説明

パス制御方法

【課題】各ノード間で周期的なシグナリングメッセージの交換を行うことなく不完全なパスを検出可能なパス制御方法を得ること。
【解決手段】本発明にかかるパス制御方法は、管理装置が、光パスの第1のエッジノードに対して、光パス管理情報を送信する情報取得ステップと、光パス上の各ノードが、第1のエッジノードから第2のエッジノードに向けて、光パス管理情報を、光パス上の各ノードの並び順に従って転送する情報転送ステップと、光パス上の各ノードが、光パス管理情報に基づいてパス設定を行い、パス設定が完了した場合、その旨を示す情報を管理装置へ送信するパス設定ステップと、を含み、管理装置は、各ノードから送信された情報に基づいて光パスの設定が正常に終了したかどうかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送システムにおいて光パスを設定する場合のパス制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光伝送システムにおいて光パスの設定や解放を行う場合、光ネットワークの管理・運用を行う遠隔の管理装置より光パスの中継ノード毎に個別にスイッチ設定を行っていた。このような集中管理型のパス制御方式では、ネットワーク規模が大きくなり、管理装置にて監視、管理するノードの数が増加すると、管理装置の処理負荷やプロビジョニング時間が増大し、ネットワーク規模に対するスケーラビリティが確保できないという問題がある。
【0003】
この集中管理型のパス制御方式の問題点を解決するためにGMPLS(Generalized Multi-Protocol Label Switching)技術に代表される自律分散型のパス制御方式の適用が考えられる。自律分散型のパス制御方式では、各ノードがルーチングプロトコルによりネットワークのリンク情報を広告、収集し、その情報を基に光パスの経路計算を行い、シグナリングプロトコルで各ノードのパス設定を行う(下記非特許文献1参照)。
【0004】
ここで、ノードの障害などにより光パスの確立や解放のシグナリングに失敗した場合、スイッチ設定されているノードとスイッチ設定がされていないノードが混在する不完全なパスが発生するケースがある。そのため、下記非特許文献1に記載のRSVP−TE(Resource reSerVation Protocol−Traffic Engineering)シグナリングプロトコルでは、光パスの設定状態を管理するために、パス確立シグナリング時に経路上の各ノードはパス状態情報を生成し、パスを確立した後は、パス状態情報を維持するために周期的にシグナリングメッセージを送出するように規定している。なお、パス状態情報には、パスの識別子やパス名称、パスのプライオリティや経路情報、スイッチ設定情報(パスに対して割り当てられた入力インタフェースと出力インタフェースの情報)が含まれる。
【0005】
下記非特許文献1に記載のRSVP−TEシグナリングプロトコルを適用した光パスの経路上の各ノードは、上記の周期的に送出されるシグナリングメッセージを受信することによりパス状態情報を維持する。また、シグナリングメッセージを一定時間以内に受信しなかった場合、エラーと判断し、自ノード内のパス状態情報を削除、つまりスイッチ設定を解除する。このような制御により、上述したシグナリング失敗時に生じる不完全な光パスの除去を実現している。一方、この制御方式を適用した場合、光パスの経路上のノードが再起動すると、再起動したノードの隣接ノードでシグナリングメッセージの受信タイムアウトが発生し、スイッチ設定が解除されてしまう。そのため、隣接ノードからのシグナリングメッセージ受信や、自ノードでバックアップしたスイッチ設定情報により、再起動時に失われたパス状態情報を復元する手順が下記非特許文献2に記載されている。
【0006】
【非特許文献1】「Generalized Multi-Protocol Label Switching(GMPLS) Signaling Resource Reservation Protocol-Traffic Engineering(RSVP-TE) Extensions」,RFC3473.
【非特許文献2】「Extensions to GMPLS Resource Reservation Protocol(RSVP) Graceful Restart」,RFC5063.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のパス制御方式では、シグナリングメッセージを一定時間以内に受信しなかった場合にパス状態情報を削除しスイッチ設定を解除する処理および光パスの経路上のノード再起動時にパス状態情報を復元する処理ロジックが複雑である、という問題があった。また、これらの手順を使用するためにはタイマ値を最適に設計する必要がある、という問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、各ノード間で周期的なシグナリングメッセージ(パス状態情報)の交換を行うことなく不完全なパスを検出可能なパス制御方法を得ることを目的とする。また、検出した不完全なパスを除去するパス制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、複数のノードおよびこれらを管理する管理装置を備えた光伝送システムにおいて光パスを設定する場合のパス制御方法であって、前記管理装置が、光パスの設定に必要な情報を光伝送システムの運用者から取得し、当該取得した情報である光パス管理情報により特定される光パスのエッジノードのうちの第1のエッジノードに対して、当該光パス管理情報を送信する情報取得ステップと、前記光パス管理情報により特定される光パス上の各ノードが、前記第1のエッジノードから他方のエッジノードである第2のエッジノードに向けて、前記光パス管理情報を、当該光パス上の各ノードの並び順に従って転送する情報転送ステップと、前記光パス管理情報により特定される光パス上の各ノードが、前記光パス管理情報に基づいてパス設定を行い、パス設定が完了した場合、その旨を示す情報を前記管理装置へ送信するパス設定ステップと、を含み、前記管理装置は、前記パス設定ステップにおいて各ノードから送信された情報に基づいて光パスの設定が正常に終了したかどうかを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、管理装置が一方のエッジノードへ光パスの設定に必要な情報を送信し、設定する光パス上の各ノードは、光パス設定に必要な情報を第1のエッジノードから第2のエッジノードに向けて転送し、さらにこの情報に基づいたパス設定が完了した場合、その旨を管理装置へ通知するようにしたので、不完全なパスを検出するための情報交換を各ノードが行うことなく、光パスの設定が正常に行われたかどうか(不完全なパスが発生したかどうか)を判定できる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明にかかるパス制御方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態.
図1は、本発明にかかるパス制御方法を実現する光伝送システムの構成例を示す図である。この光伝送システムは、管理装置10と、ノード11〜14と、クライアント装置21および22を含み、管理装置10とノード11〜14は制御プレーンネットワークを介して相互に接続されている。また、各ノードとクライアント装置21および22は、光ファイバ31を介して接続されている。
【0013】
上記構成の光伝送システムにおいて、管理装置10は、制御プレーンネットワークを介して制御信号を送受信することによりシステム内の各ノードを管理する。各ノードは、管理装置10からの指示に従って、他のノードとの間でシグナリングメッセージの送受信などを行い、光パスの設定や解除を行う。具体的には、隣接ノード同士(ノード11とノード12,ノード12とノード13,ノード13とノード14)がシグナリングメッセージの送受信を相互に行い、これらの各ノードは、受信したシグナリングメッセージに含まれる情報に従って自身の内部設定(パス設定)を行う。なお、シグナリングメッセージは、制御プレーンネットワークを介して送受信される。また、クライアント装置21および22は、たとえばIPルータやL2スイッチである。
【0014】
図2は、図1で示したノード11〜14の構成例を示す図であり、各ノードは同じ構成となっている。ノード11〜14は、シグナリング制御部101および光スイッチ部102を備え、光スイッチ部102には、光入出力インタフェース(光入出力ポート)201および202を介して光ファイバ31が接続される。なお、図2では、光入出力ポートを2つしか記載していないが、実際にはさらに多くの光入出力ポートを備えている。
【0015】
上記構成の各ノードにおいて、シグナリング制御部101は、制御プレーンネットワークと接続され、隣接ノードとの間のシグナリングメッセージの送受信処理および解析処理と、光スイッチ部102の光信号転送動作の制御を行う。またシグナリング制御部101は、管理装置10との通信も行う。
【0016】
光スイッチ部102は、ある光入出力ポートから入力された光信号を異なる光入出力ポートに転送する。図2では、光スイッチ部102が入出力ポート201から受信した光信号を光入出力ポート202に転送し、また光入出力ポート202から受信した光信号を光入出力ポート201に転送する場合の例を示している。
【0017】
つづいて、図1に示した光伝送システムにおけるパス制御手順について、図面を参照しながら説明する。以下においてはまず、光パスを構成する全てのノードでパス設定が正常に行われる場合の制御手順(正常動作)について説明し、さらに、光パスを構成する一部のノードでパス設定が正常に行われない場合の制御手順(異常動作)および光パスを解放(パス設定を解除)する場合の制御手順について説明する。
【0018】
まず、図1に示した光伝送システムにおいて、光パスを構成する各ノードの設定が正常に行われる場合の制御手順を説明する。ここでは、一例として、ノード11−ノード12−ノード13−ノード14で光パスを確立する場合について説明する。
【0019】
図1に示した光伝送システム内で光パスを確立する場合、まず、光伝送システムの運用者(オペレータ)が、管理装置10より、確立する光パスの情報を入力する。この光パス情報とは、パス設定に必要な情報であり、パスの識別子,パスの端点の一方となるノード(以下、説明の便宜上「始点ノード」と呼ぶ)のノードID,パスの端点の他方となるノード(以下、説明の便宜上「終点ノード」と呼ぶ)のノードID,使用する波長の情報、始点/終点ノードにてクライアント装置と接続される光入出力ポートの識別情報,ホップ数,光パスの経路情報となる中継ノードのノードID,などを含む。なお、この例では、始点ノードをノード11、終点ノードをノード14とする。
【0020】
上記光パス情報を取得した管理装置10は、次に、図3に示した構成の光パス管理情報を、取得した光パス情報に基づいて生成し、記録する。なお、図3に示した構成は一例であり、示した各情報が含まれていれば、その並び順などは異なっていてもよい。次に、管理装置10は、パスの始点ノードであるノード11に対して、光パス確立のシグナリング(光パスを確立する場合のシグナリング)実行を指示するための光パス確立要求を制御プレーンネットワーク経由で送信する。光パス確立要求には、パスの識別情報(パス識別子)、パスの始点ノードのノードID(この例ではノード11のノードID)、パスの終点ノードのノードID(この例ではノード14のノードID)、使用する波長の情報、パスの経路を構成するノードのノードIDリスト(この例ではノード11,12,13,14のノードIDのリスト)を設定する。なお、ノードIDリストは、経路上の各ノードの順番(各ノードの隣接関係)を示す情報を含む。たとえば、経路上の各ノードの並び順とリスト内の各ノードIDの並び順を一致させる。
【0021】
また管理装置10は、光パス確立シグナリングが完了したかどうかを判断するためのタイマであるパス確立監視タイマを起動する。
【0022】
図4は、光伝送システムのノード11−ノード12−ノード13−ノード14で光パスを確立する場合のシグナリングメッセージシーケンスの一例を示す図であり、これら全てのノードでパス設定が正常に行われる場合のシーケンスを示している。管理装置10が上述した処理を実行して光パス確立要求を送信すると、この光パス確立要求を始点ノードであるノード11が受信する(ステップS11)。
【0023】
そして、ノード11では、光パス確立要求を受信したシグナリング制御部101が、受信した光パス確立要求内の情報により特定される光パスを設定するためのシグナリングを開始する。シグナリング処理では、シグナリング制御部101は、まず、光パス確立のためのスイッチ確認を行い自装置の設定状況を確認する。具体的には、光スイッチ部102が制御可能な状態にあるか否かの確認と、光パス確立要求内の波長情報および光入出力ポートの識別情報の確認を行い、さらに、光パス確立要求に対応するパス(光パス確立要求に含まれる情報に基づいて特定されるパス)が設定されているか否かを確認する(ステップS12)。確認の結果、光スイッチ部102が制御可能な状態であり、かつ上記パスが設定されていない場合、スイッチ確認メッセージを光パス(確立させようとしている光パス)の下流ノードであるノード12に対して、制御プレーンネットワーク経由で送出する。このスイッチ確認メッセージには、上記光パス確立要求に含まれていた情報に加え、自身(ノード11)がノード12への光送信に割り当てている光入出力ポート(ノード12へ光送信を行う際に使用する光入出力ポート)の識別情報を設定する。なお、ノード11(ノード11のシグナリング制御部101)は、ノード12へ送信したスイッチ確認メッセージ内の情報(上記光パス確立要求に含まれていた情報および光入出力ポートの識別情報)を記憶しておく。
【0024】
ノード12は、上流のノード11からスイッチ確認メッセージを受信すると、その内容を解析し、指定された波長の情報および上流ノードに割り当てられた光入出力ポートの識別情報に対応する光インタフェース識別情報を導出する。そして、自身の光スイッチ部102が制御可能な状態か否かの確認、および導出した光インタフェース識別情報により特定されるパスが設定されているか否かの確認を行う(ステップS13)。確認の結果、光スイッチ部102が制御可能な状態であり、かつ上記パスが設定されていない場合、スイッチ確認メッセージを光パスの下流ノードであるノード13に対して、制御プレーンネットワーク経由で転送する。このスイッチ確認メッセージは、上記ノード11から受信したスイッチ確認メッセージに対して、自身(ノード12)がノード13への光送信に割り当てている光入出力ポートの識別情報を追加したものである。また、ノード12は、ノード13に送信したスイッチ確認メッセージ内の情報を記憶しておく。
【0025】
ノード13は、上流のノード12からスイッチ確認メッセージを受信すると、上述したノード12と同様の処理を実行し(ステップS14)、スイッチ確認メッセージをノード14へ転送する。なお、ノード13は、ノード14への光送信に割り当てている光入出力ポートの識別情報を追加した上でスイッチ確認メッセージを転送する。また、ノード14に送信したスイッチ確認メッセージ内の情報を記憶しておく。
【0026】
終点ノードであるノード14は、上流のノード13からスイッチ確認メッセージを受信すると、上述したノード12および13と同様にその内容を解析し、指定された波長の情報および上流ノードにより割り当てられた光入出力ポートの識別情報に対応する光インタフェース識別情報を導出する。そして、自身の光スイッチ部102が制御可能な状態か否かの確認、および導出した光インタフェース識別情報により特定されるパスが設定されているか否かの確認を行う(ステップS15)。確認の結果、光スイッチ部102が制御可能な状態であり、かつ上記特定されたパスが設定されていない場合、上記受信したスイッチ確認メッセージに含まれる情報に基づいて光スイッチ部102の設定を行い、当該設定内容を示すスイッチ設定情報を当該スイッチ確認メッセージ内のパス識別子と対応付けて記録する。そして、設定内容を通知するためのスイッチ設定完了通知を管理装置10へ送信する(ステップS16)。また、ノード14は、スイッチ設定メッセージを上流ノードであるノード13へ送信する。このスイッチ設定メッセージは、上記受信したスイッチ確認メッセージに含まれていたパス識別子、および自身(ノード14)がノード13への光送信に割り当てている光入出力ポートの識別情報を含む。
【0027】
なお、管理装置10へ送信される上記スイッチ設定完了通知には、パス識別子,送信元ノード(ノード14)のノードID,使用する波長の情報,スイッチ設定した光入出力ポートの識別情報,スイッチ設定に成功したか否かの情報を含む。管理装置10は、各ノードからスイッチ設定完了通知を受信した場合、それに含まれる情報に基づいて、自身が保持している光パス管理情報(図3参照)を更新する。
【0028】
ノード13は、下流のノード14からスイッチ設定メッセージを受信すると、その内容を解析し、ノード14が自身との通信に割り当てている光入出力ポートの識別情報を得る。そして、この時点で光スイッチ部102を設定するための情報がすべて揃うので、得られた光入出力ポートの識別情報および上記スイッチ確認メッセージを送信する際に記憶しておいた情報に基づいて光スイッチの設定を行う。さらに、受信したスイッチ設定メッセージに含まれていたパス識別子とスイッチ設定情報を対応づけて記録する。また、上述したノード14と同様に、管理装置10へスイッチ設定完了通知を送信し(ステップS17)、さらに、スイッチ設定メッセージをパスの上流ノードであるノード12へ転送する。なお、このスイッチ設定メッセージは、ノード14から受信したスイッチ設定メッセージに含まれていたパス識別子、および自身(ノード13)がノード12への光送信に割り当てている光入出力ポートの識別情報を含む。
【0029】
ノード12は、下流のノード13からスイッチ設定メッセージを受信すると、上述したノード13と同様の処理を実行してスイッチ設定、および管理装置10へのスイッチ設定完了通知送信を行い(ステップS18)、さらに、スイッチ設定メッセージを上流のノード11へ転送する。
【0030】
始点ノードであるノード11は、下流のノード12からスイッチ設定メッセージを受信すると、得られた光入出力ポートの識別情報(ノード12が自身への光送信に割り当てている光入出力ポートの識別情報)および上記スイッチ確認メッセージを送信する際に記憶しておいた情報に基づいて光スイッチ部102を制御し、クライアント装置21とノード12との間で光伝送が行われるように設定を行う。また、管理装置10へスイッチ設定完了通知を送信し(ステップS19)、さらに、光パスを確立するためのシグナリングが完了したことを通知するための光パス確立応答を管理装置10へ送信する(ステップS20)。
【0031】
管理装置10は、ノード11から光パス確立応答を受信すると、対応するパス確立監視タイマを停止する。なお、図4のシーケンスでは、ノード11から管理装置10へスイッチ設定完了通知および光パス確立応答を送信することとしたが、たとえばスイッチ設定完了通知で送信する情報を光パス確立応答に含めて送信するようにして、これら2つを1つに集約してもよい。
【0032】
以上は、光パス設定を行うすべてのノードでパス設定が正常に行われる場合の制御手順であるが、つづいて、光パスを確立するためのシグナリングに失敗し、不完全な光パスが発生する場合の制御手順について説明する。図5は、光パスを確立するためのシグナリングが失敗する場合のシグナリングメッセージシーケンスの一例を示す図である。具体的には、図4で示したシーケンスのステップS11〜S17までの処理が正常に実施された後、ノード12が再起動したために失敗となる場合のシーケンスを示した図である。以下、図4で示したシーケンスと異なる部分について説明する。
【0033】
ノード12は、ステップS13の処理を実行し、スイッチ確認メッセージをノード13へ送信後、ノード13から送信されてくるスイッチ設定メッセージを受信する前に障害が発生し(ステップS21)、再起動を行う(ステップS22)。この結果、ノード13および14では光パス設定が正常に行われてスイッチ設定が完了し、ノード11および12ではスイッチ設定が完了していない状態となる。
【0034】
この場合、ノード11から管理装置10へ光パス確立応答が送信されないため、パス確立監視タイマがタイムアウトし、管理装置10は、自身で管理している光パス管理情報を参照し、確立させようとした光パスについて、スイッチ設定されているノードとスイッチ設定されていないノードが混在しているか否かの確認を行う。図5に示したケースではノード13とノード14からはスイッチ設定完了通知を受信し、ノード11とノード12からはスイッチ設定完了通知を受信していないため、スイッチ設定されているノードとスイッチ設定されていないノードが混在する不完全なパスであると判定することができる。
【0035】
つづいて、図6を参照しながら、光パスを解放する場合の制御手順について説明する。なお、図6は、光伝送システムのノード11−ノード12−ノード13−ノード14で設定されている光パスを解放する場合のシグナリングメッセージシーケンスの一例を示す図である。ここでは、上記図5に示したシーケンスが発生して設定された、不完全な状態の光パスを解放する場合の制御手順について説明する。すなわち、ノード13および14はスイッチ設定が完了しているが、ノード11および12はスイッチ設定が完了していない状態から光パスを解放する場合の制御手順について説明する。
【0036】
図1に示した光伝送システム内で設定された光パスを解放する場合、まず、光伝送システムの運用者が、管理装置10より、解放する光パスを指定する。そして、光パスの解放指示を受け付けた管理装置10は、指定された光パスの端点の一方に位置しているノードを始点ノードとし、この始点ノードに対して、光パス解放のシグナリング(光パスを解放する場合のシグナリング)実行を指示するための光パス解放要求を送信する。なお、図6ではノード11を始点ノードとしている。また管理装置10は、パス解放が正常に行われたかどうか(光パス解放シグナリングが完了したかどうか)を判断するためのタイマであるパス解放監視タイマを起動する。光パス解放要求は、解放する光パスを始点ノードが特定できるように、解放する光パスの識別情報(パス識別子)を少なくとも含む。
【0037】
管理装置10が上述した処理を実行して光パス解放要求が送信されると、この光パス解放要求を始点ノードであるノード11が受信する(ステップS31)。そして、ノード11では、光パス解放要求を受信したシグナリング制御部101が、受信した光パス確立要求内の情報により特定される光パスを解放するためのシグナリングを開始する。シグナリングを開始すると、シグナリング制御部101は、まず、光パス解放のためのスイッチ確認を行い自装置の設定状況を確認する。具体的には、光スイッチ部102が制御可能な状態にあるか否かの確認を行う(ステップS32)。確認の結果、光スイッチ部102が制御可能な状態の場合、スイッチ解放確認メッセージを光パス(解放しようとしている光パス)の下流ノードであるノード12に送出する。このスイッチ解放確認メッセージは、上記光パス解放要求から取得したパス(解放するパス)の識別子、使用している波長の情報(波長番号)、パスの経路情報を含む。
【0038】
ノード12は、上流のノード11からスイッチ解放確認メッセージを受信すると、自身の光スイッチ部102が制御可能な状態か否かを確認し(ステップS33)、光スイッチ部102が制御可能な状態の場合、スイッチ解放確認メッセージを光パスの下流ノードであるノード13へ転送する。
【0039】
ノード13は、上流のノード12からスイッチ解放確認メッセージを受信すると、上述したノード12と同様の処理を実行し(ステップS34)、スイッチ解放確認メッセージをノード14へ転送する。
【0040】
終点ノードであるノード14は、上流のノード13からスイッチ解放確認メッセージを受信すると、上述したノード12および13と同様に、自身の光スイッチ部102が制御可能な状態か否かを確認する(ステップS35)。確認の結果、光スイッチ部102が制御可能な状態の場合、管理しているスイッチ設定情報の中から上記受信したスイッチ解放確認メッセージ内のパスの識別子に対応するスイッチ設定情報を保持しているかどうかを確認する。そして、該当するスイッチ設定情報を保持している場合、光スイッチ部102を制御し、対応するスイッチ設定を解除する。また、このスイッチ設定情報を削除する。そして、解除したスイッチ設定を通知するため、スイッチ設定解除通知を管理装置10へ送信する(ステップS36)。また、スイッチ解放メッセージをパスの上流ノードであるノード13へ送信する。このスイッチ解放メッセージは、上記受信したスイッチ解放確認メッセージに含まれていた各情報を含む。
【0041】
なお、管理装置10へ送信される上記スイッチ設定解除通知には、パス識別子,送信元ノード(ノード14)のノードID,使用していた波長の情報,スイッチ設定解除に成功したか否かの情報を含む。管理装置10は、各ノードからスイッチ設定解除通知を受信した場合、それに含まれる情報に基づいて、自身が保持している光パス管理情報(図3参照)を更新する。
【0042】
ノード13は、下流のノード14からスイッチ解放メッセージを受信すると、それに含まれるパスの識別子に対応するスイッチ設定情報を保持しているかどうかを確認する。そして、該当するスイッチ設定情報を保持している場合、光スイッチ部102を制御し、対応するスイッチ設定を解除する。また、このスイッチ設定情報を削除する。そして、上述したノード14と同様に、管理装置10へスイッチ設定解除通知を送信し(ステップS37)、さらに、スイッチ解放メッセージをパスの上流ノードであるノード12へ転送する。
【0043】
ノード12は、下流のノード13からスイッチ解放メッセージを受信すると、上述したノード13と同様に、まず、受信したスイッチ解放メッセージに含まれるパスの識別子に対応するスイッチ設定情報を保持しているかどうかを確認する。この例では、ノード12は、スイッチ設定が完了していなかったため、対応するスイッチ設定情報を保持していない。そのため、ノード12は、スイッチ設定を変更せずに(スイッチ設定解除を行わずに)、管理装置10へスイッチ設定解除通知を送信し(ステップS38)、さらに、スイッチ解放メッセージをパスの上流ノードであるノード11へ転送する。
【0044】
始点ノードであるノード11は、下流のノード12からスイッチ解放メッセージを受信すると、上述したノード12および13と同様に、まず、受信したスイッチ解放メッセージに含まれるパスの識別子に対応するスイッチ設定情報を保持しているかどうかを確認する。ノード11は、上記ノード12と同様に、スイッチ設定が完了していなかったため、対応するスイッチ設定情報を保持していない。そのため、ノード11は、スイッチ設定を変更せずに(スイッチ設定解除を行わずに)、管理装置10へスイッチ設定解除通知を送信する(ステップS39)。さらに、光パスを解放するためのシグナリングが完了したことを通知するための光パス解放応答を管理装置10へ送信する(ステップS40)。管理装置10は、光パス解放応答を受信すると、対応するパス解放監視タイマを停止する。なお、スイッチ設定解除通知と光パス解放応答を1つに集約してもよい。
【0045】
また、上記説明では、光伝送システムの運用者から指示(情報)を受け取った場合に光パスを解放する場合の制御手順について示したが、パス設定が失敗した場合(スイッチ設定されているノードとスイッチ設定されていないノードが混在している場合)には運用者の指示を待つことなく光パスを解放するようにしてもよい。すなわち、管理装置10は、各ノードからのスイッチ設定完了通知に基づいてパス設定が失敗したと判定した場合、上述した光パス解放要求を始点ノードであるノード11へ送信し、各ノードは図6に示したシグナリングシーケンスを実行する。
【0046】
また、パス設定が失敗したと判定して光パスを解放後、光パスを設定するシーケンスを再度実行するようにしてもよい。
【0047】
このように、本実施の形態のパス制御では、管理装置が、光パスの端点のノード(エッジノード)の一方へ光パスの設定に必要な情報を送信し、光パスを構成する各ノードは、まず、光パスの設定に必要な情報を管理装置から受け取ったエッジノード(始点ノード)から他方のエッジノード(終点ノード)に向けて、隣接ノードが光スイッチの設定に必要な情報(光入出力ポートの識別情報)を追加した上で受信情報(光パスの設定に必要な情報)を転送し、次に、光パスの設定に必要な情報を最後に受け取った終点ノードから順番に、パス設定処理および隣接ノードへ当該隣接ノードが光スイッチの設定に必要な情報を送信する処理を行い、またパス設定の完了後にはその旨を管理装置へ通知するようにした。これにより、本実施の形態のパス制御方法を適用した光伝送システムでは、光パスを構成している各ノードは、不完全なパスを検出するための情報交換を行うことなく、光パスの設定が正常に行われたかどうかを判定できる。また、不完全なパスを検出するための制御信号伝送に必要なトラヒック量を削減できる。さらに、管理装置は、光パスの設定に必要な情報を各ノードへ個別に送信する必要がなくなり、処理負荷が軽減される。
【0048】
また、光パスの設定を解除する場合、各ノードは、管理装置から指定された光パスの設定が行われていない場合であっても、エラーとして扱うことなくシグナリングシーケンスを継続することとしたので、不完全なパスを削除することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明にかかるパス制御方法は、光伝送システムにおける経路設定に有用であり、特に、各ノードを管理する管理装置が高負荷状態となるのを防止してパスの設定/解除を行いたい場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明にかかるパス制御方法を実現する光伝送システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明にかかるパス制御方法を実現する光伝送システムの各ノードの構成例を示す図である。
【図3】光パス管理情報の一例を示す図である。
【図4】光パスを確立する場合のシグナリングメッセージシーケンスの一例を示す図である。
【図5】光パスを確立するためのシグナリングが失敗する場合のシグナリングメッセージシーケンスの一例を示す図である。
【図6】光パスを解放する場合のシグナリングメッセージシーケンスの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
10 管理装置
11〜14 ノード
21、22 クライアント装置
31 光ファイバ
101 シグナリング制御部
102 光スイッチ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノードおよびこれらを管理する管理装置を備えた光伝送システムにおいて光パスを設定する場合のパス制御方法であって、
前記管理装置が、光パスの設定に必要な情報を光伝送システムの運用者から取得し、当該取得した情報である光パス管理情報により特定される光パスのエッジノードのうちの第1のエッジノードに対して、当該光パス管理情報を送信する情報取得ステップと、
前記光パス管理情報により特定される光パス上の各ノードが、前記第1のエッジノードから他方のエッジノードである第2のエッジノードに向けて、前記光パス管理情報を、当該光パス上の各ノードの並び順に従って転送する情報転送ステップと、
前記光パス管理情報により特定される光パス上の各ノードが、前記光パス管理情報に基づいてパス設定を行い、パス設定が完了した場合、その旨を示す情報を前記管理装置へ送信するパス設定ステップと、
を含み、
前記管理装置は、前記パス設定ステップにおいて各ノードから送信された情報に基づいて光パスの設定が正常に終了したかどうかを判定することを特徴とするパス制御方法。
【請求項2】
前記情報転送ステップにおいて、
前記光パス管理情報を転送する各ノードは、光パス管理情報を転送する際に、その転送先ノードへの光送信に割り当てている光入出力ポートの識別情報を含めて転送し、
前記パス設定ステップでは、
前記第2のエッジノードが、受信した光パス管理情報に基づいてパス設定を行い、さらに、当該光パス管理情報の送信元ノードに対して、当該送信元ノードへの光送信に割り当てている光入出力ポートの識別情報を送信する第1のパス設定処理と、
前記第1のエッジノードおよび第2のエッジノード以外の各ノードが、前記光パス管理情報の転送先ノードから、当該転送先ノードが自身への光送信に割り当てている光入出力ポートの識別情報を取得した場合に、前記光パス管理情報および当該光入出力ポートの識別情報に基づいてパス設定を行い、さらに、当該転送先ノードとは異なる隣接ノードに対して、当該隣接ノードへの光送信に割り当てている光入出力ポートの識別情報を送信する第2のパス設定処理と、
前記第1のエッジノードが、前記光パス管理情報の転送先ノードから、当該転送先ノードが自身への光送信に割り当てている光入出力ポートの識別情報を取得した場合に、前記光パス管理情報および当該光入出力ポートの識別情報に基づいてパス設定を行う第3のパス設定処理と、
を実行することを特徴とする請求項1に記載のパス制御方法。
【請求項3】
設定済みの光パスを解放する場合の処理として、さらに、
前記管理装置が、解放する光パスの識別情報を光伝送システムの運用者から取得し、当該取得した識別情報である解放パス識別情報に対応する光パスのエッジノードのうち、当該光パスを設定する際に光パス管理情報の送信先としたエッジノードに対して、当該解放パス識別情報を送信する解放パス識別情報取得ステップと、
前記解放パス識別情報に対応する光パス上の各ノードが、前記解放パス識別情報取得ステップで送信された解放パス識別情報を受信したエッジノードから他方のエッジノードに向けて、当該解放パス識別情報を、当該光パス上の各ノードの並び順に従って転送する解放パス識別情報転送ステップと、
前記解放パス識別情報に対応する光パス上の各ノードが、前記解放パス識別情報に対応する光パスの設定を解除するパス設定解除ステップと、
を含み、
前記パス設定解除ステップにおいて、
各ノードは、前記解放パス識別情報に対応する光パスが存在しない場合であっても異常シーケンスであると判定せずに処理を継続することを特徴とする請求項1または2に記載のパス制御方法。
【請求項4】
さらに、
前記管理装置が、光パスの設定が正常に終了していないと判定した場合、前記第1のエッジノードに対して、前記光パス管理情報に含まれている光パスの識別情報を送信する識別情報送信ステップと、
前記光パス管理情報により特定される光パス上の各ノードが、前記管理装置から送信された識別情報を、前記第1のエッジノードから前記第2のエッジノードに向けて、当該光パス上の各ノードの並び順に従って転送する識別情報転送ステップと、
前記光パス管理情報により特定される光パス上の各ノードが、前記識別情報に対応する光パスの設定を解除するパス設定解除ステップと、
を含み、
前記パス設定解除ステップにおいて、
各ノードは、前記識別情報に対応する光パスが存在しない場合であっても異常シーケンスであると判定せずに処理を継続することを特徴とする請求項1または2に記載のパス制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−16632(P2010−16632A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174781(P2008−174781)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】