説明

パクリタキセル、パクリタキセル類似体またはパクリタキセルコンジュゲートの医薬組成物ならびに関連する調製方法および使用方法

本発明は、Cremophor(商標)を含まない疎水性薬剤パクリタキセル、パクリタキセル類似体およびそのコンジュゲート(例えば、ANG1005)にとって有用な医薬組成物に関する。この組成物はさらに、任意の等張化剤、緩衝化剤、増量剤およびCremophor(商標)ではない可溶化剤を含む。前記組成物を調製する方法および癌の治療における前記組成物の使用方法も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パクリタキセルおよびパクリタキセル類似体、またはそのコンジュゲート、ならびに他の疎水性薬剤の製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶液中での不溶性のため、パクリタキセルおよびパクリタキセル類似体などの疎水性薬剤は、患者に投与する前に水溶液中での溶解性を増加させるために、典型的には、非水性バッファーもしくは界面活性バッファーに溶解するか、または親水性部分に結合させる。パクリタキセルは、それぞれ1 mlが6 mgのパクリタキセル、527 mgの精製Cremophor(登録商標)EL (ポリオキシエチル化カストル油)および49.7%(v/v)の無水アルコール、USPおよびエタノールを含む製剤中で商業的に供給されている。投与前に、製剤化されたパクリタキセルを塩化ナトリウム/デキストロースまたはリンゲル液中のデキストロース中に希釈する。Cremophorは過敏性(例えば、アナフィラキシー)反応を引き起こすことがあるため、パクリタキセルを受容する患者にデキサメタゾンを予備投与して、これらの反応の発生を減少させる。これらの反応のため、パクリタキセルを4時間にわたって投与して、過敏性効果を最小化する。
【0003】
標準的なパクリタキセル製剤中へのCremophorの含有に起因する高率の副作用のため、代替的な製剤が作製された。これらの製剤はパクリタキセルと可溶性化合物との結合に依存する。アブラキサンは、パクリタキセルがアルブミンに結合したパクリタキセル製剤である。リポソームパクリタキセル製剤も提唱されている。
【0004】
パクリタキセルなどの存在する疎水性薬剤の製剤は望ましくない賦形剤を含有するか、または製造するのが困難であり得るため、そのような薬剤の新規製剤が必要である。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様において、本発明は、(a)疎水性薬剤、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、または(i)ポリペプチドベクター;および(ii)パクリタキセルおよびパクリタキセル類似体からなる群より選択される治療剤であって、ポリペプチド、もしくは本明細書に記載の任意の疎水性薬剤にコンジュゲートされた前記治療剤を含有するコンジュゲート(例えば、ANG1005);(b)必要に応じた等張化剤(例えば、塩化ナトリウムもしくは本明細書に記載の任意の等張化剤);(c)緩衝化剤(例えば、グリシン、乳酸、もしくはクエン酸、または本明細書に記載の任意の緩衝化剤);(d)増量剤(例えば、マンニトール、ソルビトール、もしくは本明細書に記載の任意の増量剤);ならびに(e)可溶化剤(例えば、Solutol HS 15などの脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、もしくは本明細書に記載の任意の可溶化剤)、例えば、Cremophorではない可溶化剤を含む組成物を特徴とする。前記ポリペプチドベクターは、配列番号1〜105および107〜116(例えば、AngioPep-1(配列番号67);AngioPep-2(配列番号97)、またはAngioPep-7(配列番号112))からなる群より選択されるアミノ酸配列と実質的に同一である(例えば、少なくとも70%、80%、90%、95%、もしくは100%同一である)アミノ酸配列を含んでもよい。特定の実施形態においては、緩衝化剤は、溶液のpHを6未満(例えば、pH 4-6)に維持する。特定の実施形態においては、前記組成物はさらに、0.01〜10%(例えば、8%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.75%、0.5%、0.2%、もしくは0.1%未満)のDMSOを含む。特定の実施形態においては、前記組成物はCremophorを実質的に含まない(例えば、Cremophorを含まない)。前記組成物を水中に溶解することができる。
【0006】
特定の実施形態においては、前記組成物は表1〜4のいずれかに示される量の薬剤を含む。
【表1】

【0007】
【表2】

【0008】
【表3】

【0009】
【表4】

【0010】
これらの組成物中では、存在する場合、等張化剤は塩化ナトリウムであってよく、緩衝化剤はグリシン、乳酸、もしくはクエン酸であってよく、および/または増量剤はマンニトールであってよい。前記組成物を、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、3.0%、3.2%、3.5%、4.0%、もしくは5.0%、または任意のこれらの値の間の範囲のANG1005を含んでもよい。ANG1005を、十分な量のSolutol HS 15、および/またはDMSOに溶解し、これをさらに水溶液中に希釈してもよい。
【0011】
上記組成物は、密閉されていてもよい容器中に存在してもよい。この容器は使用のための(例えば、本明細書に記載のものなどの任意の疾患の治療のための組成物を投与するための)説明書をさらに含むキットの一部であってよい。
【0012】
別の態様においては、本発明は、上記態様の組成物を、疾患、例えば、癌(例えば、卵巣癌、脳の癌、肺癌、肝臓癌、脾臓の癌もしくは腎臓癌)などの本明細書に記載の任意の疾患を罹患する患者に投与する方法を特徴とする。この方法は、前記患者に、前記疾患を治療するか、または予防的に治療するのに十分な量の前記組成物を投与することを含む。特定の実施形態においては、前記癌は、グリオブラストーマ、アストロサイトーマ、グリオーマ、髄芽細胞腫、ならびにオリゴデンドローマ、ニューログリオーマ、上衣細胞腫、および髄膜腫からなる群より選択される脳の癌である。
【0013】
別の態様においては、本発明は、医薬組成物を調製する方法を特徴とする。この方法は、(a)第1の可溶化剤(例えば、DMSOもしくは本明細書に記載の任意のそのような薬剤)中に疎水性薬剤を溶解して、混合物を形成させること;(b)第2の可溶化剤(例えば、Solutol HS 15などの脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、もしくは本明細書に記載の任意のそのような薬剤)を工程(a)の混合物に添加すること;(c)必要に応じて、水および緩衝化剤を混合物に添加すること;(d)工程(c)の混合物を凍結乾燥することを含み、凍結乾燥が第1の可溶化剤の量の少なくとも5%(例えば、10%、20%、30%、50%、75%、90%、95%、もしくは99%)の減少(例えば、凍結乾燥生成物の総重量の0.2%、0.4%、0.6%、0.8%、1.0%、1.5%、2%、3%、4%、5%、8%未満の最終比率への減少)をもたらす。特定の実施形態においては、凍結乾燥は第2の可溶化剤の量を実質的に減少させない。特定の実施形態においては、疎水性薬剤はパクリタキセルまたはパクリタキセル類似体を含む。疎水性薬剤は、(a)ポリペプチドベクターおよび(b)本明細書に記載の薬剤(例えば、パクリタキセルおよびその類似体)を含むか、またはそれらを含むコンジュゲートであってよい。ポリペプチドベクターは、配列番号1〜105および107〜116(例えば、AngioPep-1(配列番号67);AngioPep-2(配列番号97)、またはAngioPep-7(配列番号112))からなる群より選択されるアミノ酸配列と実質的に同一であってよい。特定の実施形態においては、前記コンジュゲートはANG1005である。特定の実施形態においては、水と緩衝化剤を工程(c)において添加し、工程(d)の凍結乾燥は、(i)混合物を凍結すること;(ii)水の少なくとも一部(例えば、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、99.5%、99.9%、もしくは99.99%)を除去するのに十分な第1の温度および圧力で凍結した生成物を乾燥すること;ならびに(iii)第1の溶媒の少なくとも一部(例えば、少なくとも5%(例えば、10%、20%、30%、50%、75%、90%、95%、もしくは99%))を除去するのに十分な第2の温度および圧力で生成物を乾燥することを含む。工程(b)の混合物を工程(c)の凍結乾燥の前に濾過するか、または工程(c)の凍結乾燥の前にバイアルもしくは容器中に入れてもよい。前記方法はさらに、(c)凍結乾燥された生成物を再懸濁することを含んでもよい。
【0014】
別の態様においては、本発明は、工程(a)ポリペプチドベクターにコンジュゲートされたパクリタキセルもしくはパクリタキセル類似体を含むコンジュゲートをDMSO中に溶解することにより、混合物を形成させること;(b)この混合物にSolutol HS 15を添加すること;(c)水、緩衝化剤、および必要に応じて、塩もしくは増量剤を混合物に添加すること;ならびに(d)混合物から水とDMSOを除去する条件下で混合物を凍結乾燥することを含む、医薬組成物を製造する方法を特徴とする。Solutol HS 15を、水、緩衝化剤、および必要に応じて等張化剤もしくは増量剤と混合した後、前記混合物に添加し、ここで、水、緩衝化剤、および必要に応じて等張化剤を、混合物中でのコンジュゲートの溶解性を維持する量で添加する。緩衝化剤は、溶液のpHを4〜6に維持してもよい。工程(a)の溶解の前に、DMSOをpH 3.5〜4.5に酸性化することができる。特定の実施形態においては、凍結乾燥は混合物中のSolutol HS 15の量を実質的に減少させない。コンジュゲートは、本明細書に記載の任意のポリペプチド(例えば、AngioPep-2)を含んでもよい。特定の実施形態においては、パクリタキセル-ポリペプチドコンジュゲートはANG1005である。
【0015】
別の態様においては、本発明は、上記方法のいずれかにより製造された医薬組成物を特徴とする。
【0016】
「緩衝化剤」とは、さもなければpHを変化させることができる薬剤の添加の際に、特定の範囲内に溶液のpHを維持することができる(例えば、pH 2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、および13.5のいずれか)、任意の化合物または化合物群を意味する。緩衝化剤の例は本明細書に記載されている。
【0017】
「等張化剤」とは、水溶液の浸透圧(オスモル濃度)を変化させる(例えば、10、20、50、75、100、150、200、250、300、400、500、750、1000、1500、もしくは2000 mMのいずれか、またはその間の任意の範囲)、任意の薬剤を意味する。塩化ナトリウムなどのイオン性塩を用いて、等張性を調整することができる。さらなる等張化剤は本明細書に記載されている。
【0018】
「増量剤」とは、脱水または凍結乾燥手順後の化学的組成物の物理的形態を変化させる化合物を意味する。増量剤の例は本明細書に記載されている。
【0019】
「可溶化剤」とは、特定の化合物(例えば、パクリタキセルもしくはパクリタキセル類似体を含む化合物またはコンジュゲートなどの疎水性化合物)を溶解させることができる任意の溶媒を意味する。疎水性化合物にとって好適な可溶化剤の例は本明細書に記載されている。
【0020】
「ベクター」とは、特定の細胞型(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、もしくは筋肉)中に輸送されるか、またはBBBを通過することができるポリペプチドなどの化合物または分子を意味する。このベクターを、薬剤に結合させる(共有的であっても、なくてもよい)か、またはコンジュゲートさせ、それによって該薬剤を特定の細胞型に輸送するか、またはBBBを通過させることができる。特定の実施形態においては、前記ベクターは該細胞または脳の内皮細胞上に存在する受容体に結合し、それによって癌細胞中に輸送するか、またはトランスサイトーシスによりBBBを通過させることができる。前記ベクターは、細胞またはBBBの完全性に影響することなく、高レベルの経皮内輸送が得られる分子であってよい。このベクターは、ポリペプチドまたはペプチド模倣物質であってよく、天然のものであるか、または化学的合成もしくは組換え遺伝子技術により製造することができる。
【0021】
「コンジュゲート」とは、薬剤に連結されたベクターを意味する。コンジュゲーションは、リンカーを介するものなど、化学的性質のものであるか、または例えば、リポーター分子(例えば、緑色蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、Histagなど)との融合タンパク質などにおける、組換え遺伝子技術による遺伝的性質のものであってよい。
【0022】
「特定の細胞型に効率的に輸送される」ベクターまたはコンジュゲートとは、対照物質よりも、またはコンジュゲートの場合、コンジュゲートしていない薬剤と比較して、少なくとも10%(例えば、25%、50%、100%、200%、500%、1,000%、5,000%、もしくは10,000%)高い程度でその細胞型に蓄積する(例えば、細胞中への輸送の増加、細胞からの流出の減少、またはその組合せ)ことができるベクターまたはコンジュゲートを意味する。
【0023】
「実質的に純粋」または「単離された」とは、他の化学的成分から分離された化合物(例えば、ポリペプチドまたはコンジュゲート)を意味する。典型的には、前記化合物は、それが他の成分を少なくとも30重量%含まない場合、実質的に純粋である。特定の実施形態においては、前記調製物は、他の成分を少なくとも50重量%、60重量%、75重量%、85重量%、90重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、または99重量%含まない。精製されたポリペプチドを、例えば、そのようなポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドの発現によるか、またはポリペプチドを化学的に合成することにより取得することができる。任意の好適な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析により、純度を測定することができる。
【0024】
ある物質を「実質的に含まない」医薬組成物とは、組成物中のある物質の量が、組成物の乾燥重量の少なくとも5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.3%、0.2%、0.1%、0.05%、または0.01%未満であることを意味する。
【0025】
「実質的に同一である」とは、参照アミノ酸または核酸配列に対して、少なくとも35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、85%、90%、95%、またはさらには99%の同一性を示すポリペプチドまたは核酸を意味する。ポリペプチドについては、比較配列の長さは、一般的には、少なくとも4個(例えば、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、50、もしくは100個)のアミノ酸であろう。核酸については、比較配列の長さは、一般的には、少なくとも60ヌクレオチド、好ましくは、少なくとも90ヌクレオチド、およびより好ましくは、少なくとも120ヌクレオチド、または完全長であろう。本明細書では、元のポリペプチドのアミノ酸と同一であるか、または類似する類似体のアミノ酸の間にギャップが認められてもよいことが理解されるべきである。このギャップはアミノ酸を含まなくてもよく、元のポリペプチドと同一でないか、または類似しない1個以上のアミノ酸を含んでもよい。本発明のベクター(ポリペプチド)の生物学的に活性な類似体も本発明に包含される。同一性(%)を、例えば、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0中のnアルゴリズムGAP、BESTFIT、またはFASTAをデフォルトギャップ長を用いて決定することができる。
【0026】
「断片」とは、元の配列もしくは親配列の一部または前記親配列の類似体を起源とするポリペプチドを意味する。断片は、アミノ末端(N-末端)、カルボキシ末端(C-末端)、またはタンパク質の内部を起源とする、1個以上のアミノ酸のトランケーションを有するポリペプチドを包含する。断片は、元の配列の対応する部分と同じ配列を含んでもよい。本明細書に記載のベクター(ポリペプチド)の機能的断片が本発明により包含される。断片は、少なくとも5個(例えば、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、25、28、30、35、40、45、50、60、75、100または150個)のアミノ酸であってよい。本発明の断片は、例えば、7、8、9または10アミノ酸から18アミノ酸のポリペプチドを含んでもよい。断片は、本明細書に記載の任意の改変(例えば、アセチル化、アミド化、アミノ酸置換)を含んでもよい。
【0027】
「非天然アミノ酸」は、哺乳動物中では天然に産生されないか、または認められないアミノ酸である。
【0028】
「薬剤」とは、例えば、抗体、または治療剤、マーカー、トレーサー、または画像化化合物などの任意の化合物を意味する。
【0029】
「治療剤」とは、生物学的活性を有する薬剤を意味する。いくつかの場合、治療剤を用いて、疾患、肉体的もしくは精神的状態、損傷、または感染の兆候を治療し、そのような治療剤としては、抗癌剤、抗生物質、抗血管形成剤、および中枢神経系のレベルで活性な分子が挙げられる。
【0030】
「小分子薬剤」とは、1000 g/mol以下(例えば、800、600、500、400、または200 g/mol未満)の分子量を有する薬剤を意味する。
【0031】
「被験体」とは、ヒトまたは非ヒト動物(例えば、哺乳動物)を意味する。
【0032】
被験体における疾患、障害、または症状を「治療すること」とは、被験体に治療剤を投与することにより疾患、障害、または症状の少なくとも1個の兆候を軽減させることを意味する。
【0033】
被験体における疾患、障害、または症状を「予防的に治療すること」とは、被験体に治療剤を投与することにより疾患、障害または症状の発生の頻度を低下させること(例えば、防止すること)を意味する。
【0034】
「癌」とは、独特の特徴が、無秩序な増殖、分化の欠如、または組織を侵襲し、転移する能力をもたらし得る、正常な制御の喪失である任意の細胞増殖を意味する。癌は任意の組織または任意の器官に発生し得る。癌は、限定されるものではないが、脳、肝臓、肺、腎臓、または脾臓の癌を含むと意図される。さらなる癌は本明細書に記載されている。
【0035】
「投与すること」および「投与」とは、限定されるものではないが、経口、動脈内、鼻内、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、経皮または経口などの送達様式を意味する。日用量を、好適な形態の1、2回以上の用量に分割し、一定期間にわたって1、2回以上投与することができる。
【0036】
「治療上有効な」または「有効量」とは、治療しようとする疾患または症状の任意の兆候を改善し、減少させ、防止し、遅延させ、抑制し、または停止させるのに十分な治療剤の量を意味する。治療上有効量の薬剤は、疾患もしくは症状を治癒させる必要はないが、個体における疾患もしくは症状の開始が遅延し、妨害されるか、もしくは防止されるか、または疾患もしくは症状の兆候が改善するか、または疾患もしくは症状の期間が変化するか、もしくは例えば、あまり重篤でなくなるか、または回復が加速されるような、疾患もしくは症状の治療をもたらすであろう。
【0037】
特定の特性(例えば、温度、濃度、時間など)に関して「範囲」または「物質群」に言及する場合、本発明は、ありとあらゆる特定の数およびその中のサブ範囲もしくはサブ群の組合せに関し、それを明確に包含する。かくして、例えば、9〜18アミノ酸長に関しては、ありとあらゆる個々の長さ、例えば、18、17、15、10、9、およびその間の任意の数の長さを具体的に包含すると理解されるべきである。従って、具体的に言及しない限り、本明細書で言及される全ての範囲は、包括的なものであると理解されるべきである。例えば、5〜19アミノ酸長という表現においては、5と19を含むものとされるべきである。これは、配列、長さ、濃度、エレメントなどの他のパラメーターに関しても同様に適用される。
【0038】
本明細書で定義される配列、領域、部分はそれぞれ、それにより記載されるありとあらゆる個々の配列、領域、および部分、ならびにサブ配列、サブ領域、およびサブ部分が特定の可能性を積極的に含み、特定の可能性を排除するか、またはその組合せであると定義される、ありとあらゆる可能なサブ配列、サブ領域、およびサブ配列を含む。例えば、領域に関する排他的な定義は、以下のように読むことができる:但し、前記ポリペプチドは4、5、6、7、8または9アミノ酸よりも短くない。負の限定のさらなる例は以下の通りである:配列番号Yのポリペプチドを除く、配列番号Xを含む配列など。負の限定のさらなる例は以下の通りである:但し、前記ポリペプチドは配列番号Zではない(配列番号Zを含まない、または配列番号Zからならない)。
【0039】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】ANG1005を含む医薬組成物を調製するための例示的方法の図式である。
【図2】長時間にわたる臨床使用の条件下でD5W中で1.0 mg/mlに希釈し、再構成された注射用ANG1005のHPLCプロフィールを示すグラフである。
【図3】2.0 mg/mLでサンプルから回収され、約6時間保存され、DMSO中に溶解された遠心分離された沈殿物のHPLCプロフィールを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明者らは、パクリタキセルおよびパクリタキセル類似体、またはそのコンジュゲート(例えば、ANG1005)を含有する疎水性治療剤にとって有用な医薬製剤ならびにそのような製剤を含む医薬組成物を作製し、投与する方法を開発した。疎水性治療剤(例えば、パクリタキセル)は、疎水性溶媒中に溶解することが多い(そして実際、それを必要とすることが多い)。パクリタキセルのために一般的に用いられる溶媒としては、CremophorおよびDMSOが挙げられるが、患者によってあまり許容されないことがある。Cremophorは、特に、アナフィラキシー反応を引き起こすことがあり、かくして、コルチコステロイドなどの薬剤による予備処理が必要である。そのような許容性の低い溶媒を用いるのを避けるために、本発明者らは、例示的なポリペプチド-パクリタキセルコンジュゲートであるANG1005のための新規製剤を開発した。本明細書に記載される製剤は、それらをCremophorを用いずに製造することができ、最小のDMSO濃度を含むように調製することができ、活性薬剤の低い分解および高い活性をもたらし、ならびに従来の方法を用いて製造することができるという点で有利である。許容性の低い賦形剤を含まない組成物を、より高い用量で患者に投与し、より迅速に投与し(例えば、静脈内投与の場合)、より頻繁に投与するか、またはそのような賦形剤に対する許容性を増加させるための薬剤(例えば、コルチコステロイド)による予備処理の必要性を回避することができる。
【0042】
ANG1005のための製剤の開発
例示的な疎水性薬剤、ANG1005の新規製剤の開発において、本発明者らはまず、様々な溶媒および溶媒の組合せ中でのその溶解度を試験した。実施例1に概略されるように、パクリタキセルに関して、ANG1005は水溶液中での溶解度は低いが、DMSO中での溶解度は高い(120 mg/ml)。ANG1005はまた、75℃のエタノールを含むSolutol HS 15 (BASF, Parsippany, N.J.)中でも可溶性であった(6 mg/ml)。その低い毒性および薬剤との適合性のため、Solutol HS 15を可溶化剤として選択した。しかしながら、Solutol HS 15そのものへの溶解は、ANG1005の有意な分解をもたらした。ANG1005を溶解させるために、Solutol HS 15を少なくとも65℃に加熱した。さらに、本発明者らは、緩衝化されていないSolutolを25℃〜50℃に加熱することにより、そのpHが6.0〜9.0に上昇することに留意した。かくして、高い温度と高いpHの組合せは同様に、これらの条件下でのANG1005の不安定性の観察に寄与する。
【0043】
過剰の分解を回避するために、まずはANG1005を酸性化されたDMSO(pH 3.5-4.0)に溶解した後、50℃のSolutolを添加した(実施例2を参照)。ANG1005をさらに安定化するために、本発明者らは、ANG1005の可溶性を維持する、pH 5.0のグリシンバッファーと予め混合することにより、Solutol HS 15を酸性化した。そうすることにより、ANG1005の分解が最小化される。最大で20%(例えば、1%、5%、10%、または15%)の前記バッファーをSolutolに添加した後、ANG1005の可溶性に影響することなくANG1005を添加することができるが、それより多い量のバッファーとSolutolを混合した場合、可溶化が不完全になることがある。
【0044】
ANG1005の安定性を確保するために、前記製剤を、グリシンを用いてpH 5に緩衝化された水溶液中に希釈したが、本発明者らは、ANG1005がpH 6以上でますます不安定になることを観察した。酢酸、およびリン酸などの、このpH範囲の他のバッファーを評価したが、これらのバッファーは前記製剤との適合性が低かった。本発明者らはまた、最終的なpHを4に低下させることによりANG1005を安定化することを試みたが、得られた凍結乾燥ケーキは透明な溶液を再構成しなかった。
【0045】
ANG1005組成物の例を以下の表5に提供する。
【表5】

【0046】
また、増量剤を添加して、凍結乾燥生成物の再構成を容易にした。マンニトールとソルビトールの両方を含む製剤を評価した。マンニトールにより優れたケーキが得られた。
【0047】
凍結乾燥
DMSO/Solutol/バッファー調製物は望ましくない高レベルのDMSOを含み、十分に安定ではなかったため、DMSOを減少させ、ANG1005の安定性を増加させるように設計された凍結乾燥プロトコルを開発した。いくつかの代替的な凍結乾燥サイクルを評価して、DMSO含量を最小化させた(すなわち、2回目の乾燥の温度および長さを増加させる;実施例3を参照)。凍結乾燥条件を、以下で詳細に説明する。1回目の凍結乾燥プロトコルを試みたところ、この手順により1%を超えるDMSO濃度が得られた。この手順の詳細を表6に示す。
【表6】

【0048】
本発明者らは、最適化された2段階の乾燥手順を用いることにより、DMSO濃度を1%未満までさらに低下させることができた。簡単に述べると、生成物の凍結後、棚温度で、かつ生成物から多くの水を除去するのに十分な時間、凍結乾燥を実行する。棚温度を上昇させ、生成物をDMSOの除去にとって好適な温度で乾燥する。正確な条件は、乾燥しようとするサンプルの容量、用いる圧力および温度、ならびに用いる製剤およびバッファーに応じて変化するであろう。本明細書に記載の手順に基づいて、当業者であれば本明細書に記載の組成物を作製するための好適な乾燥条件を決定することができるであろう。
【0049】
1つの例示的な手順においては、前記製剤を-70〜+25℃(例えば、-40℃)の温度でローディングする。次いで、この温度を、溶液を凍結させるのに十分な設定温度(-40℃などの、0〜-70℃の任意の温度)に傾斜させ、生成物を凍結させるのに十分な時間、および好ましくは、凍結乾燥ケーキが崩壊しないことを確保するのに十分な時間、温度をその温度に保持する。本発明者らは、-40℃で、少なくとも12時間(例えば、少なくとも15、18、20、24、36、または48時間)の凍結時間が、ケーキが崩壊しないことを確保するために必要であると決定した。凍結後、初回乾燥サイクルのために生成物から水を除去するのに十分な圧力(例えば、10〜500 mT、例えば、20、50、100、200、または500 mT)および温度(例えば、-15〜-35℃、例えば、-25℃)に減圧乾燥器を設定した。この目的のために、結果として10〜100 mTの圧力を最小の変動と共に試験した。乾燥時間は、生成物中に存在する水の実質的な部分(例えば、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.9%)を除去するのに十分な時間(例えば、少なくとも6時間、12時間、1日、2日、4日、6日、8日、10日、または14日)であってよい。初回乾燥サイクルの後、DMSOを除去するための2回目の乾燥サイクルを実施した。生成物を10〜30℃(例えば、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27℃)のより高い温度に傾斜させて、DMSOを除去した。好ましい実施形態においては、棚温度を2時間にわたって27℃に傾斜させた後、1時間、27℃に保持する。次いで、棚温度を30分間にわたって23〜27℃に傾斜させ(または維持する)、次いで、その温度で少なくともさらに10時間(例えば、少なくとも15、20、25、30、40、48、60、または72時間)保持する。残留したDMSOが融解するのを防止するために、生成物を25℃未満で保持してもよい。この方法に関するプロトコルの例を表7に示す。凍結乾燥を、Hull Freezer Dryer, Model 72FS100-SS20Cを用いて実施した。
【表7】

【0050】
生成物の再構成
患者への注射または生成物の実験室分析の前に、凍結乾燥生成物を再構成することができる。再構成にとって好適な任意のバッファー、溶媒、またはバッファーと溶媒の組合せを用いることができる;正確なバッファーは重要ではない。しかしながら、活性薬剤が溶液中で十分に安定であり、用いられるバッファーまたは溶媒が患者への投与のための溶液中で患者によって十分に良好に許容されることが望ましいことが多い。ANG1005の場合、生成物は6.0を超えるpHでは安定性が低いため、一般的には6.0以下のpHを維持する再構成溶媒/バッファー系を用いるのが望ましい。ANG1005にとって、1つの好ましい溶媒系は、エタノールと乳酸加リンゲル液/5%デキストロースの組合せである。この系においては、生成物を含むバイアルにエタノールを添加し、穏やかに混合した後、乳酸加リンゲル液/5%デキストロースを添加して生成物を溶解する。希釈剤としての従来の注射用の水(WFI)または塩水の使用により高いpHレベルが得られ、ANG1005の分解を誘導する。溶解後、混合物を水または他のバッファー系中にさらに希釈することができる。凍結乾燥生成物の再構成のための条件を、以下の実施例4にさらに記載する。
【0051】
製剤組成物
上記のように、本発明者らは、患者への投与にとって好適な、疎水性薬剤の例であるANG1005の製剤を開発した。凍結乾燥の前に、前記製剤は、特定の実施形態において、有意な割合のDMSOを含む。そのような組成物は、表8Aおよび8Bに示されるような以下の成分(例えば、乾燥重量)を有してもよい。表8Cは、凍結乾燥の前の水溶液中の様々な成分の例示的濃度を示す。
【表8A】

【0052】
【表8B】

【0053】
【表8C】

【0054】
典型的には、前記組成物を凍結乾燥の前に水中に希釈する(凍結乾燥条件に関しては以下を参照)。多くの臨床用途について、ANG1005の単回用量投与のための好適な量に溶液を分割する(例えば、約10、20、30、60、90、120、150、200、240、300、400、または500 mg)。凍結乾燥後(例えば、本明細書に記載の条件下での)、DMSO濃度を有意に低下させることができる。凍結乾燥後、本発明のANG1005組成物は、表9に示されるような以下の特徴(例えば、乾燥重量)を有してもよい。
【表9】

【0055】
疎水性薬剤
任意の疎水性薬剤を、本発明の組成物および方法において用いることができる。化合物の例を以下に記載する。
【0056】
パクリタキセルおよび関連化合物
本発明を、AngioPep2-パクリタキセルコンジュゲートであるANG1005を用いて例示してきたが、本明細書に記載される製剤を、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、またはそのコンジュゲートと共に用いることができる。パクリタキセルは、式:
【化1】

【0057】
を有する。
【0058】
パクリタキセルの構造類似体は、米国特許第6,911,549号に記載されており、式:
【化2】

【0059】
[式中、R1は、-CH3; -C6H5、または1、2もしくは3個のC1-C4アルキル、C1-C3アルコキシ、ハロ、C1-C3アルキルチオ、トリフルオロメチル、C2-C6ジアルキルアミノ、ヒドロキシル、もしくはニトロで置換されたフェニル; および2-フリル、2-チエニル、1-ナフチル、2-ナフチルもしくは3,4-メチレンジオキシフェニルからなる群より選択され; R2は、-H、-NHC(O)H、-NHC(O)C1-C10アルキル(好ましくは、-NHC(O)C4-C6アルキル)、-NHC(O)フェニル、1、2、もしくは3個のC1-C4アルキル、C1-C3アルコキシ、ハロ、C1-C3アルキルチオ、トリフルオロメチル、C2-C6ジアルキルアミノ、ヒドロキシもしくはニトロで置換された-NHC(O)フェニル、-NHC(O)C(CH3)=CHCH3、-NHC(O)OC(CH3)3、-NHC(O)OCH2フェニル、-NH2、-NHSO2-4-メチルフェニル、-NHC(O)(CH2)3COOH、-NHC(O)-4-(SO3H)フェニル、-OH、-NHC(O)-1-アダマンチル、-NHC(O)O-3-テトラヒドロフラニル、-NHC(O)O-4-テトラヒドロピラニル、-NHC(O)CH2C(CH3)3、-NHC(O)C(CH3)3、-NHC(O)OC1-C10アルキル、-NHC(O)NHC1-C10アルキル、-NHC(O)NHPh、1、2、もしくは3個のC1-C4アルキル、C1-C3アルコキシ、ハロ、C1-C3アルキルチオ、トリフルオロメチル、C2-C6ジアルキルアミノ、もしくはニトロで置換された-NHC(O)NHPh、-NHC(O)C3-C8シクロアルキル、-NHC(O)C(CH2CH3)2CH3、-NHC(O)C(CH3)2CH2Cl、-NHC(O)C(CH3)2CH2CH3、フタルイミド、-NHC(O)-1-フェニル-1-シクロペンチル、-NHC(O)-1-メチル-1-シクロヘキシル、-NHC(S)NHC(CH3)3、-NHC(O)NHCC(CH3)3または-NHC(O)NHPhからなる群より選択され; R3は、-H、-NHC(O)フェニルまたは-NHC(O)OC(CH3)3からなる群より選択されるが、但し、全体として、R2およびR3の一方は-Hであるが、R2およびR3は両方とも-Hではなく; R4は、-Hであるか、または-OH、-OAc(-OC(O)CH3)、-OC(O)OCH2C(Cl)3、-OCOCH2CH2NH3+HCOO-、-NHC(O)フェニル、-NHC(O)OC(CH3)3、-OCOCH2CH2COOHおよび製薬上許容し得るその塩、-OCO(CH2)3COOHおよび製薬上許容し得るその塩、ならびに-OC(O)-Z-C(O)-R’ [式中、Zはエチレン(-CH2CH2-)、プロピレン(-CH2CH2CH2-)、-CH=CH-、1,2-シクロヘキサンもしくは1,2-フェニレンであり、R’は-OH、-OH塩基、-NR’2R’3、-OR’3、-SR’3、-OCH2C(O)NR’4R’5(式中、R’2は-Hもしくは-CH3であり、R’3は-(CH2)nNR’6R’7もしくは(CH2)nN+R’6R’7R’8X-(式中、nは1-3である)であり、R’4は-Hもしくは-C1-C4アルキルであり、R’5は-H、-C1-C4アルキル、ベンジル、ヒドロキシエチル、-CH2CO2Hもしくはジメチルアミノエチル、R’6およびR’7は-CH3、-CH2CH3、ベンジルであるか、またはR’6およびR’7はNR’6R’7の窒素と一緒になってピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、もしくはN-メチルピペリジノ基を形成し; R’8は-CH3、-CH2CH3もしくはベンジルであり、X-はハロゲン化物であり、ならびに塩基はNH3、(HOC2H4)3N、N(CH3)3、CH3N(C2H4)2NH、NH2(CH2)6NH2、N-メチルグルカミン、NaOHもしくはKOHである]、-OC(O)(CH2)n NR2R3 [式中、nは1-3であり、R2は-Hもしくは-C1-C3アルキルであり、R3は-Hもしくは-C1-C3アルキルである]、-OC(O)CH(R”)NH2 [式中、R”は-H、-CH3、-CH2CH(CH3)2、-CH(CH3)CH2CH3、-CH(CH3)2、-CH2フェニル、-(CH2)4NH2、-CH2CH2COOH、-(CH2)3NHC(=NH)NH2からなる群より選択される]、アミノ酸プロリンの残基、-OC(O)CH=CH2、-C(O)CH2CH2C(O)NHCH2CH2SO3-Y+、-OC(O)CH2CH2C(O)NHCH2CH2CH2SO3-Y+(式中、Y+はNa+もしくはN+(Bu)4である)、-OC(O)CH2CH2C(O)OCH2CH2OHからなる群より選択され; R5は、-Hもしくは-OHであるが、但し、全体として、R5が-OHである場合、R4は-Hであり、さらに但し、R5が-Hである場合、R4は-Hではなく; R6は、R7がα-R71:β-R72(式中、R71およびR72の一方は-Hであり、R71およびR72の他方は-X(式中、Xはハロであり、R8 は-CH3である)である)である場合、-H:-Hである; R6は、R7がα-H:β-R74(式中、R74およびR8は一緒になってシクロプロピル環を形成する)である場合、-H:-Hであり; R10は、-Hもしくは-C(O)CH3である];ならびに前記化合物が酸性または塩基性の官能基を含む場合、製薬上許容し得るその塩により記載することができる。
【0060】
具体的なパクリタキセル類似体としては、((アジドフェニル)ウレイド)タキソイド、(2α,5α,7β,9α,10β,13α)-5,10,13,20-テトラアセトキシタキス-11-エン-2,7,9-トリオール、(2α,5α,9α,10β)-2,9,10-トリアセトキシ-5-((β-D-グルコピラノシル)オキシ)-3,11-シクロタキス-11-エン-13-オン、1β-ヒドロキシバッカチンI、1,7-ジヒドロキシタキシニン、1-アセチ-5,7,10-デアセチル-バッカチンI、1-デヒドロキシバッカチンVI、1-ヒドロキシ-2-デアセトキシ-5-デシナモイル-タキシニンj、1-ヒドロキシ-7,9-ジデアセチルバッカチンI、1-ヒドロキシバッカチン I、10-アセチル-4-デアセチルタキソテール、10-デアセトキシパクリタキセル、10-デアセチルバッカチンIIIジメチルスルホキシド二溶媒和物、10-デアセチル-10-(3-アミノベンゾイル)パクリタキセル、10-デアセチル-10-(7-(ジエチルアミノ)クマリン-3-カルボニル)パクリタキセル、10-デアセチル-9-ジヒドロタキソール、10-デアセチルバッカチンIII、10-デアセチルパクリタキセル、10-デアセチルタキシニン、10-デアセチルタキソール、10-デオキシ-10-C-モルホリノエチルドセタキセル、10-O-アセチル-2-O-(シクロヘキシルカルボニル)-2-デベンゾイルタキソテール、10-O-sec-アミノエチルドセタキセル、11-デスメチルラウリマリド、13-デオキソ-13-アセチルオキシ-7,9-ジアセチル-1,2-ジデオキシタキシン、13-デオキシバッカチンIII、14-ヒドロキシ-10-デアセチル-2-O-デベンゾイルバカチンIII、14-ヒドロキシ-10-デアセチルバッカチンIII、14β-ベンゾイルオキシ-13-デアセチルバッカチンIV、14β-ベンゾイルオキシ-2-デアセチルバッカチンVI、14β-ベンゾイルオキシバッカチンIV、19-ヒドロキシバッカチンIII、2’,2”-メチレンドセタキセル、2’,2”-メチレンパクリタキセル、2’-(バリル-レウシル-リシル-PABC)パクリタキセル、2’-アセチルタキソール、2’-O-アセチル-7-O-(N-(4’-フルオレセインカルボニル)アラニル)タキソール、2,10,13-トリアセトキシ-タキサ-4(20),11-ジエン-5,7,9-トリオール、2,20-O-ジアセチルタキスマイロールN、2-(4-アジドベンゾイル)タキソール、2-デアセトキシタキシニンJ、2-デベンゾイル-2-m-メトキシベンゾイル-7-トリエチルシリル-13-オキソ-14-ヒドロキシバッカチンIII 1,14-カルボナート、2-O-(シクロヘキシルカルボニル)-2-デベンゾイルバッカチンIII 13-O-(N-(シクロヘキシルカルボニル)-3-シクロヘキシルイソセリナート)、2α,7β,9α,10β,13α-ペンタアセトキシルタキサ-4 (20)、11-ジエン-5-オール、2α,5α,7β,9α,13α-ペンタヒドロキシ-10β-アセトキシタキサ-4(20),11-ジエン、2α,7β,9α,10β,13-ペンタアセトキシ-11β-ヒドロキシ-5α-(3’-N,N-ジメチルアミノ-3’-フェニル)-プロピオニルオキシタキサ-4(20),12-ジエン、2α,7β-ジアセトキシ-5α,10β,13β-トリヒドロキシ-2(3-20)アベオタキサ-4(20),11-ジエン-9-オン、2α,9α-ジヒドロキシ-10β,13α-ジアセトキシ-5α-(3’-メチルアミノ-3’-フェニル)-プロピオニルオキシタキサ-4(20),11-ジエン、2α-ヒドロキシ-7β,9α,10β,13α-テトラアセトキシ-5α-(2’-ヒドロキシ-3’-N,N-ジメチルアミノ-3’-フェニル)-プロピオニルオキシタキサ-4(20),11-ジエン、3’-(4-アジドベンズアミド)タキソール、3’-N-(4-ベンゾイルジヒドロシナモイル)-3’-N-デベンゾイルパクリタキセル、3’-N-m-アミノベンズアミド-3’-デベンズアミドパクリタキセル、3’-p-ヒドロキシパクリタキセル、3,11-シクロタキシニンNN-2、4-デアセチルタキソール、5,13-ジアセトキシ-タキサ-4(20),11-ジエン-9,10-ジオール、5-O-ベンゾイル化タキシニンK、5-O-フェニルプロピオニルオキシタキシニンA、5α,13α-ジアセトキシ-10β-シナモイルオキシ-4(20),11-タキサジエン-9α-オール、6,3’-p-ジヒドロキシパクリタキセル、6-α-ヒドロキシ-7-デオキシ-10-デアセチルバッカチン-III、6-フルオロ-10-アセチルドセタキセル、6-ヒドロキシタキソール、7,13-ジアセトキシ-5-シナミルオキシ-2(3-20)-アベオ-タキサ-4(20),11-ジエン-2,10-ジオール、7,9-ジデアセチルバッカチンVI、7-(5’-ビオチニルアミドプロパノイル)パクリタキセル、7-アセチルタキソール、7-デオキシ-10-デアセチルバッカチン-III、7-デオキシ-9-ジヒドロパクリタキセル、7-エピパクリタキセル、7-メチルチオメチルパクリタキセル、7-O-(4-ベンゾイルジヒドロシナモイル)パクリタキセル、7-O-(N-(4’-フルオレセインカルボニル)アラニル)タキソール、7-キシロシル-10-デアセチルタキソール、8,9-シングル-エポキシブレビフォリン、9-ジヒドロバッカチンIII、9-ジヒドロタキソール、9α-ヒドロキシ-2α,10β,13α-トリアセトキシ-5α-(3’-N,N-ジメチルアミノ-3’-フェニル)-プロピオニルオキシタキサ-4(20),11-ジエン、バッカチンIII、バッカチンIII 13-O-(N-ベンゾイル-3-シクロヘキシルイソセリナート)、BAY59、ベンゾイルタキソール、BMS 181339、BMS 185660、BMS 188797、ブレビフォリオール、ブチタキセル、セファロマニン、ダンタキスシンA、ダンタキスシンB、ダンタキスシンC、ダンタキスシンD、ジブロモ-10-デアセチルセファロマニン、DJ927、ドセタキセル、Flutax 2、グルタリルパクリタキセル 6-アミノヘキサノールグルクロニド、IDN 5109、IDN 5111、IDN 5127、IDN 5390、イソラウリマリド、ラウリマリド、MST 997、N-(パクリタキセル-2’-O-(2-アミノ)フェニルプロピオナート)-O-(β-グルクロニル)カルバメート、N-(パクリタキセル-2’-O-3,3-ジメチルブタノエート)-O-(β-グルクロニル)カルバメート、N-デベンゾイル-N-(3-(ジメチルアミノ)ベンゾイル)パクリタキセル、ノナタキセル、オクトレオチドコンジュゲートパクリタキセル、パクリタキセル、パクリタキセル-トランスフェリン、PNU 166945、ポリ(エチレングリコール)コンジュゲートパクリタキセル-2’-グリシナート、ポリグルタミン酸-パクリタキセル、プロタックス、プロタキセル、RPR 109881A、SB T-101187、SB T-1102、SB T-1213、SB T-1214、SB T-1250、SB T-12843、タスマトロールE、タスマトロールF、タスマトロールG、タキサ-4(20),11(12)-ジエン-5-イルアセテート、タキサ-4(20),11(12)-ジエン-5-オール、タキサン、タキスチニンN、タキスクルチン、タキセゾピジンM、タキセゾピジンN、タキシン、タキシニン、タキシニンA、タキシニンM、タキシニンNN-1、タキシニンNN-7、タキソールC-7-キシロース、タキソール-シアリルコンジュゲート、タキスマイロールA、タキスマイロールB、タキスマイロールG、タキスマイロールH、タキスマイロールI、タキスマイロールK、タキスマイロールM、タキスマイロールN、タキスマイロールO、タキスマイロールU、タキスマイロールV、タキスマイロールW、タキスマイロール-X、タキスマイロール-Y、タキスマイロール-Z、タキスシン、タキススピナナンA、タキススピナナンB、タキススピンC、タキススピンD、タキススピンF、タキスユナニンC、タキスユナニンS、タキスユナニンT、タキスユナニンU、タキスユナニンV、tRA-96023、およびワリフォリオールが挙げられる。他のパクリタキセル類似体としては、1-デオキシパクリタキセル、10-デアセトキシ-7-デオキシパクリタキセル、10-O-デアセチルパクリタキセル 10-モノスクシニルエステル、10-スクシニルパクリタキセル、12b-アセチルオキシ-2a,3,4,4a,5,6,9,10,11,12,12a,12b-ドデカヒドロ-4,11-ジヒドロキシ-12-(2,5-ジメトキシベンジルオキシ)-4a,8,13,13-テトラメチル-5-オキソ-7,11-メタノ-1H-シクロデカ(3,4)ベンズ(1,2-b)オキセト-9-イル 3-(tert-ブチルオキシカルボニル)アミノ-2-ヒドロキシ-5-メチル-4-ヘキサエノエート、130-nmアルブミン結合パクリタキセル、2’-パクリタキセルメチル2-グルコピラノシルスクシネート、3’-(4-アジドフェニル)-3’-デフェニルパクリタキセル、4-フルオロパクリタキセル、6,6,8-トリメチル-4,4a,5,6,7,7a,8,9-オクタヒドロシクロペンタ(4,5)シクロヘプタ(1,2-c)-フラン-4,8-ジオール 4-(N-アセチル-3-フェニルイソセリナート)、6,6,8-トリメチル-4,4a,5,6,7,7a,8,9-オクタヒドロシクロペンタ(4,5)シクロヘプタ(1,2-c)-フラン-4,8-ジオール4-(N-tert-ブトキシカルボニル-3-フェニルイソセリナート)、7-(3-メチル-3-ニトロソチオブチリル)パクリタキセル、7-デオキシパクリタキセル、7-スクシニルパクリタキセル、A-Z-CINN 310、AI-850、アルブミン結合パクリタキセル、AZ 10992、イソタキセル、MAC321、MBT-0206、NK105、Pacliex、パクリタキセルポリグルメックス、パクリタキセル-EC-1コンジュゲート、ポリラクトフェート、およびTXD 258が挙げられる。他のパクリタキセル類似体は、米国特許第4,814,470号、第4,857,653号、第4,942,184号、第4,924,011号、第4,924,012号、第4,960,790号、第5,015,744号、第5,157,049号、第5,059,699号、第5,136,060号、第4,876,399号、および第5,227,400号に記載されている。
【0061】
他の疎水性薬剤
他の疎水性薬剤としては、鎮痛剤および抗炎症剤(例えば、アロキシプリン、オーラノフィン、アザプロパゾン、ベノリレート、ジフルニサル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ナブメトン、ナプロキセン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク)、駆虫剤(例えば、アルベンダゾール、ヒドロキシナフトエ酸ベフェニウム、カンベンダゾール、ジクロロフェン、イベルメクチン、メベンダゾール、オキサムニキン、オキシフェンダゾール、オキサンテルエンボナート、プラジカンテル、ピランテルエンボナート、チアベンダゾール)、抗不整脈剤(例えば、アミオダロンHCl、ジイソピラミド、酢酸フレカイニド、硫酸キニジン)、抗細菌剤(例えば、ベネタミンペニシリン、シノキサシン、シプロフロキサシンHCl、クラリスロマイシン、クロファジミン、クロキサシリン、デメクロシクリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、エチオナミド、イミペネム、ナリジキシン酸、ニトロフラントイン、リファンピシン、スピラマイシン、スルファベンザミド、スルファドキシン、スルファメラジン、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファフラゾール、スルファメトキサゾール、スルファピリジン、テトラサイクリン、トリメトプリム)、抗凝固剤(例えば、ジクマロール、ジピリダモール、ニクマロン、フェニンジオン)、抗うつ剤(例えば、アモキサピン、マプロチリンHCl、ミアンセリンHCl、ノルトリプチリンHCl、トラゾドンHCl、マレイン酸トリミプラミン)、抗糖尿病剤(例えば、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリベンクラミド、グリクラジド、グリピジド、トラザミド、トルブタミド)、抗てんかん剤(例えば、ベクラミド、カルバマゼピン、クロナゼパム、エトトイン、メトイン、メトスクシミド、メチルフェノバルビトン、オキシカルバゼピン、パラメタジオン、フェナセミド、フェノバルビトン、フェニトイン、フェンスクシミド、プリミドン、スルチアム、バルプロ酸)、抗真菌剤(例えば、アンホテリシン、硝酸ブトコナゾール、クロトリマゾール、硝酸エコナゾール、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナタマイシン、ナイスタチン、硝酸スルコナゾール、テルビナフィンHCl、テルコナゾール、チオコナゾール、ウンデセン酸)、抗痛風剤(例えば、アロプリノール、プロベネシド、スルフィン-ピラゾン)、抗高血圧剤(例えば、アムロジピン、ベニジピン、ダロジピン、ジリタゼムHCl、ジアゾキシド、フェロジピン、酢酸グアナベンズ、イスラジピン、ミノキシジル、ニカルジピンHCl、ニフェジピン、ニモジピン、フェノキシベンザミンHCl、プラゾシンHCl、レセルピン、テラゾシンHCl)、抗マラリア剤(例えば、アモジアキン、クロロキン、クロルプログアニルHCl、ハロファントリンHCl、メフロキンHCl、プログアニルHCl、ピリメタミン、硫酸キニン)、抗片頭痛剤(例えば、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、酒石酸エルゴタミン、マレイン酸メチセルジド、マレイン酸ピゾチフェン、コハク酸スマトリプタン)、抗ムスカリン剤(例えば、アトロピン、ベンズヘキソールHCl、ビペリデン、エトプロパジンHCl、ヒヨスチアミン、メペンゾレートブロミド、オキシフェンシルシミンHCl、トロピカミド)、抗新生物剤および免疫抑制剤(例えば、アミノグルテチミド、アムサクリン、アザチオプリン、ブスルファン、クロラムブシル、シクロスポリン、ダカルバジン、エストラムスチン、エトポシド、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトタン、ミトザントロン、プロカルバジンHCl、クエン酸タモキシフェン、テストラクトン)、抗原虫剤(例えば、ベンズニダゾール、クリオキノール、デコキナート、ジヨードヒドロキシキノリン、フロ酸ジロキサニド、ジニトルミド、フルゾリドン、メトロニダゾール、ニモラゾール、ニトロフラゾン、オルニダゾール、チニダゾール)、抗甲状腺剤(例えば、カルビマゾール、プロピルチオウラシル)、精神安定剤、鎮静剤、睡眠剤および神経弛緩剤(例えば、アルプラゾラム、アミロバルビトン、バルビトン、ベンタゼパム、ブロマゼパム、ブロムペリドール、ブロチゾラム、ブトバルビトン、カルブロマル、クロルジアゼポキシド、クロルメチアゾール、クロルプロマジン、クロバザム、クロチアゼパム、クロザピン、ジアゼパム、ドロペリドール、エチナメート、フルナニゾン、フルニトラゼパム、フルオプロマジン、フルペンチキソールデカノエート、フルフェナジンデカノエート、フルラゼパム、ハロペリドール、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メダゼパム、メプロバメート、メタカロン、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、ペントバルビトン、ペルフェナジンピモジド、プロクロルペラジン、スルピリド、テマゼパム、チオリダジン、トリアゾラム、ゾピクロン)、β-遮断剤(例えば、アセブトロール、アルプレノロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、ナドロール、オキシプレノロール、ピンドロール、プロプラノロール)、強心剤(例えば、アムリノン、ジジトキシン、ジゴキシン、エノキシモン、ラナトシドC、メジゴキシン)、コルチコステロイド(例えば、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデゾニド、酢酸コルチゾン、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニゾリド、フルコルトロン、プロピオン酸フルチカゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン)、利尿剤(アセタゾラミド、アミロリド、ベンドロフルラジド、ブメタニド、クロロチアジド、クロルタリドン、エタクリン酸、フルセミド、メトラゾン、スピロノラクトン、トリアムテレン)、抗パーキンソン病剤(例えば、メシル酸ブロモクリプチン、マレイン酸リスリド)、胃腸剤(例えば、ビサコジル、シメチジン、シサプリド、ジフェノキシレートHCl、ドムペリドン、ファモチジン、ロペラミド、メサラジン、ニザチジン、オメプラゾール、オンダンセトロンHCl、ラニチジンHCl、スルファサラジン)、ヒスタミンH受容体アンタゴニスト(例えば、アクリバスチン、アステミゾール、シナリジン、シクリジン、シプロヘプタジンHCl、ジメンヒドリネート、フルナリジンHCl、ロラタジン、メクロジンHCl、オキサトミド、テルフェナジン)、脂質調節剤(例えば、ベザフィブレート、クロフィブレート、フェノフィブレート、ゲンフィブロジル、プロブコール)、硝酸エステルおよび他の抗狭心症剤(例えば、硝酸アミル、三硝酸グリセリン、二硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビド、四硝酸ペンタエリスリトール)、オピオイド鎮痛剤(例えば、コデイン、デキストロプロピオキシフェン、ジアモルフィン、ジヒドロコデイン、メプタジノール、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、ペンタゾシン)、性ホルモン(例えば、クエン酸クロミフェン、ダナゾール、エチニルエストラジオール、酢酸メドロキシプロゲステロン、メストラノール、メチルテストステロン、ノルエチステロン、ノルゲストレル、エストラジオール、コンジュゲート化エストロゲン、プロゲステロン、スタノゾロール、スチベストロール、テストステロン、チボロン)、ならびに興奮剤(例えば、アンフェタミン、デキサンフェタミン、デキスフェンフルラミン、フェンフルラミン、マジンドール)が挙げられる。
【0062】
ポリペプチドコンジュゲート
活性薬剤ポリペプチドを含むコンジュゲートを、本明細書に記載の製剤中で用いることができる。米国特許出願第2006/0182684号および第2006/0189515号、ならびに2007年12月20日に提出された米国特許仮出願第61/008,880号に記載のように、本発明者らはポリペプチド-薬剤コンジュゲートを開発した。そのようなコンジュゲートは、本明細書に記載の任意のポリペプチド、パクリタキセルまたはパクリタキセル類似体などの疎水性薬剤(例えば、本明細書に記載のもの)、およびリンカー(例えば、本明細書に記載のもの)を含んでもよい。パクリタキセルコンジュゲートの例はANG1005であり、これはN末端のエステル結合ならびに位置10および15のリジンを介して3個のパクリタキセル分子にコンジュゲートされたAngioPep-2ペプチド(配列番号97)を含む。ANG1005の構造は、
【化3】

【0063】
である。
【0064】
前記コンジュゲートは、特定の実施形態においては、血液脳関門(BBB)を横断することができるか、または肝臓、肺、腎臓、筋肉の細胞などの特定の細胞型に対して選択的に標的化することができるか、または腫瘍細胞(本明細書に記載の任意の細胞型のもの)に対して標的化することができる。これらのペプチドにコンジュゲートされたこれらの薬剤は、例えば、受容体を介するエンドサイトーシスにより(例えば、LRP受容体を介する)、標的化された細胞中への取込みの増加を示すことができる。コンジュゲートされた薬剤は、あるいは、またはさらに、安定性の増加または細胞からの排出(例えば、P-糖タンパク質を介する流出)の減少を示すことができる。
【0065】
ポリペプチド
本発明の組成物および方法は、本明細書に記載の任意のポリペプチド、例えば、表10に記載のポリペプチドのいずれか(例えば、配列番号1〜97、99、100、101、もしくは107〜112などの配列番号1〜105および107〜112のいずれかに定義されるポリペプチド)、またはその任意の断片、類似体、誘導体、もしくは変異体を含んでもよい。特定の実施形態においては、前記ポリペプチドは、本明細書に記載のポリペプチドに対して少なくとも35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはさらには100%の同一性を有してもよい。前記ポリペプチドは本明細書に記載の配列の1つと比較して、1個以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個)の置換を有してもよい。他の改変を以下により詳細に説明する。
【0066】
本発明はまた、これらのポリペプチドの断片(例えば、機能的断片)も特徴とする。特定の実施形態においては、前記断片は特定の細胞型(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、もしくは筋肉)に進入するか、もしくは蓄積することができるか、またはBBBを横断することができる。このポリペプチドのトランケーションは、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、またはその組合せに由来する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個以上のアミノ酸であってよい。他の断片としては、ポリペプチドの内部部分が欠失した配列が挙げられる。
【0067】
さらなるポリペプチドを、参照により本明細書に組み入れられるものとする米国特許出願公開第2006/0189515号に記載のアッセイもしくは方法の1つ、または当業界で公知の任意の方法を用いることにより同定することができる。例えば、候補ベクターを、Taxolとコンジュゲートさせた従来のポリペプチド合成により製造し、実験動物に投与することができる。生物学的に活性なベクターを、例えば、腫瘍細胞を注入され、コンジュゲートで処理されていない(例えば、コンジュゲートされていない薬剤で処理された)対照と比較した、コンジュゲートで処理された動物の生存率の増加に対するその効力に基づいて同定することができる。
【0068】
別の例においては、生物学的に活性なポリペプチドを、in situ脳かん流アッセイにおいて柔組織中のその位置に基づいて同定することができる。CELLIAL(商標)Technologiesにより開発されたモデルなどのin vitro BBBアッセイを用いて、そのようなベクターを同定することができる。
【0069】
他の組織中での蓄積を決定するためのアッセイを同様に実施することができる。ポリペプチドの標識されたコンジュゲートを動物に投与し、様々な器官中での蓄積を測定することができる。例えば、検出可能な標識(例えば、Cy5.5などの近赤外線蛍光分光標識)にコンジュゲートされたポリペプチドにより、生のin vivoでの可視化が可能になる。そのようなポリペプチドを動物に投与し、器官中のポリペプチドの存在を検出し、かくして所望の器官中でのポリペプチドの蓄積の速度および量を決定することができる。他の実施形態においては、前記ポリペプチドを、放射性アイソトープ(例えば、125I)で標識することができる。次いで、前記ポリペプチドを動物に投与する。一定時間の後、動物を犠牲にし、動物の器官を抽出する。次いで、それぞれの器官における放射性アイソトープの量を、当業界で公知の任意の手段を用いて測定することができる。標識された対照の量を含まない特定の器官における標識された候補ポリペプチドの量を比較することにより、特定の組織における候補ポリペプチドの能力、候補ポリペプチドの蓄積の速度または量を確認することができる。好適な陰性対照としては、特定の細胞型に輸送されないことが知られた任意のポリペプチドが挙げられる。
【表10】

【0070】

【0071】

【0072】

【0073】
Angiopep-1(配列番号67)およびAngiopep-2(配列番号97)のアミン基を、薬剤のコンジュゲーションのための部位として用いた。コンジュゲーション中のアミン基の役割およびこれらのベクターの全体の輸送能力におけるその影響を研究するために、Angiopep-1およびAngiopep-2配列に基づいて、可変的な反応性アミン基および可変的な全体の電荷を有する新しいベクターを設計した。これらのポリペプチドを表11に示す。
【表11】

【0074】
改変ポリペプチド
本発明の組成物および方法はまた、本明細書に記載のアミノ酸配列の改変を有するポリペプチド(例えば、AngioPep-3、-4a、-4b、-5、-6、または-7などの配列番号1〜105および107〜116のいずれか1つに記載の配列を有するポリペプチド)を含んでもよい。特定の実施形態においては、前記改変は所望の生物学的活性を有意に破壊しない。いくつかの実施形態においては、この改変は生物学的活性の低下(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、35%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、または95%)を引き起こしてもよい。他の実施形態においては、前記改変は、元のポリペプチドの生物学的活性に影響しないか、または生物学的活性を増加させることができる(例えば、少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、200%、500%、または100%)。改変ポリペプチドは、いくつかの例においては、必要であるか、または望ましい、本発明のポリペプチドの特徴のうちの1個以上を有するか、またはそれを最適化してもよい。そのような特徴としては、in vivoでの安定性、成体利用能、毒性、免疫学的活性、または免疫学的同一性が挙げられる。
【0075】
本発明において用いられるポリペプチドは、翻訳後プロセッシングなどの天然のプロセス、または当業界で公知の化学的改変技術により改変されたアミノ酸または配列を含んでもよい。改変は、ポリペプチド主鎖、アミノ酸側鎖およびアミノ末端またはカルボキシ末端などのポリペプチド中の任意の場所で行うことができる。同じ型の改変が、所与のポリペプチド中のいくつかの部位に、同じか、または変化する程度で存在してもよく、ポリペプチドは2種以上の型の改変を含んでもよい。ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分枝していてもよく、それらは分枝鎖を含むか、または含まない環状のものであってもよい。環状、分枝状、および分枝した環状のポリペプチドが翻訳後の天然プロセスの結果生じてもよく、またはそれを合成的に作製することができる。他の改変としては、ペグ化、アセチル化、アシル化、アセトミドメチル(Acm)基の付加、ADP-リボシル化、アルキル化、アミド化、ビオチン化、カルバモイル化、カルボキシエチル化、エステル化、フィアビンへの共有結合、ヘム部分への共有結合、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体の共有結合、薬剤の共有結合、マーカー(例えば、蛍光もしくは放射活性)の共有結合、脂質もしくは脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、糖鎖付加、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質溶解的プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化などのタンパク質へのアミノ酸の転移RNAを介する付加およびユビキチン化が挙げられる。
【0076】
改変ポリペプチドはさらに、ポリペプチド配列中に、保存的または非保存的(例えば、D-アミノ酸、デスアミノ酸)であってよいアミノ酸挿入、欠失、または置換を含んでもよい(例えば、そのような変化はポリペプチドの生物学的活性を実質的に変化させない)。
【0077】
置換は、保存的(すなわち、同じ一般型もしくは基の別のものにより残基を置換する)または非保存的(すなわち、別の型のアミノ酸により残基を置換する)であってよい。さらに、非天然アミノ酸は、天然アミノ酸の代わりになる(すなわち、非天然保存的アミノ酸置換または非天然非保存的アミノ酸置換)。
【0078】
合成的に作製されたポリペプチドは、DNAにより天然にコードされないアミノ酸の置換を含んでもよい(例えば、非天然または未天然アミノ酸)。非天然アミノ酸の例としては、D-アミノ酸、システインの硫黄原子に結合したアセチルアミノメチル基を有するアミノ酸、ペグ化アミノ酸、式NH2(CH2)nCOOH(式中、nは2〜6である)のωアミノ酸、中性の非極性アミノ酸、例えば、サルコシン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、およびノルロイシンが挙げられる。フェニルグリシンは、Trp、Tyr、またはPheの代わりになる;シトルリンおよびメチオニンスルホキシドは中性の非極性であり、システイン酸は酸性であり、オルニチンは塩基性である。プロリンを、ヒドロキシプロリンと置換することができ、これはコンフォメーションを付与する特性を保持している。
【0079】
置換的突然変異誘発により類似体を作製することができ、これは元のポリペプチドの生物学的活性を保持する。「保存的置換」として同定される置換の例を表12に示す。そのような置換が望ましくない変化をもたらす場合、表12中の「置換例」と命名された、またはアミノ酸クラスを参照して本明細書にさらに記載された他の型の置換を導入し、生成物をスクリーニングする。
【0080】
機能または免疫学的同一性の実質的な改変を、(a)例えば、シートまたはらせんコンフォメーションとしての、置換の領域中でのポリペプチド主鎖の構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさ高さの維持に対するその効果が有意に異なる置換を選択することにより達成する。天然の残基は、共通の側鎖特性に基づく群に分割される:
(1)疎水性:ノルロイシン、メチオニン(Met)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、ヒスチジン(His)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、
(2)中性親水性:システイン(Cys)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、
(3)酸性/負に荷電:アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、
(4)塩基性:アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg)
(5)鎖の向きに影響する残基:グリシン(Gly)、プロリン(Pro)、
(6)芳香族:トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、ヒスチジン(His)、
(7)極性:Ser、Thr、Asn、Gln、
(8)塩基性/正に荷電:Arg、Lys、His、および
(9)荷電:Asp、Glu、Arg、Lys、His。
【0081】
他の保存的アミノ酸置換を表3に列挙する。
【表12】

【0082】
さらなる類似体
本発明において用いられるポリペプチドおよびコンジュゲートは、当業界で公知のアプロチニンのポリペプチド類似体を含んでもよい。例えば、米国特許第5,807,980号は、ウシ膵臓トリプシン阻害因子(アプロチニン)由来阻害剤ならびに配列番号102のポリペプチドなどの、その調製および治療的使用のための方法を記載している。これらのポリペプチドを、異常な血栓形成などの組織因子および/または第VIIIa因子の異常な出現または量を特徴とする症状の治療に用いた。米国特許第5,780,265号は、配列番号103などの、血漿カリクレインを阻害することができるセリンプロテアーゼ阻害剤を記載している。米国特許第5,118,668号は、配列番号105などの、ウシ膵臓トリプシン阻害因子変異体を記載している。アプロチニンアミノ酸配列(配列番号98)、Angiopep-1アミノ酸配列(配列番号67)、および配列番号104、ならびに生物学的に活性な類似体のいくつかの配列を、国際特許出願公開第WO 2004/060403号に見出すことができる。
【0083】
アプロチニン類似体をコードするヌクレオチド配列の例を、配列番号106に例示する(atgagaccag atttctgcct cgagccgccg tacactgggc cctgcaaagc tcgtatcatc cgttacttct acaatgcaaa ggcaggcctg tgtcagacct tcgtatacgg cggctgcaga gctaagcgta acaacttcaa atccgcggaa gactgcatgc gtacttgcgg tggtgcttag; Genbankアクセッション番号X04666)。この配列は、配列番号98に認められるように、バリンの代わりに位置16にリジンをコードする。配列番号106のヌクレオチド配列中の突然変異を、当業界で公知の方法により導入して、生成物を、位置16にバリンを有する配列番号98のポリペプチドに変化させることができる。さらなる突然変異または断片を、当業界で公知の任意の技術を用いて取得することができる。
【0084】
アプロチニン類似体の他の例を、国際特許出願第PCT/CA2004/000011に開示された合成アプロチニン配列(またはその一部)を用いてタンパク質BLAST(Genebank: www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を実施することにより見出すことができる。アプロチニン類似体の例は、受託番号CAA37967(GI:58005)および1405218C(GI:3604747)の下で見出される。
【0085】
ポリペプチド誘導体およびペプチド模倣物質の調製
天然アミノ酸のみからなるポリペプチドに加えて、ペプチド模倣物質またはポリペプチド類似体も本発明において用いることができる。ポリペプチド類似体は、鋳型ポリペプチドのものと類似する特性を有する非ポリペプチド薬剤として製薬業界で一般的に用いられている。非ポリペプチド化合物は「ポリペプチド模倣物質」またはペプチド模倣物質と呼ばれる(Fauchereら、Infect. Immun. 54:283-287,1986; Evansら、J. Med. Chem. 30:1229-1239, 1987)。治療上有用なポリペプチドと構造的に関連するポリペプチド模倣物質を用いて、等価な、または増強された治療または予防効果をもたらすことができる。一般的には、ペプチド模倣物質は、天然の受容体結合ポリペプチドなどのパラダイムポリペプチド(すなわち、生物学的または薬理学的活性を有するポリペプチド)と構造的に類似するが、当業界でよく知られた方法(Spatola, Peptide Backbone Modificat
ions, Vega Data, 1(3):267, 1983); Spatolaら(Life Sci. 38:1243-1249, 1986); Hudsonら(Int. J. Pept. Res. 14:177-185, 1979); およびWeinstein. B., 1983, Chemistry and Biochemistry, of Amino Acids, Peptides and Proteins, Weinstein(編)、Marcel Dekker, New-York)により、-CH2NH-、-CH2S-、-CH2-CH2-、-CH=CH- (シスおよびトランス)、-CH2SO-、-CH(OH)CH2-、-COCH2-などの結合により置換されていてもよい1個以上のペプチド結合を有する。そのようなポリペプチド模倣物質は、より経済的な製造、より大きな化学的安定性、増強された薬理学的特性(例えば、半減期、吸収、効力、効率)、低下した抗原性などの天然のポリペプチドを超える有意な利点を有し得る。
【0086】
本発明において用いられるポリペプチドは特定の細胞型(例えば、本明細書に記載のもの)に進入するのに有効であるが、その有効性はプロテアーゼの存在により低下することがある。血清プロテアーゼは特異的基質を必要とする。この基質は、切断のためにL-アミノ酸とペプチド結合の両方を有する必要がある。さらに、血清中のプロテアーゼ活性の最も顕著な成分であるエキソペプチダーゼは通常、ポリペプチドの最初のペプチド結合に対して作用し、遊離のN末端を必要とする(Powellら、Pharm. Res. 10:1268-1273, 1993)。これに照らせば、改変型のポリペプチドを使用する方が有利であることが多い。改変ポリペプチドは、元のL-アミノ酸ポリペプチドの構造的特性を保持し、IGF-1に関して生物学的活性を付与するが、有利には、プロテアーゼおよび/またはエキソペプチダーゼにより容易に切断されない。
【0087】
同じ型のD-アミノ酸によるコンセンサス配列の1個以上のアミノ酸の体系的置換(例えば、L-リジンの代わりにD-リジン)を用いて、より安定なポリペプチドを作製することができる。かくして、本発明において用いられるポリペプチド誘導体またはペプチド模倣物質は、全部L型、全部D型、またはD、Lポリペプチドの混合型であってよい。N末端またはC末端のD-アミノ酸の存在は、ペプチダーゼが基質としてD-アミノ酸を利用することができないため、ポリペプチドのin vivoでの安定性を増加させる(Powellら、Pharm. Res. 10:1268-1273, 1993)。逆-Dポリペプチドは、L-アミノ酸を含むポリペプチドと比較して逆の配列に整列された、D-アミノ酸を含むポリペプチドである。かくして、L-アミノ酸ポリペプチドのC末端残基は、D-アミノ酸ポリペプチドのN末端になる、などである。逆D-ポリペプチドは、L-アミノ酸ポリペプチドと同じ三次元コンフォメーション、従って同じ活性を保持するが、in vitroおよびin vivoで酵素的分解に対してより安定であり、かくして、元のポリペプチドよりも高い治療効力を有する(BradyおよびDodson, Nature 368:692-693, 1994; Jamesonら、Nature 368:744-746, 1994)。逆-D-ポリペプチドに加えて、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列を含む拘束されたポリペプチドを、当業界でよく知られた方法により作製することができる(RizoおよびGierasch, Ann. Rev. Biochem. 61:387-418, 1992)。例えば、拘束されたポリペプチドを、ジスルフィド架橋を形成することにより、環状ポリペプチドをもたらすことができるシステイン残基を付加することにより作製することができる。環状ポリペプチドは、遊離のNまたはC末端を有さない。従って、それらはエキソペプチダーゼによるタンパク質溶解を受けにくいが、それらは勿論、ペプチド末端で切断しないエンドペプチダーゼの影響は受けやすい。N末端またはC末端D-アミノ酸を有するポリペプチドおよび環状ポリペプチドのアミノ酸配列は通常、それぞれ、N末端もしくはC末端D-アミノ酸残基の存在、またはその環状構造について以外は、それらが対応するポリペプチドの配列と同一である。
【0088】
分子内ジスルフィド結合を含む環状誘導体を、アミノ末端およびカルボキシ末端などの環化のために選択された位置に、好適なS-保護されたシステインまたはホモシステイン残基を組込みながら、従来の固相合成により調製することができる(Sahら、J. Pharm. Pharmacol. 48:197, 1996)。鎖集合の完了後、(1)S-保護基を選択的に除去し、その結果、対応する2個の遊離SH-官能基を支持体上で酸化してS-S結合を形成させた後、支持体から生成物を従来通り除去し、好適な精製手順を行うか、または(2)側鎖を完全に脱保護すると共に、支持体からポリペプチドを除去した後、高度に希釈した水溶液中で遊離SH-官能基を酸化することにより、環化を実施することができる。
【0089】
分子内アミド結合を含む環状誘導体を、環化のために選択された位置に、好適なアミノおよびカルボキシル側鎖保護されたアミノ酸誘導体を組込みながら、従来の固相合成により調製することができる。分子内-S-アルキル結合を含む環状誘導体を、環化のために選択された位置に、好適なアミノ保護された側鎖を含むアミノ酸残基、および好適なS-保護されたシステインまたはホモシステイン残基を組込みながら、従来の固相化学により調製することができる。
【0090】
ポリペプチドのN末端またはC末端残基に作用するペプチダーゼに対する耐性を付与するための別の有効な手法は、改変ポリペプチドが最早ペプチダーゼの基質ではなくなるように、ポリペプチドの末端に化学基を付加することである。1つのそのような化学的改変は、いずれか、または両方の末端でのポリペプチドの糖鎖付加である。特定の化学的改変、特に、N-末端糖鎖付加は、ヒト血清中でのポリペプチドの安定性を増加させることが示されている(Powellら、Pharm. Res. 10:1268-1273, 1993)。血清安定性を増強する他の化学的改変としては、限定されるものではないが、アセチル基などの1〜20個の炭素の低級アルキルからなるN-末端アルキル基の付加、および/またはC-末端アミドもしくは置換アミド基の付加が挙げられる。特に、本発明の組成物および方法は、N-末端アセチル基および/またはC-末端アミド基を担持するポリペプチドからなる改変ポリペプチドを含んでもよい。
【0091】
また、通常はポリペプチドの一部ではないさらなる化学的部分を含む他の型のポリペプチド誘導体も、それがポリペプチドの所望の機能的活性を保持する限り、本発明により包含される。そのような誘導体の例としては、(1)アシル基がアルカノイル基(例えば、アセチル、ヘキサノイル、オクタノイル)、アロイル基(例えば、ベンゾイル)もしくはF-mocなどのブロッキング基(フルオレニルメチル-O-CO-)であってよい、アミノ末端または別の遊離アミノ基のN-アシル誘導体;(2)カルボキシ末端または別の遊離カルボキシもしくはヒドロキシル基のエステル;(3)アンモニアもしくは好適なアミンとの反応により生成されたカルボキシ末端または別の遊離カルボキシル基のアミド;(4)リン酸化された誘導体;(5)抗体または他の生物学的リガンドにコンジュゲートされた誘導体および他の型の誘導体が挙げられる。
【0092】
本発明において用いられるポリペプチドへの追加のアミノ酸残基の付加の結果生じる、より長いポリペプチド配列も包含される。そのようなより長いポリペプチド配列は、上記のポリペプチドと同じ生物学的活性(例えば、特定の細胞型への進入)を有すると予想される。実質的な数の追加アミノ酸を有するポリペプチドは排除されないが、いくつかの大きいポリペプチドは有効な配列を隠す配置を取り、それによって標的(例えば、LRPまたはLRP2などのLRP受容体ファミリーのメンバー)への結合を防止することができると認識される。これらの誘導体は、競合的アンタゴニストとして作用することができる。かくして、本発明は伸長を有する本明細書に記載のポリペプチドまたはポリペプチドの誘導体を包含するが、望ましくは、この伸長はポリペプチドまたは誘導体の細胞標的化活性を破壊しない。
【0093】
本発明において用いることができる他の誘導体は、アラニン残基の短いストレッチまたはタンパク質溶解のための推定部位(例えば、カテプシンによる、例えば、米国特許第5,126,249号および欧州特許第495,049号を参照)などにより、直接的またはスペーサーを介して互いに共有結合された本明細書に記載の2個の同じか、または2個の異なるポリペプチドからなる二重ポリペプチドである。本発明において用いられるポリペプチドのマルチマーは、同じか、または異なるポリペプチドまたはその誘導体から形成された分子のポリマーからなる。
【0094】
本発明はまた、そのアミノもしくはカルボキシ末端で、またはその両方で、異なるタンパク質のアミノ酸配列に連結された、本明細書に記載のポリペプチド、またはその断片を含むキメラまたは融合タンパク質であるポリペプチド誘導体も包含する。そのようなキメラまたは融合タンパク質を、該タンパク質をコードする核酸の組換え発現により製造することができる。例えば、キメラまたは融合タンパク質は、本発明において用いられる少なくとも6個のアミノ酸のポリペプチドを含んでもよく、本発明において用いられるポリペプチドと等価であるか、またはそれより高い機能的活性を有するのが望ましい。
【0095】
本発明において用いられるポリペプチド誘導体を、アミノ酸残基の置換、付加、または欠失によりアミノ酸配列を変化させて、必要に応じて、機能的に等価な分子、または機能的に増強された、もしくは低下した分子を産生させることにより作製することができる。本発明において用いられる誘導体としては、限定されるものではないが、一次アミノ酸配列として、機能的に等価なアミノ酸残基の置換を含む変化した配列などの本明細書に記載のポリペプチドのアミノ酸配列の全部または一部を含むもの(例えば、配列番号1〜105および107〜116のいずれか1つ)が挙げられる。例えば、前記配列内の1個以上のアミノ酸残基を、機能的等価物として作用する類似する極性の別のアミノ酸により置換し、サイレント変化をもたらすことができる。前記配列内のアミノ酸への置換を、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択することができる。例えば、正に荷電した(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが挙げられる。非極性(疎水性)アミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、プロリン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられる。非荷電極性アミノ酸としては、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。負に荷電した(酸性)アミノ酸としては、グルタミン酸およびアスパラギン酸が挙げられる。アミノ酸グリシンは、非極性アミノ酸ファミリーまたは非荷電(中性)極性アミノ酸ファミリーのいずれにも含まれる。アミノ酸のファミリー内で作製された置換は、一般的には保存的置換であると理解される。
【0096】
ペプチド模倣物質を同定するためのアッセイ
上記のように、主鎖形状を複製するように生成された非ペプチド化合物および前記方法により同定されたポリペプチドの薬理作用団展示(ペプチド模倣物質)は、より高い代謝安定性、より高い効力、より長い作用時間およびより良好な生体利用能の特性を有し得る。
【0097】
本発明において用いられるペプチド模倣化合物を、生物ライブラリー;空間的に接近可能な平行固相もしくは液相ライブラリー;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー方法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー方法;およびアフィニティクロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー方法などの当業界で公知のコンビナトリアルライブラリー方法におけるいくつかの手法のいずれかを用いて取得することができる。生物ライブラリー手法はポリペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つの手法はポリペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは化合物の小分子ライブラリーにも適用可能である(Lam, Anticancer Drug Des. 12:145, 1997)。分子ライブラリーの合成のための方法の例を、当業界に、例えば、DeWittら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909, 1993); Erbら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422, 1994); Zuckermannら、J. Med. Chem. 37:2678, 1994); Choら(Science 261:1303, 1993); Carellら(Angew. Chem, Int. Ed. Engl. 33:2059, 1994 and ibid 2061); およびGallopら(Med. Chem. 37:1233, 1994)に見出すことができる。化合物のライブラリーを、溶液中で(例えば、Houghten, Biotechniques 13:412-421, 1992)、またはビーズ(Lam, Nature 354:82-84, 1991)、チップ(Fodor, Nature 364:555-556, 1993)、細菌もしくは胞子(米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cullら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865-1869, 1992)もしくはファージ(ScottおよびSmith, Science 249:386-390, 1990)、またはルシフェラーゼ、および好適な基質の生成物への転換の決定により検出される酵素的標識上で提供することができる。
【0098】
一度、本発明において用いることができるポリペプチドが同定されたら、限定されるものではないが、示差的溶解性(例えば、沈降)、遠心分離、クロマトグラフィー(例えば、アフィニティ、イオン交換、サイズ排除など)などの任意の数の標準的な方法により、またはポリペプチド、ペプチド模倣物質もしくはタンパク質の精製に用いられる任意の他の標準的な技術により、それを単離および精製することができる。同定された目的のポリペプチドの機能的特性を、当業界で公知の任意の機能的アッセイを用いて評価することができる。望ましくは、分子内シグナリングにおける下流の受容体機能を評価するためのアッセイを用いる(例えば、細胞増殖)。
【0099】
例えば、本発明において用いられるペプチド模倣化合物を、以下の3段階のプロセスを用いて取得することができる:(1)本発明において用いられるポリペプチドを走査して、本明細書に記載の特定の細胞型を標的化するのに必要な二次構造の領域を同定すること;(2)コンフォメーション的に拘束されたジペプチド代用物を用いて、主鎖形状を精製し、これらの代用物に対応する有機プラットフォームを提供すること;および(3)最良の有機プラットフォームを用いて、天然のポリペプチドの所望の活性を模倣するように設計された候補のライブラリー中に有機薬理作用団を展示すること。より詳細には、3つの段階は以下の通りである。段階1においては、リード候補ポリペプチドを走査し、その構造を短縮してその活性に対する要件を同定する。オリジナルの一連のポリペプチド類似体を合成する。段階2においては、最良のポリペプチド類似体を、コンフォメーション的に拘束されたジペプチド代用物を用いて調査する。インドールイジジン-2-オン、インドールイジジン-9-オンおよびキノリジジノンアミノ酸(それぞれ、I2aa、I9aaおよびQaa)を、最良のポリペプチド候補の主鎖形状を研究するためのプラットフォームとして用いる。これらのプラットフォームおよび関連するプラットフォーム(Halabら、Biopolymers 55:101-122, 2000; およびHanessianら、Tetrahedron 53:12789-12854, 1997に概説されている)をポリペプチドの特異的領域として導入して、異なる方向に薬理作用団を向かせる。これらの類似体の生物学的評価により、活性に関する形状要件を模倣するリードポリペプチドの改良を同定する。段階3においては、最も活性の高いリードポリペプチドに由来するプラットフォームを用いて、天然ポリペプチドの活性を担う薬理作用団の有機代用物を展示する。薬理活性団と足場を、平行合成形式で混合する。ポリペプチドの誘導と上記段階を、当業界で公知の方法を用いる他の手段により達成することもできる。
【0100】
ポリペプチド、ポリペプチド誘導体、ペプチド模倣物質、または本発明において用いられる他の小分子から決定された構造機能関係を用いて、類似するか、またはより良好な特性を有する類似分子構造を精製、調製することができる。従って、本発明において用いられる化合物はまた、本明細書に記載のポリペプチドの構造、極性、電荷特性および側鎖特性を共有する分子をも含む。
【0101】
まとめると、本開示に基づいて、当業者であれば、特定の細胞型(例えば、本明細書に記載のもの)に対して薬剤を標的化するための化合物を同定するのに有用であるポリペプチドおよびペプチド模倣物質スクリーニングアッセイを開発することができる。このアッセイを、低効率、高効率、または超高効率スクリーニング形式のために開発することができる。本発明のアッセイは、自動化に従うアッセイを含む。
【0102】
コンジュゲート
本明細書に記載のポリペプチドまたはその誘導体を、薬剤に連結することができる。例えば、前記ポリペプチド(例えば、本明細書に記載の任意のもの)を、治療剤、診断剤、または標識に結合させることができる。特定の実施形態においては、前記ポリペプチドを、疾患または症状の診断のために、放射性画像化剤などの検出可能な標識に連結するか、またはそれで標識する。これらの薬剤の例としては、抗体が疾患または症状特異的抗原(例えば、診断または治療のため)に結合する、放射性画像化剤-抗体-ベクターコンジュゲートが挙げられる。他の結合分子も本発明により意図される。他の場合では、前記ポリペプチドまたは誘導体を、疾患もしくは症状を治療するための治療剤に連結するか、またはその混合物に連結するか、もしくはそれで標識することができる。この疾患または症状を、BBBを横断して、または特定の細胞型に薬剤を輸送することができる条件下で、個体にベクター-薬剤コンジュゲートを投与することにより治療することができる。それぞれのポリペプチドは、少なくとも1、2、3、4、5、6、または7種の薬剤を含んでもよい。他の実施形態においては、各薬剤は、それに結合した少なくとも1、2、3、4、5、6、7、10、15、20個以上のポリペプチドを有する。本発明のコンジュゲートは、被験体の特定の細胞型または肝臓、肺、腎臓、脾臓もしくは筋肉などの組織中での前記薬剤の蓄積(例えば、取込みの増加または除去の減少に起因する)を促進することができる。
【0103】
前記薬剤は、特定の細胞型への輸送またはBBBを横断する輸送の後に前記ベクターから遊離可能であってよい。前記薬剤を、例えば、ベクターと薬剤の間の化学的結合の酵素的切断または他の破壊により遊離させることができる。次いで、遊離した薬剤は、ベクターの非存在下でその意図される能力で機能することができる。
【0104】
治療剤:治療剤は、任意の生物学的に活性な薬剤であってよい。例えば、治療剤は、疾患を治療するための(例えば、癌細胞を殺傷するための)薬剤、医薬品、放射線を放射する薬剤、細胞毒素(例えば、化学療法剤)、その生物学的に活性な断片、またはその混合物であってよく、またはそれは個体における疾患もしくは症状を治療するための薬剤であってよい。治療剤は、合成の生成物または菌類、細菌もしくは他の微生物(例えば、マイコプラズマもしくはウイルス)、爬虫類などの動物、または植物起源の生成物であってよい。治療材および/または生物学的に活性なその断片は、酵素的に活性な薬剤および/もしくはその断片であってよいか、または重要な、および/もしくは必須の細胞経路を阻害もしくは遮断することにより、もしくは重要な、および/もしくは必須の天然の細胞成分と競合することにより作用することができる。他の治療剤としては、抗体および抗体フラグメントが挙げられる。
【0105】
抗癌剤:当業界で公知の任意の抗癌剤は、本発明において用いられるコンジュゲートの一部であってよい。特定の実施形態においては、前記薬剤はパクリタキセルまたはパクリタキセル類似体(例えば、本明細書に記載のもの)である。脳の癌を、BBBを横断して効率的に輸送されるベクターを含むコンジュゲート(例えば、AngioPep-1、AngioPep-2、AngioPep-3、AngioPep-4a、AngioPep-4b、AngioPep-5、またはAngioPep-6)を用いて治療することができる。肝臓、肺、腎臓、または脾臓の癌を、好適な細胞型に効率的に輸送されるベクターにコンジュゲートされた抗癌剤を用いて治療することができる(例えば、AngioPep-7)。例示的な薬剤としては、アバレリックス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナキンラ、アナストロゾール、アルセニックトリオキシド、アスパラギナーゼ、アザシチジン、生BCG、ベバクジマブ、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾンビ、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、シクロホスファミド、シタラビン、デカルバジン、ダクチノマイシン、アクチノマイシンD、ダルテパリン(例えば、ナトリウム)、ダルベポエチンα、ダサチニブ、ダウノルビシン、ダウノマイシン、デシタビン、デニロイキン、デニロイキンジフチトックス、デキスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エクリズマブ、エピルビシン(例えば、HCl)、エポエチンα、エルロチニブ、エストラムスチン、エトポシド(例えば、リン酸)、エキセメスタン、フェンタニル(例えば、クエン酸)、フィルグラスチム、フロキスリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、5-FU、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲンシタビン(例えば、HCl)、ゲンツズマブオゾガミシン、ゴセレリン(例えば、酢酸)、ヒストレリン(例えば、酢酸)、ヒドロキシウレア、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イフォスファミド、イマチニブ(例えば、メシル酸)、インターフェロンα-2b、イリノテカン、ラパチニブジトシラート、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド(例えば、酢酸)、レバミソール、ロムスチン、CCNU、メクロレタミン(窒素マスタード)、メゲストロール、メルファラン(L-PAM)、メルカプトプリン(6-MP)、メスナ、メトトレキサート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロンフェンプロピオナート、ネララビン、ノフェツモマブ、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パリフェルミン、パミドロナート、パニツムマブ、ペガデマーゼ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペグインターフェロンα-2b、ペメトレキセド(例えば、ジナトリウム)、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、ポルフィメル(例えば、ナトリウム)、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブ(例えば、マレイン酸)、タルク、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド(VM-26)、テストラクトン、サリドマイド、チオグアニン(6-TG)、チオテパ、トポテカン(例えば、HCl)、トレミフェン、トシツモマブ/I-131(トシツモマブ)、トラスツズマブ、トレチノイン(ATRA)、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ボリノスタット、ゾレドロナート、およびゾレドロン酸が挙げられる。
【0106】
検出可能な標識:検出または診断のために、本発明において用いられるコンジュゲートを標識することができる。検出可能な標識、またはマーカーは、放射性標識、蛍光標識、核磁気共鳴活性標識、発光標識、発色団標識、PETスキャナー用ポジトロン放出アイソトープ、化学発光標識、または酵素標識であってよい。放射線(検出可能な放射性標識)を放出する例示的な放射性画像化剤としては、インジウム-111、テクニチウム-99、または低用量ヨウ素-131が挙げられる。γおよびβ線を放出する放射性核種としては、67Cu、67Ga、90Y、111In、99mTc、および201Tlが挙げられる。ポジトロン放出放射性核種としては、18F、55Co、60Cu、62Cu、64Cu、66Ga、68Ga、82Rb、および86Yが挙げられる。蛍光標識としては、Cy5.5、Alexa 488、緑色蛍光タンパク質(GFP)、フルオレセイン、およびローダミンが挙げられる。化学発光標識としては、ルシフェラーゼおよびβ-ガラクトシダーゼが挙げられる。酵素的標識としては、ペルオキシダーゼおよびホスファターゼが挙げられる。ヒスチジンタグも検出可能な標識であってよい。例えば、コンジュゲートは、ベクター部分と抗体部分(抗体または抗体フラグメント)を含んでもよく、これはさらに標識を含んでもよい。この場合、標識をベクターまたは抗体に結合させることができる。
【0107】
抗体:抗体も本発明において用いられるコンジュゲートの一部であってよい。コンジュゲーションを、当業界で公知の任意の手段を用いて達成することができる(例えば、本明細書に記載のコンジュゲーション戦略を用いる)。任意の診断用または治療用抗体を、本発明の1個以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上)のベクターにコンジュゲートさせることができる。さらに、抗体フラグメント(例えば、抗原に結合することができる)を本発明のベクターにコンジュゲートさせることもできる。抗体フラグメントとしては、抗体(例えば、本明細書に記載の任意の抗体)のFabおよびFc領域、重鎖、および軽鎖が挙げられる。癌の診断および治療における使用のための抗体の例としては、ABX-EGF (Panitimumab)、OvaRex(Oregovemab)、Theragyn(ペンツモマブイットリウム-90)、Therex、Bivatuzumab、Panorex(Edrecolomab)、ReoPro(Abciximab)、Bexxar (Tositumomab)、MAb、イディオタイプ105AD7、抗EpCAM (Catumaxomab)、MAb肺癌(Cytoclonal社製)、AMD Fab(Ranibizumab)、E-26(第2世代のIgE)(Omalizumab)、Zevalin(Rituxan + イットリウム-90)(Ibritumomab tiuxetan)、Cetuximab、BEC2(Mitumomab)、IMC-1C11、nuC242-DM1、LymphoCide (Epratuzumab)、LymphoCide Y-90、CEA-Cide (Labetuzumab)、CEA-Cide Y-90、CEA-Scan (Tc-99m標識アルシツモマブ)、LeukoScan (Tc-99m標識スレソマブ)、LymphoScan (Tc-99m標識ベクツモマブ)、AFP-Scan (Tc-99m標識)、HumaRAD-HN (+ イットリウム-90)、HumaSPECT (Votumumab)、MDX-101 (CTLA-4)、MDX-210 (her-2 過剰発現)、MDX-210/MAK、Vitaxin、MAb 425、IS-IL-2、Campath (アレムツズマブ)、CD20ストレプトアビジン、Avidicin、(アルブミン + NRLU13)、Oncolym (+ ヨウ素-131)、Cotara (+ ヨウ素-131)、C215 (+ スタフィロコッカスエンテロトキシン、MAb肺/腎臓癌 (Pharmacia Corp.社製)、ナコロマブタフェナトックス (C242スタフィロコッカスエンテロトキシン)、Nuvion (Visilizumab)、SMART M195、SMART 1D10、CEAVac、TriGem、TriAb、NovoMAb-G2放射標識、Monopharm C、GlioMAb-H (+ ゲロニン毒素)、Rituxan (Rituximab)、およびING-1が挙げられる。さらなる治療用抗体としては、5G1.1 (Ecluizumab)、5G1.1-SC (Pexelizumab)、ABX-CBL (Gavilimomab)、ABX-IL8、Antegren (Natalizumab)、抗CD11a (Efalizumab)、抗CD18 (Genetech社製)、抗LFA1、Antova、BTI-322、CDP571、CDP850、Corsevin M、D2E7 (Adalimumab)、Humira (Adalimumab)、Hu23F2G (Rovelizumab)、IC14、IDEC-114、IDEC-131、IDEC-151、IDEC-152、Infliximab (Remicade)、LDP-01、LDP-02、MAK-195F (Afelimomab)、MDX-33、MDX-CD4、MEDI-507 (Siplizumab)、OKT4A、OKT3 (Muromonab- CD3)、およびReoPro (Abciximab)が挙げられる。
【0108】
コンジュゲーションリンカー
前記コンジュゲート(例えば、ポリペプチド-薬剤コンジュゲート)を、当業界で公知の任意の架橋(コンジュゲーション)試薬またはプロトコルを用いて取得することができ、その多くが市販されている。そのようなプロトコルおよび試薬としては、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、カルボニル基、炭水化物基および/またはフェノール基と反応する架橋剤が挙げられる。そのようなプロトコルの量、時間、および条件を変化させて、コンジュゲーションを最適化することができる。架橋剤は、少なくとも2個の反応基を含み、一般的にはホモ官能性架橋剤(同一の反応基を含む)とヘテロ官能性架橋剤(非同一の反応基を含む)に分けられる。本発明の架橋剤は、ホモ二官能性および/またはヘテロ二官能性であってよい。さらに、架橋剤は反応基の間に「スペーサー」を含むか、または架橋剤中の2個の反応部分を直接連結することができる。結合はエステル結合を含んでもよい。
【0109】
リンカーの例としては、BS3[ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート]、NHS/EDC(N-ヒドロキシスクシンイミドおよびN-エチル-(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)、スルホ-EMCS([N-e-マレイミドカプロン酸]ヒドラジド)、SATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート)、およびヒドラジドが挙げられる。BS3は、近接可能な一次アミンを標的化するホモ二官能性N-ヒドロキシスクシンイミドエステルである。コンジュゲーションスキームを図2に例示する。NHS/EDCは、一次アミン基のカルボキシル基とのコンジュゲーションを可能にする。スルホ-EMCSは、スルフヒドリル基とアミノ基に対して反応するヘテロ二官能性反応基(マレイミドおよびNHS-エステル)である。スルホ-NHS/EDC活性化を用いるアミンカップリングを用いて、図3および4に例示されるように、治療用抗体を本発明のポリペプチドと架橋させることができる。これは、速く、単純で、再現可能なカップリング技術である。得られるコンジュゲートは安定であり、抗体の生物学的活性を保持する。さらに、それは容易に制御できる高いコンジュゲーション能力およびカップリング手順の間の低い非特異的相互作用を有する。SATAはアミンに対して反応し、保護されたスルフヒドリル基を付加する。NHS-エステルは一次アミンと反応して、安定なアミド結合を形成する。スルフヒドリル基を、ヒドロキシルアミンを用いて脱保護することができる。このコンジュゲーション方法を図5に例示する。図6に示されるように、ヒドラジドを用いて、カルボキシル基を一次アミンに連結することができ、従って、糖タンパク質を連結するのに有用である。さらなるリンカーの例を図7に例示する。
【0110】
治療剤などの小分子を、ポリペプチド(例えば、本明細書に記載のもの)にコンジュゲートさせることができる。例示的な小分子、パクリタキセルは、コンジュゲーションにとって有用な2個の戦略位置(位置C2'およびC7)を有する。ベクターまたは本発明のベクターのパクリタキセルへのコンジュゲーションを、以下のように実施することができる(図8)。簡単に述べると、パクリタキセルを、室温で3時間、無水コハク酸ピリジンと反応させて、位置2'でスクシニル基を結合させる。2'-スクシニルパクリタキセルは位置2'に切断可能なエステル結合を有し、コハク酸を単純に遊離することができる。この切断可能なエステル結合を、必要に応じて、リンカーを用いる様々な改変にさらに用いることができる。次いで、得られる2'-O-スクシニル-パクリタキセルを、室温で9時間、DMSO中のEDC/NHSと反応させた後、室温で4時間のさらなる反応時間のために前記ベクターまたはリンゲル液/DMSO中のベクターを添加する。図8に記載されるコンジュゲーションの反応を、HPLCによりモニターする。パクリタキセル、2'-O-スクシニル-パクリタキセルおよび2'-O-NHS-スクシニル-パクリタキセルなどの各中間体を精製し、HPLC、薄液クロマトグラフィー、NMR(13Cまたは1H交換)、融点、質量分析などの様々な手法を用いて検証する。最終的なコンジュゲートを、質量分析およびSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析する。これにより、各ベクター上にコンジュゲートされたパクリタキセル分子の数を決定することができる。
【0111】
医薬組成物
疎水性薬剤は水溶液中では限られた溶解性を示すことが多いため、本発明の医薬組成物は可溶化剤を含んでもよい。ANG1005の本発明者らの製剤例は、DMSOとSolutol HS 15を含む;しかしながら、これらの薬剤の代わりに、またはそれらに加えて、他の可溶化剤も本発明の組成物中で有用であり得る。前記組成物はさらに、緩衝化剤、等張剤、および凍結乾燥剤(例えば、増量剤または凍結保護剤)を含んでもよい。
【0112】
可溶化剤
本発明の組成物および方法は、当業界で公知の任意の可溶化剤を含んでもよい。そのような薬剤は、前記組成物の質量の少なくとも1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、または70%を構成してもよい。可溶化剤の例としては、水溶性有機溶媒(例えば、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセタミド、およびジメチルスルホキシド)、非イオン性界面活性剤(例えば、Cremophor EL、Cremophor RH 40、Cremophor RH 60、d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネート、ポリソルベート20、ポリソルベート80、Solutol HS 15 (Macrogol 15 Hydroxystearate)、モノオレイン酸ソルビタン、ポロキサマー407、Labrafil M-1944CS、Labrafil M-2125CS、Labrasol、Gellucire 44/14、Softigen 767、ならびにPEG 300、400もしくは1750のモノ-およびジ-脂肪酸エステル)、水不溶性脂質(例えば、カストル油、コーン油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ペパーミント油、紅花油、ゴマ油、大豆油、水素化植物油、水素化大豆油、ならびにココナッツ油およびヤシ種子油の中鎖トリグリセリド)、有機液体/半固体(蜜蝋、d-α-トコフェロール、オレイン酸、中鎖モノ-およびジ-グリセリド)、シクロデキストリン(例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、およびスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン)、ならびにリン脂質(例えば、水素化大豆ホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、1-α-ジミリストイルホスファチジルコリン、1-α-ジミリストイルホスファチジルグリセロール)が挙げられる。
【0113】
緩衝化剤
また、本発明の組成物および方法は、1種以上の緩衝化剤を含んでもよい。疎水性薬剤に応じて、医薬組成物のpHまたは等張性を維持するのが望ましい(例えば、活性薬剤の分解を最小化するか、または治療において用いられた場合に薬剤の安全性もしくは効力を最大化するため)。任意の特定のpHまたはpH範囲(例えば、pH 2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、またはこれらの値の間の任意の範囲)への緩衝化を、好適なバッファーを用いて達成することができる。バッファーは、所望の緩衝効果を達成するのに必要な任意の強度(例えば、1 mM、10 mM、20 mM、50 mM、100 mM、200 mM、500 mM、1.0 M、1.5 M、またはこれらの値の間の任意の範囲)を提供してもよい。緩衝化剤の例としては、クエン酸/リン酸塩、酢酸塩、バルビタール、ホウ酸塩、Britton-Robinson、カコジル酸塩、クエン酸塩、コリジン、ギ酸塩、マレイン酸塩、Mcllvaine、リン酸塩、Prideaux-Ward、コハク酸塩、クエン酸塩-リン酸塩-ホウ酸塩(Teorell-Stanhagen)、酢酸ベロナール、MES (2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、BIS-TRIS(ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス-(ヒドロキシメチル)メタン)、ADA(N-(2-アセタミド)-2-イミノ二酢酸)、ACES(N-(カルバモイルメチル)-2-アミノエタンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン-N,N'-ビス(2-エタンスルホン酸))、MOPSO(3-(N-モルホリノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、BIS-TRIS PROPANE(1,3-ビス(トリス(ヒドロキシ-メチル)メチルアミノ)プロパン)、BES(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノ-エタンスルホン酸)、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、TES(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸)、HEPES(N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン酸)、DIPSO(3-(N,N'-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、MOBS(4-(N-モルホリノ)ブタンスルホン酸)、TAPSO(3-(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、TRIZMA(トリス(ヒドロキシメチル-アミノメタン)、HEPPSO(N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-ヒドロキシ-プロパンスルホン酸)、POPSO(ピペラジン-N,N'-ビス(2-ヒドロキシプロパン-スルホン酸))、TEA(トリエタノールアミン)、EPPS(N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N'-(3-プロパンスルホン酸)、TRICINE(N-トリス(ヒドロキシ-メチル)メチルグリシン)、GLY-GLY(グリシルグリシン)、BICINE(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、HEPBS(N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(4-ブタンスルホン酸)、TAPS(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノ-プロパンスルホン酸)、AMPD(2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール)、および/または当業界で公知の任意の他のバッファーが挙げられる。
【0114】
緩衝化剤に加えて、またはその代わりに、等張性を、当業界で公知の任意の製薬上許容し得る塩を用いて維持することができる。塩の例としては、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩化カルシウムが挙げられる。そのような塩は、緩衝化剤と共に、またはそれと組合わせて、所望の等張性(例えば、1 mM、10 mM、20 mM、50 mM、100 mM、200 mM、500 mM、1.0 M、1.5 M、またはこれらの値の間の任意の範囲)を維持するのに十分な量で存在してもよい。
【0115】
他の賦形剤
特定の実施形態においては、本発明の組成物および方法は、増量剤または凍結保護剤などの他の賦形剤を含む。増量剤は、医薬組成物が脱水(例えば、凍結乾燥)形態で提供される場合、特に望ましい。凍結乾燥組成物は、10重量%未満(例えば、8%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%未満)の水または他の溶媒を含んでもよい。非経口経路により投与される無水組成物を、典型的には患者への投与前に水溶液に溶解するため、脱水プロセスが再可溶化を可能にする様式で進行することが重要であり得る。凍結乾燥生成物をより容易に再可溶化することができることを確保するために、増量剤を添加することができる。そのような薬剤は当業界で公知であり、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デキストラン;デキストロース、マンニトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、およびソルビトールなどの糖類;グリシン、アルギニン、アスパラギン酸などのアミノ酸;ならびにコラーゲン、ゼラチン、もしくは血清アルブミンなどの可溶性タンパク質が挙げられる。
【0116】
前記組成物はさらに、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、タンパク質へのポリエチレングリコールなどのポリマーの共有結合、金属イオンとの錯体化、またはポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲルなどのポリマー化合物の粒子状調製物の中もしくはその上への、またはリポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単ラメラもしくは多ラメラベシクル、赤血球ゴースト、もしくはスフェロプラスト上への材料の組込みを含んでもよい。そのような組成物は、物理的状態、溶解性、安定性、in vivoでの放出速度、およびin vivoでの消失速度に影響するであろう。制御放出または持続放出組成物は、親油性デポー(例えば、脂肪酸、ワックス、油)中の製剤を含む。ポリマー(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)でコーティングされた粒子状組成物も本発明により包含される。本発明の組成物の他の実施形態は、粒子状形態の保護コーティング、非経口、肺、鼻、経口、膣、直腸経路などの様々な投与経路のためのプロテアーゼ阻害剤または浸透増強剤を含む。一実施形態においては、前記医薬組成物を、非経口的、癌近傍的、経粘膜的、経皮的、筋肉内的、静脈内的、皮内的、皮下的、腹腔内的、心室内的、頭蓋内的、および腫瘍内的に投与する。
【0117】
経口使用のための固体剤形
経口使用のための製剤としては、非毒性的な製薬上許容し得る賦形剤との混合物中に活性成分を含む錠剤が挙げられ、そのような製剤は当業者には公知である(例えば、参照により本明細書に組み入れられるものとする米国特許第5,817,307号、第5,824,300号、第5,830,456号、第5,846,526号、第5,882,640号、第5,910,304号、第6,036,949号、第6,036,949号、第6,372,218号)。これらの賦形剤は、例えば、不活性の希釈剤または充填剤(例えば、スクロース、ソルビトール、糖、マンニトール、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンなどのデンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、もしくはリン酸ナトリウム);顆粒化剤および崩壊剤(例えば、微結晶セルロースなどのセルロース誘導体、ジャガイモデンプンなどのデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、もしくはアルギン酸);結合剤(例えば、スクロース、グルコース、ソルビトール、アカシア、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、プレゼラチン化デンプン、微結晶セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、もしくはポリエチレングリコール);ならびに潤滑剤、流動化剤、および抗接着剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、水素化植物油、もしくはタルク)であってよい。他の製薬上許容し得る賦形剤は、着色料、香料、可塑剤、保湿剤、緩衝化剤などであってよい。
【0118】
前記錠剤はコーティングされていなくてもよく、またはそれらを必要に応じて、胃腸管中での崩壊および吸収を遅延させ、それによって、長時間にわたって持続的作用を提供するための公知の技術によりコーティングしてもよい。コーティングを、所定のパターンで薬剤を放出する(例えば、制御放出製剤を達成するため)ように適合させるか、またはそれを胃の通過後まで薬剤を放出しないように適合させることができる(腸溶性コーティング)。コーティングは、糖コーティング、フィルムコーティング(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリレートコポリマー、ポリエチレングリコール、および/もしくはポリビニルピロリドンに基づく)、または腸溶性コーティング(例えば、メタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ポリビニル酢酸、シェラック、および/もしくはエチルセルロース)であってよい。さらに、例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を用いることができる。
【0119】
固体錠剤組成物は、望ましくない化学的変化(例えば、活性物質の放出前の化学的分解)から組成物を保護するように適合されたコーティングを含んでもよい。コーティングを、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology、上掲に記載のものと同様の様式で固体剤形に適用することができる。
【0120】
経口使用のための製剤を、チュアブル錠として、または活性成分を不活性固体希釈剤(例えば、ジャガイモデンプン、ラクトース、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、もしくはカオリン)と混合したハードゼラチンカプセルとして、または活性成分を水もしくは油媒体、例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油と混合したソフトゼラチンカプセルとして提供することもできる。粉末および顆粒を、例えば、ミキサー、流動床装置、またはスプレー乾燥装備を用いる従来の様式で錠剤およびカプセルの下で上記の成分を用いて調製することができる。
【0121】
治療方法
本発明はまた、本明細書に記載の薬剤を用いる治療方法を特徴とする。抗癌剤および本明細書に記載のコンジュゲート(例えば、ANG1005)を用いて、当業界で公知の任意の癌を治療することができる。本明細書に記載のペプチドを含む本発明のコンジュゲートは、BBBを横断することができ(例えば、AngioPep-1〜AngioPep-6)、かくして、これを用いて、任意の脳または中枢神経系の疾患(例えば、グリオブラストーマ、アストロサイトーマ、グリオーマ、髄芽腫、およびオリゴデンドローマなどの脳の癌、ニューログリオーマ、上衣腫、および髄膜腫)を治療することができる。また、これらのコンジュゲートを、肝臓、肺、腎臓、脾臓または筋肉に効率的に輸送し(例えば、AngioPep-1〜AngioPep-7)、従って、好適な治療剤と共に用いて、これらの組織に関連する疾患(例えば、肝細胞癌、肝臓癌、小細胞癌(例えば、燕麦細胞癌)、混合小細胞/大細胞癌、混合小細胞癌、および転移性腫瘍)を治療することもできる。転移性腫瘍は、乳癌、結腸癌、前立腺癌、肉腫、膀胱癌、神経芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、および特定のT細胞リンパ腫などの任意の組織の癌に由来してもよい。本発明の組成物を用いて治療することができるさらなる癌の例としては、肝細胞癌、乳癌、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫などの様々なリンパ腫を含む頭部および頸部の癌、扁平細胞癌、喉頭癌、網膜の癌、食道癌、多発性骨髄腫、卵巣癌、子宮癌、黒色腫、結腸直腸癌、膀胱癌、前立腺癌、肺癌(非小細胞肺癌を含む)、膵臓癌、頸部癌、頭部および頸部癌、皮膚癌、鼻咽頭、脂肪肉腫、上皮癌、腎細胞癌、胆嚢腺癌、耳下腺癌、子宮内膜肉腫、多剤耐性癌;ならびに腫瘍血管形成、黄斑変性(例えば、ウェット/ドライAMD)、角膜血管新生、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、近視性変性に関連する血管新生などの増殖性疾患および症状ならびに再狭窄および多発性嚢胞腎などの他の増殖性疾患および症状が挙げられる。BBBを横断して効率的に輸送されるベクターを用いて治療することができる脳の癌としては、アストロサイトーマ、毛様細胞性星状細胞腫、胚芽異形成性神経上皮腫瘍、オリゴデンドログリオーマ、上衣腫、多形性グリオブラストーマ、混合型グリオーマ、オリゴアストロサイトーマ、髄芽腫、網膜芽腫、ニューロブラストーマ、胚細胞腫、および奇形腫が挙げられる。
【0122】
本発明のコンジュゲートまたは組成物を、当業界で公知の任意の手段により、例えば、経口的、動脈内的、鼻内的、腹腔内的、静脈内的、筋肉内的、皮下的、経皮的または経口的に被験体に投与することができる。前記薬剤は、例えば、抗血管形成化合物であってよい。
【0123】
用量
本明細書に記載された、または本明細書に記載の方法を用いて同定された任意のコンジュゲートまたは組成物の用量は、投与方法、治療しようとする疾患(例えば、癌)、疾患の重篤度、癌を治療するか、または予防するかどうか、ならびに治療しようとする被験体の年齢、体重、および健康などのいくつかの因子に依存する。
【0124】
本発明の治療方法に関しては、ベクター、コンジュゲート、または組成物の被験体への投与は特定の投与様式、用量、または投与頻度に限定されないと意図される;本発明は、全ての投与様式を意図する。コンジュゲート、または組成物を、単回用量または複数回用量で被験体に投与することができる。例えば、本明細書に記載の化合物または本発明のスクリーニング方法を用いて同定された化合物は、週に1回、例えば、2、3、4、5、6、7、8、10、15、20週以上投与することができる。任意の特定の被験体にとって、特定の投与計画を、個体の必要性および組成物を投与するか、または投与を管理する人の専門的な判断に従って、長時間にわたって調整すべきであることが理解されるべきである。例えば、より低い用量が本明細書に記載の疾患または症状(例えば、癌)の治療において十分な活性を提供しない場合、組成物の用量を増加させることができる。逆に、疾患(例えば、癌)が軽減するか、または排除された場合、組成物の用量を減少させることができる。
【0125】
究極的には主治医が好適な量および投与計画を決定するであろうが、本明細書に記載のベクター、コンジュゲート、または組成物の治療上有効量は、例えば、0.0035μg〜20μg/kg体重/日または0.010μg〜140μg/kg体重/週の範囲にあってもよい。望ましくは、治療上有効量は、毎日、1日おきに、または週に2回投与される、0.025μg〜10μg/kgの範囲、例えば、少なくとも0.025、0.035、0.05、0.075、0.1、0.25、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、または9.0μg/kg体重である。さらに、治療上有効量は、毎週、1週おきに、3週毎に、または月に1回投与される、0.05μg〜20μg/kgの範囲、例えば、少なくとも0.05、0.7、0.15、0.2、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、10.0、12.0、14.0、16.0、または18.0μg/kg体重であってもよい。さらに、化合物の治療上有効量は、例えば、1日おきに、週に1回、1週おきに、または3週毎に投与される、0.1 mg/m2〜2,000 mg/m2の範囲であってもよい。例えば、ANG1005を、1、2、3、4週間毎に、または1ヶ月毎もしくは1ヶ月おきに、50、100、200、300、400、420、500、600、700、または1,000 mg/m2で投与することができる。1つの特定の例においては、ANG1005を3週間毎に300 mg/m2または420 mg/m2で投与する。別の実施形態においては、治療上有効量は、毎日、1日おきに、週に2回、毎週、または1週おきに投与される、1000μg/m2〜20,000μg/m2の範囲、例えば、少なくとも1000、1500、4000、または14,000μg/m2の化合物である。
【0126】
以下の実施例は、本発明を限定するよりもむしろ例示することを意図するものである。
【0127】
(実施例)
【実施例1】
【0128】
ANG1005の溶解性
ANG1005の溶解性を、いくつかの溶媒および界面活性剤中で試験した。単一の薬剤から得られた結果を、以下の表13に示す。
【表13】

【0129】
また、ANG1005の溶解性を、溶媒/界面活性剤混合物中でも試験した。これらの結果を表14に示す。
【表14】

【実施例2】
【0130】
ANG1005の可溶化条件
ANG1005を、凍結乾燥のための調製中でいくつかの可溶化条件に供した。これらの結果の概要を以下に示す。上記のように、ANG1005をまずDMSOに溶解した。この混合物に、加熱したSolutolまたはSolutolバッファー混合物を添加した。最後に、グリシンバッファーをANG1005/DMSO/Solutol混合物に添加した。次いで、表15中の可溶化条件を試験した。
【表15】

【0131】
これらの実験の結果を、以下の表16に示す。
【表16】

【0132】
これらの結果に基づいて、本発明者らは、前記製剤を40〜50℃の温度で処理することができると決定した。pH 4.5での再構成は不透明の溶液をもたらし得るため、Solutol HS 15によるミセルの形成を可能にするために、溶液のpHは約4.5以上であるべきである。ANG1005を添加する前にSolutol HS 15の酸性化すれば、その分解が最小化される。
【実施例3】
【0133】
凍結乾燥条件
溶解後、ANG1005混合物を水性バッファー(例えば、HClでpHを5.0に調整したグリシンバッファー、マンニトール、および塩化ナトリウム)中に希釈し、凍結し、凍結乾燥した。例示的条件は、上記の表4に記載されている。
【0134】
-70℃〜25℃の負荷温度を、区分1について試験した。区分2についての傾斜時間は、区分1と3の温度間の差異に従って変化し、これは最大で6時間であってよい。より短い時間枠が凍結乾燥ケーキの崩壊をもたらすため、本発明者らは、区分3を少なくとも12時間実施しなければならないと決定した。区分8および9を、上記で示された温度内に調整して、生成物の温度が2回目の乾燥の間に18℃〜21℃であることを確保する。生成物は融解を回避するために25℃以下で残存すべきである。上記の可溶化/凍結乾燥プロトコルを用いて、本発明者らは、いくつかの事例において、表17に示されるように、1%未満の残留DMSOを含む96%を超える純度の生成物を作製することができた。
【表17】

【0135】
1007135バッチおよび他のバッチのさらなる特性評価を、以下の表18に示す。
【表18】

【実施例4】
【0136】
凍結乾燥したANG1005の再懸濁
以下の手順を開発して、水溶液中にANG1005凍結乾燥製剤を溶解し、懸濁した。概略された手順は、120 mgのANG1005を含有する1個のバイアルにとって好適である。
【0137】
ANG1005バイアルを室温で平衡化させた。次いで、バイアルを通気した。18G 1 1/2''針を固定した20 ccの注射筒を用いて、4 mlの無水エタノールをゆっくりと(すなわち、30秒以上かけて)バイアルの側面を下にして注入した。次いで、バイアルを転頭ミキサー上に10分間置いたところ、エタノールはゆっくりとケーキを湿らせ、かくして乳白色の懸濁液が得られた。
【0138】
次いで、バイアルをミキサーから取り出し、20 ccのプラスチック製注射筒に18G 1.5''針を固定し、5%デキストロースを含む12 mlの乳酸加リンゲル液(乳酸リンゲル液)を、バイアルの側面を下にして注入した。次いで、バイアルを転頭ミキサー上に5分間置いた。次いで、バイアルを180度回転させた後、さらに5分間、転頭ミキサー上での混合を継続した。この時点で、懸濁液は気泡が最小限で透明であった。次いで、バイアルを5分間、ベンチ上に静置した後、次の工程(例えば、注射、分析のための希釈)に進めた。
【0139】
別の希釈液も試験した(表19)。これらの希釈液の使用により、完全に溶解した透明な溶液が得られたが、それらは、室温で5%デキストロースを含む乳酸加リンゲル液とエタノールの混合物よりも高いANG1005の分解をもたらした。
【表19】

【実施例5】
【0140】
さらなるバッファーおよび増量剤の試験
残留DMSO(0.5%)を低下させ、凍結乾燥サイクル(5日)を短縮するためにさらなる努力を払った。
【0141】
本発明者らは、製剤の様々な賦形剤(特に、グリシンおよび塩化ナトリウム)が、サイクルの2回目の乾燥の間のDMSO除去の効率の低下をもたらすと考えた。NaCl、グリシン、マンニトール、または水を用いずに作製された製剤は、非常に低いDMSO含量をもたらした(0.01%の桁)。しかしながら、マンニトールを用いない場合、ケーキは蝋のようであった(主にSolutolからなる)。これらの低DMSO製剤は全て、エタノールおよびD5W/乳酸加リンゲル液を用いる再構成に失敗した。さらに、グリシンが存在しない場合、pHは制御されなかった。これはANG1005の分解をもたらした。
【0142】
かくして、さらなる試験において、マンニトールを増量剤として保持し、グリシンをクエン酸および乳酸などのバッファーにより置換し、塩化ナトリウムを除去した。より短い凍結乾燥サイクルを用いて、これらの製剤は依然として0.05%の残留DMSOを含むケーキをもたらした。このレベルのDMSOでは、ケーキは可溶性ではなかった。さらなる製剤において、大豆レシチンをマンニトールの代わりに用いた。これは0.2%の残留DMSOをもたらした。0.2%の残留DMSOで、ケーキはエタノールおよびD5W/LR中に可溶性であった。かくして、本発明者らは、バイアルの再構成および輸液バッグ中へのさらなる希釈には最大で0.2〜0.4%のDMSOが必要であると考えた。凍結乾燥時間を、この範囲のDMSO濃度を可能にするように調整した。
【0143】
これらの試験において用いた組成物を、以下のように詳述する(表20〜22)。
【表20】

【0144】
【表21】

【0145】
【表22】

【0146】
組成物を以下のように調製した:0.5 gの1N HCl標準溶液を50 mlのFalconチューブに計量することにより、DMSO/HCl保存液を調製した。21.5 gのDMSOを添加し、よく混合してDMSO + 1N HCl保存液を得た。
【0147】
各組成物について、マンニトール、Solutol、クエン酸または乳酸、およびWFIを計量し、50 mlのFalconチューブに入れた。内容物をよく混合して溶解させた。チューブにキャップを付け、51℃に加熱した(「バッファー混合物」)。別の50 mlを用いてANG1005を計量した。次いで、DMSO/HCl保存液を添加し、溶液が透明になるまでボルテックスによりよく混合した。加熱したバッファー溶液を、攪拌しながらDMSO/ANG1005混合物にゆっくりと添加した。次いで、混合物をRTまで冷却させた。次いで、1700〜1730 mgの溶液を各バイアルに入れた。溶液を本明細書に記載のように凍結乾燥した。化合物を-20℃で保存した。
【0148】
次いで、再構成されるその能力について溶液を試験した。溶液を再構成させるために、エタノールを添加し、混合した。次いで、乳酸加リンゲル液を添加した。量を表23に示す。
【表23】

【0149】
再構成が成功した場合、サンプルの外見を記録した(色、顕微鏡下での結晶または固体PPTなど)。次いで、アリコートをHPLCにより分析することができる(例えば、アッセイおよび純度)。pHを測定することができる。
【実施例6】
【0150】
凍結乾燥ANG1005生成物の安定性試験
ANG1005生成物の時間に対する安定性試験を行う。約-15℃で保存した凍結乾燥生成物を、活性、純度、外見、pH、および分解についてモニターした。これらの試験の結果を以下の表24に示す。
【表24】

【実施例7】
【0151】
再構成後のANG1005生成物の安定性
溶液中での再構成後のANG1005の安定性を評価するために、いくつかの実験を行った。これらの実験を以下に記載する。
【0152】
実験1
注入用のANG1005の製造番号C0108002に由来する生成物を、1.0〜2.0 mg/mlの濃度範囲まで本明細書に記載のように再構成させた。2.0 mg/mlの濃度のANG1005は、INDにおいて以前に提供されたように臨床使用にとって最も高い実現可能な用量であると以前に決定されている。これらの予備実験を、ガラスバイアル中で小用量で行った。サンプルを室温で保持し、様々な時点で視覚的に検査した。選択されたサンプルを濾過した後、HPLC分析を行った。
【0153】
表25は、時間に対して試験した濃度にわたる溶液の視覚的透明度を示す。混濁の外見は、濃度の増加と時間の両方と相関するようである。選択されたサンプルのHPLC分析により、単一のANG1005のピークが様々な時点にわたって純度が有意に変化しないことが示された。関連物質のプロフィールの変化は観察されなかった(表26)。2個の関連物質のピークを注記し、2:1のコンジュゲート(RRT 0.88)とコンジュゲートされていないパクリタキセル(RRT 0.95)と同定する。RRTについてピークは1.15と観察された(8.1分);このピークは、ブランクのクロマトグラムにも存在するため、HPLCカラムに由来する不純物である。
【表25】

【0154】
【表26】

【0155】
実験2
実験1で得られた1.0 mg/mlでの安定性の結果を検証するために、臨床使用の条件下でさらなる研究を行った。注入用のANG1005の製造番号C0108002を、記載のように再構成して、500 mlのD5W輸液バッグ中で1.0 mg/mlの最終濃度を調製した。溶液は6時間の観察期間にわたって室温で視覚的に透明のままであり、純度または関連物質プロフィールの有意な変化は認められなかった(表27および図2を参照)。
【表27】

【0156】
実験3
注入用のANG1005の製造番号C0108002を再構成させ、ガラスバイアル中で2.0 mg/mlの最終濃度にD5W中に希釈した。サンプルを約6時間、室温で保持した。溶液は混濁し、これを遠心分離した。上清をデカントすることにより得られた沈降物を回収し、DMSO中に溶解し、HPLCにより分析した。再溶解した沈降物の主要なピークは、ANG1005が97.2%の純度を有すると同定された。関連物質のプロフィールの変化は観察されず、ただ2つの予想されるさらなるピークが存在した(RRT 0.88で1.3%およびRRT 0.95で1.5%)。このサンプルのHPLCクロマトグラムを図3に示す。1.15のRRTでピークが観察される(8.1分);このピークはHPLCカラムに由来する不純物であり、ブランクのクロマトグラムにも存在する。
【0157】
総合的なデータは、観察された濁度/混濁度は、同様に薬剤生成物の成分とD5Wとの相互作用に起因する、分解せずに溶液から出る無傷のANG1005の結果であることを示唆している。この現象は濃度および時間依存的であるようである。
【0158】
濁度を低下させるために、300 mg/m2を超えるANG1005の用量を受けている全ての患者について、1 mg/ml以下への最終濃度の低下が提言された。
【0159】
この知見は薬剤生成物中に残留するDMSOの量が減少することに最も起因することを示唆するいくつかのデータが存在する。薬剤生成物の第1のバッチ、製造番号C0108002は、0.54%の残留DMSO含量を有する。この変化は物質の溶解性に影響したようである。
【0160】
さらなる実験を行って、再構成された薬剤の安定性を増加させるための希釈手順を改変した。再構成プロセスの最後の工程における希釈剤として、5%のデキストロース注射液の代わりに乳酸加リンゲル液を用いて調製された溶液を試験する:注入用のANG1005の各バイアルを最初に4 mlの無水エタノールおよび12 mlの乳酸加リンゲル液/5%デキストロース注射液を用いて前記のように再構成させて6 mg/mlの濃度を達成した後、乳酸加リンゲル注射液でさらに希釈した。表28に示される予備データは、同じ濃度範囲(最大で2.0 mg/ml)での乳酸加リンゲル液によるD5Wの置換が、輸液溶液の観察された混濁を防止することができることを示唆している。全ての溶液は、ANG1005の純度に影響することなく、観察期間を通して透明のままであった。
【表28】

【0161】
他の実施形態
本明細書に記載の全ての特許、特許出願、および刊行物は、あたかもそれぞれの独立した特許、特許出願、または刊行物が具体的かつ個々に参照により本明細書に組み入れられると示されるのと同じ程度まで、参照により本明細書に組み入れられるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)パクリタキセル、パクリタキセル類似体、またはそのコンジュゲート、
(b)任意の等張化剤、
(c)緩衝化剤、
(d)増量剤、および、
(e)Cremophorではない可溶化剤、
を含む組成物。
【請求項2】
前記コンジュゲートが、
(i)ポリペプチドベクター、ならびに、
(ii)パクリタキセルおよびパクリタキセル類似体からなる群より選択される治療剤であって、ポリペプチドにコンジュゲートされた前記治療剤、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドベクターが、配列番号1〜116からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリペプチドベクターが、AngioPep-1(配列番号67);AngioPep-2(配列番号97)、またはAngioPep-7(配列番号112)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記同一性が90%である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記治療剤がパクリタキセルである、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記コンジュゲートがANG1005である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記等張化剤が塩化ナトリウムである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記緩衝化剤が溶液のpHを6未満に維持する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記pHが4〜6である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記緩衝化剤がグリシンである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記緩衝化剤がクエン酸または乳酸である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記可溶化剤が脂肪酸のポリオキシエチレンエステルである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記可溶化剤がSolutol HS 15である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記増量剤がマンニトールまたはソルビトールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
(f)0.01〜10%のDMSO、
をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
DMSOの量が5%未満である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
DMSOの前記量が1%未満である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
DMSOの前記量が0.2%〜1.0%である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が実質的にCremophorを含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物がCremophorを含まない、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物を水に溶解する、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
下記成分:

を含む組成物。
【請求項24】
前記等張化剤が塩化ナトリウムであり、前記緩衝化剤がグリシンであり、および前記増量剤がマンニトールである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
下記成分:

を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記等張化剤が塩化ナトリウムであり、前記緩衝化剤がグリシンであり、および前記増量剤がマンニトールである、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
下記成分:

を含む組成物。
【請求項28】
前記バッファーが乳酸またはクエン酸であり、前記増量剤がマンニトールである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
下記成分:

を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記バッファーが乳酸またはクエン酸であり、前記増量剤がマンニトールである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
癌を罹患している患者に請求項1〜30のいずれか1項に記載の組成物を投与する方法であって、該患者に該癌を治療するのに十分な量の前記組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項32】
前記癌が脳、卵巣、肺、肝臓、脾臓、または腎臓の癌である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
脳の癌がグリオブラストーマ、アストロサイトーマ、グリオーマ、髄芽腫、およびオリゴデンドローマ、ニューログリオーマ、上衣腫、および髄膜腫からなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項26に記載の組成物を含有する密閉容器。
【請求項35】
(a)請求項26に記載の密閉容器、および、
(b)使用説明書、
を含むキット。
【請求項36】
医薬組成物を調製するための方法であって、
(a)第1の可溶化剤に疎水性薬剤を溶解して、混合物を形成させること、
(b)工程(a)の混合物に第2の可溶化剤を添加すること、
(c)必要に応じて、水および緩衝化剤を前記混合物に添加すること、
(d)工程(c)の混合物を凍結乾燥すること、
を含み、該凍結乾燥が、第1の可溶化剤の量の少なくとも20%の減少をもたらすが、第2の可溶化剤の量を実質的に減少させない、前記方法。
【請求項37】
前記第1の可溶化剤がDMSOである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第2の可溶化剤が脂肪酸のポリオキシエチレンエステルである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
脂肪酸のポリオキシエチレンエステルがSolutol HS 15である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記疎水性薬剤がパクリタキセルまたはパクリタキセル類似体を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記疎水性薬剤が、
(a)ポリペプチドベクター、ならびに、
(b)パクリタキセルおよびパクリタキセル類似体からなる群より選択される薬剤であって、前記ベクターにコンジュゲートされた前記薬剤、
を含むコンジュゲートを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ポリペプチドベクターが、配列番号1〜105および107〜116からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ポリペプチドベクターが、AngioPep-1(配列番号67)、AngioPep-2(配列番号97)、またはAngioPep-7(配列番号112)に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記同一性が少なくとも90%である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記ポリペプチドが、AngioPep-1(配列番号67)、AngioPep-2(配列番号97)、またはAngioPep-7(配列番号112)のアミノ酸配列を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記コンジュゲートがANG1005である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
水および緩衝化剤を工程(c)において添加し、前記工程(d)の凍結乾燥が、
(i)前記混合物を凍結すること、
(ii)前記水の少なくとも一部を除去するのに十分な第1の温度および圧力で前記凍結された生成物を乾燥すること、ならびに、
(iii)前記第1の溶媒の少なくとも一部を除去するのに十分な第2の温度および圧力で前記生成物を乾燥すること、
を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記第1の溶媒がDMSOであり、前記第2の溶媒がSolutol HS 15である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
工程(b)の混合物を、工程(c)の凍結乾燥の前に濾過する、請求項36に記載の方法。
【請求項50】
前記混合物を工程(c)の凍結乾燥の前にバイアル中に入れる、請求項36に記載の方法。
【請求項51】
(e)前記凍結乾燥生成物を再懸濁する工程、
をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項52】
請求項36〜51に記載の方法のいずれかにより製造された医薬組成物。
【請求項53】
医薬組成物を製造する方法であって、
(a)DMSO中に、ポリペプチドベクターにコンジュゲートされたパクリタキセルまたはパクリタキセル類似体を含むコンジュゲートを溶解し、それによって混合物を形成させる工程、
(b)Solutol HS 15を前記混合物に添加する工程、
(c)前記混合物に、水、緩衝化剤、および必要に応じて、塩または増量剤を添加する工程、および、
(d)前記混合物から水およびDMSOを除去する条件下で該混合物を凍結乾燥する工程、
を含む、前記方法。
【請求項54】
前記Solutol HS 15を、水、緩衝化剤、および必要に応じて等張化剤または増量剤と混合した後、前記混合物に添加し、水、緩衝化剤、および必要に応じて等張化剤を、前記混合物中での前記コンジュゲートの溶解性を維持する量で添加する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記緩衝化剤が、溶液のpHを4〜6に維持する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記DMSOを、工程(a)の溶解の前にpH 3.5〜4.5に酸性化する、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記凍結乾燥が、前記混合物中のSolutol HS 15の量を実質的に減少させない、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記コンジュゲートが、AngioPep-2(配列番号97)を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項59】
前記パクリタキセル-ポリペプチドコンジュゲートがANG1005である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
請求項53〜59に記載の方法のいずれかにより製造された医薬組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−516587(P2011−516587A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504298(P2011−504298)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000542
【国際公開番号】WO2009/127072
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(509110839)アンジオケム,インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】