バリア性を有する蓋
【課題】バリア性、カップに対する安定したシール性、更には易開封性が従来品に対して格段に優れ、殊に落下時の衝撃を緩和して破れ難いバリア性を有する蓋を提供する。
【解決手段】最内層8はポリエチレンのシーラント層9を含む樹脂層で、この最内層8の樹脂層ま外側に接着剤層10を介して金属箔層11が貼着され、前記最内層8には中央から放射状に複数本の強度弱点部12が設けられていて、この強度弱点部12によって前記最内層8を含み金属箔層11も破れて開封し易くしたバリア性を有する蓋であって、蓋3にエンボス14を施して伸縮性を具備させた。
【解決手段】最内層8はポリエチレンのシーラント層9を含む樹脂層で、この最内層8の樹脂層ま外側に接着剤層10を介して金属箔層11が貼着され、前記最内層8には中央から放射状に複数本の強度弱点部12が設けられていて、この強度弱点部12によって前記最内層8を含み金属箔層11も破れて開封し易くしたバリア性を有する蓋であって、蓋3にエンボス14を施して伸縮性を具備させた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紙カップや紙管の開口にシールされる、金属箔とプラスチックシートの積層シートで、この積層シートに開封を容易にするためにミシン目やカット線、更には破断線などの強度弱点部を設けて成る構成の蓋に関し、更に詳しくは、紙カップや紙管の開口にシールし密閉でき、バリア性を保ち、しかもミシン目を押し破ることによって容易に開封できる蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
破ることで開封する蓋は、以上のようなミシン目やカット線更には破断線などの強度弱点部を設けて開封の便を図る提案も多くなされ、また、現に市販されている。
【0003】
ところで、このような従来の蓋は、一般的には、合成樹脂シート、紙シート、アルミ箔或いはアルミシートの幾つかを組み合わせて、これらを積層して構成され、蓋の下面から上層適宜の範囲にわたって強度弱点部の一例としてミシン目が設けられている。また、一般的には、この強度弱点部は紙カップや紙管などの容器開口の縁から縁にわたって直線的に設けられることが多い。また、紙カップ用の蓋には、ホットメルトを最内層にする場合が多い。
【0004】
【特許文献1】特開2002−104515号公報
【特許文献2】特開平09―110077号公報
【特許文献3】特開平06―001375号公報
【特許文献4】実開平06−085295号公報
【特許文献5】実開平07−017762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の蓋はその強度弱点部が紙カップや紙管などの容器開口の縁から縁にわたって直線的に設けられるケースが多く、その結果として容器を不用意に落とした時、特に開口側が床面などに追突した場合には、簡単にこの強度弱点部が破断し、内容物、例えばインスタントコーヒー、粉ミルク、コピー機のトナー、更には各種の粉体などのが容器から零れ落ちてしまうおそれがあった。また、ホットメルトを採用すると、ホットメルトの清浄性に問題が生じるおそれがあり(ホットメルトの滓が生じる)、また、高温に晒されると溶融して不用意に開封してしまい、しかもホットメルト特有の臭気が商品価値を損ねるという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明者らは、容器が落下したときに蓋が破損されるメカニズムを考察したところ、落下の衝撃で容器が歪み、蓋材に張力が働くのが原因であることが分かった。この新知見を基にこの容器に掛かる落下時の衝撃を吸収する方途を鋭意模索した。その結果、蓋材にその衝撃を緩和する機能を持たせる有効な手段に思い至り、蓋に皺を設けて種々実験を試みた。得られた結果は満足の行くものであったので、ここに提案する。
【0007】
したがって本発明は、バリア性、カップに対する安定したシール性、更には易開封性が従来品に対して格段に優れたバリア性を有し、殊に落下時の衝撃を緩和して破れ難いバリア性を有する蓋を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の技術的な課題を解決するために、本発明の請求項1記載のバリア性を有する蓋は、最内層はポリエチレンのシーラント層を含む樹脂層で、この最内層の樹脂層の外側に接着層を介して金属箔層が貼着され、前記最内層には中央から放射状に複数本の強度弱点部が設けられていて、この強度弱点部によって前記最内層を含み金属箔層も破れて開封し易くしたバリア性を有する蓋であって、蓋にはエンボス加工が施されて伸縮性を備えさせてあるものである。
【0009】
最内層は最下層がポリエチレンのシーラント層で、このポリエチレン樹脂層の上に押出しポリエチレン樹脂層を介してポリエチレンテレフタレート樹脂層の二層から形成することができる。また、最外層は、前記最内層の前記ポリエチレンテレフタレート樹脂層の外側に、例えば押出しポリエチレン樹脂層など介してアルミ箔などの金属箔層が貼着されて形成される。更に、前記最内層には中央から放射状に、望ましくは3〜8本の、ミシン目やカット線で形成される強度弱点部が設けられている。この強度弱点部は、シーラント層、接着層となるポリエチレンテレフタレート樹脂層の二層を貫いて設けられる。この強度弱点部は、前記最内層を含み金属箔層も簡便に破れて開封を容易にする。
【0010】
更に、最外層の金属箔層はバリア性を上手く確保する。最内層に放射状に設けられた強度弱点部は、これを押し破ろうとする外圧が負荷されると、強度弱点部に沿って、中心から周辺に向けて複数の扇状に容易に分割されて押し破られる。また、この最内層はポリエチレンのシーラント層を有しているので、紙カップや紙管に用いると、そのフランジやカールに生じる段差を埋めて気密性を実現する。更には、ホットメルトを採用しないために、高温に晒されても溶融が生じず、また、特有の臭気は全くない。
【0011】
このようなバリア性を有する蓋にあって、本発明では、蓋全体にエンボス加工が施されて伸縮性が備わっているために、容器が落下したときの衝撃によって、容器が歪み、蓋に張力が働いても、その張力はエンボスの伸縮作用によって上手く吸収される。
【発明の効果】
【0012】
したがって、この発明は以下の効果を奏する。
本発明のバリア性を有する蓋は、エンボス加工が施されているために、容器が落下した時の衝撃によって張力が負荷されても、これをその伸縮作用によって上手く吸収できるので、蓋は容易には破断されず、結果として落下強度が向上する。
【0013】
また、外層の金属箔層で気密性を十分に確保できながら、内側の層にミシン目やカット線などの強度弱点部をその中心から放射状に設けることによって、容易に押し破ることができ、併せて蓋の破片が生じるおそれも上手く解消できるようになった。また、最内層はポリエチレンのシーラント層を有するので、カップのフランジやカールにある段差の存在にかかわらず、これを上手く密閉でき、気密性を十分に確保できるようになった。更には、ホットメルトを採用しないために、安定したシール性が得られ、また、臭気の影響もなくすことができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明のバリア性を有する蓋を、インスタントコーヒーの詰め替え用容器1に適用した場合の実施の形態について、図面に従って詳細に説明する。
尚、この発明は、基本的には、紙カップや紙管にシールされるバリア性を有する蓋で、蓋を破ることによって開封する態様のもの全般に適用できる。したがって、以下の実施例に記載の構造に限定されるものではないことは改めて言うまでもない。
【0015】
先ず、詰め替え用容器1は、図3,4に示すように、筒状の容器本体2、バリア性を有する蓋3、保護キャップであるオーバーキャップ4からなる。
【0016】
容器本体2は有底の円筒形で、基材には矩形の紙片が用いらる。この紙製の円筒は、図5の部分拡大断面図に示すように、その最外層から内に向かって順に、インク層201、紙層202、エチレンメタクリル酸共重合樹脂(EMAA)203、アルミニウム箔204、ポリエチレンテレフタレート(PET)205、更に低密度ポリエチレン(LDPE)206が積層されてなる複合積層シートから成る。湿気や通気を一切遮断するためである。紙層202とアルミニウム箔204との間のエチレンメタクリル酸共重合樹脂(EMAA)203はこのアルミニウム箔204を紙層202にしっかりと貼着するためである。また、内面の低密度ポリエチレン(LDPE)206は蓋3との接着性を確保するためである。前記紙層202には上質紙を採用するのが望ましく、坪量150〜450g/m2 の範囲から適宜のものが選定される。また、エチレンメタクリル酸共重合樹脂(EMAA)203は10〜50μmの範囲、アルミニウム箔204は6〜20μmの範囲、ポリエチレンテレフタレート(PET)205は5〜50μmの範囲、更に低密度ポリエチレン(LDPE)206は30〜150μmの範囲でそれぞれ適宜選定される。
【0017】
また、上記の積層シートを得るための手段は公知の技術が採用される。例えば、ラミネートや塗着などの一般的な手法である。容器本体2を作成するには、前記のように表面処理された矩形の紙片を筒状に丸め、左右両サイドを重合させ、この重合部を糊代として適宜に接着する。接着手段は、接着剤を使用したり、熱融着させたり、適宜公知の手段が採用される。そして、上端は、図3、4に示すように、外方へ環状に巻込んだ環状巻込み部若しくは該環状巻込み部を扁平状に潰した扁平巻込み部(以下単にカール部と言う)5が形成されている。したがって、このカール部5の上面で前記両サイドの重合部では、どうしても上下方向で段差6が生じる。この段差6は気密性を損なうために、その始末が重要である。
【0018】
この容器本体2の開口部2A内には、図3、4に示すように、円筒形のホッパ7が嵌め込まれている。このホッパ7は前記容器本体2と同一の素材或いは厚みがほぼ0.8mmに設定された高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンなど適宜の樹脂素材で形成されている。このホッパ7は周囲に、上端に外向きフランジを備えないストレートな立ち上がり壁7Aを備える。この立ち上がり壁7Aが、その上端を容器本体2の開口部2Aの上端、つまりカール部5の上端面と同じ高さ位置にして、この開口部2A内に嵌め込まれている。また、この立ち上がり壁7Aの下端縁から一体に、上方かつ中央に向かって順次傾斜した漏斗7Bが備わっている。そしてこの漏斗7Bのテーパ角は、少なくとも20°、更に好ましくは40〜45°に設定される。
【0019】
ホッパ7はその漏斗7Bの上端が前記立ち上がり壁7A並びに容器本体2の開口部2Aの上端とほぼ同じ高さ位置、つまりはほぼ同一平面上に配置されるように、しっかりと位置合わせして、この開口部2Aに嵌め込まれ、開口部2Aの内周面に固定される。固定の手段は熱融着、高周波溶着、接着剤使用など適宜最も好ましい手段が採用される。
【0020】
前記ホッパ7の上端はバリア性を有する前記蓋3でシールされている。
このバリア性を有する蓋3は、図1に示すように、最内層8はポリエチレンのシーラント層9を含む樹脂層で、この最内層8の樹脂層の外側に接着剤層10を介して金属箔層11が貼着された複合シートが採用され、更に前記最内層8にはその中央から放射状に複数本の強度弱点部12が設けられていて、この強度弱点部12によって前記最内層8を含み金属箔層11も容易に破れて、開封し易くしてある。
【0021】
以上の構成を更に具体的に詳述する。
最内層8は最下層が30〜200μmの範囲から適宜に選択された厚みを備えたポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)のシーラント層9で、このポリエチレンのシーラント層9の上面に5〜50μmの範囲から適宜に選択された厚みを備えた前記接着剤層10として機能を奏するポリエチレンテレフタレート(PET)の押出し樹脂フィルムがラミネートされている。また、金属箔層11は6〜50μmの範囲から適宜に選択された厚みを備えたアルミニウム箔が採用されていて、このアルミニウム箔の下面に7〜100μmの範囲から適宜に選択された厚みを備えたポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム13がラミネートされている。そして、前記最下層のポリエチレンのシーラント層9と金属箔層11としてのアルミニウム箔の下の前記ポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム13とが前記接着剤層10としてのポリエチレンテレフタレート(PET)の押出し樹脂フィルムを介して互いに接着されて、複合シートに形成されている。この複合シートの処理の手段は、上記以外にも公知の技術が採用され、ラミネートや塗着などの一般的な手法である。
【0022】
以上の蓋3の全体形状は、図2〜4示すように、前記容器本体2の開口部2Aとほぼ同径、具体的には約90mmφの円形を呈し、その周縁部4Aが容器本体2の開口部2Aの上端、つまりカール部5の上端面に適宜に貼着される。一般的には熱融着される。但し、前記ホッパの立ち上がり壁7Aの上端面に貼着されても良いが、このホッパー7の前記漏斗7Bの上端縁、つまりは開口7B1の上縁に対しては、単に接触するのみの構成としてある。
【0023】
更にこのバリア性を有する蓋3には、図1〜3に示すように、中央から放射状に複数本の強度弱点部12としてのミシン目又はカット線(図例ではミシン目)が最内層8並びに前記ポリエチレンテレフタレート(PET)の押出し樹脂フィルムの接着剤層10に達するようにして設けられている(図1参照)。この強度弱点部12であるミシン目又はカット線によって前記最内層8を含み金属箔層11も容易に破れて、開封し易くしてある。ミシン目又はカット線は、図2に示すように、中央で互いに交差する3本の直線状で、ミシン目の長さは9mm、つなぎは1mmに設定されている。尚、3本という本数は、本発明の所期の目的を達成するための最低限の本数である。また、蓋3の大きさにもよるが、望ましい上限は10本である。10本以上であると逆にこの蓋3の強度を弱めるおそれが生じ、好ましくない。理想的には3〜8本(8本の例を図10に示す)である。
【0024】
更にこの発明において重要な構成は、図1、2に示すように、以上のような蓋3にエンボス加工が施されている点である。このエンボス14は、図例では凹凸波型が施されている。波の頂部15の間はほぼ3mmに、また頂部15から谷底16まではほぼ1mmに寸法設定されている場合を模式的に例示している。このエンボス14は、図示するように、蓋3の辺縁から互いに平行に中心に向かった複数本(縦波)とこれに直交する方向に所定間隔を隔てて平行な複数本(横波)とで格子状に設けられている。横波は辺縁側ほど密度が高く、つまり相互の間隔が短くなっていて、その隣り合う間隔は前記3mm程度である。また、蓋3の中心に向かうほどやや疎になり、4mm程度に設定されている。辺縁には逸早く落下衝撃が加わり易いので、これを早い段階で吸収し、結果として強度弱点部12が不用意に破断されるのを未然に防止するのに有効であるからである。
【0025】
このエンボス14の深さや幅は、また、形状は適宜に選択される。要するに、伸張性が備わる構造であれば、例えば梨地や皮しぼ、その他各種の凹凸模様が採用される。そして、蓋が伸ばされて強度弱点部12が破れるまでの伸び率は、従来品のエンボス14を設けない扁平な形状であるもののそれに比べて少なくとも2%以上を得られる形態が採用されている。望ましくは3〜4%である。3〜4%の数値は種々実験の結果得られた知見に基づいて設定されたものである。具体的にはほぼ2mm程度までの伸びに耐えることが出来た。従来品はほぼ0.5mm程度で破断した。上記の頂部15同士の幅と頂部15と谷底16までの深さとはこの条件を満足するに足る寸法である。また、このエンボス14は、望ましくは強度弱点部12以外の部位に設けられるのが望ましいが、必ずしもこの構成に拘泥する必要はない。種々実験の結果、強度弱点部12がある部分に設けた場合でも、機能上に大きな変化は見られなかった。更に、強度弱点部12は図示される直線に代えて、例えば蓋の中心を基点として渦巻状に辺縁に至るような弧状であったり、蓋の中心を基点として辺縁までジグザグ状或いは波型状の所謂曲線であっても同等の効果が得られた。
【0026】
保護キャップとしてのオーバーキャップ4は、前記容器本体2と同一の素材或いは厚みを0.8mm程度に設定された高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンなど適宜の樹脂が採用され、前記容器本体2の開口部2Aに外嵌合し、前記蓋3を保護し、併せて内部を衛生的に保つように働く。
【0027】
この発明による前記詰め替え用容器1の器内部に粉状のインスタントコーヒーPを収容する作業は、一般に、ホッパ7の開口7B1を介して行われる。
【0028】
次に、このように構成された実施例1の詰め替え用容器1の使用の仕方について説明する。
先ず、オーバーキャップ4を取り外し、次いで図6並びに図7に示すように、容器本体2を逆さにし、ホッパ7の漏斗7Bを補充用の容器の一例であるジャー17の円筒状の口部17Aに内嵌合出来る位置に宛がう。容器本体2内のインスタントコーヒーPはホッパ7から漏斗7B内にも流下してきているが、蓋3によって保持されている。次いで、図8並びに図9に示すように、容器本体2に、その漏斗7Bをジャー17の口部17Aへ向かって押し込むように押圧力を負荷する。この押圧力は、ジャー17の口部17A、一般的には本体から円筒状に立ち上がる筒上部分が蓋3を押し破るための力として働く。すなわち、このジャー17の口部17Aが蓋3を押し上げて、これをホッパ7の立ち上がり壁7Aと漏斗7Bとの間の断面三角形状の空間S内に押し込む力として機能する。この押圧力が付加された蓋3は、強度弱点部12であるミシン目が放射状に設けられているために、たちまちの内に極めて容易にこのミシン目に沿って複数の分割片に破断分割される。同時にこの漏斗7Bはジャー17の口部17A内に入り込む。その結果、前記ホッパ7の漏斗7Bの開口7B1が開放され、容器本体2内のインスタントコーヒーPが、ホッパ7の漏斗7Bによって、センターへと案内されつつ、一挙にジャー17内へ案内流下される。ジャー17へ補充を終えたこの詰め替え用容器1は破棄される。図中2Bは容器本体2の底部である。
【0029】
したがって、ジャー17の口部17Aに内嵌合された漏斗7BはインスタントコーヒーPをジャー17の外部へ零れ落とすことも無くジャー17内へ案内流下させる。その結果、インスタントコーヒーPは外気に必要以上触れさせるおそれもなく、したがって香りや風味が損なわれるおそれも可及的に少なくなった。
【0030】
また、容器2が落下したとき、容器に負荷されて蓋3の強度弱点部12を破る落下衝撃もエンボス14の存在によって上手く吸収される。因みに、本発明品とエンボス14を設けない従来品の落下耐性比較試験を行った結果、本発明品は5つのサンプルが共に4回の落下にも耐えて、充分満足する耐性を示したのに反して、従来品では多くても二度の落下に耐え切れず、強度弱点部12は簡単に破断した。
【0031】
また、出来上がった蓋の性能試験を行った結果、中央部分が上手く押し破られた。因みに押し破り強度は100N以下であった。また、紙カップを用いた開口部2Aの段差6における浸透液のチェック試験では、漏れの発生が全く見られなかった。更に、高温保存時にも蓋が紙カップの開口部2Aから剥離する例は見られなかった。また、蓋全体のバリア性はアルミ蓋と遜色なく好ましい結果を得た。ホットメルト蓋と比較して臭気の発生は全くなかった。
【0032】
このように、蓋3の最内層8がポリエチレン(線状手低密度ポリエチレン:LLDPE)のシーラント層9を備えているために、紙コップ特有の口部の段差6の存在にかかわりなく、蓋3で直接紙カップの開口部をシールした場合でも、これを上手くシールでき、気密性を十分に確保できるようになった。更には、ホットメルトを採用しないために、安定したシール性が得られ、また、臭気の影響もなくすことができた。
【0033】
尚、この発明は、図11に示すように、前記ホッパ7を備えない各種容器にも適用される。つまり、上記実施の形態に示した容器本体2にホッパなしのものを採用し、その開口部2Aに蓋3を設ける構成である。蓋の落下耐性も含めて、前記実施の形態に示した効果に関しては何の変化もなく、同等の結果が得られた。
【0034】
また、前記立ち上がり壁7Aの上端には、容器本体2の開口縁に、気密的に当接する外向きのフランジが備わっていてもよい。蓋3そのものの上述した実施形態に言う開封性、高温保持性、バリア性、臭気、開封感、更には強度弱点部12の落下耐性、加工性、更には安定性等の利点は全く削がれることはなく、同等の効果を発揮できる。
【0035】
また、以上の実施例では内容物としてインスタンの粉コーヒーを対象としているが、その他にも食品、非食品の他の分流体に適用できる。例えば、水溶性のミルク(粉ミルク)、ココア、茶、またはこれらの組み合わせの粉など。更には乾燥マッシュポテトや他の乾燥食品、ソースまたはグレービー粉、スープ粉などの他に複写機のトナーなどである。
【0036】
また、ジャー17に替わるものとして、コーヒー作成装置のコーヒー粉タンク、更には粉ミルクや複写機のトナーの補充容器にも適用できる。
【0037】
更に、前記蓋3のバリア材としてはシリカ蒸着フイルム、アルミナ蒸着フイルム、更にはアルミニウム箔等が採用されているが、これに代えて、例えばアルミ蒸着フィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)などのバリア性フイルム、更にはポリ酢酸ビニル(PVAC)やポリビニルアルコールコートフィルムなどのバリア性コーティングフィルムを採用できる。
【0038】
(実施例)
まず、ラミネート加工法によって、容器本体用として、〔容器外側〕紙層(坪量350g/m2 )/接着剤層/アルミニウム箔層(7.0μm)/ポリエチレンテレフタレート層(12μm)/低密度ポリエチレン層(60μm)〔容器内側〕構成の積層材料を作製した。また、ボトム部材として、〔容器外側〕低密度ポリエチレン層(20μm)/紙層(坪量230g/m2 )/低密度ポリエチレン層(20μm)/アルミニウム箔層(7.0μm)/接着剤層/ポリエチレンテレフタレート層(12μm)/接着剤層/低密度ポリエチレン層(50μm)〔容器内側〕構成の積層材料を作製した。これらの積層材料を用い、PMC社製カップ成形機で、胴部上端の外周にカール部をもつカップ状容器本体を作製した。次に、高密度ポリエチレン(三井化学 2100K)を用いて射出成形により、漏斗7Bを備え、周囲にリングを備えたホッパを作製した。漏斗7B並びにリングは共にほぼ0.8mm厚となるよう成形した。更に、〔上側〕アルミニウム箔層(7μm)/低密度ポリエチレン層(15μm)/ポリエチレンテレフタレート層(12μm)/低密度ポリエチレン層(100μm)〔下側〕構成の積層材料を作製し、この積層材料を用いて蓋材を作製した。
【0039】
次に、上述のカップ状容器本体をアンビルに挿着して、胴部上端のカール部を下側から支えると共に胴部を固定し、胴部上端内側の開口部に、ホッパーをリングの上端がカール部上端から上方へ突出しないようにして挿入して挿着し、溶着機を用い、開口部の内面にリングの外面を接合した。
【0040】
次いで、前記パーツの漏斗の開口を介してインスタントコーヒーを容器本体に充填した。最後に、前記カール部の上面に、ヒートシール法で前述の蓋材を熱融着して容器上端側を密封し、更にこの蓋材4の上から保護キッャプを被せることで紙容器を作製した。
【0041】
次に、本発明の図1〜4と図11に示した夫々の容器2と従来の容器との落下耐性の比較検討を以下の条件で行った。
先ず、夫々内容物を120g入れ、夫々の容器2の開口部2Aには本発明によるエンボス14を施した蓋3とエンボス14を施していない扁平な蓋3を夫々貼り付け、その後オーバーキャップ4を被せて試験用の容器を夫々5つ作った。この試験体を、容器2の開口部2Aが斜め45度下向となる姿勢で、地上高60cmから落下させた。
結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
試験結果から理解されるように、エンボスを備えない蓋の場合、3例が1度の落下で強度弱点部12が破断、残る2例も2度目の落下で強度弱点部12が破断した。これに比べて、エンボス14を備えた場合は、2例が4度目に強度弱点部12の破断を見たに過ぎず、残る3例は5度目の落下でも強度弱点部12の破断が見られず、本発明による蓋3の落下耐性の優位性を証明する結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のバリア性を有する蓋の一実施形態を示し、図2中A−A線に沿った拡大断面図である。
【図2】図1の蓋の底面図である。
【図3】図1のバリア性を有する蓋が適用される容器の一部を取り出して拡大表示した拡大図を含む全体分解斜視図である。
【図4】図3の容器が閉まっているときのこの容器の一端の断面図である。
【図5】容器の層構造を示す部分拡大断面図である。
【図6】図1のバリア性を有する蓋の作用の説明図で、ジャーへ内容物を補充する前の蓋と容器とジャーの関係を示す斜視図である。
【図7】図6に示される作用の説明図で、要部の断面図である。
【図8】図1のバリア性を有する蓋の作用の説明図で、ジャーへ内容物を補充する途中の蓋と容器とジャーの関係を示す斜視図である。
【図9】図8に示される作用の説明図で、要部の断面図である。
【図10】強度弱点部を8本にした場合の図2に対応する蓋の底面図である。
【図11】本発明が適用される容器の別の構造を示す一部省略断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1…詰め替え用容器
2…容器本体
2A…開口部
3…蓋
4…オーバーキャップ
5…カール
6…段差
7…ホッパ
8…最内層
9…シーラント層
10…接着剤層
11…金属箔層
12…強度弱点部
13…押出し樹脂層
14…エンボス
15…頂部
16…谷底
17…ジャー
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紙カップや紙管の開口にシールされる、金属箔とプラスチックシートの積層シートで、この積層シートに開封を容易にするためにミシン目やカット線、更には破断線などの強度弱点部を設けて成る構成の蓋に関し、更に詳しくは、紙カップや紙管の開口にシールし密閉でき、バリア性を保ち、しかもミシン目を押し破ることによって容易に開封できる蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
破ることで開封する蓋は、以上のようなミシン目やカット線更には破断線などの強度弱点部を設けて開封の便を図る提案も多くなされ、また、現に市販されている。
【0003】
ところで、このような従来の蓋は、一般的には、合成樹脂シート、紙シート、アルミ箔或いはアルミシートの幾つかを組み合わせて、これらを積層して構成され、蓋の下面から上層適宜の範囲にわたって強度弱点部の一例としてミシン目が設けられている。また、一般的には、この強度弱点部は紙カップや紙管などの容器開口の縁から縁にわたって直線的に設けられることが多い。また、紙カップ用の蓋には、ホットメルトを最内層にする場合が多い。
【0004】
【特許文献1】特開2002−104515号公報
【特許文献2】特開平09―110077号公報
【特許文献3】特開平06―001375号公報
【特許文献4】実開平06−085295号公報
【特許文献5】実開平07−017762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の蓋はその強度弱点部が紙カップや紙管などの容器開口の縁から縁にわたって直線的に設けられるケースが多く、その結果として容器を不用意に落とした時、特に開口側が床面などに追突した場合には、簡単にこの強度弱点部が破断し、内容物、例えばインスタントコーヒー、粉ミルク、コピー機のトナー、更には各種の粉体などのが容器から零れ落ちてしまうおそれがあった。また、ホットメルトを採用すると、ホットメルトの清浄性に問題が生じるおそれがあり(ホットメルトの滓が生じる)、また、高温に晒されると溶融して不用意に開封してしまい、しかもホットメルト特有の臭気が商品価値を損ねるという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明者らは、容器が落下したときに蓋が破損されるメカニズムを考察したところ、落下の衝撃で容器が歪み、蓋材に張力が働くのが原因であることが分かった。この新知見を基にこの容器に掛かる落下時の衝撃を吸収する方途を鋭意模索した。その結果、蓋材にその衝撃を緩和する機能を持たせる有効な手段に思い至り、蓋に皺を設けて種々実験を試みた。得られた結果は満足の行くものであったので、ここに提案する。
【0007】
したがって本発明は、バリア性、カップに対する安定したシール性、更には易開封性が従来品に対して格段に優れたバリア性を有し、殊に落下時の衝撃を緩和して破れ難いバリア性を有する蓋を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の技術的な課題を解決するために、本発明の請求項1記載のバリア性を有する蓋は、最内層はポリエチレンのシーラント層を含む樹脂層で、この最内層の樹脂層の外側に接着層を介して金属箔層が貼着され、前記最内層には中央から放射状に複数本の強度弱点部が設けられていて、この強度弱点部によって前記最内層を含み金属箔層も破れて開封し易くしたバリア性を有する蓋であって、蓋にはエンボス加工が施されて伸縮性を備えさせてあるものである。
【0009】
最内層は最下層がポリエチレンのシーラント層で、このポリエチレン樹脂層の上に押出しポリエチレン樹脂層を介してポリエチレンテレフタレート樹脂層の二層から形成することができる。また、最外層は、前記最内層の前記ポリエチレンテレフタレート樹脂層の外側に、例えば押出しポリエチレン樹脂層など介してアルミ箔などの金属箔層が貼着されて形成される。更に、前記最内層には中央から放射状に、望ましくは3〜8本の、ミシン目やカット線で形成される強度弱点部が設けられている。この強度弱点部は、シーラント層、接着層となるポリエチレンテレフタレート樹脂層の二層を貫いて設けられる。この強度弱点部は、前記最内層を含み金属箔層も簡便に破れて開封を容易にする。
【0010】
更に、最外層の金属箔層はバリア性を上手く確保する。最内層に放射状に設けられた強度弱点部は、これを押し破ろうとする外圧が負荷されると、強度弱点部に沿って、中心から周辺に向けて複数の扇状に容易に分割されて押し破られる。また、この最内層はポリエチレンのシーラント層を有しているので、紙カップや紙管に用いると、そのフランジやカールに生じる段差を埋めて気密性を実現する。更には、ホットメルトを採用しないために、高温に晒されても溶融が生じず、また、特有の臭気は全くない。
【0011】
このようなバリア性を有する蓋にあって、本発明では、蓋全体にエンボス加工が施されて伸縮性が備わっているために、容器が落下したときの衝撃によって、容器が歪み、蓋に張力が働いても、その張力はエンボスの伸縮作用によって上手く吸収される。
【発明の効果】
【0012】
したがって、この発明は以下の効果を奏する。
本発明のバリア性を有する蓋は、エンボス加工が施されているために、容器が落下した時の衝撃によって張力が負荷されても、これをその伸縮作用によって上手く吸収できるので、蓋は容易には破断されず、結果として落下強度が向上する。
【0013】
また、外層の金属箔層で気密性を十分に確保できながら、内側の層にミシン目やカット線などの強度弱点部をその中心から放射状に設けることによって、容易に押し破ることができ、併せて蓋の破片が生じるおそれも上手く解消できるようになった。また、最内層はポリエチレンのシーラント層を有するので、カップのフランジやカールにある段差の存在にかかわらず、これを上手く密閉でき、気密性を十分に確保できるようになった。更には、ホットメルトを採用しないために、安定したシール性が得られ、また、臭気の影響もなくすことができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明のバリア性を有する蓋を、インスタントコーヒーの詰め替え用容器1に適用した場合の実施の形態について、図面に従って詳細に説明する。
尚、この発明は、基本的には、紙カップや紙管にシールされるバリア性を有する蓋で、蓋を破ることによって開封する態様のもの全般に適用できる。したがって、以下の実施例に記載の構造に限定されるものではないことは改めて言うまでもない。
【0015】
先ず、詰め替え用容器1は、図3,4に示すように、筒状の容器本体2、バリア性を有する蓋3、保護キャップであるオーバーキャップ4からなる。
【0016】
容器本体2は有底の円筒形で、基材には矩形の紙片が用いらる。この紙製の円筒は、図5の部分拡大断面図に示すように、その最外層から内に向かって順に、インク層201、紙層202、エチレンメタクリル酸共重合樹脂(EMAA)203、アルミニウム箔204、ポリエチレンテレフタレート(PET)205、更に低密度ポリエチレン(LDPE)206が積層されてなる複合積層シートから成る。湿気や通気を一切遮断するためである。紙層202とアルミニウム箔204との間のエチレンメタクリル酸共重合樹脂(EMAA)203はこのアルミニウム箔204を紙層202にしっかりと貼着するためである。また、内面の低密度ポリエチレン(LDPE)206は蓋3との接着性を確保するためである。前記紙層202には上質紙を採用するのが望ましく、坪量150〜450g/m2 の範囲から適宜のものが選定される。また、エチレンメタクリル酸共重合樹脂(EMAA)203は10〜50μmの範囲、アルミニウム箔204は6〜20μmの範囲、ポリエチレンテレフタレート(PET)205は5〜50μmの範囲、更に低密度ポリエチレン(LDPE)206は30〜150μmの範囲でそれぞれ適宜選定される。
【0017】
また、上記の積層シートを得るための手段は公知の技術が採用される。例えば、ラミネートや塗着などの一般的な手法である。容器本体2を作成するには、前記のように表面処理された矩形の紙片を筒状に丸め、左右両サイドを重合させ、この重合部を糊代として適宜に接着する。接着手段は、接着剤を使用したり、熱融着させたり、適宜公知の手段が採用される。そして、上端は、図3、4に示すように、外方へ環状に巻込んだ環状巻込み部若しくは該環状巻込み部を扁平状に潰した扁平巻込み部(以下単にカール部と言う)5が形成されている。したがって、このカール部5の上面で前記両サイドの重合部では、どうしても上下方向で段差6が生じる。この段差6は気密性を損なうために、その始末が重要である。
【0018】
この容器本体2の開口部2A内には、図3、4に示すように、円筒形のホッパ7が嵌め込まれている。このホッパ7は前記容器本体2と同一の素材或いは厚みがほぼ0.8mmに設定された高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンなど適宜の樹脂素材で形成されている。このホッパ7は周囲に、上端に外向きフランジを備えないストレートな立ち上がり壁7Aを備える。この立ち上がり壁7Aが、その上端を容器本体2の開口部2Aの上端、つまりカール部5の上端面と同じ高さ位置にして、この開口部2A内に嵌め込まれている。また、この立ち上がり壁7Aの下端縁から一体に、上方かつ中央に向かって順次傾斜した漏斗7Bが備わっている。そしてこの漏斗7Bのテーパ角は、少なくとも20°、更に好ましくは40〜45°に設定される。
【0019】
ホッパ7はその漏斗7Bの上端が前記立ち上がり壁7A並びに容器本体2の開口部2Aの上端とほぼ同じ高さ位置、つまりはほぼ同一平面上に配置されるように、しっかりと位置合わせして、この開口部2Aに嵌め込まれ、開口部2Aの内周面に固定される。固定の手段は熱融着、高周波溶着、接着剤使用など適宜最も好ましい手段が採用される。
【0020】
前記ホッパ7の上端はバリア性を有する前記蓋3でシールされている。
このバリア性を有する蓋3は、図1に示すように、最内層8はポリエチレンのシーラント層9を含む樹脂層で、この最内層8の樹脂層の外側に接着剤層10を介して金属箔層11が貼着された複合シートが採用され、更に前記最内層8にはその中央から放射状に複数本の強度弱点部12が設けられていて、この強度弱点部12によって前記最内層8を含み金属箔層11も容易に破れて、開封し易くしてある。
【0021】
以上の構成を更に具体的に詳述する。
最内層8は最下層が30〜200μmの範囲から適宜に選択された厚みを備えたポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)のシーラント層9で、このポリエチレンのシーラント層9の上面に5〜50μmの範囲から適宜に選択された厚みを備えた前記接着剤層10として機能を奏するポリエチレンテレフタレート(PET)の押出し樹脂フィルムがラミネートされている。また、金属箔層11は6〜50μmの範囲から適宜に選択された厚みを備えたアルミニウム箔が採用されていて、このアルミニウム箔の下面に7〜100μmの範囲から適宜に選択された厚みを備えたポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム13がラミネートされている。そして、前記最下層のポリエチレンのシーラント層9と金属箔層11としてのアルミニウム箔の下の前記ポリエチレン(低密度ポリエチレン:LDPE)の押出し樹脂フィルム13とが前記接着剤層10としてのポリエチレンテレフタレート(PET)の押出し樹脂フィルムを介して互いに接着されて、複合シートに形成されている。この複合シートの処理の手段は、上記以外にも公知の技術が採用され、ラミネートや塗着などの一般的な手法である。
【0022】
以上の蓋3の全体形状は、図2〜4示すように、前記容器本体2の開口部2Aとほぼ同径、具体的には約90mmφの円形を呈し、その周縁部4Aが容器本体2の開口部2Aの上端、つまりカール部5の上端面に適宜に貼着される。一般的には熱融着される。但し、前記ホッパの立ち上がり壁7Aの上端面に貼着されても良いが、このホッパー7の前記漏斗7Bの上端縁、つまりは開口7B1の上縁に対しては、単に接触するのみの構成としてある。
【0023】
更にこのバリア性を有する蓋3には、図1〜3に示すように、中央から放射状に複数本の強度弱点部12としてのミシン目又はカット線(図例ではミシン目)が最内層8並びに前記ポリエチレンテレフタレート(PET)の押出し樹脂フィルムの接着剤層10に達するようにして設けられている(図1参照)。この強度弱点部12であるミシン目又はカット線によって前記最内層8を含み金属箔層11も容易に破れて、開封し易くしてある。ミシン目又はカット線は、図2に示すように、中央で互いに交差する3本の直線状で、ミシン目の長さは9mm、つなぎは1mmに設定されている。尚、3本という本数は、本発明の所期の目的を達成するための最低限の本数である。また、蓋3の大きさにもよるが、望ましい上限は10本である。10本以上であると逆にこの蓋3の強度を弱めるおそれが生じ、好ましくない。理想的には3〜8本(8本の例を図10に示す)である。
【0024】
更にこの発明において重要な構成は、図1、2に示すように、以上のような蓋3にエンボス加工が施されている点である。このエンボス14は、図例では凹凸波型が施されている。波の頂部15の間はほぼ3mmに、また頂部15から谷底16まではほぼ1mmに寸法設定されている場合を模式的に例示している。このエンボス14は、図示するように、蓋3の辺縁から互いに平行に中心に向かった複数本(縦波)とこれに直交する方向に所定間隔を隔てて平行な複数本(横波)とで格子状に設けられている。横波は辺縁側ほど密度が高く、つまり相互の間隔が短くなっていて、その隣り合う間隔は前記3mm程度である。また、蓋3の中心に向かうほどやや疎になり、4mm程度に設定されている。辺縁には逸早く落下衝撃が加わり易いので、これを早い段階で吸収し、結果として強度弱点部12が不用意に破断されるのを未然に防止するのに有効であるからである。
【0025】
このエンボス14の深さや幅は、また、形状は適宜に選択される。要するに、伸張性が備わる構造であれば、例えば梨地や皮しぼ、その他各種の凹凸模様が採用される。そして、蓋が伸ばされて強度弱点部12が破れるまでの伸び率は、従来品のエンボス14を設けない扁平な形状であるもののそれに比べて少なくとも2%以上を得られる形態が採用されている。望ましくは3〜4%である。3〜4%の数値は種々実験の結果得られた知見に基づいて設定されたものである。具体的にはほぼ2mm程度までの伸びに耐えることが出来た。従来品はほぼ0.5mm程度で破断した。上記の頂部15同士の幅と頂部15と谷底16までの深さとはこの条件を満足するに足る寸法である。また、このエンボス14は、望ましくは強度弱点部12以外の部位に設けられるのが望ましいが、必ずしもこの構成に拘泥する必要はない。種々実験の結果、強度弱点部12がある部分に設けた場合でも、機能上に大きな変化は見られなかった。更に、強度弱点部12は図示される直線に代えて、例えば蓋の中心を基点として渦巻状に辺縁に至るような弧状であったり、蓋の中心を基点として辺縁までジグザグ状或いは波型状の所謂曲線であっても同等の効果が得られた。
【0026】
保護キャップとしてのオーバーキャップ4は、前記容器本体2と同一の素材或いは厚みを0.8mm程度に設定された高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンなど適宜の樹脂が採用され、前記容器本体2の開口部2Aに外嵌合し、前記蓋3を保護し、併せて内部を衛生的に保つように働く。
【0027】
この発明による前記詰め替え用容器1の器内部に粉状のインスタントコーヒーPを収容する作業は、一般に、ホッパ7の開口7B1を介して行われる。
【0028】
次に、このように構成された実施例1の詰め替え用容器1の使用の仕方について説明する。
先ず、オーバーキャップ4を取り外し、次いで図6並びに図7に示すように、容器本体2を逆さにし、ホッパ7の漏斗7Bを補充用の容器の一例であるジャー17の円筒状の口部17Aに内嵌合出来る位置に宛がう。容器本体2内のインスタントコーヒーPはホッパ7から漏斗7B内にも流下してきているが、蓋3によって保持されている。次いで、図8並びに図9に示すように、容器本体2に、その漏斗7Bをジャー17の口部17Aへ向かって押し込むように押圧力を負荷する。この押圧力は、ジャー17の口部17A、一般的には本体から円筒状に立ち上がる筒上部分が蓋3を押し破るための力として働く。すなわち、このジャー17の口部17Aが蓋3を押し上げて、これをホッパ7の立ち上がり壁7Aと漏斗7Bとの間の断面三角形状の空間S内に押し込む力として機能する。この押圧力が付加された蓋3は、強度弱点部12であるミシン目が放射状に設けられているために、たちまちの内に極めて容易にこのミシン目に沿って複数の分割片に破断分割される。同時にこの漏斗7Bはジャー17の口部17A内に入り込む。その結果、前記ホッパ7の漏斗7Bの開口7B1が開放され、容器本体2内のインスタントコーヒーPが、ホッパ7の漏斗7Bによって、センターへと案内されつつ、一挙にジャー17内へ案内流下される。ジャー17へ補充を終えたこの詰め替え用容器1は破棄される。図中2Bは容器本体2の底部である。
【0029】
したがって、ジャー17の口部17Aに内嵌合された漏斗7BはインスタントコーヒーPをジャー17の外部へ零れ落とすことも無くジャー17内へ案内流下させる。その結果、インスタントコーヒーPは外気に必要以上触れさせるおそれもなく、したがって香りや風味が損なわれるおそれも可及的に少なくなった。
【0030】
また、容器2が落下したとき、容器に負荷されて蓋3の強度弱点部12を破る落下衝撃もエンボス14の存在によって上手く吸収される。因みに、本発明品とエンボス14を設けない従来品の落下耐性比較試験を行った結果、本発明品は5つのサンプルが共に4回の落下にも耐えて、充分満足する耐性を示したのに反して、従来品では多くても二度の落下に耐え切れず、強度弱点部12は簡単に破断した。
【0031】
また、出来上がった蓋の性能試験を行った結果、中央部分が上手く押し破られた。因みに押し破り強度は100N以下であった。また、紙カップを用いた開口部2Aの段差6における浸透液のチェック試験では、漏れの発生が全く見られなかった。更に、高温保存時にも蓋が紙カップの開口部2Aから剥離する例は見られなかった。また、蓋全体のバリア性はアルミ蓋と遜色なく好ましい結果を得た。ホットメルト蓋と比較して臭気の発生は全くなかった。
【0032】
このように、蓋3の最内層8がポリエチレン(線状手低密度ポリエチレン:LLDPE)のシーラント層9を備えているために、紙コップ特有の口部の段差6の存在にかかわりなく、蓋3で直接紙カップの開口部をシールした場合でも、これを上手くシールでき、気密性を十分に確保できるようになった。更には、ホットメルトを採用しないために、安定したシール性が得られ、また、臭気の影響もなくすことができた。
【0033】
尚、この発明は、図11に示すように、前記ホッパ7を備えない各種容器にも適用される。つまり、上記実施の形態に示した容器本体2にホッパなしのものを採用し、その開口部2Aに蓋3を設ける構成である。蓋の落下耐性も含めて、前記実施の形態に示した効果に関しては何の変化もなく、同等の結果が得られた。
【0034】
また、前記立ち上がり壁7Aの上端には、容器本体2の開口縁に、気密的に当接する外向きのフランジが備わっていてもよい。蓋3そのものの上述した実施形態に言う開封性、高温保持性、バリア性、臭気、開封感、更には強度弱点部12の落下耐性、加工性、更には安定性等の利点は全く削がれることはなく、同等の効果を発揮できる。
【0035】
また、以上の実施例では内容物としてインスタンの粉コーヒーを対象としているが、その他にも食品、非食品の他の分流体に適用できる。例えば、水溶性のミルク(粉ミルク)、ココア、茶、またはこれらの組み合わせの粉など。更には乾燥マッシュポテトや他の乾燥食品、ソースまたはグレービー粉、スープ粉などの他に複写機のトナーなどである。
【0036】
また、ジャー17に替わるものとして、コーヒー作成装置のコーヒー粉タンク、更には粉ミルクや複写機のトナーの補充容器にも適用できる。
【0037】
更に、前記蓋3のバリア材としてはシリカ蒸着フイルム、アルミナ蒸着フイルム、更にはアルミニウム箔等が採用されているが、これに代えて、例えばアルミ蒸着フィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)などのバリア性フイルム、更にはポリ酢酸ビニル(PVAC)やポリビニルアルコールコートフィルムなどのバリア性コーティングフィルムを採用できる。
【0038】
(実施例)
まず、ラミネート加工法によって、容器本体用として、〔容器外側〕紙層(坪量350g/m2 )/接着剤層/アルミニウム箔層(7.0μm)/ポリエチレンテレフタレート層(12μm)/低密度ポリエチレン層(60μm)〔容器内側〕構成の積層材料を作製した。また、ボトム部材として、〔容器外側〕低密度ポリエチレン層(20μm)/紙層(坪量230g/m2 )/低密度ポリエチレン層(20μm)/アルミニウム箔層(7.0μm)/接着剤層/ポリエチレンテレフタレート層(12μm)/接着剤層/低密度ポリエチレン層(50μm)〔容器内側〕構成の積層材料を作製した。これらの積層材料を用い、PMC社製カップ成形機で、胴部上端の外周にカール部をもつカップ状容器本体を作製した。次に、高密度ポリエチレン(三井化学 2100K)を用いて射出成形により、漏斗7Bを備え、周囲にリングを備えたホッパを作製した。漏斗7B並びにリングは共にほぼ0.8mm厚となるよう成形した。更に、〔上側〕アルミニウム箔層(7μm)/低密度ポリエチレン層(15μm)/ポリエチレンテレフタレート層(12μm)/低密度ポリエチレン層(100μm)〔下側〕構成の積層材料を作製し、この積層材料を用いて蓋材を作製した。
【0039】
次に、上述のカップ状容器本体をアンビルに挿着して、胴部上端のカール部を下側から支えると共に胴部を固定し、胴部上端内側の開口部に、ホッパーをリングの上端がカール部上端から上方へ突出しないようにして挿入して挿着し、溶着機を用い、開口部の内面にリングの外面を接合した。
【0040】
次いで、前記パーツの漏斗の開口を介してインスタントコーヒーを容器本体に充填した。最後に、前記カール部の上面に、ヒートシール法で前述の蓋材を熱融着して容器上端側を密封し、更にこの蓋材4の上から保護キッャプを被せることで紙容器を作製した。
【0041】
次に、本発明の図1〜4と図11に示した夫々の容器2と従来の容器との落下耐性の比較検討を以下の条件で行った。
先ず、夫々内容物を120g入れ、夫々の容器2の開口部2Aには本発明によるエンボス14を施した蓋3とエンボス14を施していない扁平な蓋3を夫々貼り付け、その後オーバーキャップ4を被せて試験用の容器を夫々5つ作った。この試験体を、容器2の開口部2Aが斜め45度下向となる姿勢で、地上高60cmから落下させた。
結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
試験結果から理解されるように、エンボスを備えない蓋の場合、3例が1度の落下で強度弱点部12が破断、残る2例も2度目の落下で強度弱点部12が破断した。これに比べて、エンボス14を備えた場合は、2例が4度目に強度弱点部12の破断を見たに過ぎず、残る3例は5度目の落下でも強度弱点部12の破断が見られず、本発明による蓋3の落下耐性の優位性を証明する結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のバリア性を有する蓋の一実施形態を示し、図2中A−A線に沿った拡大断面図である。
【図2】図1の蓋の底面図である。
【図3】図1のバリア性を有する蓋が適用される容器の一部を取り出して拡大表示した拡大図を含む全体分解斜視図である。
【図4】図3の容器が閉まっているときのこの容器の一端の断面図である。
【図5】容器の層構造を示す部分拡大断面図である。
【図6】図1のバリア性を有する蓋の作用の説明図で、ジャーへ内容物を補充する前の蓋と容器とジャーの関係を示す斜視図である。
【図7】図6に示される作用の説明図で、要部の断面図である。
【図8】図1のバリア性を有する蓋の作用の説明図で、ジャーへ内容物を補充する途中の蓋と容器とジャーの関係を示す斜視図である。
【図9】図8に示される作用の説明図で、要部の断面図である。
【図10】強度弱点部を8本にした場合の図2に対応する蓋の底面図である。
【図11】本発明が適用される容器の別の構造を示す一部省略断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1…詰め替え用容器
2…容器本体
2A…開口部
3…蓋
4…オーバーキャップ
5…カール
6…段差
7…ホッパ
8…最内層
9…シーラント層
10…接着剤層
11…金属箔層
12…強度弱点部
13…押出し樹脂層
14…エンボス
15…頂部
16…谷底
17…ジャー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最内層はポリエチレンのシーラント層を含む樹脂層で、この最内層の樹脂層の外側に接着層を介して金属箔層が貼着され、前記最内層には中央から放射状に複数本の強度弱点部が設けられていて、この強度弱点部によって前記最内層を含み金属箔層も破れて開封し易くしたバリア性を有する蓋であって、蓋にはエンボス加工が施されて伸縮性を備えさせてあることを特徴とするバリア性を有する蓋。
【請求項1】
最内層はポリエチレンのシーラント層を含む樹脂層で、この最内層の樹脂層の外側に接着層を介して金属箔層が貼着され、前記最内層には中央から放射状に複数本の強度弱点部が設けられていて、この強度弱点部によって前記最内層を含み金属箔層も破れて開封し易くしたバリア性を有する蓋であって、蓋にはエンボス加工が施されて伸縮性を備えさせてあることを特徴とするバリア性を有する蓋。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−52827(P2010−52827A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222919(P2008−222919)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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