説明

バルブ付き倒立容器

【課題】倒立させることが可能で、かつスリットを有するバルブからの液垂れを防止したバルブ付き倒立容器を提供すること。
【解決手段】倒立可能で、スリットを形成したバルブ14を口部6に組み付けたバルブ付き倒立容器2において、邪魔板7を具えた圧力調整具3をバルブ4の容器内側に取り付けた。邪魔板7は口部6内を閉塞するとともに内容液が通る通路を具え、容器内部から内容液をバルブ14の内側に流通させるが、圧力が急激に上昇してもバルブ内側への内容液の流量が急増しないように制限を加えてるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の圧力に応じて開閉するバルブを口部に具えたバルブ付き倒立容器に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性体の膜体にスリットを設け、押圧力が作用したときスリットが開放されて内容液を注出させるようにしたバルブが知られている。かかるバルブを容器の口部に取り付けると、容器の側面を押圧してスリットが開口し、容器内に収納した内容液を容易に注出させることができる。
【0003】
一方かかるバルブ付き容器においても収納した内容液の粘度が高い場合には、容器を上下反転させて口部を下に向けても内容液が口部に下がってくるまでに時間がかかり、特に内容液が残り少なくなると内容液がスリットから注出されるまでかなり待たせることとなっていた。そこでバルブを容器の下部に設け、容器を持ち上げて容器の側面を押圧すると、容器を上下反転させることなくただちに内容液を注出させることができるバルブ付き倒立容器が考えられている。
【0004】
【特許文献1】特公平6−59900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらバルブを容器の下に設けたバルブ付き倒立容器の場合には、内容液の自重によりスリットが開いたり、また、内容液の温度が上昇して内圧が高まったり、容器を強く下に置いてウォーターハンマー現象が容器内部に生じたときに圧力によりスリットが押し開けられ、内容液がバルブから漏出する恐れがあった。
【0006】
本発明は、倒立させて内容液を直ちに注出させることが可能で、かつスリットを有するバルブからの液漏れを防止できるバルブ付き倒立容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スリットを形成したバルブを口部に組み付け、口部を下にした倒立状態が可能なバルブ付き倒立容器において、邪魔板を具えた流量調整具をバルブの容器内側に取り付けた。邪魔板は、口部の前面に対向して口部を閉塞させるとともに内容液が通る通路を具え、内容液を容器内部からバルブの内側に流通させるが、容器内の圧力が急激に上昇してもバルブ内側への内容液の流量を急増させないように抑制している。
【0008】
邪魔板は、平板状でも、例えば同心円状に凹凸を具えていてもよい。通路は、内容液の比重、粘度、容器の収納量などから適宜設定する。通路は、開口面積、開口位置、数などを適宜設定し、容器側面を押圧してスリットから内容液が容易に注出でき、しかも急激な容器内の圧力上昇等による流量の急増を抑制し、スリットからの液漏れを防止するように形成する。
【0009】
バルブは、弾性を有する樹脂からなり、スリットを具え、力を受けていない自然な状態ではスリットは閉塞している。そして、バルブ内側の圧力が高まると、スリットが開かれ内容液が注出される。具体的にはバルブは、例えば円形の頂壁を有し、その頂壁の内側が容器側に球状に湾曲し、頂壁の中心を通るようにスリットが形成してあり、頂壁の周囲に容器側に延びる円筒状の第一側壁を有し、第一側壁の下端から斜め上方外側に傾斜壁を有し、傾斜壁の上端に円筒状の第二側壁が連結し、第二側壁の下端が取付基部に接続している。そして、圧力が加えられると、頂壁が外方に反転し、頂壁に形成されたスリットが開口する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバルブ付き倒立容器は、口部を下に向け倒立させた状態で容器を置いても、邪魔板が設けられているため内容液の重さがスリットに直接かからず、液漏れを生じさせない。
【0011】
また、容器内圧が急激に上昇しても、邪魔板に形成された通路の開口面積が狭いためスリットに衝撃が伝達されず、例えば、温度が上昇したり、容器を下に強く置いてウォーターハンマー現象が生じてもスリットから内容液が漏れ出ることがない。
【0012】
したがって、容器を倒立した状態で置いておき、容器の側壁などを押してすぐに内容液を注出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図4に、バルブ付き容器2を示す。
【0014】
バルブ付き容器2は、容器本体4と、容器本体4の口部6に組み付けられたバルブ付きキャップ8から構成してある。
【0015】
容器本体4は、側壁10が押圧により容易に弾性変形する樹脂製容器であり、上部に口部6が形成してある。口部6には、外周面に雄ねじ32が形成してあり、雄ねじ32にバルブ付きキャップ8が組み付けられる。
【0016】
バルブ付きキャップ8は、口部6に組み付けられる外キャップ12と、バルブ14と、蓋体16と、圧力調整具3とから構成されている。
【0017】
外キャップ12は、円筒状で、図1に示すように内面に口部6の雄ねじ32に螺合する雌ねじ33が形成してある。外キャップ12の上部には、円環状の頂壁28が平坦に形成してあり、容器2の上下を反転させて頂壁28を下にして立てておけるようになっている。また、外キャップ12の内側には、蓋体16が取り外し可能に取り付けられている。蓋体16は、容器を使用するまで口部6を閉鎖する蓋であり、バルブ14の頂板15に沿った押さえ板27を具えている。
【0018】
バルブ14は、適度な弾性を有する樹脂材から一体に成形されており、図2に示すように頂板15と、第一側壁17と、第二側壁19と、連結壁21(図1参照)と、基端部23とから構成されている。
【0019】
頂板15は、円形で、下側、すなわちバルブ14を口部6に組み付けたときの容器本体4側に球状に湾曲しており、中央には十字にスリット25が形成してある。スリット25は、バルブ14に力が加えられていない状態では、バルブ14の適度な弾性力で密閉した状態を保持している。
【0020】
第一側壁17は円筒状の壁体で、頂板15の外周端から下方に延び、下端にて連結壁21と連結している。連結壁21は、斜め上方外側に拡がる円錐台状で、外周端に第二側壁19の上端が連結している。第二側壁19は、円筒状の壁体で、下端に基端部23が取り付けられている。そしてバルブ14は、内側に圧力が加えられると、連結壁21と図2に示すように頂板15が反転し、上方に突出する。
【0021】
圧力調整具部3は、図3に示すように口部6の上端に取り付けられる円筒状の組付筒5と、組付筒5の内周に取り付けられた邪魔板7から構成されている。邪魔板7は円板状部材で、口部6の内周とほぼ等しい外形であり、周縁の4か所に切欠き9が均等に形成してある。切欠き9は、邪魔板7を表裏方向に切除しており、圧力調整具3を口部6に取り付けると、切欠き9が形成する通路を除いて口部6が閉塞される。
【0022】
バルブ付き容器2は、容器本体4内に内容液を収納した後、図4に示すように口部6に圧力調整具3と、バルブ14を組み付け、その上に外キャップ12を螺合する。すると、蓋体16とバルブ14により、容器本体4の口部6は密閉される。
【0023】
内容液を使用するには、蓋体16を外キャップ12から取り外し、バルブ付き容器2を上下反転させて側壁10を押圧する。すると、容器本体4の内圧が高まり、内容液が切欠き9を通って圧力調整具3から流出する。バルブ14は、内容液により内側から押圧されて図2の二点鎖線で示すように反転し、それとともにスリット25が開き、スリット25から内容液が注出される。
【0024】
使用が終了して側壁10の押圧を解除すると、バルブ14の反転が戻り、スリット25が閉じて口部6は閉鎖される。
【0025】
そしてバルブ付き容器2を倒立させ頂壁28を底面として立てておいた場合、内容液の重量は邪魔板7にかかり、切欠き9に流路抵抗があることからバルブ14の頂板15が押圧されず、液漏れなどを生じさせない。また温度上昇などによっても液漏れを生じさせない。
【0026】
更に、バルブ付き容器2を強く床の上などに置いたときに、ウォーターハンマーなどにより内容液の重量が下向きに大きく加えられるが、邪魔板7がその圧力を受けて、頂板15に圧力を伝達させず、バルブ14の内側に内容液が大量に流入することがないため、かかる場合であっても、バルブ14から内容液を流出させることがない。
【0027】
圧力調整具の他の例を図5に示す。この圧力調整具11は、邪魔板13の表裏面に同心円状の凹凸が形成してある。このように邪魔板13に凹凸を形成することにより、上記圧力調整具3の場合よりも容器本体4内の圧力変動を吸収させやすく構成できる。尚、凹凸は少なくとも容器側に設けられていればよい。
【0028】
図6に、蓋体の他の例を示す。この蓋体18は、外キャップ12に開放自在に取り付けられており、使用に先立ち折れ線20から折り曲げ、開放させる。開放した後は、特に閉鎖することなく使用する。すると、蓋体18を用いて安定してバルブ付き容器2を立てておくことができる。
【0029】
図7に外キャップの他の例を示す。この外キャップ22は、図1に示した外キャップ12の蓋体16に代えて、切り溝26を有するプルリング24とした。このように、本発明では、バルブ14を蓋体などで閉じる必要がないためプルリング24としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にかかるバルブ付き容器を示す部分断面図である。
【図2】バルブを示す斜視図である。
【図3】圧力調整具を示す斜視図である。
【図4】図1のバルブ付き容器を示す分解斜視図である。
【図5】圧力調整具の他の例を示す断面図である。
【図6】蓋体の他の例を示す平面図である。
【図7】外キャップの他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
2 バルブ付き容器
3、11 圧力調整具
4 容器本体
5 組付け筒
6 口部
7、13 邪魔板
8 バルブ付きキャップ
9 切欠き
10 側壁
12、22 外キャップ
14 バルブ
15 頂板
16、18 蓋体
17 第一側壁
19 第二側壁
20 折れ線
21 連結壁
23 基端部
24 プルリング
25 スリット
26 切り溝
27 押さえ板
28 頂板
32 雄ねじ
33 雌ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧変形可能な容器本体の口部に、スリットを開口させたバルブを組み付け、前記容器本体を押圧して前記スリットから内容液を注出させるバルブ付き容器において、
前記バルブを下にした、倒立状態に置くことが可能で、
かつ前記バルブの容器側に、前記容器本体内部から前記バルブに通じる通路を具えた圧力調整具を組み付け、該圧力調整具により、前記容器本体内部から前記バルブへの流量の急激な増加を制限したバルブ付き倒立容器。
【請求項2】
圧力調整具は、前記口部の開口前面に対向する邪魔板を具え、かつ該邪魔板の周囲に通路を形成する切欠きを設けた請求項1に記載のバルブ付き倒立容器。
【請求項3】
邪魔板が、同心円状に形成された凹凸を少なくとも容器側に形成した請求項2に記載のバルブ付き倒立容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−176526(P2007−176526A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−375708(P2005−375708)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】