説明

パケット処理装置及びネットワークシステム

【課題】 通信装置間を流れるパケットの処理において通信品質の劣化を低減することができる。
【解決手段】本発明は、少なくとも音声又は動画の一方を有するストリームデータのパケットを授受する通信装置と接続し、その通信装置に係るパケットを処理して転送するパケット処理装置を有するネットワークシステムに関する。そして、パケット処理装置は、当該パケット処理装置のパケット処理に係るアプリケーション制御処理を含む汎用的な処理を行う汎用処理部と、汎用処理部から与えられる制御情報に従って、通信装置から受信したパケットを処理するものであって、所定の処理対象パケット以外の例外パケットについては上記汎用処理部へ処理を依頼する通常パケット処理部と、当該パケット処理装置の動作状況に応じて、通常パケット処理部から、上記汎用処理部へ流れる例外パケットに係る帯域制御を行う手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パケット処理装置及び方法に関し、例えば、VPN(Virtual Private Network)に対応したVoIP(Voice over Internet Protocol)ゲートウェイに適用し得る。
【背景技術】
【0002】
従来、VPNに対応したVoIPゲートウェイ装置等のパケット処理装置に関する技術としては、特許文献1に記載されているパケット交換装置があった。
【0003】
特許文献1に記載されているパケット交換装置では、ファストパス部、ミドルパス部、スローパス部と3つのパケット処理部を備えている。特許文献1の記載技術において、処理対象のパケットは、まずファストパス部で処理可能である場合(当該パケットがテーブルに登録されている範囲の場合)には、ファストパス部で高速に処理され、処理不能なパケットである場合には、その内容に応じて、ミドルパス部又はスローパス部で処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許公開番号2006−180162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のパケット交換装置を、VPNに対応したVoIPゲートウェイ装置に適用しようとした場合、通常は、ファストパス部は、高速にパケット処理可能な専用プロセッサで実行され、ミドルパス部又はスローパス部の少なくとも一方は、当該装置のアプリケーション(VoIP機能やルータ機能に係るアプリケーション)と同じプロセッサで実行される。
【0006】
この場合、ファストパス部で処理不能なパケットの量が多くなると、ミドルパス部又はスローパス部の処理量が多くなり、同じプロセッサで実行される他のアプリケーションの動作が圧迫され、当該アプリケーションに係る通信品質が劣化してしまうという問題があった。特に、リアルタイム処理を行うVoIP機能に影響があると、音声品質を劣化させてしまう。
【0007】
そのため、通信装置間を流れるパケットの処理において通信品質の劣化を低減することができる、パケット処理装置及びネットワークシステムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明は、少なくとも音声又は動画の一方を有するストリームデータのパケットを授受する通信装置と接続し、上記通信装置が送出したパケット、又は、上記通信装置宛のパケットを処理して転送するパケット処理装置において、(1)当該パケット処理装置のパケット処理に係るアプリケーション制御処理を含む汎用的な処理を行う汎用処理部と、(2)上記汎用処理部から与えられる制御情報に従って、パケットを処理するものであって、所定の処理対象パケット以外の例外パケットについては上記汎用処理部へ処理を依頼する通常パケット処理部と、(3)当該パケット処理装置の動作状況に応じて、上記通常パケット処理部から、上記汎用処理部へ流れる例外パケットに係る帯域制御条件を決定する帯域制御決定手段と、(4)上記帯域制御決定手段が決定した帯域制御条件を用いて、上記通常パケット処理部から、上記汎用処理部へ流れる例外パケットに係る帯域制御を行う帯域制御手段とを有することを特徴とする。
【0009】
第2の本発明は、少なくとも音声又は動画の一方を有するストリームデータのパケットを授受する通信装置と接続し、上記通信装置が送出したパケット、又は、上記通信装置宛のパケットを処理して転送するパケット処理装置を1又は複数有するネットワークシステムにおいて、上記パケット処理装置の1部又は全部に、第1の本発明のパケット処理装置を適用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通信装置間を流れるパケットの処理において通信品質の劣化を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るVoIPゲートウェイ(パケット処理装置)の機能的構成について示したブロック図である。
【図2】実施形態に係るネットワークシステムの全体構成について示したブロック図である。
【図3】実施形態に係るVoIP機能部から帯域制御管理部へ通知する情報の例について示した説明図である。
【図4】実施形態に係る帯域制御管理部において管理される情報の例について示した説明図である。
【図5】実施形態に係るVoIPゲートウェイ(パケット処理装置)の起動時の帯域制御に係る動作について示したシーケンス図である。
【図6】実施形態に係るVoIPゲートウェイ(パケット処理装置)において、VoIP通話が開始・終了した場合の帯域制御に係る動作について示したシーケンス図である。
【図7】実施形態に係るVoIPゲートウェイ(パケット処理装置)において、VPNトンネルが生成・削除された場合の帯域制御に係る動作について示したシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)主たる実施形態
以下、本発明によるパケット処理装置及びネットワークシステムの一実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0013】
(A−1)実施形態の構成
図2は、この実施形態のネットワークシステム1の全体構成について示した説明図である。
【0014】
ネットワークシステム1には、ネットワークN、2台のVoIPゲートウェイ10−1、10−2、及び2台のIP電話端末20−1、20−2が配置されている。また、VoIPゲートウェイ10−1とVoIPゲートウェイ10−2とは、ネットワークNを介して接続されており、VoIPゲートウェイ10−1、10−2の配下には、それぞれ、IP電話端末20−1、20−2が配置されている。このように、ネットワークシステム1は、IP電話端末20−1とIP電話端末20−2との間でVoIP通信をさせるものである。
【0015】
また、図2に示すように、VoIPゲートウェイ10−1、10−2の間は、VPNトンネルを用いて接続されており、IP電話端末20間の通信セッションごとにVPNトンネルが形成される。
【0016】
ネットワークNとしては、例えば、インターネット等の既存IPネットワークを適用することができる。
【0017】
なお、ネットワークシステム1に配置されるVoIPゲートウェイ10及びIP電話端末20の数は限定されないものである。
【0018】
VoIPゲートウェイ10−1、10−2は、同じ構成としても良いし、異なる構成としても良いが、以下では、同じ構成であるものとして説明する。
【0019】
図1は、この実施形態のVoIPゲートウェイ10の全体構成を示すブロック図である。
【0020】
VoIPゲートウェイ10は、アプリケーション処理部11及びファストパス処理部12を有している。
【0021】
図1においては、アプリケーション処理部11と、ファストパス処理部12とは、それぞれ異なるプロセッサにより構成されているものとして説明する。
【0022】
アプリケーション処理部11、ファストパス処理部12は、それぞれアプリケーション用プロセッサ、ファストパス用プロセッサを用いて構築されるものとする。
【0023】
アプリケーション処理部11は、VoIPゲートウェイ10におけるVoIP機能やルータ機能に係るアプリケーション等を含む汎用的な処理を行う機能を担っている。アプリケーション処理部11は、例えば、Linux(登録商標)のようなネットワークスタックを持つ汎用OS(ミドルウェア)を用いて構築するようにしてもよい。そして、そのミドルウェア上で、VoIPアプリケーションやPPPoE(PPP Over Ethernet(登録商標))クライアントやOSPF(Open Shortest Path First)プロセスのようなルータ機能等のアプリケーションをインストールするようにしても良い。
【0024】
次に、ファストパス処理部12の詳細について説明する。
【0025】
ファストパス処理部12は、パケット処理部121、IF122、IF123、帯域制御部124を有している。
【0026】
IF122は、VoIPゲートウェイ10におけるLAN側のインタフェース(通信端末20と接続するインタフェース)であり、例えば、Ethernet(登録商標)等のインタフェースを適用することができる。
【0027】
IF123は、VoIPゲートウェイ10におけるWAN側のインタフェース(ネットワークNと接続するインタフェース)であり、例えば、Ethernet(登録商標)インタフェースや、ADSL等、インターネット接続事業者がユーザ装置をインターネットへ接続させる手段を適用することができる。
【0028】
ファストパス処理部12は、IF122又はIF123から入ってきた、処理対象のパケット(以下、「ファストパス対象パケット」という)の高速処理(例えば、暗号化、復号化等の処理)を、ハードウェア処理等で実現する。そして、ファストパス対象でないパケット(以下、「例外パケット」という)は、図1に示すようにアプリケーション処理部11に引き渡されて処理される。
【0029】
ファストパス処理部12は、受信したファストパス対象パケットを高速処理するためのテーブルを有しており、そのテーブルのエントリは、アプリケーション処理部11から設定される。パケット処理部121は、例えば、入力パケットのヘッダを参照して、すでに上述のテーブルのエントリに登録されているパケットは、ファストパス転送(自身で処理)する。そして、上述のテーブルのエントリに登録されていないパケットは、例外パケットとして、アプリケーション処理部11に転送される。
【0030】
なお、上述のテーブルの内容やファストパス処理部12によるファストパス対象パケットの処理の具体的な内容については、既存のVPN対応のVoIPゲートウェイ装置と同様の処理を適用することができるため、詳しい説明を省略する。
【0031】
ファストパス対象パケットは、少なくとも、ファストパス処理部12において上述のテーブルを用いて処理可能なパケットが対象範囲となる。また、ファストパス処理部12において上述のテーブルを用いて処理可能なパケットであっても、複雑な処理を伴うパケットについては、ファストパス対象パケットの対象範囲から除外して、例外パケットとして取り扱うようにしても良い。
【0032】
帯域制御部124は、ファストパス処理部12から、アプリケーション処理部11に流れるパケットの帯域幅の上限値(以下、「帯域制限値」という)を、アプリケーション処理部11(ファストパス設定部115)の制御に応じた値になるように、帯域制御するものである。
【0033】
ファストパス処理部12は、上述のように高速処理を行うことを目的として、アプリケーション処理部11とは異なるプロセッサを用いて構築されているので、複雑な処理を行わせることは、例えば、処理の低速化、回路の大規模化、構築コストの増加、消費電力の増加等につながるため、できるだけ簡素な処理のみを行わせるようにする方が望ましい。そのため、VoIPゲートウェイ10では、ファストパス処理部12とアプリケーション処理部11とに、帯域制御に係る機能を分けている。
【0034】
そこで、この実施形態の帯域制御部124では、ファストパス処理部12からアプリケーション処理部11へ流入するパケット全体の帯域制限のみを行い、その他のきめこまかい条件の帯域制限については、アプリケーション処理部11側に委ねるものとする。
【0035】
なお、帯域制御部124によるファストパス処理部12から、アプリケーション処理部11に流れるパケットの帯域制限の具体的な処理アルゴリズムについては限定されないものであるが、例えば、既存のネットワーク装置(ルータや負荷分散装置等)において用いられる帯域制限と同様の処理方法を適用することができる。
【0036】
次に、アプリケーション処理部11の詳細について説明する。
【0037】
アプリケーション処理部11は、VoIP機能部111、ルータ機能部112、設定データ格納部113、パケット処理部114、ファストパス設定部115、帯域制御管理部116、帯域制御部117を有している。
【0038】
ファストパス設定部115は、ファストパス処理部12の処理設定を行う機能を担っている。ファストパス設定部115が担う機能は、大きく分けて機能は2つある。第1の機能は、帯域制御管理部116の制御に応じて、ファストパス処理部12(帯域制御部124)の帯域制御設定を行う機能である。第2の機能は、任意のパケットをファストパス処理部12で処理させるために、パケット処理部121のテーブルにエントリを追加する機能である。
【0039】
設定データ格納部113は、VoIPゲートウェイ10の動作設定に係るデータを記憶する記憶手段であり、例えば、フラッシュメモリにより構築するようにしても良い。設定データ格納部113には、例えば、ユーザがWebのGUIやコマンドライン等で設定したデータを保存するようにしても良い。設定データ格納部113に格納される設定データとしては、例えば、「WAN接続モード設定」、「VPN設定」、「VoIP設定」等が挙げられる。VoIPゲートウェイ10では、装置起動時、アプリケーション処理部11は、設定データ格納部113のデータを読み込んで、その設定データに応じた動作を行う。
【0040】
「WAN接続モード設定」とは、当該VoIPゲートウェイ10における、IF123(ネットワークNに接続するためのインタフェース)の動作モードを示しており、ここでは、例として、「固定IP」、「DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)」、「PPPoE」のいずれかが設定されるものとして説明する。
【0041】
「固定IP」は、IF123に割り振られるIPアドレスが静的に設定されるものであることを示す。「WAN接続モード設定」が「固定IP」である場合には、IF123に割り振られるIPアドレスは、予めVoIPゲートウェイ10において設定されたアドレスが設定される。
【0042】
「WAN接続モード設定」が「DHCP」である場合には、IF123に割り振られるIPアドレスは、図示しないネットワークN上のDHCPサーバから割り振られたIPアドレスが設定されることになる。「WAN接続モード設定」が「DHCP」である場合には、VoIPゲートウェイ10では、起動時に上述のDHCPサーバへIF123に割り振られるIPアドレスを問い合わせて設定するようにしても良い。なお、上述のDHCPサーバとしては、既存のものを適用することができる。
【0043】
「WAN接続モード設定」が「PPPoE」である場合には、VoIPゲートウェイ10は、起動時に、図示しないネットワークN上のPPPoEゲートウェイにPPPoEを用いて接続し、上述のPPPoEゲートウェイを介して、ネットワークNに接続することになる。なお、上述のPPPoEゲートウェイとしては、既存のものを適用することができる。
【0044】
「VPN設定」としては、例えば、接続先宛のIPアドレス、トラフィックセレクタ、暗号方式、認証方式等の情報が該当する。
【0045】
「VoIP設定」としては、例えば、外線設定、内線設定、収容端末設定等が該当する。
【0046】
パケット処理部114は、ファストパス処理部12から与えられた例外パケットを処理(例えば、暗号化・復号化等)して、パケット処理部121に与える。なお、パケット処理部114における例外パケットの処理の具体的な内容については、既存のVPN対応のVoIPゲートウェイ装置と同様の処理を適用することができるため、詳しい説明を省略する。パケット処理部114は、例えば、アプリケーション処理部11においてカーネルのネットワークスタックに該当する。
【0047】
帯域制御部117は、ファストパス処理部12からアプリケーション処理部11へ流入してくるパケットに係る帯域制御を、帯域制御管理部116の制御に応じて行う。
【0048】
上述の通り、VoIPゲートウェイ10では、ファストパス処理部12からアプリケーション処理部11へ流れるパケットに係る帯域制御を、ファストパス処理部12側の帯域制御部124と、アプリケーション処理部11側の帯域制御部117とで行っている。アプリケーション処理部11側の帯域制御部117では、ファストパス処理部12側と異なり、パケットのヘッダ情報を判別して、細かな帯域制御設定(例えば、VPNトンネルごとの帯域設定)を行う機能を担っている。
【0049】
なお、帯域制御部117による帯域制御処理の具体的な処理アルゴリズムについても、上述のファストパス処理部12側の帯域制御部124と同様に限定されず、例えば、既存のネットワーク装置(ルータや負荷分散装置等)において用いられる帯域制限と同様の処理方法を適用することができる。
【0050】
VoIP機能部111は、VoIPアプリケーション機能、すなわち、呼制御機能等のIP−PBXに係る機能を担っている。VoIP機能部111は、予めユーザが設定した設定データを読み込んで、動作するようにしても良い。
【0051】
VoIP機能部111では、アプリケーション側のプロセッサに負荷がかかり、本アプリケーションのCPU占有率が一定値より下がると、VoIP音声通話にノイズが発生したり、通話が切断される等の悪影響が出る場合がある。ファストパス処理部12と送受信する例外パケットの量が多いとこのような状況になる。
【0052】
また、VoIP機能部111では、配下のIP電話端末20においてVoIP通話を開始・切断した時、イベントとして帯域制御管理部に通知する。
【0053】
なお、VoIP機能部111は、既存のIP−PBXやVoIPゲートウェイと同様のものを適用することができる。
【0054】
ルータ機能部112は、ルータ系のアプリケーション機能、例えば、PPPoEクライアントやOSPFプロセス、IKE鍵交換プロセスのようなルータ機能を提供するアプリケーション群の機能を担っている。ルータ機能部112は、ユーザが設定した設定データを読み込んで動作するようにしても良い。
【0055】
なお、ルータ機能部112としては、既存のVPN対応のルータ等と同様のものを適用することができる。
【0056】
ルータ機能部112では、例えば、IKE鍵交換プロセスがVPNトンネルを生成・削除した時、その旨をイベントとして帯域制御管理部116に通知する。
【0057】
図3は、VoIP機能部111が、帯域制御管理部116に通知するVPNトンネルに係る情報に含まれる情報の例について示している。
【0058】
図3では、VoIP機能部111におけるVPNトンネルの設定データとして、「VPNチャンネル番号」、「トラフィックセレクタ」、「利用中の暗号化アルゴリズム」の項目の情報を有する。
【0059】
「VPNチャンネル番号」は、ルータ機能部112において、VPNトンネルを識別するための識別番号である。
【0060】
「トラフィックセレクタ」は、当該VPNトンネルの対象となるパケットの範囲を定義している。例えば、図3において、「192.169.1.0/24→192.168.2.0/24:UDP」は、送信元アドレスが192.169.1.0〜192.169.1.255(「/24」はサブネットマスクのビット長を示している)で、送信先アドレスが192.168.2.0〜192.168.2.255で、かつ、UDPのパケットを示すことになる。
【0061】
「利用中の暗号化アルゴリズム」は、当該VPNトンネルにおいて用いられる暗号化アルゴリズムの種類を示しており、例えば、AES(Advanced Encryption Standard)や3DES(3 Data Encryption Standard)等の情報が設定される。
【0062】
ルータ機能部112は、図3のようなVPNトンネルに関するデータ(図3に示すテーブルのうち、イベントに該当するVPNトンネルの列のみ)と共に、イベントを通知するようにしても良い。
【0063】
帯域制御管理部116は、ファストパス処理部12側の帯域制御部124とアプリケーション処理部11側の帯域制御部117を管理する。VoIPゲートウェイ10の起動中、それぞれの帯域制御部に設定した内容は、いつでも帯域制御をON/OFFできるように、この帯域制御管理部が全て保持しておくようにしておくことが望ましい。
【0064】
図4は、帯域制御管理部116において管理される情報の例について示した説明図である。
【0065】
帯域制御管理部116では、例えば、図4のように、当該VoIPゲートウェイ10におけるWAN接続モードの内容や、各VPNトンネルの接続状態等を管理するための情報(以下、「管理情報」という)を記憶して管理するようにしても良い。
【0066】
図4では、データD1の部分では、当該VoIPゲートウェイ10におけるWAN接続モードを示している。
【0067】
また、データD2、D3、…は、それぞれ、上述の図3に示すVPNトンネル番号が1、2、…のVPNトンネルに係る状態を示している。
【0068】
例えば、データD2では、「VPNトンネル1の状態:接続中」となっているので、当該VPNトンネルは現在セッションが確立中であることを示している。一方データD2では、「VPNトンネル2の状態:切断中」となっているので、当該VPNトンネルは現在セッションが切断中であることを示している。
【0069】
また、データD2、D3、…における、「トラフィックセレクタ」、「暗号化アルゴリズム」は、上述の図2における「トラフィックセレクタ」、「利用中の暗号化アルゴリズム」に対応する値が設定されることになる。
【0070】
次に、帯域制御管理部116によるファストパス処理部12側の帯域制御部117に対する設定と、ファストパス処理部12側の帯域制御部124に対する設定について説明する。
【0071】
[ファストパス処理部側の帯域設定]
帯域制御管理部116では、装置起動時に設定データを読み込み、「WAN接続モード設定」の内容に応じて、ファストパス処理部12側の帯域制御部124に設定する帯域制限値を決定する。帯域制御管理部116では、例えば、「WAN接続モード設定」が、「PPPoE」ならばPPPoEカプセル化の負荷を考慮して、「DHCP」や「固定IP」の場合よりも少ない帯域制限値を帯域制御部124に設定する帯域制限値として決定する。例えば、設定データを読み込んで、WAN接続モードが「DHCP」や「固定IP」ならば、帯域制限値を「2000pps」に帯域決定するようにしても良い。そして、WAN動作モードが「PPPoE」ならば、帯域制限値を「1500pps」に決定するようにしても良い。
【0072】
また、帯域制御管理部116は、ファストパス処理部12側の帯域制御部124に制限帯域幅を設定する際には、ファストパス設定部115を介して設定する。
【0073】
[アプリケーション処理部側の帯域設定]
帯域制御管理部116では、VoIP機能部111やルータ機能部112の処理状況、例えば、VoIP通話状態やVPNトンネルの有無によって、アプリケーション処理部11側の帯域制御部117に設定する帯域制限値を設定する。
【0074】
帯域制御管理部116では、VoIP機能部111の処理状況として、VoIP通話状態(例えば、配下のIP電話端末20が当該VoIPゲートウェイ10を介して通話中)ならば帯域制限をONにし、VoIP通話中でなければ帯域制限をOFFにするようにしても良い(又は、より大きい帯域制限値に設定するようにしても良い)。
【0075】
例えば、VoIP通話中である場合には、アプリケーション処理部11側の帯域制御部117に設定する帯域制限値を、1000pps程度に設定し、VoIP通話中でない場合(終了した場合)には2000pps程度に設定することが挙げられる。また、VoIP通話中でない場合に、帯域制御をOFFにする場合には、アプリケーション処理部11側の帯域制御部117に設定する帯域制限値だけでなく、ファストパス処理部12側の帯域制御部124についても帯域制御をOFFにするようにしても良い。
【0076】
なお、上記では、VoIPゲートウェイ10の起動時に帯域制御管理部116が、ファストパス処理部12側の帯域制御部124の帯域設定に係る制御を行うことについて説明したが、起動時点では帯域制限の設定はせずに、設定データ格納部113の設定内容の保持だけ行い、VoIP通話開始時にまとめて帯域設定するようにしても良い。
【0077】
また、VPNトンネルを通るパケットに係る処理は、暗号化・復号化処理を伴うため、プロセッサの負荷が高い。よって、帯域制御管理部116では、ルータアプリからのVPNトンネル生成イベント通知と同時に取得するデータ(図3参照)を元に、VPNトンネルを通るパケット、すなわち、「トラフィックセレクタ」の項目に該当するパケットは、さらに強く帯域制限するようにしても良い。例えば、上述の帯域制限値の例に合わせると、「300pps」程度に帯域制限するようにしても良い。
【0078】
(A−2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有するこの実施形態のネットワークシステム1の動作を説明する。
【0079】
ネットワークシステム1の動作において、特徴となるのは、各VoIPゲートウェイ10における、ファストパス処理部12とアプリケーション処理部11との間の帯域制御に係る処理が中心となるので、以下では、この帯域制御に係る動作を中心に説明する。
【0080】
なお、VoIPゲートウェイ10間の処理や、IP電話端末20とVoIPゲートウェイ10との間の処理については、既存のものと同様の処理を適用することができるので説明を省略する。
【0081】
(A−2−1)VoIPゲートウェイ起動時の動作
図5は、VoIPゲートウェイ10−1の起動時において、帯域制御管理部116がファストパス処理部12(帯域制御部124)を制御する動作の一例について示したシーケンス図である。なお、VoIPゲートウェイ10−2の動作についてもVoIPゲートウェイ10−1と同様であるので説明を省略する。
【0082】
まず、VoIPゲートウェイ10−1では、装置が起動すると(S101)、帯域制御管理部116により、設定データ格納部113の設定データが読み込まれる(S102、S103)。
【0083】
次に、帯域制御管理部116では、VoIPゲートウェイ10−1が起動する際のWAN動作モードが把握され、把握した動作モードに応じた帯域制限値が求められる(S104)。
【0084】
次に、帯域制御管理部116から、ファストパス処理部12へ、上述のステップS104において求められた帯域制限値に帯域制限を要求する帯域制限設定要求が、ファストパス設定部115に通知される(S105)。
【0085】
次に、ファストパス設定部115により、帯域制御管理部116からの帯域制限設定要求に応じた帯域制限値の設定が開始され、ファストパス処理部12側の帯域制御部124へ、帯域制限設定要求が通知される(S106、S107)。
【0086】
次に、ファストパス処理部12(パケット処理部121)では、上述のS107において通知された帯域制限設定要求に応じた帯域制限値が設定される(S108)。
【0087】
次に、ファストパス処理部12側の帯域制御部124から帯域制限の設定が完了した旨の応答が、ファストパス設定部115を介して帯域制御管理部116へ通知される(S109、S110)。
【0088】
(A−2−2)VoIP通話の開始・終了(切断)時の動作
図6は、VoIPゲートウェイ10−1において、VoIP通話が開始し、その後その通話が終了(切断)した場合の帯域制御に係る動作の一例について示したシーケンス図である。なお、VoIPゲートウェイ10−2の動作については、VoIPゲートウェイ10−1と同様であるので説明を省略する。
【0089】
[VoIP通話開始時の動作]
まず、VoIPゲートウェイ10−1のVoIP機能部111では、配下のIP電話端末20−1についてVoIP通話を開始させると(S201)、帯域制御管理部116へその旨のイベント通知をする(S202)。
【0090】
次に、イベント通知があると、帯域制御管理部116では、アプリケーション処理部11側の帯域制御部117に設定する帯域制限値と、ファストパス処理部12側の帯域制御部124に設定する帯域制限値とが求められ、帯域制御管理部116から、帯域制御部124へ、求めた帯域幅を設定する帯域制限設定要求が、ファストパス設定部115に通知される(S203)。
【0091】
上述のステップS203において、ファストパス処理部12側の帯域制御部124に設定する帯域制限値は、設定データ格納部113から読み込まれた設定データに基づいて、当該VoIPゲートウェイ10−1のWAN動作モードが把握され、把握した動作モードに応じて帯域制限値が決定するようにしても良い。また、上述のステップS203において、ファストパス処理部12側の帯域制御部124に設定する帯域制限値としては、例えば、VoIP通話開始時の値として予め設定されているものを設定するようにしても良い。
【0092】
なお、この実施形態においては、VoIP通話開始時に、アプリケーション処理部11側の帯域制御部117と、ファストパス処理部12側の帯域制御部124の両方について帯域制限値を設定する処理について説明しているが、いずれか一方のみに設定するようにしても良い。
【0093】
また、上述の図5に係る説明では、VoIPゲートウェイ10の起動時に帯域制御管理部116が、ファストパス処理部12側の帯域制御部124の帯域設定に係る制御を行うことについて説明したが、起動時点では帯域制限の設定はせずに、設定データ格納部113の設定内容の保持だけ行い、VoIP通話開始時にまとめて帯域設定するようにしても良い。
【0094】
次に、ファストパス設定部115により、帯域制御管理部116からの帯域制限設定要求に応じた帯域制限値の設定が開始され、ファストパス処理部12側の帯域制御部124へ、帯域制限設定要求が通知される(S204、S205)。
【0095】
次に、ファストパス処理部12側の帯域制御部124では、上述のS205において通知された帯域制限設定要求に基づく、帯域制限値が設定される(S206)。
【0096】
そして、帯域制御部124からファストパス設定部115へ、設定完了の応答が通知される(S207)。
【0097】
そして、帯域制御管理部116から、アプリケーション処理部11側の帯域制御部117へも、帯域制限設定要求が通知される(S208)。
【0098】
次に、アプリケーション処理部11側の帯域制御部117では、上述のS208において通知された帯域制限設定要求に基づく帯域制限値が設定される(S209)。
【0099】
そして、帯域制御部117から帯域制御管理部116へ、設定完了の応答が通知される(S210)。
【0100】
そして、ファストパス設定部115では、帯域制御管理部116から、最新の管理情報(上述の図4の内容)の内容が読み込まれて保持される(S211)。
【0101】
そして、ファストパス設定部115から帯域制御管理部116へ、設定完了の応答が通知される(S212)。
【0102】
[VoIP通話終了、切断時の動作]
その後、VoIPゲートウェイ10−1のVoIP機能部111で、配下のIP電話端末20−1のVoIP通話(上述のステップ201で開始させた通話)が終了すると(S213)、帯域制御管理部116へその旨のイベント通知をする(S214)。
【0103】
次に、イベント通知があると、帯域制御管理部116から、ファストパス設定部115へ、上述のステップS205で通知した帯域制限要求に基づく帯域制限を解除する帯域制限解除要求が通知される(S215)。
【0104】
次に、帯域制御管理部116から帯域制限解除要求が通知されると、ファストパス設定部115では、帯域制限解除の設定が開始され、ファストパス処理部12側の帯域制御部124へ、帯域制御管理部116からの制御に基づく帯域制限解除要求が通知される(S216、S217)。
【0105】
次に、ファストパス処理部12側の帯域制御部124では、上述のS217において通知された帯域制限解除要求に基づいて、上述のステップS206で設定された帯域制限値が解除される(S218)。
【0106】
そして、帯域制御部124からファストパス設定部115へ、設定完了の応答が通知される(S219)。
【0107】
そして、帯域制御管理部116から、アプリケーション処理部11側の帯域制御部117へも、上述のステップS208で通知した帯域制限要求に基づく帯域制限を解除する帯域制限解除要求が通知される(S220)。
【0108】
次に、アプリケーション処理部11側の帯域制御部117では、上述のS220において通知された帯域制限解除要求に基づいて、上述のステップS209で設定された帯域制限値が解除される(S221)。
【0109】
そして、帯域制御部117から帯域制御管理部116へ、設定完了の応答が通知される(S222)。
【0110】
そして、ファストパス設定部115では、帯域制御管理部116から、最新の管理情報(上述の図4の内容)の内容が読み込まれて保持される(S223)。
【0111】
そして、ファストパス設定部115から帯域制御管理部116へ、設定完了の応答が通知される(S224)。
【0112】
(A−2−3)VPNトンネルの生成・削除時の動作
図7は、VoIPゲートウェイ10−1において、VPNトンネルが生成され、その後削除された場合の帯域制御に係る動作の一例について示したシーケンス図である。なお、VoIPゲートウェイ10−2の動作についてもVoIPゲートウェイ10−1と同様であるので説明を省略する。
【0113】
[VPNトンネルの生成時の動作]
まず、VoIPゲートウェイ10−1のルータ機能部112では、配下のIP電話端末20−1の要求等に応じてVPNトンネルが新たに生成されると(S301)、帯域制御管理部116へその旨のイベント通知をする(S302)。
【0114】
次に、イベント通知があると、帯域制御管理部116では、管理情報(上述の図4の情報)を更新し(例えば、該当するVPNトンネルの状態を接続中にする)、生成されたVPNトンネルのトラフィックセレクタに該当するパケットについて、設定する帯域制限値が求められる(S303)。そして、帯域制御管理部116により、求めた帯域制限値を設定する帯域制限設定要求が、帯域制御部117へ通知される(S304)。
【0115】
なお、上述のステップS303において求められる帯域制限値は、例えば、VPNトンネル1本あたりに設定する帯域制限値であっても良いし、接続中の全てのVPNトンネルでの合計値としても良い。
【0116】
次に、帯域制御部117では、上述のS304において通知された帯域制限設定要求に基づく、帯域制限値が設定される(S305)。
【0117】
そして、帯域制御部117から帯域制御管理部116へ、設定完了の応答が通知される(S306)。
【0118】
[VPNトンネル削除時の動作]
その後、VoIPゲートウェイ10−1のルータ機能部112において、上述のステップS301で生成されたVPNトンネルの削除(切断)が行われると(S307)、帯域制御管理部116へその旨のイベント通知をする(S308)。
【0119】
次に、イベント通知があると、帯域制御管理部116では、管理情報(上述の図4の情報)を更新し(例えば、該当するVPNトンネルの状態を切断中にする)、削除されたVPNトンネルのトラフィックセレクタに該当するパケットについて、帯域制限値の設定解除が開始され、帯域制御部117へ帯域制限解除要求が通知される(S309、S310)。
【0120】
次に、帯域制御部117では、上述のS310において通知された帯域制限解除要求に基づいて、帯域制限値が解除される(S311)。
【0121】
そして、帯域制御部117から帯域制御管理部116へ、設定完了の応答が通知される(S312)。
【0122】
(A−3)実施形態の効果
この実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0123】
(A−3−1)この実施形態のVoIPゲートウェイ10では、設定データ格納部113の内容に応じて装置起動時に帯域制限値を設定し、アプリケーション側のプロセッサの負荷を最適な値に調整することができる。これにより、VoIPゲートウェイ10では、VoIP通話品質に影響を与えることなく、例外パケットを最大限処理することが可能となる。
【0124】
(A−3−2)VoIPゲートウェイ10では、VoIP通話の状況(例えば、通話の開始・切断等)に応じて、ファストパス処理部12からアプリケーション処理部11への帯域制御を行うようにしている。例えば、図6等に示されるように、VoIPアプリケーションの影響を考慮し、VoIP通話開始時に帯域制限を設定、VoIP通話切断時に帯域制限を解除又は、より緩やかな帯域制限するように変更している。これにより、VoIPゲートウェイ10では、VoIP通話品質に影響を与えることなく、例外パケットを効率的に処理することが可能となる。また、VoIP通話していない際は、アプリケーション側のプロセッサ(アプリケーション処理部11)のリソースを効率的に利用することができる。
【0125】
(A−3−3)VoIPゲートウェイ10では、VPNトンネルに係る処理状況(例えば、VPNトンネルの生成・削除)に応じて、ファストパス処理部12からアプリケーション処理部11への帯域制御を行うようにしている。例えば、図7に示されるように、VPNトンネル生成時にVPNトンネルを通るパケットにのみ帯域制御を設定、VPNトンネル削除時に生成時に設定した帯域制御を解除するように変更している。これにより、VoIP通話品質に影響を与えることなく、処理負荷の高いVPNトンネルを通る例外パケット処理のみを効果的に帯域制限することができる。また、VPNトンネルを通らない例外パケットに対しては、アプリケーション側のプロセッサのリソースを効率的に利用することができる。
【0126】
(A−3−4)特許文献1に示されるように従来は、アプリケーション側のプロセッサ上(アプリケーション処理部11に相当)でVoIPやVPNに係るアプリケーションが動作するシステムの場合、例外パケットによるアプリケーション用プロセッサヘの負荷が通信品質(音声品質)を劣化させる可能性があった。
【0127】
一方、この実施形態のVoIPゲートウェイ10では、上述のように、設定データ格納部113の内容、VoIP通話処理の状況、VPNトンネリング処理の状況等、当該VoIPゲートウェイ10の動作状況に応じて、ファストパス処理部12からアプリケーション処理部11へ流れる例外パケットに係る帯域制御を行っている。
【0128】
これにより、VoIPゲートウェイ10では、VoIP通話品質に影響を与えることなく、例外パケットを効率的に処理することが可能となる。また、VoIP通話していない際は、アプリケーション側のプロセッサ(アプリケーション処理部11)のリソースを効率的に利用することができる。
【0129】
(B)他の実施形態
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0130】
(B−1)上記の実施形態においては、VoIPゲートウェイ10におけるファストパス処理部12からアプリケーション処理部11へ流れる例外パケットに係る帯域制御は、アプリケーション処理部11側の帯域制御部117と、ファストパス処理部12側の帯域制御部124とに機能を分けて構築しているが、いずれか一方のみで構築するようにしても良い。また、アプリケーション処理部11とファストパス処理部12との間に独立した帯域制御手段(例えば、別個のプロセッサ)を設けて実現するようにしても良い。
【0131】
(B−2)上記の実施形態においては、2つのプロセッサを用いて、VoIPゲートウェイ10を構築する例について説明したが、プロセッサの数は限定されず、シングルプロセッサ、もしくは3つ以上のプロセッサをもつゲートウェイに適用しても良い。例えば、物理的には1つのプロセッサであっても、タイムスライス等のディスパッチにより、仮想的に複数のCPUとして構築し、それぞれの仮想的なCPUに、アプリケーション処理部11やファストパス処理部12等の処理を割り当てるようにしても良い。
【0132】
(B−3)上記の実施形態においては、VoIPゲートウェイ10−1とVoIPゲートウェイ10−2との間でVPNトンネルを形成する構成について説明したが、VoIPゲートウェイ10が直接IP電話端末20とVPNトンネルを形成するようにしても良い。
【0133】
(B−4)上記の実施形態では、帯域制御管理部116において、「WAN接続モード設定」の内容に応じて、帯域制御に適用する帯域制限値の算出を行うことについて説明したが、その他の条件を、帯域制限値の算出条件として、変更又は追加するようにしても良い。
【0134】
例えば、その他の接続条件としては、「タグVLAN」の適用の有無が挙げられる。VoIPゲートウェイ10においてタグVLANが適用される場合には、VoIPゲートウェイ10からネットワークNへパケットを送出する際に、タグVLAN用のタグを付加する等のカプセリングの処理が必要となる。このカプセリングの負荷を考慮して、帯域制御管理部116では、タグVLANの適用が有ると設定されている場合には、より帯域制限を強くする(帯域制限値を低くする)ようにしても良い。
【0135】
すなわち、上述のVLANタグ挿入の有無など、その設定によってパケット処理全体の負荷が変わる機能の有効・無効によって帯域制御値を決定しても良い。また、パケット処理全体の負荷が変わる機能の有効・無効が複数ある場合には、それらの機能の有効・無効の組み合わせに応じて帯域制限値を決定するようにしても良い。
【0136】
(B−5)上記の実施形態においては、ファストパス処理部12からアプリケーション処理部11へ流れる例外パケットに係る帯域制御を調整する要素として、設定データ格納部113の内容、VoIP通話処理の状況、VPNトンネリング処理の状況の3つを挙げているが、3つのうち一部だけを適用するようにしても良いし、その他の要素を加えて適用するようにしても良く、組み合わせは限定されないものである。
【0137】
その他の要素としては、例えば、アプリケーション処理部11において用いられるプロセッサの負荷状況等が挙げられる。例えば、アプリケーション処理部11において用いられるプロセッサの負荷が高いほど、ファストパス処理部12からアプリケーション処理部11へ流れる例外パケットの帯域制限を強める(帯域制限値を低くする)ようにしてもよい。
【0138】
また、例えば、VPNトンネルが使用するアルゴリズムの処理負荷(ルータ機能部112に係る処理負荷)によって帯域制限値を決定するようにしても良い。
【0139】
(B−6)上記の実施形態においては、本発明のパケット処理装置を、VoIPゲートウェイに適用した例について説明したが、本発明のパケット処理装置が処理するパケットの種類はVoIPに限定されず、その他のパケットを処理する装置に適用するようにしても良い。
【0140】
例えば、上記の実施形態では、本発明のパケット処理装置を、VoIPのパケットを処理する装置として説明しているが、処理する対象のパケットとして、その他のストリームデータのパケットに置き換えることが挙げられる。例えば、VoIPパケットを、動画像データ(例えば、ビデオ・オン・デマンドにおける配信データ)のパケットに置き換えるようにしても良いし、テレビ電話や音声付の動画像のように、音声データ及び動画像データのパケットに置き換えるようにしても良い。
【0141】
また、上記の実施形態においては、本発明のパケット処理装置を、VPNに対応したVoIPゲートウェイに適用する例について説明したが、VoIP機能とルータ機能を持つIP−PBX等に適用するようにしても良い。
【符号の説明】
【0142】
1…ネットワークシステム、10、10−1、10−2…VoIPゲートウェイ(パケット処理装置)、11…アプリケーション処理部、111…VoIP機能部、112…ルータ機能部、113…設定データ格納部、114…パケット処理部、115…ファストパス設定部、116…帯域制御管理部、117…帯域制御部、12…ファストパス処理部、121…パケット処理部、122、123…IF、124…帯域制御部、20、20−1、20−2…IP電話端末、N…ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも音声又は動画の一方を有するストリームデータのパケットを授受する通信装置と接続し、上記通信装置が送出したパケット、又は、上記通信装置宛のパケットを処理して転送するパケット処理装置において、
当該パケット処理装置のパケット処理に係るアプリケーション制御処理を含む汎用的な処理を行う汎用処理部と、
上記汎用処理部から与えられる制御情報に従って、パケットを処理するものであって、所定の処理対象パケット以外の例外パケットについては上記汎用処理部へ処理を依頼する通常パケット処理部と、
当該パケット処理装置の動作状況に応じて、上記通常パケット処理部から、上記汎用処理部へ流れる例外パケットに係る帯域制御条件を決定する帯域制御条件決定手段と、
上記帯域制御決定手段が決定した帯域制御条件を用いて、上記通常パケット処理部から、上記汎用処理部へ流れる例外パケットに係る帯域制御を行う帯域制御手段と
を有することを特徴とするパケット処理装置。
【請求項2】
当該パケット処理装置がネットワークへ接続する際の接続条件に係る接続条件情報を記憶する接続条件情報記憶手段をさらに有し、
上記帯域制御条件決定手段は、少なくとも、上記接続条件情報記憶手段が記憶している接続条件情報の内容を利用して、帯域制御条件を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のパケット処理装置。
【請求項3】
当該パケット処理装置は、上記通信装置が授受するVoIP通話に係るVoIPパケットの処理を行うものであり、
上記汎用処理部では、少なくとも、VoIPパケット処理に係るアプリケーション制御処理が行われ、
上記帯域制御条件決定手段は、少なくとも、上記通信装置の当該パケット処理装置を介した通話状況に係る通話状況情報を利用して、帯域制御条件を決定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のパケット処理装置。
【請求項4】
当該パケット処理装置は、他のパケット処理装置との間で、VPNトンネルを用いて接続し、上記VPNトンネルは上記通信装置との通信セッションごとに生成されており、上記通信装置に係るパケットは上記VPNトンネルを介して送受信され、
上記汎用処理部では、少なくとも、上記VPNトンネルの処理に係るアプリケーション制御処理が行われ、
上記帯域制御条件決定手段は、少なくとも、当該パケット処理装置でのVPNトンネルの接続状況に係るVPNトンネル接続状況情報を利用して、帯域制御条件を決定する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパケット処理装置。
【請求項5】
少なくとも音声又は動画の一方を有するストリームデータのパケットを授受する通信装置と接続し、上記通信装置が送出したパケット、又は、上記通信装置宛のパケットを処理して転送するパケット処理装置を1又は複数有するネットワークシステムにおいて、
上記パケット処理装置の1部又は全部に、請求項1〜4のいずれかに記載のパケット処理装置を適用したことを特徴とするネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−114391(P2011−114391A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266520(P2009−266520)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(308033722)株式会社OKIネットワークス (165)
【Fターム(参考)】