説明

バルブ機構およびバルブ装置

【課題】円形断面の弁体によって通路を開閉するバルブ装置と提供すること。
【解決手段】弁室12には弁座面123aが形成され、弁座面123aには上流端開口3aが露出している。弁体14は弁座面123aとの間で弁体14を転動可能に保持する傾斜面152aと上流端開口3aを開放する際に弁体14を移動させる当接面152cを備える。傾斜面152aは、弁体保持部材15が第2位置15Bに位置したときに、弁体保持部材15が第1位置15Aに位置したときよりも弁座面123aに接近するように傾斜している。第1位置15Aから第2位置15Bへ弁体保持部材15を移動させると、傾斜面152aにより弁体14が閉じ位置14Bに移動させられて上流端開口3aを閉鎖する。第2位置15Bから第1位置15Aへ弁体保持部材15を移動させると、当接面152cにより弁体14が開き位置14Aに移動させられ上流端開口3aを開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形断面の弁体により流路を開閉するバルブ機構に関する。より詳細には、円形断面の弁体をバネ部材によって付勢することなく流路を開閉できるバルブ機構およびバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
球状の弁体によって通路を開閉するバルブ装置は、例えば、特許文献1、2に記載されている。特許文献1では、通路は回転可能な円盤を貫通するように設けられており、弁体はコイルバネによって円盤に向かって付勢されている。円盤が回転して通路の開口の位置と弁体の位置が一致すると、弁体はコイルバネの付勢力によって開口を塞ぎ、通路を閉鎖する。円盤が回転して流路の開口の位置と弁体の位置がずれると、開口と弁体との間に隙間が形成されて、通路が開放状態となる。特許文献2では、通路は弁体が配置されている弁室内に露出する開口を備えている。弁体は、板バネによって支持されており、弁室内で回転する回転体に設けられたカム面に従動するようになっている。通路が閉じられる際には、弁体はカム体によって開口に向かって移動させられて、開口を塞ぐ。通路が開かれる際には、弁体は、カム体によって開口から離れる方向に移動させられ、板バネによって開口の周辺に設けられたテーパー面に押し付けられる。これにより、開口と弁体との間に隙間が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−174180号公報
【特許文献2】特開2007−16935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献では、通路を開閉するために弁体を付勢するバネ部材が必要となっているので、その分、部品点数が増加するという問題がある。また、バルブ装置を組み立てる際に、バネ部材を弁体と当接するように組み込まなければならないので、その分、組み立ての作業性が低下するという問題がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、円形断面の弁体をバネ部材によって付勢することなく通路を開閉できるバルブ機構、およびバルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のバルブ機構は、
円形断面の弁体と、
前記弁体によって開閉される流体流通口と、
前記弁体の円形外周面の一部が面接触可能な湾曲面からなる弁座面を備え、当該弁座面に前記流体流通口が開口している弁座と、
前記弁体を、その円形断面の中心軸線回りに転動可能な状態で保持している弁体保持部材と、
前記弁体が前記流体流通口を開放する第1位置および前記弁体が前記流体流通口を閉鎖する第2位置に前記弁体保持部材を移動させる移動機構とを有し、
前記弁体保持部材は、前記弁座面との間に前記弁体を転動可能な状態で保持するために当該弁座面に対向配置されている弁体保持面と、当該弁体保持部材が前記第2位置から前記第1位置へ移動する際に前記弁体を前記第1位置へ向かう第1方向に移動させるための当接面を有し
前記弁体保持面は、前記弁体保持部材が前記第2位置に位置したときに、前記弁体保持部材が前記第1位置に位置したときよりも弁座面に接近するように前記弁体保持部材の移動方向に傾斜した傾斜面であり、
前記弁体保持部材の前記第1方向の移動に伴って前記弁体保持面の前記弁座面から離間した位置に移動した前記弁体を前記当接面により前記第1方向へ移動させて前記流体流通口を開放し、前記弁体保持部材の前記第1位置から前記第2位置へ向かう第2方向の移動に伴って、前記弁体保持面が前記弁体を前記第2方向に移動させて前記弁体保持面の前記弁座面に近接した位置において前記流体流通口を閉鎖することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、弁体保持部材を第1位置に移動させると、弁座面と弁体保持面の間に転動可能な状態で保持されている弁体は、弁体保持面の弁座面から離間した位置に移動するとともに、当接面により第1方向へ移動させられて流体流通口を開放する。また、弁体保持部材を第2位置に移動させると、第1位置から第2位置へ向かう第2方向の移動に伴って、弁体は、弁体保持面によって第1方向に移動させられる。ここで、弁体保持面は、弁体保持部材が第2位置に位置したときに、弁体保持部材が第1位置に位置したときよりも弁座面に接近するように弁体保持部材の移動方向に傾斜した傾斜面なので、弁体保持部材の第2方向への移動に伴って、弁体保持面上の弁体は弁座面に接近し、流体流通口を閉鎖する。この結果、弁体をバネ部材によって弁座面に付勢することなく、流体流通口を密閉できる。流路を開閉するためにバネ部材によって弁体を直接付勢する構成を採用する必要がないので、部品点数が削減されるとともに、組み立て作業が容易となる。
【0008】
本発明において、前記移動機構は、前記弁体保持部材を前記第1位置および前記第2位置の間で回動させることが望ましい。このようにすれば、移動機構によって弁体保持部材を直動させる場合と比較して、バルブ機構の小型化を図ることができる。
【0009】
この場合において、前記弁体保持部材の前記当接面は、前記弁体保持部材の前記回動中心線に向いている保持面部分を備えていることが望ましい。このようにすれば、弁体が弁体保持部材の回動中心と直交する方向に外れてしまうことを防止できる。
【0010】
本発明において、前記移動機構は、駆動源としてのソレノイドアクチュエータと、このソレノイドアクチュエータの直線運動を前記弁体保持部材の回動運動に変換する運動変換機構を備えていることが望ましい。弁体保持部材を回動させるための駆動源としては、例えば、ステッピングモータを用いることもできるが、運動変換機構を備えることにより、駆動源としてソレノイドアクチュエータを用いれば、バルブ機構の応答性を向上させることができる。また、ソレノイドアクチュエータを用いれば、ステッピングモータを用いる場合と比較して、バルブ機構を駆動するための制御回路を簡易なものとすることができる。
【0011】
ここで、前記運動変換機構は、前記ソレノイドアクチュエータによって前記弁体保持部材の回動中心線上を移動させられるスライド部材と、前記スライド部材の前記回動中心線回りの回転を規制する回動規制部と、前記弁体保持部材の前記回動中心線の方向の移動を規制する直動規制部と、前記弁体保持部材において前記回動中心線と同軸に形成されており、前記スライド部材が前記回動中心線の方向に移動可能に挿入されている貫通孔と、前記スライド部材の前記回動中心線の方向の直動を弁体保持部材の前記回動中心線回りの回動に変換するために前記スライド部材と前記貫通孔との間に設けられたカムを備えていることが望ましい。
【0012】
この場合において、前記カムは、前記スライド部材の外周面の周方向に沿って螺旋に形成され、前記回動中心線と平行な方向を向いている傾斜カム面と、前記貫通孔の内周面の周方向に沿って螺旋に形成され、前記回動中心線と平行な方向を向いている傾斜面からなるカムフォロワーとを備えていることが望ましい。このようにすれば、カムが面と面とが摺動する構成を備えるので、バルブ機構の耐久性が向上する。
【0013】
次に、本発明のバルブ装置は、
流体入口および流体出口が形成されている弁室と、
上記のバルブ機構とを有し、
前記弁室は、前記流体入口または前記流体出口を前記流体流通口として前記弁座が形成されている第1壁面部分と、前記第1壁面部分と対向している第2壁面部分とを備えており、
前記第2壁面部分は、ダイヤフラムによって規定されており、
前記弁室内には、前記弁体、前記弁体保持部材および前記運動変換機構が配置されており、
前記弁室の外には、前記ソレノイドアクチュエータが配置されており、
前記ソレノイドアクチュエータは、前記ダイヤフラムを介して前記運動変換機構と接続されていることを特徴とする。
【0014】
本発明のバルブ装置によれば、ダイヤフラムによって、流体が流通する弁室と、ソレノイドアクチュエータとの間の気密性や液密性を確保した状態で、流路を開閉することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、弁体保持部材を第1位置に移動させると、弁座面と弁体保持面の間に転動可能な状態で保持されている弁体は、弁体保持面の弁座面から離間した位置に移動するとともに、当接面により第1方向へ移動させられて流体流通口を開放する。また、弁体保持部材を第2位置に移動させると、第1位置から第2位置へ向かう第2方向の移動に伴って、弁体は、弁体保持面によって第1方向に移動させられる。ここで、弁体保持面は、弁体保持部材が第2位置に位置したときに、弁体保持部材が第1位置に位置したときよりも弁座面に接近するように弁体保持部材の移動方向に傾斜した傾斜面なので、弁体保持部材の第2方向への移動に伴って、弁体保持面上の弁体は弁座面に接近し、流体流通口を閉鎖する。この結果、弁体をバネ部材によって弁座面に付勢することなく、流体流通口を密閉できる。流路を開閉するためにバネ部材によって弁体を直接付勢する構成を採用する必要がないので、部品点数が削減されるとともに、組み立て作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】バルブ機構の動作原理を説明するための説明図である。
【図2】本発明を適用したバルブ装置の外観を示す斜視図である。
【図3】開状態のバルブ装置の上側部分の図2のA−A´線における断面図である。
【図4】開状態のバルブ装置の上側部分の図2のB−B´線における断面図である。
【図5】(a)はバルブ装置の上側部分の分解斜視図であり、(b)は上側ケースを凹部の側から見た斜視図である。
【図6】閉状態のバルブ装置の上側部分の図2のB−B´線における断面図である。
【図7】通路の開閉動作を説明するための説明図である。
【図8】本発明を適用したバルブ装置の変形例の内部構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照しながら、本発明を適用したバルブ機構を説明する。
【0018】
(バルブ機構の動作原理)
図1はバルブ機構の動作原理を説明するための説明図である。図1(a)は弁体保持部材が第1位置にある状態を示し、図1(b)は弁体保持部材が第1位置から第2位置へ移動する途中の状態を示し、図1(c)は弁体保持部材が第2位置の間にある状態を示す。
【0019】
バルブ機構100は、球状の弁体101と、弁体101によって開閉される流体流通口102と、流体流通口102が開口している弁座103と、弁体101を、その円形断面の中心軸線L0回りに転動可能な状態で保持する弁体保持部材104と、弁体保持部材104を図1(a)に示す第1位置104A、および、図1(c)に示す第2位置104Bに移動させる移動機構105とを有している。
【0020】
弁座103は、弁体101の円形外周面の一部が面接触可能な湾曲面からなる弁座面103aを備えており、流体流通口102はこの弁座面103aに開口している。
【0021】
弁体保持部材104は、弁座面103aとの間に弁体101を転動可能な状態で保持するために弁座面103aに対向配置されている弁体保持面104aと、弁体保持部材104が第2位置104Bから第1位置104Aへの移動に移動する際に、弁体101を第1位置104Aへ向かう第1方向D1に移動させるための当接面104bを有している。弁体保持面104aは、弁体保持部材104が第2位置104Bに位置したときに、弁体保持部材104が第1位置104Aに位置したときよりも弁座面103aに接近するように弁体保持部材104の移動方向に傾斜した傾斜面である。換言すれば、弁体保持面104aは、弁体保持部材104の移動方向において、第1位置104Aの側から第2位置104Bに向かって弁座面103aに対して離間する方向に傾斜する傾斜面である。
【0022】
移動機構105は、駆動源105aと、駆動源105aからの駆動力を弁体保持部材104に伝達する駆動力伝達経路(図1の矢印)を備えている。移動機構105は、弁体保持部材104を第1位置104Aと第2位置104Bの間で往復移動させる。
【0023】
第1位置104Aでは、弁体101は弁座面103aの一部および当接面104bに当接して流体流通口102を開放している開き位置101Aに保持されている。第2位置104Bでは、弁体101は弁座面103aに面接触して流体流通口102を閉鎖した閉じ位置101Bに保持されている。
【0024】
(バルブ機構による流体流通口の開閉動作)
図1(a)に示すように、バルブ機構100が流体流通口102を開放している状態では、弁体保持部材104は第1位置104Aに位置し、弁体101は開き位置101Aに保持されている。すなわち、弁体保持面104aに載せられた弁体101は、弁座面103aの下端縁部分および当接面104bと当接し、流体流通口102との間に隙間を開けている状態に保持されている。
【0025】
流体流通口102を閉鎖する場合には、図1(c)に示すように、弁体保持部材104は移動機構105によって第1位置104Aから第2位置104Bへ移動させられる。
【0026】
ここで、弁体保持面104aは、弁体保持部材104が第1位置104Aに位置したときよりも弁座面103aに接近するように弁体保持部材104の移動方向に傾斜した傾斜面なので、弁体保持部材104が第1位置104Aから第2位置104Bへ向かう第2方向D2に移動するのに伴って、弁体保持面104aが弁体101を第2方向D2へ移動させる。また、弁体保持面104aは、弁体保持部材104が第1位置104Aに位置したときよりも弁座面103aに接近するように弁体保持部材104の移動方向に傾斜した傾斜面なので、弁体保持面104a上の弁体101は、弁体保持部材104が第2方向D2に移動するのに伴って弁座面103aに接近し、流体流通口102を閉鎖する。
【0027】
また、弁体保持面104aは、弁座面103aとの間に弁体101を転動可能な状態で保持されているので、弁体101が、第1位置104Aから第2位置104Bへ向かう第2方向D2に移動する間、弁座103側の一部分が弁座面103aの内側に位置した状態で転動している。このため、図1(b)に示すように、弁体101は、弁体保持部材104が第2位置104Bに至る前に、当接面104b側の上側部分が弁座面103aの一部分に当接した状態となる。その後に、弁体保持部材104が更に第2方向D2に移動すると、弁体保持面104aが第2方向D2へ移動することにより、弁体保持面104a上の弁体101は弁座面103aに接近する。この結果、弁体101は弁座面103aに面接触した状態となり、閉じ位置101Bに保持される。従って、バルブ機構100によれば、弁体101をバネ部材によって弁座面103aに付勢することなく、流体流通口102を密閉できる。
【0028】
流体流通口102を開放する場合には、弁体保持部材104は移動機構105によって第2位置104Bから第1位置104Aに向かう第1方向D1へ移動させられる。
【0029】
ここで、弁体保持部材104が第1方向D1へ移動すると、弁座面103aと弁体保持面104aの間に転動可能な状態で保持されている弁体101は、弁体保持面104aの弁座面103aから離間した位置に移動するとともに、当接面104bによって第1方向D1へ移動させられる。そして、弁体保部材104が第1位置104Aに至ると、弁体101は、図1(a)に示す開き位置101Aに至る。開き位置101Aでは、弁体101には当接面104bが当接しており、弁体101は弁座面103aの一部と当接面104bとの間に挟まれた状態となっている。よって、弁体101をバネ部材によって付勢することなく、流体流通口102を開放した状態を維持できる。
【0030】
なお、弁体101としては、円形断面のものを用いることができ、球状のもののほか、円柱形状のものを用いることができる。
【0031】
また、弁座面103aは、弁体101の円形外周面の曲率と同じ曲率を有する湾曲面として形成することができるが、当該湾曲面に限られるものではない。
【0032】
さらに、移動機構105としては、弁体保持部材104を第1位置104Aと第2位置104Bとの間で直動させるもの、或いは、弁体保持部材104を第1位置104Aと第2位置104Bとの間で回動させるものを採用することができる。
【0033】
弁体保持部材104を直動させる場合には、駆動源105aとして、例えば、ソレノイドアクチュエータを用いることができる。弁体保持部材104を回動させる場合には、駆動源105aとして、ステッピングモータなどを用いることができる。
【0034】
また、弁体保持部材104を回動させる場合には、駆動力伝達経路の途中に直動運動を回動運動に変換する運動変換機構を配置することにより、駆動源105aとしてソレノイドアクチュエータを用いこともできる。なお、弁体保持部材104を回動させる場合には、弁体保持部材104の当接面104bが、弁体保持部材104の回動中心線に向いている保持面部分152e(図5参照)を備えるように構成しておくことが望ましい。このようにすれば、弁体101が、回動中心線と直交する方向に外れてしまうことを防止できる。
【0035】
(バルブ装置)
以下に本発明のバルブ機構100を搭載したバルブ装置の構成例を説明する。図2はバルブ装置の外観を示す斜視図である。バルブ装置1は、全体として軸状をしている。バルブ装置1は、流入管2と流出管3がそれぞれ軸線L1と平行に設けられている上側ケース4と、駆動源となるソレノイドアクチュエータ5が搭載されている下側ケース6を備えている。上側ケース4と下側ケース6との間には中間ケース7が挟まれている。
【0036】
バルブ装置1は、ノーマルクローズ型のアクティブバルブであり、流入管2および流出管3を介して連続する通路における流体の流れを制御する。ソレノイドアクチュエータ5への給電によってソレノイドアクチュエータ5が励磁されると、バルブ装置1は通路を開状態とする。ソレノイドアクチュエータ5への給電が停止され、ソレノイドアクチュエータ5の励磁が解除されると、バルブ装置1は流入管2および流出管3を介して連続する通路を閉状態とする。流体としては、気体あるいは液体が用いられる。本例では、バルブ機構100は、流出管3の上流端開口3aを開閉するために用いられている。
【0037】
(内部構成)
図3は開状態のバルブ装置1の上側部分のA−A´線における断面図である。図4は開状態のバルブ装置1の上側部分のB−B´線における断面図である。図5(a)はバルブ装置1の上側部分の分解斜視図であり、図5(b)は上側ケース4を凹部の側から見た斜視図である。図6は閉状態のバルブ装置の上側部分のB−B´線における断面図である。
【0038】
図3、図4に示すように、上側ケース4には、下端面10から上方に窪む凹部11が形成されている。この凹部11は弁室12の天井面(第1壁面部分)121および内周面122を規定している。天井面121には流入管2の下流端開口2a(図5(b)参照)と流出管3の上流端開口(流体流通口102)3aが露出している。流入管2の下流端開口2aおよび流出管3の上流端開口3aは円形となっている。下流端開口2aと上流端開口3aとは軸線L1回りに90°離れた位置に形成されている。
【0039】
弁室12の底面(第2壁面部分)は円盤形状のダイヤフラム13によって規定されている。凹部11の下端縁部分には、下側から上側に向かって第1円環状段部111と第2円環状段部112がこの順番で形成されており、ダイヤフラム13は、その外周縁部分の厚肉部分が下端側の第1円環状段部111の下向き面と中間ケース7の上端面から突出する円環状突部71の上端面との間に挟まれることにより、上側ケース4と中間ケース7の間に固定されている。
【0040】
弁室12内には、天井面121の側からダイヤフラム13の側に向かって、球状の弁体14、弁体14を保持している弁体保持部材15、弁体保持部材15を載せている円形プレート16がこの順番で配置されている。
【0041】
また、弁室12の天井面121には弁座123(弁座103)が形成されている。弁座123は弁体14の表面曲率と同じ曲率を有する凹曲面からなる弁座面123a(弁座面103a)を備えており、弁座面123aの中央部分には、流出管3の上流端開口3a(流体流通口102)が露出している。
【0042】
図5(a)に示すように、弁体保持部材15(弁体保持部材104)は、筒状の軸部151と、軸部151から当該軸部151の軸線L1と直交する方向に延びている弁体保持部152を備えている。軸部151の上側部分は、弁室12の内周面122から内側に突出する側壁部122aの円弧形状の内周面によって外周側から支持されている。これにより、弁体保持部材15は、軸部151の軸線と一致する回動中心線L2回りに回動可能となっている。軸部151の上端面は弁室12の天井面121に当接しており、軸部151の下端面は、円形プレート16の偏芯した位置から上方に突出する円環状突部161の上端面に当接している。これにより弁体保持部材15は、回動中心線L2の方向への移動が規制された状態となっており、回動中心線L2と直交する平面上を回動する。
【0043】
弁体保持部152は、図4に示すように、弁座面123aに対向して接近および離れる方向に傾斜している傾斜面152a(弁体保持面104a)を備えている。また、傾斜面152aにおける弁座面123aから最も離れている側の端から弁座面123aの側に延びている突部152bを備えている。傾斜面152aは、弁座面123aとの間に弁体を転動可能な状態で保持するための面である。突部152bは、上流端開口3aを開放する際に弁体14を移動させるためのものであり、傾斜面152aの側に、弁体14に当接可能な当接面152c(当接面104b)を備えている。
【0044】
また、突部152bは、回動中心線L2と直交する方向において、軸部151の外周面と対向する移動規制部152dを備えており、弁体14は、軸部151と移動規制部152dの間を転動可能に支持されている。移動規制部152dの軸部151の外周面と対向する端面(保持面部分)152eは、突部152bの傾斜面152a側の端面と連続するように形成されている。
【0045】
さらに、弁体保持部材15には、図5に示すように、軸部151から外周側に突出するバネ係合部153が形成されている。バネ係合部153は、傾斜面152aを挟んで突部152bとは反対側に設けられている。バネ係合部153と弁室12の内周面122との間には、コイルバネ17が挿入されている。
【0046】
ここで、当接面152c、移動規制部152dの端面152e、バネ係合部153の傾斜面152a側の面153a、および、弁室12の内周面122は、協働して弁体14が弁体保持部材15から外れないように弁体14の移動範囲を規制している。この結果、弁体14は、傾斜面152a上において、当接面152c、移動規制部152dの端面152e、バネ係合部153の傾斜面152a側の面153a、および、弁室12の内周面122によって規定されている弁室12の所定空間で保持される。
【0047】
円形プレート16は、周縁部分が上側ケース4の第2円環状段部112の下向き面とダイヤフラム13の周縁部分の上面の間に挟まれることにより固定されている。円形プレート16は、回動中心線L2と同軸に形成された円環状突部161と、この円環状突部161の内側に回動中心線L2と同軸に形成されたプレート貫通孔162と、弁体保持部材15の回動中心線L2回りの一方向の移動範囲を規制するための移動範囲規制用突部163を備えている。弁体保持部152は円環状突部161に載せられており、円環状突部161上で回動する。移動範囲規制用突部163は、円形プレート16の偏芯した位置から上方に突出している。
【0048】
次に、図3に示すように、弁室12内には、ソレノイドアクチュエータ5の直線往復運動を弁体保持部材15の回動中心線L2回りの回動運動に変換する運動変換機構18が構成されている。運動変換機構18は、ソレノイドアクチュエータ5とともに、弁体保持部材15を上流端開口3aの中心線L3と直交する平面に沿って移動させる移動機構19を構成している。
【0049】
移動機構19は、弁体保持部材15を、図3に示す第1位置15A(第1位置104A)と、図6に示す第2位置15B(第2位置104B)の間で往復移動させる。第1位置15Aでは、弁体14は上流端開口3aを開放している開き位置14Aに保持されている。開き位置14Aでは、傾斜面152a上の弁体14は、弁座面123aの周縁部分、突部152bの当接面152cと当接している。第2位置15Bでは、弁体14は弁座面123aに面接触して流体流通口102を閉鎖した閉じ位置15Bに保持されている。ここで、傾斜面152aは、弁体保持部材15が第2位置15Bに位置したときに、弁体保持部材15が第1位置15Aに位置したときよりも弁座面123aに接近するように弁体保持部材15の移動方向に傾斜している。換言すれば、傾斜面152aは、弁体保持部材15の移動方向において、第1位置15Aの側から第2位置15Bの側に向かって弁座面123aに対して離間する方向に傾斜している。
【0050】
図2、図5に示すように、運動変換機構18は、ソレノイドアクチュエータ5の駆動によって回動中心線L2上を移動させられるスライド部材181と、スライド部材181の回動中心線L2回りの回転を規制する回動規制部124と、スライド部材181がソレノイドアクチュエータ5によって上方に移動させられたときに、スライド部材181を回動中心線L2の方向の下方に付勢する力を発揮するバネ部材182を備えている。また、弁体保持部材15の軸部151おいて回動中心線L2と同軸に形成されており、スライド部材181が回動中心線L2の方向に移動可能に挿入されている貫通孔151aと、弁体保持部材15の回動中心線L2の方向の移動を規制する直動規制部183と、スライド部材181の回動中心線L2の方向の直動を弁体保持部材15の回動中心線L2回りの回動に変換するためのカム184を備えている。カム184はスライド部材181と弁体保持部材15の貫通孔151aとの間に設けられており、直動規制部183は弁室12の天井面121と円形プレート16の円環状突部161から構成されている。
【0051】
スライド部材181は、軸状をしており、上側部分の断面形状が小判形をしている。下側部分の外周面部分にはカム184を構成するカム面が形成されている。図5に示すように、カム面は、スライド部材181の外周面の周方向に沿って螺旋に形成され、回動中心線L2と平行な方向を向いている傾斜カム面181aである。回動規制部124は、弁室12の天井面121に形成された小判形の凹部であり、スライド部材181は、その上端部分が回動規制部124の内側に挿入されたままの状態で、回動中心線L2上を移動可能となっている。図3に示すスライド部材181の上昇位置181Aでは、スライド部材181の下端部分181bは、円形プレート16のプレート貫通孔162の下端開口と同じ位置にある。
【0052】
バネ部材182は、回動規制部124の天井面とスライド部材181の上端面の間に挿入されている。バネ部材182は、スライド部材181がソレノイドアクチュエータ5によって上方に移動させられると、圧縮させられてスライド部材181を下方に付勢する付勢力を発生する。また、バネ部材182は、ソレノイドアクチュエータ5への給電が停止し、ソレノイドアクチュエータ5の励磁が解除されると、その付勢力によってスライド部材181を下方に移動させる。
【0053】
貫通孔151aは、弁体保持部材15の軸部151に回動中心線L2と同軸に形成されている。貫通孔151aには、スライド部材181が回動中心線L2の方向に移動可能な状態で挿入されている。図5に示すように、貫通孔151aの内周面には、その内周面の周方向に沿って螺旋に形成され、回動中心線L2と平行な方向を向いている傾斜面152aからなるカムフォロワー151bが設けられている。カムフォロワー151bは、スライド部材181の傾斜カム面181aと共にカム184を構成している。
【0054】
ここで、カム184を構成する際に、傾斜カム面181aの回動中心線L2回りの角度に対する回動中心線L2の方向の変化量を大きく形成しておく。すなわち、傾斜カム面の181aのリード角を大きく形成しておく。また、カムフォロワー151bを傾斜カム面181aと対応する形状としておく。このようにすれば、スライド部材181が回動中心線L2の方向に移動したときに、弁体保持部材15を回動中心線L2回りに大きなトルクで回動させることができる。また、カム184が面と面とが摺動する構成を備えるので、バルブ装置1の耐久性を向上させることができる。
【0055】
中間ケース7は、扁平な多角柱形状の本体部70と、本体部70の上端面から上方に突出する円環状突部71と、本体部70から下方に突出する筒部72を備えている。円環状突部71と筒部72はバルブ装置1の軸線L1と同軸に形成されており、円環状突部71が上側ケース4の第1円環状段部111の内側に挿入されることにより、中間ケース7は上側ケース4に固定されている。また、中間ケース7には、筒部72の外周側を利用して下側ケース6が固定されている。
【0056】
円環状突部71および筒部72の内側には、軸線L1と平行に延びる第1、第2ケース貫通孔73、74が形成されている。第1ケース貫通孔73は弁体保持部材15の回動中心線L2と同軸に形成されている。すなわち、第1ケース貫通孔73は、弁体保持部材15の軸部151の貫通孔151a、円形プレート16のプレート貫通孔162、および、スライド部材181と同軸に形成されている。第2ケース貫通孔74は、軸線L1を中心として第1ケース貫通孔73から180°離れた位置に設けられている。
【0057】
筒部72には、ソレノイドアクチュエータ5の可動体51に接続された移動体20が軸線L1の方向に移動可能な状態で挿入されている。移動体20は、可動体51の移動に伴って軸線L1の方向に往復移動する。移動体20は外周面が筒部72の内周面に摺動する円盤部201と、円盤部201から軸線L1の方向の上方に突出する第1、第2柱部202、203を備えており、第1柱部202は第2柱部203よりも上方に長く突出している。第1柱部202は第1貫通孔151aに挿入されており、第2柱部203は第2貫通孔151aに挿入されている。
【0058】
ソレノイドアクチュエータ5への給電が行なわれると、可動体51は図6に示す待機位置51Aから上方に移動するので、移動体20が筒部72内を上方に移動する。これにより、第1柱部202の先端は、中間ケース7の上端面から突出する。この結果、ダイヤフラム13を介してスライド部材181の下端部分181bを上方に押し上げて、スライド部材181を図3に示す上昇位置181Aに移動させる。
【0059】
スライド部材181の上昇によってバネ部材182が圧縮されるので、バネ部材182にはスライド部材181を下方に向かって付勢する付勢力が発生する。また、スライド部材181が上昇すると、カム184によって、弁体保持部材15が第2位置15Bから第1位置15Aに移動する。この際に、コイルバネ17は圧縮して、弁体保持部材15を第1位置15Aから第2位置15Bに向かって付勢する付勢力を発生させる。
【0060】
ソレノイドアクチュエータ5への給電が停止すると、移動体20および可動体51は待機位置51Aに戻る。この際に、スライド部材181は、バネ部材182に発生した付勢力によって、その下端部分181bが円形プレート16のプレート貫通孔162から下方に露出した下降位置181B(図6参照)に下降させられる。スライド部材181が下降すると、カム184によって、弁体保持部材15は第1位置15Aから第2位置15Bに移動する。この際に、コイルバネ17の付勢力が、弁体保持部材15の第1位置15Aから第2位置15Bへの移動を補助する。
【0061】
(通路の開閉動作)
図3、図4、図6、図7を参照してバルブ装置1による通路の開閉動作を説明する。図7は上流端開口3aおよび弁体14の周辺部分を模式的に示す拡大図であり、図7(a)は弁体保持部材15が第1位置15Aに位置した状態を示し、図7(b)は弁体保持部材15が第1位置15Aから第2位置15Bに移動する途中の状態を示し、図7(c)は弁体保持部材15が第2位置15Bに位置した状態を示している。
【0062】
ソレノイドアクチュエータ5への給電が行なわれ、通路が開かれている開状態では、図3、図4に示すように、スライド部材181は上昇位置181Aに位置しており、弁体保持部材15は第1位置15Aに位置し、弁体14は開き位置14Aに位置している。図7(a)に示すように、開き位置14Aでは、弁体14は、弁座面123aの周縁部分、傾斜面152aおよび突部152bの当接面152cと当接しており、上流端開口3aとの間に隙間を開けた状態で保持されている。バネ部材182は圧縮された状態となっており、スライド部材181を下方に付勢する付勢力を発生させている。コイルバネ17も圧縮された状態となっており、弁体保持部材15を第2位置15Bに向かって付勢する付勢力を発生させている。弁体保持部材15は移動範囲規制用突部163に当接している。
【0063】
通路を閉じる際には、ソレノイドアクチュエータ5への給電が停止される。すると、図6に示すように、可動体51は待機位置51Aまで下降する。また、可動体51とともに、移動体20が下降する。スライド部材181は、バネ部材182に発生した付勢力によって下方に移動させられて、下降位置181Bに至る。
【0064】
スライド部材181が下降すると、弁体保持部材15は、カム184によって、回動中心線L2回りに第1位置15から第2位置15Bへ向かう第2回動方向D4(第2方向D2)へ回動させられる。この際に、コイルバネ17の付勢力が弁体保持部材15の第
2回動方向D4への回動を補助する。
【0065】
弁体保持部材15が第1回動方向D3に移動すると、図7(c)に示すように、弁体保持部材15に保持されている弁体14は、開き位置14Aから傾斜面152aによって第2回動方向D4へ移動させられる。
【0066】
ここで、弁体14は、弁体14の天井面121の側の一部分が弁座面123aの内側に挿入された状態で転動するように弁体保持部材15に保持されている。このため、図7(b)に示すように、弁体保持部材15が第2位置15Bに至る前に、弁体14は、第2回動方向D4の前側の上側部分14bが弁座面123aの周縁部分に当接する。
【0067】
その後、更に、弁体保持部材15が第2回動方向D4に移動すると、傾斜面152aは、弁体保持部材15が第2位置15Bに位置したときに、弁体保持部材15が第1位置15Aに位置したときよりも弁座面123aに接近するように弁体保持部材15の移動方向に傾斜しているので、傾斜面152a上の弁体14は、弁座面123aに接近する。しかる後に、弁体保持部材15が第2位置15Bに到達すると、図7(c)に示すように、弁体14は、上側部分が弁座面123aに嵌り、弁座面123aに面接触した閉じ位置14Bに保持される。従って、上流端開口3aは弁体14によって密閉された状態となる。第2位置15Bでは、バネ部材182およびコイルバネ17は付勢力を発生していない状態となる。
【0068】
次に、通路を開くためにソレノイドアクチュエータ5が駆動されると、可動体51が上昇し、移動体20はダイヤフラム13を介してスライド部材181を押し上げる。スライド部材181が上昇すると、カム184によって、弁体保持部材15は、回動中心線L2回りに第2位置15Bから第1位置15Aに向かう第1回動方向D3に回動する。
【0069】
弁体保持部材15が第1回動方向D3に回動すると、突部152bの当接面152cが弁体14に当接し、弁体14を第2回動方向D4に移動させる。すると、弁体14は、傾斜面152aの弁座面123aから離間した位置に移動するとともに、当接面152cによって第1揺動方向D3へ移動させられる。この結果、弁体14と上流端開口3aとの間には、隙間が形成される。
【0070】
しかる後に、弁体保持部材15が第1位置15Aに到達すると、図7(a)に示すように、傾斜面152a上の弁体14は、弁座面123aの縁部分、傾斜面152a、および、突部152bの当接面152cと当接した状態となり、弁体14と下流端開口2aとの間に隙間が形成された閉じ位置14Bで保持される。
【0071】
(本形態の効果)
本例のバルブ装置1によれば、バネ部材182によって弁体14を天井面121に向かって付勢することなく、弁体14によって流出管3の上流端開口3aを密閉できる。また、バネ部材182によって弁体14を付勢することなく、流出管3の上流端開口3aを開放することができる。バネ部材182によって弁体14を直接付勢する構成を採用する必要がないので、バルブ装置1の部品点数が削減されるとともに、その組み立て作業が容易となる。
【0072】
また、本例のバルブ装置1によれば、弁体14を駆動するための駆動源としてソレノイドアクチュエータ5を採用しているので、ステッピングモータを駆動源として用いる場合と比較して、バルブ装置1の応答性を向上させることができる。また、バルブ装置1を駆動するための制御回路を簡易なものとすることができる。
【0073】
さらに、本例のバルブ装置1によれば、弁室12の底面は、ダイヤフラム13によって規定されており、ソレノイドアクチュエータ5は、ダイヤフラム13を介してスライド部材181を移動させているので、弁室12と駆動源の間の気密性や液密性が確保されている。
【0074】
(バルブ装置の変形例)
図8は本発明を適用したバルブ装置の変形例の内部構成を示す部分断面図である。図8では、内部構成が分るように中間ケース7を省略して示してある。なお、本例は上記の実施の形態と同様の構成を備えているので、対応する部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0075】
本例では、円形プレート16を省略して、ダイヤフラム13に円形プレート16の機能を持たせている。
【0076】
すなわち、ダイヤフラム13には回動中心線L2と同軸に上方に突出する円環状突出部13aが設けられており、弁体保持部材15は筒状の軸部151の円環状下端面151cが円環状突出部13aに当接するようにして、円環状突出部13aの上に載せられている。円環状突出部13aの半径方向の断面形状は山型となっており、軸部151と円環状突出部13aは線接触している。また、可動体51が最も下降している待機位置51Aにある状態では、弁体保持部材15の軸部151と弁室12の天井面121との間には空隙(不図示)が形成されるようになっている。
【0077】
また、ダイヤフラム13の円環状突出部13aの中央部分には、回動中心線L2と同軸に凹部13bが形成されており、スライド部材181の下端部分181bは凹部13bに嵌め込まれている、ダイヤフラム13の下面側の凹部13bと対応する位置には、下方に突出する突部13cが形成されている。突部13cには、移動体20の第1柱部202が当接可能となっている。
【0078】
通路を開くためにソレノイドアクチュエータ5が駆動されると、可動体51が待機位置51Aから上昇するので、移動体20がダイヤフラム13を介してスライド部材181および弁体保持部材15を上昇させる。ここで、弁体保持部材15は、スライド部材181の上昇途中で軸部151が弁室12の天井面121に当接し、その上昇が規制される。従って、それ以降にスライド部材181が上昇すると、カム184によって、弁体保持部材15は、第2位置15Bから第1位置15Aに向かって回動中心線L2回りに回動する。この結果、弁体14は、上流端開口3aの間に隙間が形成された開き位置14Aに保持される。
【0079】
次に、ソレノイドアクチュエータ5への給電が停止されと、移動体20および可動体51は待機位置51Aに戻るので、スライド部材181および弁体保持部材15はバネ部材182に発生した付勢力によって下降する。ここで、弁体保持部材15は、スライド部材181の下降途中で軸部151がダイヤフラム13の円環状突出部13aに当接し、その下降が規制される。従って、それ以降にスライド部材181が下降すると、カム184によって、弁体保持部材15は第1位置15Aから第2位置15Bに向かって回動中心線L2回りに回動する。従って、弁体14は上流端開口3aを密閉する閉じ位置14Bに保持される。
【0080】
本例では、弁体保持部材15が回動する際に、弁体保持部材15はダイヤフラム13の円環状突出部13aを摺動するので、摺動抵抗が少ない。また、本例によれば、円形プレート16が必要ないので、部品点数を削減できる。
【0081】
(その他の実施の形態)
バルブ装置1では、弁体14によって流出管3の上流端開口3aを開閉するように構成されているが、流入管2の下流端開口2aを開口とする弁座123を形成することにより、弁体14によって流入管2の下流端開口2aを開閉してもよい。
【0082】
また、バルブ装置1では、スライド部材181と貫通孔151aとの間に設けたカム184は、螺旋の傾斜カム面181aと、この傾斜カム面181aに従動するカムフォロワー151bであったが、スライド部材181の外周面に螺旋に形成されたカム溝と、このカム溝内に挿入されて当該カム溝に従動するカムフォロワーを備える構成とすることもできる。
【0083】
また、バルブ装置1では、弁体14が回動中心線L2と直交する方向の外側に移動することを規制する移動規制部152dを弁体保持部材15の突部152bに設けてあるが、移動規制部152dを上側ケース4の凹部11の内周面122から内側に突出するように設けることもできる。
【符号の説明】
【0084】
1・バルブ装置、2・流入管、2a・下流端開口、3・流出管、3a・上流端開口、4・上側ケース、5・ソレノイドアクチュエータ、6・下側ケース、7・中間ケース、10・上側ケースの下端面、11・凹部、12・弁室、13・ダイヤフラム、13a・円環状突出部、13b・凹部、13c・突部、14・弁体、14a・中心点、14b・上側部分、14A・開き位置、14B・閉じ位置、15・弁体保持部材、15A・第1位置、15B・第2位置、16・円形プレート、17・コイルバネ、18・運動変換機構、19・移動機構、20・移動体、51・可動体、51A・待機位置、70・本体部、71・円環状突部、72・筒部、73・第1ケース貫通孔、74・第2ケース貫通孔、100・バルブ機構、101・弁体、101A・開き位置、101B・閉じ位置、102・流体流通口、103・弁座、103a・弁座面、104・弁体保持部材、104a・弁体保持面、104b・当接面、104A・第1位置、104B・第2位置、205・移動機構、205a・駆動源、111・第1円環状段部、112・第2円環状段部、121・天井面、122・内周面、122a・側壁部、123・弁座、123a・弁座面、124・回動規制部、151・軸部、151a・貫通孔、151b・カムフォロワー、151c・円環状下端面、152・弁体保持部、152a・傾斜面、152b・突部、152c・突部の端面、152d・移動規制部、152e・保持面部分、153・バネ係合部、153a・バネ係合部の内側の面、161・円環状突部、162・プレート貫通孔、163・移動範囲規制用突部、181・スライド部材、181a・傾斜カム面、181b・下端部分、181A・上昇位置、181B・下降位置、182・バネ部材、183・直動規制部、184・カム、201・円盤部、202・第1柱部202、203・第2柱部、D1・第1方向、D2・第2方向、D3・第1回動方向、D4・第2回動方向、L1・軸線、L2・回動中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形断面の弁体と、
前記弁体によって開閉される流体流通口と、
前記弁体の円形外周面の一部が面接触可能な湾曲面からなる弁座面を備え、当該弁座面に前記流体流通口が開口している弁座と、
前記弁体を、その円形断面の中心軸線回りに転動可能な状態で保持している弁体保持部材と、
前記弁体が前記流体流通口を開放する第1位置および前記弁体が前記流体流通口を閉鎖する第2位置に前記弁体保持部材を移動させる移動機構とを有し、
前記弁体保持部材は、前記弁座面との間に前記弁体を転動可能な状態で保持するために当該弁座面に対向配置されている弁体保持面と、当該弁体保持部材が前記第2位置から前記第1位置へ移動する際に前記弁体を前記第1位置へ向かう第1方向に移動させるための当接面を有し、
前記弁体保持面は、前記弁体保持部材が前記第2位置に位置したときに、前記弁体保持部材が前記第1位置に位置したときよりも弁座面に接近するように前記弁体保持部材の移動方向に傾斜した傾斜面であり、
前記弁体保持部材の前記第1方向の移動に伴って前記弁体保持面の前記弁座面から離間した位置に移動した前記弁体を前記当接面により前記第1方向へ移動させて前記流体流通口を開放し、前記弁体保持部材の前記第1位置から前記第2位置へ向かう第2方向の移動に伴って、前記弁体保持面が前記弁体を前記第2方向に移動させて前記弁体保持面の前記弁座面に近接した位置において前記流体流通口を閉鎖することを特徴とするバルブ機構。
【請求項2】
請求項1において、
前記移動機構は、前記弁体保持部材を前記第1位置および前記第2位置の間で回動させることを特徴とするバルブ機構。
【請求項3】
請求項2において、
前記弁体保持部材の前記第2弁体保持面は、前記弁体保持部材の前記回動中心線に向いている保持面部分を備えていることを特徴とするバルブ機構。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記移動機構は、駆動源としてのソレノイドアクチュエータと、このソレノイドアクチュエータの直線運動を前記弁体保持部材の回動運動に変換する運動変換機構を備えていることを特徴とするバルブ機構。
【請求項5】
請求項4において、
前記運動変換機構は、
前記ソレノイドアクチュエータによって前記弁体保持部材の回動中心線上を移動させられるスライド部材と、
前記スライド部材の前記回動中心線回りの回転を規制する回動規制部と、
前記弁体保持部材の前記回動中心線の方向の移動を規制する直動規制部と、
前記弁体保持部材において前記回動中心線と同軸に形成されており、前記スライド部材が前記回動中心線の方向に移動可能に挿入されている貫通孔と、
前記スライド部材の前記回動中心線の方向の直動を弁体保持部材の前記回動中心線回りの回動に変換するために前記スライド部材と前記貫通孔との間に設けられたカムを備えていることを特徴とするバルブ機構。
【請求項6】
請求項5において、
前記カムは、前記スライド部材の外周面の周方向に沿って螺旋に形成され、前記回動中心線と平行な方向を向いている傾斜カム面と、前記貫通孔の内周面の周方向に沿って螺旋に形成され、前記回動中心線と平行な方向を向いている傾斜面からなるカムフォロワーとを備えていることを特徴とするバルブ機構。
【請求項7】
流体入口および流体出口が形成されている弁室と、
請求項4ないし6のうちのいずれかの項に記載のバルブ機構とを有し、
前記弁室は、前記流体入口または前記流体出口を前記流体流通口として前記弁座が形成されている第1壁面部分と、前記第1壁面部分と対向している第2壁面部分とを備えており、
前記第2壁面部分は、ダイヤフラムによって規定されており、
前記弁室内には、前記弁体、前記弁体保持部材および前記運動変換機構が配置されており、
前記弁室の外には、前記ソレノイドアクチュエータが配置されており、
前記ソレノイドアクチュエータは、前記ダイヤフラムを介して前記運動変換機構と接続されていることを特徴とするバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−214666(P2011−214666A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83623(P2010−83623)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】