説明

パケット中継装置

【課題】簡単な設定変更でIPv6マルチプレフィクス問題を解消できるパケット中継装置を提供する。
【解決手段】通信網の一方に対応する第1プレフィクスを通信端末へ送信し、当該通信端末からのプレフィクス要求に応じて当該通信網の他方に対応する第2プレフィクスを当該通信端末へ送信し、当該第2プレフィクスに基づくアドレスを含むパケットを当該通信網の他方にルーティングするルーティング設定をし、当該通信端末からの当該第1プレフィクスに基づくアドレスを含むパケットを当該第1プレフィクスに基づいて当該通信網の一方へ中継し且つ当該通信端末からの第2プレフィクスに基づくアドレスを含むパケットを当該ルーティング設定に基づいて当該通信網の他方へ中継するパケット中継装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末からのパケットを互いに異なるプレフィクスに対応する2つの通信網のいずれかへ中継するパケット中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばパーソナルコンピュータなどの通信端末が、例えばIPv6ネットワークと次世代ネットワーク(NGN:next generation network)などの互いに異なるプレフィクスに対応する2つの通信網に対して通信する場合に、いわゆるIPv6マルチプレフィクス問題が生じることが知られている(例えば特許文献1)。2つのプレフィクスに基づく2つのアドレスを割り当てられた通信端末が、どちらのアドレスを使用すれば良いか判断できず、送信元アドレスを誤って選択してしまう又は通信経路を誤って送信してしまうという問題である。
【0003】
この問題を解決するために、従来、通信端末とホームゲートウェイ(HGW:Home GateWay)との間にいわゆるv6アダプタを設置していた。v6アダプタは、1つのIPv6アドレスのみを通信端末に配布し、IPv6通信プロトコルにおけるネットワーク・アドレス変換機能(NAT:Network Address Translation)やアプリケーションレベルゲートウェイ(ALG:Application Level Gateway)機能によりパケットに変換処理を施して、これを中継していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−017451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、NATやALGによる変換処理は、提供するサービスやプロトコル毎に動作が異なる。故に、サービスやプロトコルを追加する度に通信端末とv6アダプタの両方について設定変更が必要となってしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は上記した如き問題点に鑑みてなされたものであって、簡単な設定変更でIPv6マルチプレフィクス問題を解消できるパケット中継装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるパケット中継装置は、通信端末からのパケットを互いに異なるプレフィクスに対応する2つの通信網のいずれかへ中継するパケット中継装置であって、前記通信網の一方に対応する第1プレフィクスを前記通信端末へ送信する第1プレフィクス送信手段と、前記通信端末からのプレフィクス要求に応じて前記通信網の他方に対応する第2プレフィクスを前記通信端末へ送信する第2プレフィクス送信手段と、前記第2プレフィクスに基づくアドレスを含むパケットを前記通信網の他方にルーティングするルーティング設定をするルーティング設定手段と、前記通信端末からの前記第1プレフィクスに基づくアドレスを含むパケットを前記第1プレフィクスに基づいて前記通信網の一方へ中継し且つ前記通信端末からの第2プレフィクスに基づくアドレスを含むパケットを前記ルーティング設定に基づいて前記通信網の他方へ中継する中継手段と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるパケット中継装置によれば、簡単な設定変更でIPv6マルチプレフィクス問題を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】パケット中継装置を通信端末及び通信網と共に表すブロック図である。
【図2】パケット中継装置の構成を表すブロック図である。
【図3】ルーティング設定処理ルーチンを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施例について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
図1は、本実施例のパケット中継装置10を通信端末40、通信網51及び52と共に表すブロック図である。
【0012】
パケット中継装置10は、通信端末40から送信されたパケットを通信網51又は52へ中継する機能、及び通信網51及び52から到来したパケットを通信端末40へ中継する機能を有する。パケット中継装置10は、V6アダプタ20及びホームゲートウェイ(以下、HGWと称する)30からなる。通信端末40は、例えばパーソナルコンピュータなどの通信機能を備える端末である。通信網51は、例えばIPv6ネットワークである。通信網52は、例えば次世代ネットワーク(NGN)である。通信網51と通信網52とは互いに異なるプレフィクスに対応している。
【0013】
図2は、パケット中継装置10の構成を表すブロック図である。パケット中継装置10は、V6アダプタ20と、HGW30と、からなる。
【0014】
V6アダプタ20は、LAN(Local Area Network)側パケット送受信部21と、WAN(Wide Area Network)側パケット送受信部22と、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバ機能部23と、DHCPクライアント機能部24と、パケットルーティング処理部25と、を含む。
【0015】
LAN側パケット送受信部21は、通信端末40との間でパケットを送受信する。WAN側パケット送受信部22は、HGW30との間でパケットを送受信する。
【0016】
DHCPサーバ機能部23は、通信端末40から送信されたDHCPv6−PD(prefix delegation)によるプレフィクス要求信号(以下、リクエストと称する)を受信しこれをDHCPクライアント機能部24へ中継し、当該リクエストに対応するIPv6プレフィクスを含むプレフィクス応答信号(以下、レスポンスと称する)をDHCPクライアント機能部24から受け取りこれを通信端末40へ送信するいわゆるDHCPサーバ機能を備える。IPv6プレフィクスは、IPv6アドレスを構成する例えば128ビットのうちの上位64ビットのアドレスである。
【0017】
DHCPクライアント機能部24は、DHCPサーバ機能部23から中継されたDHCPv6−PDによるリクエストをHGW30へ送信し、当該リクエストに対応するIPv6プレフィクスを含むレスポンスをHGW30から受信しこれをDHCPサーバ機能部23へ与えるいわゆるDHCPクライアント機能を備える。
【0018】
パケットルーティング処理部25は、DHCPクライアント機能部24からのプレフィクスを伴うルーティング設定指示に応じて、当該プレフィクスを通信端末40に対してルーティングする。すなわち、パケットルーティング処理部25は、通信端末40からの当該プレフィクスを含むパケットを受信した場合にこれを通信網52へ中継する設定をする。
【0019】
HGW30は、LAN側パケット送受信部31と、WAN側パケット送受信部32と、DHCPサーバ機能部33と、パケットルーティング処理部34と、を含む。
【0020】
LAN側パケット送受信部31は、V6アダプタ20との間でパケットを送受信する。WAN側パケット送受信部32は、通信網51及び52を介してパケットを送受信する。
【0021】
DHCPサーバ機能部33は、V6アダプタ20から送信されたDHCPv6−PDによるリクエストに応じて、通信網52に対応する複数のIPv6プレフィクス(以下、第2プレフィクスと称する)のうちの1つを選択し、これを含むレスポンスをV6アダプタ20に送信するいわゆるDHCPサーバ機能を備える。なお、DHCPサーバ機能部33は、当該複数のIPv6プレフィクスを通信網52を介して予め取得し保持している。
【0022】
パケットルーティング処理部34は、DHCPサーバ機能部33によって選択されたIPv6プレフィクスをV6アダプタ20に対してルーティングする。すなわち、パケットルーティング処理部34は、V6アダプタ20からの当該プレフィクスを含むパケットを受信した場合にこれを通信網52へ中継する設定をする。
【0023】
図3は、パケット中継装置10によるルーティング設定処理ルーチンを表すフローチャートである。以下、図3を参照しつつ、パケット中継装置10によるルーティング設定処理について説明する。
【0024】
先ず、V6アダプタ20のDHCPサーバ機能部23は、例えば通信端末40が起動したときに通信端末40から最初に発せられたリクエストに応じて、LAN側パケット送受信部21を介して、通信網51に対応するプレフィクス(以下、第1プレフィクスと称する)をRA(Router Advertisement)方式により通信端末40へ送信する(ステップS1)。通信端末40は第1プレフィクスと例えば自身のMACアドレスに基づくホストアドレスとを結合して通信網51に対応するアドレス(以下、第1アドレスと称する)を生成する。
【0025】
その後、通信端末40からV6アダプタ20へDHCPv6によるリクエストが送信される。当該リクエストのIPv6アドレスのSRC(Source)は、送信元である通信端末40のIPアドレスである。当該IPv6アドレスのDST(Destination)は、宛先であるV6アダプタ20のIPアドレスである。当該リクエストのデータ部は、通信端末40の例えばアドレス等のデータである。
【0026】
DHCPサーバ機能部23は、LAN側パケット送受信部21を介して当該リクエストを受信し(ステップS2)、これをDHCPクライアント機能部24へ中継する(ステップS3)。
【0027】
DHCPクライアント機能部24は、当該リクエストをHGW30へ送信する(ステップS4)。当該リクエストのIPv6アドレスのSRCは、送信元であるV6アダプタ20のIPアドレスである。当該IPv6アドレスのDSTは、宛先であるHGW30のIPアドレスである。当該リクエストのデータ部は、V6アダプタ20の例えばアドレス等のデータである。
【0028】
DHCPサーバ機能部33は、当該リクエストに応じて、通信網52に対応する複数の第2プレフィクスのうちの1つを選択する(ステップS5)。パケットルーティング処理部34は、DHCPサーバ機能部33によって選択された第2プレフィクスをV6アダプタ20に対してルーティングする(ステップS5)。
【0029】
DHCPサーバ機能部33は、LAN側パケット送受信部31を介してレスポンスをV6アダプタ20へ送信する(ステップS6)。当該レスポンスのIPv6アドレスのSRCは、送信元であるHGW30のIPアドレスである。当該IPv6アドレスのDSTは、宛先であるV6アダプタ20のIPアドレスである。当該レスポンスのデータ部は、DHCPサーバ機能部33によって選択された第2プレフィクスを示すデータである。
【0030】
DHCPクライアント機能部24は、WAN側パケット送受信部22を介して当該レスポンスを受信し、これをDHCPサーバ機能部23へ中継する。また、DHCPクライアント機能部24は、当該レスポンスのデータ部に含まれている第2プレフィクスを通信端末40に対してルーティングする旨の指示をパケットルーティング処理部25へ発する。パケットルーティング処理部25は、当該指示に応じて当該第2プレフィクスを通信端末40に対してルーティングする(ステップS7)。上記ステップS5及びS7の処理によって、第2プレフィクスを含むパケットを通信網52にルーティングする設定がなされる。
【0031】
DHCPサーバ機能部23は、LAN側パケット送受信部21を介して当該レスポンスを通信端末40へ送信する(ステップS8)。当該レスポンスのIPv6アドレスのSRCは、送信元であるV6アダプタ20のIPアドレスである。当該IPv6アドレスのDSTは、宛先である通信端末40のIPアドレスである。当該レスポンスのデータ部は、DHCPサーバ機能部33によって選択された第2プレフィクスを示すものである。
【0032】
通信端末40は当該レスポンスを受信し、これに含まれる第2プレフィクスと例えば自身のMACアドレスに基づくホストアドレスとを結合して通信網52に対応するアドレス(以下、第2アドレスと称する)を生成する。
【0033】
なお、ステップS1の処理を行う手段を第1プレフィクス送信手段と称する。ステップS2〜S8からなる処理うちの通信端末40からのプレフィクス要求に応じて第2プレフィクスを通信端末40へ送信する処理を行う手段をプレフィクス送信手段と称する。ステップS5及びS7のルーティング設定処理を行う手段をルーティング設定手段と称する。
【0034】
上記処理後、通信端末40は通信網51へパケットを送信する場合には、V6アダプタ20からRA方式によって送信された第1プレフィクスを含む第1アドレスを送信元アドレスとしてパケットを送信する。パケットルーティング処理部25及び34は、通信端末40からの第1アドレスを含むパケットをその第1プレフィクスに基づいて通信網51へ中継する。
【0035】
また、通信端末40は通信網52へパケットを送信する場合には、V6アダプタ20からDHCP方式によって送信された第2プレフィクスを含む第2アドレスを送信元アドレスとしてパケットを送信する。パケットルーティング処理部25及び34は、通信端末40からの第2アドレスを含むパケットをそのルーティング設定に従って通信網52へ中継する。なお、これらの中継処理を行う手段を中継手段と称する。
【0036】
上記したように、本実施例のパケット中継装置10は、通信網51に対応する第1プレフィクスを含む第1アドレスを通信端末40から受信した場合には、これを当該第1プレフィクスに基づいて通信網51へ中継する。また、パケット中継装置10は、通信網52に対応する第2プレフィクスを含む第2アドレスを通信端末40から受信した場合には、これをルーティング設定に従って通信網52へ中継する。
【0037】
このように、本実施例のパケット中継装置10によれば、ルーティング設定を変更するのみで、中継すべき通信網へパケットを中継することができる。ゆえに、従来のようにV6アダプタ20がパケットに対してNATやALG等の変換処理を施す必要がなく、ルーティング設定の変更という簡単な処理のみでIPv6マルチプレクス問題を解消することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 パケット中継装置
20 V6アダプタ
21 LAN側パケット送受信部
22 WAN側パケット送受信部
23 DHCPサーバ機能部
24 DHCPクライアント機能部
25 パケットルーティング処理部
30 HGW
31 LAN側パケット送受信部
32 WAN側パケット送受信部
33 DHCPサーバ機能部
34 パケットルーティング処理部
40 通信端末
51、52 通信網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末からのパケットを互いに異なるプレフィクスに対応する2つの通信網のいずれかへ中継するパケット中継装置であって、
前記通信網の一方に対応する第1プレフィクスを前記通信端末へ送信する第1プレフィクス送信手段と、
前記通信端末からのプレフィクス要求に応じて前記通信網の他方に対応する第2プレフィクスを前記通信端末へ送信する第2プレフィクス送信手段と、
前記第2プレフィクスに基づくアドレスを含むパケットを前記通信網の他方にルーティングするルーティング設定をするルーティング設定手段と、
前記通信端末からの前記第1プレフィクスに基づくアドレスを含むパケットを前記第1プレフィクスに基づいて前記通信網の一方へ中継し且つ前記通信端末からの第2プレフィクスに基づくアドレスを含むパケットを前記ルーティング設定に基づいて前記通信網の他方へ中継する中継手段と、を含むことを特徴とするパケット中継装置。
【請求項2】
前記第1プレフィクス送信手段は、RA方式で前記第1プレフィクスを送信することを特徴とする請求項1に記載のパケット中継装置。
【請求項3】
前記第2プレフィクス送信手段は、DHCP方式で前記第2プレフィクスを送信することを特徴とする請求項1に記載のパケット中継装置。
【請求項4】
前記アドレスの各々はIPv6通信プロトコルに従ったアドレスであることを特徴とする請求項1に記載のパケット中継装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−205507(P2011−205507A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72149(P2010−72149)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(308033722)株式会社OKIネットワークス (165)
【Fターム(参考)】