説明

バルブ

【課題】部品点数を削減することができ、構造が簡素化されて、各構成部品の加工工数や組立て工数等が減少し、製造コストを減少させることができ、加えて複数部品の一体化による全体としての小型化が可能になるバルブを提供する。
【解決手段】大径室26,27及び外部開放路が設けられて両大径室26,27を連通する小径室25が形成されたバルブハウジング23に収納され、小径室25に位置して外部開放路に連通する流体室を形成する小径部28と、小径部28の両側に段差面を経て連続し、小径室25を液密に摺動する大径部29,30とが一体的に形成され、大径部29,30は、高圧力流体の入力による低圧側への移動時、低圧力側の大径室26,27を小径室25に連通させて低圧側を開放する連通路を有するフリーピストン24を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、可逆式ポンプが発生させた流体圧力を供給する2つの供給路の間に配置されたハウジング内を、発生圧力を受けて摺動するフリーピストンを有するバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操舵輪(ステアリングホイール)に連結された操舵機構の操舵力を補助する油圧パワーシリンダと、高圧力油と低圧力油が入れ替わって出力され、油圧パワーシリンダの圧力室に対し油圧を供給する可逆式ポンプと、を備えたパワーステアリング装置が知られている。このパワーステアリング装置は、可逆式ポンプから吐出された作動油が、油圧パワーシリンダを経て可逆式ポンプに戻ってくるように構成されているため、油圧パワーシリンダのラックが動いていないときに圧力が発生すると、発生している圧力は行き場がなくなってしまい、加圧側のシリンダ圧力が上昇してポンプ負荷が増大することになる。この結果、可逆式ポンプの回転が不安定となって脈動が発生する。
【0003】
この脈動の発生に対し、可逆式ポンプから吐出される作動油の一部を油圧パワーシリンダ以外に供給して、可逆式ポンプを安定的に駆動させることにより脈動の発生低下を図るものとして、可逆式ポンプからの油圧供給路に設けた分岐通路に、フリーピストンを有するバルブを配置した「パワーステアリング装置」(特許文献1参照)が提案されている。
【特許文献1】特開2007−245986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の「パワーステアリング装置」は、脈動の発生等、性能上余計な流体(油、水、空気等)や余分に体積が増えてしまった流体を、低圧側から逃がすために、フリーピストンの両端で圧力を受けることができると共に、ハウジング内を両端方向に摺動可能なフリーピストン(隔成部材)と、ハウジング内のフリーピストン摺動方向両側にそれぞれ設けられた二つのバルブ本体とを有したバルブが用いられている。このため、上記従来技術におけるバルブは、複雑な流体経路やピストン構成を必要とし、部品点数が多くなって(従来の「パワーステアリング装置」においては、フリーピストン(隔成部材)と二つのバルブ本体との合計3個の部品で構成)、構造が複雑になり、その結果、各構成部品の加工工数や組立て工数等が増加し、製造コストが増加するのが避けられず、更には、大型化してしまうことになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係るバルブは、大径流体室、及び外部開放路が設けられて両大径流体室を連通する小径流体室が形成されたハウジングに収納されたフリーピストンが、小径流体室に位置する小径部と、大径流体室を液密に摺動する大径部とが一体的に形成され、大径部は、大径流体室を小径流体室に連通させて低圧側を開放する連通路を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、大径流体室を小径流体室を有するハウジングに収納されたフリーピストンが、大径流体室を小径流体室に連通させる連通路を有し大径流体室を液密に摺動する大径部と、小径流体室に位置する小径部が一体的に形成されているので、部品点数を削減することができ、構造が簡素化されて、各構成部品の加工工数や組立て工数等が減少し、製造コストを減少させることができる。加えて、複数部品の一体化による全体としての小型化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
(第1実施の形態)
図1は、この発明の第1実施の形態に係るパワーステアリング装置の概略構成を示す説明図である。図1に示すように、パワーステアリング装置10は、操舵部11、油圧パワーシリンダ12、可逆式ポンプ13、第1油路14aと第2油路14b、電動機(モータ)15、電動機制御回路(Electric Computer Unit:ECU)16、第1分岐通路17aと第2分岐通路17b、バルブ18、及びリザーバタンク19を有している。
【0008】
操舵部11は、操舵輪(ステアリングホイール)11a、シャフト部11b、及び、ラック部20aとピニオン部20bからなる操舵機構20を有している。操舵輪11aを操作者(ドライバー)が回動操作することにより、操舵輪11aの動きがシャフト部11bを経てラック部20aに伝達され、ラック部20aに噛合するピニオン部20bをピニオン軸方向に移動させる。このピニオン部20bを介して操舵輪(図示しない)が操舵される。シャフト部11bには、操舵輪11aの操作に伴う操舵トルクを検出するトルクセンサ21が装着されており、トルクセンサ21は、検出した操舵トルク情報をECU16へ出力する。
【0009】
油圧パワーシリンダ12は、ラック部20bに接続されてシリンダ軸方向に摺動すると共にシリンダ内を二つの圧力室12a,12bに区画するピストン12cを有しており、操舵輪11aに連結された操舵機構20の操舵力を補助する。
可逆式ポンプ13はモータ15によって駆動され、該モータ15の回転方向を切り替える事により吐出方向を逆転することができる、所謂、双方向ポンプであり、第1油路14aと第2油路14b(高圧力油と低圧力油が入れ替わって出力される2つの流路)を介して、油圧パワーシリンダ12の二つの圧力室12a,12bそれぞれに対しポンプ圧力を供給する。この可逆式ポンプ13は、リザーバタンク19に貯留された作動油を吸い上げることができるように、リザーバタンク19に連通している。
【0010】
第1油路14aと第2油路14bは、油圧パワーシリンダ12と可逆式ポンプ13を接続する作動油の流路を形成しており、第1油路14aは油圧パワーシリンダ12の一方の圧力室12aに、第2油路14bは油圧パワーシリンダ12の他方の圧力室12bに、それぞれ連通している。
モータ15は、可逆式ポンプ13を駆動する。ECU16は、モータ15から入力したモータ動作状態(回転角度、回転数等)に関する各種情報、及びトルクセンサ21から入力した操舵トルク情報に基づき、モータ15に、モータ15の回転方向及び回転数を制御する駆動指令信号を出力する。
【0011】
第1分岐通路17aは、第1油路14aから分岐してバルブ18に連通し、第2分岐通路17bは、第2油路14bから分岐してバルブ18に連通しており、両分岐通路17a,17bは、可逆式ポンプ13から吐出される作動油の一部を、油圧パワーシリンダ12以外に分岐させる通路を形成している。
バルブ18は、第1分岐通路17aと第2分岐通路17bの間に配置されており、第1分岐通路17aを介して第1油路14aからの油圧を受け、或いは第2分岐通路17bを介して第2油路14bからの油圧を受け、第1油路14a側と第2油路14b側の間で摺動するフリーピストン(図2参照)を有している。
【0012】
リザーバタンク19は、タンク油路(外部開放路)19aによりバルブ18に連通しており、バルブ18から排出された作動油を貯留する。
このように、可逆式ポンプ13を使った電動式のパワーステアリング装置10は、ステアリングホイール11aを転舵すると、その指令を受けた可逆式ポンプ13が作動油を吐出し、それにより発生した圧力によってラック部20aの動きを補助する構造を有している。
【0013】
図2は、図1のバルブの構造を示し、(a)は断面説明図、(b)はフリーピストンの斜視図である。図2に示すように、バルブ18は、バルブハウジング(ハウジング)22と、バルブハウジング22内の摺動室23に配置されたフリーピストン24を有している。尚、バルブハウジング22は内部の摺動室23にフリーピストン24を有しており、その外形は例えば円筒状や直方体、若しくはポンプ筐体と一体で形成されていても良く、その外形は限定されない。
摺動室23は、円筒内部空間状に形成されて、中央の小径室25と、小径室(小径流体室)25の両側に位置し、小径室25より拡径された同一内径及び同一長軸方向長さの大径室(大径流体室)26,27を有している。小径室25は、タンク油路19aによりリザーバタンク19に連通し、一方の大径室26は、第1分岐通路17aを介して第1油路14aに、他方の大径室27は、第2分岐通路17bを介して第2油路14bに、それぞれ連通している((a)参照)。
尚、図2(a)に示すフリーピストン24の断面は、図2(b)においてA−Aで示す断面を表わしている。
【0014】
フリーピストン24は、中央の小径部28と、小径部28の両側に位置し小径部28より拡径された、同一外径及び同一長軸方向長さの大径部29,30を有すると共に、摺動室23を摺動可能な空間長軸方向長さを有する円柱状に形成されている。つまり、フリーピストン24は、両大径部29,30となる円柱体の中央部に、両大径部29,30と段差面を経て連続する、小径部28となる縮径した段差部を設けて、摺動室23を液密に摺動する摺動部となる両大径部29,30と小径部28を一体化した円柱状に形成されている。
【0015】
大径部29,30は、摺動室23の小径室25を隙間無く液密に摺動することができる外径を有すると共に、大径室26,27の長軸方向長さより長い長軸方向長さを有している。大径部29の第1油路14a側に臨む端面中央には円柱状突起29aが、大径部30の第2油路14b側に臨む端面中央には円柱状突起30aが、それぞれ形成されており、各円柱状突起29a,30aには、それぞれコイルバネ等の圧縮反発する弾性部材31が装着されている。
【0016】
各大径部29,30には、小径部28側の直径位置外表面に、外表面及び小径部28側端面に開口する溝状の凹部(連通路)29b,30bが設けられている。この凹部29b,30bにより、小径室25内の各大径部29,30には、小径室25天井面との間に間隙が形成される。つまり、凹部(連通路)29b,30bは、大径部の外表面を切り欠いて大径部表面及び段差面に開口させている。
【0017】
凹部29bは、フリーピストン24が摺動室23を摺動し、大径部29が、弾性部材31を圧縮変形させ、大径室26の第1油路14a側端面26aとの間に室内空間を確保し、端面26aに押し付けられた状態で、小径室25と大径室26の両室内空間に露出する長軸方向長さを有している。同様に、凹部30bは、フリーピストン24が摺動室23を摺動し、大径部30が、弾性部材31を圧縮変形させ、大径室27の第2油路14b側端面27aとの間に室内空間を確保し、端面27aに押し付けられた状態で、小径室25と大径室27の両室内空間に露出する長軸方向長さを有している。
【0018】
なお、各凹部29b,30bは、直径位置に2個ずつ設ける他、1個ずつ、或いは任意の間隔で3個以上設けても良い。
小径部28は、外表面が、各凹部29b,30bの底面より一段下がった段差面となるように、各大径部29,30の外径より縮径された外径を有すると共に、大径部29が大径室26の端面26aに、或いは大径部30が大径室27の端面27aに、それぞれ押し付けられた状態の何れの場合でも、小径室25のタンク油路19aの開口を小径部28の範囲に位置させることができる長軸方向長さを有している。
【0019】
このように、バルブは、高圧力流体と低圧力流体が入れ替わって出力される2つの流路のそれぞれに連通する大径流体室、及び外部開放路が設けられて前記両大径流体室を連通する小径流体室が形成されたハウジングと、前記ハウジングに収納され、前記小径流体室に位置して前記外部開放路に連通する流体室を形成する小径部と、前記小径部の両側に段差面を経て連続し、前記小径流体室を液密に摺動する大径部とが一体的に形成され、前記大径部は、高圧力流体の入力による低圧側への移動時、低圧力側の前記大径流体室を前記小径流体室に連通させて低圧側を開放する連通路を有するフリーピストンとを有している。
【0020】
図3は、摺動室内のフリーピストンの動きと油の流れを示す断面説明図である。図3に示すように、操作者(ドライバー)が、ステアリングホイール11aを転舵すると、可逆式ポンプ13が圧力を発生させ、油圧パワーシリンダ12の、ラック部20aの動きを補助したい方向に力が働く側に圧力を供給する。ここでは、例えば、油圧パワーシリンダ12の、ピストン12cにより区画された一方の圧力室12aに、油圧が供給されるとする。
【0021】
可逆式ポンプ13から、第1油路14aを介して油圧パワーシリンダ12の圧力室12aに油圧が供給されることにより、摺動室23に配置されたフリーピストン24は、第1分岐通路17aを介して大径室26に加わる第1油路14aからの高圧力を、大径部29の円柱状突起29a側端面で受ける。第1油路14aからの高圧力を円柱状突起29a側端面で受けたフリーピストン24は、低圧側である大径室27へと摺動室23内を摺動する(図3参照)。
【0022】
摺動室23内を大径室27へと摺動したフリーピストン24は、大径部30が、圧縮変形させた弾性部材31を介して大径室27の第2油路14b側端面27aに押し付けられた状態となり、凹部30bが小径室25と大径室27の両室内空間に露出することになる(図3参照)。この状態で、小径部28には、リザーバタンク19に連通するタンク油路19aの開口が位置している(図3参照)。
【0023】
つまり、フリーピストン24が摺動室23を摺動し、大径部30が大径室27の端面27a側に押し付けられた状態では、大径部30の円柱状突起30a側端面と端面27aとの間に、第2分岐通路17b、即ち、第2油路14bに連通する室内空間(間隙)が形成される。この第2油路14bに連通する室内空間は、大径室27と大径部30の室内空間(間隙)、凹部30b、及び小径室25と小径部28の室内空間(間隙)を経て、タンク油路19a、即ち、リザーバタンク19に連通する。この結果、摺動室23には、第2油路14bとリザーバタンク19を連通する油路が形成される。
【0024】
このとき、フリーピストン24の大径部29は、小径室25に入り込み、凹部29bは小径室25内に位置しているので、小径室25の大径室26側は大径部29により液密に塞がれた状態となり(図3参照)、第1油路14aに連通する大径室26と小径室25は連通しない。
【0025】
同様に、フリーピストン24が摺動室23を摺動し、大径部29が大径室26の端面26a側に押し付けられた状態では、大径部29の円柱状突起29a側端面と端面26aとの間に、第1分岐通路17a、即ち、第1油路14aに連通する室内空間(間隙)が形成される。この第1油路14aに連通する室内空間は、大径室26と大径部29の室内空間(間隙)、凹部29b、及び小径室25と小径部28の室内空間(間隙)を経て、タンク油路19a、即ち、リザーバタンク19に連通する。この結果、摺動室23には、第1油路14aとリザーバタンク19を連通する油路が形成される。
【0026】
このとき、フリーピストン24の大径部30は、小径室25に入り込み、凹部30bは小径室25内に位置しているので、小径室25の大径室27側は大径部30により液密に塞がれた状態となり(図3参照)、第2油路14bに連通する大径室27と小径室25は連通しない。
【0027】
従って、第1油路14aに高圧力が加わると、フリーピストン24は、摺動室23を摺動して大径室27の端面27a側に押し付けられた状態となり、摺動室23には、第2油路14bとリザーバタンク19を連通する油路が形成される。よって、大径室27側に形成された油路を介して、低圧側、即ち、第2油路14b側の油をリザーバタンク19へ戻すことができる。一方、第2油路14bに高圧力が加わると、フリーピストン24は、摺動室23を摺動して大径室26の端面26a側に押し付けられた状態となり、摺動室23には、第1油路14aとリザーバタンク19を連通する油路が形成される。よって、大径室26側に形成された油路を介して、低圧側、即ち、第1油路14a側の油をリザーバタンク19へ戻すことができる。
【0028】
つまり、パワーステアリング装置10は、操舵輪に連結された操舵機構の操舵力を補助する油圧パワーシリンダ12と、高圧力と低圧力が入れ替わって出力され、油圧パワーシリンダ12の圧力室に対し液圧を供給する可逆式ポンプ13と、可逆式ポンプ13と油圧パワーシリンダ12とを接続する第1油路14a及び第2油路14bと、電動機15に駆動指令信号を出力する電動機制御回路16と、第1油路14a及び第2油路14bと分岐通路17a,17bを介して連通し、可逆式ポンプ13から吐出される作動油が供給されるフリーピストン24とを有している。
【0029】
このように、操作者(ドライバー)が、ステアリングホイール11aを転舵して、可逆式ポンプ13から油圧パワーシリンダ12に油圧が供給された場合に、行き場の無くなった作動油は、低圧側の油路からフリーピストン24を通ってリザーバタンク19へ戻ることになる。このため、可逆式ポンプ13に対する負荷を増大させることは無いので、可逆式ポンプ13のポンプ回転が不安定になって脈動が生じ、操舵フィーリングが悪化することを防止することができる。
【0030】
なお、ステアリングホイール11aが上記方向とは逆方向に転舵された場合は、高圧側と低圧側が上記の場合とは逆になって、フリーピストン24の摺動方向も逆方向になり、作動油は、低圧側の油路からフリーピストン24を通ってリザーバタンク19へ戻ることになる。
【0031】
そして、フリーピストン24は、摺動部となる両大径部29,30及び小径部28を一体化した構造を有するため、従来のピストン部が複数(例えば、3個)の部品で構成されているのとは異なり、一つの部品で構成することができるので、部品点数を削減することができ、構造が簡素化されて、各構成部品の加工工数や組立て工数等が減少し、製造コストを減少させることができる。加えて、複数部品の一体化による全体としての小型化が可能になる。
【0032】
更に、フリーピストン24においては、摺動室23を摺動することにより高圧力と低圧力が入れ替わる構成を有することになり、低圧側から圧力を逃す経路、即ち、フリーピストン24を通ってリザーバタンク19へ戻る油路を、一つの経路にすることができるので、フリーピストン24が配置されるハウジング(バルブハウジング22)等における経路構造(例えば、孔等)を少なくすることができ、ハウジング、更には、装置全体を簡易な形状にすると共に小型化することができる。
【0033】
なお、フリーピストン24は、円柱状に限らず、円筒体により形成しても良く、外表面が段差部となる小径部28と大径部29,30の二段構造を有していればよい。
(第2実施の形態)
図4は、この発明の第2実施の形態に係るフリーピストンの構造を示し、(a)は断面説明図、(b)はフリーピストンの斜視図である。図4に示すように、フリーピストン35は、ピストン外周面にOリング等の弾性シール材36を装着し、フリーピストン24と、フリーピストン24が摺動するバルブハウジング22の小径室25との間を液密に密封(シール)している。その他の構成及び作用はフリーピストン24と同様である。
尚、図4(a)に示すフリーピストン24の断面は、図4(b)においてB−Bで示す断面を表わしている。
【0034】
フリーピストン35は、摺動部となる両大径部29,30外表面の長軸方向略中央部である、各凹部29b,30bのそれぞれの円柱状突起29a,30a側近傍に、外表面全周に渡る円環状で上部が開口する溝37を設けており、それらの溝37に、弾性シール材36が嵌め込まれるように装着されている((b)参照)。各溝37に装着された弾性シール材36は、大径部29,30の外表面から突出して、小径室25内周面に押圧状態に密着している((a)参照)。
【0035】
この弾性シール材36により、フリーピストン35は、摺動室23内を自在に摺動することができるが、大径部29,30外表面と小径室25内周面との間が隙間無くより確実な液密状態にすることができる((a)参照)ので、ラック部20aの動きを補助する可逆式ポンプ13から加えられた圧力が、高圧側からフリーピストン35と摺動室23との隙間を通って低圧側へ逃げてしまうことがない。この結果、可逆式ポンプ13のポンプ効率を高めることができる。
【0036】
(第3実施の形態)
図5は、この発明の第3実施の形態に係るフリーピストンの断面説明図である。図5に示すように、フリーピストン40は、各大径室26,27を液密に摺動する外径を有し、小径部28側をテーパ面により形成すると共にテーパ面に開口する貫通孔(連通路)が開けられた両大径部41,42を有している。その他の構成及び作用はフリーピストン24と同様である。
【0037】
フリーピストン40は、摺動部となる両大径部41,42を、フリーピストン24の大径部29,30を拡径して各大径室26,27に密着し液密に摺動する外径を有する大きさに形成すると共に、小径部28側の、フリーピストン24の各凹部29b,30bに略相当する部分を、小径部28に向かって徐々に縮径し小径部28側端面が各凹部29b,30b底面と略同一外径となるテーパ面41a,42aにより形成している(図5参照)。即ち、大径部29,30は、小径部28の両側に上り傾斜面(テーパ面)を経て連続している。
【0038】
これら両大径部41,42には、各円柱状突起29a,30a側端面と各テーパ面41a,42aを連通する、各大径室26,27内周面に略平行な貫通孔41b,42bが開けられている(図5参照)。即ち、貫通孔41b,42bは、大径部を貫通し傾斜面(テーパ面)とこの傾斜面の反対側端面に開口している。各貫通孔41b,42bにより、摺動室23内周面に摺動可能に密着する各大径部41,42によって分離された、大径室26の第1油路14a側及び大径室27の第2油路14b側と小径室25が、連通する。
【0039】
また、バルブハウジング22の小径室25と各大径室26,27との連絡段差部は、各テーパ面41a,42aに対応する角度からなるテーパ面26b,27bにより形成されている。
各テーパ面41a,42aは、フリーピストン40が摺動室23内を摺動する際、バルブハウジング22の各テーパ面26b,27bにそれぞれ接触して密着した状態となり、小径室25と各大径室26,27との連通を遮断する。このとき、各貫通孔41b,42bは、各テーパ面41a,42aと各テーパ面26b,27bが接触し密着する位置より、各大径部41,42の外周面側に位置するので、各テーパ面41a,42a側開口も小径室25との連通が遮断される(図5参照)。
【0040】
つまり、フリーピストン40は、高圧力流体と低圧力流体が入れ替わって出力される2つの流路のそれぞれに連通する大径流体室、及び外部開放路が設けられて前記両大径流体室を連通する小径流体室が形成されたハウジングに収納され、前記小径流体室に位置し、前記外部開放路に連通する流体室を形成する小径部と、前記小径部の両側に上り傾斜面を経て連続し、前記大径流体室を液密に摺動する大径部とが一体的に形成され、前記大径部は、高圧力流体の入力による低圧側への移動時、低圧力側の前記大径流体室を前記小径流体室に連通させて低圧側を開放する連通路を有している。
【0041】
このように、両テーパ面41a,42aと両テーパ面26b,27bにより、ラック部20aの動きを補助する可逆式ポンプ13から圧力が加えられる高圧側が、密閉された閉空間となるので、加えられた圧力が高圧側から低圧側へ逃げることが一切無くなる。この結果、密閉するための補助部材等を用いることなく、十分な密閉空間を確保することができるので、可逆式ポンプ13のポンプ効率を高めることができる。
なお、フリーピストン40に、フリーピストン35と同様に弾性シール材36を装着することにより、より確実な液密状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の第1実施の形態に係るパワーステアリング装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】図1のバルブの構造を示し、(a)は断面説明図、(b)はフリーピストンの斜視図である。
【図3】摺動室内のフリーピストンの動きと油の流れを示す断面説明図である。
【図4】この発明の第2実施の形態に係るフリーピストンの構造を示し、(a)は断面説明図、(b)はフリーピストンの斜視図である。
【図5】この発明の第3実施の形態に係るフリーピストンの断面説明図である。
【符号の説明】
【0043】
10 パワーステアリング装置
11 操舵部
11a 操舵輪
11b シャフト部
12 油圧パワーシリンダ
12a,12b 圧力室
12c ピストン
13 可逆式ポンプ
14a 第1油路
14b 第2油路
15 電動機
16 電動機制御回路
17a 第1分岐通路
17b 第2分岐通路
18 バルブ
19 リザーバタンク
19a タンク油路
20 操舵機構
20a ラック部
20b ピニオン部
21 トルクセンサ
22 バルブハウジング
23 摺動室
24,35,40 フリーピストン
25 小径室
26,27 大径室
26a,27a 端面
26b,27b,41a,42a テーパ面
28 小径部
29,30 大径部
29a,30a 円柱状突起
29b,30b 凹部
31 弾性部材
36 弾性シール材
37 溝
41,42 大径部
41b,42b 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧力流体と低圧力流体が入れ替わって出力される2つの流路のそれぞれに連通する大径流体室、及び外部開放路が設けられて前記両大径流体室を連通する小径流体室が形成されたハウジングと、
前記ハウジングに収納され、前記小径流体室に位置して前記外部開放路に連通する流体室を形成する小径部と、前記小径部の両側に段差面を経て連続し、前記小径流体室を液密に摺動する大径部とが一体的に形成され、前記大径部は、高圧力流体の入力による低圧側への移動時、低圧力側の前記大径流体室を前記小径流体室に連通させて低圧側を開放する連通路を有するフリーピストンと
を有することを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記連通路は、前記大径部の外表面を切り欠いて大径部表面及び前記段差面に開口させた凹部からなる請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
高圧力流体と低圧力流体が入れ替わって出力される2つの流路のそれぞれに連通する大径流体室、及び外部開放路が設けられて前記両大径流体室を連通する小径流体室が形成されたハウジングと、
前記ハウジングに収納され、前記小径流体室に位置し、前記外部開放路に連通する流体室を形成する小径部と、前記小径部の両側に上り傾斜面を経て連続し、前記大径流体室を液密に摺動する大径部とが一体的に形成され、前記大径部は、高圧力流体の入力による低圧側への移動時、低圧力側の前記大径流体室を前記小径流体室に連通させて低圧側を開放する連通路を有するフリーピストンと
を有することを特徴とするバルブ。
【請求項4】
前記連通路は、前記大径部を貫通し前記傾斜面と前記傾斜面の反対側端面に開口する貫通孔からなる請求項3に記載のバルブ。
【請求項5】
操舵輪に連結された操舵機構の操舵力を補助する油圧パワーシリンダと、
高圧力油と低圧力油が入れ替わって出力され、前記油圧パワーシリンダの圧力室に対し油圧を供給する可逆式ポンプと、
前記可逆式ポンプと前記油圧パワーシリンダとを接続する第1油路及び第2油路と、
前記可逆式ポンプを駆動する電動機に駆動指令信号を出力する電動機制御回路と、
前記第1油路及び前記第2油路と分岐通路を介して連通し、前記可逆式ポンプから吐出される作動油が供給される請求項1から4のいずれか一項に記載のバルブと
を有するパワーステアリング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−144821(P2010−144821A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322295(P2008−322295)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】