説明

バルーンカテーテル

肛門灌注に関連して使用されるプローブ100が提供される。プローブは、直腸、尿道、膣または瘻孔を灌注するために使用できる。プローブは先端部130及びシャフト部120及びバルーン111を備える。プローブは2つの形態、すなわち前記先端部流路135へ通じる入口136が閉鎖している第一形態及び前記入口が開放される第二形態を有する。使用時に、寒中液はルーメン125に送り込まれて、先端部またはスリーブはシャフト部に対して長手方向に移動し、それによってプローブは第一形態から第二形態へ移動する。従って、使用時に、プローブの動きの制御によってバルーンが所望の程度まで膨張し、かつ、灌注対象の開口部へ灌注液が送り込まれるで、ユーザーは灌注液をプローブの中へ送り込み、ポンピング動作を続けるだけでよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直径が制御されるバルーンカテーテルまたはプローブに関する。カテーテルは肛門灌注と関連して使用される。また、本発明は肛門灌注を実施する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肛門灌注は排便の問題を抱える人を支援するために使用される多数の治療のうちの1つである。排便の問題を抱える人は、一般に脊髄損傷のために麻痺していることが多く、車椅子に縛り付けられたり入院を余儀なくされたりしている。このような状況においては、蠕動機能すなわち腸の筋肉反射を正しく刺激できない。その結果、便秘または腸の内容物の偶発的排泄を生じる。肛門灌注を用いることによって結腸の蠕動運動に刺激を与えることができる。
【0003】
この種の肛門灌注を実施するために、肛門プローブ(肛門カテーテル、直腸カテーテルまたは検鏡とも呼ばれる)を備える装置が提供される。肛門プローブは肛門から直腸の中へ挿入される。肛門プローブは一般に保持手段(最も一般的なのはバルーン)によって直腸内に保持される。バルーン(風船)は直腸の壁に当接するように膨らまされる。その後、水または食塩水などの液体が肛門プローブを介して直腸へ導入される。液体の量は患者によって異なるが通常最高で1500cm(1.5リットル)である。
【0004】
肛門プローブは、引き抜かれた後、直腸を介して結腸から排泄される。場合によっては、肛門灌注時に、直腸及び括約筋の拡張または直腸の蠕動運動の早期刺激によって、膨張したバルーンまたはその他の固定手段が適切なシールとならず、肛門プローブの周囲で直腸における排泄が生じる。このような望ましくない排泄は患者にとっても肛門灌注を実施する看護職員にとっても非常に不快である。
【0005】
米国特許第5074842号は、チューブと直腸内にチューブを保持するためのバルーンとを備える肛門灌注のための装置を提供する。バルーンは直腸内にチューブを保持するように設計された特別な形状のバルーンであり、チューブが挿入された後にバルーンを膨らませることができる。バルーンへの空気は、シリンジ弁を介して、空気通路と接続されるラインの中へ移送される。この形態は、結腸清掃液が患者体内へ入れるようにする第一のルーメンまたは流路とチューブを所定の場所に保持するために使用されるバルーンへ空気を移送しこれから空気を除去する第二の流路とを有する一体型二孔チューブを与える。
【発明の概要】
【0006】
本発明は肛門灌注に関連して使用される肛門プローブに関する。プローブはプローブを直腸内に保持するバルーンを備え、バルーンは灌注液の影響を受けて膨張する。膨張時にいくつかの点でバルーン要素はバルーン要素が直腸の内壁に接するまで膨張する。内壁に接した時点で、バルーン要素は長手方向へ伸び、それによって直腸へ通じる流路を開く。
【0007】
プローブは、先端部を含む近位部及びシャフト(柱)部を含む遠位部を備えることができる。近位部の一部は、遠位部に対して長手方向に移動できるように遠位部から分離する。先端部及びシャフト部は各々流路を有し、プローブの第一形態において、流路は相互に接続されておらず、プローブの第二形態において、流路は相互に接続される。可動部はバルーン要素によって第一形態へ向けて一緒に付勢されて、弾性要素となる。
【0008】
第一の態様において、本発明は、
−入口及び出口を持つ先端部流路を有する先端部と、
−入口及び出口を持つシャフト(柱)部流路と灌注液供給手段に接続するためのコネクタとを有するシャフト部と、
−人体内に前記プローブを保持するためのバルーン(風船)であって、該バルーンが前記シャフト部流路の前記出口及び前記先端部流路の前記入口を取り囲むように取り付けられて、前記バルーンが前記出口と前記入口との間にルーメン(流路)を形成する、バルーンと、
を備え、
前記シャフト部流路の前記出口が前記バルーンの前記ルーメンと流動可能に接続され、かつ前記プローブが、
−前記先端部流路の前記入口が前記バルーンの前記ルーメンと流通可能に接続されない第一形態と、
−前記先端部流路の前記入口が前記バルーンの前記ルーメンと流通可能に接続される第二形態と、
の間で移動可能であることを特徴とする、
人体の中へ液体を灌注するためのプローブに関する。
【0009】
このようなプローブは、ユーザーがポンプを含めて流体供給源をプローブに取り付けて灌注液をプローブの中へ送り込むだけでよいので、特に使いやすい。第一形態においては流路の間は接続されないので、灌注液はシャフト部流路を介してバルーンのルーメンへ流れ込み、バルーンを膨張させる。第二形態においては、シャフト部流路と先端部流路とは接続される。この形態においては、灌注液はシャフト部流路を介してバルーンのルーメンへ流れ込み、そこから先端部流路へ流れ込んで、さらに灌注対象の開口部へ流れ込む。言い換えると、プローブの第一形態において、先端部流路の入口は閉鎖され、プローブの第二形態において先端部流路の入口は開放される。
【0010】
このようなプローブが使用される場合、1つの動作でバルーンを起動し、身体開口部へ灌注液を送り込むので、1つのポンピング動作しか必要ない。従って、ユーザーは灌注対象の開口部(直腸、膣、瘻孔、尿道)の中へプローブを挿入して、ポンピングを開始する。ユーザーはポンピングを続けるだけでよく、バルーンのポンピングから身体開口部への灌注液のポンピングへ切り替える必要がない。これら全てがプローブの動きによって制御される。プローブが第一形態から第二形態へ移行するときバルーンの膨張は抑止される。
【0011】
プローブの長手部は、挿入を容易にするためにコーティングを持つ直腸カテーテルの形状を持つことができる。一般に、カテーテルは、10mmなど約8〜16mmの直径及び約150mmなど約70〜200mmの長さを持つ円筒形である。
【0012】
また、プローブは、約8〜18フレンチサイズを有する尿道カテーテルの形状を持つことができる。これは直径約2.7〜6.0mmに相当する。挿入可能な長さは、一般に、雄型カテーテル(male catheter)の場合約250〜300mmであり、雌型カテーテル(female catheter)の場合挿入可能な長さは一般に60〜130mmである。挿入可能な長さはコネクタに隣接する3〜5cmを除いてカテーテルを構成する管状要素の長さに一致する。
【0013】
プローブは、さらに瘻孔の灌注(この場合、直腸カテーテルが使用される)及び膣の灌注に使用できる。
【0014】
プローブは先端部を含む近位部及びシャフト部を含む遠位部を備える。先端部は、プローブの出口を形成するアイレット(小開口)を持つ丸められた端を有するほぼ円筒形の要素を含む。また、シャフト部は、プローブの入口を形成する遠位端にコネクタを持つほぼ円筒形の要素を含む。この文脈において、また出願全体を通じて、近位部または近位端と言うとき、挿入端に最も近い部分または端部を意味する。従って、遠位部または遠位端と言うとき、挿入端と反対側の端部すなわちコネクタ端を意味する。
【0015】
先端部とシャフト部は2つの別個の部品から作ることができ、先端部とシャフト部は少なくとも第一形態において結合される。または、先端部とシャフト部を1つの一体的部品として作ることができる。先端部は、遠位端にまたはその付近に入口をまたは近位端に出口を有する流通流路(先端部流路)を有する。流路の出口が先端部のアイレットと合致するようにアイレットは先端部の流路と接続される。シャフト部も、コネクタと接続される入口及び近位端付近の出口を有する流路(シャフト部流路)を含む。コネクタを灌注液供給源に取り付けることができる。
【0016】
先端部は、最も外側の先端部分にキャップを備えることができる。キャップは挿入時にある程度までアイレットをカバーして、直腸または結腸内(それぞれ肛門灌注及び瘻孔灌注の場合)に存在する糞便がアイレットに詰まらないようにする。さらに、先端は例えば10または15またはそれ以上のアイレットを備えて、全てのアイレットが同時に詰まる危険を抑えることができる。
【0017】
本発明の1つの実施形態において、本発明は第一形態から第二形態への移行がバルーンの膨張によって制御されるプローブに関する。これは、横断方向にもはや膨張できない程度までバルーンが横断方向に膨張したら、バルーンが長手方向に膨張して、第一形態から第二形態への移行を開始することを意味する。
【0018】
本発明の1つの実施形態において、先端部及びシャフト部は長手方向を形成する細長い要素であり、プローブの近位部の一部はプローブの遠位部に対して長手方向に変位可能であり、バルーンは遠位部及びプローブの変位可能部に取り付けられる。
【0019】
長手方向の変位とはほぼ長手方向に変位することを意味する。この実施形態において、バルーン要素は、バルーンがそれ以上横断方向に膨張できないときプローブの遠位部に対してプローブの近位部の一部を変位させることができる。バルーン要素は第一取付けゾーンにおいてプローブの遠位部に環状に取り付けられ、さらに第二取付けゾーンにおいてプローブの近位部に環状に取り付けられる。これによって、バルーン要素の動きが遠位部及び変位可能な近位部へ伝達される。シャフト部流路はバルーンのルーメンと接続された出口を有する。プローブの第一形態において、先端部流路の入口はルーメンと接続されていないので、プローブの2つの流路は接続されていない。プローブの第二形態において、灌注液は先端部流路の入口へ接近できるので、先端部流路の出口(アイレットと接続されている)に達することができ、さらに体内開口部例えば直腸または尿道へ流れ込むことができる。先端部流路の入口はバルーン要素の長手方向の膨張によって開放される。この膨張はプローブの変位可能部分を変位させる。
【0020】
関連する実施形態は、別個の要素である先端部及びシャフト部に関するものであり、バルーンがシャフト部及び先端部に取り付けられ、プローブの第二形態において先端部はシャフト部に対して長手方向に変位する。この実施形態において、プローブの近位部の変位可能部は先端部全体である。
【0021】
別の実施形態においては、プローブはさらに先端部の少なくとも一部に沿って長手方向に伸びるスリーブを備え、バルーンはシャフト部及びスリーブに取り付けられ、プローブの第二形態においてスリーブはシャフト部に対して長手方向に変位する。この実施形態において、スリーブはプローブの近位部の変位可能部を構成する。このようにして、2つの別個の流路を有する1つの一体的要素として先端部とシャフト部を製造することができる。スリーブは実際にはプローブの残り部分に対して長手方向に変位する。
【0022】
これらの実施形態において、バルーンは、バルーンの外側輪郭が腸壁と当接するまでは主に横断方向に拡張する。外側輪郭が腸壁と当接した時点で、バルーンは主に長手方向に拡張し始めて、複数の可動部を相互に長手方向に引き離す。可動部が相互にある一定距離離れたら、先端部流路への接近路が与えられ、水は先端部流路を介して灌注対象の体内開口部へ流れ込む。この文脈において、横断方向及び長手方向はプローブの方向として定義され、長手方向はプローブの長さ方向であり、横断方向はこれを横断する方向である。プローブは、一端に入口を他方の端に出口を有するほぼ円筒形の要素であり、入口及び出口はほぼ円筒形要素の軸線に沿っている。この軸線は長さ方向を形成する。
【0023】
先端部とシャフト部が2つの別個の部品である場合、第一形態は収縮ポジションに相当し、第二形態は長手方向に沿った伸張ポジションに相当する。すなわち、先端部とシャフトは伸張ポジションにおいてその間にある距離を有し、収縮ポジションにおいて相互に当接する。プローブの第一形態において、先端部とシャフト部は相互に当接する当接面を形成する。当接面が密着した接触部を形成して当接面の間にシール作用を与えるように、これらの当接面を研磨面とすることができる。平滑面の間のこのようなシール作用は、第一形態において灌注液のほとんどが先端部から流れ出ないようにするのに充分である。関連する実施形態において、当接面はガスケットの形の追加のシール要素を備えることができる。
【0024】
先端部とシャフト部が別個の部品である場合、先端部へ通じる入口を先端部の当接面に配置することができる。先端部を丸められた先端を有する単純な円筒形要素として形成することができるので、これは特に単純な解決法となる。別の実施形態において、先端部かあるいはシャフト部が突起部を有し、もう一方は突起部に対応する陥凹部を有する。この解決法において、先端部流路の入口は、先端部が陥凹部を持つか突起部を持つかに応じて、陥凹部か突起部に隠される。この解決法は、第一形態においてプローブが先端部へ通じる入口を閉じたままにしておく能力を増大する。先端部が突起部を有しシャフト部がこれに対応する陥凹部を有する場合、入口は突起部の側壁に設置される。第一形態において、この入口は隠され、当接面によって、また突起部の側壁とシャフト部の陥凹部の側壁との間の当接によって閉鎖される。先端部が陥凹部を有し、シャフト部が対応する突起部を有する場合、陥凹部のどこにでも入口を設置することができ、突起部が陥凹部から完全に取り外されるとき入口にアクセスできる。すなわち入口を開放できる。関連する実施形態において、シャフト部の突起部は突起部の側壁に入口をまた突起部の端に出口を有する追加の流路を備えることができる。この実施形態において、先端部位の入口への接近路を創設するために突起部を陥凹部から完全に取り外す必要がない。
【0025】
プローブがプローブの近位部の一部としてスリーブを含む場合、灌注液がルーメンから出ないようにするためにこのスリーブ及び先端部を相互にシールしなければならない。当業界において周知のガスケットによってこのシール作用を行うことができる。スリーブはプローブの残り部分と一致する材料で作らなければならない。この実施形態において、プローブの第一形態のとき先端部流路の入口をスリーブの下に配置することができる。これによって、スリーブの長手方向の変位は先端部流路の入口を開放するので、灌注液がプローブを介して直腸または尿道へ流れ込むことができる。開口部(例えば、直腸)が糞便で詰まっている場合、スリーブ構造物が有利である。このような状況においてプローブが挿入されると、詰まりのために先端が前進するのが困難である場合がある。スリーブのほうが前進するのが容易であり、このようにして先端流路を介して灌注液の流通のために開放しやすい。
【0026】
プローブはバルーン要素を備えるバルーンを備える。バルーン要素の材料は、通常の使用条件の下で(例えば0.25MPa(2.5気圧)未満の圧力を受けて)弾性を持つ。バルーン要素をPU(ポリウレタン)、ラテックスまたはPVC(ポリ塩化ビニール)で作ることができるが、同様の特性を有する他の材料を使用することができる。他のタイプの材料としては、シリコンエラストマー(例えば、LSR、HTV、RTV、Addition Cure(付加硬化)またはCondensation Cure(縮合効果))、天然ゴムラテックス、イソプレンゴム、クロロプレンゴム(例えば、Neoprene(登録商標))、PU(ポリウレタン、例えば可塑性または架橋性)、スチレンエラストマー(TRE−S、例えばKraton(登録商標)、Septon(登録商標)、Sibstar(登録商標)リアクタ材料または化合物)及びポリエーテルブロックアミド(TPE−A、例えばPebax(登録商標))がある。
【0027】
バルーン要素の伸張性は、バルーンをその長さの2倍に伸長させるために約0.1MPaから約10.0MPaまで−好ましくは約0.2MPaから約1.5MPaまでの間の力を必要とする程度である。言い換えると、歪み度が初期長さの100%に達したとき、材料の応力は約0.1MPaから約10.0MPaまで、好ましくは約0.2Mpaから約1.5MPaまでの間である。
【0028】
バルーン要素は、約1〜70ショアA、好ましくは約10から30ショアAのショア硬度を有する材料で製造される。
【0029】
バルーンは、シャフト部流路の出口下方の遠位部(シャフト部)及び先端部流路の入口上方のプローブの近位部(先端部自体か、これを取り囲むスリーブ)に取り付けられるルーメン形成要素(バルーン要素)の形を取る。バルーン要素はそれぞれシャフト部及び近位部に環状に取り付けられることが好ましい。取付けは、通常の使用条件の下で、例えば0.25MPa(2.5気圧)未満の圧力を受けたとき液密でなければならない。取付けは接着によって行われることが好ましい。
【0030】
この実施形態においては、ユーザーが灌注液をプローブへ送り込むと、バルーン要素は当初横断方向に、その後長手方向に拡張する。バルーン要素が横断方向に拡張(または)膨張)するとき、バルーン要素は少なくともわずかに長手方向にも膨張する。しかし、初期には、バルーン要素の外側輪郭が直腸の腸壁または尿道の内壁に達するまで、膨張は主に横断方向に生じる。バルーン要素が直腸の腸壁または尿道の内壁に達した時点で、バルーンはそれ以上横断方向に拡張することを妨げられ、その後は主に長手方向に膨張する。バルーンは一端で先端部に取り付けられ、他方の端でシャフト部に取り付けられるので、長手方向の膨張は2つの部品を相互に長手方向に引き離す。バルーン要素が長手方向にある程度まで拡張すると、2つの部品は、先端部流路がバルーンのルーメンと流通可能に接続される程度まで分離される。この状態で、灌注液は先端部を介してユーザーの直腸または尿道へ流入可能となる。言い換えると、バルーン要素が長手方向にある一定の程度まで拡張すると先端部流路が開放される。この時点で、バルーンはそれ以上拡張せず、ポンピングの継続によって灌注液はプローブを介して直腸または尿道へ送り込まれる。
【0031】
灌注装置の使用時、特に肛門灌注にこれが使用される場合、腸壁が蠕動運動し、腸壁が外向きに動いて、腸壁の円周が拡大する場合がある。この場合バルーン要素は腸壁に再び当接するまで横断方向にさらに少し拡張するので、本発明のプローブは壁円周の拡大を補正することができる。このような脈動運動時に、プローブを通過する液の流れは一時的に中断されるかも知れないが、これは灌注処置に悪影響を及ぼさない。
【0032】
灌注処置後プローブを容易に取り外せる。バルーンが完全に膨張していない場合、プローブを抵抗なく引き出すことができる。バルーンが完全に膨張している場合、コネクタ端を引っ張ると先端部がシャフト部から分離するか、またはシャフト部がスリーブから分離する。これによって、先端部流路の入口が開放されて、バルーンに貯まった液体は灌注対象の開口部(直腸、膣、瘻孔または尿道)へ流れ込む。バルーンが空であれば、プローブを簡単に取り外せる。
【0033】
灌注液は水道水、生理食塩水、滅菌水または油性物質など任意の適切な媒体である。
【0034】
第二の態様において、本発明は、遠位部と、近位部と、バルーンとを備えるプローブを用いて肛門灌注を実施する方法に関する。前記バルーンは前記遠位部と前記近位部の変位可能部とに取り付けられて、その間にルーメンを形成し、前記遠位部は概して細長い要素として製造されるシャフト部を備え、前記近位部は概して細長い要素として製造される先端部を備え、前記細長い要素は長手方向を形成する。前記方法は、
−前記プローブを直腸の中へ導入するステップと、
−第一ポンピング動作によって前記シャフト部の流路を介して前記プローブの中へ及び前記ルーメンの中へ灌注液を供給するステップと、
−同じ第一ポンピング動作によって前記バルーンを拡張させるステップと、
−前記近位部の前記変位可能部を長手方向に移動させ、それによって、前記同じ第一ポンピング動作によって前記先端部の流路の入口への接近路を与えるステップと、
−前記同じ第一ポンピング動作によって前記先端部を介して直腸または尿道の中へ灌注液を供給するステップと、
を含む。
【0035】
この方法は、ユーザーがプローブを導入して、ポンピング動作によってプローブに灌注液を供給することを含んでいる。ポンピング動作はその後他の作用を与える。これによって、この方法はこれまで知られている方法に比べて非常に使用しやすい。プローブと灌注液供給源との間の接続は当業界において知られている手段によって行える。単純な解決法はシャフト部の端のコネクタと閉鎖バッグに接続されたチューブを使用するものである。バッグへ空気を送り込んで、灌注液をバッグから排出するために、エアポンプを使用できる。その他の解決法も可能である。
【0036】
第三の態様において、本発明は、遠位部と、近位部と、バルーンとを備えるプローブを用いて肛門灌注を実施する方法に関する。前記バルーンは、前記遠位部と前記近位部の変位可能部とに取り付けられて、その間にルーメンを形成する。前記遠位部は概して細長い要素として製造されるシャフト部を備え、前記近位部は概して細長い要素として製造される先端部を備え、前記細長い要素は長手方向を形成する。前記方法は、
−前記プローブを直腸の中へ導入するステップと、
−前記シャフト部の流路を介して前記プローブの中へ及び前記ルーメンの中へ灌注液を供給するステップと、
を含み、
前記灌注液が、横断方向に、その後長手方向に前記バルーンを拡張させて、前記先端部流路の入口が前記ルーメンと流通可能に接続されない第一形態から前記先端部流路の入口が前記ルーメンと流通可能に接続される第二形態へ前記プローブを移動させることを特徴とする。
【0037】
ユーザーは灌注液供給源をプローブに接続して、灌注液のポンピングを開始するだけなので、この方法は同様に使用が容易である。その後、プローブはプローブが保持され先端部の流路が開放されるまで自身により拡張する。従って、ユーザーは灌注液と同様に保持手段のポンピングについて同じポンピング動作を使用できる。この方法は、さらに、保持手段の外側輪郭が常に腸壁と当接しているようにする。従って、保持手段は腸内のシール要素としても機能できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1a】近位部の変位可能部が、シャフト部に対して変位可能である先端部である、本発明の1つの実施形態である。
【図1b】近位部の変位可能部が、シャフト部に対して変位可能である先端部である、本発明の1つの実施形態である。
【図2】先端部とシャフト部との間に別の結合形態を有する関連する実施形態の図である。
【図3a】近位部の変位可能部が、シャフト部に対して変位可能であるスリーブである、本発明の1つの実施形態の図である。
【図3b】近位部の変位可能部が、シャフト部に対して変位可能であるスリーブである、本発明の1つの実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1a及び1bは、プローブ100の変位可能部が先端部130に相当する、本発明の1つの実施形態を示す。図1aは第一形態のプローブ100を示し、図1bは第二形態の同じプローブ100を示す。プローブ100プローブの結合部150を取り囲むバルーン110を備える。結合部150はプローブのシャフト部120と先端部130との間のジョイントを形成する。シャフト部120は液供給源に接続される部分として定義され、先端部130は他方の部分である。プローブの近位端を挿入端と定義し、遠位端を他方の端と定義すると、この実施形態において、先端部130はプローブの近位部に相当し、シャフト部120はプローブの遠位部に相当する。図示される実施形態において、バルーン110は、バルーン要素内部、先端部及びシャフト部の間にバルーンルーメン112を形成するバルーン要素111を備える。バルーン要素111は、円筒形管状スリーブとして設置され、部分的に先端部及びシャフト部を囲繞し、一端で第一環状取り付け具113によってシャフト部120に取り付けられ、他方の端で第二環状取り付け具114によって先端部130に取り付けられる。環状取り付け具113、114を接着剤とすることができる。シャフト部120は遠位端121及び近位端122、及びその間に伸びる曲面123を有し、端部121、122と曲面123は結合されて、ほぼ円筒形の要素を形成する。シャフト部120は、また遠位端のコネクタ124及び流路入口126及びバルーン側出口127を持つ流路125を備える。図1a及び1bに図示される実施形態において、流路125は曲り部128を備える。曲り部は図には90度の曲りとして示される。ただし、他の形状の曲り部、例えば45度の曲り部を使用することもできる。実用目的では、バルーン側出口127はバルーンルーメン112と接続される必要があるので、流路125に少なくとも僅かな湾曲があることが好ましい。先端部130は遠位端131及び近位端132及びその間に伸びる曲面133を備える。シャフト部120と同様、これらの3つの部分はほぼ円筒形の要素を形成する。近位端132は実際にはプローブの先端134に相当する。先端部130は、さらにバルーン側入口136及び先端出口137を有する流路135を備える。先端出口137はプローブ先端134のアイレット138と接続される。結合部150は先端部130の遠位端131のリング面151及びこれに対応するシャフト部120の近位端121のリング面152を備える。2つのリング面151、152はプローブの収縮ポジション(プローブの第一形態に相当する)において密着して取り付けられるのに対して、伸張ポジション(プローブの第二形態に相当する)においては接しない。結合部150は、さらに先端部130から伸びる突起部153を備える。突起部は近位端154及び遠位端155及びその間に伸びる側壁156を有する。突起部153はシャフト部120の近位端に配置される陥凹部157に嵌合する。陥凹部157は遠位端158及び近位端159、及びその間に伸びる側壁160を有する。この実施形態において、先端部130の流路135へ通じるバルーン側入口136は突起部の側壁156の片側に配置される。図示するように、プローブが収縮ポジションにあるとき2つの面の間のシール効果を強化するために、当接面151、152の一方はシール161を備えることができる。突起部はいくつかの目的を果たす。1つの目的は先端部の流路135にシールされた入口136を与えることであり、別の目的はプローブの2つの部分(先端部130及びシャフト部120)にガイドを与えることである。特に当接面がシールを備える場合、先端部130の遠位端131の入口としてシールされた入口を与えることができる。同様に、2つの部分の間に伸びる他のガイド手段によってガイドを与えるか、またはガイドを完全に省略することができる。従って、突起部及び陥凹部はこの場合必要ない。
【0040】
プローブが使用されるとき、収縮ポジションのバルーン付きプローブが直腸に挿入される。水供給手段は、プローブ100のシャフト部120遠位端のコネクタ124に取り付けられる。灌注液は伝統的手段によって流路125へ注入または送入され、流路125からバルーン側出口127を介してバルーンルーメン112へ流れ込み、これによってバルーンは膨張する。当初、バルーンルーメンはプローブの半径方向(長手方向を横断する方向)に拡張するので、先端部とシャフト部との間のシール作用を強化する。これが図1aに図示され、図において、バルーン要素は灌注対象の開口部の内壁1(例えば、腸壁)に触れていない。バルーンルーメンが内壁に達すると、バルーンはそれ以上横断方向に拡張できず、プローブの長手方向に拡張し始める。バルーンは2つの部分に取り付けられるので、これによってプローブは伸張する。これが図1bに図示され、図においてバルーン要素111は内壁1に密着している。先端部130の流路135へ通じるバルーン側入口136が露出する程度までプローブが伸張したら、水はこの流路135を流れ始め、アイレット138を介して腸、尿道または膣へ流れ込む。腸壁が膨張したら、バルーンは再び半径方向に拡張することによってこれを補正するので、一時的に流路の入口を閉鎖する。バルーン111が再び腸壁に達したら、バルーンは長手方向に拡張して、再び流路の入口を開放する。肛門灌注の際このプロセスを数回繰り返すことができる。
【0041】
図2は図1a及び1bのプローブと同様の本発明に係るプローブ200を示す。その相違は先端部とシャフト部との間の結合部であり、この実施形態においては異なる方法で作られる。プローブの一部のみ図示され、頭の数字が1ではなく2であることを除けば、図1a及び1bに使用される番号に対応する番号が部品に付けられる。図2の先端部230も実際の先端234に相当する近位端232及び遠位端231及びその間に伸びる曲面233を備える。同様に、この実施形態のシャフト部220は近位端222及びコネクタ(図示せず)を含む遠位端を備える。結合部250の一部を形成する先端部の遠位端231はリング面251を備える。これに対応するリング面252がシャフト部220の近位端221に配置される。図1a及び1bの実施形態と同様、結合部250はさらに突起部253及び陥凹部257を備える。ただし、図2において、突起部253はシャフト部220から伸びており、陥凹部257は先端部231の遠位端に配置される。突起部は近位端254及び遠位端255及びその間に伸びる側壁256を有する。この実施形態において、突起部253は、さらに側壁256から近位端254まで伸びる流路262を備える。陥凹部は先端部流路235へ通じる入口236を備える。先端部230がシャフト部220に対して長手方向に変位すると、バルーンルーメン(図示せず)の中の灌注液は突起部253の流路262の中へ進入できる。ここから、灌注液は、入口236を介して、先端部流路235を通って、さらにアイレット238から灌注対象の開口部(例えば、直腸、膣、尿道または結腸)へ流れ込む。
【0042】
図3a及び3bは本発明に係る別のプローブを示す。このプローブにおいて、プローブの変位可能部は先端部330の外側に配置されたスリーブ370である。この場合も、今回は頭の数字が3であることを除いて、対応する参照番号が使用される。図3aは第一形態の実施形態を示し、図3bは第二形態の実施形態を示す。この実施形態において、先端部330とシャフト部は1つの統合された要素である。ただし、2つの部分330及び320は別個の流路、すなわちシャフト部流路325及び先端部流路335を有する。スリーブ370は、先端部330とスリーブ370との間で先端部330の周りに環状に配置されたシール要素370を介して先端部の外面と密着する。当初、先端部流路335へ通じる入口336はスリーブ370によってカバーされる。バルーン310が横断方向に膨張し終わると、バルーンは長手方向に膨張し始めて、スリーブ370を近位方向に引っ張る。スリーブ370がある程度の距離引っ張られると、先端部流路335へ通じる入口336が開放されて、バルーンルーメン312と接続される。これによって、灌注液は先端部流路335を介してアイレット338から灌注対象の開口部へ流れ込むことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口及び出口を持つ先端部流路を有する先端部と、
入口及び出口を持つシャフト部流路と灌注液供給手段に接続するためのコネクタとを有するシャフト部と、
人体内に前記プローブを保持するためのバルーン(風船)であって、該バルーンが前記シャフト部流路の前記出口及び前記先端部流路の前記入口を取り囲むように取り付けられて、前記バルーンが前記出口と前記入口との間にルーメン(流路)を形成する、バルーンと、
を備え、
前記シャフト部流路の前記出口が前記バルーンの前記ルーメンと流通可能に接続され、かつ前記プローブが、
前記先端部流路の前記入口が前記バルーンの前記ルーメンと流通可能に接続されない第一形態と、
前記先端部流路の前記入口が前記バルーンの前記ルーメンと流通可能に接続される第二形態と、
の間で移動可能であることを特徴とする、
人体の中へ液体を灌注するためのプローブ。
【請求項2】
前記第一形態から前記第二形態への移行が前記バルーンの膨張によって制御されることを特徴とする、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記先端部及び前記シャフト部が長手方向を形成する細長い要素であり、前記プローブの近位部の一部が前記プローブの遠位部に対して長手方向に変位可能であり、かつ前記バルーンが前記遠位部及び前記プローブの前記変位可能部に取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載のプローブ。
【請求項4】
前記先端部と前記シャフト部が別個の要素であり、前記バルーンが前記シャフト部及び前記先端部に取り付けられ、前記先端部が前記プローブの前記第二形態において前記シャフト部に対して長手方向に変位することを特徴とする、請求項2に記載のプローブ。
【請求項5】
前記先端部及び前記シャフト部が前記プローブの前記第一形態において相互に当接する当接面を有することを特徴とする、請求項4に記載のプローブ。
【請求項6】
前記先端部の前記入口が前記先端部の前記当接面に配置されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項7】
前記先端部あるいは前記シャフト部が突起部を有し、かつ他方の部分が前記突起部に対応する陥凹部を有することを特徴とする請求項4または5に記載のプローブ。
【請求項8】
前記先端部の前記入口が前記突起部に配置されることを特徴とする、請求項7に記載のプローブ。
【請求項9】
前記プローブがさらに前記先端部の少なくとも一部に沿って長手方向に伸びるスリーブを備え、前記バルーンが前記シャフト部及び前記スリーブに取り付けられ、前記スリーブが前記プローブの前記第二形態において前記シャフト部に対して長手方向に変位することを特徴とする、請求項2に記載のプローブ。
【請求項10】
前記先端部流路の前記入口が前記プローブの前記第一形態において前記スリーブの下に位置することを特徴とする、請求項9に記載のプローブ。
【請求項11】
前記バルーンが弾性材料で製造されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のプローブ。
【請求項12】
遠位部と、近位部と、バルーン(風船)とを備えるプローブを用いて肛門灌注を実施する方法であって、
前記バルーンが前記遠位部と前記近位部の変位可能部とに取り付けられて、その間にルーメン(流路)を形成し、前記遠位部が概して細長い要素として製造されるシャフト部を備え、前記近位部が概して細長い要素として製造される先端部を備え、前記細長い要素が長手方向を形成し、前記方法が、
前記プローブを直腸の中へ導入するステップと、
第一ポンピング動作によって前記シャフト部の流路を介して前記プローブの中へ及び前記ルーメンの中へ灌注液を供給するステップと、
同じ第一ポンピング動作によって前記バルーンを拡張させるステップと、
前記近位部の前記変位可能部を長手方向に移動させ、それによって、前記同じ第一ポンピング動作によって前記先端部の流路の入口への接近路を与えるステップと、
前記同じ第一ポンピング動作によって前記先端部を介して直腸または尿道の中へ灌注液を供給するステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
遠位部と、近位部と、バルーン(風船)と、を備えるプローブを用いて肛門灌注を実施する方法であって、
前記バルーンが、前記遠位部と前記近位部の変位可能部とに取り付けられて、その間にルーメン(流路)を形成し、前記遠位部が概して細長い要素として製造されるシャフト部を備え、前記近位部が概して細長い要素として製造される先端部を備え、前記細長い要素が長手方向を形成し、前記方法が、
前記プローブを直腸の中へ導入するステップと、
前記シャフト部の流路を介して前記プローブの中へ及び前記ルーメンの中へ灌注液を供給するステップと、
を含み、
前記灌注液が、横断方向に、その後長手方向に前記バルーンを拡張させて、前記先端部流路の入口が前記ルーメンと流通可能に接続されない第一形態から前記先端部流路の入口が前記ルーメンと流通可能に接続される第二形態へ前記プローブを移動させることを特徴とする、方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2011−505999(P2011−505999A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538346(P2010−538346)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/DK2008/050330
【国際公開番号】WO2009/080050
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(500085884)コロプラスト アクティーゼルスカブ (153)
【Fターム(参考)】