説明

バンパーの塗料除去装置

【課題】バンパーの表面から、容易かつ十分に塗料を除去できる車両のバンパーの塗料除去装置の提供。
【解決手段】ロール装置1の一対のロールのうち、塗料の表面に接する一方のロールの表面に溝または突起を設け、表面に塗料の塗膜を有するバンパーを上記ロールで圧延し、この溝等により塗料に切れ目を入れて塗料を分断するとともに、一方のロールの回転速度を他方のロールより速くすることにより、上記切れ目をさらに広げて塗料を帯状及び複数の細片に分断し、この帯状の塗料等に向かって斜め方向からサンドブラスト装置2でサンドブラストすることにより、塗料を除去する車両のバンパーの塗料除去装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車等の車両の合成樹脂からなるバンパーの塗料除去装置に関し、特に塗料をロールで分断してからショットブラスト等で除去するバンパーの塗料除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業界においては、環境問題の配慮から資源を再利用する意識の向上が求められており、樹脂製品をリサイクルする動きが活発になってきた。特にポリプロピレン系樹脂等の熱可塑性の合成樹脂からなる車両のバンパーにおいては、製造工程内で不適合と見なされた不良品や廃車等から回収されたものが大量に発生しているため、これらを再利用したいという要望がある。
【0003】
ところで車両のバンパーを形成する合成樹脂の表面には、ポリエステルウレタン等の熱硬化性樹脂塗料が施されている。このようなバンパーは、耐熱性等に優れているだけでなく、表面に光沢があって外観もよい。
【0004】
しかしこの塗料を一部でも残留させたままリサイクル処理を行うと、塗料片が合成樹脂に混入するため流動性を阻害して、成形不良の原因を引き起こす。さらにこの塗料片が表面に浮き出てしまうため、再塗装してもバンパーの美観を損ねる。したがってバンパーの表面に塗料を残留させたままでは再利用することができない。
【0005】
そこでバンパーの表面に塗料が残留しないように除去する方法や装置がいくつかある。例えばショットブラスト法は、噴射したショットの衝撃等により塗料を除去するものである。またエタノール水混合溶液等の化学溶液を用いる方法は、この溶液に浸して塗料を溶解除去するものである。
【0006】
また塗膜側ロールの周速度を非塗膜側のロールの周速度より大きくして、バンパーを圧延することで、塗膜と樹脂素材との間にせん断ズリ応力を発生させて、この塗膜を除去する方法等が提案されている(特許文献1参照。)すなわち回転の遅い非塗膜側のロールが、バンパーの進行を妨げるブレーキとなるため、回転の速い塗膜側ロールとの摩擦力によって、この塗膜を回転方向に引っ張って、この塗膜を樹脂素材の表面から引き剥がすというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3177371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上述した従来におけるバンパーの塗料除去方法や装置には、次の改良すべき課題がある。すなわち塗料は、3次元的な形状を有するバンバーの表面全体に塗られているため、ショットブラストを噴射しただけでは、全ての塗料を漏れなく除去するのは容易ではない。また化学溶液は有害物質を含むため、使用済後の処理がし難い。
【0009】
また特許文献1に記載の方法等では、必ずしも塗料を除去できないと考えられる。すなわち外周面を鏡面仕上等した塗膜側ロール等との摩擦力だけで、バンパーの表面に広く塗装してある薄い塗膜を、合成樹脂に対して回転方向にずらすように引き剥がすのは容易ではない。また3次元形状のバンパーを、ロールによって平板状に圧延しても、表面は完全には平坦にならず凹凸が残る。このため鏡面仕上等した塗膜側ロールでは、ロールの外周面が凹んだ部分に接触せず、この部分の塗料を剥がすことができない。
【0010】
そこで本発明の目的は、バンパーの表面から、容易かつ十分に塗料を除去できる車両のバンパーの塗料除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明によるバンパーの塗料除去装置の特徴は、塗料に切れ目を入れつつバンパーを圧延することによって、ショットブラストによる塗料の除去を容易にすることにある。すなわち本発明によるバンパーの塗料除去装置は、車両の合成樹脂からなるバンパーを圧延する一対のロールと、このロールから搬出されるこのバンパーの表面に残留する塗料を除去するショットブラスト装置とを備えている。上記一対のロールは、相互に逆回転すると共に、この一対のロールのうち一方のロールは、他方のロールより回転速度が速く、上記一方のロールの表面には、溝または突起が設けてある。上記一対のロールは、上記一方のロールの表面に設けた溝または突起よって、上記塗料に切れ目を入れつつ上記バンパーを圧延する。
【0012】
ところでバンパーを圧延すると熱が発生するため、この熱により塗料が温まって粘性を取り戻してしまう恐れがある。そこで上記一対のロールによってバンパーを圧延する前に、このバンパーを冷却する冷却装置を備えることが望ましい。これにより塗料を硬化させ、切れ目を入れ易くすることができる。またバンパーは、車両の形状に合わせて両端部分が屈曲しており、ロールに巻き込ませることが難しい。さらに合成樹脂を素材としているため弾力性があって基の形状に戻ろうとする性質があるため、ロールで圧延しても両端部分が平面状になり難く、ショットブラストを均一に当てることが困難になる。そこで上記一対のロールによってバンパーを圧延する前に、このバンパーの両端部分に、複数のスリットをこのバンパーの長手方向に形成する切断装置を備えることが望ましい。これによりバンパーの両端部分がロールに挿入され易くなると共に、ロールによる圧延後は、両端部分が平面状になり易くなる。
【0013】
また上述したショットブラスト装置でショットブラストを行っても、一部の塗料が残留してしまう恐れがある。したがって塗料を完全に除去するためには、長時間にわたってショットブラストを行なうか、あるいはショットブラストを強くする必要があり、いずれもコストが嵩むことになる。そこで上記ショットブラスト装置によってショットブラストを行ったバンパーに残留する塗料を除去する、ブラッシング装置を有することが望ましい。これによりショットブラストの時間の短縮や、ショットブラスト装置の簡素化が可能となる。
【0014】
またショットブラスト装置で噴射したショットブラストは、除去した塗料と共に周囲に飛散してしまう。そこで塗料を除去したショットブラストを捕獲する捕獲装置を備えることが望ましい。この場合上記ショットブラスト装置のショットブラストの方向は、上記バンパーの進行方向に向かって、このバンパーの表面に斜めに交差する方向にする。かつ上記捕獲装置は、上記バンパーの表面から跳ね返るショットブラストを捕獲する開口を有すると共に、この開口で捕獲したショットブラストを吸引する吸引装置を備えるように構成する。これにより跳ね返ったショットブラストを効率よく吸引して飛散を防止することができる。
【0015】
ここで「一対のロール」とは、ロール間にバンパーを挟んで圧延するものを意味し、単段に限らず、複数段であってもよい。また「一対のロール」は、バンパーの表面に限らず、裏面の塗料に「切れ目」を入れつつこのバンパーを圧延するものも含まれる。
【0016】
「ショットブラスト装置」とは、バンパーの表面にショットブラストを噴射するものに限らず、表面だけでなく裏面にもショットブラストを噴射して塗料を除去する装置を含む。ショットブラストを噴射する方向は、バンパーの表面に直交する方向のみならず、バンパーの表面に斜めに交差する方向も該当する。またショットブラストを噴射するノズルの形状等に限定はなく、例えば円錐状に噴射したり、バンパーの長手方向に直交する横長形状に噴射したり、またショットブラストの噴射口を可変とするものも該当する。このノズルは1つに限らず表面及び裏面にそれぞれ複数個あってもよく、これら複数個のノズルは単段に限らず複数段であってもよい。なおショットブラストの原料はサンドブラストやセラミックパウダーに限らず、例えばガラス、鉄等の金属、珪素若しくはドライアイス、またはメラミン樹脂若しくはユリア樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン若しくはポリプロピレン等の熱可塑性樹脂が該当する。
【0017】
「一方のロールの表面に設けた溝または突起」とは、このロールの表面に形成した凹凸パターンを意味し、例えばロールの円周面上に、このロールの軸方向またはこの軸方向に対して斜め方向に、一定の間隔毎に設けた線状の溝若しくは突起、または円形、マス目、若しくはひし形状等の突起が該当する。また「切れ目」とは、この溝または突起が当たって塗料に亀裂や傷を生じさせた状態を意味する。
【0018】
「冷却装置」とは、冷気等の気体や水等の液体を噴射して、バンパーの塗料を冷却する装置に限らず、バンパーを冷却する冷凍機も含む。なお気体は空気に限らず、例えば炭酸ガスや窒素ガスでもよい。また上記「冷却装置」を備える位置として「バンパーを圧延する前」とは、ロールの直前に限らず、例えば後述する「切断装置」の前も含まれる。
【0019】
「複数のスリット」の数は、2つに限らず3つ以上の場合も含む。「切断装置」とは、例えば上下、左右、前後に可動する回転刃を備えたローラーカッター、切断刃を備えたプレス機、または裁断用のギロチンが該当する。また上記「切断装置」を備える位置として「バンパーを圧延する前」とは、ロールの直前に限らず、例えば上述した「冷却装置」の前も含まれる。
【0020】
「ブラッシング装置」とは、例えば円筒状や円盤状のブラシにより、バンパーの表面に限らず裏面も擦るものも該当する。なお上記ブラシとしては、スチールワイヤー等の金属線に限らず、例えばポリエステルまたはナイロン等の合成樹脂製の線材や、それぞれのナイロン製線材に珪砂を入れたものも含む。
【0021】
「ショットブラストを捕獲する開口」は、ショットブラストの方向に直交することが望ましいが、斜め方向に交わる場合も含む。また「開口」の断面形状は、長方形に限らず、円形、楕円形、或いは三角等の多角形等も含まれる。また「吸引装置」とは、「開口」で捕獲したショットブラストを吸い込んで貯蔵タンクやサイクロンまたはトーミ等の比重分離機に移送する全ての装置を意味する。
【0022】
「バンパーの表面に斜めに交差する方向」としては、バンパーの表面との間の角度は60〜80度が望ましく、70〜80度がより望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるバンパーの塗料除去装置においては、塗料の表面に接する一方のロールの表面に溝または突起を設けることによって、塗料の全面に渡って容易に切れ目を入れることができる。また一方のロールは他方のロールより回転速度が速いため、上述した切れ目に入り込んだロールの溝または突起が塗料を進行方向に押して、容易に塗料を剥離させたり切れ目の端部を捲り上げたりすることができる。さらにバンパーは、ローラーによって圧延されるため、上述した切れ目を広げることができる。これによりロールから搬出されたバンパーの表面には、分断された帯状の塗料や複数の塗料片が残留する。したがってこの帯状の塗料等に向かってショットブラストを噴射すると、これらの切れ目の端部や捲り上げた部分にショットブラストが衝突するため、容易に塗料を剥すことができる。
【0024】
バンパーを圧延する前にこのバンパーを冷却する冷却装置を備えることによって、塗料を硬化させて切れ目を入れ易くなると共に、圧延ローラの過熱を抑えることができる。
【0025】
バンパーを圧延する前に、このバンパーの両端部分に、複数のスリットをこのバンパーの長手方向に形成する切断装置を備えることによって、バンパーの端部をロールに挿入し易くなる。さらに圧延後も基の形状に戻ることなく平面のまま搬送することができるので、ショットブラストが塗料等に均一に衝突しやすくなり、塗料等をより効果的に除去ることができる。
【0026】
ショットブラストを行った上記バンパーに残留する塗料を除去するブラッシング装置を備えることにより、ショットブラスト装置によって除去しきれなかった塗料ばかりでなく、バンパーに固着したショットブラストも除去することができる。
【0027】
跳ね返るショットブラストを開口で捕獲して、このショットブラストを吸引装置で吸引する捕獲装置を備えることによって、ショットブラストが周囲に飛散することを防止することができる。これにより回収したショットブラストを無駄なく、かつ迅速に再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】バンパーの塗料除去装置の全体図である。
【図2】ロール装置の側面図である。
【図3】塗料側ロールの表面に設けた溝または突起の形状図である。
【図4】サンドブラスト装置の側面図である。
【図5】他のサンドブラスト装置の一部正面図である。
【図6】切断装置の側面図および上面図である。
【図7】ブラッシング装置の側面図である。
【図8】他のブラッシング装置の側面図および上面図である。
【図9】バンパーの塗料除去装置の動作の説明図である。
【図10】バンパーの形状及び表面状態の変化を示す流れ図である。
【図11】ロール装置の動作の説明図である。
【図12】ショットブラストの噴射図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下図1〜8を参照しつつ、本発明による車両の合成樹脂からなるバンパーの塗料除去装置の構成と作用とを説明する。なおこの塗料除去装置はバンパーの表面のみならず、裏面に塗布された塗料も同時に除去するように構成することができる。
【0030】
さて図1に示すように、このバンパーの塗料除去装置は、バンパーを圧延する一対のロールを有するロール装置1と、このロール装置から搬送されたバンパーの表面に残留する塗料を除去するサンドブラスト装置2とを備えている。またこの車両のバンパーの塗料除去装置は、さらにロール装置1によってバンパーを圧延する前に、このバンパーの両端部分に、2本のスリットを、このバンパーの長手方向に形成する切断装置3、並びに上記サンドブラスト装置によってサンドブラストを行ったバンパーに残留する塗料を除去するブラッシング装置4及び5を備えている。
【0031】
図2は、ロール装置1の構成の1例を示している。このロール装置は、一対のロールを有し、上方に位置する一方のロールは、塗料の表面に接する塗料側ロール11を、下方に位置する他方のロールは、合成樹脂に接する樹脂側ロール12を構成している。また車両のバンパーの塗料除去装置は、ロール装置1の前側の近傍に、バンパーを冷却する冷却装置13を備えている。塗料側ロール11と樹脂側ロール12とは、相互に逆回転し、この塗料側ロールは樹脂側ロールより回転速度が速い。
【0032】
なお塗料側ロール11及び樹脂側ロール12のそれぞれの中心軸に、例えば図示しない冷却水を通水する供給管及び排出管を設ける。この供給管に冷却水を流して塗料側ロール11と樹脂側ロール12とを冷却し、排出管を介して冷却水を排出すると共に、この排出した冷却水から熱を回収するチーラーが備えてある。これによりロールの発熱を抑え、バンパーに熱が伝わらないようにしている。バンパーをロール装置1に搬送するコンベア台や、サンドブラスト装置2に搬送する送りローラー等は、図示するものに限定されることはなく、作業に適したものを必要数設けてもよい。ロール装置1には、塗料側ロール11と樹脂側ロール12とをそれぞれ上下方向に設けて、バンパーを左右方向から搬送するものに限らず、例えば左右方向に設けてバンパーを上方向若しくは下方向から搬送するものや、斜め方向に設けてバンパーを上斜め方向若しくは下斜め方向から搬送するものも含まれる。なおバンパーを投入する角度等に限定はない。
【0033】
塗料側ロール11の表面には、溝または突起11aが設けてあり、この溝または突起によって、塗料に切れ目を入れつつバンパーを圧延する。図3は、溝または突起11aのパターンの具体例を示している。すなわち3図の(A)及び(B)は、円周面上に一定の間隔毎に設けた斜線状及び横線状の溝若しくは突起、(C)及び(D)は、マス目状及びひし形状の溝若しくは突起、並びに(E)は、ディンプル状の突起を設けた場合を、それぞれ示している。また樹脂側ロール12の全表面に限らず、表面の一部にだけに溝または突起11aが設けてもよく、さらには、この樹脂側ロールの表面を複数の領域に分けて、領域毎に異なる溝または突起を設けてもよい。
【0034】
図2に示す冷却装置13は、例えば図示しない冷凍機によって約−25〜−15℃に冷却した外気を、先端のノズルからバンパーの表面に向かって噴射する。なおこのノズルは、バンパーの表面に近傍する位置に設ければ、表面全体を容易に冷却することができる。
【0035】
図4は、サンドブラスト装置2の1例を示している。このサンドブラスト装置は、サンドブラストをバンパーに噴射するノズル21、バンパーの表面から跳ね返ったサンドブラストを捕獲する捕獲装置22、この捕獲したサンドブラストと除去した塗料とを分離するサイクロン23、及びこのノズル及び捕獲装置の近傍において、ロール装置1から搬送されたバンパーを上下に挟んで、ブラッシング装置4に搬送する送りローラー24、24を備えている。また捕獲装置22は、跳ね返ったサンドブラストを捕獲するための開口22aと、この捕獲したサンドブラストを吸引する吸引装置22bとを備えている。さらに開口22aは、バンパーの表面から跳ね返ったサンドブラストの方向にほぼ直交するように設けている。
【0036】
なお送りローラー24、24の間に設けた架台によりバンパーを裏面から支えているので、サンドブラストでより効果的に塗料を除去することができる。またノズル21と捕獲装置22との距離を狭めると共に、送りローラー24、24同士の距離も狭めれば、バンパーの片方の端部が宙に浮いた状態を短くすることができる。すなわち噴射したサンドブラストの勢いで、例えばバンパーが移動したり振動したりして搬送できなくなることを防ぐことができる。
【0037】
なおノズル21及び開口22aはバンパーの表面側のみならず裏面側にも設けて、両面同時にサンドブラストを行ってもよい。またバンパーの裏面側にノズル及び開口を設けたサンドブラスト装置を併設して、バンパーの表面及び裏面を順次サンドブラストしてもよい。送りローラー24、24は、それぞれバンパーの送り方向と同じ向きに回転駆動されている。送りローラー24、24のうち、図示する上側のローラーはバネ等の弾性部材と連結させて上下に移動できる構造が望ましい。
【0038】
なお吸引装置22bで吸引したサンドブラストと、このサンドブラストに紛れた塗料片とは、サイクロン23の下方から送り込んだ空気の気流により比重分離される。比重分離後のサンドブラストは、図示しないキャッチャータンクに貯蔵されて、再びサンドブラストに利用される。比重分離後の塗料片は、塗料片吸引機に吸引されて回収される。
【0039】
図5は、図4に示したサンドブラスト装置のノズルを、バンパーの表面側及び裏面側に、それぞれ複数個有するものを示している。バンパーは、図5に直交する方向に搬送される。表面側及び裏面側のそれぞれに設けた複数のノズル121のうち両端に位置するノズルは、バンパーの端部に対して斜め方向からサンドブラストを行うように設けてある。これによりバンパーの表面及びバンパーの塗装工程においてこのバンパーの裏面の端部にまで飛散した塗料を効果的に除去することができる。なお複数のノズル121は、バンパーの送り方向に対して直交する列に設けたものに限らず、斜めに設けたものでもよい。
【0040】
図6は、切断装置3の構成の1例を示している。この切断装置は、上下に可動する回転刃31を備えている。また図6(B)に示すように、相互に平行な2つの回転刃31により、バンパーの端部に2本のスリットをこのバンパーの長手方向に一度に形成することができる。なお図6(B)に示すようにバンパーをレール上の架台に乗せて搬送しながら、バンパーの両端に順次スリットを形成する構造に限らない。例えば回転する架台にバンパーを載せて、この架台を回転させて一端ずつスリットを形成する構造でもよい。なおスリットを形成せずに、バンパーの両端を回転刃31で切断してもよい。両端を切断除去したバンパーの中央部分は平板状になるため、ロール装置1に挿入し易くなる。
【0041】
図7は、ブラッシング装置4の構成の1例を示している。このブラッシング装置は、スチールワイヤーロールグラインダー41、このスチールワイヤーロールグラインダーによって塗料を除去しやすいように裏面からバンパーを支える回転体42、このスチールワイヤーロールグラインダー及びバンパーの表面の近傍に位置し、かつこのスチールワイヤーロールグラインダーで除去した塗料を捕獲する捕獲装置43、及びこのスチールワイヤーロールグラインダーの両側の位置に、サンドブラスト装置2から搬送されたバンパーを上下に挟んで搬送する送りローラー44、44を備えている。
【0042】
なお捕獲装置43は、スチールワイヤーロールグラインダー41で除去して飛び散る塗料を捕獲するための開口と、図示しない開口で捕獲した塗料を吸引する吸引装置とを備えている。スチールワイヤーロールグラインダー41の回転は、バンパーの送り方向と逆方向にする。このようにするとバンパーの送り速度とスチールワイヤーロールグラインダー41の回転速度を加えた速度で、残留した塗料とこのスチールワイヤーロールグラインダーの先端が衝突するため、より効果的に残留した塗料を除去できる。珪砂入りナイロン製線材ブラシを用いると、この珪砂の凹凸によって塗料を効果的に除去できるばかりでなく、ナイロン製線材の摩耗も防止することができる。回転体42に代えて、他のスチールワイヤーロールグラインダーを設けても良い。これによりバンパーの裏面から支えつつ、この裏面に残留した塗料を同時に除去することができる。またバンパーの裏面側にスチールワイヤーロールグラインダー等を設けたブラッシング装置を併設して、バンパーの表面及び裏面を順次ブラッシングしてもよい。また回転体42に代えて、固定した架台でもよい。なお送りローラー44、44の構造は、図4で示した送りローラー24、24と同等であるため、説明は省略する。
【0043】
図8は、図7で示したブラッシング装置4の後に、さらに他のブラッシング装置5を設けた構成を示している。なお図7で示したブラッシング装置4と相違する点のみについて説明する。ブラッシング装置5は、円盤ブラシ51を備える。また図8(B)に示すように、円盤ブラシ51は、2個の円盤ブラシ51aと51bとを並列して、全体の横幅がバンパーの横幅と同等以上にしている。これによりバンパーの表面のみならず、バンパーの塗装工程においてこのバンパーの裏面の端部にまで飛散した塗料を除去することができる。なおバンパーの進路がずれないように、円盤ブラシ51a及び51bの前後の両側に図示しないガイド壁を両側に設けても良い。バンパーを裏面から支える回転体に代えて、他の円盤ブラシを並列して設けても良い。これによりバンパーの裏面から支えつつ、この裏面に残留した塗料を同時に除去することができる。またバンパーの裏面側に円盤ブラシ等を設けたブラッシング装置を併設して、バンパーの表面及び裏面を順次ブラッシングしてもよい。また回転体に代えて、固定した架台であってもよい。
【0044】
次に、図9〜図12を参照しつつ、本発明におけるバンパーの塗料除去装置によってバンパーの表面から塗料が除去されていくステップと、各ステップ毎の各装置の動作を説明する。ここで図9は、このバンパーの塗料除去装置がバンパーを搬送するステップを示している。図10は、ステップ毎のバンパーの形状及び表面の塗料の変化を、状態1〜5として示している。
【0045】
図9に示すようにバンパーは、切断装置3における架台に置かれ、このバンパーを載せた架台がレールに沿って回転刃31の方に向かって進む。進行方向側のバンパーの端部が所定の位置に到達すると架台は止まり、回転刃31が回転しながら下がってくる。これによりこの端部に2本のスリットがバンパーの長手方向に形成される。
【0046】
スリットを形成後、回転刃31は上がり、再び架台は進む。進行方向とは逆側のバンパーの端部が所定の位置に到達すると架台は止まり、回転刃31が回転しながら下がってくる。これによりこの端部にも2本のスリットがバンパーの長手方向に形成される。したがって図10の状態1に示すように、バンパーの両端部分には2つのスリットが長手方向に形成されている。なお架台や回転刃31の操作は、手動に限らず、バンパーの存在等を感知するセンサー等を設けて自動制御してもよい。
【0047】
状態1のバンパーは、ロール装置1のコンベア台に置かれる。冷却装置13は、コンベア台に置かれたバンパーの表面に向かってノズルから冷気を噴射する。これにより塗料に対して圧延によって生じる熱が伝わるのを遅らせ、塗料を硬化させたままバンパーを圧延することができる。なお冷却装置13の操作は、手動に限らず、バンパーの存在等を感知するセンサー等を設けて自動制御してもよい。
【0048】
上記バンパーは、進行方向側の端部から塗料側ロール11と樹脂側ロール12との間に搬送される。バンパーの両端部分に長手方向に形成した2本のスリットは圧延されつつ広がるため、このバンパーを平板状にすることができる。また塗料側ロール11の表面に設けた溝または突起11aによって、バンパーの表面の塗料に切れ目を入れつつ圧延することができる。
【0049】
図11は、バンパーの表面の塗料に切れ目が入る状況を順次に示している。まず図11(A)に示すように、溝または突起11aの一部が塗料に当たると、この塗料の表面に切れ目が入る。次に図11(B)に示すように、塗料側ロール11が回転すると、溝または突起11aが塗料を引っ掻く。その後図11(C)に示すように、塗料側ロール11の回転に伴って溝または突起11aが再び上昇するため、端に溜まった塗料を引き上げて、合成樹脂から塗料を捲り上げる。
【0050】
上述した切れ目を入れる作用と同時進行で、バンパーの合成樹脂は回転速度に差がある塗料側ロール11及び樹脂側ロール12からせん断応力を受けて伸ばされる。このため硬化している塗料に入れた切れ目をさらに広げることができる。したがって図10の状態2に示すように、ロール装置1から搬送されたバンパーは、元の厚さ2.5mm〜3mmから1.5mm〜2mmに薄くなる。またバンパーの表面には、分断された帯状の塗料や複数の塗料片が残留する。
【0051】
状態2のバンパーは、サンドブラスト装置2における入口側の送りローラー24に搬送され、この送りローラーが出口側の送りローラー24に搬送する。バンパーが送りローラー24、24で搬送されつつ、ノズル21からバンパーの送り方向と同じ方向からバンパーの表面に斜めに交差する方向にサンドブラストを噴射する。なおサンドブラストを噴射するタイミングは、手動に限らず、バンパーが送りローラー24、24で搬送されていることを感知するセンサー等を設けて自動制御してもよい。
【0052】
図12は、噴射したサンドブラストがバンパーの表面で跳ね返りつつ、除去して飛び散る塗料と共に吸引される状況を示している。ノズル21から噴射したサンドブラストは、塗料の表面のみならず、図11(C)に示す塗料の捲くれた端部にも衝突する。これにより端部から塗料に対して圧力を与えるばかりでなく、この塗料と合成樹脂との隙間にサンドブラストが進入するため、容易に塗料を除去することが可能となる。一方バンパーの表面で跳ね返ったサンドブラストは除去した塗料と共に、この跳ね返ったサンドブラストの方向にほぼ直交する向きに設けた捕獲装置における開口22aから吸引される。このためサンドブラストや除去した塗料は周囲に飛散することを防止できるばかりではなく、このサンドブラストを回収する手間も省くことができる。したがって状態3に示すように、ブラッシング装置2から搬送されたバンパーの表面は、塗料がほとんど除去された状態であり、若干除去し切れず細切れになった塗料が残留する程度となる。
【0053】
図10に示す状態3のバンパーは、ブラッシング装置4における入口側の送りローラー44に搬送され、この送りローラーによって出口側の送りローラー44に搬送される。バンパーが送りローラー44、44で搬送されつつ、スチールワイヤーロールグラインダー41がバンパーの送り方向と逆方向に回転してバンパーの表面を擦る。このためスチールワイヤーロールグラインダー41の先端と、バンパーの表面に残留した塗料が衝突するため、この残留した塗料をより効果的に除去することができる。したがって状態4に示すように、ブラッシング装置4から搬送されたバンパーの表面は、塗料が殆んど全て除去された状態となる。
【0054】
図10に示す状態4のバンパーは、ブラッシング装置5に搬送される。バンパーが搬送されつつ、円盤ブラシ51がこのバンパーの送り方向と逆方向に回転してバンパーの表面及び裏面の端部を擦る。このため円盤ブラシ51がバンパーの表面に極僅かに残留した微少の塗料ばかりでなく、このバンパーの裏面の端部に残留した塗料を効果的に除去することができる。したがって状態5に示すように、ブラッシング装置5から搬送されたバンパーの表面及び図示しない裏面の端部は、塗料が全て除去された状態となる。
【0055】
図10に示す状態5のバンパーは、リサイクル処理して再利用できる状態であるため、各装置を利用してペレット化する。
【0056】
例えば上記のバンパーを一次粉砕機で粗めに粉砕してから、二次粉砕機で水等で洗浄しながらさらに細かく粉砕する。この粉砕された状態のものを高速遠心脱水機で脱水し、洗浄比重分離装置で比重分離にかける。さらに遠心脱水機を通して、乾燥混合タンクに原料を貯蔵し、この原料の均一化を図る。
【0057】
上記乾燥混合タンクから、原料をチャッチャータンクに移送し、このキャッチャータンクを介してフレキシブルコンテナバックに詰める。その後、フレキシブルコンテナバック内の原料をスクリュー式の単軸押出機等で加熱溶融した樹脂をダイから押し出してペレット成形し、ホットカッター等で切断する。この切断したペレットを冷却用水槽に搬送して冷やし、振動機で振るいにかけてこれらのペレットの均一化を図る。均一化したペレットは圧送機で再びキャッチャータンクに移送し、計量した上で袋詰めする。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明におけるバンパーの塗料除去装置は、一方のロールの表面に設けた溝または突起で切れ目を入れて塗料を分段した上で効率的に除去処理を行うため、自動車に関する産業に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 ロール装置
11 塗料側ロール
11a 溝または突起
12 樹脂側ロール
13 冷却装置
2 サンドブラスト装置
21、121 ノズル
22 捕獲装置
22a 開口
22b 吸引装置
3 切断装置
4 ブラッシング装置
5 ブラッシング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の合成樹脂からなるバンパーの塗料を除去する装置であって、
上記バンパーを圧延する一対のロールと、このロールから搬出されるこのバンパーの表面に残留する上記塗料を除去するショットブラスト装置とを備え、
上記一対のロールは、相互に逆回転すると共に、この一対のロールのうち一方のロールは、他方のロールより回転速度が速く、
上記一方のロールの表面には、溝または突起が設けてあり、
上記一対のロールは、上記一方のロールの表面に設けた溝または突起よって、上記塗料に切れ目を入れつつ上記バンパーを圧延する
ことを特徴とする車両のバンパーの塗料除去装置。
【請求項2】
上記一対のロールによって上記バンパーを圧延する前に、このバンパーを冷却する冷却装置を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の車両のバンパーの塗料除去装置。
【請求項3】
上記一対のロールによって上記バンパーを圧延する前に、このバンパーの両端部分に、複数のスリットをこのバンパーの長手方向に形成する切断装置を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両のバンパーの塗料除去装置。
【請求項4】
上記ショットブラスト装置によってショットブラストを行った上記バンパーに残留する上記塗料を除去するブラッシング装置を有する
ことを特徴とする請求項1乃至3に記載の車両のバンパーの塗料除去装置。
【請求項5】
上記バンパーの表面から反射するショットブラストを捕獲する捕獲装置を備え、
上記ショットブラスト装置のショットブラストの方向は、上記バンパーの進行方向に向かって、このバンパーの表面に斜めに交差する方向であって、
上記捕獲装置は、上記バンパーの表面から跳ね返るショットブラストを捕獲する開口を有すると共に、この開口で捕獲したショットブラストを吸引する吸引装置を備える
ことを特徴とする請求項1乃至4に記載の車両のバンパーの塗料除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−224870(P2011−224870A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97070(P2010−97070)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【特許番号】特許第4783469号(P4783469)
【特許公報発行日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(398017079)高六商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】