説明

パイロット式電磁弁

【課題】パイロット式電磁弁のオリフィスが異物によって目詰まりすることを回避する。
【解決手段】ダイアフラムの背面側に背圧室を設けておき、背圧室には副弁を設けておく。また、ダイアフラムには背圧室に連通するオリフィスを設けておく。パイロット式電磁弁を閉弁させる際には副弁を閉鎖する。すると、オリフィスから流入する液体によって背圧室の圧力が上昇し、この圧力によってダイアフラムが変形してパイロット式電磁弁が閉弁する。また、パイロット式電磁弁を開弁させる際には副弁を開放する。すると、背圧室の圧力が低下してダイアフラムが逆方向に変形し、開弁状態となる。そして、パイロット式電磁弁が開弁状態の間は、オリフィスを閉鎖しておく。こうすれば、パイロット式電磁弁の開弁中に、オリフィスに異物が入り込んで目詰まりすることを回避することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアフラム式の弁体を備えたパイロット式電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
水や油などの液体の流れを制御するための方法としては、液体の流路に電磁弁を設けておき、この電磁弁の開閉を制御することが一般的である。また、このような目的で使用される電磁弁には、ソレノイドを用いて直接駆動することによって弁体の開閉を行う電磁弁(いわゆる直動式電磁弁)と、液体の圧力を利用して弁体の開閉を行う電磁弁(いわゆるパイロット式電磁弁)とが存在する。
【0003】
このうちのパイロット式電磁弁には内部にダイアフラムが設けられており、電磁弁に向けて流入する側(一次側)の液体が、ダイアフラムの背面側に設けられた背圧室に、オリフィスを介して導かれるようになっている。そして、ダイアフラムが一次側の液体から受ける力と、背圧室内の液体から受ける力とのバランスによって、ダイアフラムに設けられた弁体が移動することで電磁弁が開閉する。このため、パイロット式電磁弁では、背圧室の圧力を開放するか否かを切り換えるだけで、液体の圧力を利用して弁体を移動させることができるので、少ない電力で電磁弁を駆動することが可能である。
【0004】
もっともパイロット式電磁弁は、上述した原理に基づいて駆動される関係上、液体に含まれる異物(例えば錆、ゴミ、水垢など)がオリフィスに引っ掛かり、あるいはオリフィスを目詰まりさせると、適切に開閉させることができなくなる。そこで、オリフィス内にクリーニングピンを挿入しておくことで、オリフィスが異物で目詰まりすることを回避しようとする技術が提案されている(特許文献1)。また、オリフィスの内壁から邪魔板を突設することで、オリフィスに異物が侵入し難くしようとする技術も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−172070号公報
【特許文献2】実開平4−127487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の技術では、オリフィスの目詰まりを完全に回避することは難しく、このためパイロット式電磁弁には、依然としてオリフィスの目詰まりに起因した不具合の発生が懸念されるという問題があった。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題に対応してなされたものであり、パイロット式電磁弁のオリフィスが異物によって目詰まりすることを回避することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明のパイロット式電磁弁は次の構成を採用した。すなわち、
ダイアフラムと、
該ダイアフラムに向かって液体が流入する側の通路である流入通路と、
液体が流出する側の通路である流出通路と、
前記流入通路に連通する流入側空間と、前記流出通路に連通する流出側空間との間に形成された隔壁と、
前記ダイアフラムに設けられて前記隔壁との間で主弁を構成するとともに、該隔壁に当接することで、前記流入側空間と前記流出側空間との連通が切断された閉弁状態とし、該隔壁から離間することで、該流入側空間と該流出側空間とが連通した開弁状態とする弁体と、
前記ダイアフラムの背面側に形成された背圧室と、
前記流入側空間から前記背圧室に前記液体を導入することにより、該背圧室内の圧力を上昇させるオリフィスと、
前記背圧室に設けられた副弁を開弁して該背圧室の圧力を開放することで、前記主弁を開弁状態とし、該副弁を閉弁して該背圧室の圧力を保持することで前記主弁を閉弁状態とする副弁駆動手段と
を備えるパイロット式電磁弁において、
前記主弁が開弁状態にある場合には前記オリフィスを閉鎖するオリフィス閉鎖部材を備えることを特徴とする。
【0009】
このような構成を有する本発明のパイロット式電磁弁においては、副弁を開弁して背圧室の圧力を開放すると主弁が開弁状態となり、副弁を閉弁すると、オリフィスを介して液体が背圧室に流入して背圧室の圧力が上昇し、その結果、主弁が閉弁状態となる。また、主弁が開弁状態にある場合には、オリフィス閉鎖部材によってオリフィスが閉鎖されるようになっている。
【0010】
パイロット式電磁弁は、オリフィスを介して背圧室に液体が流れ込み、液体の圧力がダイアフラムの背面に作用することによって主弁が閉弁状態となるから、オリフィス内に異物が入り込んでオリフィスを目詰まりさせると、主弁を閉弁させることができなくなる。また、オリフィス内に異物が入り込んで液体が流れ難くなると、主弁がなかなか閉弁しなくなる。ところが、本発明のパイロット式電磁弁では、主弁が開弁状態にある場合には、オリフィス閉鎖部材によってオリフィスが閉鎖される。このため、主弁が開弁状態の時にオリフィス内に異物が入り込むことがない。また、主弁が閉弁状態にあるときは、そもそもパイロット式電磁弁に液体が流れ込まないため、液体とともに異物が流れ込むことが無く、オリフィス内に異物が入り込むこともない。結局、本発明のパイロット式電磁弁では、オリフィス内に異物が最も入り込み易い状態である主弁の開弁状態の時に、オリフィス閉鎖部材によってオリフィスを閉鎖してしまうことになる。その結果、オリフィス内に異物が入り込むことがなくなるので、異物に起因する上述した問題の発生を回避することが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明のパイロット式電磁弁においては、オリフィスが流入側空間に開口する側で、オリフィスを閉鎖するようにしてもよい。
【0012】
主弁が開弁すると、オリフィス内には流入側空間から背圧室に向かって液体が流れるので、オリフィスが流入側空間に開口する側で閉鎖してやれば、オリフィスに異物が入り込むことを未然に回避することが可能となる。
【0013】
また、上述した本発明のパイロット式電磁弁においては、次のようにしてオリフィスを閉鎖するようにしても良い。先ず、オリフィスにクリーニングピンを貫通させ、このクリーニングピンと一体に、オリフィス閉鎖部材を設けておく。そして、副弁を開弁させるためにクリーニングピンを軸方向に移動させると、オリフィス閉鎖部材によってオリフィスが閉鎖されるようにしても良い。
【0014】
パイロット式電磁弁の主弁を開弁状態とするには、それに先立って副弁を開弁させる必要がある。従って、上記の構成としておけば、副弁を開弁させる動作で、同時にオフィスも閉鎖することができる。また、オリフィス閉鎖部材はクリーニングピンと一体に設けられているので、副弁の開弁に合わせて、確実にオリフィスを閉鎖することができる。更に、オリフィスを貫通したクリーニングピンを軸方向に移動させることになるので、たとえオリフィス内に異物が入り込んだ場合でも、クリーニングピンの動きによって異物を排出することが可能となる。
【0015】
また、上述した本発明のパイロット式電磁弁においては、液体の流れを利用して、オリフィスを閉鎖するようにしても良い。すなわち、主弁が開弁状態になると、流入側空間には液体の流れが発生する。そこで、この液体の流れによって、オリフィス閉鎖部材をオリフィスの開口部分に押し付けることによって、オリフィスを閉鎖するようにしてもよい。
【0016】
こうすれば、液体の流れを利用してオリフィスを閉鎖することができるので、オリフィスを閉鎖するための構造を簡素な構造とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施例のパイロット式電磁弁の構造を示す説明図である。
【図2】パイロット式電磁弁の動作原理を示す説明図である。
【図3】第1実施例のパイロット式電磁弁の動作を示す説明図である。
【図4】第1実施例のパイロット式電磁弁の他の態様を示す説明図である。
【図5】第2実施例のパイロット式電磁弁の動作を示す説明図である。
【図6】第2実施例のパイロット式電磁弁の他の態様を示す説明図である。
【図7】変形例のパイロット式電磁弁の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.第1実施例:
A−1.第1実施例のパイロット式電磁弁の構造:
A−2.パイロット式電磁弁の動作原理:
A−3.第1実施例のパイロット式電磁弁の動作:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0019】
A.第1実施例 :
A−1.第1実施例のパイロット式電磁弁の構造 :
図1は、第1実施例のパイロット式電磁弁100の構造を示した説明図である。図1(a)には、パイロット式電磁弁100の大まかな構造を示す分解組み立て図が示されており、図1(b)には、パイロット式電磁弁100の詳細な構造を示す断面図が示されている。図1(a)に示されるように、パイロット式電磁弁100は、電磁コイルが内蔵された上部ケース110と、液体の通路が形成された下部ケース140との間に、略円板形状のダイアフラム部130を挟み込んだ構造となっている。また、ダイアフラム部130の上側には、電磁コイルによって駆動されるプランジャ部120が組み込まれている。
【0020】
下部ケース140には、円環形状の流入室142(流入側空間に相当)が形成されており、流入室142の中央部分には、流出通路146に連通する流出ニップル144(隔壁に相当)が突設されている。水などの液体は、流入通路148を通って流入室142に流入した後、中央に設けられた流出ニップル144を介して流出通路146から流出するように構成されている。ダイアフラム部130は、ゴム材料によって形成された円環状のダイアフラム134の中央に、樹脂材料で形成された円板形状の弁体132が組み込まれて構成されている。弁体132の中心には、弁体132を貫通する細径のリリーフ通路136が設けられている。また、弁体132には、後述するようにリリーフ通路136よりも細径のオリフィス通路も設けられている。
【0021】
プランジャ部120は、金属材料で形成された円柱形状のプランジャ本体122に、金属製のクリーニングピン124が取り付けられて構成されている。プランジャ本体122は、その端面が、弁体132に開口したリリーフ通路136に対向する位置に設けられ、クリーニングピン124が、弁体132に設けられたオリフィス通路を貫通した状態で、弁体132に組み付けられる。そして、上部ケース110は、下部ケース140との間でダイアフラム134を挟み込むようにして、下部ケース140およびダイアフラム134に対して上方から組み付けられる。
【0022】
図1(b)の断面図に示されるように、上部ケース110の下面側には円形の凹部が形成されており、上部ケース110を組み付けると、ダイアフラム部130との間に背圧室116が形成される。また、上部ケース110の内部には電磁コイル112が設けられており、電磁コイル112の中心位置に形成された円筒形の凹部にプランジャ本体122が収納されるようになっている。更に、この凹部には、プランジャ本体122を付勢する為のバネ114が設けられている。
【0023】
前述したようにプランジャ本体122は、略円柱形状に形成されており、下面側(弁体132側)の端面には、ゴム製の座面128が設けられている。そして、他端側からバネ114によって付勢されることによって、座面128が弁体132に押し付けられて、弁体132に開口したリリーフ通路136を閉鎖する。このプランジャ本体122の座面128と、弁体132に開口するリリーフ通路136とによって、パイロット式電磁弁100の副弁が構成されている。
【0024】
また、弁体132には、リリーフ通路136よりも細径のオリフィス通路138が形成されており、プランジャ本体122から立設されたクリーニングピン124が、オリフィス通路138を貫通するようになっている。また、クリーニングピン124の先端には、略円板形状の閉鎖部材126が取り付けられている。このため、後述するように電磁コイル112によってプランジャ本体122が引き上げられると、プランジャ本体122と共にクリーニングピン124も引き上げられて、先端の閉鎖部材126がオリフィス通路138を閉鎖するようになっている。
【0025】
尚、図1(a)に示したように、本実施例のパイロット式電磁弁100では、弁体132には三箇所にオリフィス通路138が設けられているものとしているが、オリフィス通路138は一箇所に設けておくだけでも良い。また、複数箇所にオリフィス通路138を設ける場合には、それらオリフィス通路138を、互いに等間隔となる位置に設けておくことが望ましい。例えば、図1(a)に例示したように、略円板形状の弁体132に3つのオリフィス通路138を設けるのであれば、弁体132の中心軸から等距離で、約120度(=360度/3)ずつの間隔を空けた箇所に、オリフィス通路138を設けることが望ましい。こうすることが望ましい理由については、後ほど詳しく説明する。
【0026】
また、図1(b)に示されるように、弁体132の下面側には、ゴム製の座面139が円環状に設けられており、この座面139が流出ニップル144の端面に当接すると、弁体132が流出通路146を閉鎖した状態となる。また、弁体132の座面139が流出ニップル144の端面から離間すると、流出ニップル144の周囲に形成された流入室142と、流出通路146とが流出ニップル144を介して連通した状態となる。従って、弁体132と流出ニップル144とによって、パイロット式電磁弁100の主弁が構成されている。
【0027】
以上のように、第1実施例のパイロット式電磁弁100では、弁体132のオリフィス通路138を貫通するクリーニングピン124の一端側が、プランジャ本体122に取り付けられており、また、クリーニングピン124の他端側には閉鎖部材126が設けられている。そして、このような構造を採用した結果、パイロット式電磁弁の作動中に、オリフィス通路138が異物によって目詰まりすることを回避することが可能となっている。以下では、こうしたことが可能となる理由について説明するが、その準備として、パイロット式電磁弁の動作原理について簡単に説明しておく。
【0028】
A−2.パイロット式電磁弁の動作原理 :
図2は、パイロット式電磁弁の動作原理を示す説明図である。尚、ここでは、必ずしも第1実施例のパイロット式電磁弁100に限らず、一般的なパイロット式電磁弁を想定して説明するが、理解の便宜を図るため、各部品の形状および部品の符番については、図1に示した第1実施例のパイロット式電磁弁100と同じとしている。
【0029】
図2(a)には、パイロット式電磁弁の閉弁状態が示されている。閉弁状態では、プランジャ本体122がバネ114によって付勢されて、プランジャ本体122の端面が、弁体132に設けられたリリーフ通路136を塞いだ状態となっている。また、背圧室116と流入室142とは、オリフィス通路138によって連通しているので、オリフィス通路138を経由して流入室142から背圧室116に液体が流入して、背圧室116内の液圧と流入室142の液圧とは等しくなっている。もっとも、ダイアフラム部130(弁体132およびダイアフラム134)には、背圧室116側からはほぼ全面に液圧が加わるのに対して、流入室142側からは、流入室142に面した部分にのみ液圧が加わり、流出ニップル144の部分からは液圧が加わらない。このため、ダイアフラム部130は背圧室116側からの方が大きな力を受けることになり、ダイアフラム部130は、弁体132が流出ニップル144に当接する方向に変形する。その結果、ダイアフラム部130の弁体132が、流出ニップル144の端面に押し付けられた状態(すなわち、パイロット式電磁弁が閉弁した状態)となる。
【0030】
図2(b)には、パイロット式電磁弁を開弁させる様子が示されている。パイロット式電磁弁を開弁させるに際しては、電磁コイル112に通電してプランジャ本体122を引き上げる。すると、プランジャ本体122の端面によって塞がれていたリリーフ通路136が背圧室116に開口した状態となり、背圧室116内の液体が、リリーフ通路136を介して流出ニップル144内に流出する。その結果、背圧室116内の液圧が次第に低下していき、流入室142から受ける力によってダイアフラム134が上方(背圧室116側)に押し上げられて、パイロット式電磁弁が開弁した状態となる。
【0031】
尚、背圧室116は、オリフィス通路138を介して流入室142と連通しているので、背圧室116の液圧が低下すると、流入室142の液体がオリフィス通路138を介して背圧室116に流入しようとする。しかし、オリフィス通路138の内径は、リリーフ通路136の内径よりも小さいので、オリフィス通路138から流入する流量よりもリリーフ通路136から流出する流量の方が大きくなっている。その結果、リリーフ通路136が開口すると背圧室116の液圧が低下していき、やがてダイアフラム134が押し上げられてパイロット式電磁弁が開弁することになる。
【0032】
図2(c)には、パイロット式電磁弁が開弁した状態が示されている。図示した状態では、流入室142の液圧によってダイアフラム134が押し上げられた結果、弁体132が流出ニップル144から離間して、流出ニップル144が開放された状態となっている。このため、流入通路148から供給された液体は、一旦、流入室142に流入した後、流出ニップル144を経由して、流出通路146へと流出することが可能となる。尚、図2(c)に示した破線の矢印は、流入通路148から、流入室142、流出ニップル144を経由して流出通路146へと流れる液体の動きを表している。
【0033】
図2(d)には、パイロット式電磁弁を閉弁させる様子が示されている。パイロット式電磁弁を閉弁させるに際しては、電磁コイル112への通電を停止する。すると、プランジャ本体122がバネ114によって押し戻されて弁体132に押し付けられ、その結果、弁体132に設けられたリリーフ通路136が、プランジャ本体122の端面で塞がれた状態となる。また、パイロット式電磁弁の開弁中は、背圧室116の液圧が低下している。このため、オリフィス通路138を介して、流入室142から背圧室116へと液体が流入して、次第に背圧室116の液圧が上昇していく。その結果、押し上げられていたダイアフラム134が元の形状に戻っていき、それに伴って、弁体132が流出ニップル144の端面に近付いていく。そして、最終的には、弁体132が流出ニップル144の端面に当接して、図2(a)に示したように、パイロット式電磁弁が閉弁した状態となる。尚、図2(d)には、オリフィス通路138を介して流入室142から背圧室116へと液体が流入する様子が、細い破線の矢印によって示されている。また、パイロット式電磁弁が閉弁して、背圧室116の液圧が流入室142の液圧に等しくなると、このような液体の流れは消滅する。
【0034】
以上に説明したように、パイロット式電磁弁は、リリーフ通路136が閉鎖されると、流入室142内の液体がオリフィス通路138を介して背圧室116に流入することによって閉弁状態となり(図2(a)参照)、リリーフ通路136が開放されると、背圧室116内の液体がリリーフ通路136から流出して開弁状態となる(図2(c)参照)。従って、オリフィス通路138が異物などによって詰まると、流入室142から背圧室116に液体を流入させることができなくなって、パイロット式電磁弁を閉弁させることができなくなる。また、オリフィス通路138を介して流入室142から背圧室116に液体を供給する必要があるのは、図2(d)に示したように、パイロット式電磁弁を閉弁させる場合だけである。そこで、第1実施例のパイロット式電磁弁100は、パイロット式電磁弁の開弁時および開弁中は、オリフィス通路138を閉鎖してしまう。こうすることにより、オリフィス通路138が異物によって目詰まりすることを、ほぼ払拭することが可能となり、その結果、パイロット式電磁弁100を安定して動作させることが可能となっている。以下、この点について詳しく説明する。
【0035】
A−3.第1実施例のパイロット式電磁弁の動作 :
図3は、第1実施例のパイロット式電磁弁100の動作を示した説明図である。尚、図3では、図示が煩雑となることを避けるために、ダイアフラム134については図示が省略されている。図3(a)には、閉弁状態にあるパイロット式電磁弁100が示されている。図2(a)を用いて前述した一般的なパイロット式電磁弁と同様に、第1実施例のパイロット式電磁弁100においても、プランジャ本体122はバネ114によって弁体132に押し付けられた状態となっており、弁体132のリリーフ通路136は、プランジャ本体122の端面に設けられた座面128によって塞がれている。
【0036】
また、クリーニングピン124の基端側はプランジャ本体122に接続されているから、プランジャ本体122が弁体132に押し付けられる動きに伴って、クリーニングピン124もオリフィス通路138内を移動する。その結果、クリーニングピン124の先端に設けられた閉鎖部材126は、図3(a)に示されるように、オリフィス通路138の開口部分から離れた位置に存在している。ここで、クリーニングピン124の軸径は、オリフィス通路138の内径よりも小さい値に設定されている。このため、図3(a)に示したように、クリーニングピン124の先端に設けられた閉鎖部材126がオリフィス通路138の開口部分から離れた位置にある状態では、流入室142と背圧室116とがオリフィス通路138を介して連通した状態にある。
【0037】
しかし、パイロット式電磁弁100の閉弁状態では、流入通路148から流入室142に液体が流入しないので、流入室142の液体はほとんど静止した(流れのない)状態となっている。加えて、図2を用いて前述したように、パイロット式電磁弁100の閉弁状態では、オリフィス通路138を介して流入室142から背圧室116に液体が流入することもない。このため、パイロット式電磁弁100が閉弁状態にある間は、流入室142と背圧室116とがオリフィス通路138を介して連通した状態になっていても、流入室142からオリフィス通路138内に異物が入り込む虞はない。
【0038】
図3(b)には、パイロット式電磁弁100を開弁状態とするために、プランジャ本体122を引き上げた直後の様子が示されている。図2(b)を用いて前述したように、プランジャ本体122が引き上げられると、プランジャ本体122の端面に設けられた座面128が弁体132から離間して、リリーフ通路136が背圧室116に開口した状態となる。その結果、図中に破線の矢印で示したように、背圧室116からリリーフ通路136へと液体が流出し、やがて弁体132が流出ニップル144の端面から離間して、パイロット式電磁弁100が開弁状態となる。
【0039】
また、プランジャ本体122が引き上げられる動きに伴って、クリーニングピン124もオリフィス通路138を移動し、クリーニングピン124の先端に設けられた閉鎖部材126が弁体132に当接する。その結果、図3(b)に示されるように、オリフィス通路138は閉鎖部材126によって塞がれた状態となる。ここで、図2(b)を用いて前述したように、プランジャ本体122を引き上げてリリーフ通路136を開放した直後は、流入室142から背圧室116に向かって液体がオリフィス通路138を流れようとする。従って、従来のパイロット式電磁弁では、パイロット式電磁弁が開弁する前であっても、この流れに乗って異物が入り込み、オリフィス通路138を目詰まりさせることが起こり得る。
【0040】
しかし、第1実施例のパイロット式電磁弁100では、プランジャ本体122を引き上げてリリーフ通路136を開放した直後から、クリーニングピン124の先端の閉鎖部材126によってオリフィス通路138が閉鎖される。このため、パイロット式電磁弁100の開弁前に、流入室142から背圧室116に流入しようとする液体と共に異物が入り込み、オリフィス通路138を目詰まりさせる事態は生じない。
【0041】
図3(c)には、パイロット式電磁弁100が開弁状態となった様子が示されている。図示されるように、パイロット式電磁弁100が開弁状態になると、弁体132の下面側に設けられた座面139が流出ニップル144の端面から離間し、流出ニップル144が開放されて、流入室142から勢い良く液体が流入する。図中には、流入室142から流出ニップル144に向かって液体が流れる様子が、破線の矢印によって表されている。また、このような液体の流れに伴って流入通路148から流入室142に液体が流入し、流入室142には液体の強い流れが発生する。従って、従来のパイロット式電磁弁のようにオリフィス通路138が流入室142に開口していると、液体の流れに巻き上げられた異物がオリフィス通路138に入り込む可能性がある。更に、パイロット式電磁弁の構造上、オリフィス通路138は、弁体132と流出ニップル144の端面とが当接する箇所の比較的近くに設けられることが多く、そして流出ニップル144の端面は、開弁状態になると液体の流れが集中する箇所である。このため、より一層、オリフィス通路138に異物が入り込み易くなっている。
【0042】
しかし、第1実施例のパイロット式電磁弁100では、図3(c)に示されるように、開弁状態ではプランジャ本体122が引き上げられて、クリーニングピン124の先端の閉鎖部材126によってオリフィス通路138が閉鎖されている。このため、パイロット式電磁弁100が開弁した状態で、液体の流れによって巻き上げられた異物がオリフィス通路138内に入り込んで、オリフィス通路138を目詰まりさせる事態を確実に回避することが可能である。
【0043】
以上に説明したように、第1実施例のパイロット式電磁弁100では、オリフィス通路138を貫通して、先端に閉鎖部材126が設けられたクリーニングピン124の基端側をプランジャ本体122に取り付けておき、プランジャ本体122を引き上げることによって、閉鎖部材126でオリフィス通路138が塞がれる構造となっている。このため、パイロット式電磁弁100の開弁時や、パイロット式電磁弁100の開弁中に、オリフィス通路138に異物が入り込む虞を完全に払拭することが可能となる。また、図3(a)を用いて前述したように、パイロット式電磁弁100が閉弁状態にあるときは、オリフィス通路138が閉鎖部材126によって塞がれてはいないが、閉弁中は、流入室142やオリフィス通路138には液体の流れが存在しないので、オリフィス通路138に異物が入り込む虞はない。加えて、仮に異物が入り込んだとしても、クリーニングピン124はプランジャ本体122に接続されて、プランジャ本体122と共に電磁コイル112で引き上げられるので、クリーニングピン124によって異物を排除することができる。以上の理由から、第1実施例のパイロット式電磁弁100では、オリフィス通路138に異物が目詰まりすることを、ほぼ完全に払拭することが可能となっているのである。
【0044】
また、上述した第1実施例のパイロット式電磁弁100では、開弁動作が迅速化するという効果も得ることができる。これは次のような理由によるものである。先ず、電磁コイル112に通電してプランジャ本体122を引き上げると、プランジャ本体122と共にクリーニングピン124も引き上げられて、先端の閉鎖部材126が弁体132の下面に当接する。その結果、弁体132には、電磁コイル112によって、流出ニップル144の端面に当接した状態から持ち上げようとする力が働くことになる。
【0045】
加えて、クリーニングピン124が引き上げられると、閉鎖部材126がオリフィス通路138を閉鎖するので、背圧室116の液圧が低下しても、流入室142から背圧室116に液体が流入しなくなる。その結果、開弁時に背圧室116の液圧が速やかに低下する。図2を用いて前述したように、パイロット式電磁弁は、流入室142と背圧室116との圧力差によって開弁状態となるから、背圧室116の液圧が速やかに低下すれば、パイロット式電磁弁100も速やかに開弁する。
【0046】
結局、第1実施例のパイロット式電磁弁100では、電磁コイル112でプランジャ本体122を引き上げる力が、弁体132を引き上げる方向(電磁弁を開弁させる方向)に弁体132に働く効果と、閉鎖部材126がオリフィス通路138を閉鎖することで背圧室116の液圧が速やかに低下する効果とが相俟って、たとえ液体の圧力が低い環境においても、速やかに開弁させることが可能となる。
【0047】
また、パイロット式電磁弁100を速やかに開弁させるこれらの効果は、閉弁時には働かない。従って、開弁時には速やかに開弁しながら、閉弁時にはゆっくりと閉弁するような動作特性を実現することができる。このため、第1実施例のパイロット式電磁弁100は、たとえ液体の圧力が高い環境で使用した場合でも、急激に電磁弁が閉弁して、いわゆる水撃現象(ウォーターハンマー)による問題は、発生し難くなっている。
【0048】
尚、上述したように、第1実施例のパイロット式電磁弁100では、電磁コイル112でプランジャ本体122を引き上げる力は、クリーニングピン124の閉鎖部材126を介して弁体132に伝達される。従って、複数のクリーニングピン124を設けるのであれば、弁体132が閉鎖部材126から受ける力が均等になるように、クリーニングピン124(従って、オリフィス通路138)を配置しておくことが望ましい。例えば、図1に示したように、3つのクリーニングピン124を設けるのであれば、弁体132の中心から、約120度(=360度/3)の間隔で、尚且つ、中心からほぼ等距離となる位置に、クリーニングピン124(オリフィス通路138)を設けることが望ましい。
【0049】
こうすれば、パイロット式電磁弁100の開弁時に、閉鎖部材126からの力で弁体132が傾いた状態で開弁することがなく、閉弁時に流出ニップル144の端面に対するアタリが変わって閉弁不良が発生することがない。もっとも、図1に示したように、弁体132は周囲をダイアフラム134によって保持されているので、たとえクリーニングピン124を一箇所に設けた場合でも、実際上は、こうした不都合はほとんど生じないが、複数箇所にクリーニングピン124を設けるのであれば、上述した配置とすることで、こうした不都合が発生する虞を完全に払拭することが可能となる。
【0050】
また、図1に示されるように、第1実施例のパイロット式電磁弁100では、プランジャ本体122から伸びるクリーニングピン124が、弁体132に設けられたオリフィス通路138を貫通しているために、プランジャ本体122と弁体132との相対位置が、プランジャ本体122の軸方向にしか変化し得ない構造となっている。そして、この構造は、液体の圧力が高い環境で使用されるパイロット式電磁弁100として、以下のような大きな利点を発揮する。
【0051】
先ず、パイロット式電磁弁100の主弁(弁体132の座面139と、流出ニップル144とによって構成)は、ダイアフラム部130(弁体132およびダイアフラム134)が流入室142から受ける力と、背圧室116から受ける力との差によって閉鎖状態となる。従って、液体圧力が高くなるほど主弁を閉弁させる力も大きくなるので、背圧室116から液体が漏れない限り、主弁から液体が漏れ出すことはない。これに対して、パイロット式電磁弁100の副弁(プランジャ本体122の座面128と、弁体132のリリーフ通路136とによって構成)は、プランジャ本体122を付勢するバネ114の力によって閉鎖されているだけで、液体の圧力を積極的に利用しているわけではない。このため、液体の圧力が高くなるほどシール状態を保つことが困難となる。
【0052】
この点で、第1実施例のパイロット式電磁弁100では、弁体132が、プランジャ本体122の軸方向に沿って接近したり離間したりするだけであり、プランジャ本体122と弁体132とが相対的に回転したり、あるいは弁体132がプランジャ本体122に横ズレしたりすることがない。このため、パイロット式電磁弁100の副弁では、プランジャ本体122の座面128と、弁体132のリリーフ通路136とが、常に同じアタリ状態で閉弁するので、たとえ液体の圧力が高くなっても、僅かなアタリ状態の変化によってシール不良が発生して背圧室116の液体が漏れ出すことがない。その結果、第1実施例のパイロット式電磁弁100では、液体の圧力が高い環境下においても副弁でのシール性能を良好に保つことができ、結局、主弁の高いシール性能を実現することが可能となる。
【0053】
尚、上述した第1実施例のパイロット式電磁弁100は、一般的なパイロット式電磁弁にも設けられている主弁(弁体132と流出ニップル144とによって形成)と、副弁(プランジャ本体122とリリーフ通路136とによって形成)とに加えて、クリーニングピン124の先端の閉鎖部材126と、オリフィス通路138との間に形成される第3の弁構造を追加して、この第3の弁構造を開閉させる方式のパイロット式電磁弁と把握することも可能である。しかし、上述した説明から明らかなように、第1実施例のパイロット式電磁弁100では、プランジャ本体122を開閉させる動作で第3の弁構造も開閉させることができるので、第3の弁構造が追加されているにも拘わらず、パイロット式電磁弁100を駆動する制御は何ら複雑になることがない。
【0054】
また、上述した第1実施例のパイロット式電磁弁100では、弁体132のオリフィス通路138の内径が、通路全体に亘って同じであるものとして説明した。しかし、オリフィス通路138の入口側(流入室142の側)の内径を小さくし、出口側(背圧室116の側)の内径を大きくしてもよい。
【0055】
図4は、オリフィス通路138の内径を異ならせた第1実施例の他の態様のパイロット式電磁弁100を示した説明図である。例えば、図4(a)に示したように、末広がり形状で通路内径が広がるようにオリフィス通路138を形成しても良いし、あるいは図4(b)に示したように、段付き形状で通路内径が広がるようにオリフィス通路138を形成しても良い。図2を用いて前述したパイロット式電磁弁の動作原理から明らかなように、オリフィス通路138では、流入室142の側から背圧室116の側へと液体が流れていく。従って、オリフィス通路138の出口側(背圧室116の側)の内径を大きくしておけば、たとえオリフィス通路138に異物が入り込んだ場合でも、液体の流れによって異物をオリフィス通路138から排出することが可能となる。
【0056】
B.第2実施例 :
以上に説明した第1実施例のパイロット式電磁弁100では、オリフィス通路138を貫通するクリーニングピン124の先端に閉鎖部材126を設けておき、プランジャ本体122を引き上げる動きで閉鎖部材126を引き上げることによって、オリフィス通路138を閉鎖するものとして説明した。しかし、パイロット式電磁弁100が開弁状態となったときにオリフィス通路138を閉鎖することができるのであれば、どのようなメカニズムによって閉鎖しても構わない。以下では、パイロット式電磁弁100が開弁状態となったときの液体の流れを利用して、オリフィス通路138を閉鎖する第2実施例のパイロット式電磁弁100について説明する。
【0057】
図5は、第2実施例のパイロット式電磁弁100が、オリフィス通路138を閉鎖する動作を示す説明図である。図5(a)には、第2実施例のパイロット式電磁弁100の閉弁状態が示されており、図5(b)には、開弁状態が示されている。図5(a)に示されるように、第2実施例のパイロット式電磁弁100では、オリフィス通路138の入口側(流入室142の側)に、液体の出入りが自在に形成されたカゴ状の容器232が取り付けられており、この容器232の中に、小さなボール状の閉鎖部材230が収容されている。また、閉鎖部材230は、液体の比重よりも僅かに重くなるように形成されている。このため、パイロット式電磁弁100が閉弁状態にあるとき(すなわち、流入室142内に液体の流れがないとき)は、図5(a)に示すように、閉鎖部材230は容器232の底に沈んでいる。この状態では、オリフィス通路138は開放されている。
【0058】
図5(b)には、第2実施例のパイロット式電磁弁100が開弁した状態が示されている。パイロット式電磁弁100が開弁状態になると、弁体132の座面139が流出ニップル144の端面から離間して、開放された流出ニップル144の端面に向けて、流入室142から液体が流れ込む。図中では、液体の流れが破線の矢印によって示されている。オリフィス通路138は流出ニップル144の端面の近くに設けられているので、この液体の流れの一部は容器232の中を通過する。すると、容器232の底に沈んでいた閉鎖部材230が、流れに押しのけられるようにして、オリフィス通路138の開口部に当接し、その結果、図5(b)に示したように、オリフィス通路138が閉鎖された状態となる。
【0059】
このように、第2実施例のパイロット式電磁弁100では、開弁状態になると、液体の流れを利用してオリフィス通路138を閉鎖することが可能となる。また、パイロット式電磁弁100の閉弁状態では、オリフィス通路138は閉鎖されていないが、閉弁状態では、オリフィス通路138を液体が通過せず、流入室142にも液体の流れは生じない。そして、パイロット式電磁弁100は、ほとんどの場合が開弁状態または閉弁状態の何れかにある。従って、第2実施例のパイロット式電磁弁100においても、開弁中にオリフィス通路138を閉鎖することで、オリフィス通路138が異物で目詰まりすることを大幅に抑制することが可能となる。
【0060】
尚、以上では、オリフィス通路138の入口側に取り付けられた容器232の中を、ボール状の閉鎖部材230が液体の流れで移動することによって、オリフィス通路138を閉鎖するものとして説明した。しかし、液体の流れを利用してオリフィス通路138を閉鎖する方法は、このような方法に限られるわけではなく、他の方法を採用することも可能である。例えば、オリフィス通路138の入口側に取り付けられた扉状の部材が、液体の流れによって閉じるようにすることで、オリフィス通路138を閉鎖するようにしても良い。
【0061】
図6は、第2実施例の他の態様のパイロット式電磁弁100が、オリフィス通路138を閉鎖する動作を示す説明図である。図6(a)には、第2実施例の他の態様のパイロット式電磁弁100の閉弁状態が示されており、図6(b)には、開弁状態が示されている。図6(a)に示されるように、第2実施例の他の態様のパイロット式電磁弁100では、オリフィス通路138の入口側(流入室142の側)に、扉状の閉鎖部材234が取り付けられている。また、閉鎖部材234は、流出ニップル144から遠い側の端部で弁体132に軸支されている。更に、この閉鎖部材234も、液体の比重よりも僅かに重くなるように形成されている。このため、パイロット式電磁弁100が閉弁状態にあるとき(すなわち、流入室142内に液体の流れがないとき)は、図6(a)に示すように、閉鎖部材234は自重によって垂れ下がり、半分開いた状態となっている。この状態では、オリフィス通路138は開放されている。
【0062】
図6(b)には、第2実施例の他の態様のパイロット式電磁弁100が開弁した状態が示されている。また、図中には、開弁に伴って生じる液体の流れが破線の矢印によって示されている。前述したようにオリフィス通路138は、流出ニップル144の端面の近くに設けられており、また、閉鎖部材234は流出ニップル144から遠い側で軸支されているので、パイロット式電磁弁100の開弁によって開放された流出ニップル144の端面に向かって液体の流れが生じると、その流れに押されるようにして閉鎖部材234が回転し、その結果、図6(b)に示したように、オリフィス通路138を閉鎖する。このように、第2実施例の他の態様のパイロット式電磁弁100においても、開弁状態では液体の流れを利用してオリフィス通路138を閉鎖することで、オリフィス通路138が異物で目詰まりすることを大幅に抑制することが可能となる。
【0063】
C.変形例 :
以上に説明した第1実施例および第2実施例では、下部ケース140に円環形状の流入室142が設けられ、その中心位置に流出ニップル144が設けられているものとして説明した。従って、液体は流入通路148から一旦、流入室142に流入した後、パイロット式電磁弁100が開弁状態になると、流入室142から、中央に設けられた流出ニップル144を介して流出通路146に流出することになる。しかし、本発明は、このような構造以外のパイロット式電磁弁に対しても適用することが可能である。以下では、このような変形例のパイロット式電磁弁500について簡単に説明する。
【0064】
図7は、変形例のパイロット式電磁弁500の詳細な構造を示した断面図である。図示したパイロット式電磁弁500は、図1を用いて前述した第1実施例のパイロット式電磁弁100に対して、流入通路148と流出通路146とが入れ替わった状態となっている。すなわち、下部ケース540の中央に流入ニップル544が立設されており、この流入ニップル544に流入通路148が接続されている。また、流入ニップル544の周囲には、円環形状の流出室542が形成されており、流出室542は流出通路146に接続されている。これに対応して、変形例の弁体532には、中心の位置にオリフィス通路138が設けられており、中心から離れた位置にリリーフ通路136が設けられている。また、リリーフ通路136に対向する位置にはプランジャ本体122が設けられ、オリフィス通路138を貫通するクリーニングピン124の基端側は、プランジャ本体122に接続されている。その他の点については、図1を用いて前述した第1実施例のパイロット式電磁弁100と同様であるため、図1(b)と同じ符番を付すこととして、詳細な説明は省略する。
【0065】
図7に示した変形例のパイロット式電磁弁500においても、電磁コイル112に通電していない状態では、バネ114によってプランジャ本体122が弁体532に押し付けられて、リリーフ通路136が閉鎖されている。このため、オリフィス通路138を介して背圧室116に液体が流れ込み、その結果、ダイアフラム部130が押し下げられてパイロット式電磁弁500が閉弁状態となる。この状態から、電磁コイル112に通電してプランジャ本体122を引き上げると、リリーフ通路136が開口すると共に、クリーニングピン124の先端に設けられた閉鎖部材126がオリフィス通路138を閉鎖する。その結果、前述した第1実施例のパイロット式電磁弁100と同様に、オリフィス通路138に異物が入り込んで目詰まりさせる虞を回避することができる。
【0066】
また、パイロット式電磁弁500の開弁中も、オリフィス通路138が閉鎖部材126に塞がれた状態に保たれるので、異物が入り込んでオリフィス通路138を目詰まりさせる虞がない。このため、変形例のパイロット式電磁弁500においても、前述した第1実施例のパイロット式電磁弁100と同様に、オリフィス通路138が異物で目詰まりすることを、ほぼ完全に回避することが可能となる。
【0067】
以上、各種のパイロット式電磁弁について説明したが、本発明は上記すべての実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
100…パイロット式電磁弁、 110…上部ケース、 112…電磁コイル、
114…バネ、 116…背圧室、 120…プランジャ部、
122…プランジャ本体、 124…クリーニングピン、 126…閉鎖部材、
128…座面、 130…ダイアフラム部、 132…弁体、
134…ダイアフラム、 136…リリーフ通路、 138…オリフィス通路、
139…座面、 140…下部ケース、 142…流入室、
144…流出ニップル、 146…流出通路、 148…流入通路、
230…閉鎖部材、 232…容器、 234…閉鎖部材、
500…パイロット式電磁弁、 532…弁体、 540…下部ケース、
542…流出室、 544…流入ニップル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアフラムと、
該ダイアフラムに向かって液体が流入する側の通路である流入通路と、
液体が流出する側の通路である流出通路と、
前記流入通路に連通する流入側空間と、前記流出通路に連通する流出側空間との間に形成された隔壁と、
前記ダイアフラムに設けられて前記隔壁との間で主弁を構成するとともに、該隔壁に当接することで、前記流入側空間と前記流出側空間との連通が切断された閉弁状態とし、該隔壁から離間することで、該流入側空間と該流出側空間とが連通した開弁状態とする弁体と、
前記ダイアフラムの背面側に形成された背圧室と、
前記流入側空間から前記背圧室に前記液体を導入することにより、該背圧室内の圧力を上昇させるオリフィスと、
前記背圧室に設けられた副弁を開弁して該背圧室の圧力を開放することで、前記主弁を開弁状態とし、該副弁を閉弁して該背圧室の圧力を保持することで前記主弁を閉弁状態とする副弁駆動手段と
を備えるパイロット式電磁弁において、
前記主弁が開弁状態にある場合には前記オリフィスを閉鎖するオリフィス閉鎖部材を備えることを特徴とするパイロット式電磁弁。
【請求項2】
請求項1に記載のパイロット式電磁弁において、
前記オリフィス閉鎖部材は、前記オリフィスが前記流入側空間に開口する側で、該オリフィスを閉鎖する部材であることを特徴とするパイロット式電磁弁。
【請求項3】
請求項2に記載のパイロット式電磁弁において、
前記オリフィス閉鎖部材は、前記オリフィスを貫通するクリーニングピンと一体に設けられており、
前記副弁駆動手段が、前記副弁を開弁させる動作によって前記クリーニングピンを軸方向に移動させると、前記オリフィス閉鎖部材によって前記オリフィスが閉鎖されることを特徴とするパイロット式電磁弁。
【請求項4】
請求項2に記載のパイロット式電磁弁において、
前記オリフィス閉鎖部材は、前記主弁が前記開弁状態の時に、前記流入側空間に生じる液体の流れによって前記オリフィスの開口部分に押し付けられることにより、該オリフィスを閉鎖する部材であることを特徴とするパイロット式電磁弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−252541(P2011−252541A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126521(P2010−126521)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】