説明

バルーンカテーテル

【課題】ステントをバルーン上に確実にマウントすることができると共に、バルーンの損傷等の発生を防止することができ、しかも、ステントをマウントしたバルーンの通過性、摺動性を向上させることができるバルーンカテーテルを提供する。
【解決手段】バルーンカテーテル10は、先端部から基端部に向かって順番に配された第1バルーン14及び第2バルーン16と、第1バルーン14に連通する第1拡張用ルーメン31を有し、且つ、第2バルーン16内に挿通される第1管シャフト25と、第2バルーン16に連通する第2拡張用ルーメン34を有し、且つ、内部に第1管シャフト25が挿通される第2管シャフト26と、第2バルーン16にマウントされたステント18とを有し、第1バルーン14の表面の摩擦係数をμ1、第2バルーン16の表面の摩擦係数をμ2としたとき、μ1<μ2を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内にステントを留置するためのバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、心筋梗塞や狭心症の治療では、冠動脈の病変部(狭窄部)をバルーンカテーテルにより押し広げる方法が行われており、他の血管、胆管、気管、食道、尿道、その他の臓器等の生体器官内に形成された狭窄部の改善についても同様に行われることがある。バルーンカテーテルは、一般的に、長尺なシャフト本体と、該シャフト本体の先端側に設けられて径方向に拡張するバルーンとを備えて構成され、先行するガイドワイヤが挿通されることで体内の狭窄部へと送られる。
【0003】
このようなバルーンカテーテルとしては、例えば特許文献1に示すように、縦方向(挿入方向)に並んだ大きさの異なる2つのバルーンを有するバルーンカテーテルが知られている。このバルーンカテーテルによれば、小さなバルーンで堅固な狭窄部分を部分的に開口した後、高度な形状をもった基端部バルーンが狭窄部分内に挿入されることで、狭窄部分の膨張を完全にすることができる、とされている。
【0004】
また、バルーンカテーテルは、狭窄部等を拡張するためのステントを生体内に留置するためのステントデリバリー用のバルーンカテーテルとして用いられることがある(例えば、特許文献2参照)。ステントは、通常、金属線材等をメッシュ状に加工した筒状であり、バルーンの周囲にマウントされ、所望の狭窄部でバルーンが拡張されることでステントも拡張され、管腔内壁に密着・固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−240876号公報
【特許文献2】特開2009−82244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ステントをバルーンの周囲にマウントしたステントデリバリー用のバルーンカテーテルにおいては、ステントをマウントしたバルーンの通過性、摺動性を向上させることが重要である。そこで、ステントのクロッシングプロファイル(マウント時のステント内径)を小さくしてステントを強く締め付けすぎると、バルーンにピンホールを生じたり、バルーンラプチャー(破裂)の原因となる損傷を生じたりすることがある。また、径の小さいバルーンにステントをマウントすると、バルーンカテーテルの体内への挿入時にステントがスリップしてバルーンの後方に抜け易くなるという問題がある。ステントを狭窄部位に輸送できたとしても、径の小さいバルーンは、バルーン内の拡張用ルーメンの面積が小さいことから、拡張用流体を流通したとき、バルーンの基端部から膨張が始まり、徐々に先端部に向かって膨張していき、これにより、ステントが前方に移動し、バルーンから外れ易いという問題がある。
【0007】
逆に、ピンホール等の発生を防ぐために、ステントのクロッシングプロファイル(マウント時のステント内径)を大きくすると、ステントのリテンション(ステントがバルーンから外れること)が生じにくくなるが、ステントをマウントしたバルーンの通過性や摺動性が悪くなるという問題がある。
【0008】
本発明はこのような従来の課題を考慮してなされたものであり、ステントをバルーン上に確実にマウントすることができると共に、バルーンの損傷等の発生を防止することができ、しかも、ステントをマウントしたバルーンの通過性、摺動性を向上させることができるバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1] 本発明に係るバルーンカテーテルは、先端部から基端部に向かって順番に配された第1バルーン及び第2バルーンと、前記第1バルーンに連通する第1拡張用ルーメンを有し、且つ、前記第2バルーン内に挿通される第1管シャフトと、前記第2バルーンに連通する第2拡張用ルーメンを有し、且つ、内部に前記第1管シャフトが挿通される第2管シャフトと、前記第2バルーンにマウントされたステントとを有することを特徴とする。
【0010】
これにより、先端部側に配された第1バルーンを、通過性、摺動性の向上を目的としたバルーンとして構成し、第1バルーンの後方(バルーンカテーテルの挿入方向後方)に配された第2バルーンを、ステントの保持性能、拡張性能の向上を目的としたバルーンとして構成することが可能となる。先端部の第1バルーンによってバルーンカテーテルの通過性、摺動性が向上し、第1バルーンの後方に配された第2バルーンによってステントの保持力、リテンション力が向上し、ステントのスリップ対策にもつながる。
【0011】
[2] 本発明において、前記第1バルーンの表面の摩擦係数をμ1、前記第2バルーンの表面の摩擦係数をμ2としたとき、μ1<μ2を満足することを特徴とする。
【0012】
これにより、先端部側に配された第1バルーンを、通過性、摺動性の向上を目的としたバルーンとして構成し、第1バルーンの後方(バルーンカテーテルの挿入方向後方)に配された第2バルーンを、ステントの保持性能、拡張性能の向上を目的としたバルーンとして構成することが可能となる。しかも、ステントのクロッシングプロファイル(マウント時のステント内径)を小さくする必要がないため、第2バルーンにピンホールや、バルーンラプチャー(破裂)は生じない。
【0013】
すなわち、先ず、バルーンカテーテルは、第1バルーン及び第2バルーンが共に収縮あるいは折り畳まれた形態で例えば血管内に挿入され、第1バルーンが狭窄部に到達するまで挿入される。このとき、第1バルーンの表面の摩擦係数が低いことから、第1バルーンの通過性、摺動性が良好であり、第1バルーンはスムーズに狭窄部に到達することとなる。その後、第1バルーンが拡張されることで狭窄部が押し広げられ、さらに、バルーンカテーテルが挿入されることで、狭窄部に第2バルーンが到達することとなる。このとき、狭窄部は第1バルーンにて押し広げられているため、第2バルーンはスムーズに狭窄部に進入し、仮に、狭窄部の一部にステントが当たったとしても、第2バルーンの摩擦係数が大きいことから、ステントが第2バルーンから抜け落ちるということがない。その後、第2バルーンが拡張されることで、ステントも拡張し、狭窄部内壁に密着・固定されることとなる。
【0014】
このように、先端部の第1バルーンによってバルーンカテーテルの通過性、摺動性が向上し、第1バルーンの後方に配された第2バルーンによってステントの保持力、リテンション力が向上し、ステントのスリップ対策にもつながる。
【0015】
[3] 本発明において、前記第1バルーンの表面に潤滑剤が塗布され、前記第2バルーンの表面が凹凸形状とされていることを特徴とする。これによって、第1バルーンの表面の摩擦係数μ1を、第2バルーンの表面の摩擦係数μ2よりも小さくすることができる。
【0016】
[4] 本発明において、前記第1バルーンの拡張時の外径をD1、前記第2バルーンの拡張時の外径をD2としたとき、D1≦D2を満足することを特徴とする。これによって、第1バルーンの通過性、摺動性を向上させることができ、しかも、ステントのクロッシングプロファイル(マウント時のステント内径)を小さくする必要がない。
【0017】
[5] 本発明において、前記第1管シャフトは、前記第1拡張用ルーメンに加えて、ガイドワイヤを挿通するためのガイド用ルーメンを有し、前記第1バルーン内に位置する箇所に、前記第1拡張用ルーメンに通じる開口が形成されていることを特徴とする。この場合、前記第1管シャフトは、第1バルーンに拡張用流体を導入するための管として機能するほか、ガイドワイヤを挿通するための管としても機能し、ラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテルを実現させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ステントをバルーン上に確実にマウントすることができると共に、バルーンの損傷等の発生を防止することができ、しかも、ステントをマウントしたバルーンの通過性、摺動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係るバルーンカテーテルの全体構成図である。
【図2】図1に示すバルーンカテーテルの先端側を拡大した一部断面側面図である。
【図3】図3Aは図2におけるIIIA−IIIA線上の第1管シャフトの断面を示す図であり、図3Bは図2におけるIIIB−IIIB線上の第1管シャフトの断面を示す図であり、図3Cは図2におけるIIIC−IIIC線上の第1管シャフト及び第2管シャフトの断面を示す図である。
【図4】図4Aは第1バルーンの表面に潤滑剤を塗布した状態を一部省略して示す断面図であり、図4Bは第2バルーンの表面に複数の凸部を形成した状態を一部省略して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るバルーンカテーテルについての好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0021】
本発明に係るバルーンカテーテルは、長尺なシャフト本体を生体器官、例えば冠動脈に挿通させ、その先端側に設けられたバルーンを狭窄部(病変部)で拡張させることで該狭窄部を押し広げて治療する、いわゆるPTCA(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:経皮的冠動脈形成術)拡張カテーテルであり、バルーンの周囲にマウントされたステントを所望の狭窄部に留置するためのステントデリバリー(ステントシステム)用として使用される。勿論、本発明は、このようなPTCA拡張カテーテル以外のもの、例えば、他の血管、胆管、気管、食道、尿道、その他の臓器等の生体器官内に形成された病変部の改善のためのカテーテルにも適用可能である。
【0022】
そして、本実施形態に係るバルーンカテーテル10は、図1に示すように、細径で長尺なシャフト本体12と、シャフト本体12の先端部に設けられた第1バルーン14と、該第1バルーン14の後方(バルーンカテーテル10の挿入方向後方)に設けられた第2バルーン16と、第2バルーン16の周囲にマウントされるステント18と、シャフト本体12の基端側に設けられたハブ20とを備える。なお、図1、図2において、シャフト本体12の右側(ハブ20側)を「基端(後端)」側、シャフト本体12の左側(第1バルーン14側)を「先端」側と呼ぶ。
【0023】
図2並びに図3A〜図3Cに示すように、シャフト本体12は、少なくとも第1バルーン14及び第2バルーン16内に挿通される内管シャフト22と、少なくとも第2バルーン16内に挿通され、内管シャフト22が挿通される中間シャフト24と、該中間シャフト24が挿通される外管シャフト26とを有する。
【0024】
内管シャフト22は、ガイドワイヤ28を挿通するための断面円形状のワイヤ用ルーメン30(図3A参照)を有する。また、内管シャフト22の外周面の一部(軸方向に沿って延びる部分)と中間シャフト24の内周面の一部(軸方向に沿って延びる部分)とが融着されて、内管シャフト22と中間シャフト24とが一体化されて1つの管、すなわち第1管シャフト25として構成されている。
【0025】
すなわち、第1管シャフト25は、図3Bに示すように、上述したワイヤ用ルーメン30に加えて、内管シャフト22の外周面と中間シャフト24の内周面との間に形成された断面三日月形状の第1拡張用ルーメン31とを有する。また、第1管シャフト25は、第1バルーン14内に位置する部分のうち、例えば第1バルーン14の基端部近傍の箇所に、第1拡張用ルーメン31内に通じる開口32が形成されている。
【0026】
また、図3Cに示すように、第1管シャフト25の外周面と外管シャフト26の内周面との間に断面環状の第2拡張用ルーメン34が形成される。この外管シャフト26は、第1管シャフト25が挿通される第2管シャフトとして構成されている。この外管シャフト26は、第2バルーン16内に位置する部分のうち、例えば第2バルーン16の基端部近傍の箇所に、第2拡張用ルーメン34内に通じる開口35が形成されている。
【0027】
つまり、シャフト本体12のうち、第1バルーン14に対応する部分は、内管シャフト22と、第1拡張用ルーメン31を内管シャフト22の外周面との間に形成した外管(この場合、第1バルーン14)とから構成される二重管構造となっている。また、シャフト本体12のうち、第2バルーン16に対応する部分は、内管シャフト22と、第2拡張用ルーメン34を中間シャフト24の外周面との間に形成した管(この場合、第2バルーン16)と、第1拡張用ルーメン31を内管シャフト22の外周面との間に形成した管(この場合、中間シャフト24)とから構成される三重管構造となっている。同様に、シャフト本体12のうち、第2バルーン16の基端部からハブ20にかけて、内管シャフト22と、第2拡張用ルーメン34を中間シャフト24の外周面との間に形成した管(この場合、外管シャフト26)と、第1拡張用ルーメン31を内管シャフト22の外周面との間に形成した管(この場合、中間シャフト24)とによる三重管構造とされている。
【0028】
内管シャフト22は、例えば外径が0.1〜1.0mm程度、好ましくは0.3〜0.7mm程度であり、肉厚が10〜150μm程度、好ましくは20〜100μm程度であり、長さが100〜2000mm程度、好ましくは150〜1500mm程度のチューブである。
【0029】
中間シャフト24は、例えば外径が0.3〜3.0mm程度、好ましくは0.5〜1.5mm程度であり、肉厚が約10〜150μm程度、好ましくは20〜100μm程度、長さが100〜2000mm程度、好ましくは150〜1500mm程度である。
【0030】
外管シャフト26は、例えば、外径が0.5mm〜1.5mm程度、好ましくは0.6mm〜1.3mm程度であり、内径が0.3mm〜1.4mm程度、好ましくは0.5mm〜1.2mm程度、長さが800mm〜1500mm程度、好ましくは1000mm〜1300mm程度のチューブである。
【0031】
これら内管シャフト22、中間シャフト24及び外管シャフト26は、術者が基端側を把持及び操作しながら、長尺なシャフト本体12を血管等の生体器官内へと円滑に挿通させることができるために、適度な可撓性と適度な強度(コシ。剛性)を有する構造であることが好ましい。そこで、内管シャフト22、中間シャフト24及び外管シャフト26は、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、或いはこれら二種以上の混合物等)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂等の高分子材料或いはこれらの混合物、或いは上記2種以上の高分子材料の多層チューブ等で形成するとよい。
【0032】
ハブ20は、図1に示すように、中間シャフト24の第1拡張用ルーメン31に第1拡張用流体を導入するための第1流体導入部36と、外管シャフト26の第2拡張用ルーメン34に第2拡張用流体を導入するための第2流体導入部38とを有する。すなわち、中間シャフト24は、第1流体導入部36に設けられる第1ルアーテーパー36a等によって図示しないインデフレーター等の圧力印加装置から圧送される第1拡張用流体を第1バルーン14まで送液可能となっており、外管シャフト26は、第2流体導入部38に設けられる第2ルアーテーパー38a等によって図示しないインデフレーター等の圧力印加装置から圧送される第2拡張用流体を第2バルーン16まで送液可能となっている。なお、内管シャフト22の先端部の開口(先端開口22a:図2参照)を入口として挿入されたガイドワイヤ28は、内管シャフト22のワイヤ用ルーメン30を先端側から基端側へと挿通し、出口であるハブ20の後端から導出されるようになっている。
【0033】
一方、第1バルーン14は、内圧の変化により収縮あるいは折り畳み及び拡張が可能であり、中間シャフト24の第1拡張用ルーメン31を介して内部に注入される第1拡張用流体により筒状(円筒状)に拡張する第1筒部14a(ストレート部)と、第1筒部14aの先端側で漸次縮径する第1先端テーパ部14bと、第1筒部14aの基端側で漸次縮径する第1基端テーパ部14cと、第1先端テーパ部14bの先端側に設けられた円筒状の第1先端側非拡張部14dと、第1基端テーパ部14cの基端側に設けられた円筒状の第1基端側非拡張部14eとを有する。
【0034】
同様に、第2バルーン16は、内圧の変化により収縮あるいは折り畳み及び拡張が可能であり、外管シャフト26の第2拡張用ルーメン34を介して内部に注入される第2拡張用流体により筒状(円筒状)に拡張する第2筒部16a(ストレート部)と、第2筒部16aの先端側で漸次縮径する第2先端テーパ部16bと、第2筒部16aの基端側で漸次縮径する第2基端テーパ部16cと、第2先端テーパ部16bの先端側に設けられた円筒状の第2先端側非拡張部16dと、第2基端テーパ部16cの基端側に設けられた円筒状の第2基端側非拡張部16eとを有する。
【0035】
そして、第1バルーン14は、第1先端側非拡張部14dが内管シャフト22における先端部の外周面に液密に接合(例えば熱融着や接着)され、第1基端側非拡張部14eが中間シャフト24の先端部の外周面に液密に接合されることで、シャフト本体12に固着されている。第1先端側非拡張部14dの内径は内管シャフト22の外径に略一致し、第1基端側非拡張部14eの内径は、中間シャフト24の外径に略一致している。
【0036】
第2バルーン16は、第2先端側非拡張部16dが第1バルーン14の第1基端側非拡張部14eの外周面及び/又は中間シャフト24の先端部の外周面に液密に接合(例えば熱融着や接着)され、第2基端側非拡張部16eが外管シャフト26の先端部の外周面に液密に接合されることで、シャフト本体12に固着されている。第2先端側非拡張部16dの内径は、第1バルーン14の第1基端側非拡張部14eの外径あるいは中間シャフト24の外径に略一致し、第2基端側非拡張部16eの内径は、外管シャフト26の外径に略一致している。図2の例では、第2先端側非拡張部16dを第1バルーン14の第1基端側非拡張部14e及び中間シャフト24の各外周面に液密に接合した例を示している。
【0037】
第1バルーン14の拡張時の大きさは、例えば第1筒部14aの外径が1〜4mm程度、好ましくは1〜3mm程度であり、長さが5〜50mm程度、好ましくは5〜40mm程度である。また、第1先端側非拡張部14dの外径は、0.3〜1.5mm程度、好ましくは0.6〜1.3mm程度であり、長さは1〜5mm程度、好ましくは1〜2mm程度である。第2基端側非拡張部14eの外径は0.5〜1.8mm程度、好ましくは0.6〜1.3mm程度であり、長さは1〜5mm程度、好ましくは2〜4mm程度である。さらに第1先端テーパ部14b及び第1基端テーパ部14cの長さは1〜10mm程度、好ましくは3〜7mmで程度である。
【0038】
第2バルーン16の拡張時の大きさは、例えば第2筒部16aの外径が1〜6mm程度、好ましくは1〜4mm程度であり、長さが5〜50mm程度、好ましくは5〜40mm程度である。また、第2先端側非拡張部16dの外径は、0.5〜1.5mm程度、好ましくは0.6〜1.3mm程度であり、長さは1〜5mm程度、好ましくは1〜2mm程度である。第2基端側非拡張部16eの外径は0.8〜1.8mm程度、好ましくは0.6〜1.5mm程度であり、長さは1〜5mm程度、好ましくは2〜4mm程度である。さらに第2先端テーパ部16b及び第2基端テーパ部16cの長さは1〜10mm程度、好ましくは3〜7mmで程度である。
【0039】
このような第1バルーン14及び第2バルーン16は、内管シャフト22、中間シャフト24及び外管シャフト26と同様に適度な可撓性が必要とされると共に、狭窄部を確実に押し広げることできる程度の強度が必要であり、その材質は、例えば、上記にて例示した内管シャフト22、中間シャフト24及び外管シャフト26のものと同一でよく、勿論他の材質であってもよい。
【0040】
ステント18は、第2バルーン16の拡張力により拡張(塑性変形)する、いわゆるバルーンエクスパンダブルステントであり、第2バルーン16を被包するように第2バルーン16上に装着される。ステント18は、所定の金属線を網目状に形成して筒状にしたものや、金属線を波線状の環状体として形成したものを複数配置し、その間を適宜金属線で接続して筒状にしたもの、金属線をらせん状に巻回して筒状にしたもの等、公知の構成を適用可能である。ステント18を形成する金属線の材質としては、生体適合性を有する金属が好ましく、例えば、ステンレス鋼、タンタル(タンタル合金)、プラチナ(プラチナ合金)、金(金合金)、コバルトベース合金、コバルトクロム合金、チタン合金、ニオブ合金等が挙げられる。
【0041】
そして、本実施形態では、第1バルーン14の表面(特に、第1筒部14aの外表面)の摩擦係数をμ1、第2バルーン16の表面(特に、第2筒部16aの外表面)の摩擦係数をμ2としたとき、μ1<μ2を満足するように構成されている。具体的には、図4Aに示すように、第1バルーン14の少なくとも第1筒部14aの表面に潤滑剤40が塗布され、図4Bに示すように、第2バルーン16の少なくとも第2筒部16aの表面には潤滑剤40(図4A参照)は塗布されず、凹凸形状とされている。凹凸形状としては、第2筒部16aの外表面に複数の凸部42を有する形状が挙げられる。この場合、凸部42の径を、凸部42の一部又は全部がステント18の網目に入り18a込む程度の長さとし、凸部42の高さを、ステント18の厚みtの1/5倍〜2倍程度とすることが挙げられる。ここで、潤滑剤40として、以下の湿潤時潤滑性高分子が挙げられる。湿潤時潤滑性高分子は、生体内において湿潤性を有する高分子物質であり、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸メチルビニルエーテル共重合体等の無水マレイン酸系ポリマー、N,N−ジメチルアクリルアミド重合体、N,N−ジメチルアクリルアミドと他の共重合性モノマーとの共重合体等のアクリルアミド系ポリマー、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアミド基含有モノマーを主鎖に含む(メタ)アクリレート系ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール鎖を有する重合体、ナイロンP−70等の水溶性ポリアミド、メタクロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)等のリン脂質を側鎖に有するモノマーを構成成分として含む変性(メタ)アクリル系重合体等の変性ポリマー、スルホン酸変性ポリマー、キトサン等の多糖類、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、グリコーゲン誘導体、アルギン酸、ムチン、コンドロイチン等の天然由来物等を例示することができる。
【0042】
また、このバルーンカテーテル10は、図2に示すように、第1バルーン14の拡張時における第1筒部14aの外径をD1、第2バルーン16の拡張時における第2筒部16aの外径をD2としたとき、D1≦D2を満足するようにしている。本実施形態では、第1筒部14aの外径D1と第2筒部16aの外径D2との関係を、D1=1/2×(D2)〜5/6×(D2)、好ましくは、D1=2/3×(D2)としている。
【0043】
次に、以上のように構成される本実施形態に係るバルーンカテーテル10の作用について説明する。
【0044】
先ず、冠動脈内等に発生した狭窄部(病変部)の形態を、血管内造影法や血管内超音波診断法により特定する。
【0045】
次に、例えばセルジンガー法によって大腿部等から経皮的に血管内にガイドワイヤ28を先行して導入すると共に、該ガイドワイヤ28を内管シャフト22の先端開口22aから内管シャフト22のワイヤ用ルーメン30を挿通させてハブ20の後端へと導出しつつバルーンカテーテル10を冠動脈内へと挿入する。このとき、バルーンカテーテル10は、第1バルーン14及び第2バルーン16が共に収縮あるいは折り畳まれた形態で挿入される。
【0046】
そして、X線造影下で、ガイドワイヤ28を目的とする狭窄部へ進め、その狭窄部を通過させて留置すると共に、バルーンカテーテル10をガイドワイヤ28に沿って冠動脈内に進行させる。
【0047】
バルーンカテーテル10の進行によって、該バルーンカテーテル10の第1バルーン14が狭窄部に到達する。このとき、第1バルーン14の表面には潤滑剤40が塗布されて摩擦係数が低い状態となっていることから、第1バルーン14の通過性、摺動性が良好であり、第1バルーン14はスムーズに狭窄部に到達することとなる。この段階で、第1流体導入部36から中間シャフト24の第1拡張用ルーメン31内へと第1拡張用流体(例えば、造影剤)を圧送することで、第1バルーン14が拡張して狭窄部が押し広げられることになる。その後、さらに、バルーンカテーテル10が挿入されることで、狭窄部に第2バルーン16が到達することとなる。このとき、狭窄部は第1バルーン14にて押し広げられているため、第2バルーン16はスムーズに狭窄部に進入し、仮に、狭窄部の一部にステント18が当たったとしても、第2バルーン16の表面が凹凸形状とされて摩擦係数が大きいことから、ステント18が第2バルーン16から抜け落ちるということがない。その後、第2流体導入部38から外管シャフト26の第2拡張用ルーメン34内へと第2拡張用流体(例えば、造影剤)を圧送することで、第2バルーン16が拡張して狭窄部が押し広げられることで、ステント18も拡張し、狭窄部内壁に密着・固定されることとなる。
【0048】
このように、本実施形態に係るバルーンカテーテル10においては、先端部から基端部に向かって順番に配された第1バルーン14及び第2バルーン16を設け、第1バルーン14の表面の摩擦係数μ1を、第2バルーン16の表面の摩擦係数μ2よりも小さくしたので、先端部側に配された第1バルーン14を、通過性、摺動性の向上を目的としたバルーンとして構成し、第1バルーン14の後方(バルーンカテーテル10の挿入方向後方)に配された第2バルーン16を、ステント18の保持性能、拡張性能の向上を目的としたバルーンとして構成することが可能となる。しかも、ステント18のクロッシングプロファイル(マウント時のステント内径)を小さくする必要がないため、第2バルーン16にピンホールや、バルーンラプチャー(破裂)は生じない。すなわち、先端部の第1バルーン14によってバルーンカテーテル10の通過性、摺動性が向上し、第1バルーン14の後方に配された第2バルーン16によってステント18の保持力、リテンション力が向上し、ステント18のスリップ対策にもつながる。
【0049】
また、本実施形態では、第1バルーン14の拡張時の外径をD1、第2バルーン16の拡張時の外径をD2としたとき、D1≦D2を満足するようにしたので、第1バルーン14の通過性、摺動性を向上させることができ、しかも、ステント18のクロッシングプロファイル(マウント時のステント内径)を小さくする必要がない。
【0050】
また、内管シャフト22と中間シャフト24とを一体化して、第1拡張用ルーメン26に加えて、ガイドワイヤ28を挿通するためのワイヤ用ルーメン30が設けられた1つの第1管シャフト25とし、第1バルーン14内に位置する箇所に、第1拡張用ルーメン31に通じる開口32を形成するようにしたので、第1管シャフト25は、第1バルーン14に第1拡張用流体を導入するための管として機能するほか、ガイドワイヤ28を挿通するための管としても機能し、ラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテルを実現させることができる。
【0051】
本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
【0052】
すなわち、上述の例では、シャフト本体12の基端側のハブ20の後端からガイドワイヤ28を導出する、いわゆるオーバーザワイヤタイプに適用した場合を示したが、その他、シャフト本体12の中間部のやや先端側寄りにガイドワイヤ28が導出される開口を設けた、いわゆるラピッドエクスチェンジタイプと呼ばれるバルーンカテーテルにも適用可能である。
【0053】
また、第1バルーン14の表面の摩擦係数μ1を、第2バルーン16の表面の摩擦係数μ2よりも小さくする構成としては、上述した構成のほか、第1バルーン14の表面に潤滑剤40を塗布せずに、第2バルーン16の表面に凸部を形成する構成や、第1バルーン14の表面に潤滑剤40を塗布するしないに拘わらず、第2バルーン16の少なくとも第2筒部16aの表面を、第1バルーン14の少なくとも第1筒部14aの表面よりも粗く形成する構成等が挙げられる。
【符号の説明】
【0054】
10…バルーンカテーテル 12…シャフト本体
14…第1バルーン 14a…第1筒部
16…第2バルーン 16a…第2筒部
18…ステント 22…内管シャフト
24…中間シャフト 25…第1管シャフト
26…外管シャフト(第2管シャフト) 28…ガイドワイヤ
30…ワイヤ用ルーメン 31…第1拡張用ルーメン
32…開口 34…第2拡張用ルーメン
40…潤滑剤 42…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部から基端部に向かって順番に配された第1バルーン及び第2バルーンと、
前記第1バルーンに連通する第1拡張用ルーメンを有し、且つ、前記第2バルーン内に挿通される第1管シャフトと、
前記第2バルーンに連通する第2拡張用ルーメンを有し、且つ、内部に前記第1管シャフトが挿通される第2管シャフトと、
前記第2バルーンにマウントされたステントと、を有することを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
請求項1記載のバルーンカテーテルにおいて、
前記第1バルーンの表面の摩擦係数をμ1、前記第2バルーンの表面の摩擦係数をμ2としたとき、
μ1<μ2
を満足することを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項3】
請求項1又は2記載のバルーンカテーテルにおいて、
前記第1バルーンの表面に潤滑剤が塗布され、
前記第2バルーンの表面が凹凸形状とされていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のバルーンカテーテルにおいて、
前記第1バルーンの拡張時の外径をD1、前記第2バルーンの拡張時の外径をD2としたとき、
D1≦D2
を満足することを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項5】
請求項1記載のバルーンカテーテルにおいて、
前記第1管シャフトは、
前記第1拡張用ルーメンに加えて、ガイドワイヤを挿通するためのガイド用ルーメンを有し、
前記第1バルーン内に位置する箇所に、前記第1拡張用ルーメンに通じる開口が形成されていることを特徴とするバルーンカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−200589(P2011−200589A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73152(P2010−73152)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】