説明

パターニングヘッドおよびパターニング装置

【課題】基板上に形成された膜を良好な状態で剥離または除去することができるパターニングヘッドおよびパターニング装置を提供する。
【解決手段】パターニングヘッド30は、主として、ホルダ31と、ホルダ揺動部34と、昇降部50と、パターニングツール60と、を有している。ホルダ揺動部34は、ホルダ31を脆性材料基板に対して揺動させることによって、刃先61aの刃渡り方向を調整する。ホルダ揺動部34の揺動軸36aは、パターニングツール60の延伸方向(矢印AR4方向)と略垂直であり、かつ、刃先61aの刃渡り方向(矢印AR3方向)と略垂直な方向(矢印AR5方向)に延びる。そして、ホルダ31は、取付片36に設けられた揺動軸36aを中心に揺動する。これにより、膜に対して突き当てられた刃先の刃渡り方向(矢印AR3方向)が、膜の表面に対して略平行となるように、ホルダ揺動部34は、ホルダ31を矢印R2方向に回転できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターニング(溝加工等の太陽電池基板の表面に形成された膜の剥離または除去等)ヘッドおよび該パターニングヘッドを用いたパターニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CIGS(Copper Indium Gallium DiSelenide)系の太陽電池の表面に刃先を押し当てることによって、太陽電池の表面に形成された膜を剥離させ、溝加工を実行する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/145058号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述の太陽電池の製造工程では、種々の熱処理が施される。これにより、場合によっては、この熱の影響により太陽電池を構成する基板(ガラス基板)が反り、刃先の刃渡り方向と基板表面とが、略平行とならない。通常のパターニングにおいては、幅の狭いパターニングツールを使用して、幅の狭い溝を形成するため、基板の反りによる悪影響が小さいが、例えば、太陽電池基板の端部において、下部電極を露出させるために、下部電極上に形成されている膜を比較的幅広に除去する工程(ハツリ工程ともいう)においては、基板の反りによる悪影響が大きく、刃先が基板上に形成された膜に均等に接触せず、膜を良好な状態で剥離または除去することができないという問題が生ずる。
【0005】
そこで、本発明では、基板上に形成された膜に対して、膜を良好な状態で剥離または除去することができるパターニングヘッドおよびパターニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に対して相対的に移動させられることによって、前記基板の上に形成された膜を部分的に剥離または除去する加工に使用されるパターニングヘッドであって、パターニングツールと、前記パターニングツールを固定するホルダと、前記ホルダを前記基板に対して揺動させるホルダ揺動部とを備え、前記ホルダに固定された前記パターニングツールは、前記膜に突き当てられた状態で、前記基板に対して相対的に移動させられ、前記ホルダに固定されている場合、前記パターニングツールの刃先の刃渡り方向は、前記加工の方向に対して略垂直とされており、前記ホルダ揺動部は、前記膜に対して突き当てられた前記刃先の前記刃渡り方向が、前記膜の表面に対して略平行となるように、前記ホルダを回転させることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のパターニングヘッドにおいて、前記ホルダは、前記ホルダ揺動部に設けられた回転軸を中心に揺動し、前記回転軸は、前記パターニングツールの延伸方向と略垂直な方向であり、かつ、前記刃渡り方向と略垂直な方向に延びることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のパターニングヘッドと、前記基板を保持する保持ユニットと、前記保持ユニットに対して前記ホルダを相対的に移動させることによって、前記パターニングツールを前記加工方向に沿って移動させる駆動部とを備え、前記パターニングヘッドは、前記ホルダを前記保持ユニットに近接する方向に移動させることによって、前記ホルダに固定された前記パターニングツールを前記膜に突き当てる昇降部、をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1ないし請求項3に記載の発明において、基板上の膜に対して突き当てられたパターニングツールの刃先の刃渡り方向が、膜の表面に対して略平行となるように、ホルダ揺動部は、ホルダを回転させる。これにより、基板の熱処理に起因して基板が反り、その結果、非接触時における刃先の刃渡り方向に対して基板の主面が傾斜する場合であっても、刃先が基板に片当たりすることを抑制できる。そのため、基板の上に形成された膜に対して適切な幅の溝が形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態におけるパターニング装置の全体構成の一例を示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるパターニング装置の全体構成の一例を示す側面図である。
【図3】太陽電池の構成の一例を示す正面図である。
【図4】パターニングヘッド付近の構成の一例を示す正面図である。
【図5】ホルダ揺動部付近の構成の一例を示す側面図である。
【図6】ホルダ揺動部付近の構成の一例を示す側面図である。
【図7】パターニングツールの構成の一例を示す正面図である。
【図8】パターニングツールと太陽電池との位置関係の一例を示す正面図である。
【図9】パターニングツールと太陽電池との位置関係の一例を示す正面図である。
【図10】パターニングツールと太陽電池との位置関係の一例を示す正面図である。
【図11】パターニングツールの構成の別の例を示す正面図である。
【図12】パターニングツールの構成の別の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
<1.パターニング装置の構成>
図1および図2は、それぞれパターニング装置1の全体構成の一例を示す正面図および側面図である。図3は、太陽電池3の構成の一例を示す正面図である。パターニング装置1は、太陽電池3のように脆性材料基板4上に膜5が形成されている場合において、工具により膜5を剥離させることによって、膜5に溝6を形成したり(図3参照)、特定の膜(例えば、金属裏面(下部)電極)を露出させたりする。
【0013】
ここで、本実施の形態において、「脆性材料基板」とは、例えばガラス基板またはセラミックス基板等のように、脆性材料で形成された基板を言うものとする。
【0014】
また、本実施の形態で加工対象とされる太陽電池3の膜5は、図3に示すように、脆性材料基板4の上に積層されている。また、図3に示すように、膜5は、主として、金属裏面(下部)電極L1と、CIGS(Cu、In、Ga、Se)光吸収層L2と、バッファ層L3と、透明電極窓層L4と、を有している。
【0015】
さらに、溝6は、金属裏面電極L1、CIGS光吸収層L2、バッファ層L3、および透明電極窓層L4が、この順番に積層された後、CIGS光吸収層L2、バッファ層L3、および透明電極窓層L4が除去されることにより形成される。また、透明電極窓層L4が積層される前の段階で、CIGS光吸収層L2およびバッファ層L3を除去することにより、溝を形成する場合もある。そして、形成された溝6により金属裏面電極L1が露出する。
【0016】
図1および図2に戻って、パターニング装置1は、主として、保持ユニット10と、パターニングユニット20と、撮像部ユニット80と、制御ユニット90と、を有している。なお、図1および以降の各図には、それらの方向関係を明確にすべく、必要に応じて適宜、Z軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系が付されている。
【0017】
保持ユニット10は、太陽電池3を構成する脆性材料基板4を保持するとともに、保持された脆性材料基板4をパターニングユニット20に対して相対的に移動させる。図1に示すように、保持ユニット10は、基部10a上に設けられており、主として、テーブル11と、ボールねじ機構12と、モータ13と、を有している。
【0018】
ここで、基部10aは、例えば略直方体状の石定盤により形成されており、その上面(保持ユニット10と対向する面)は、平坦加工されている。これにより、基部10aの熱膨張を低減でき、保持ユニット10に保持された脆性材料基板4を良好に移動させることができる。
【0019】
テーブル11は、載置された脆性材料基板4を吸着保持する。また、テーブル11は、保持された脆性材料基板4を、矢印AR1方向(X軸プラスまたはマイナス方向:以下、単に、「進退方向」とも呼ぶ)に進退させるとともに、矢印R1方向に回転させる。図1および図2に示すように、テーブル11は、主として、吸着部11aと、回転台11bと、移動台11cと、を有している。
【0020】
吸着部11aは、回転台11bの上側に設けられている。図1および図2に示すように、吸着部11aの上面には、脆性材料基板4が載置可能とされている。また、吸着部11aの上面には、複数の吸着溝(図示省略)が格子状に配置されている。したがって、脆性材料基板4が載置された状態で、各吸着溝内の雰囲気が排気(吸引)されることによって、脆性材料基板4は、吸着部11aに対して吸着される。
【0021】
回転台11bは、吸着部11aの下側に設けられており、Z軸と略平行な回転軸11dを中心に吸着部11aを回転させる。また、移動台11cは、回転台11bの下側に設けられており、進退方向に沿って、吸着部11aおよび回転台11bを移動させる。
【0022】
したがって、テーブル11に吸着保持された脆性材料基板4は、矢印AR1方向に進退させられるとともに、吸着部11aの進退動作にともなって移動する回転軸11dを中心に回転させられる。
【0023】
ボールねじ機構12は、テーブル11の下側に配置されており、テーブル11を矢印AR1方向に進退させる。図1および図2に示すように、ボールねじ機構12は、主として、送りネジ12aと、ナット12bと、を有している。
【0024】
送りネジ12aは、テーブル11の進退方向に沿って延びる棒体である。送りネジ12aの外周面には、螺旋状の溝(図示省略)が設けられている。また、送りネジ12aの一端は支持部14aにより、送りネジ12aの他端は支持部14bにより、それぞれ回転可能に支持されている。さらに、送りネジ12aは、モータ13と連動連結されており、モータ13が回転すると、その回転方向に送りネジ12aが回転する。
【0025】
ナット12bは、送りネジ12aの回転にしたがい、不図示のボールの転がり運動によって、矢印AR1方向に進退する。図1および図2に示すように、ナット12bは、移動台11cの下部に固定されている。
【0026】
したがって、モータ13が駆動させられ、モータ13の回転力が送りネジ12aに伝達されると、ナット12bは、矢印AR1方向に進退する。その結果、ナット12bが固定されているテーブル11は、ナット12bと同様に矢印AR1方向に進退する。
【0027】
一対のガイドレール15、16は、進行方向におけるテーブル11の移動を規制する。図2に示すように、一対のガイドレール15、16は、基部10a上において、矢印AR2方向に所定距離だけ隔てて固定されている。
【0028】
複数(本実施の形態では2つ)の摺動部17(17a、17b)は、ガイドレール15に沿って矢印AR1方向に摺動自在とされている。図1および図2に示すように、各摺動部17(17a、17b)は、移動台11cの下部において、矢印AR1方向に所定距離だけ隔てて固定されている。
【0029】
複数(本実施の形態では2つ:ただし、図示の都合上、摺動部18aのみ記載)の摺動部18は、ガイドレール16に沿って矢印AR1方向に摺動自在とされている。図1および図2に示すように、各摺動部18は、摺動部17(17a、17b)と同様に、移動台11cの下部において、矢印AR1方向に所定距離だけ隔てて固定されている。
【0030】
このように、モータ13の回転力がボールねじ機構12に付与されると、テーブル11は、一対のガイドレール15、16に沿って移動する。そのため、進退方向におけるテーブル11の直進性を確保することができる。
【0031】
パターニングユニット20は、パターニングツール60(図4参照)を用いることによって、脆性材料基板4上の膜5に溝6を形成する。図1および図2に示すように、パターニングユニット20は、主として、パターニングヘッド30と、駆動部70と、を有している。
【0032】
パターニングヘッド30は、保持ユニット10に保持された脆性材料基板4に対して相対的に移動させられることによって、脆性材料基板4の上に形成された膜5に溝6を形成する。なお、パターニングヘッド30の詳細な構成については、後述する。
【0033】
駆動部70は、パターニングツール60が取り付けられたホルダ31(図4参照)を、保持ユニット10に対して相対的に移動させることによって、パターニングツール60を矢印AR2方向(Y軸プラスまたはマイナス方向:以下、単に、「加工方向」とも呼ぶ)に沿って往復移動させる。図2に示すように、駆動部70は、主として、支柱71と、レール72と、モータ73と、を有している。
【0034】
複数(本実施の形態では2本)の支柱71(71a、71b)は、基部10aから上下方向(Z軸方向)に延びる。図2に示すように、各ガイドレール72は、支柱71a、71bの間に挟まれた状態で、これら支柱71a、71bに対して固定される。
【0035】
複数(本実施の形態では2本)のガイドレール72は、加工方向におけるパターニングヘッド30の移動を規制する。図2に示すように、複数のガイドレール72は、上下方向に所定距離だけ隔てて固定されている。
【0036】
モータ73は、不図示の送り機構(例えば、ボールねじ機構)と連動連結されている。これにより、モータ73が回転すると、パターニングヘッド30は、複数のガイドレール72に沿って矢印AR2方向に往復する。
【0037】
撮像部ユニット80は、保持ユニット10に保持された脆性材料基板4を撮像する。図2に示すように、撮像部ユニット80は、複数のカメラ85(85a、85b)を有している。
【0038】
複数(本実施の形態では2台)のカメラ85(85a、85b)は、図1および図2に示すように、保持ユニット10の上方に配置されている。各カメラ85(85a、85b)は、脆性材料基板4上に形成された特徴的な部分(例えば、アライメントマーク(図示省略))の画像を撮像する。そして、各カメラ85(85a、85b)により撮像された画像に基づいて、脆性材料基板4の位置および姿勢が求められる。
【0039】
制御ユニット90は、パターニング装置1の各要素の動作制御、およびデータ演算を実現する。図1および図2に示すように、制御ユニット90は、主として、ROM91と、RAM92と、CPU93と、を有している。
【0040】
ROM(Read Only Memory)91は、いわゆる不揮発性の記憶部であり、例えば、プログラム91aが格納されている。なお、ROM91としては、読み書き自在の不揮発性メモリであるフラッシュメモリが使用されてもよい。RAM(Random Access Memory)92は、揮発性の記憶部であり、例えば、CPU93の演算で使用されるデータが格納される。
【0041】
CPU(Central Processing Unit)93は、ROM91のプログラム91aに従った制御(例えば、昇降部50によるホルダ揺動部34の昇降動作、および駆動部70によるパターニングヘッド30の往復動作等の制御)、および脆性材料基板4の位置演算等のデータ処理を実行する。
【0042】
<2.パターニングヘッドの構成>
図4は、パターニングヘッド30付近の構成の一例を示す正面図である。図5および図6のそれぞれは、ホルダ揺動部34付近の構成の一例を示す側面図である。図7は、パターニングツール60の構成を示す正面図である。図8から図10のそれぞれは、パターニングツール60と太陽電池3との位置関係の一例を示す正面図である。
【0043】
パターニングヘッド30は、脆性材料基板4に対して相対的に移動させられることによって、この脆性材料基板4の上に形成された膜5を部分的に剥離または除去し、裏面電極を露出させ、例えば、溝6(図3参照)を形成する。図4から図6に示すように、パターニングヘッド30は、主として、ホルダ31と、ホルダ揺動部34と、昇降部50と、パターニングツール60と、を有している。
【0044】
ホルダ31は、図4および図7に示すように、パターニングツール60の刃部61aが太陽電池3側となるように、パターニングツール60を固定する。また、図5および図6に示すように、パターニングツール60がホルダ31に固定されている場合、パターニングツール60の刃部61aの刃渡り方向(矢印AR3方向)は、溝6(図3参照)の加工方向(矢印AR2方向)(膜の剥離または除去方向)に対して略垂直とされている。
【0045】
ここで、パターニングツール60について説明する。パターニングツール60は、膜5を部分的に剥離または除去し、例えば、溝6(図3参照)を形成する工具である。パターニングツール60による膜の剥離または除去は、脆性材料基板4の上に形成された膜5にパターニングツール60が突き当てられた状態で、脆性材料基板4に対してパターニングツール60が相対的に移動させられることによって、実行される。図7に示すように、パターニングツール60は、主として、刃部61と、把持部62と、を有している。
【0046】
刃部61は、図4から図7に示すように、平板状とされている。また、図7に示すように、刃部61は、膜の剥離または除去方向、例えば、溝6の加工方向(矢印AR2方向)と略垂直な刃渡り方向(矢印AR3方向)に延びる刃先61aを有している。
【0047】
ここで、図4から図7に示すように、刃部61の表面に沿った方向であり、かつ、刃渡り方向(矢印AR3方向)と略垂直な方向を、長さ方向(矢印AR4方向)と定義する。この場合、図7に示すように、長さ方向における刃先61aのサイズS1(第1サイズ)が、長さ方向における刃部61のサイズS2(第2サイズ)より小さくなるように、刃部61に貫通孔61bが形成されている。すなわち、長さ方向における刃先61aの幅は、非常に狭いものとなる。
【0048】
これにより、図8および図9に示すように、刃先61aが脆性材料基板4上の膜5に突き当てられると、刃先61aは脆性材料基板4の主面の形状に倣って変形する。例えば、熱処理に起因して基板が反り(湾曲し)、非接触時における刃先61aの刃渡り方向(矢印AR3方向)に対して脆性材料基板4の主面が傾斜する場合であっても(図8参照)、脆性材料基板4の主面に沿って刃先61aを追従させることができる(図9参照)。そのため、刃先61aが脆性材料基板4上に形成された膜5に片当たりすることを抑制でき、膜5を適切な幅にわたって剥離または除去し、例えば、適切な幅の溝6を形成することができる。
【0049】
このように、刃部61の刃先61aが膜5に突き当てられた状態で、長さ方向に沿った荷重成分がパターニングツール60に作用すると、刃先61aの刃渡り方向が膜5の表面に対して略平行となるように、刃先61aが変形する。
【0050】
また、脆性材料基板4上から除去された膜5は、刃部61に設けられた貫通孔61bを介して、パターニングツール60の加工方向と逆側(例えば、パターニングツール60がY軸プラス方向に移動する場合、Y軸マイナス方向側)に排出される。すなわち、除去された膜5が、刃先61aに付着することを抑制できる。そのため、パターニングツール60の刃先61aが脆性材料基板4上の膜5に対して移動させられる場合であっても、良好な膜5の除去状態を維持することができる。
【0051】
ここで、長さ方向における刃先61aのサイズS1としては、好ましくは0.3mm〜2mm(さらに好ましくは、0.5mm〜1mm)が好適である。また、長さ方向における刃部61のサイズS2としては、好ましくは2mm〜20mm(さらに好ましくは、3mm〜10mm)が好適である。
【0052】
把持部62は、図7に示すように、平板状とされており、刃部61から長さ方向(矢印AR4方向)に沿って延びる。そして、把持部62の端部付近がホルダ31に設けられた固定穴31aに挿入されることによって、パターニングツール60は、ホルダ31に固定される。
【0053】
ここで、図7に示すように、刃渡り方向(矢印AR3方向)における刃先61aのサイズS3(第3サイズ)は、刃渡り方向における把持部62のサイズS4(第4サイズ)より大きくなるように設定されている。そのため、1回の溝加工によって、把持部62のサイズS4より大きな幅の溝6(図3参照)が、容易に形成できる。
【0054】
また、刃渡り方向における刃先61aのサイズS3としては、好ましくは1mm〜15mm(さらに好ましくは、2mm〜10mm)が好適である。また、刃渡り方向における刃部61のサイズS4としては、好ましくは0.5mm〜12mm(さらに好ましくは、1mm〜8mm)が好適である。
【0055】
ホルダ揺動部34は、ホルダ31を脆性材料基板4に対して揺動させることによって、刃先61aの刃渡り方向を調整する。図5および図6に示すように、ホルダ揺動部34は、主として、ホルダジョイント35と、ホルダ取付ブロック40と、を有している。
【0056】
ホルダジョイント35は、図4に示すように、長さ方向(矢印AR4方向)と略平行な回転軸38aを中心に回転させられることによって、ホルダ取付ブロック40に対して回動可能に支持される。図4から図6に示すように、ホルダジョイント35は、主として、取付片36と、旋回部38と、を有している。
【0057】
取付片36は、ホルダジョイント35の下部にホルダ31を取り付けるための取付要素である。図4から図6に示すように、取付片36は、ホルダジョイント35の下端に設けられており、取付片36の形状は、側面視略L字状とされている。
【0058】
また、図4から図6に示すように、取付片36は、揺動軸36aを有している。揺動軸36aは、パターニングツール60の延伸方向(矢印AR4方向)と略垂直であり、かつ、刃先61aの刃渡り方向(矢印AR3方向)と略垂直な方向(矢印AR5方向:以下、単に、「軸心方向」とも呼ぶ)に延びる。そして、ホルダ31は、取付片36に設けられた揺動軸36aを中心に揺動する。
【0059】
このように、膜5に対して突き当てられた刃先61aの刃渡り方向(矢印AR3方向)が、膜5の表面に対して略平行となるように、ホルダ揺動部34は、ホルダ31を矢印R2方向(図4参照)に回転させることができる。
【0060】
これにより、図10に示すように、脆性材料基板4の熱処理に起因して脆性材料基板4が反り、その結果、非接触時における刃先61aの刃渡り方向に対して脆性材料基板4の主面が傾斜する場合であっても、刃先61aが膜5に片当たりすることを抑制できる。そのため、脆性材料基板4の上に形成された膜5を適切な幅にわたって剥離または除去することができ、例えば、溝6が形成できる。
【0061】
旋回部38は、ホルダ取付ブロック40に対して回転可能に支持されている。図4に示すように、旋回部38は、ベアリング46、47の内径面と対向するように、挿入されている。
【0062】
ホルダ取付ブロック40は、上述のようにホルダジョイント35を回動可能に支持する。図4に示すように、ホルダ取付ブロック40は、ホルダジョイント35の取付片36の上方、およびホルダ31の上方に設けられており、主として、ベアリング46、47と、固定部49と、を有している。
【0063】
ベアリング46、47は、取付ブロック本体40a内に、かつ、上からこの順番に、配置されている。ベアリング46、47は、ホルダジョイント35の旋回部38を軸支する。
【0064】
固定部49は、ベアリング46、47により回動自在にされた旋回部38を、ホルダ取付ブロック40に対して固定する。ここで、固定部49としては、例えば、ネジ等の締結部材が用いられても良い。これにより、回転軸38a周りにおけるホルダジョイント35の回動角が設定できる。そのため、ホルダ31に固定されたパターニングツール60の姿勢がXY平面内で調整できる。
【0065】
なお、本実施の形態では、2つのベアリング46、47を用いるものとして説明したが、ベアリングの個数はこれに限定されず、例えば、1つであっても良いし、3つ以上であっても良い。
【0066】
昇降部50は、ホルダ31を保持ユニット10と近接する方向に移動させることによって、ホルダ31に固定されたパターニングツール60を脆性材料基板4上の膜5に突き当てる。図4に示すように、昇降部50は、主として、シリンダ51と、伝達部52と、を有している。
【0067】
シリンダ51は、ホルダ取付ブロック40側に上下方向(Z軸プラスまたはマイナス方向)に沿った駆動力を付与する駆動力供給源である。図4に示すように、シリンダ51は、ホルダ取付ブロック40の上方に配置されており、主として、本体部51aと、ロッド51bと、を有している。
【0068】
ロッド51bは、本体部51aに対して進退可能とされている。図4に示すように、ロッド51bの下端は、伝達部52に連結されている。したがって、シリンダ51が駆動し、ロッド51bが本体部51aから進出することによって、伝達部52は、ロッド51bの下端により下方向に押し下げられる。
【0069】
伝達部52は、シリンダ51およびホルダ取付ブロック40の間に設けられており、シリンダ51からの駆動力をホルダ取付ブロック40に伝達する。
【0070】
ガイド機構53は、図4に示すように、主として、ガイドレール53aと、ガイドレール53aに沿って上下方向に摺動自在とされたガイドブロック53bと、を有している。また、取付プレート54は、ガイド機構53およびホルダ取付ブロック40の間に挟まれた板材である。ホルダ取付ブロック40は、取付プレート54を介してガイドブロック53bに固定されている。これにより、ホルダ取付ブロック40に上下方向に沿った駆動力が付与されると、ガイド機構53は、ガイドブロック53bの昇降方向に沿ってホルダ取付ブロック40をガイドする。
【0071】
回転軸56は、図4から図6に示すように、パターニングツール60の延伸方向(矢印AR4方向)と略垂直であり、かつ、取付片36に設けられた揺動軸36aと略垂直な方向に延びる。これにより、回転軸56周りにおけるホルダ取付ブロック40の回転角が設定できる。そのため、ホルダ31に固定されたパターニングツール60の姿勢がYZ平面内で調整できる。
【0072】
<3.本実施の形態のパターニングツールおよびパターニングヘッドの利点>
以上のように、本実施の形態のパターニングツール60、およびこのパターニングツール60を含むパターニングヘッド30において、刃部61には、貫通孔61bが設けられている(図7参照)。そして、この貫通孔61bの存在によって、長さ方向(矢印AR4方向)における刃先61aのサイズS1は、長さ方向における刃部61のサイズS2より小さくなる。
【0073】
これにより、刃先61aが太陽電池3の膜5に突き当てられると、刃先61aは脆性材料基板4の主面の形状に倣って変形する。そのため、刃先61aが脆性材料基板4上に形成された膜5に片当たりすることを抑制でき、膜5を適切な幅にわたって剥離または除去することができ、例えば、溝6を形成することができる。
【0074】
また、脆性材料基板4上から除去された膜5は、刃部61に設けられた貫通孔61bを介して、パターニングツール60の加工方向と逆側に排出される。そのため、パターニングツール60の刃先61aが脆性材料基板4の膜5に対して移動させられる場合であっても、良好な膜5の除去状態を維持することができる。
【0075】
また、本実施の形態において、脆性材料基板4上の膜5に対して突き当てられた刃部61の刃渡り方向(矢印AR3方向)が、基板の表面に対して略平行となるように、パターニングヘッド30のホルダ揺動部34は、ホルダ31を回転させることができる。これにより、刃先61aが膜5に片当たりすることを抑制できる。そのため、脆性材料基板4の上に形成された膜5を適切な幅にわたって剥離または除去することができ、溝6が形成できる。
【0076】
<4.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0077】
(1)本実施の形態において、パターニング装置1は、太陽電池3の膜5を剥離または除去(例えば、溝加工)の対象としているが、剥離または除去(例えば、溝加工)の対象はこれに限定されるものでない。加工対象としては、土台となる基部(脆性材料基板に限定されない)の上に罫書き可能な膜が形成されているものであれば十分である。
【0078】
(2)また、本実施の形態では、パターニングヘッド30が、駆動部70により保持ユニット10に対して加工方向(矢印AR2方向)に移動させられるものとして説明したが、これに限定されるものでない。例えば、パターニングヘッド30が固定され、保持ユニット10が加工方向に移動させられても良い。さらに、保持ユニット10およびパターニングヘッド30の両者が加工方向に移動させられても良い。すなわち、保持ユニット10およびパターニングヘッド30の少なくとも一方が他方に対して相対的に移動させられれば十分である。
【0079】
(3)また、本実施の形態において、パターニングツール60の刃部61には、図7に示すように、刃先61aのサイズS1が、刃部61のサイズS2より小さくなるように、貫通孔61bが形成されているが、パターニングツール60の構成はこれに限定されるものでない。
【0080】
図11は、パターニングツール160の構成を示す正面図である。例えば、図11のパターニングツール160のように、刃渡り方向における刃部61および把持部162のサイズが略同一となるように設定されてもよい。
【0081】
この場合も、刃先61aが脆性材料基板4上の膜5に突き当てられると、刃先61aは脆性材料基板4の主面の形状に倣って変形する。また、脆性材料基板4上から除去された膜5は、刃部61に設けられた貫通孔61bを介して、パターニングツール60の加工方向と逆側に排出される。
【0082】
(4)また、本実施の形態において、パターニングヘッド30は、軸心方向(矢印AR5方向:図4から図6参照)に延びる揺動軸36a周りにホルダ31を揺動させるホルダ揺動部34と、貫通孔61bを有するパターニングツール60と、を有するものとして説明したが、パターニングヘッド30の構成としては、これに限定されるものでない。
【0083】
図12は、パターニングツール260の構成を示す正面図である。例えば、図12のパターニングツール260のように、貫通孔を有しない刃部261が用いられてもよい。この場合、刃先261aが、膜5に対して突き当てられると、ホルダ揺動部34は、膜5の表面に対して略平行となるように、ホルダ31を矢印R2方向(図4参照)に回転させることができる。そのため、刃先261aが膜5に片当たりすることを抑制できる。
【0084】
また、揺動軸36aを有していないホルダ揺動部34が用いられ、パターニングツール60がホルダ31に対して固定されても良い。すなわち、ホルダ31は、ホルダ揺動部34に対して揺動せず、固定された状態である。この場合、刃先61aが太陽電池3の膜5に突き当てられると、刃先61aは脆性材料基板4の主面の形状に倣って変形する。そのため、刃先61aが膜5に片当たりすることを抑制できる。
【0085】
このように、パターニングヘッド30が、上述のホルダ揺動部34およびパターニングツール60のいずれか一方を有していれば、パターニングツール60(160、260)の刃先61a(261a)が、膜5に片当たりすることを抑制できる。
【符号の説明】
【0086】
1 パターニング装置
3 太陽電池
4 脆性材料基板
5 膜
6 溝
10 保持ユニット
11d、38a、56 回転軸
20 パターニングユニット
30 パターニングヘッド
31 ホルダ
34 ホルダ揺動部
35 ホルダジョイント
36a 揺動軸
50 昇降部
51 シリンダ
52 伝達部
60、160、260 パターニングツール
61、261 刃部
61a、261a 刃先
61b 貫通孔
62、162 把持部
70 駆動
80 撮像部ユニット
90 制御ユニット
s1 サイズ(第1サイズ)
s2 サイズ(第2サイズ)
s3 サイズ(第3サイズ)
s4 サイズ(第4サイズ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して相対的に移動させられることによって、前記基板の上に形成された膜を部分的に剥離または除去する加工に使用されるパターニングヘッドであって、
(a) パターニングツールと、
(b) 前記パターニングツールを固定するホルダと、
(c) 前記ホルダを前記基板に対して揺動させるホルダ揺動部と、
を備え、
前記ホルダに固定された前記パターニングツールは、前記膜に突き当てられた状態で、前記基板に対して相対的に移動させられ、
前記ホルダに固定されている場合、前記パターニングツールの刃先の刃渡り方向は、前記加工の方向に対して略垂直とされており、
前記ホルダ揺動部は、前記膜に対して突き当てられた前記刃先の前記刃渡り方向が、前記膜の表面に対して略平行となるように、前記ホルダを回転させることを特徴とするパターニングヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のパターニングヘッドにおいて、
前記ホルダは、前記ホルダ揺動部に設けられた回転軸を中心に揺動し、
前記回転軸は、前記パターニングツールの延伸方向と略垂直な方向であり、かつ、前記刃渡り方向と略垂直な方向に延びることを特徴とするパターニングヘッド。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のパターニングヘッドと、
前記基板を保持する保持ユニットと、
前記保持ユニットに対して前記ホルダを相対的に移動させることによって、前記パターニングツールを前記加工の方向に沿って移動させる駆動部と、
を備え、
前記パターニングヘッドは、
(d) 前記ホルダを前記保持ユニットに近接する方向に移動させることによって、前記ホルダに固定された前記パターニングツールを前記膜に突き当てる昇降部、
をさらに有することを特徴とするパターニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−176521(P2012−176521A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40042(P2011−40042)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(390000608)三星ダイヤモンド工業株式会社 (383)
【Fターム(参考)】