説明

バリ処理装置

【課題】超音波振動子を配設した洗浄槽を備えたバリ処理装置において、十分なバリの除去能力を有する一方で、被処理物にダメージを与えないバリ処理装置を提供する。
【解決手段】超音波振動子を駆動させる駆動信号は、第1の周波数の矩形波パルス信号からなる第1の信号に、第1の周波数よりも高周波数とした第2の周波数から第1の周波数にスイープさせた第2の信号を重ねた信号とする。特に、第2の信号は、第1の信号の2分の1の周期の間で、第2の周波数から第1の周波数にスイープさせる。また、洗浄槽に供給する洗浄水は循環配管を介して循環させるとともに、この循環配管には活性水生成手段を介設し、洗浄槽には活性水を貯留させる。洗浄槽には超音波振動子の複数の発振素子を千鳥状に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パンチングメタルなどの打抜成形部品や、2つ以上の型を重ね合わせて成形する鋳造部品あるいは射出成形部品などでは、形成加工にともなってバリが生じるために、このバリを除去するためのバリ処理が行われている。
【0003】
バリ処理の方法としては、研削処理などによる機械的な処理作業が用いられることが多いが、バリ処理される製品の表面に付着した油分やフラックスの洗浄除去を兼ねて、高圧の液体を噴射して処理する方法や、バリ処理される製品を洗浄液中に浸漬させて超音波によるキャビテーションを利用して処理する方法も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開第2558470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のバリ処理装置では、バリの除去能力が十分ではなく、必要程度にまでバリを確実に除去することが困難であった。
【0005】
特に、バリを確実に除去するために超音波の強度をできるだけ大きくした場合には、バリ除去されている製品自体にキャビテーションによる損傷を与えるおそれがあり、超音波の強度だけでバリの除去能力をコントロールすることは困難となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明のバリ処理装置では、超音波振動子を配設した洗浄槽を備えたバリ処理装置において、超音波振動子を駆動させる駆動信号は、第1の周波数の矩形波パルス信号からなる第1の信号に、第1の周波数よりも高周波数とした第2の周波数から第1の周波数にスイープさせた第2の信号を重ねた信号とした。
【0007】
さらに、以下の点にも特徴を有するものである。すなわち、
(1)第2の信号は、第1の信号の2分の1の周期の間で、第2の周波数から第1の周波数にスイープさせていること。
(2)洗浄槽に供給する洗浄水は循環配管を介して循環させるとともに、この循環配管には活性水生成手段を介設し、洗浄槽には活性水を貯留させたこと。
(3)洗浄槽には超音波振動子の複数の発振素子を千鳥状に配置したこと。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、超音波振動子を配設した洗浄槽を備えたバリ処理装置において、超音波振動子を駆動させる駆動信号は、第1の周波数の矩形波パルス信号からなる第1の信号に、第1の周波数よりも高周波数とした第2の周波数から第1の周波数にスイープさせた第2の信号を重ねた信号としたことによって、超音波の強度を過度に高めることなくバリの除去効率を向上させることができ、被処理物にダメージを与えることなくバリを除去できる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載のバリ処理装置において、第2の信号は、第1の信号の2分の1の周期の間で、第2の周波数から第1の周波数にスイープさせていることによって、最も効率よくバリを除去できる。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載のバリ処理装置において、洗浄槽に供給する洗浄水は循環配管を介して循環させるとともに、この循環配管には活性水生成手段を介設し、洗浄槽には活性水を貯留させたことによって、洗浄槽内の水中を伝搬する超音波振動が伝搬中に減衰することを抑制でき、バリに対して超音波振動を効率よく作用させることができる。しかも、被処理物の洗浄効果を高めることができ、そのうえ、被処理物から分離されたバリなどのゴミが被処理物に再付着することを抑止できる。
【0011】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリ処理装置において、洗浄槽には超音波振動子の複数の発振素子を千鳥状に配置したことによって、バリの除去効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のバリ処理装置では、超音波振動子を配設した洗浄槽に被処理物を浸漬させて、被処理物に形成されているバリを除去するバリ処理装置であって、超音波振動子を駆動させる駆動信号を、第1の周波数の矩形波パルス信号からなる第1の信号に、第1の周波数よりも高周波数とした第2の周波数から第1の周波数にスイープさせた第2の信号を重ねた信号としているものである。
【0013】
したがって、超音波の強度を過度に高めることなくバリの除去効率を向上させることができるので、被処理物にダメージを与えることなくバリを除去できる。
【0014】
しかも、洗浄槽に貯留した水はいわゆる磁気処理を施した活性水としている。なお、本発明で言う「活性水」は、「磁化水」あるいは「磁気水」ともよばれる水であって、永久磁石あるいは電磁石で生成された磁場を横切らせ、水クラスターを微細化した水である。
【0015】
このように、洗浄槽には活性水を貯留することにより、活性水の水クラスターが微細化されているので、洗浄槽内の水中を伝搬する超音波振動が伝搬中に減衰することを抑制でき、バリに対して超音波振動を効率よく作用させることができる。
【0016】
しかも、活性水によって被処理物に付着した油分の除去などの洗浄効果を高めることができ、そのうえ、被処理物から分離されたバリなどのゴミが被処理物に再付着することを抑止できる。
【0017】
以下において、図面に基づいて本発明の実施形態を詳説する。図1は、本実施形態のバリ処理装置の構成を説明するブロック図である。
【0018】
本実施形態のバリ処理装置は、超音波振動子10を底部に配設した洗浄槽20と、この洗浄槽20から横溢した水をオイルスキーマ30→チラー40→脱気装置50→活性水生成器60→循環ポンプ70→溶存酸素センサに順次送給して洗浄槽20に再度供給する循環配管Rと、洗浄槽20内の超音波振動子10を駆動させるための超音波発振器90とで構成している。
【0019】
洗浄槽20は、バリ処理される対象である被処理物Pを収容可能とした槽であって、洗浄槽20では、被処理物Pが水没状態となるように所定量の水を貯水している。図1中、21は、洗浄槽20内の水を排水するための排水管であり、22は排水管21の開閉操作を行う開閉バルブである。また、図1中、23はオーバーフロー配管であって、洗浄槽20から横溢させた水をこのオーバーフロー配管23を介してオイルスキーマ30に送給するようにしている。
【0020】
オイルスキーマ30は、洗浄槽20に浸漬した被処理物Pから遊離された油分などを分離除去するために設けている。プラスチック製品などのように、被処理物Pに油分が付着することがない場合には、オイルスキーマ30は敢えて設けなくてもよい。
【0021】
チラー40は、洗浄槽20内の水の温度が上昇することを抑制するために設けており、送給されてきた水の温度を低下させている。
【0022】
すなわち、洗浄槽20内では、超音波振動子10の駆動にともなって水が運動エネルギーを得ることに、さらには超音波振動子10が発熱することによって洗浄槽20内の水は加温されている。
【0023】
このようにして洗浄槽20内の水の温度が上昇すると、洗浄槽20内の水による超音波振動子10の冷却能力が低下して、超音波振動子10が高温状態となることによりダメージを受けるおそれがある。
【0024】
そこで、チラー40を用いて循環配管R内の水を冷却することにより、洗浄槽20内の水の温度上昇を抑制して、超音波振動子10を常に安定的に冷却可能としている。
【0025】
脱気装置50は、送給されてきた水の脱気を行っている。本実施形態では大日本インキ化学工業株式会社製の脱気モジュールを用い、この脱気モジュールに真空ポンプ51を連通連結して、圧力センサ52で減圧状態をモニタリングしながら脱気処理を行っている。
【0026】
このように洗浄槽20に送給される水を脱気装置50で脱気することにより、洗浄槽20内でキャビテーションを生じさせにくくすることができ、キャビテーションによって生じた気泡などにより洗浄不良が生じるおそれを解消できる。
【0027】
活性水生成器60は、後述するように循環配管Rの周囲に配置した電磁石で生起した磁場を、循環配管R内を流れる水に作用させるようにしており、これにより活性水を生成している。
【0028】
したがって洗浄槽20には活性水を送球でき、この活性水を用いて被処理物Pの超音波洗浄を行うことにより、微細化された水クラスターを用いて超音波洗浄を行うことができるので、被処理物Pの洗浄効果を高めることができる。
【0029】
しかも、水クラスターが微細化されていることによって、洗浄槽20内の水中を伝搬する超音波振動が伝搬中に減衰することを抑制でき、バリに対して超音波振動を効率よく作用させることができる。
【0030】
さらに、水クラスターが微細化されていることによって、被処理物Pから分離されたバリなどのゴミが水クラスターによって取り囲まれやすく、被処理物Pから分離されたバリなどのゴミが被処理物に再付着することを抑止できる。
【0031】
循環ポンプ70は、循環配管R内の水を円滑に送給するようにしており、この循環ポンプ70の下流側に設けた溶存酸素センサ80は循環配管R内の水の溶存酸素量をモニタリングするために設けている。
【0032】
洗浄槽20に送給される水中の溶存酸素量が高い場合には、被処理物Pを酸化させるおそれがあり、溶存酸素量が所定値を超える場合には、洗浄槽20に貯留する水を交換することが望ましい。
【0033】
なお、洗浄槽20には、図示しない給水配管から必要に応じて給水可能としている。
【0034】
超音波振動子10を駆動させるための超音波発振器90では、図2(a)の模式図に示す矩形波パルス信号からなる第1信号に、この第1信号の周波数よりも大きい周波数の第2信号を上乗せさせた図2(b)の模式図に示す複合信号を生成して超音波振動子10に入力している。
【0035】
このように、第1信号に、この第1信号の周波数よりも大きい周波数の第2信号を上乗せした複合信号に基づいて超音波振動子10を駆動させていることにより、被処理物Pのバリの除去効率を向上させることができる。
【0036】
本実施形態では、第1信号の周波数は25kHzとしており、第2信号の周波数は、第1信号の2分の1の周期の間で535kHzから25kHzにスイープする信号としている。また、第1信号の振幅は、±15Vとしている。
【0037】
このように第1信号に上乗せする第2信号をスイープさせることにより、超音波振動子10によって生成される超音波振動のエネルギーを作用させることができるバリなどの対象物のサイズの許容範囲を大きくすることができ、最も効率よくバリを除去できる。
【0038】
特に、第2信号は、周波数が大きい場合には振幅を大きくし、周波数が小さくなるにつれて振幅を小さくすることにより、より効果的にバリを除去することができる。
【0039】
また、図2(c)に示すように、第1信号に上乗せする第2信号は、第1信号の周波数よりも大きい周波数の信号として、この第2信号は、第1信号の2分の1の周期の間で振幅を漸次減衰させる信号を用いてもよい。この場合には、この信号を生成するための生成回路の回路構成を簡便とすることができる。
【0040】
超音波振動子10では、図3の洗浄槽20の平面視模式図に示すように、複数の発振素子11を千鳥状に配置している。したがって、バリの除去効率を向上させることができる。
【0041】
最後に活性水生成器60について説明する。本実施形態の活性水生成器60は、図4に示すように、循環配管Rに等間隔で設けた第1電磁石保持体61と、第2電磁石保持体62と、第3電磁石保持体63を備えており、第1〜3電磁石保持体61〜63でそれぞれ生じさせた磁場を、循環配管R内を送給される水に作用させて活性水を生成している。
【0042】
図4中、64は、第1〜3電磁石保持体61〜63にそれぞれ設けた電磁石に通電する電流の電流供給器である。
【0043】
図5に示すように、第1電磁石保持体61は、中央部に循環配管Rを挿通可能とした挿通口61aを設けており、この挿通口61aの周囲に4つの電磁石61bを配設している。
【0044】
電磁石61bは、電流供給器64による制御によってそれぞれ挿通口61a側に同極が生じるように通電している。なお、電磁石61bの代わりに永久磁石を配設してもよい。
【0045】
第2電磁石保持体62と第3電磁石保持体63は、それぞれ第1電磁石保持体61と同一構成である。ただし、第1〜3電磁石保持体61〜63においてそれぞれ図5に示すように仮想基準線65を想定して、たとえば、第2電磁石保持体62の仮想基準線65は、第1電磁石保持体61の仮想基準線65に対して約30°傾くように第2電磁石保持体62を配置し、第3電磁石保持体63の仮想基準線65は、第1電磁石保持体61の仮想基準線65に対して約60°、第2電磁石保持体62の仮想基準線65に対して約30°傾くように第3電磁石保持体63を配置している。
【0046】
このように、第1〜3電磁石保持体61〜63は、それぞれお互いに対して傾倒させて配置することにより、循環配管R内を送給される水に磁場を均一に作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態にかかるバリ処理装置のブロック図である。
【図2】(a)第1信号、(b)第1信号に第2信号を上乗せさせして形成した信号、(c)他の実施形態の信号の説明図である。
【図3】洗浄槽の平面視模式図である。
【図4】活性水生成器の概略模式図である。
【図5】第1電磁石保持体の概略模式図である。
【符号の説明】
【0048】
10 超音波振動子
20 洗浄槽
30 オイルスキーマ
40 チラー
50 脱気装置
60 活性水生成器
70 循環ポンプ
80 溶存酸素センサ
90 超音波発振器
R 循環配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動子を配設した洗浄槽を備えたバリ処理装置において、
前記超音波振動子を駆動させる駆動信号は、第1の周波数の矩形波パルス信号からなる第1の信号に、前記第1の周波数よりも高周波数とした第2の周波数から前記第1の周波数にスイープさせた第2の信号を重ねた信号としたことを特徴とするバリ処理装置。
【請求項2】
前記第2の信号は、前記第1の信号の2分の1の周期の間で、前記第2の周波数から前記第1の周波数にスイープさせていることを特徴とする請求項1記載のバリ処理装置。
【請求項3】
前記洗浄槽に供給する洗浄水は循環配管を介して循環させるとともに、この循環配管には活性水生成手段を介設し、前記洗浄槽には活性水を貯留させたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバリ処理装置。
【請求項4】
前記洗浄槽には前記超音波振動子の複数の発振素子を千鳥状に配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバリ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−44818(P2007−44818A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232331(P2005−232331)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(500558779)株式会社プログレス (1)
【Fターム(参考)】