2重のウェルの平均吸光度を用いて計算した。生存曲線は、GraphPadソフトウェア(Prism(登録商標))を用いてシグモイド用量モデルにあてはめた。
【0114】
図2は、ハイスループット5点L929アッセイにより得られた代表的な結果であり、Table2(表2)は、試験したTNFαdAb FcフレームワークバリアントのEC50値を示す。
【0115】
【表2A】

【表2B】

【表2C】

【0116】
本発明において採用した突然変異誘発アプローチにより、TNFα抗原について効力が増加したTNFαdAb Fcバリアントをもたらすホットスポットおよび特定の置換が、フレームワーク領域において同定された。
【実施例2】
【0117】
複数置換を含むTNFαdAbバリアント
VLドメイン中に複数の置換を含むTNFαdAb Fcバリアントを試験して、単一置換バリアントにより与えられた改良された効力を相加的な様式で組み合わせることができるかを決定した。このことを試験するために、6つの単一置換のサブセットを選択し、6つの置換変異を含むバリアントを含む、2重、3重、4重置換を含む一連のTNFαdAb Fcバリアントを生成した。6つの選択した置換は、Q3Y、S7Q、S12L、S60A、L79YおよびF83Yであった。複数の置換を含むバリアントを、実施例1に記載される未改変のTNFαdAb Fcタンパク質と同じ様式で生成した。つまり、ヒトTNFαを標的にする可変軽鎖(VL)ドメイン抗体(dAb)、改変ヒンジ領域およびヒトIgG1重鎖定常領域を含むが、定常領域は切断型CH1ドメインを有するドメイン抗体構築物である(WO2007/087673)。この改変Fcの配列を、配列番号6に示す。本実施例に記載する構築物は、本明細書において、集合的に「組み合わせTNFαdAbフレームワークバリアント」という。
【0118】
一連の組み合わせTNFαdAbフレームワークバリアントを、上記のようにして生成した。簡単に、選択されたバリアントをコードする遺伝子フラグメントを合成し、哺乳動物細胞発現のために適するベクターに挿入した。バリアントを、CHOK1細胞系の浮遊バリアントにおいてFreestyle(商標)MAX CHO形質移入法を用いて一過的に発現させた。馴化培地をプロテインAアフィニティクロマトグラフィーに供し、精製された組み合わせバリアントを、BCA(登録商標)アッセイを用いて定量した。
【0119】
組み合わせバリアントを、TNFα媒介細胞毒性を中和するそれらの能力について、L929中和アッセイの標準11点フォーマットを用いてアッセイした。
【0120】
標準11点L929中和アッセイ
このアッセイは、「ハイスループット5点L929中和アッセイ」(実施例1を参照されたい)に記載したのと同様の方法で行った。このフォーマットにおいて、組み合わせバリアントのRPMI培地中での半対数系列希釈を、50μl容量で、52.5μg/ml〜0.0005μg/mlの範囲で、96ウェル平底プレートの11個のウェルにわたって調製した。
【0121】
Table3(表3)は、組み合わせTNFαdAbフレームワークバリアントのEC50値を示す。いくつかの組み合わせバリアントが、個別の単一置換フレームワークバリアントと比較したときに、効力、すなわちTNFαを中和する能力のさらなる増加を示した。
【0122】
【表3A】

【表3B】

【実施例3】
【0123】
同じ側鎖機能を有するその他のアミノ酸を組み込んだバリアントの試験
アミノ酸置換が、同じ側鎖機能を有するその他のアミノ酸を代表するかを確かめるために、以下のさらなるTNFαdAbバリアントを、それらのTNFα中和効力について試験した:
(1)Q3F
(2)S7N、S7G
(3)S12V、S12T
(4)S60E、S60G
(5)L79F、L79G。
【0124】
これらの置換が、改良dAbバリアントと同定されたものと同じアミノ酸機能クラスに属していたので、これらの置換を選択した。例えば、Q3Yが効力の改良を示したので、この実施例においてQ3Fを試験して、芳香族側鎖を含有する別のアミノ酸にQ3を置換することにより効力が改良されるかを決定した。元来の未改変dAb構築物中のアミノ酸と同じアミノ酸クラスに属する置換を含むバリアントをも試験した。これらを、第2の置換として上に列挙する。例えば、S7Qバリアントは、効力が改良されたものと同定されたので、ここではS7Nを試験した。なぜなら、QとNは、その側鎖にアミドを有するアミノ酸であるからである。さらに、S7Gも試験した。なぜなら、Gは未改変構築物中のSと同様に、小さい側鎖を有するアミノ酸であるからである。
【0125】
これらのバリアントを上記のように生成して試験した。簡単に、選択された置換をコードする遺伝子フラグメントを合成し、哺乳動物細胞発現のために適するベクターに挿入した。バリアントを、CHOK1細胞系の浮遊バリアントにおいて、Freestyle(商標)MAX CHO形質移入法を用いて一過的に発現させた。馴化培地をプロテインAアフィニティクロマトグラフィーに供し、精製タンパク質をBCA(登録商標)アッセイにより定量した。これらのバリアントを、TNFα媒介細胞毒性を中和するそれらの能力について、実施例2に記載されるL929中和アッセイの標準フォーマットを用いてアッセイした。
【0126】
この実施例において試験したバリアントのEC50値も、これもまたL929アッセイの標準11点フォーマットを用いて試験した組み合わせバリアントのデータと一緒に、Table3(表3)に列挙する。
【0127】
本実施例は、異なるアミノ酸クラスの代表としての9つのアミノ酸の使用が正当化されたことを示す(アミノ酸が代表するカテゴリーについて実施例1を参照されたい)。同様のTNFα中和効力を示したL79FおよびS60E以外は、同じアミノ酸クラスの別のアミノ酸への置換を含む全ての試験したバリアントが、最初に同定されたバリアントと比較して改良された効力を示した。
【実施例4】
【0128】
フェリチン標的ドメイン抗体のバリアント
本実施例は、TNFαdAbの改良された機能をもたらしたフレームワークバリアントが、異なる特異性のドメイン抗体に用いることができるかを試験することを示す。
【0129】
異なるドメイン抗体、すなわちヒトフェリチンを標的にする軽鎖可変VL dAbを選択した。抗フェリチンdAbの配列は、配列番号4である。
【0130】
これらのdAbバリアントを設計するプロセスにおいて、dAbタンパク質配列を、ClustalW(Higginsら、1994)を用いて整列させた。VL dAbの3次元モデルを構築し、MODELERプログラム(SaliおよびBlundell、1993;Accelrys(登録商標)Discovery Studio(登録商標)v2.0.1.7347)を用いて調べた。本実施例において選択した、TNFαdAbの改良された機能をもたらした6つのフレームワークバリアントは、3位がYに、7位がQに、12位がLに、60位がAに、79位がYに、そして83位がYになっていた。
【0131】
フェリチンVL dAbは、TNFαVL dAbと比較すると、配列および構造、特にフレームワーク領域が非常に類似していた。6つの選択されたフレームワーク残基は、両方のVL dAbにおいてよく似た空間的位置にあったので、フェリチンdAbのこれらのフレームワーク領域にて単一置換変異を含む6つのバリアントを作製した。TNFαdAbバリアントと同様に、フェリチンVL dAbバリアントも、Fc融合構築物と同様に生成した。未改変フェリチンVL dAb Fc構築物の配列を、配列番号5に示す。生成されたバリアントは、Q3Y、S7Q、S12L、S60A、Q79YおよびF83Yであり、本明細書において、集合的に「フェリチンdAb Fcバリアント」という。
【0132】
バリアントをコードする遺伝子フラグメントを、哺乳動物細胞での発現のために最適化した。これらを、合成オリゴヌクレオチドおよび/またはPCR生成物から組み立て、哺乳動物細胞発現のために適するベクターにクローニングした。最終的なDNA構築物を、配列決定により確認した。
【0133】
フェリチンdAb Fcフレームワークバリアントを、CHOK1細胞系の浮遊バリアントにおいて一過的に発現させた。形質移入は、Freestyle(商標)MAX CHO形質移入法を用いて行った。形質移入の6日後に、馴化培地を遠心分離により採集し、上清を0.22μmメンブレンフィルタを用いてろ過した。バリアントを、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。試料を載せた後に、PBSを用いて未結合のタンパク質を洗い流し、0.1Mクエン酸pH3.5を用いてバリアントを溶出し、1M Tris pH9.0を加えて画分を中和し、次いで、試料濃縮器(すなわちMicron YM-30ユニットまたはAmicon(登録商標)Ultra-4デバイス;Millipore(登録商標))を用いて濃縮し、緩衝液をPBSに交換した。タンパク質濃度を、BCA(登録商標)アッセイにより決定した。
【0134】
フェリチンVL dAbバリアントの試験
6つのフェリチンdAb Fcフレームワークバリアント(Q3Y、S7Q、S12L、S60A、Q79YおよびF83Y)ならびに未改変フェリチンdAb Fc構築物を、標的抗原であるヒト脾臓フェリチンと結合するそれらの能力について、フェリチン結合ELISAにおいて評価した。
【0135】
フェリチン結合ELISA
96ウェル平底プレート(MaxiSorp(商標)、Nunc(商標))を、フェリチンdAb Fcタンパク質(10μg/ml)でカーボネート被覆緩衝液中で 4℃にて1晩被覆した。1晩のインキュベーションの後に、プレートを、PBS-T、次いでPBSで3回洗浄した後に、ブロッキング溶液(PBSで希釈した1% w/v BSA)中で室温にて1時間インキュベートした。洗浄した後に、126μg/mlから0.246μg/mlまで希釈緩衝液中で2倍に系列希釈したヒト脾臓フェリチン(AppliChem)をウェルに加え、室温にて2時間インキュベートした。プレートをPBS-TおよびPBSで洗浄し、次いで、2次抗体HRPフェリチンポリクローナル(Abcam(登録商標);希釈緩衝液で1:2000に希釈)とインキュベートした。室温にて1時間インキュベートした後に、プレートを上記のようにして洗浄し、次いで、100μlのTMB溶液をウェルに加えた。発色を室温にて行い、50μlの1M塩酸で停止し、吸光度を450nmにて読み取った。
【0136】
図3は、フェリチン結合ELISAにおいてアッセイされた、フェリチンdAb Fcタンパク質がヒト脾臓フェリチンと結合する能力を示す。
【0137】
単一フレームワーク置換を含む全てのフェリチンdAb Fcバリアントは、未改変フェリチンdAb Fcタンパク質よりも多くのフェリチンと結合できた。
[参考文献]









【特許請求の範囲】
【請求項1】
未改変ドメイン抗体のフレームワーク配列が配列番号1に示すとおりであり、D1A、D1Y、D1K、I2L、I2P、Q3Y、Q3F、Q3D、Q3H、S7A、S7G、S7D、S7Q、S7N、S9A、S10A、S10L、L11Q、S12A、S12L、S12V、S12T、S12Q、S14A、D17Y、D17H、R18D、R18S、T20Y、T22A、T22Y、T22Q、T22H、T22K、Q38H、P40D、K42A、K42S、K42H、P44L、K45S、K45L、K45Y、K45D、K45H、I48A、Y49S、Y49D、Y49H、G57A、G57S、G57L、G57Y、G57Q、G57H、G57K、P59A、P59S、P59D、P59H、S60A、S60G、S60L、S60Y、S60D、S60Q、S60H、S60P、S60K、R61H、F62Y、T69D、D70Q、L79A、L79G、L79S、L79Y、L79V、L79D、L79Q、L79H、L79K、F83A、F83S、F83L、F83Y、F83Dおよびそれらの保存的置換ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの置換を含む、改変ドメイン抗体。
【請求項2】
L79G、L79S、L79Y、L79K、L79D、L79A、L79Q、L79VおよびL79Hからなる群より選択される置換を含む請求項1に記載の改変ドメイン抗体。
【請求項3】
S60G、S60A、S60D、S60L、S60H、S60Q、S60Y、S60PおよびS60Kからなる群より選択される置換を含む請求項1または請求項2に記載の改変ドメイン抗体。
【請求項4】
S12T、S12L、S12V、S12AおよびS12Qからなる群より選択される置換を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の改変ドメイン抗体。
【請求項5】
F83Y、F83L、F83A、F83SおよびF83Dからなる群より選択される置換を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の改変ドメイン抗体。
【請求項6】
P59A、P59S、P59DおよびP59Hからなる群より選択される置換を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の改変ドメイン抗体。
【請求項7】
G57S、G57Q、G57H、G57A、G57L、G57YおよびG57Kからなる群より選択される置換を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の改変ドメイン抗体。
【請求項8】
Q3F、Q3Y、Q3HおよびQ3Dからなる群より選択される置換を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の改変ドメイン抗体。
【請求項9】
S7A、S7N、S7G、S7QおよびS7Dからなる群より選択される置換を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の改変ドメイン抗体。
【請求項10】
フレームワーク領域中の少なくとも1つのアミノ酸が置換された配列番号1を有し、配列番号1のドメイン抗体と比較して改良されたTNFα中和効力を有する、TNFαと結合するドメイン抗体。
【請求項11】
置換が、D1A、D1Y、D1K、I2L、I2P、Q3F、Q3Y、Q3D、Q3H、S7A、S7D、S7Q、S7G、S7N、S9A、S10A、S10L、S12A、S12L、S12Q、S12V、S12T、S14A、R18D、T22A、K42A、K45S、Y49H、G57S、G57Q、G57H、P59A、P59S、P59D、S60G、S60A、S60L、S60D、S60Q、S60H、F62Y、L79G、L79S、L79Y、L79D、L79K、F83A、F83L、F83S、F83Yおよびそれらの保存的置換ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項10に記載のドメイン抗体。
【請求項12】
L79G、L79S、L79Y、L79KおよびL79Dからなる群より選択される置換を含む請求項11に記載のドメイン抗体。
【請求項13】
S60G、S60A、S60D、S60L、S60HおよびS60Qからなる群より選択される置換を含む請求項11または請求項12に記載のドメイン抗体。
【請求項14】
S12T、S12L、S12V、S12AおよびS12Qからなる群より選択される置換を含む請求項11〜13のいずれか一項に記載のドメイン抗体。
【請求項15】
F83Y、F83L、F83AおよびF83Sからなる群より選択される置換を含む請求項11〜14のいずれか一項に記載のドメイン抗体。
【請求項16】
P59A、P59SおよびP59Dからなる群より選択される置換を含む請求項11〜15のいずれか一項に記載のドメイン抗体。
【請求項17】
G57S、G57QおよびG57Hからなる群より選択される置換を含む請求項11〜16のいずれか一項に記載のドメイン抗体。
【請求項18】
Q3F、Q3Y、Q3HおよびQ3Dからなる群より選択される置換を含む請求項11〜17のいずれか一項に記載のドメイン抗体。
【請求項19】
S7A、S7N、S7G、S7QおよびS7Dからなる群より選択される置換を含む請求項11〜18のいずれか一項に記載のドメイン抗体。
【請求項20】
複数の置換を含む請求項10に記載のドメイン抗体。
【請求項21】
複数の置換が、S60A_F83Y、Q3Y_S12L、S12L_S60A_L79Y_F83Y、S7Q_S60A、S7Q_S12L、Q3Y_S7Q、S12L_L79Y_F83Y、Q3Y_S60A、S12L_S60A_F83Y、S7Q_L79Y_F83Y、Q3Y_S12L_S60A_F83Y、Q3Y_S7Q_S12L_S60A、Q3Y_S60A_F83Y、Q3Y_S7Q_S12L、Q3Y_S7Q_S12L_L79Y、Q3Y_S12L_L79Y、Q3Y_L79Y、S7Q_S12L_S60A_F83Y、L79Y_F83Y、Q3Y_S12L_L79Y_F83Y、S60A_L79Y_F83Y、S7Q_S12L_L79Y_F83Y、Q3Y_S7Q_S12L_S60A_L79Y_F83Y、Q3Y_S7Q_S60A、Q3Y_S7Q_S60A_L79YおよびS12L_S60A_L79Yからなる群より選択される請求項20に記載のドメイン抗体。
【請求項22】
フレームワーク領域中の少なくとも1つのアミノ酸が置換された配列番号1を有し、配列番号1のドメイン抗体と比較して改良されたTNFα結合および/または改良されたタンパク質発現レベルを有する、TNFαと結合するドメイン抗体。
【請求項23】
置換が、S7A、L11Q、D17Y、D17H、R18S、T20Y、T22Y、T22Q、T22H、T22K、Q38H、P40D、K42S、K42H、P44L、K45L、K45Y、K45D、K45H、I48A、Y49S、Y49D、Y49H、G57A、G57S、G57L、G57Y、G57Q、G57H、G57K、P59S、P59D、P59H、S60A、S60L、S60Y、S60D、S60Q、S60H、S60P、S60K、R61H、T69D、D70Q、L79A、L79S、L79Y、L79D、L79Q、L79H、L79K、F83A、F83Y、F83Dおよびそれらの保存的置換ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項22に記載のドメイン抗体。
【請求項24】
置換が、S7A、Y49H、G57S、G57Q、G57H、P59S、P59D、S60A、S60L、S60D、S60Q、S60H、L79S、L79Y、L79D、L79K、F83A、F83Yおよびそれらの保存的置換ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項22または請求項23に記載のドメイン抗体。
【請求項25】
Fcまたは改変Fcに付着している請求項1〜24のいずれか一項に記載のドメイン抗体。
【請求項26】
改変Fcの配列が、配列番号6または配列番号7である請求項25に記載のドメイン抗体。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか一項に記載のドメイン抗体をコードする核酸分子。
【請求項28】
配列番号8〜配列番号708から選択される配列を有する請求項27に記載の核酸分子。
【請求項29】
請求項27または請求項28の核酸分子を含み、前記核酸分子を発現する形質転換細胞。
【請求項30】
フレームワークが3位、7位、12位、60位、79位、83位およびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの位置にて少なくとも1つのアミノ酸置換を含むように改変されているVLフレームワークアクセプター配列を含むVLドメイン抗体。
【請求項31】
3位のY、7位のQ、12位のL、60位のA、79位のY、83位のYおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つのフレームワーク置換を含む請求項30に記載のVLドメイン抗体。
【請求項32】
Fcまたは改変Fcに付着している請求項30または請求項31に記載のドメイン抗体。
【請求項33】
改変Fcの配列が配列番号6または配列番号7である請求項32に記載のドメイン抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−530297(P2011−530297A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522349(P2011−522349)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001043
【国際公開番号】WO2010/017595
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(500468537)セファロン・オーストラリア・ピーティーワイ・リミテッド (16)
【Fターム(参考)】