説明

バーナーカバー及びこれを用いた加熱調理器

【課題】温度分布の不均一を是正して、被焼物の焼きムラを有効に防止し、かつ、煙の発生を抑制するバーナーカバー及びそれを利用した加熱調理器を提供すること。
【解決手段】互いに対向する一対或いは複数の切妻屋根状部52,53を有し、この各切妻屋根状部52,53は対向方向の縦断面形状が逆V字状あるいは逆U字状となるように傾斜面を備えたバーナーカバーであって、各切妻屋根状部52,53の対向方向の中央側にある端部が、対向方向の中央に向かって延伸することで、拡張部56,57が設けられ、傾斜面には拡張部56,57に臨む開口部62が形成されており、開口部62の周縁には、拡張部56,57の表面に向けて熱ガスを噴出するガイドとなるように突出した庇部66が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバーナーを覆うバーナーカバー、及びこれを用いた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図11は従来の加熱調理器1の概略平面図であり、図12は図11のA−A線概略端面図である。なお、図12では、後述するガスバーナーとバーナーカバーのみを図示し、その他の構成は省略している。
この加熱調理器1は、カートリッジ式ガスボンベ2からの燃料ガスと空気との混合気をガスバーナー4に供給するようになっている。
ガスバーナー4は、平面視がU字形状になっており、互いに並列する領域4aと領域4bとを有し、この並列する領域4a,4bには複数の炎口6が設けられている。
【0003】
バーナーカバー3は、ガスバーナー4を覆って、落下物が炎口6に入ることを防止するためのカバーであるが、単にカバーをすると被焼物の焼き上げが不十分或いは遅延する。このため、バーナーカバー3は、炎口6とずらした位置に複数の開口部9,9を設け、そこから熱ガスGを噴出させて、焼き上げ効率を向上させている。また、バーナーカバー3は、炎口6の上方に位置する縦断面形状が、図12に示すように、逆V字又は逆U字状となるように傾斜面を有する切妻屋根状部3a,3bとされ、この切妻屋根状部3aと切妻屋根状部3bとが中央の板状部3cで接続されている。これにより、図12に示すように、バーナーカバー3の輻射熱Rを矢印の方向に向かって伝達させ、できるだけ広範囲な発熱面積を得ようとしている。
【0004】
そして、この加熱調理器1は、焼き鳥等の串刺にした被焼物が上手く焼けるように、串部分を置くためのバー8a,8bをバーナーカバー3の外側に配置しており、このバー8aとバー8bとの間に置かれた被焼物を上記輻射熱Rや熱ガスGで効率よく焼けるようにしている。さらに、この加熱調理器1は、その筐体5の上に網(図示せず)をセットすることもでき、網の上で沢山の被焼物を焼けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】意匠登録第1289272号公報
【特許文献2】特開2000−146124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、加熱調理器1では、バー8aとバー8bとの間の被焼物を上手く焼けるようにバーナーカバー3を中央領域にのみ配置しているため、バー8a,8bの近傍から縁までの端部領域(図11の領域E)については、十分に加熱することができずにいた。このため、網の上で被焼物を沢山焼けるように筐体5を大きくしたとしても、中央領域および端部領域E間での温度差により、焼きムラが生じていた。
そこで、発明者は、切妻屋根状部3aと切妻屋根状部3bとが離間するようにバーナーカバー3の幅Wを大きくすることで、端部領域Eの温度を高めることを考えた。しかし、切妻屋根状部3aと切妻屋根状部3bとを離間させると、反対に中央の板状部3cの加熱が不十分になり、中央の板状部3cでの輻射熱を期待することができなくなる。また、中央の板状部3cの加熱が不十分で、そこに油等の落下物が付着すると、煙が発生するという問題にもなる。
【0007】
本発明は、温度分布の不均一を是正して、被焼物の焼きムラを有効に防止し、かつ、煙の発生を抑制するバーナーカバー及びそれを利用した加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、請求項1の発明にあっては、互いに対向する1対或いは複数の切妻屋根状部を有し、この各切妻屋根状部は前記対向方向の縦断面形状が逆V字状あるいは逆U字状となるように傾斜面を備えた加熱調理器用のバーナーカバーであって、前記各切妻屋根状部の前記対向方向の中央側にある端部が、前記対向方向の中央に向かって延伸することで、拡張部が設けられ、前記傾斜面には前記拡張部に臨む開口部が形成されており、前記開口部の周縁には、前記拡張部の表面に向けて熱ガスを噴出するガイドとなるように突出した庇部が設けられているバーナーカバー、により達成される。
【0009】
請求項1の構成によれば、バーナーカバーは、互いに対向する1対或いは複数の切妻屋根状部を有し、各切妻屋根状部は対向方向の縦断面形状が逆V字状あるいは逆U字状となるように傾斜面を備えているため、切妻屋根状部の傾斜面に応じて広く輻射熱を伝達させ、その周辺にある被焼物を加熱できる。
そして、各切妻屋根状部の対向方向の中央側にある端部が、対向方向の中央に向かって延伸することで、拡張部が設けられているため、切妻屋根状部の熱は拡張部にも伝達し、中央に向かって延伸した拡張部の輻射熱によっても被焼物を加熱できる。
【0010】
ここで、対向する切妻屋根状部が互いに離間するようにバーナーカバーの幅を広げて、筐体の端部領域の被焼物を十分に加熱しようと設計した場合、拡張部は、切妻屋根状部から伝達してきた熱だけでは、中央領域を十分に加熱できない。
ところが、本発明の傾斜面には拡張部に臨む開口部が形成されており、しかも、開口部の周縁には、拡張部の表面に向けて熱ガスが噴出するガイドとなるように突出した庇部が設けられている。このため、拡張部は効率よく加熱され、拡張部が配置される中央領域を高温にできる。したがって、対向する切妻屋根状部が互いに離間するようにバーナーカバーの幅を広げて、筐体の端部領域の被焼物を十分に加熱するようにした場合であっても、中央領域の被焼物も十分に加熱できる。
また、拡張部は開口部及び庇部によって導かれた熱ガスにより十分に加熱されるため、油等の落下物を弾き飛ばして、拡張部に落下物が付着する恐れを防止し、煙の発生も有効に防止できる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、前記拡張部同士の間には、落下物の衝突を回避するための空間が形成されている、ことを特徴とする。
請求項2の構成によれば、一対或いは複数の拡張部同士の間には、落下物の衝突を回避するための空間が形成されているため、落下物が燃焼することで生じる煙の発生を確実に防止できる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2の構成において、前記拡張部同士は、前記空間内を通る拡張部歪み防止手段で繋がれており、前記拡張部歪み防止手段には厚み方向に貫通した貫通孔が形成されていることを特徴とする。
請求項3の構成によれば、拡張部同士は空間内を通る拡張部歪み防止手段で繋がれているため、拡張部の歪みを防止できる。また、この拡張部歪み防止手段には厚み方向に貫通した貫通孔が形成されているため、油等の落下物の付着を有効に防止して、煙の発生を防止できる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの構成において、前記拡張部は、前記庇部の前記突出した方向に延びる仮想線よりも下側に配置されている、ことを特徴とする。
請求項4の構成によれば、拡張部は、庇部の突出した方向に延びる仮想線よりも下側に配置されているため、庇部により導かれた熱ガスで、拡張部の全幅を確実に加熱し、拡張部を高熱にすることができる。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの構成において、前記開口部は第1の開口部であり、その周縁に設けられた前記庇部は第1の庇部であって、前記切妻屋根状部の前記対向方向の外側の傾斜面には、前記外側に突出した第2の庇部を周縁に有するようにして第2の開口部が形成されており、前記第1の庇部は、前記第2の庇部に比べて水平に突出していることを特徴とする。
請求項5の構成によれば、中央側の傾斜面に配置された第1の庇部は、外側の傾斜面に配置された第2の庇部に比べて水平に突出しているため、中央側の第1の庇部の方が外側の第2の庇部よりも、熱ガスをより中央に飛ばすことができる。
【0015】
また、上記目的は、請求項6の発明によれば、筐体内に互いに対向した領域を有するガスバーナーと、前記互いに対向した領域の各上方に切妻屋根状部を有し、この各切妻屋根状部は前記対向方向の縦断面形状が逆V字状あるいは逆U字状となるように傾斜面を有するバーナーカバーと、を備えた加熱調理器であって、前記バーナーカバーは、前記切妻屋根状部の前記対向方向の中央側にある端部が、前記対向方向の中央に向かって延伸することで、拡張部が設けられ、前記傾斜面には前記拡張部に臨む開口部が形成されており、前記開口部の周縁には、前記拡張部の表面に向けて熱ガスを噴出するガイドとなるように突出した庇部を有する加熱調理器により、達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上述のような構成を有することから、温度分布の不均一を是正して、被焼物の焼きムラを有効に防止し、かつ、煙の発生を抑制するバーナーカバー及びそれを利用した加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る加熱調理器の概略分解斜視図。
【図2】図1の加熱調理器の操作摘み部周辺の部分拡大図。
【図3】図1の加熱調理器に被焼物を載置した場合の概略斜視図。
【図4】図1の加熱調理器に係るバーナーカバー周辺の概略平面図。
【図5】図3のB−B線概略端面図。
【図6】実験によるバーナーカバーの温度分布図であり、図6(a)は拡張部及び開口部がないバーナーカバーの温度分布図、図6(b)は本発明の実施形態に係るバーナーカバーの温度分布図。
【図7】本発明の実施形態に係る第1の変形例であって、図4のC−C線の位置で切断した場合の概略部分端面図。
【図8】本発明の実施形態に係る第2の変形例であって、図4に対応したバーナーカバー周辺の概略平面図。
【図9】本発明の実施形態に係る第3の変形例であって、図5の一点鎖線で囲った図に対応した概略部分端面図。
【図10】図1の加熱調理器に係る拡張部、及び図9の変形例に係る拡張部について、それぞれの熱ガスの噴出具合と拡張部の加熱具合を示す部分拡大図。
【図11】従来の加熱調理器の概略平面図。
【図12】図11のA−A線概略端面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0019】
図1ないし図3は本発明の実施形態に係る加熱調理器10であって、図1は加熱調理器10の概略分解斜視図、図2は加熱調理器10の操作摘み部周辺の部分拡大図、図3は加熱調理器10に被焼物を載置した場合の概略斜視図である。
本実施形態の場合、加熱調理器10は、ガスバーナー30が取り付けられた本体20に付加する部品によって、串焼用と網焼き用とを区別できるように構成されている。すなわち、加熱調理器10は、筐体22内にガスバーナー30が取り付けられた本体20と、この本体20に串焼き用のステー42を着脱可能に取り付けるための枠体40と、この枠体40に着脱可能な焼き網60とを有している。
【0020】
先ず本体20について説明する。
本体20は、スチールに耐熱塗装を施し、平面視全体が略長方形状となっている筐体22を有し、この筐体22は、上方が大きく開口した矩形状であって、ガスバーナー30を収容するバーナー収容部25と、ガスボンベ28を収容するボンベ収容室23とからなっている。
バーナー収容部25は、図1に示されるように、ガスバーナー30と、このガスバーナー30より下側の底部であって、側面から引き出し式に出し入れ可能な水皿28を収容している。水皿28は、使用の際に、底面の過剰な加熱を防止するための水入れであると共に、被焼物からの汁等の落下物を受けるためのトレーである。また、バーナー収容部25の側壁25a,25bには、複数の長円状の空気孔21が斜めに傾斜して配置されている。
【0021】
ガスバーナー30は、例えば、縦断面が円形状であって、スチールにクロムメッキされた管である。このガスバーナー30は、図1の短手方向Xについて所定の間隔をもって加熱できるように、互いに対向した領域31,32を有しており、本実施形態の場合、平面視がU字状とされ、並列した領域31,32を有する一本の管からなっている。すなわち、ガスバーナー30は、バーナー収容部25の長手方向Yに沿って互いに並行に延びる領域31,32を有し、この領域31,32はそれぞれ筐体22の側壁25a,25b(つまり、平面視において焼き網60の縁部60aが載置される位置)と平行になっている。
なお、ガスバーナー30は、所定の間隔をもって加熱できるように互いに対向した領域31,32を有すれば、本実施形態のように一本のU字状に限られるものではなく、例えば2本以上の管が並列して設けられていてもよい。或いは、平面視が円形状の筐体に収容されたリング状のガスバーナーであってもよい。
【0022】
領域31,32の一方の端部31a,32aは互いに接続されて、領域31から領域32にガスが供給されるようになっている。また、図2に示されるように、領域32の他方の端部32bは潰されて封止され、領域31の他方の端部31bは、ガス導管26を介してガスボンベ接続部27と接続されている。
そして、互いに対向する領域31,32の上側には、多数の炎口34が長手方向Yに沿って列設されており、この炎口34から燃料ガスが吐出される。
【0023】
ボンベ収容室23には、図2に示されるように、ガスボンベ接続部27が収容されている。このガスボンベ接続部27には、カートリッジ式ガスボンベ28が着脱可能となっており、ガスボンベ28から吐出された燃料ガス(本実施形態の場合、空気より比重が大きいブタンガスが使用されている。)は、ガスボンベ接続部27内に設けられたガバナーに入って圧力調整されるようになっている。なお、ガスボンベ28が加熱されてその内部圧力が異常に上昇した時、安全機構が作動して外れるように、ガスボンベ接続部27とガスボンベ28との着脱手段はマグネットとされている。また、このガスボンベ接続部27は操作摘み部24と接続され、ガスボンベ28から供給されるガス量が調整可能とされている。
このようにしてガスボンベ28からガスボンベ接続部27を介して供給される燃料ガスは、ガス導管26やガス・空気混合器29を通って、空気と混合されながらガスバーナー30に供給される。そして、操作摘み部24の回転によりイグナイタ38が押されてパルス電圧が発生し、そのパルス電圧によって電極39が放電することで、燃料ガスが点火する。
【0024】
次に、本体20に着脱可能に取り付けられる枠体40について説明する。
枠体40は、図1及び図3に示されるように、串焼き用のステー42が設けられ、また、バーナーカバー50が着脱可能に取り付けられる部品である。
本実施形態の場合、枠体40はステンレススチールから形成され、平面視がバーナー収容部25の周縁と対応した長方形状とされた枠状の部品である。そして、枠体40は、その周縁部がバーナー収容部25の周縁部に載置され、図1に示されるように、L字状の貫通孔に、バーナー収容部25から上方に突出したL字状部41が挿入されて、バーナー収容部25に固定される。
【0025】
このような枠体40に設けられた串焼き用のステー42は、被焼物の一例である焼き鳥等の串付の食品の串部分が載置される支持棒であって、例えばスチールにクロムメッキされている。
具体的には、2本の略コの字状のステー42の両端部が枠体40の長手方向(図1の領域31,32が延びる長手方向Y)の側面に取り付けられ、その長手方向を中心軸として回動可能とされている。
【0026】
そして、この2本のステー42は、図3に示されるように、起立させた状態において互いに平行とされる。この起立状態は、枠体40の側面であって、ステー42の端部が取り付けられた箇所の上側に設けられた複数の略半球状の突起部44によって維持される。すなわち、ステー42は、回動する際、所定の力を入れて略半球状の突起部44を乗り越えられるようになっており、2つの突起部44,44の間に配置された状態で自立する。図3の突起部44は、一本のステー42の一端部に対応した一領域において、ステー42の直径と同様の間隔を置きながら3つの突起部44,44,44が連続して水平に並んでおり、3つの突起部44,44,44の各相互間でステー42が起立でき、これにより起立の角度を変えることができる。
また、ステー42は、起立した状態において、バーナー収容部25の上方に配置される部分に、複数の窪み部42aが形成されており、この窪み部42aに串が置かれる。
【0027】
そして、枠体40には、図1に示されるように、焼き網60の縁部60aが載置される網支持部46が設けられている。具体的には、網支持部46は枠体40の上側に配置され、バーナー収容部25の内側に略水平につき出て、鍔状とされている。なお、図1ないし図3では焼き網60が載置された状態が図示されていないが、焼き網60と枠体40とは共に平面視が略長方形状であって、焼き網60の外周と枠体40の内周とは略一致している。
【0028】
バーナーカバー50は、ガスバーナー30を覆って、落下物が炎口34に入ることを防止するためのカバーであると共に、バーナー収容部25における開口部の温度分布を均一にすることを主目的として、種々の工夫が施されている。
以下、図1ないし図3、及びバーナーカバー周辺の概略平面図である図4、図3のB−B線切断端面図である図5を参照しながら説明する。なお、図5の端面図では、ガスバーナー30とバーナーカバー50のみの端面を図示しており、その他の構成は省略している。
【0029】
先ず、バーナーカバー50は、落下物が炎口34に進入することを防止するため、少なくともガスバーナー30の炎口34が設けられている領域、本実施形態の場合はガスバーナー30の互いに並列する領域31,32の各上方を覆っている。
そして、このガスバーナー30が互いに並列する領域31,32の各上方を覆う部分52,53は切妻屋根状部とされており、この並列する切妻屋根状部52,53どうしは、並列方向と直交する方向の両端部52a,53a(図4参照)において、連結部材54,54により接続されている。この2つの連結部材54,54の一方には舌片状の突出部55が、他方にはフック状の突出部56が形成されており、2つの突出部55,56が、上述した枠体40の網支持部46に設けられた孔43(図1及び図3参照)に挿入されて、バーナーカバー50は枠体40に接続される。
【0030】
ここで、各切妻屋根状部52,53は、その対向方向(本実施形態の場合、並列する図5のX方向)の断面形状が逆V字状あるいは逆U字状となるように傾斜面52b,52c,53b,53cを有している。すなわち、切妻屋根状部52,53は、その並列するX方向の両外側の傾斜面52b,53bと、互いに対向する両内側(中央側)の傾斜面52c,53cを有している。これにより、切妻屋根状部52,53は落下物を留めずに、水皿28に落とすことができる。また、切妻屋根状部52,53は、炎口34から吐出した熱ガスに炙られて輻射熱が生じ、その輻射熱は図5の点線の矢印に示されるように、傾斜面52b,52c,53b,53cの傾斜角に対応して伝達し、広い領域を加熱することができる。なお、本実施形態の傾斜面52b,52c,53b,53cの水平方向に対する下向きの傾斜角度は、42度に設定してある。
【0031】
さらに、本発明では、図4及び図5に示されるように、各切妻屋根状部52,53の対向方向の中央CT側にある端部が、対向方向の中央CTに向かって延伸することで、拡張部56,57が設けられている。この一対の拡張部56,57は、切妻屋根状部52と切妻屋根状部53とが互いに離間するように、その幅W2を大きくした場合であっても、中央領域の加熱が弱まらないように設けられた部材である。
【0032】
具体的には、拡張部56,57は切妻屋根状部52,53と一体に形成された薄板状であり、本実施形態では略水平に中央CTに向かって延びている。
そして、拡張部56と拡張部57との間には、落下物の衝突を回避するための空間S1が大きく形成されている。すなわち、仮に2つの拡張部56と拡張部57とを接続してしまうと、切妻屋根状部52と切妻屋根状部53とが互いに離間するように幅W2を大きくした分、拡張部56,57全体を十分に加熱することができず、そこに油等の落下物が衝突すると煙が発生してしまうため、これを防止する落下物衝突回避空間S1が設けられている。
【0033】
なお、本実施形態の場合、図4に示されるように、並列する切妻屋根状部52,53どうしは並列方向Xと直交する方向Yの両端部52a,53aにおいて、連結部材54,54で接続され、複数の切妻屋根状部52,53間に生じる全体の歪みを防止している。
また、本実施形態では、拡張部56,57同士は、空間S1内を通る拡張部歪み防止手段64で繋がれている。この拡張部歪み防止手段64は、図4に示されるように板状の細いバーであって、連結部材54よりも脆弱ではあるが、拡張部56,57の歪みを抑制する。特に、後述するように拡張部56,57は庇部66との角度が重要であるため、その歪みを防止することが好ましい。そして、この拡張部歪み防止手段64には厚み方向に貫通した貫通孔64aが形成されており、拡張部歪み防止手段64に落下物が付着することを防止している。
【0034】
そして、本発明の場合、拡張部56,57を積極的に加熱するための種々の手段が講じられている。
先ず、中央CT側の各傾斜面52c,53cには拡張部56,57に臨む開口部62が形成されている。この開口部62は、切妻屋根状部52,53の内側に対流した熱ガスGTを切妻屋根状部52,53の外側に噴出させるための貫通孔である。そして、開口部62は、傾斜面52c,53cの並列方向(図4のX方向)の中央側端部に形成されている。
【0035】
本実施形態の場合、複数の開口部62が、変形防止のために所定の間隔L1をあけて、切妻屋根上部52,53の並列するX方向と直交するY方向に沿って形成されている。なお、複数の開口部62は、拡張部56,57の長手方向(図4のY方向)の全域をできるだけ加熱できるように、所定の間隔L1を小さくすることが好ましい。一方、開口部62は、熱ガスを遠くに飛ばせるように、その開口面積を小さくすることが好ましい。このため、開口部62は、拡張部56,57の長手方向(図4のY方向)の寸法L2が、高さ寸法H1(図5の場合は3〜4mm)に比べて長く形成され、細長い長方形状の開口(図1参照)とされている。
【0036】
さらに、本発明の場合、各開口部62の周縁には、拡張部56,57の表面に向けて熱ガスGTを噴出するガイドとなるように突出した庇部66が設けられている。すなわち、高温な熱ガスは上昇するため、開口部62だけでは熱ガスが直ぐに上昇する恐れがあり、拡張部56,57の全幅(図4のX方向の全幅)を十分に加熱できない。そこで、熱ガスを積極的に拡張部56,57に噴射するための庇部66を設けた。
具体的には、図5に示されるように、庇部66は開口部62の上側の周縁から、水平よりも下向きとなるように水平方向に対する傾斜角度θ1を有して、突出している。この水平方向に対する下向きの傾斜角度θ1は、拡張部56,57の水平方向に対する下向きの傾斜角度よりも大きく、本実施形態の場合、拡張部56,57が略水平であるのに対して、庇部66の傾斜角度θ1は10〜15度に設定されている。このように庇部66の傾斜角度θ1を設定することで、積極的に熱ガスを拡張部56,57に導くことができ、例えばガスの圧力が低下した場合であっても、その作用を発揮できる。
【0037】
また、本実施形態の拡張部56,57は、庇部66の突出した方向に延びる仮想線ETよりも下側に配置されている。図5の場合、2つの切妻屋根状部52,53のうち一方の切妻屋根状部52の傾斜面52cに設けられた庇部66の突出方向に延びる仮想線ETと、他方の切妻屋根状部53の傾斜面53cに設けられた庇部66の突出方向に延びる仮想線ETとが交わる交差点が、切妻屋根状部52,53の並列する方向の中央部CT(つまり、切妻屋根状部52,53の並列する方向について、空間S1の中央部)と一致するように形成されている。
【0038】
なお、上述した拡張部56,57に熱ガスを噴射するための開口部62及び庇部66は、第1の開口部62及び第1の庇部66であって、切妻屋根状部52,53の対向方向の外側の傾斜面52b,53bには、外側に突出した第2の庇部68を周縁に有するようにして第2の開口部69が形成されている。この第2の開口部69は、拡張部56,57に熱ガスを導くためのものではなく、単に効率よく被焼物を加熱するために熱ガスを噴出させるための孔であり、第2の庇部68の水平方向に対する下向きの傾斜角度θ2は、傾斜面52b,53bの傾斜角度よりも小さく形成されている。そして、第2の庇部68は第2の開口部69から落下物が進入することを防止するための庇である。
【0039】
ここで、第1の開口部62・庇部66と、第2の開口部69・庇部68とを比較すると次ぎのような違いがある。
すなわち、第2の開口部69は、第1の開口部62に比べて、熱ガスがいち早く抜けようとする上側に配置されている。また、第2の開口部69は複数設けられており、各第2の開口部69の開口面積は第1の開口部62の開口面積に比べて大きく設定されている。このため、第2の開口部69からは、第1の開口部62に比べて大量の熱ガスが噴出しようとする。換言すれば、中央側の傾斜面52c,53cに配置された第1の開口部62は、その開口面積を小さくすることで、第2の開口部69より下側に配置されていたとしても、より中央側に熱ガスGTを飛ばすことができる。また、第1の庇部66は、第2の庇部68に比べて水平に突出しており(第1の庇部66の傾斜角度θ1は第2の庇部68の傾斜角度θ2に比べて小さく)、これによっても、熱ガスGTをより中央側に飛ばすことができる。
【0040】
本発明の実施形態は以上のように構成されており、中央側に延伸した拡張部56,57は、拡張部56,57に臨む開口部62や、拡張部56,57の表面に向けて熱ガスを噴出する庇部66により、効率よく加熱されるため、中央領域を高温にできる。したがって、対向する切妻屋根状部52,53が互いに離間するようにバーナーカバー50の幅を広げて、枠体40の端部領域を十分に加熱するようにした場合であっても、中央領域も十分に加熱できる。なお、本実施形態の場合、図4に示すように、切妻屋根状部52,53同士が対向する方向Xについて、バーナーカバー50の両端から枠体の内壁40aまでの間隔W1に比べて、2つの切妻屋根状部52,53同士の間隔W2が大きく設定されている。
また、拡張部56,57は十分に加熱されているため、落下してきた油等を弾き飛ばして、拡張部56,57に落下物が付着する恐れを防止し、煙の発生も有効に防止できる。
【0041】
図6は、加熱調理器を稼動させて実験し、バーナーカバー表面の温度分布を3値化したものであり、AR1、AR2、AR3の順で温度が高くなっている。そして、図6(a)は拡張部、第1の開口部、及び第1の庇部が設けられていない場合の実験結果、図6(b)は上記実施形態に係るバーナーカバー50の場合の実験結果である。
これらの図に示されるように、図6(b)のバーナーカバー50は、図6(a)の拡張部56等が設けられていないバーナーカバーに比べて、中央領域がより加熱されている。すなわち、拡張部56,57が第1の開口部や第1の庇部66によって積極的に加熱されている様子が分かり、これにより、バーナーカバー50の方が中央領域を加熱できる。なお、図6(b)では、拡張部56,57よりもさらに中央側に熱ガスGSが噴出している様子も分かる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、例えばバーナーカバー50は本体20に固定されてもよい。
また、切妻屋根状部や拡張部は、互いに並列した一対以上あってもよいし、ガスバーナー及び筐体等の形状に合わせた種々の配置や形状とすることができる。例えば、平面視が円形状の筐体に収容されたリング状のガスバーナーであれば、バーナーカバーの平面視もリング状として、互いに対向する領域を有する切妻屋根状部を形成してもよい。そして、この場合であっても、互いに対向する切妻屋根状部が離間するようにリング状のバーナーカバーの直径を大きくしてリング状より外側を十分に加熱したとしても、リング状の中央側に向かった拡張部等により、中央領域も十分に加熱できるという、上記実施形態と同じ作用効果を発揮する。
【0043】
また、以下に示すような変形例を採用することが好ましい場合もある。
先ず、上述した空間S1内を通る拡張部歪み防止手段64については、上記実施形態に係る変形例であって、図4のC−C線の位置で切断した場合の概略部分端面図である図7に示される形状とするのがより好ましい。すなわち、この図7の拡張部歪み防止手段64は、切妻屋根状部の対向方向と直交する方向の縦断面が逆V字或いは逆U字状とされている。これにより、拡張部歪み防止手段64への落下物の付着を有効に防止でき、また、強度も大きくして、拡張部の歪みを有効に防止できる。
【0044】
次に、バーナーカバー50周辺の概略平面図である図4に対応した図8に示されるように、拡張部56,57に、複数のスリット72を設けて、拡張部56,57を容易に加熱できるようにしてもよい。なお、図8に示されるように、外側の傾斜面52b,53bには、上述した第2の庇部68や第2の開口部69ではなく、スリット74を採用してもよい。
【0045】
次に、図5の一点鎖線で囲った部分拡大図に対応した概略部分端面図である図9に示すような拡張部14としてもよい。すなわち、図9の拡張部14が既に説明した拡張部と異なるのは、その角度についてだけであり、拡張部14は、庇部66と同様に水平方向に対する下向きの傾斜角度θ3が10〜15度となるように形成され、庇部66と拡張部14とが略平行とされている。このように庇部66と拡張部14とを略平行とすることで、開口部62から噴出した熱ガスGTは、拡張部14の表面に触れながらも、拡張部14に大きく邪魔されることなく、より中央に飛ばされる。
【0046】
この熱ガスの噴出具合、及び拡張部の加熱具合は図10の実験結果から分かる。すなわち、図10は、左側に既に説明した拡張部56(図4参照)を採用し、右側に本変形例に係る拡張部14を採用している。そして、バーナーカバー表面の温度分布を4値化したものであり、AR1、AR2、AR3、AR4の順で温度が高くなっている。この図10に示されるように、熱ガスGTが中央CTに向かって飛ぶ距離は、本変形例に係る拡張部14を採用した方が長い(実験では約10〜12mm長かった)ことが分かり、ガバナーでガスの圧力を一定に保てる場合には、常に熱ガスを遠くに飛ばせるため、本変形例の方が適している。なお、拡張部56を採用した場合では、拡張部56の全幅が最も高い温度AR1となり、本変形例に係る拡張部14を採用した場合は、拡張部14は最も高い温度AR1とその次に高い温度AR2の温度分布になっていることが分かる。
【符号の説明】
【0047】
32 ガスバーナー
50 バーナーカバー
52,53 切妻屋根状部
52b,52c,53b,53c 傾斜面
56,57 拡張部
62 開口部(第1の開口部)
66 庇部(第1の庇部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する1対或いは複数の切妻屋根状部を有し、この各切妻屋根状部は前記対向方向の縦断面形状が逆V字状あるいは逆U字状となるように傾斜面を備えた加熱調理器用のバーナーカバーであって、
前記各切妻屋根状部の前記対向方向の中央側にある端部が、前記対向方向の中央に向かって延伸することで、拡張部が設けられ、
前記傾斜面には前記拡張部に臨む開口部が形成されており、
前記開口部の周縁には、前記拡張部の表面に向けて熱ガスを噴出するガイドとなるように突出した庇部が設けられている
ことを特徴とするバーナーカバー。
【請求項2】
前記拡張部同士の間には、落下物の衝突を回避するための空間が形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のバーナーカバー。
【請求項3】
前記拡張部同士は、前記空間内を通る拡張部歪み防止手段で繋がれており、前記拡張部歪み防止手段には厚み方向に貫通した貫通孔が形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載のバーナーカバー。
【請求項4】
前記拡張部は、前記庇部の前記突出した方向に延びる仮想線よりも下側に配置されている、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のバーナーカバー。
【請求項5】
前記開口部は第1の開口部であり、その周縁に設けられた前記庇部は第1の庇部であって、
前記切妻屋根状部の前記対向方向の外側の傾斜面には、前記外側に突出した第2の庇部を周縁に有するようにして第2の開口部が形成されており、
前記第1の庇部は、前記第2の庇部に比べて水平に突出している
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のバーナーカバー。
【請求項6】
筐体内に互いに対向した領域を有するガスバーナーと、
前記互いに対向した領域の各上方に切妻屋根状部を有し、この各切妻屋根状部は前記対向方向の縦断面形状が逆V字状あるいは逆U字状となるように傾斜面を有するバーナーカバーと、
を備えた加熱調理器であって、
前記バーナーカバーは、
前記切妻屋根状部の前記対向方向の中央側にある端部が、前記対向方向の中央に向かって延伸することで、拡張部が設けられ、
前記傾斜面には前記拡張部に臨む開口部が形成されており、
前記開口部の周縁には、前記拡張部の表面に向けて熱ガスを噴出するガイドとなるように突出した庇部を有する
ことを特徴とする加熱調理器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−203632(P2010−203632A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46933(P2009−46933)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】