説明

バルブ組立用治具

【課題】増締めや分解時に部品に傷を付けず、組み付け寸法等のばらつきを低減し、且つ作業の迅速化に寄与する治具の実現。
【解決手段】容器の注入口に当接して液体を注入するバルブユニット10のバルブ開口部に対し、弁部材17の組付又は分解を行うためのバルブ組立用治具であって、バルブ本体11を治具本体41,42に位置決めして固定するクランプ部43,44と、弁部材の上端面に係合するように弁部材の上端面の形状に対応した形状部を有するアダプタ60と、アダプタを弁部材の上端面に押圧するよう鉛直軸方向に移動可能な押圧部と、を有し、押圧部は、鉛直上方に付勢されると共に鉛直軸方向に移動可能な軸部51と、軸部を鉛直下方に移動するように操作するハンドル部53と、前記ハンドル部の操作により前記アダプタが弁部材の上端面を押圧した状態を保持するように前記軸部を鉛直軸まわりに回転可能に固定させる固定部54と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール製造工程で空缶にビールを充填するフィラーに搭載されるバルブユニットの構成部品を組付若しくは分解するためのバルブ組立用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ボールバルブの弁箱のステム孔にステムを自動装着するバルブ組立装置が記載されている。また、特許文献2には、ライン配管が加圧状態のままバルブの分解、修理を行う治具が記載されている。また、特許文献3には、工具を用いずに、弁体がケース本体に対して着脱自在なバタフライバルブ装置が記載されている。
【特許文献1】特開平05−057536号公報
【特許文献2】特開2003−097761号公報
【特許文献3】特開2000−257726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のバルブユニットに対する構成部品の組付や分解は、専用工具を用いて熟練者が行っているが、現状では1人又は2人の熟練者が手作業で行うため締め付けトルクや組み付け寸法等にばらつきが生じてしまう。また、構成部品同士を接触させた状態で増締めや分解を行うため部品に傷等が付いてしまう。このような締め付けトルクのばらつきや傷はバルブ開度が変動する要因となり、例えば、缶に注入されるビールの入味量のばらつきを招く。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、増締めや分解時に部品に傷を付けず、組み付け寸法等のばらつきを低減し、且つ作業の迅速化に寄与する治具を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係るバルブ組立用治具は、容器の注入口に当接して液体を注入するバルブユニット10のバルブ開口部に対し、弁部材17の組付又は分解を行うためのバルブ組立用治具であって、前記バルブ開口部が上方に向いた状態でバルブ本体11を治具本体41,42に位置決めして固定するクランプ部43,44と、前記弁部材の上端面に係合するように当該弁部材の上端面の形状に対応した形状部を有するアダプタ60と、前記アダプタを前記弁部材の上端面に押圧するよう鉛直軸方向に移動可能な押圧部と、を有し、前記押圧部は、鉛直上方に付勢されると共に鉛直軸方向に移動可能な軸部51と、前記軸部を鉛直下方に移動するように操作するハンドル部53と、前記ハンドル部の操作により前記アダプタが前記弁部材の上端面を押圧した状態を保持するように前記軸部を鉛直軸まわりに回転可能に固定させる固定部54と、を有する。
【0006】
また、好ましくは、前記治具本体は、前記弁部材が前記バルブ開口部から離間した開弁状態で前記治具本体に固定されるように前記バルブ本体を保持する保持部45と、前記バルブ本体と前記治具本体との間に介在させて前記弁部材を前記開弁状態とする補助部品70を更に有する。
【0007】
また、好ましくは、前記弁部材は、前記バルブ開口部より内部に位置する弁軸部18に螺合される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、増締めや分解時に部品に傷を付けず、組み付け寸法等のばらつきを低減し、且つ作業の迅速化に寄与する治具を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0010】
[バルブユニットの構成]
図1は、本実施形態のバルブ組立用治具により組付及び分解されるバルブユニットの全体構成を示す側断面図である。図2は、図1のバルブ本体の側断面図(a)及び缶口部材の側断面図(b)である。
【0011】
本実施形態のバルブ組立用治具により組付及び分解されるバルブユニット10は、例えば、ビール製造工程で空缶にビールを充填するフィラーと呼ばれるビール充填装置(不図示)に搭載される。
【0012】
図1及び図2に示すように、11は中空円筒状の外形を有するバルブ本体である。バルブ本体11の外周面には、バルブ本体11をフィラーに取り付けるための矩形平板状の支持板12が固定されている。この支持板12には、ノズル13により連通又は遮断が切り替えられる流路12aが形成されている。
【0013】
バルブ本体11の下端部の外周面には、缶等の容器の注入口に当接する円筒状の缶口部材14が固定されている。また、缶口部材14の環状の先端フランジ面には全周に亘って溝14aが形成されており、この溝14aに樹脂製のシール材15が圧入され、容器の注入口に当接し密閉する。缶口部材14の側面には、バルブ本体11を上下方向に作動させる駆動軸(図3参照)が接続されるアーム部14bが形成されている。
【0014】
一方、バルブ本体11の下端部の内周面には、バルブ開口部を形成するバルブシート16が固定されている。更に、バルブシート16のバルブ開口部には、リキッドコーンと呼ばれる円錐状の弁部材17が設けられている。弁部材17は、バルブ本体11内を貫通して鉛直上方に延びる中空円筒状のハウジング20の下端部に螺合されて固定されている。19は不使用時に保護や衛生上の目的で缶口部材14の先端面を覆う着脱可能なカバー部材である。
【0015】
ハウジング20の内部には中空状の弁軸部材18が収容されており、この弁軸部材18の上端部の外周面に設けられたスプリング21,22及びスペーサ23により中立位置に付勢されている。また、ハウジング20は、バルブ本体11の上端部の内周面に対して所定距離だけスライド可能であり、ハウジング20の外周面に設けられたスプリング24により付勢されている。また、弁軸部材18は、上部ストッパ25及び下部ストッパ26により上方への移動が規制され、下部ストッパ26により下方への移動が規制される。弁部材17は、ハウジング20がバルブ本体11の内周面に対して相対的に鉛直軸方向に往復動作することにより弁部材17を駆動してバルブシート16のバルブ開口部を開閉する。
【0016】
ハウジング20の上端部に取り付けられたプレッシャキャップ30から上方に延びる弁軸部材18の上端部には、吸盤状のリッドシール27がナット28により固定されている。また、弁軸部材18の下端部には、上下方向に所定距離だけ浮動可能な球体29aを有する弁機構29が取り付けられ、容器内に注入された液体の液面が缶口部材14に近づくにつれて球体29aが上昇し、液面が所定位置になったときに弁軸部材18の下端開口部を閉塞することで弁軸部材18の中空孔18aの連通が遮断される。
【0017】
次に、バルブユニット10の駆動機構について説明する。
【0018】
図3は、本実施形態のバルブユニットの駆動機構を示す正面図(a)、(a)のi−i断面図(b)及び(a)の上面図(c)である。
【0019】
図3に示すように、バルブユニット10は支持板12を介してベース部材1に支持される。また、缶口部材14のアーム部14bには、上方に延びる駆動軸31が回動自在に連結されている。駆動軸31は、下部が支持板12、上部がベース1に対して夫々軸受32を介してスライド可能に支持されている。また、駆動軸31は、駆動軸31の外周に設けられたスプリング33により下方に付勢されつつ、駆動軸31の中央部分に取り付けられた駆動ローラ34が上下に移動するのに連動して上下方向に駆動される。
【0020】
また、ベース1における駆動軸31の上端部近傍には、駆動ローラ35の上下動によりリンク部材36が揺動して回動する回動軸37が設けられ、回動軸37がリンク部材38を介してバルブユニット10のハウジング20(及び弁軸部材18)を上下方向に移動させることで弁部材17が上下に作動しバルブシート16が開閉される。
【0021】
即ち、駆動軸31が下方の位置P1に移動することで、缶口部材14が容器の注入口2に密着し、この状態でバルブシート16を開成することで液体が容器内に注入されていくと同時に、容器内のエアが押し出されつつ、弁軸部材18の中空孔18aを通って不活性ガスが容器内に注入される。また、駆動軸31が上位置P2に移動することで、缶口部材14が容器の注入口2から離間し、バルブシート16が弁部材17により閉成された状態となり、液体の注入が停止される。
【0022】
[治具の構成]
図4は、本発明に係る実施形態のバルブ組立用治具の正面図(a)、側断面図(b)及び平面図(c)である。但し、図4(a)及び(c)では、上部の構成部材は省略して示している。
【0023】
図4に示すように、本実施形態のバルブ組立用治具は、基板41と、基板41から上方に延びる4本の脚部42と、脚部42の上端部で上下反転された状態のバルブユニット10の支持板12を位置決めする固定台43と、バルブユニット10の支持板12を固定台43に固定するクランプ部44と、固定台43下方の脚部42に設けられ、上下反転された状態のバルブ本体11の上端部(使用状態)に位置するハウジング20aに当接して保持する保持部45と、脚部42から固定台43の上方に延びて上端部が水平方向に折曲げられたアーム部46と、アーム部46に対して上下方向に移動可能に支持された押圧部47と、を備える。
【0024】
基板41、脚部42、固定台43、及びアーム部46は金属製であり、固定台43の上面及び保持部45は夫々支持板12及びバルブ本体11との滑りを良くするためにナイロン樹脂等で構成される。クランプ部44は固定台43に固定されており、作業者が操作可能なレバー48を有する。
【0025】
固定台43には、バルブユニット10の支持板12と略同じ寸法(幅、長さ及び厚さ)の凹状の収容部が形成されている。この収容部は、バルブユニット10の支持板12と略同じ長さ及び厚さの対向する側壁部43aと略同じ幅及び厚さの後壁部43bとで囲まれたスペースとして形成されている。更に、各側壁部43bには、バルブユニット10の支持板12の浮きを抑える浮き止め板43cが形成されている。
【0026】
押圧部47は、軸受49を介してアーム部46に対して上下方向にスライド可能及び鉛直軸まわりに回転可能に軸支される軸部51と、軸部51の上端部に設けられてスプリング52により上方に付勢されている軸部51を下方に押し下げるためのハンドル部53と、軸部51を押し下げた位置で固定する固定ねじ54と、軸部51の下端部に装着されてバルブユニット10の弁部材17の端面に係合する組付用アダプタ60を下方に押圧する円錐状の係止部55と、を有する。
【0027】
図5は、組付用アダプタの構成を示す上面図(a)、側面図(b)及び底面図(c)である。
【0028】
図5に示すように、組付用アダプタ60は、弁部材17を弁軸部材18に螺合する際に使用される部品であり、円盤状のアダプタ本体61の上面部に、アダプタ60をレンチ等で回転させるための矩形状の突起部62が形成されている。この突起部62の上端部には、係止部55の円錐状の先端部を係合させる穴部63が形成されている。また、アダプタ本体61には一対の貫通孔64が形成されている。この貫通孔64は、弁部材17の端面から突出する一対の突出部に挿入可能な形状を有する。
【0029】
図6は、保持部45に介装される補助部品を示す平面図(a)及び側面図(b)である。
【0030】
図6に示すように、補助部品70は、複数の形状の異なるバルブユニット10が存在する場合に、バルブユニット10を固定台43に固定する際にバルブ本体11の上端部に位置するハウジング20aと保持部45との間に介装することで、ハウジング20をバルブ本体11に対して(つまり、弁部材17をバルブシート16に対して開弁する方向に)移動させてバルブシート16と弁部材17との間に隙間を形成し接触しないようにするために使用される。この補助部品70には、バルブユニット10のハウジング20との干渉を避けるためのU字状の切欠部71が形成され、バルブ本体11の形状に応じたテーパ状や溝状に形成された表面部72を有する。
【0031】
[組付・分解手順]
次に、図4を参照して、本実施形態のバルブ組立用治具を用いてバルブユニット10に対する弁部材の組付及び分解を行う手順について説明する。
【0032】
図4(b)に示すように、必要に応じて補助部品70を介装することで弁部材17がバルブシート16に接触しない状態でバルブユニット10の支持板12をクランプ部44で固定台43に固定する。
【0033】
次に、アダプタ60を弁部材17の端面の突出部に係合させてハンドル部53を押し下げて、突起部62の上端部に係止部55の円錐状の先端部を係合させて押圧した状態で固定ねじ54を締めて固定する。
【0034】
この状態で、アダプタ60の突起部62をトルクレンチ等で回転させることで、弁部材17を所定のトルクで締め付け或いは緩めることができる。
【0035】
これにより、増締めや分解時に部品に傷を付けず、組み付け寸法等のばらつきを低減し、且つ作業を迅速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態のバルブ組立用治具により組付及び分解されるバルブユニットの全体構成を示す側断面図である。
【図2】図1のバルブ本体の側断面図(a)及び缶口部材の側断面図(b)である。
【図3】本実施形態のバルブユニットの駆動機構を示す正面図(a)、(a)のi−i断面図(b)及び(a)の上面図(c)である。
【図4】本発明に係る実施形態のバルブ組立用治具の正面図(a)、側断面図(b)及び平面図(c)である。
【図5】組付用アダプタの構成を示す上面図(a)、側面図(b)及び底面図(c)である。
【図6】補助部品を示す平面図(a)及び側面図(b)である。
【符号の説明】
【0037】
10 バルブユニット
11 バルブ本体
12 支持板
13 ノズル
14 缶口部材
15 シール材
16 バルブシート
17 弁部材
18 弁軸部材
19 カバー部材
20 ハウジング
21,22,24 スプリング
23 スペーサ
25,26 ストッパ
27 リッドシール
28 ナット
29 弁機構
30 プレッシャキャップ
31 駆動軸
32 軸受
33 スプリング
34,35 駆動ローラ
36,38 リンク部材
37 回動軸
41 基板
42 脚部
43 固定台
44 クランプ部
45 保持部
46 アーム部
47 押圧部
48 レバー
49 軸受
51 軸部
52 スプリング
53 ハンドル部
54 固定ねじ
55 係止部
60 組付用アダプタ
70 補助部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の注入口に当接して液体を注入するバルブユニットのバルブ開口部に対し、弁部材の組付又は分解を行うためのバルブ組立用治具であって、
前記バルブ開口部が上方に向いた状態でバルブ本体を治具本体に位置決めして固定するクランプ部と、
前記弁部材の上端面に係合するように当該弁部材の上端面の形状に対応した形状部を有するアダプタと、
前記アダプタを前記弁部材の上端面に押圧するよう鉛直軸方向に移動可能な押圧部と、を有し、
前記押圧部は、鉛直上方に付勢されると共に鉛直軸方向に移動可能な軸部と、前記軸部を鉛直下方に移動するように操作するハンドル部と、前記ハンドル部の操作により前記アダプタが前記弁部材の上端面を押圧した状態を保持するように前記軸部を鉛直軸まわりに回転可能に固定させる固定部と、を有することを特徴とする治具。
【請求項2】
前記治具本体は、前記弁部材が前記バルブ開口部から離間した開弁状態で前記治具本体に固定されるように前記バルブ本体を保持する保持部と、前記バルブ本体と前記治具本体との間に介在させて前記弁部材を前記開弁状態とする補助部品を更に有することを特徴とする請求項1に記載の治具。
【請求項3】
前記弁部材は、前記バルブ開口部より内部に位置する弁軸部に螺合されることを特徴とする請求項1又は2に記載の治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−261417(P2008−261417A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104183(P2007−104183)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】