説明

パケット送信装置および方法

【目的】より簡単な構成によって安定したクロックを伝送することができるパケット送信装置および方法を提供する。
【解決手段】パケット送信装置10は、クロック位相比較部22にて、映像信号102に同期したクロック106と所定のネットワーク26のクロック112との非同期により生じる不連続の発生を、これら2つのクロックの位相差から検出するとともに、2つのクロックの位相が一致するタイミングを検出して比較結果信号118を生成し、IPパケット生成部24にて、比較結果信号118が位相一致を示す場合にのみ、映像系およびネットワーク系のタイムスタンプ110および116をデータ信号104に重畳してIPパケット120を生成して伝送するので、位相差情報を大幅に削減して安定したクロック情報を伝送することができ、また受信側にてクロックを再生する際にジッタの発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムにおいて映像または音声などのデータを示す通信信号を送信する場合に、そのデータの再生に係るクロック情報を高精度に多重して伝送するパケット送信装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、通信システムにおいて、所定の映像または音声などのデータを示す通信信号を送信する場合、受信側でそのデータの再生に係るクロックを送信側におけるクロックと同期させるために、送信側でそのクロック情報を伝送するものがある。
【0003】
たとえば、非特許文献1に示すように、国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)によって勧告されたMPEG(Moving Picture Experts Group)-2システムでは、映像信号、音声信号またはデータを伝送する際に、各信号を統合および同期化することが標準化されている。このシステムでは、たとえば、TV信号を放送または通信してリアルタイムに伝送する場合、ここで規定されたMPEG-2トランスポートストリーム(TS:Transport Stream)が一般的に用いられる。
【0004】
このように、映像信号をMPEG-2 TSで伝送して放送または通信で使用する場合、受信側で連続的に安定して信号を再生するためには、受信側における映像信号の再生に係るクロック信号を、送信側のクロック信号に同期させる必要がある。MPEG-2 TSの規定によれば、PCR(Program Clock Reference)と呼ばれる時刻情報を映像信号に多重して伝送し、受信側でこのPCRに同期したクロックを再生することができる。
【0005】
また、非特許文献2および3によれば、HDTV(High Definition Television)信号を圧縮し、インターネットなどのIP網を介して伝送することが規定されている。映像信号を通信回線を利用して伝送するとき、とくに放送用信号の伝送では高品質の信号を維持することが要求されるので、送信側と同期したクロックを受信側で再生することが必要となり、送信側においてクロック情報とともに放送用信号を伝送する。
【0006】
たとえば、非特許文献2では、送信すべきディジタル映像信号(SDI:Serial Digital Interface)から148.5MHzのクロック情報を抽出し、このクロック情報を映像信号とともにIPパケット化して伝送し、受信側でこれに同期したクロックを再生することが記載されている。
【0007】
これらの通信システムでは、インターネットなどのネットワークを介して映像信号に係るクロック情報を伝送しても、送信側と受信側とでネットワーククロックが非同期である場合には、受信側においてクロックの周波数を正確に再生することは困難となる。
【0008】
これらの通信システムにおいて、映像信号などのデータを、インターネットなどの通信網を利用して放送または通信して伝送する場合、ネットワークのクロック周波数と映像信号のクロック周波数とは、通常、非同期である。この場合、送信側では、映像信号のクロック情報とネットワーククロックとを同期させた上で、そのクロック情報を読み出し、映像信号に付加して伝送するが、このようにして送信されるクロック情報は、1クロック程度の誤差を有することになる。
【0009】
このようなクロック情報の誤差は、受信側において、クロック再生部にフィルタを備えることにより抑制することができるが、再生したクロックに対し、たとえばそのジッタ特性に対して影響を与えることがある。
【0010】
他方、特許文献1では、伝送されたクロックの周波数精度を高めることができる画像符号化復号化装置が記載されている。この装置では、ネットワーククロックに応じて映像信号のクロック情報を標本化して、ネットワーククロックの周期に整数Mを乗じた値が映像クロックの周期に整数Nを乗じた値と等しくなるように整数NおよびMを求める。このとき、映像クロックは、位相の異なるM個のネットワーククロックで標本化されて、その映像クロックの位相が、M個の周期で一巡する値として決定されるので、その整数Mを周波数の小数点以下に相当する情報として使用することができ、高い周波数精度を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001-204046号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ISO/IEC 13818-1:2000(E),Information technology - Generic coding of moving pictures and associated audio information: Systems
【非特許文献2】RFC (Request For Comments) 3497 (RTP Payload Format for Society ofMotion Picture and Television Engineers (SMPTE) 292M Video) インターネット<URL:http://www.ietf.org/rfc/rfc3497.txt>
【非特許文献3】Pro-MPEG Code of Practice #4 release1, July 2004 (Transmission ofHigh Bit Rate Studio Streams over IP Networks)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、ネットワーククロックおよび映像クロックの周波数からあらかじめ分周比を算出し、送信側および受信側の間で周波数の小数点以下に相当する情報を伝送して再生するための専用の処理回路が必要となり、回路規模が増大するという問題がある。
【0014】
本発明は、このような従来技術の欠点を解消し、より簡単な構成によって安定したクロックを伝送することができるパケット送信装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上述の課題を解決するために、所定のネットワークを介して所望のデータを含むディジタル通信信号を送信するパケット送信装置は、このデータの再生クロックに基づいてデータタイムスタンプを生成するデータタイムスタンプ生成手段と、このネットワークのクロックに基づいてネットワークタイムスタンプを生成するネットワークタイムスタンプ生成手段と、このデータの再生クロックおよびこのネットワーククロックの位相を比較して、双方の位相が一致するか否かを示す比較結果信号を出力するクロック位相比較手段と、この比較結果信号が位相一致を示す場合に、このデータタイムスタンプおよびこのネットワークタイムスタンプを重畳してこのディジタル通信信号を生成するパケット生成手段とを含むことを特徴とする。
【0016】
また、所定のネットワークを介して所望のデータを含むディジタル通信信号を送信するパケット送信方法は、このデータの再生クロックに基づいてデータタイムスタンプを生成するデータタイムスタンプ生成工程と、送信側のネットワーククロックに基づいてネットワークタイムスタンプを生成するネットワークタイムスタンプ生成工程と、このデータの再生クロックおよびこのネットワーククロックの位相を比較して、双方の位相が一致するか否かを示す比較結果信号を出力するクロック位相比較工程と、この比較結果信号が位相一致を示す場合に、このデータタイムスタンプおよびこのネットワークタイムスタンプを重畳してこのディジタル通信信号を生成するパケット生成工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のパケット送信装置によれば、所定のネットワークを利用して映像信号などのデータ信号を伝送する際に、映像信号に同期したクロックとそのネットワークのクロックとが非同期であるために生じる不連続の発生タイミングを、これら2つのクロックの位相差から検出するとともに、2つのクロックの位相が一致するタイミングを検出し、そのタイミングのタイムスタンプのみを抽出してデータ信号に重畳して伝送することにより、タイムスタンプに潜在的に含まれていた位相差情報を大幅に削減し、安定したクロック情報を伝送することができ、また受信側にてクロックを再生する際にジッタの発生を抑制することができる。
【0018】
また、本発明のパケット伝送装置によれば、簡単な位相比較によって処理が行われるので、回路規模を削減することができる。さらに、このような伝送装置を適用することにより、受信側では、位相を検出するための特別な処理を必要とせずに、ジッタが抑圧されたクロックを再生することができる。
【0019】
さらに、本発明のパケット送信装置によれば、実際に入力されたクロックの位相比較結果に応じて基準位相を検出し、この基準位相に応じてタイムスタンプをデータ信号に重畳しているので、入力クロックに周波数誤差がある場合でも、基準パターンが検出されるタイミングが早くなったり遅くなったりすることにより、周波数誤差が吸収されるので、破綻することなく、入力信号に追従して基準位相を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るパケット送信装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す実施例のパケット送信装置における動作手順を説明するタイミングチャートである。
【図3】図1に示す実施例のパケット送信装置において、ネットワークタイムスタンプを重畳したパケットの例を示す概要図である。
【図4】図1に示す実施例のパケット送信装置におけるタイムスタンプ生成部を制御する制御部の他の構成例を示すブロック図である。
【図5】図4に示す制御部を用いるパケット送信装置の動作手順を説明するタイミングチャートである。
【図6】図4に示す制御部における位相比較カウンタ値の推移の例を示す表である。
【図7】図6から連続して、図4に示す制御部における位相比較カウンタ値の推移の例を示す表である。
【図8】図7から連続して、図4に示す制御部における位相比較カウンタ値の推移の例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に添付図面を参照して、本発明によるパケット送信装置の実施例を詳細に説明する。たとえば、パケット送信装置10は、図1に示すように、送信すべき通信信号のクロックをイコライザ部12で抽出し、そのクロックを映像系クロックカウンタ14で計数し、そのカウント値に応じて映像系タイムスタンプ生成部16が映像系タイムスタンプを生成し、また、送信側のネットワーク系クロックをネットワーク系クロックカウンタ18で計数し、そのカウント値に応じてネットワーク系タイムスタンプ生成部20がネットワーク系タイムスタンプを生成するもので、本実施例ではとくに、映像系クロックおよびネットワーク系クロックの位相をクロック位相比較部22で比較し、その比較結果に応じてタイムスタンプ生成部16および20がタイムスタンプを生成し、このようにして生成されたタイムスタンプおよび通信信号に基づいてIPパケット生成部24でIPパケットを生成して所定のネットワーク26へと送信する。なお、本発明の理解に直接関係のない部分は、図示を省略し、冗長な説明を避ける。
【0022】
本装置10は、本実施例では通信信号として映像信号を送信するものとし、映像信号のクロックをカウントする映像系クロックカウンタ14および映像系タイムスタンプを生成する映像系タイムスタンプ生成部16を有しているが、その他のデータを通信信号により送信するように構成されて、このデータに係るクロックカウンタ14およびタイムスタンプ生成部16を有して構成されてもよい。
【0023】
本実施例の本装置10は、たとえば、送信すべき通信信号102として、ディジタル化された映像信号であるSDI(Serial Digital Interface)信号をIPパケット化して伝送するものでよい。本装置10は、所定のネットワーク26として、放送網または同期通信網もしくは非同期通信網などの通信網を利用することができる。
【0024】
イコライザ部12は、通信信号102に対して、イコライザ処理、シリアル・パラレル変換処理およびクロック抽出処理を施すもので、これらの処理後のパラレル化した通信信号104をIPパケット生成部24に供給し、抽出した映像系クロック信号106を映像系クロックカウンタ14およびクロック位相比較部22に供給する。イコライザ部12は、市販の集積回路(IC:Integrated Circuit)で構成されるものでよい。また、イコライザ部12におけるこれらの処理は、それぞれ独立した各部として構成されてもよい。
【0025】
映像系クロックカウンタ14は、入力されたクロックから時刻情報を生成するもので、本実施例では、イコライザ部12で得られた映像系のパラレルクロック信号106をカウントし、そのカウント値108を映像系クロック情報として映像系タイムスタンプ生成部16に供給する。
【0026】
映像系タイムスタンプ生成部16は、IPパケットに時刻情報を重畳するために備えられるもので、本実施例では、映像系クロックカウンタ14のカウント値108を映像系タイムスタンプ110としてIPパケット生成部24に供給し、たとえば、ネットワーク系クロック信号112およびクロック位相比較部22による比較結果信号118に応じて映像系タイムスタンプ110をIPパケット生成部24に出力する。
【0027】
ネットワーク系クロックカウンタ18は、送信側にかかるネットワークの周波数情報を生成するもので、本実施例では、送信側のネットワークに準じた基準クロック信号であるネットワーク系クロック信号112をカウントし、そのカウント値114をネットワーク系クロック情報としてネットワーク系タイムスタンプ生成部20に供給する。
【0028】
ネットワーク系タイムスタンプ生成部20は、IPパケットに送信側ネットワークの周波数情報を重畳するために備えられるもので、本実施例では、ネットワーク系クロックカウンタ20のカウント値114をネットワーク系タイムスタンプ116としてIPパケット生成部24に供給し、たとえば、ネットワーク系クロック信号112およびクロック位相比較部22による比較結果信号118に応じてネットワーク系タイムスタンプ116をIPパケット生成部24に出力する。
【0029】
クロック位相比較部22は、映像系クロック信号106およびネットワーク系クロック信号112を入力し、双方の位相を比較してその比較結果信号118を出力するものである。このクロック位相比較部22は、ネットワーククロックと非同期なデータ通信においてクロック情報の不連続点の発生タイミングおよび/または周期を検出するもので、たとえば本実施例では、双方のクロックの位相が一致するタイミングを検出し、その一致するタイミングを示す比較結果信号118を出力して映像系タイムスタンプ生成部16およびネットワーク系タイムスタンプ生成部20に供給する。
【0030】
クロック位相比較部22は、たとえば、ネットワーク系クロック信号112の1サイクルの間において、映像系クロック信号106の入力が所定回数である位相を検出し、このような検出がされた場合に位相一致を示す比較結果信号118を生成することができ、映像系クロック信号106の入力が通常回数である場合には、このような比較結果信号118を生成せずに、通常動作することとなる。たとえば、この比較部22は、2つの比較するクロック106および112の周波数が近く、たとえばそれぞれ148 MHzおよび125 MHzである場合には、所定回数を2回にして動作するとよく、また、2つのクロック106および112の周波数の差が2倍以上である場合には、通常回数および所定回数をそれぞれ2回および3回にして動作することができる。
【0031】
IPパケット生成部24は、送信部12が送信すべき通信信号102に対応するIPパケット120を生成して所定のネットワーク26に向けて送信するもので、本実施例では、送信側の時刻情報および周波数情報を重畳してIPパケット120を生成し、たとえば、映像系タイムスタンプ110およびネットワーク系タイムスタンプ116を通信信号104に付加してIPパケット120を生成する。
【0032】
次に、本実施例におけるパケット送信装置10によるIPパケット送信にかかる動作例を図2のタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0033】
本実施例では、本装置10が送信すべき通信信号102として、ディジタル映像信号のSDI信号を適用し、また、たとえばHDTV(High Definition Television)のSDI信号であるHD-SDI(High Definition Serial Digital Interface)信号を適用することができる。
【0034】
このHD-SDI信号は、1.485/1.001 GHzまたは1.485 GHzのシリアル信号であり、たとえばディジタルテレビ放送では、1.485/1.001 GHzの信号が一般的に採用されている。また、HD-SDI信号は、輝度信号および色差信号からなる映像信号で、それぞれ10ビットずつを74.25/1.001 MHzでディジタル化し、1本に多重してシリアル化したものでよい。
【0035】
また、本実施例の本装置10では、ネットワーク系クロック信号112が送信側の基準クロック信号として各部に入力し、たとえば、通信回線としてイーサネットの1000BASE-Tを複数使用してIPパケット伝送を行う場合、クロックレートが125 MHzであるネットワーク系クロック信号112が用いられる。
【0036】
本実施例の本装置10では、まず、送信すべきHD-SDI信号102がイコライザ部12に入力されて、イコライザ処理、シリアル・パラレル変換およびクロック抽出が行われる。その結果、パラレル化した通信信号104として輝度信号および色差信号からなる20ビットの映像信号104が得られてIPパケット生成部24に供給され、また、148.5/1.001 MHzのクロック信号106が抽出されて映像系クロックカウンタ14およびクロック位相比較部22に供給される。
【0037】
このクロック信号106は、カウンタ14によってカウントされ、その結果、32ビットのカウンタ値108が得られて映像系タイムスタンプ生成部16に供給される。
【0038】
また、本実施例では、ネットワーク系クロック信号112がネットワーク系クロックカウンタ18によってカウントされ、そのカウント値114がネットワーク系タイムスタンプ生成部20に供給される。
【0039】
ところで、映像系クロック信号106およびネットワーク系クロック信号112は、クロック位相比較部22にも入力し、ここで双方のクロック位相が比較されて、位相が一致するタイミングの検出が行われる。この比較部22で、位相一致タイミングが検出されると、そのタイミングを示す比較結果信号118が出力される。
【0040】
たとえば、本実施例のクロック位相比較部22では、ネットワーク系クロック信号112の1サイクルの間において、映像系クロック信号106が2回入力する位相を検出し、このような検出がされた場合に位相一致を示す比較結果信号118が生成される。
【0041】
図2に示すように、ネットワーク系クロック信号112は、時刻t202およびt208において連続して比較部22に入力し、この時刻t202とt208との1サイクルの間において、映像系クロック信号106は、時刻t204およびt206の2点で比較部22に入力するので、比較部22では、ネットワーク系クロック信号112の1サイクルにおける映像系クロック信号106の2回目の入力(時刻t206)に応じて位相一致を示す比較結果信号118が生成される。
【0042】
また、比較部22では、その後も同様にして、ネットワーク系クロック信号112が入力する時刻t210およびt216の1サイクルの間において、映像系クロック信号106が時刻t212およびt214の2点で比較部22に入力し、映像系クロック信号106の2回目の入力(時刻t214)に応じて位相一致を示す比較結果信号118が生成される。このようにして比較部22では、映像系クロック信号106およびネットワーク系クロック信号112の比較が繰り返される。
【0043】
この比較結果信号118は、イネーブル信号としてタイムスタンプ生成部16および20に入力し、この生成部16および20では、このイネーブル信号118が位相一致を示す場合にのみ、映像系タイムスタンプ110およびネットワーク系タイムスタンプ116がそれぞれIPパケット生成部24に供給される。
【0044】
したがって、IPパケット生成部24では、このイネーブル信号118が位相一致を示す場合にのみ時刻情報および周波数情報の多重処理が行われて映像信号104に基づくIPパケット120が生成され、図3に示すように、映像系タイムスタンプ110およびネットワーク系タイムスタンプ116を通信信号104に重畳したIPパケット120が生成される。
【0045】
たとえば本実施例のように、ネットワーク系クロック信号112のクロックレートが125 MHzであり、また映像系クロック信号106のクロックレートが148.5 MHzである場合、位相比較出力の位相における映像系クロックとネットワーク系クロックとの位相差は、 数式(1/125 - 1/148.5) / (1/125)= 0.158
で算出される。このように、本実施例によれば、映像系クロックとネットワーク系クロックとが非同期であるために発生する1クロック分の誤差および位相差を、約16%以下に削減することができる。
【0046】
このように、パケット送信装置10は、送信する通信信号102の映像系タイムスタンプが、本装置10と非同期のクロックによって読み出される際に原理的に数値の不連続が発生することを防ぐものである。この装置10は、映像系クロックおよびネットワーク系クロックの位相を比較してその不連続発生のタイミングを検出するとともに、双方のクロック位相が一致するタイミングのみでタイムスタンプを通信信号に重畳して送信する。したがって、本装置10は、位相のずれた状態のタイムスタンプを伝送することがなく、タイムスタンプの不連続の発生を起こさないので、受信側において安定したクロックを再生させることができる。
【0047】
また、送信装置10は、たとえばProMPEG方式でパケットを送信する場合、図3に示すように、RTP拡張ヘッダおよびヘッダ長を利用し、ヘッダ領域を拡張してネットワーク系タイムスタンプを多重することができる。
【0048】
上記実施例のパケット送信装置10では、クロック位相比較部22が、映像系タイムスタンプ生成部16およびネットワーク系タイムスタンプ生成部20を制御する制御部40として動作するが、この制御部40は、他の構成によって実現して、同様の効果、またはよりよい効果を得ることもできる。
【0049】
たとえば、他の実施例において、パケット送信装置10は、図4に示すように、クロック位相比較部42、位相比較カウンタ44および基準位相検出部46を含む制御部40を適用することができる。すなわち、上記実施例のクロック位相比較部22からなる制御部を、この制御部40に置き換えることができる。この他の実施例のパケット送信装置10では、制御部40の構成のみが上記実施例と異なるが、他の部分の構成は同様であるので、以下では異なる部分のみを説明する。
【0050】
この制御部40のクロック位相比較部42は、上記実施例のクロック位相比較部22と同様に構成されるものでよく、映像系クロック信号106およびネットワーク系クロック信号112の位相を比較してその比較結果信号142を出力する。この実施例のクロック位相比較部42は、比較結果信号142を位相比較カウンタ44および基準位相検出部46に供給する。
【0051】
位相比較カウンタ44は、ネットワーク系クロック信号112をカウントして、そのカウンタ値144を基準位相検出部46に出力するもので、この実施例ではとくに、クロック位相比較部42からの比較結果信号142に応じて、このカウンタ値144をリセットし、すなわち0にする。
【0052】
基準位相検出部46は、位相比較カウンタ44からのカウンタ値144に応じて、映像系クロックおよびネットワーク系クロックの位相が正確に一致するタイミング、すなわち基準位相146を検出するものである。基準位相検出部46は、検出した基準位相146を映像系タイムスタンプ生成部16およびネットワーク系タイムスタンプ生成部20に供給して、タイムスタンプをIPパケットに重畳するタイミングを制御することができる。
【0053】
映像系クロックおよびネットワーク系クロックの周波数が異なり、これらのクロックのサンプリングタイミングが所定の周期ごとに一致するとき、この位相同期周期における各クロックのサンプリング数の比は、常に同じである。したがって、基準位相検出部46は、この位相同期周期ごとに、すなわちこの周期におけるサンプリング数ごとに基準位相146を検出することができる。パケット送信装置10は、実際に入力されたクロックから基準位相146を検出し、その検出タイミングでタイムスタンプを生成することにより、受信側における映像系クロックとネットワーク系クロックとの位相変動の発生を抑えることができる。
【0054】
また、位相比較カウンタ44のカウンタ値144は、比較結果信号142に応じてリセットされるので、カウンタ値144が何進法であるかは、比較結果信号142を受けるタイミングに応じて変化する。このようなカウンタ値144の進法の遷移は、前述の位相同期周期において所定の一連のパターンを形成することになり、次の周期でもこの一連のパターンが繰り返される。したがって、この一連のパターンにおいて、所定の遷移パターン、たとえば唯一の遷移パターンを基準パターンとして定めることができれば、その基準パターンに係るタイミングを基準位相146として検出することができる。
【0055】
本実施例の基準位相検出部46は、カウンタ値144の進法の遷移を監視して、その遷移パターンが基準パターンであるか否かを判断し、基準パターンである場合に基準位相146を検出することができる。また、基準位相検出部46は、他の手法で位相同期周期における基準位相146を検出してもよい。
【0056】
次に、この実施例のパケット送信装置10において、基準位相の検出および検出した基準位相に基づくタイムスタンプ生成を伴うパケット送信にかかる動作例を図5のタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0057】
この実施例のパケット送信では、タイムスタンプ生成部16および20におけるタイムスタンプ生成を制御する制御部40における動作が上記実施例と異なるが、他の動作は同様であるので、以下では異なる部分のみを説明する。
【0058】
この実施例においても、パケット送信装置10では、148.5/1.001 MHzの映像系クロック信号106および125 MHzのネットワーク系クロック信号112が制御部40入力し、クロック位相比較部42に供給される。
【0059】
このように、映像系クロック信号106およびネットワーク系クロック信号112は、周波数が異なり、これらの周波数の比は、125 MHz : 148.5/1.001 MHz = 91 : 108という関係を有する。これは、ネットワーク系クロック信号112および映像系クロック信号106のカウンタ値、すなわちサンプリング数が、それぞれ91および108であるときに位相が一致し、これらのサンプリング数に達するまでの期間が位相同期周期となる。図6ないし図8では、ネットワーク系クロック信号112のカウンタ値およびそのときの映像系クロック信号106の相対カウンタ値を示し、図7は図6から連続したもので、図8は図7から連続したものである。したがって、この実施例では、ネットワーク系クロック信号112の91サンプリングごとにタイムスタンプを生成すれば、原理的には、受信側において映像系クロックとネットワーク系クロックとの位相変動が発生しないと考えられる。
【0060】
クロック位相比較部42において、映像系クロック信号106およびネットワーク系クロック信号112は、上記実施例と同様にして位相比較処理されて、その結果の比較結果信号142が、位相比較カウンタ44および基準位相検出部46に供給される。たとえば、この比較部42では、ネットワーク系クロック信号112の1サイクルの間において、映像系クロック信号106が所定回、たとえば2回入力する位相を検出し、このような検出がされた場合に位相一致を示す比較結果信号142が生成される。
【0061】
また、位相比較カウンタ44では、ネットワーク系クロック信号112が供給されて係数され、そのカウンタ値144は、基準位相検出部46に供給される。このカウンタ値144は、比較結果信号142に応じてリセットされて0に戻る。すなわち、このカウンタ44のカウンタ値144は、映像系クロック信号106およびネットワーク系クロック信号112の位相が一致したタイミングでリセットされる。
【0062】
本実施例のように、148.5/1.001 MHzの映像系クロック信号106および125 MHzのネットワーク系クロック信号112を利用するとき、位相比較カウンタ44のカウンタ値144は、比較結果信号142のリセットによって、図6ないし図8に示すように、6進または5進を示すことになる。これらの図に示すように、6進時の期間をAで示し、5進時の期間をBで示すと、期間A、B、A、B、B、A、B、B、A、B、B、A、B、B、A、B、Bがこの順に連続して位相同期周期が一巡することになる。これらの期間AおよびBにおけるサンプリング数は、それぞれ6および5であるので、位相同期周期における合計サンプリング数は91となる。
【0063】
また、基準位相検出部46において、比較結果信号142およびカウンタ値144に基づいて、映像系クロックおよびネットワーク系クロックの間の基準位相146が検出される。
【0064】
この基準位相検出部46ではとくに、カウンタ値144の進法の遷移パターンが監視され、その遷移パターンが基準パターンである場合に基準位相146が検出される。この実施例において、カウンタ値144の進法の一連のパターンは、A、B、A、B、B、A、B、B、A、B、B、A、B、B、A、B、Bであり、この中でA、B、Aの順に連続する遷移パターンが、位相同期周期において、すなわちネットワーク系クロック信号112の91サンプリングにおいて1回だけであるので、この遷移パターンを基準パターンとすることができる。基準位相検出部46では、このA、B、Aの順に連続する遷移パターンの検出に応じて、基準位相146が検出される。
【0065】
この基準位相146は、タイムスタンプ生成部16および20に入力し、この生成部16および20では、この基準位相146が位相一致を示す場合にのみ、映像系タイムスタンプ110およびネットワーク系タイムスタンプ116がそれぞれIPパケット生成部24に供給される。
【0066】
したがって、IPパケット生成部24では、この基準位相146が位相一致を示す場合にのみ、映像信号104に基づいて、映像系タイムスタンプ110およびネットワーク系タイムスタンプ116を通信信号104に重畳したIPパケット120が生成される。
【0067】
この実施例では、基準位相は、実際に入力されたクロックから位相比較して検出しているので、入力クロックに周波数誤差がある場合でも、基準パターンが検出されるタイミングが早くなったり遅くなったりすることにより、周波数誤差が吸収されるので、破綻することなく、入力信号に追従して基準位相を検出することができる。
【0068】
本実施例では、送信装置10が、148.5 MHzのHDTV信号および125 MHzのネットワーク系クロックを取り扱う例を示したが、本発明のパケット送信装置は、27 MHzのSDTV信号などの他の通信信号を取り扱うように構成されてもよく、また、周波数に依存せずに他のネットワーククロックを取り扱うように構成されてもよい。
【0069】
このように、本発明のパケット送信装置は、同期通信網または非同期通信網などのネットワークを介してディジタル信号を伝送するシステムにおいて、送信信号のクロックがそのネットワークのクロックと非同期である場合にそのクロック情報を送信信号に多重して伝送するものであり、とくに、このようにネットワーククロックと非同期なデータ通信ではクロック情報が不連続に抽出されることがあるが、クロック情報の不連続点の発生タイミングを検出することにより、送信信号のクロック情報の1クロック以内の詳細位相情報を算出して、位相差の少ない情報のみを抽出して伝送することができる。
【0070】
また、本発明のパケット送信装置は、映像信号に同期したクロック情報を映像信号に重畳して伝送するときにおいても、クロック情報の不連続点の発生タイミングおよび周期を検出することにより、映像信号のクロック情報の1クロック以内の詳細位相情報を算出して、位相差の少ない情報のみを抽出して伝送することができる。
【符号の説明】
【0071】
10 パケット送信装置
12 イコライザ部
14 映像系クロックカウンタ
16 映像系タイムスタンプ生成部
18 ネットワーク系クロックカウンタ
20 ネットワーク系タイムスタンプ生成部
22 クロック位相比較部
24 IPパケット生成部24
26 ネットワーク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のネットワークを介して所望のデータを含むディジタル通信信号を送信するパケット送信装置において、該装置は、
前記データの再生クロックに基づいてデータタイムスタンプを生成するデータタイムスタンプ生成手段と、
該装置のネットワーククロックに基づいてネットワークタイムスタンプを生成するネットワークタイムスタンプ生成手段と、
前記データの再生クロックおよび該装置のネットワーククロックの位相を比較して、双方の位相が一致するか否かを示す比較結果信号を出力するクロック位相比較手段と、
前記比較結果信号が位相一致を示す場合に、前記データタイムスタンプおよび前記ネットワークタイムスタンプを重畳して前記ディジタル通信信号を生成するパケット生成手段とを含むことを特徴とするパケット送信装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパケット送信装置において、該装置は、前記ディジタル通信信号により送信するデータとして映像信号を適用し、前記データタイムスタンプとして映像系タイムスタンプを適用することを特徴とするパケット送信装置。
【請求項3】
請求項1に記載のパケット送信装置において、前記クロック位相比較手段は、前記ネットワーククロックの1サイクルの間において、前記データの再生クロックが所定回入力する位相を検出し、このような検出がされた場合に位相一致を示す比較結果信号を生成することを特徴とするパケット送信装置。
【請求項4】
所定のネットワークを介して所望のデータを含むディジタル通信信号を送信するパケット送信方法において、該方法は、
前記データの再生クロックに基づいてデータタイムスタンプを生成するデータタイムスタンプ生成工程と、
送信側のネットワーククロックに基づいてネットワークタイムスタンプを生成するネットワークタイムスタンプ生成工程と、
前記データの再生クロックおよび前記ネットワーククロックの位相を比較して、双方の位相が一致するか否かを示す比較結果信号を出力するクロック位相比較工程と、
前記比較結果信号が位相一致を示す場合に、前記データタイムスタンプおよび前記ネットワークタイムスタンプを重畳して前記ディジタル通信信号を生成するパケット生成工程とを含むことを特徴とするパケット送信方法。
【請求項5】
請求項4に記載のパケット送信方法において、該方法は、前記ディジタル通信信号により送信するデータとして映像信号を適用し、前記データタイムスタンプとして映像系タイムスタンプを適用することを特徴とするパケット送信方法。
【請求項6】
請求項4に記載のパケット送信方法において、前記クロック位相比較工程は、前記ネットワーククロックの1サイクルの間において、前記データの再生クロックが所定回入力する位相を検出し、このような検出がされた場合に位相一致を示す比較結果信号を生成することを特徴とするパケット送信方法。
【請求項7】
所定のネットワークを介して所望のデータを含むディジタル通信信号を送信するパケット送信装置において、該装置は、
前記データの再生クロックに基づいてデータタイムスタンプを生成するデータタイムスタンプ生成手段と、
該装置のネットワーククロックに基づいてネットワークタイムスタンプを生成するネットワークタイムスタンプ生成手段と、
前記データタイムスタンプおよび前記ネットワークタイムスタンプを重畳して前記ディジタル通信信号を生成するパケット生成手段と、
前記再生クロックおよび前記ネットワーククロックに応じて制御信号を生成し、該制御信号によって前記パケット生成手段による重畳タイミングを制御する制御手段とを含み、
該制御手段は、前記再生クロックおよび前記ネットワーククロックの位相を比較して、双方の位相が一致するか否かを示す比較結果信号を出力するクロック位相比較手段と、
前記再生クロックおよび前記ネットワーククロックのサンプリングタイミングが一致する位相同期周期において、前記再生クロックおよび前記ネットワーククロックの位相が正確に一致する基準位相を、前記比較結果信号に応じて検出する基準位相検出手段とを含み、
前記基準位相を前記制御信号として出力することを特徴とするパケット送信装置。
【請求項8】
請求項7に記載のパケット送信装置において、該装置は、前記ディジタル通信信号により送信するデータとして映像信号を適用し、前記データタイムスタンプとして映像系タイムスタンプを適用することを特徴とするパケット送信装置。
【請求項9】
請求項7に記載のパケット送信装置において、前記クロック位相比較手段は、前記ネットワーククロックの1サイクルの間において、前記データの再生クロックが所定回入力する位相を検出し、このような検出がされた場合に位相一致を示す比較結果信号を生成し、
前記制御手段は、前記ネットワーククロックをカウントし、そのカウンタ値を前記比較結果信号に応じてリセットする位相比較カウンタを含み、
前記基準位相検出手段は、前記比較結果信号および前記カウンタ値に応じて、前記位相同期周期における前記カウンタ値の進法の遷移を監視し、その遷移のパターンが前記位相同期周期において唯一のパターンである場合に前記基準位相を検出することを特徴とするパケット送信装置。
【請求項10】
所定のネットワークを介して所望のデータを含むディジタル通信信号を送信するパケット送信方法において、該方法は、
前記データの再生クロックに基づいてデータタイムスタンプを生成するデータタイムスタンプ生成工程と、
送信側のネットワーククロックに基づいてネットワークタイムスタンプを生成するネットワークタイムスタンプ生成工程と、
前記データタイムスタンプおよび前記ネットワークタイムスタンプを重畳して前記ディジタル通信信号を生成するパケット生成工程と、
前記再生クロックおよび前記ネットワーククロックに応じて制御信号を生成し、該制御信号によって前記パケット生成工程による重畳タイミングを制御する制御工程とを含み、
該制御工程は、前記再生クロックおよび前記ネットワーククロックの位相を比較して、双方の位相が一致するか否かを示す比較結果信号を出力するクロック位相比較工程と、
前記再生クロックおよび前記ネットワーククロックのサンプリングタイミングが一致する位相同期周期において、前記再生クロックおよび前記ネットワーククロックの位相が正確に一致する基準位相を、前記比較結果信号に応じて検出する基準位相検出工程とを含み、
前記基準位相を前記制御信号として出力することを特徴とするパケット送信方法。
【請求項11】
請求項10に記載のパケット送信方法において、該方法は、前記ディジタル通信信号により送信するデータとして映像信号を適用し、前記データタイムスタンプとして映像系タイムスタンプを適用することを特徴とするパケット送信方法。
【請求項12】
請求項10に記載のパケット送信方法において、前記クロック位相比較工程は、前記ネットワーククロックの1サイクルの間において、前記データの再生クロックが所定回入力する位相を検出し、このような検出がされた場合に位相一致を示す比較結果信号を生成し、
前記制御工程は、前記ネットワーククロックをカウントし、そのカウンタ値を前記比較結果信号に応じてリセットする位相比較カウンタを含み、
前記基準位相検出工程は、前記比較結果信号および前記カウンタ値に応じて、前記位相同期周期における前記カウンタ値の進法の遷移を監視し、その遷移のパターンが前記位相同期周期において唯一のパターンである場合に前記基準位相を検出することを特徴とするパケット送信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−136320(P2010−136320A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147301(P2009−147301)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(593065844)株式会社沖コムテック (127)
【Fターム(参考)】