説明

バリア性積層フィルムの製造方法

【課題】金属又は金属化合物の蒸着層を有するバリア性積層フィルムについて、折り曲げによる蒸着層へのクラックの発生を抑制することができるようにする。
【解決手段】蒸着層2上に接着剤層3とコーティング剤層4を積層したバリア性積層フィルムとするに際し、蒸着層2上に、ポリエステル系の樹脂を主剤とする溶剤系反応硬化型接着剤を塗布し、この接着剤が硬化する前に、ポリエステル系、ポリウレタン系又はポリエステルとポリウレタンの混合系の樹脂を主剤とする溶剤系反応硬化型コーティング剤を重ねて塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属又は金属化合物の蒸着層を有するバリア性積層フィルムの製造方法に関する。更に詳しくは、折り曲げによる蒸着層へのクラックを生じにくいバリア性積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルムを基材層とし、この基材層にアルコキシド塗布層を形成し、アルコキシド塗布層上に金属又は金属化合物の蒸着層を形成し、更に蒸着層上に接着剤層を介してポリプロピレンなどの熱接着性樹脂層を積層したバリア性積層フィルムとすると、基材層と蒸着層の密着性が高められることと、アルコキシド塗布層が可撓性で耐熱性があることにより、蒸着層へのクラックの発生によるバリア性の低下を防止できることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−207431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のバリア性積層フィルムは、折り曲げを繰り返すと蒸着層にクラックを生じやすい問題がある。
【0005】
本発明は、金属又は金属化合物の蒸着層を有するバリア性積層フィルムについて、折り曲げによる蒸着層へのクラックの発生を抑制することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ところで、上記従来のバリア性積層フィルムにおいて、蒸着層上に接着剤層を介して積層される熱接着性樹脂層は、バリア性積層フィルムをヒートシール加工できるようにするためのもので、特に蒸着層の保護を図る目的で設けられているものではない。また、特許文献1は、熱接着性樹脂層をドライラミネート加工法で設けることを開示しているだけで、具体的なドライラミネート手順は開示していない。
【0007】
本発明は、蒸着層上へ接着剤層を介して保護層としてのコーティング剤層を設けることで蒸着層へのクラックの発生を防止しようとするもので、特に接着剤層を構成する接着剤が未硬化のうちに、コーティング剤を重ねて塗布することで大きな蒸着層の保護効果が得られることを見出したことによってなされたものである。
【0008】
即ち、本発明は、基材層の表面に形成された蒸着層上に、接着剤層とコーティング剤層を順次積層したバリア性積層フィルムの製造方法において、接着剤としてポリエステル系の樹脂を主剤とする溶剤系反応硬化型接着剤、コーティング剤としてポリエステル系、ポリウレタン系又はポリエステルとポリウレタンの混合系の樹脂を主剤とする溶剤系反応硬化型コーティング剤を用い、蒸着膜上に塗布した接着剤が硬化する前にコーティング剤を重ねて塗布することを特徴とするバリア性積層フィルムの製造方法である。
【0009】
また、本発明は、接着剤の乾燥後(溶剤の揮散後)直ちにコーティング剤を塗布することをその好ましい態様として含むものである。
【発明の効果】
【0010】
接着剤が硬化する前にコーティング剤を塗布することで高い蒸着層の保護効果が得られる理由は定かではないが、接着剤とコーティング剤がその界面で相溶して混合されることや、接着剤とコーティング剤間でも一部反応が生じることなどにより、両者の一体性が高められることが高い蒸着層の保護効果につながっていると推測している。蒸着層が保護される結果、折り曲げによるバリア性の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の製造方法により製造されるバリア性積層フィルムの一例を示す断面図で、図中1は基材層、2は蒸着層、3は接着剤層、4はコーティング剤層である。基材層1上に蒸着層2が形成されており、この蒸着層上に接着剤層3とコーティング剤層4が順次積層されている。
【0012】
基材層1としては、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレンなどのフィルムを用いることができる。延伸フィルムでも未延伸フィルムでもよいが、強度的に優れる延伸フィルムが好ましく、最も好ましくは、強度、耐熱性及び透明性に優れるポリエステルの延伸フィルムである。
【0013】
蒸着層2は、金属又は金属化合物の薄膜で構成されている。この薄膜は、例えば真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどで形成することができる。薄膜の構成材料としては、アルミニウム、ケイ素、チタン、亜鉛、ジルコニウム、マグネシウム、スズ、銅、鉄などの金属や、これらの金属の酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物などの金属化合物を用いることができる。金属化合物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化亜鉛、フッ化マグネシウムなどを用いることができる。
【0014】
基材層1の蒸着層2形成面には、蒸着層2の形成に先立って、基材層1と蒸着層2間の接着性を向上させるためのアンカーコート層を設けておくことができる。
【0015】
接着剤層3は、接着剤を塗布し硬化させることで形成されるもので、接着剤層3を構成する接着剤としては、ポリエステル系の樹脂を主剤とする溶剤系反応硬化型接着剤が用いられる。硬化剤としては、イソシアネート系の硬化剤を用いることができる。接着剤は、ドライラミネート用として市販されているものから選択することができ、具体例としては、東洋モートン社製の主剤「TM265」とポリイソシアネート系硬化剤「CAT−RT−37」の組み合わせや、三井化学ポリウレタン社製の主剤「タケラックA−525」とポリイソシアネート系硬化剤「タケネートA−52」の組み合わせを挙げることができる。
【0016】
コーティング剤層4は、コーティング剤を塗布し硬化させることで形成されるもので、コーティング層4を構成するコーティング剤としては、ポリエステル系、ポリウレタン系又はポリエステルとポリウレタンの混合系樹脂を主剤とする溶剤系反応硬化型コーティング剤が用いられる。硬化剤としては、イソシアネート系の硬化剤を用いることができる。ポリエステル系樹脂の主剤の具体例としては、ユニチカ製「P−11」を挙げることができる。ポリウレタン系樹脂の主剤の具体例としては、東洋紡績社製「バイロンUR1700」、荒川化学社製「PU−305」を挙げることができる。ポリエステルとポリウレタンの混合系樹脂の主剤の具体例としては、ザ・インクテック社製「KY−3」、東洋紡績社製「バイロンUR8200」を挙げることができる。また、上記の主剤と組み合わされる硬化剤の具体例としては、日本ポリウレタン社製「コロネートL」、ザ・インクテック社製「XEL」を挙げることができる。
【0017】
本発明において、コーティング剤層4の形成は、蒸着層2上に接着剤を塗布し、接着剤が硬化する前にコーティング剤を塗布し、その後接着剤とコーティング剤を同時に反応硬化させることで行われる。接着剤が硬化する前とは、接着剤の硬化反応が終了する前を意味する。コーティング剤の塗布は、接着剤とコーティング剤の塗布状態にムラを生じないよう、塗布した接着剤の乾燥後に行うことが好ましい。また、接着剤の硬化反応が進む前にコーティング剤を塗布することが好ましいことから、接着剤の乾燥後直ちに行うことが好ましい。更に具体的には、接着剤の溶剤が蒸発して、接着剤の流動性が失われた状態でできるだけ早期にコーティング剤を塗布することが好ましい。このような状態でコーティング剤を塗布することで、接着剤層3とコーティング剤層4間の一体性が高まり、折り曲げによる蒸着層2でのクラックの発生を抑制することができる。
【0018】
コーティング層4の形成は、蒸着層2上に接着剤を塗布した後、この接着剤の硬化反応率が25%以内である内に行うことが好ましい。この硬化反応率は、硬化剤特有の赤外線吸収スペクトルを経時的に測定し、吸収量の変化状態(減少率)から測定することができる。例えば、硬化剤としてイソシアネートを用いる場合、2275〜2250cm-1に特有の吸収があり、この吸収量の大小から測定することができる。
【0019】
接着剤とコーティング剤の塗布は、例えばバーコーターなどで行うことができる。接着剤の塗布料は固形分換算で0.1〜2.0g/cm2、コーティング剤の塗布料は固形分換算で0.5〜3.0g/cm2であることが好ましい。
【0020】
基材層1の蒸着層2とは反対側の面又はコーティング材4の表面には、例えばヒートシール層を積層することができる。ヒートシール層を積層する好ましい面は、コーティング材4の表面である。
【実施例】
【0021】
実施例1
蒸着層としてSiO2の薄膜を形成したポリエステルフィルム(厚さ12μm)の蒸着層の面に、主剤(東洋モートン社製「TM−265」)17重量部と、溶剤(酢酸エチルエステル)54.4重量部と、ポリイソシアネート系硬化剤(東洋モートン社製「CAT−RT−37」)1.2重量部とを混合したポリエステル系反応硬化型接着剤を、バーコーターで、固形分換算で1.5g/m2塗布した。
【0022】
上記接着剤の塗布後、60℃で1分間乾燥させた後直ちに、接着剤の塗布面にコーティング剤を塗布した。コーティング剤としては、主剤(ザ・インクテック社製「KY−3」)100重量部と、溶剤(メチルエチルケトンとトルエンを重量比で1:1で混合した混合液)33重量部と、イソシアネート系硬化剤(ザ・インクテック社製「XEL」)7重量部とを混合した、ポリエステルとポリウレタンの混合系の反応硬化型コーティング剤を用いた。また、塗布料は固形分換算で2.0g/m2とした。
【0023】
上記コーティング剤の塗布後、40℃で24時間エージングして得たバリア性積層フィルムについて、ゲルボフレックス処理を6回施し、25℃、0%RHで酸素透過度を測定した。酸素透過度の測定は、JIS・K・7126B法に基づいて行った。
【0024】
結果を表1に示す。
【0025】
実施例2
接着剤を、主剤(三井化学ポリウレタン社製「タケラックA−525」)9重量部と、溶剤(酢酸エチルエステル)10重量部と、ポリイソシアネート系硬化剤(三井ポリケミカル社製「タケネートA−52」)1重量部とを混合したポリエステル系反応硬化型接着剤とし、塗布料を固形分換算で0.5g/m2と1.5g/m2の2種類とした。また、コーティング剤の塗布料は固形分換算で1.6g/m2とした。これら以外については実施例1と同様にして酸素透過度を測定した。
【0026】
結果を表1に示す。
【0027】
比較例1
接着剤の塗布後、40℃で24時間エージングして十分硬化させてからコーティング剤を塗布した以外実施例1と同様にして酸素透過度の測定を行った。
【0028】
結果を表1に示す。
【0029】
比較例2
接着剤の塗布後、40℃で24時間エージングして十分硬化させてからコーティング剤を塗布した以外実施例2と同様にして酸素透過度の測定を行った。
【0030】
結果を表1に示す。
【0031】
参考例1
実施例1で用いた、SiO2の薄膜を形成したポリエステルフィルム(厚さ12μm)に接着剤及びコーティング剤の塗布を行うことなく単独で、実施例1と同様にして酸素透過度の測定を行った。
【0032】
結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の製造方法により製造されるバリア性積層フィルムの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 基材層
2 蒸着層
3 接着剤層
4 コーティング剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層の表面に形成された蒸着層上に、接着剤層とコーティング剤層を順次積層したバリア性積層フィルムの製造方法において、接着剤としてポリエステル系の樹脂を主剤とする溶剤系反応硬化型接着剤、コーティング剤としてポリエステル系、ポリウレタン系又はポリエステルとポリウレタンの混合系の樹脂を主剤とする溶剤系反応硬化型コーティング剤を用い、蒸着膜上に塗布した接着剤が硬化する前にコーティング剤を重ねて塗布することを特徴とするバリア性積層フィルムの製造方法。
【請求項2】
接着剤の乾燥後直ちにコーティング剤を塗布することを特徴とする請求項1に記載のバリア性積層フィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−45543(P2009−45543A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213263(P2007−213263)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】