説明

パイル構造体及びその製造方法

【課題】杭本体と掘削体との間を十分強固に固着することができるパイル構造体を提供する。
【解決手段】パイル構造体200は、筒状の鋼管からなるパイル本体210と、パイル本体の先端に取り付けられるフィン220と、から構成される。パイル本体の内壁には、3本のボルト212がその中心軸がパイル本体の中心軸と平行になるように、かつ、パイル本体の先端から突出するように、溶接されている。フィンは、パイル本体の先端側の開口を覆う中央部と、中央部から外側に延びる4個の翼状部と、からなり、中央部にはボルトを通過させる開口が形成されており、翼状部は中央部に対して交互に上方及び下方に曲折されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイル本体とその先端に取り付けられたフィンとからなるパイル構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の建造に際しては、基礎杭として鋼管製の鋼管杭が地中に埋設される。従来より、このような基礎杭として種々のものが提案されている。
【0003】
その一例として、特開2005−126926号公報に記載されている鋼管杭を図15及び図16に示す。図15は同公報に記載されている鋼管杭の分解斜視図であり、図16は同公報に記載されている鋼管杭の断面図である。
【0004】
図15及び図16に示す鋼管杭100は、鋼鉄製の円筒状の杭本体120と、杭本体120の先端側に設けられる鋼鉄製の円盤状の掘削体140とを備えている。
【0005】
掘削体140は、図15に示すように、杭本体120の先端面に当接するリング状の領域である当接部140aと、当接部140aに連なり、杭本体120の外周から外側に延びる掘削翼部140bと、当接部140aに連なり、杭本体120の先端の開口を塞ぐ塞ぎ部140cと、から構成されている。
【0006】
塞ぎ部140cの中央には貫通孔141が形成されており、塞ぎ部140cの一方の表面には先端に向かって尖っている平板状の突出部材142が溶接で固定されている。
【0007】
掘削翼部140bは、図15に示すように、円周方向に等間隔にほぼT字状の2つの切り欠き143が形成されている。掘削翼部140bには、各切り欠き143を中心として、上方に曲折された第1曲折部144aと、下方に曲折された第2曲折部144bとが形成されている。
【0008】
杭本体120と掘削体140とは溶接により相互に固定されている。具体的には、杭本体120の先端面に掘削体140の当接部140aを当接させ、塞ぎ部140cで杭本体120の先端開口を塞いだ状態において、杭本体120と掘削体140とが相互に溶接される。
【0009】
図16に示すように、溶接は、杭本体120の外周面と掘削体140の上面とが接する部位145aと、杭本体120の外周面と第1曲折部144aの内側縁部とが接する部際145bとの双方において行われる。
【0010】
図15及び図16に示した鋼管杭100は、中心軸の回りに回転させながら、自重を利用して、地中にねじ込まれる。この際、まず、突出部材142が地中に食い込み、次いで、掘削体140の掘削翼部140bにより土砂が掘削され、鋼管杭100の周囲に押し出される。
【特許文献1】特開2005−126926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図15及び図16に示した鋼管杭100を地中にねじ込む際、掘削体140が土砂を押し退ける力は杭本体120と掘削体140との間の溶接部位145a、145bに作用することになる。
【0012】
しかしながら、杭本体120と掘削体140との間の溶接部位145a、145bは溶接のための面積が少なく、このため、杭本体120と掘削体140との間の溶接によっては、杭本体120と掘削体140とを相互に十分強固に固着する力を得ることは必ずしも可能ではなかった。
【0013】
このため、図15及び図16に示した従来の鋼管杭100には、鋼管杭100を地中にねじ込む際に、掘削体140が土砂から受ける圧力が杭本体120と掘削体140との間の接着力を上回り、結果的に、掘削体140が杭本体120から外れてしまうという問題点があった。
【0014】
さらに、従来の鋼管杭100においては、工事現場で掘削体140を杭本体120に溶接することが行われていたが、工事現場におけるこのような溶接は非常に煩わしい作業であるとともに、雨天の場合には、溶接作業を行うことができず、従来の鋼管杭100の製造作業は非効率的であった。
【0015】
掘削体140を杭本体120に溶接する作業は工事現場とは別の工場において行うことも可能であったが、この場合には、工場から工事現場に運搬する際に、掘削体140が嵩張るため、効率的な運搬を行うことができなかった。
【0016】
本発明はこのような従来の鋼管杭における問題点に鑑みてなされたものであり、杭本体と掘削体との間を十分強固に固着することができるとともに、製造及び運搬を効率的に行うことができるパイル構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以下に、「発明の実施の形態」において使用される参照符号を用いて、上述の課題を解決するための手段を説明する。これらの参照符号は、「特許請求の範囲」の記載と「発明の実施の形態」の記載との間の対応関係を明らかにするためにのみ付加されたものであり、「特許請求の範囲」に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いるべきものではない。
【0018】
上記の目的を達成するため、本発明は、筒状の鋼管からなるパイル本体(210)と、前記パイル本体(210)の先端に取り付けられるフィン(220)と、からなるパイル構造体であって、前記パイル本体(210)の内壁または外壁には、少なくとも2本の鉄棒がその中心軸が前記パイル本体(210)の中心軸と平行になるように、かつ、前記パイル本体(210)の前記先端から突出するように、固定的に取り付けられており、前記フィン(220)は、前記パイル本体(210)の前記先端に当接し、前記パイル本体(210)の前記先端側の開口(223)を覆う中央部(221)と、前記中央部(221)から外側に延びる少なくとも4個かつ偶数個の翼状部(222)と、からなり、前記中央部(221)には前記鉄棒を通過させる開口(223)が形成されており、前記翼状部(222)は前記中央部(221)に対して交互に上方及び下方に曲折されているものであるパイル構造体を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、筒状の鋼管からなるパイル本体(210)と、前記パイル本体(210)の先端に取り付けられるフィン(220)と、からなるパイル構造体であって、前記パイル本体(210)の先端には少なくとも2つの突出した突出部分が形成されており、前記フィン(220)は、前記パイル本体(210)の前記先端に当接し、前記パイル本体(210)の前記先端側の開口(223)を覆う中央部(221)と、前記中央部(221)から外側に延びる少なくとも4個かつ偶数個の翼状部(222)と、からなり、前記中央部(221)には前記突出部分を通過させる開口(223)が形成されており、前記翼状部(222)は前記中央部(221)に対して交互に上方及び下方に曲折されているものであるパイル構造体を提供する。
【0020】
前記鉄棒または前記突出部分は等間隔に配置されていることが好ましい。
【0021】
例えば、前記鉄棒はボルト(212)からなることが好ましい。
【0022】
前記中央部(221)は正方形をなしており、前記フィン(220)は4個の翼状部(222)を有していることが好ましい。
【0023】
前記翼状部(222)は前記中央部(221)に対して曲折する角度は15度乃至45度であることが好ましい。
【0024】
前記中央部(221)の中心には、前記パイル本体(210)とは反対側に延び、先端が尖っている棒状の突出棒が取り付けられていることが好ましい。
【0025】
前記中央部(221)には、前記パイル本体(210)の外壁に嵌合する内壁を有する環状体が取り付けられていることが好ましい。
【0026】
本発明は、筒状の鋼管からなるパイル本体(210)の内壁または外壁に、少なくとも2本の鉄棒を、その中心軸が前記パイル本体(210)の中心軸と平行になるように、かつ、前記パイル本体(210)の先端から突出するように、固定的に取り付ける第一の過程と、前記パイル本体(210)の前記先端に当接し、前記パイル本体(210)の前記先端側の開口(223)を覆うとともに、前記鉄棒を通過させる開口(223)が形成されている中央部(221)と、前記中央部(221)から外側に延び、かつ、前記中央部(221)に対して交互に上方及び下方に曲折されている少なくとも4個かつ偶数個の翼状部(222)と、からなるフィン(220)を、前記鉄棒を前記開口(223)に通すことにより、前記パイル本体(210)に係合させる第二の過程と、前記鉄棒を前記フィン(220)に対して固定する第三の過程と、からなるパイル構造体の製造方法を提供する。
【0027】
前記鉄棒は、例えば、ボルトからなり、この場合、前記第三の過程においては、前記鉄棒は前記フィン(220)に対してナットで固定される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、パイル本体とフィンとは、パイル本体に固定的に取り付けられた鉄棒を介して、例えば、溶接により、相互に固定される。従来の鋼鉄杭100と比較して、溶接する部位の面積が小さいため、溶接に要する時間及び手間を短縮することができる。
【0029】
さらに、鉄棒に代えて、ボルトを用いる場合には、パイル本体とフィンとは、パイル本体に取り付けられたボルトとナットとを介して、相互に固定される。ナットを十分にボルトに対して締め付けることにより、フィンがパイル本体から外れることを防止することができ、杭本体120と掘削体140とを溶接していた従来の鋼管杭100と比較して、より確実に、地中への埋め込みを行うことが可能になる。
【0030】
さらに、ボルトに対するナットの締め付けは、掘削体140の杭本体120への溶接と比較して、作業としてははるかに容易であり、かつ、より短い時間で行うことが可能である。
【0031】
また、掘削体140を杭本体120に対して溶接する場合、工事現場では、溶接を行うことが困難な場合があるので、多くの場合、鋼管杭100の製造工場において、掘削体140は杭本体120に対して溶接される。このため、製造工場から工事現場までは、掘削体140が溶接された状態の杭本体120を運搬しなければならず、運搬効率の低下を招いていた。
【0032】
これに対して、ボルトを用いることにより、フィンのパイル本体への取り付けは工事現場において容易に行うことができるため、製造工場から工事現場までは、フィンとパイル本体とを別々に運搬することが可能であり、従来の鋼管杭100と比較して、運搬効率を上げることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(第一の実施形態)
図1は本発明の第一の実施形態に係るパイル構造体200の正面図である。
【0034】
図1に示すように、本実施形態に係るパイル構造体200は、円筒状の鋼管からなるパイル本体210と、パイル本体210の先端に取り付けられるフィン220と、から構成されている。
【0035】
図2はパイル本体210の先端の斜視図である。
【0036】
図2に示すように、パイル本体210の内壁211には、3本のボルト212がそれらの中心軸がパイル本体210の中心軸と平行になるように、かつ、パイル本体210の先端から外側に突出するように固定的に取り付けられている。例えば、ボルト212は溶接によりパイル本体210の内壁211に固定されている。
【0037】
3本のボルト212は相互に等間隔に配置されている。すなわち、3本のボルト212は、パイル本体210の中心軸を中心として120度の円周角の位置においてパイル本体210の内壁211にそれぞれ取り付けられている。
【0038】
図3はフィン220の平面図、図4はフィン220の正面図、図5はフィン220の側面図、図6はフィン220の斜視図である。
【0039】
図3に示すように、フィン220は、パイル本体210の先端に当接し、パイル本体210の先端側の開口を覆うほぼ正方形をなす中央部221と、中央部221の4つの辺の各々から外側に延びる4個の翼状部222と、から構成されている。
【0040】
図3に示すように、フィン220の中央部221には3つの開口223が形成されており、3つの開口223は、フィン220の中央部221をパイル本体210の先端の開口に当接させたときに、3本のボルト212の各々を通すことができる位置に設けられている。
【0041】
図4または図5に示すように、4個の翼状部222の各々は中央部221に対して交互に上方及び下方に曲折されている。
【0042】
具体的には、例えば図4を参照すると、第1番目の翼状部222a(4個の翼状部222のうちの任意の1個)は中央部221に対して上方に曲折されており、第1番目の翼状部222aに隣接する第2番目の翼状部222bは中央部221に対して下方に曲折されており、第2番目の翼状部222bに隣接する第3番目の翼状部222c(第1番目の翼状部222aに対向する翼状部)は中央部221に対して上方に曲折されており、第3番目の翼状部222cに隣接する第4番目の翼状部222d(第2番目の翼状部222bに対向する翼状部)は中央部221に対して下方に曲折されている。
【0043】
すなわち、相互に対向する第1番目及び第3番目の翼状部222a、222cはともに中央部221に対して上方に曲折されており、相互に対向する第2番目及び第4番目の翼状部222b、222dはともに中央部221に対して下方に曲折されている。
【0044】
発明者が行った実験によれば、翼状部222が中央部221に対して曲折する角度は15度乃至45度の範囲内にあることが好ましく、15度乃至30度の範囲内にあることがより好ましい。
【0045】
フィン220は一枚の鋼板からつくることができる。
【0046】
例えば、図3を参照すると、一枚の鋼板に開口223を形成し、さらに、鋼板の外縁から中央部221の角に達する切り込み224を入れる。その後、切り込み224を境界として、各翼状部222を上方または下方に曲折する。このようにして、フィン220は一枚の鋼板を加工して作成することが可能である。
【0047】
本実施形態に係るパイル構造体200は以下のようにして組み立てられる。
【0048】
先ず、パイル本体210に取り付けられた3本のボルト212の各々にフィン220の中央部221に形成された3個の開口223の各々を嵌合させる。
【0049】
次いで、フィン220の中央部221がパイル本体210の先端に当接するまで、フィン220をパイル本体210の方向に移動させる。
【0050】
フィン220の中央部221がパイル本体210の先端に当接した後、図1に示すように、3本のボルト212の各々にナット230を螺合させ、ナット230をボルト212に対して締める。
【0051】
これにより、フィン220はパイル本体210に対して固定される。
【0052】
図7は本実施形態に係るパイル構造体200の使用方法を示す概略図である。
【0053】
パイル構造体200を地中に打ち込む際には、パイル本体210を回転させながら下降させることができるパイル回転圧入装置240を備えた重機250を用いる。
【0054】
パイル回転圧入装置240は、ピラー241と、ピラー241に取り付けられ、垂直軸を回転軸として回転可能であり、かつ、ピラー241に対して上下動可能な回転ヘッド242と、から構成されている。
【0055】
先ず、パイル回転圧入装置240の回転ヘッド242にパイル本体210の上端を取り付ける。パイル本体210の上端は回転ヘッド242に対して固定的に取り付けられている。
【0056】
この時点においては、パイル本体210の下端に取り付けられているフィン220は地面260よりも上方に位置している。
【0057】
次いで、パイル回転圧入装置240を作動させ、回転ヘッド242を回転させる。回転ヘッド242の回転に伴い、パイル構造体200も回転を始める。
【0058】
回転ヘッド242は回転しつつ、パイル構造体200の自重によって、徐々にピラー241に沿って下降する。
【0059】
回転ヘッド242の下降に伴い、パイル構造体200も回転しつつ、下降する。
【0060】
フィン220が地面260に到達すると、フィン220は土砂の掘削を開始する。掘削された土砂はパイル本体210の周囲に押し出される。
【0061】
本実施形態に係るパイル構造体200においては、パイル本体210とフィン220とは、パイル本体210に取り付けられたボルト212とナット230とを介して、相互に固定される。ナット230を十分にボルト212に対して締め付けることにより、フィン220がパイル本体210から外れることを防止することができ、杭本体120と掘削体140とを溶接していた従来の鋼管杭100と比較して、より確実に、地中への埋め込みを行うことが可能になる。
【0062】
さらに、ボルト212に対するナット230の締め付けは、掘削体140の杭本体120への溶接と比較して、作業としてははるかに容易であり、かつ、より短い時間で行うことが可能である。
【0063】
また、掘削体140を杭本体120に対して溶接する場合、工事現場では、溶接を行うことが困難な場合があるので、多くの場合、鋼管杭100の製造工場において、掘削体140は杭本体120に対して溶接される。このため、製造工場から工事現場までは、掘削体140が溶接された状態の杭本体120を運搬しなければならず、運搬効率の低下を招いていた。
【0064】
これに対して、本実施形態に係るパイル構造体200によれば、フィン220のパイル本体210への取り付けは工事現場において容易に行うことができるため、製造工場から工事現場までは、フィン220とパイル本体210とを別々に運搬することが可能であり、従来の鋼管杭100と比較して、運搬効率を上げることが可能である。
【0065】
図8は、本実施形態に係るパイル構造体200の製造方法における各製造過程を示すフローチャートである。
【0066】
先ず、図2に示すように、3本のボルト212をパイル本体210の内壁211に固定的に取り付ける(ステップS101)。
【0067】
次いで、フィン220を製造する(ステップS102)。上述したように、フィン220は一枚の鋼板から作成することが可能である。
【0068】
次いで、フィン220の中央部221に形成された開口223をボルト212に通し、フィン220を中央部221がパイル本体210の先端に当接するまで移動させる(ステップS103)。
【0069】
次いで、図1に示すように、ナット230をボルト212に対して締め付けることにより、フィン220をパイル本体210に対して固定する(ステップS104)。
【0070】
本実施形態に係るパイル構造体200は上述の構造に限定されるものではなく、その構造は種々の改変が可能である。
【0071】
本実施形態に係るパイル構造体200においては、パイル本体210は円筒形状をなしているが、筒状をなしている限り、パイル本体210の横断面は円には限定されない。円以外の形状の横断面を有していてもよい。
【0072】
本実施形態に係るパイル構造体200においては、3本のボルト212を使用しているが、ボルト212の個数は3には限定されない。例えば、2本のボルト212を用いることもでき、あるいは、4本以上のボルト212を用いることも可能である。
【0073】
本実施形態に係るパイル構造体200においては、フィン220の中央部221はほぼ正方形の形状をなしているが、中央部221の形状は正方形には限定されない。パイル本体210の先端側の開口を塞ぐことができる形状である限り、中央部221の形状として長方形その他の四角形、円形その他の形状を採用することが可能である。
【0074】
本実施形態に係るパイル構造体200においては、フィン220は4個の翼状部222を有するものとして形成されているが、翼状部222の数は4個には限定されない。4個以上の偶数個の翼状部222を形成することが可能である。
【0075】
本実施形態に係るパイル構造体200においては、3本のボルト212は相互に等間隔に配置されているが、3本のボルト212を等間隔に配置することは必ずしも必要ではない。パイル本体210またはフィン220の大きさ、ボルト212の大きさその他の条件に応じて、各ボルト212を任意の位置に配置することが可能である。
【0076】
(第二の実施形態)
上述の第一の実施形態に係るパイル構造体200においては、ボルト212を使用したが、ボルト212に代えて、円筒形状の鉄棒を使用することも可能である。
【0077】
この場合には、フィン220の中央部221に形成された開口223を鉄棒に嵌合させた後、各開口223の円周に沿って、フィン220と鉄棒とを溶接する。
【0078】
溶接する点においては図15及び図16に示した従来の鋼鉄杭100と同様であるが、従来の鋼鉄杭100と比較して、溶接する部位の面積が小さいため、溶接に要する時間及び手間を短縮することができる。
【0079】
(第三の実施形態)
図9は本発明の第三の実施形態に係るパイル構造体において用いるパイル本体210の斜視図である。
【0080】
上述の第一の実施形態に係るパイル構造体200においては、3本のボルト212の各々はパイル本体210の内壁211に固定されていたが、本実施形態に係るパイル構造体においては、3本のボルト212の各々はパイル本体210の外壁213に固定されている。3本のボルト212の各々がパイル本体210の外壁213に固定されている点を除いて、本実施形態に係るパイル構造体は上述の第一の実施形態に係るパイル構造体200と同様の構造を有している。
【0081】
ボルト212をパイル本体210の外壁213に取り付けることにより、ボルト212をパイル本体210の内壁211に取り付ける場合と比較して、例えば、溶接を行う場合には、溶接作業を行いやすくなる。
【0082】
第三の実施形態に係るパイル構造体によっても、第一の実施形態に係るパイル構造体200と同様の効果を得ることができる。
【0083】
また、第三の実施形態に係るパイル構造体においても、上述の第二の実施形態に係るパイル構造体と同様に、ボルト212に代えて、鉄棒を用いることも可能である。
【0084】
(第四の実施形態)
図10は本発明の第四の実施形態に係るパイル構造体において用いるパイル本体210Aの斜視図である。
【0085】
本実施形態に係るパイル構造体においては、上述の第一の実施形態に係るパイル構造体200とは異なり、ボルト212を用いない。すなわち、本実施形態に係るパイル構造体においては、ボルト212を用いることに代えて、図10に示すように、パイル本体210Aの先端には3個の突出部分214が形成されている。
【0086】
突出部分214は、パイル本体210Aの先端の突出部分214以外の領域を除去することにより、形成することができる。あるいは、パイル本体210Aの先端に突出部分214に相当する鋼材を溶接により取り付けることも可能である。
【0087】
フィン220の中央部221に形成される開口223は突出部分214の形状に合わせた形状を有するものとして形成される。
【0088】
また、本実施形態に係るパイル構造体においては、パイル本体210Aとフィン220とは、フィン220の中央部221に形成された開口223を突出部分214に嵌合させた後、各開口223の外周に沿って、フィン220と突出部分214とを溶接することにより、相互に固定される。
【0089】
第四の実施形態に係るパイル構造体によっても、第一の実施形態に係るパイル構造体200と同様の効果を得ることができる。
【0090】
また、第一の実施形態に係るパイル構造体200と同様に、突出部分214の数は3個に限定されるものではなく、2個以上の任意の数を選択することができる。
【0091】
(第五の実施形態)
図11は本発明の第五の実施形態に係るパイル構造体において用いるフィン220Aの平面図であり、図12はフィン220Aの正面図である。
【0092】
本実施形態におけるフィン220Aの中央部221の中心には、パイル本体210に取り付けられる面と反対側の面において、先端が尖っている鋼鉄製の突出棒225が、例えば、溶接により、固定的に取り付けられている。
【0093】
突出棒225が設けられている点を除いて、本実施形態に係るパイル構造体は上述の第一の実施形態に係るパイル構造体200と同様の構造を有している。
【0094】
突出棒225は、フィン220Aが地上に到達する前に、地上に到達し、地中に突き刺さる。これにより、フィン220Aが地中に食い込むことを容易にすることができる。
【0095】
なお、突出棒225の数は1個に限定されるものではなく、例えば、円弧状に複数の突出棒225を配列することも可能である。
【0096】
(第六の実施形態)
図13は本発明の第六の実施形態に係るパイル構造体において用いるフィン220Bの平面図であり、図14はフィン220Bの正面図である。
【0097】
本実施形態におけるフィン220Bには、パイル本体210に取り付けられる面において、リング状の環状体226が、例えば、溶接により、固定的に取り付けられている。
【0098】
環状体226はフィン220Bの中央部221の中心と同心に配置されている。
【0099】
環状体226の内径はパイル本体210の外径に等しく、パイル本体210の外側に嵌め込むことが可能であるようになっている。
【0100】
環状体226が設けられている点を除いて、本実施形態に係るパイル構造体は上述の第一の実施形態に係るパイル構造体200と同様の構造を有している。
【0101】
パイル本体210とフィン220Bとを接合する場合には、各ボルト212をフィン220Bの中央部221に形成された開口223に通すとともに、図14に示すように、環状体226をパイル本体210に嵌合させる。
【0102】
このように環状体226を設けたことにより、パイル本体210とフィン220Bとの間の水平方向における接合強度を高めることができ、例えば、フィン220Bを地中に食い込ませる際に、フィン220Bに対して水平方向に剪断力が作用しても、環状体226によりその剪断力を吸収することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るパイル構造体の正面図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係るパイル構造体におけるパイル本体の先端の斜視図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係るパイル構造体におけるフィンの平面図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係るパイル構造体におけるフィンの正面図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に係るパイル構造体におけるフィンの側面図である。
【図6】本発明の第一の実施形態に係るパイル構造体におけるフィンの斜視図である。
【図7】本発明の第一の実施形態に係るパイル構造体の使用方法を示す概略図である。
【図8】本発明の第一の実施形態に係るパイル構造体の製造方法における各製造過程を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第三の実施形態に係るパイル構造体において用いるパイル本体の斜視図である。
【図10】本発明の第四の実施形態に係るパイル構造体において用いるパイル本体の斜視図である。
【図11】本発明の第五の実施形態に係るパイル構造体において用いるフィンの平面図である。
【図12】本発明の第五の実施形態に係るパイル構造体において用いるフィンの正面図である。
【図13】本発明の第六の実施形態に係るパイル構造体において用いるフィンの平面図である。
【図14】本発明の第六の実施形態に係るパイル構造体において用いるフィンの正面図である。
【図15】従来の鋼管杭の分解斜視図である。
【図16】図15に示した従来の鋼管杭の断面図である。
【符号の説明】
【0104】
200 本発明の第一の実施形態に係るパイル構造体
210、210A パイル本体
211 パイル本体の内壁
212 ボルト
213 パイル本体の外壁
214 突出部分
220、220A、220B フィン
221 中央部
222 翼状部
223 開口
224 切り込み
225 突出棒
226 環状体
230 ナット
240 パイル回転圧入装置
241 ピラー
242 回転ヘッド
250 重機
260 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の鋼管からなるパイル本体と、
前記パイル本体の先端に取り付けられるフィンと、
からなるパイル構造体であって、
前記パイル本体の内壁または外壁には、少なくとも2本の鉄棒がその中心軸が前記パイル本体の中心軸と平行になるように、かつ、前記パイル本体の前記先端から突出するように、固定的に取り付けられており、
前記フィンは、
前記パイル本体の前記先端に当接し、前記パイル本体の前記先端側の開口を覆う中央部と、
前記中央部から外側に延びる少なくとも4個かつ偶数個の翼状部と、
からなり、
前記中央部には前記鉄棒を通過させる開口が形成されており、
前記翼状部は前記中央部に対して交互に上方及び下方に曲折されているものであるパイル構造体。
【請求項2】
筒状の鋼管からなるパイル本体と、
前記パイル本体の先端に取り付けられるフィンと、
からなるパイル構造体であって、
前記パイル本体の先端には少なくとも2つの突出した突出部分が形成されており、
前記フィンは、
前記パイル本体の前記先端に当接し、前記パイル本体の前記先端側の開口を覆う中央部と、
前記中央部から外側に延びる少なくとも4個かつ偶数個の翼状部と、
からなり、
前記中央部には前記突出部分を通過させる開口が形成されており、
前記翼状部は前記中央部に対して交互に上方及び下方に曲折されているものであるパイル構造体。
【請求項3】
前記鉄棒または前記突出部分は等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のパイル構造体。
【請求項4】
前記鉄棒はボルトからなるものであることを特徴とする請求項1または3に記載のパイル構造体。
【請求項5】
前記中央部は正方形をなしており、前記フィンは4個の翼状部を有していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のパイル構造体。
【請求項6】
前記翼状部は前記中央部に対して曲折する角度は15度乃至45度であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のパイル構造体。
【請求項7】
前記中央部の中心には、前記パイル本体とは反対側に延び、先端が尖っている棒状の突出棒が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のパイル構造体。
【請求項8】
前記中央部には、前記パイル本体の外壁に嵌合する内壁を有する環状体が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のパイル構造体。
【請求項9】
筒状の鋼管からなるパイル本体の内壁または外壁に、少なくとも2本の鉄棒を、その中心軸が前記パイル本体の中心軸と平行になるように、かつ、前記パイル本体の先端から突出するように、固定的に取り付ける第一の過程と、
前記パイル本体の前記先端に当接し、前記パイル本体の前記先端側の開口を覆うとともに、前記鉄棒を通過させる開口が形成されている中央部と、前記中央部から外側に延び、かつ、前記中央部に対して交互に上方及び下方に曲折されている少なくとも4個かつ偶数個の翼状部と、からなるフィンを、前記鉄棒を前記開口に通すことにより、前記パイル本体に係合させる第二の過程と、
前記鉄棒を前記フィンに対して固定する第三の過程と、
からなるパイル構造体の製造方法。
【請求項10】
前記鉄棒はボルトからなり、前記第三の過程において、前記鉄棒を前記フィンに対してナットで固定することを特徴とする請求項9に記載のパイル構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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