パターンが施された金属箔の製造方法、導体層パターン付基材の製造方法、めっき用導電性基材及びその製造方法
【課題】 種々の微細なパターン化金属箔の作製が可能なパターン化金属箔の製造方法を提供する。
【解決手段】 (A)表面に開口方向に向かって幅広な凹部が形成されており、表面が導電性であるめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程、
(B)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程
を含むことを特徴とする、少なくとも片面にパターンが施された金属箔の製造方法。
【解決手段】 (A)表面に開口方向に向かって幅広な凹部が形成されており、表面が導電性であるめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程、
(B)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程
を含むことを特徴とする、少なくとも片面にパターンが施された金属箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンが施された金属箔(以下、パターン化金属箔という)の製造方法、導体層パターン付基材の製造方法、めっき用導電性基材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面にパターンが施された金属箔を作製するには、フォトリソグラフ法を用いて金属箔をエッチングして加工する方法や、表面に凹凸が形成されたロール、または金型で圧延、プレスして金属箔表面に凹凸形状を転写する方法などが知られている。しかし、これらの方法では、加工に手間がかかりすぎてコストがかかる、形状の制御が困難である、特に微細なパターンの形成が困難である、といった課題があった。
そこで、特許文献1に記載されるように、導電性基材上にめっき形成部としての凹部を有する絶縁層を形成しためっき用導電性基材とこれを用いたパターン化金属箔の作製が提案されている。このめっき用導電性基材によれば、導電性基材上に形成された絶縁層の凹部の平面形状を種々変更することにより、金属メッシュ等の種々のパターン化金属箔を作製できる。また、パターン化金属箔のめっき用導電性基材からの剥離を接着性支持体で行うことにより、電磁波遮蔽部材等に有用な導体層パターン付き基材が容易に作製できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2008/081904
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるめっき用導電性基材並びにこれを用いたパターン化金属箔及び導体層パターン付き基材の製造方法は、生産性、微細なパターンの形成が容易であるなど有用性に優れるが、さらに種々のパターン化金属箔の作製には、さらなる改善が要望されている。
そこで、本発明は、生産性よく、種々の微細なパターン化金属箔の作製が可能なパターン化金属箔の製造方法、そのようなパターン化金属箔を利用する導体層パターン付き基材の製造方法並びにそれに用いるめっき用導電性基材及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次のものに関する。
1. (A)表面に開口方向に向かって幅広な凹部が形成されており、表面が導電性であるめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程、
(B)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程
を含むことを特徴とする、少なくとも片面にパターンが施された金属箔の製造方法。
2. (A)表面に開口方向に向かって幅広な導電性の表面を有する凹部と少なくともその凹部を除いた表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層の開口部が開口方向に向かって幅広になっているめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程
(B)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程
を含むことを特徴とする、パターンが施された金属箔の製造方法
3. (A)表面に開口方向に向かって幅広な導電性の表面を有する凹部と少なくともその凹部を除いた表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層の開口部が開口方向に向かって幅広になっているめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程
(B)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を別の基材に転写する工程
を含むことを特徴とする導体層パターン付基材の製造方法。
4. 基材の上に開口方向に向かって幅広な凹部を有する絶縁層が形成されており、さらにその上に導電層を形成してなるめっき用導電性基材。
5. 基材が導電性である項4記載のめっき用導電性基材。
6. 基材の上に開口方向に向かって幅広な凹部を有する第一の絶縁層が形成されており、その上に導電層が形成されており、さらにその上に第一の絶縁層に形成されている凹部を含むように開口方向に向かって幅広な開口を有する第二の絶縁層が形成されているめっき用導電性基材。
7. 基材が導電性である項6記載のめっき用導電性基材。
8. めっき用導電性基材の絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)又は無機材料からなる項4〜7のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
9. めっき用導電性基材の絶縁層がDLC、Al2O3又はSiO2である項8記載のめっき用導電性基材。
10. めっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは導電性無機膜からなることを特徴とする項4〜9のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
11. めっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは窒化クロムからなることを特徴とする項10記載のめっき用導電性基材。
12. めっき用導電性基材において、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上90度未満である項4〜11に記載のめっき用導電性基材。
13. めっき用導電性基材において、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下である項4〜11のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
14. めっき用導電性基材において、絶縁層の厚さが、0.1〜100μmである項4〜13のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
15. めっき用導電性基材において、導電層の厚さが、0.1〜100μmである項4〜14のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
16. 導電性のロール(ドラム)またはロールに巻き付けるものである項4〜15のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
17. (A)基材の表面に、除去可能な凸部のパターンを形成する工程、
(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている基材の表面に、DLC又は無機材料からなる絶縁層を形成する工程、
(C)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程、
及び
(D)得られた絶縁層付基材の表面に、導電性DLCまたは導電性無機膜を形成する工程を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造方法
18. (A)基材の表面に、除去可能な凸部のパターンを形成する工程、
(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている基材の表面に、DLC又は無機材料からなる第一の絶縁層を形成する工程、
(C)第一の絶縁層が付着している凸状のパターンを除去し、絶縁層に開口方向に向かって幅広な凹部を形成する工程、
(D)得られた第一の絶縁層付基材の表面に、導電性DLCまたは導電性無機膜を形成する工程、
(E)導電性DLCまたは導電性無機膜が形成された第一の絶縁層付基材の表面に、少なくとも上記で形成された第一の絶縁層の凹部上に除去可能な凸部のパターンを形成する工程
(F)除去可能な凸状のパターンが形成されている、導電性DLCまたは導電性無機膜が形成された第一の絶縁層付基材の表面の表面に、DLC又は無機材料からなる第二の絶縁層を形成する工程、
及び、
(G)第二の絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程
を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造方法。
19. 除去可能な凸状のパターンが、感光性レジストを用いるフォトリソグラフ法により形成されたものである項17または18記載のめっき用導電性基材の製造方法。
20. めっき用導電性基材の絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)又は無機材料からなる項17〜19のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造方法。
21. めっき用導電性基材の絶縁層がDLC、Al2O3又はSiO2である項20記載のめっき用導電性基材の製造方法。
22. めっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは導電性無機膜からなることを特徴とする項17〜21のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造方法。
23. めっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは窒化クロムからなることを特徴とする項22記載のめっき用導電性基材。
24. めっき用導電性基材において、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上90度未満である項17〜23に記載のめっき用導電性基材。
25. めっき用導電性基材において、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下である項17〜24のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
26. めっき用導電性基材において、絶縁層の厚さが、0.1〜100μmである項17〜25のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
27. めっき用導電性基材において、導電層の厚さが、0.1〜100μmである項17〜26のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【発明の効果】
【0006】
本発明におけるめっき用導電性基材は、めっきにより金属層が形成される凹部が開口方向に向かった幅広となっているため、また、第二の絶縁層が露出しているときは、その絶縁層が末広がりの凸形状であるため、めっきにより得られるパターン化金属箔の剥離が容易である。従って、本発明のパターン化金属箔の製造方法によれば、その作製が容易で、生産性が優れる。また、本発明におけるめっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは導電性無機膜からなる場合には、基材及び(第一の)絶縁層への密着性が優れ、その耐食性が優れ、本発明のパターン化金属箔の製造方法において、繰り返しの使用に対し耐久性に優れる。また、さらに本発明におけるめっき用導電性基材は、導電層の上に第二の絶縁層を形成することにより、表面にパターンが形成されているのみならず、金属箔自体を穴あきにした立体構造のパターン化金属箔を作製することができる。さらに、めっき用導電性基材上に形成されたパターン化金属箔を接着性支持体に転写させることで、導体層パターン付基材を容易に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のめっき用導電性基材の一例を示す斜視図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】本発明のめっき用導電性基材の他の例を示す断面図。
【図4】めっき用導電性基材の製造方法を示す工程の一例を示す断面図。
【図5】めっき用導電性基材の製造方法を示す追加の工程の一例を示す断面図。
【図6】パターン化金属箔の作製工程の一例を示す断面図。
【図7】パターン化金属箔の作製工程の別の例を示す断面図。
【図8】導体層パターン付き基材の作製工程の一例を示す断面図。
【図9】別の導体層パターン付き基材の追加の作製工程の一例を示す断面図。
【図10】パターン化金属箔のパターンの一例を示す平面図。
【図11】パターン化金属箔のパターンの別の例を示す平面図の一部拡大した図。
【図12】回転体を用いて導体層パターン付き基材を連続的に作製するための装置の概念断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一例を図面を用いて説明する。
図1は、本発明のめっき用導電性基材の一例を示す一部斜視図である。図2は、図1のA−A断面図を示す。図2の(a)は凹部の側面が平面的であるが、(b)は凹部の側面になだらかな凹凸がある場合を示す。めっき用導電性基材1は、導電性であってもよい基材2の上に凸部3と凹部4が形成されている。さらに詳しくは、図2に示すように、基材2上に絶縁層5が形成されており、これが、上記凸部の基礎となっている。この例において、絶縁層5は平面形状が正方形であり、規則正しく配列されており、絶縁層のない部分が格子状に配置されている。この絶縁層のない部分が凹部4の基礎となっている。絶縁層5及び基材2を覆うように導電層6が形成されている。従って、凸部3及び凹部4の表面は導電層6からなるが、凸部は絶縁層5とその上の導電層6からなり、凹部4の底面を形成する導電層6は、基材2と接触している。基材2は、めっきに際し基材を経由して電流を印可することができることから、導電性基材であることが好ましい。導電性基材2と絶縁層3の間には、絶縁層3の接着性の改善等を目的として、導電性又は絶縁性の中間層(図示せず)が積層されていてもよい。なお、絶縁層5を第一の絶縁層という。
【0009】
凹部は、開口方向に向かって幅広であるが、これについて、詳述する。
前記の凹部4は、その幅が、開口方向に向かって全体として幅広になっている。図面のよう勾配αで一定に幅広になっている必要は必ずしもない。めっきにより形成される導体層パターンの剥離に問題がなければ、凹部は、開口方向に向かって幅が狭くなっている部分があってもよいが、このような部分がない方が良く、凹部は開口方向に向かって狭まっておらず全体として広がっていることが好ましい。特に、凹部の一側面がその対面と共に、底面に対して垂直となっている部分が高さ方向で1μm以上続く部分がないようにすることが好ましい。このようなめっき用導電性基材であれば、それを用いてめっきを行った後、析出した金属層をめっき用導電性基材から剥離するに際し、金属層と絶縁層との間の摩擦又は抵抗を小さくすることができ、その剥離がより容易になる。
【0010】
凹部の側面は、必ずしも平面ではない。この場合には、図2(b)に示すように、前記の勾配αは、凹部の高さh(これは、すなわち、絶縁層の厚さとなる)と凹部の側面の幅s(水平方向で凹部の側面の幅方向)を求め、
【数1】
によってαを決定する。
αは、角度で30度以上90度未満が好ましく、30度以上80度以下がより好ましく、30度以上60度以下が特に好ましい。この角度が小さいと作製が困難となる傾向があり、大きいと凹部にめっきにより形成し得た金属層(導体層パターン)を剥離する際、又は、別の基材に転写する際の抵抗が大きくなる傾向がある。
【0011】
図3は、本発明のめっき用導電性基材の他の例を示す一部断面図である。これは、図2(a)に示すめっき用導電性基材の凸部3の部分の導電層6上にさらに絶縁層(第二の絶縁層)7を形成したものである。第二の絶縁層7も、開口方向に向かって幅広な形状をしていることが好ましい。ここで、「開口方向に向かって幅広」の意味は、前記したのと同様である。第二の絶縁層7は、凸部3の部分の導電層6上に形成されていれば、どのような平面形状であってもよく、目的に応じて適宜決定すればよく、また、この時の導電層6の露出の程度も目的に応じて適宜決定される。第二の絶縁層の側面について、その角度や必ずしも平面ではなくてよいこと等は、前記の凹部の側面と同様である。
さらに、第二の絶縁層の上に第二の導電層、その上に第三の絶縁層、と導電層と絶縁層を繰返し交互に積層することで何段でも積層することが可能であるが、めっき用導電性基材の作製にコストがかかりすぎるため、第三の絶縁層以上に積層することはあまり好ましくない。これらの場合においても、絶縁層の側面について、その角度、必ずしも平面ではなくてよいこと、形成範囲等は、前記の凹部や第二の絶縁層の側面と同様である。
【0012】
前記したいずれのめっき用導電性基材においても、基材2と絶縁層3又は導電層6との間には、絶縁層3又は導電層6の接着性の改善等を目的として、中間層(図示せず)が積層されていてもよい。
【0013】
上記めっき用導電性基材の凹部4の形状は、パターン化金属箔の金属部分のパターンに対応するものであり、さらに、第二の絶縁層はパターン化金属箔の穴のパターンに対応する。
【0014】
絶縁層又は凹部の一方は、目的に応じて、適宜の形状が形成され、他方は、これに対応した形状となる。このような形状としては、平面形状として、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形(nは3以上の整数)、円、だ円、星型、直線などがあり、目的に応じてその形状が選択される。このような形状は、組合せて使用できる。また、絶縁層又は凹部の分布密度は、目的応じて適宜決定される。ここで例示したのは単純な幾何学図形の組合せであるが、例えば、配線板の回路やマイクロ流路チップのような用途に用いる場合には、単純な幾何学図形の組合せだけによらず、その目的に対して最適な形状を設計し、適用することができる。
【0015】
また、第一の絶縁層、第二の絶縁層等の絶縁層の厚さは、0.1μm以上、100μm以下の範囲であることが好ましい。絶縁層が厚すぎると、絶縁層を形成する時間が長くなり、作業効率が低下しやすくなる。また、絶縁層が薄すぎると絶縁層にピンホールが発生しやすくなるため、めっきした際に、絶縁層を施した部分にも金属が析出しやすくなる。さらに第一の絶縁層が厚いと、基材2として導電性のものを使用してこの基材2を通して電流を印可するときは、凸部3の導電層5との距離が遠くなるため、めっきの際に抵抗が大きくなってしまう可能性がある。絶縁層の厚さは、1〜5μmであることが特に好ましい。
【0016】
前記のめっき用導電性基材の形状としては、シート状、プレート状、ロール状、フープ状等がある。ロール状の場合は、ロール状それ自体とシート状、プレート状のものを回転体(ロール)に取り付けたものであってもよい。フープ状の場合は、フープの内側の2箇所から数箇所にロールを設置し、そのロールにフープ状の導電性基材を通すような形態等が考えられる。ロール状、フープ状ともに金属箔を連続的に生産することが可能であるため、シート状、プレート状に比較すると、生産効率が高く、好ましい。
【0017】
本発明において、基材は、導電性であるものが好ましい。その導電性の程度は、その基材を経由して電流を印可するときは、導電層と併せて、導電層上に電解めっきで金属を析出させるために十分な導電性を有するものである。このような基材としては、金属が好ましい。さらに具体的には、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、チタンをライニングした材料、ニッケル、ニッケル基合金、などを用いることができる。また、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、ニッケル合金めっきが施された鋼などのめっきにより耐食層を形成することもできる。あるいはサーメットや超硬合金などを溶射により形成することもできる。
基材は、セラミック等の絶縁体であってもよい。この場合、導電層は電解めっきで金属を析出させるために十分な導電性を有するものである。
基材は耐食性があり、かつ高硬度であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明で用いられる絶縁層の材料として、ダイヤモンドに類似したカーボン、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(以下、「DLC」という)のうち、絶縁性を有するものにて形成させることができる。DLCは、特に耐薬品性にも優れているため、特に好ましい。
【0019】
絶縁層としてのDLC薄膜を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、アーク放電法、イオン化蒸着法等の物理気相成長法、プラズマCVD法等の化学気相成長法等のドライコーティング法を採用し得るが、成膜温度が室温から制御できる高周波やパルス放電を利用するプラズマCVD法が特に好ましい。
上記DLC薄膜をプラズマCVD法で形成するために、原料となる炭素源として炭化水素系のガスが好んで用いられる。例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン系ガス類、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン系ガス類、ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類、アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン系ガス類、ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素系ガス類、シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロアルカン系ガス類、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン系ガス類、メタノール、エタノール等のアルコール系ガス類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系ガス類、メタナール、エタナール等のアルデヒド系ガス類等が挙げられる。上記ガスは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。また、元素として炭素と水素を含有する原料ガスとして上記した炭素源と水素ガスとの混合物、上記した炭素源と一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみからなる化合物のガスとの混合物、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみから構成される化合物のガスと水素ガスとの混合物、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみからなる化合物のガスと酸素ガスまたは水蒸気との混合物等が挙げられる。更に、これらの原料ガスには希ガスが含まれていてもよい。希ガスは、周期律表第0属の元素からなるガスであり、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等が挙げられる。これらの希ガスは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0020】
絶縁層は、その全体を、上述した絶縁性のDLC薄膜によって形成してもよいが、当該DLC薄膜の、基材に対する密着性を向上させて、絶縁層の耐久性をさらに向上させるためには、この両者の間に、Ti、Cr、W、Siもしくはそれらの窒化物又は炭化物から選ばれる一種以上の成分又はその他よりなる中間層を介挿することが好ましい。
上記SiまたはSiCの薄膜は、例えば、ステンレス鋼などの金属との密着性に優れる上、その上に積層する絶縁性のDLC薄膜との界面においてSiCを形成して、当該DLC薄膜の密着性を向上させる効果を有している。
中間層は、前記したようなドライコーティング法により形成させることができる。
中間層の厚みは、1μm以下であることが好ましく、生産性を考慮すると0.5μm以下であることが更に好ましい。1μm以上コーティングするには、コーティング時間が長くなると共に、コーティング膜の内部応力が大きくなるため適さない。
【0021】
絶縁層をAl2O3、SiO2のような無機材料で形成することができる。この場合にも、スパッタリング法、イオンプレーティング法といった物理的気相成長法やプラズマCVDといった化学気相成長法を用いることができる。例えばスパッタリング法で形成する場合には、ターゲットをSiまたはAlにして反応性ガスとして酸素、窒素などの導入することでSiO2、Si3N4などの酸化物、窒化物を成膜することができる。また、イオンプレーティング法を用いる場合にはSiやAlを原料とし、電子ビームをこれらに照射することで蒸発させ、基板に成膜することができる。その際に、酸素、窒素、アセチレンといった反応性ガスを導入することで酸化物、窒化物、炭化物を成膜することができる。
また、CVD法で成膜する場合には金属塩化物、金属水素化物、有機金属化合物などのような化合物ガスを原料とし、それらの化学反応を利用して成膜することでできる。酸化シリコンの成膜は、例えばTEOS、オゾンを用いたプラズマCVD法で行える。窒化シリコンの成膜は、例えばアンモニアとシランを用いたプラズマCVD法で行える。
第一の絶縁層と第二の絶縁層を同じ材質で形成しても構わないし、異なる材質を使用しても実用上問題はない。
【0022】
前記導電層としては、導電性ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜、導電性無機材料膜等があり、電解めっきによりその表面にめっきを施すことができるものである。
上記導電性DLC膜、導電性無機材料膜等の導電層の導電性の程度は、より具体的には体積抵抗率で1×103Ω・cm以下が好ましく、1×102Ω・cm以下がより好ましく、1×10Ω・cm以下が最も好ましい。導電性が高い程めっきが析出しやすく体積抵抗率は低い方が好ましい。1×103Ω・cmを越えると、めっきが析出しない或は析出しても抵抗値が高いため、めっき時の電圧が高くなったり、発熱等が起こる傾向がある。体積抵抗率は1×10−6Ω・cm未満になるとその生成が困難に成る傾向があるので、それ以上が好ましい。導電層の導電性の、体積抵抗率による評価は、後記するように、その下に中間層を有するときは、中間層に導電層を積層してこれらを併せて測定した値である。
体積抵抗率の測定は、別途シリコンウェハやガラス等の絶縁物に上記導電性DLC膜若しくは導電性無機材料膜、又は、中間層を形成後その上に上記導電性DLC膜若しくは導電性無機材料膜を成膜し、四端針抵抗測定法(装置としては、例えばロレスターGP、三菱化学株式会社製を使用することができる)により測定できる。中間層を使用した場合、中間層の厚みと上記導電性DLC膜若しくは導電性無機材料膜の厚みとの和を試料厚みとして、体積抵抗率を算出した。
【0023】
基材上に導電性DLC膜若しくは導電性無機材料膜を形成する方法は、基本的には上記の絶縁性DLC膜若しくは無機材料膜を形成する方法と同様であるが、DLC膜若しくは無機材料膜に導電性を付与する方法が加味される。
【0024】
DLC膜に導電性を付与する方法としては様々な手法を用いることができる。以下にその例を幾つか列挙するが、下記に記載された方法に限定されるものではない。
例えば、炭素、水素以外にホウ素、窒素、リンのような1種類以上の不純物を混ぜることによりDLC膜を導電性にすることができる。プラズマCVD方式で不純物を混ぜる際には、それら不純物を含有するDLC形成用ガスをチャンバー内に混入させてDLC膜を形成することで不純物(ホウ素及び窒素)がDLC膜内に分子又は原子の形で取り込まれ、得られた膜は導電性を発現する。
その際に使用するプラズマCVD反応ガスとして、不純物であるホウ素源としては、例えば、ジボラン(B2H2)、酸化ホウ素(B2O3)を用いることができる。また、窒素源としては、例えば、窒素(N2)を用いることができる。これらの元素を混ぜることはシリコンのような単結晶を素材とする半導体の製造に不純物として用いられているように、電気絶縁性を有する硬質炭素を用いるにもかかわらず、DLC膜を導電性にする。
また、上記不純物以外にもそれ自体が導電性を有する物質(不純物)を膜中に取り込むことにより、DLC膜に導電性を付与することができる。例えば、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Hf(ハフニウム)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Au(金)、Pt(白金)、Ag(銀)から選ばれる元素を少なくとも1種類以上を膜中に添加することにより、導電性膜を得ることができる。
【0025】
電気抵抗率を下げるべく不純物添加量を多くすると、一方で耐摩耗性などの特性が悪化する傾向がある。不純物添加量の下限は、たとえばプラズマCVD法によるタングステン(W)添加の場合は、0.0001原子%以上添加しないと体積抵抗率は1×106Ω・cm以下にならない。一方、Auをイオン注入法で添加する場合、0.000001原子%の添加でも体積抵抗率は1×106Ω・cm以下になる。このように、添加する元素や方法により電気抵抗率の下限は異なってくる。したがって、本発明のDLC膜における不純物添加量の下限は、各添加元素を考慮して0.001原子%以下を好ましい値とする。
【0026】
本発明の導電性DLC膜の形成において不純物を添加する方法として以下に示すような方法が適用できる。
(a)公知の方法でDLC膜を形成中に、不純物元素を含むガスを反応系に供給して膜中に添加する方法。特にプラズマCVD法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法などにおいてこの方法は有効である。
(b) 公知の方法でDLC膜を形成中に不純物元素を含む固体源を、加熱蒸発、スパッタ蒸発、またはアブレーションさせ、膜中に添加する方法。この方法は、特にスパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタ法、レーザアブレーション法などにおいて有効である。
(c) 公知の方法でDLC膜を形成中に、不純物元素を含むイオンビームを照射することにより、膜中に不純物を添加する方法。
(d) 公知の方法でDLC膜を形成した後、不純物を含むイオンを注入して不純物を添加する方法。
(e) 公知の方法で不純物元素を含む固体源をスパッタしながら、反応性の炭素源となるガスを流して不純物元素を含むDLCを成膜する方法。
【0027】
不純物を添加したDLC膜の形成には、上記の方法を単独で適用してもよく、複数の方法を併用してもよい。また、上記の方法とそれ以外の方法とを併用してもよい。
また、それら不純物元素を膜中に添加する際、成膜と同時に、堆積されつつあるDLC膜にイオン照射を行うことにより、炭素非晶質ネットワークの密度を高め、さらに前記の添加元素をクラスタリングさせることなく、微細に分散させることができる。さらに、成膜後、低エネルギーの電子線を前記非晶質炭素膜に照射することにより、マクロには炭素の非晶質ネットワークの構造を変えることなく、微細分散させた不純物元素の周辺のみに局所的な極微細グラファイトクラスターを形成させることができる。
【0028】
他に、不純物を添加せず、基板側から順に上層に向かって連続的又は段階的に、グラファイト成分が多いsp2軌道の含有割合の高いDLC層からダイヤモンド成分が多いsp3軌道の含有割合の高いDLC層を堆積し、DLC膜を形成する、といった手法で導電性DLC膜を形成することができる。
【0029】
上記以外の方法として、パルス電源を用いたイオン注入法で、正パルスを印可しながら導電性を付与する方法もある。すなわち、メタンプラズマ中に置いた基材に、負高電圧パルスを印加することによって、基材の全方向からメタンイオン照射を行い、基材表面の酸化膜など高抵抗層を除去すると共に、イオン注入によって、基材表面に、炭素原子の分散した導電性皮膜を形成する。次に、トルエンなど分子量の大きい炭化水素を真空槽に導入し、高周波放電、グロー放電などによって、これらのプラズマを生成し、ラジカルを堆積させるとともに、基材に、負高電圧パルスを印加し、正イオンを基材に加速して照射する。この際に、正高電圧パルスを基材に印加し、プラズマ中の電子を基材に照射することによって、表層のみをパルス的に活性化、及び高温状態にさせ、炭化水素ラジカル及びイオンを堆積させる。これらの工程を有機的に組み合わせることにより、高導電性、高耐食性、及び高密着性のDLC膜を形成することができる。また、上記DLC膜生成工程のガス中に窒素を混入させてもよい。
【0030】
また、逆に不純物を混ぜない水素フリーのDLC膜なども導電性を有する。スパッタリング法や真空アーク蒸着法を用い、カーボンをターゲット又は陰極材料として、メタンやアセチレンといった水素源となる雰囲気ガスを流さずに成膜することにより水素フリーのDLC膜を作製することができる。スパッタリング法でできる一般的な水素フリーのDLC膜では体積抵抗率(比抵抗)が100〜1×105Ω・cmの膜が得られ、真空アーク蒸着法でもsp2成分を増やすことで導電性を上げることができる。
上記の水素フリー膜といっても、スパッタリングターゲット、基材、チャンバー内壁に吸着した水分等の影響で膜中に数%程度の水素が含まれることがあるが、必要な導電性を有していれば、導電性DLC膜として使用できることは言うまでもない。
【0031】
無機材料を導電性にする方法も上記のDLCを導電性にする方法に準じて行うことができる。しかし、それ自体導電性の無機材料であれば、導電性付与の操作は不要である。それ自体導電性の無機材料としては、窒化チタンアルミニウム、窒化クロム、窒化チタン、窒化チタンクロム、炭窒化チタン、炭化チタンなどの無機化合物などがある。これらの製膜は、スパッタリング法、イオンプレーティング法といった物理的気相成長法やプラズマCVDといった化学気相成長法を用いることができる。その中でも窒化クロムが耐薬品性に優れているため特に好ましい。窒化クロムは、イオンプレーティング法やスパッタリング法等で成膜することができる。例えばスパッタリング法で成膜する場合には窒化クロムをターゲットとしてそのまま成膜する方法や、クロムをターゲットとして窒素ガスを導入しながら反応性スパッタリングで成膜する方法があるが、そのどちらでも適用できる。反応性スパッタリングではクロムと窒素の比が1対1にならず、局所的に金属クロム成分などがそのまま含まれる可能性があるが、その場合でも耐食性に問題はなく使用できる。
【0032】
めっき用導電性基材はめっき部の表面に電解めっきにより形成された金属層を容易に剥離できるものであることが好ましく、また、接着性支持体に転写させることができるように、その上に形成された金属層との密着力が低く、容易に剥離できるものであるものが好ましい。めっきが形成される導電層としては、このようなことを考慮してその材質を選択することが好ましい。このような導電層として、前記した導電性DLC膜又は導電性無機材料膜は、好適である。また、導電層は、仮にピンホールがあった場合でも耐食性を維持できるようにある程度の耐食性があることが好ましい。このような導電層として、前記した導電性DLC膜又は導電性無機材料膜は、好適である。さらに、めっきは、絶縁層上にも成長することがあるので、ここで説明したのと同様に、めっきで析出した金属の剥離性が良好な絶縁層が好ましく、このような絶縁層としても、前記したDLC膜や無機膜は国的である。
【0033】
本発明におけるめっき用導電性基材の製造方法としては、基材の表面に幾何学図形が描かれるように絶縁層を形成する工程を含む。
この工程は、
(A)基材の表面に、除去可能な凸部のパターンを形成する工程、
(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている導電性基材の表面に、DLC又は無機材料からなる絶縁層を形成する工程
及び
(C)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程
を含む。
この後、(D)得られた絶縁層付基材の表面に、導電層を形成する工程を行うことにより、本発明のめっき用導電性基材を得ることができる。
【0034】
さらに、前記の(D)の工程に、引き続き、
(E)(D)工程で得られためっき用導電性基材(「導電性基材I」という)の表面(導電層表面)に、除去可能な凸状のパターンを再度形成する工程
(F)除去可能な凸状のパターンが形成されている導電性基材Iの表面に絶縁層を形成する工程、
及び、
(G)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程
を順次行うことにより本発明の別のめっき用導電性基材を得ることができる。
上記(E)工程において、凸状のパターンは、導電性基材Iの凹部を覆うように形成することが好ましい。
【0035】
めっき用導電性基材の作製のための各工程について説明する。
上記(A)基材の表面に、除去可能な凸状パターンを形成する工程は、フォトリソグラフ法を利用して、レジストパターンを形成する方法を利用する方法により行うことができる。
この方法は、
(a−1)基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、
(a−2)感光性レジスト層をパターン化金属箔の形状に対応したマスクを通して露光する工程
及び
(a−3)露光後の感光性レジスト層を現像する工程
を含む。
【0036】
また、上記(A)基材の表面に、除去可能な凸状パターンを形成する工程は、
(b−1)基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、
(b−2)感光性レジスト層にパターン化金属箔の形状に対応した部分にレーザ光を照射する工程
及び
(b−3)レーザ光を照射後の感光性レジスト層を現像する工程
を含む。
【0037】
前記感光性レジストとしては、よく知られたネガ型レジスト(光が照射された部分が硬化する)を使用することができる。また、このとき、マスクもネガ型マスク(凸状のパターンに対応する部分は光が通過する)が使用される。また、感光性レジストとしてはポジ型レジストを用いることができる。
【0038】
具体的方法として、基材上にドライフィルムレジスト(感光性樹脂層)をラミネートし、マスクを装着して露光することにより、凸状パターンとして残存させる部分を硬化状態に不要部を現像可能状態とし、不要部を現像して除去することにより形成することができる。また、凸状パターンは、基材に液状レジストを塗布した後に溶剤を乾燥するかあるいは仮硬化させた後、マスクを装着して露光することにより、凸状パターンとして残存させる部分を硬化状態に不要部を現像可能状態とし、不要部を現像して除去することにより形成することもできる。液状レジストは、スプレー、ディスペンサー、ディッピング、ロール、スピンコート等により塗布できる。
【0039】
上記において、ドライフィルムレジストをラミネートし、又は液状レジストを塗布した後に、マスクを介して露光する代わりにレーザ光などでマスクを使用せず直接に露光する方法を採用することもできる。光硬化性樹脂にマスクを介して又は介さずして活性エネルギー線を照射することでパターニングできればその態様は問わない。
【0040】
基材のサイズが大きい場合などはドライフィルムレジストを用いる方法が生産性の観点からは好ましく、基材がめっきドラムなどの場合は、ドライフィルムレジストをラミネートし、又は液状レジストを塗布した後にマスクを介さずにレーザ光などで直接に露光する方法が好ましい。
【0041】
本発明におけるめっき用導電性基材の製造方法の一例を図面を用いて説明する。
図4は、めっき用導電性基材の製造方法を示す工程の一例を断面図で示したものである。
基材2の上に感光性レジスト層(感光性樹脂層)8が形成されている(図4(a))。この積層物の感光性レジスト層(感光性樹脂層)8に対し、フォトリソグラフ法を適用して感光性レジスト層8をパターン化する(図4(b))。パターン化(凸状パターンの形成)は、パターンが形成されたフォトマスクを感光性レジスト層8の上に載置し、露光した後、現像して感光性レジスト層8の不要部を除去して突起部9を残すことにより行われる。突起部9の形状とそれからなる凸状パターンは、基材2上の凹部4とそのパターンに対応するよう考慮される。
【0042】
この時、突起部9の断面形状において、突起部9の幅の最大値d1は、突起部9と基材2に接する幅d0と等しいか大きくすることが特に好ましい。これは、形成される密着性の良い絶縁層の凹部幅はd1によって決定されるからである。ここで、突起部9の断面形状で、突起部9の幅の最大値d1が突起部9と基材2に接する幅d0と等しいか大きくする方法としては、突起部9の現像時にオーバ現像とするか、形状がアンダカットとなる特性を有するレジストを使用すれば良い。d1は突起部の上部で実現されていることが好ましい。
除去可能な凸状パターンを構成する突起部9の形状は、第一の絶縁層3に対応づけられるが、その作製の容易性から、幅1μm以上、間隔が1μm以上及び高さ1〜50μmであることがそれぞれ好ましい。
【0043】
ついで、突起部9からなる凸状パターンを有する基材2の表面に絶縁層5を形成する(図4(c))。絶縁層の形成方法は、前記したとおりである。
さらに、絶縁層5が付いている状態で、突起部9を除去し、凹部10を形成する(図4(d))。
絶縁層の付着しているレジスト(突起部8)の除去には、市販のレジスト剥離液や無機、有機アルカリ、有機溶剤などを用いることができる。また、パターンを形成するのに使用したレジストに対応する専用の剥離液があれば、それを用いることもできる。
剥離の方法としては、例えば薬液に浸漬することでレジストを膨潤、破壊あるいは溶解させた後これを除去することが可能である。液をレジストに十分含浸させるために超音波、加熱、撹拌等の手法を併用しても良い。また、剥離を促進するためにシャワー、噴流等で液をあてることもできるし、柔らかい布や綿棒などでこすることもできる。
また、絶縁層の耐熱が十分高い場合には高温で焼成してレジストを炭化させて除去することもできるし、レーザーを照射して焼き飛ばす、といった方法も利用できる。
剥離液としては、例えば、3%NaOH溶液を用い、剥離法としてシャワーや浸漬が適用できる。
【0044】
次に、絶縁層5が形成されている基材2の全面又は必要な箇所に導電層6を形成し、本発明のめっき用導電性基材を得、凹部10は、新たに凹部11となる(図4(e))。導電層6の形成方法は、前述の通りである。凹部4は開口方向に向かって幅広であるため、陰になる部分がなく、基材2の上にも絶縁層5の上にもほぼ均一に導電層6を形成することができる。導電層を形成したくない部分には、レジスト膜の形成又はフィルムの貼着等により保護しておくことができる。
【0045】
続いて、第二の絶縁層を有するめっき用導電性基材の作製方法について説明する。図5は、めっき用導電性基材の製造方法を示す追加の工程の一例を示す断面図である。基本的には上記で得られためっき用導電性基材に、図4(a)〜(d)に示されるような工程を繰り返し適用することになる。図4(e)に示されるめっき用導電性基材に対し、さらに感光性レジスト層(感光性樹脂層)12を形成する(図5(f))。これを、前述と同様の方法で感光性樹脂層12からなる突起部13を形成し(図5(g))、続いて第二の絶縁層14を形成する(図5(h))。最後に、第二の絶縁層14のついた突起部13を除去することにより、導電層6上にパターン化された第二の絶縁層14を有するめっき用導電性基材を得る(図5(i))。このめっき用導電性基材には、言うまでもないが、凹部11が露出しており、第二の絶縁層を形成したことにより、凹部11が大きくなっている。
【0046】
以上の工程において、基材2又は導電層6の上に形成される絶縁層と、突起部9又は突起部13の側面に形成される絶縁層とでは、性質が異なる。例えば、硬度は、前者の方が後者より大きい。これは、絶縁層の形成において、基材2又は導電層6は突起部の影にならないので、基材2又は導電層6の上には均一な絶縁層が形成される。これに対し、突起部9又は13の側面への絶縁層の形成は、突起部9又は13の側面は基材2又は導電層6の膜厚方向に対し角度を有しているため、形成される絶縁層(特に、プラズマCVD法等により形成されるDLC膜や無機薄膜)は、基材2又は導電層6の上の絶縁層と同じ特性(例えば、同じ硬度)の絶縁層が得られない。このような異質な絶縁層の接触面においては、絶縁層の成長に伴い絶縁層の境界面が形成され、しかも、その境界面は絶縁層の成長面であることから、滑らかである。このため、突起部9又は13を除去するとき、絶縁層は、この境界で容易に分離される。さらに、この境界面、即ち、凹部の側面となる傾斜角αは、基材2又は導電層6の上の膜厚方向に対し突起部9又は13の側面で絶縁層の成長が遅れるため、境界面が傾斜するように制御される。
凹部の側面の傾斜角αは、角度で30度以上90度未満が好ましく、30度以上60度以下が特に好ましいが、DLC膜をプラズマCVD法で作製する場合は、凹部の側面の傾斜角αは、ほぼ45〜60度の角度に制御されやすい。すなわち、絶縁層の凹部は、開口方向に向かって幅広になるように形成される。この形状は、導電層を形成しても継承される。
【0047】
本発明において基材2又は導電層6の上に形成された絶縁層の硬度は、10〜40GPaであることが好ましい。硬度が10GPa未満の絶縁層は軟質であり、繰り返しのめっきに対する耐久性が低くなる。硬度が40GPa以上では、めっき用導電性基材の彎曲、折り曲げ等の加工をした際に基材の変形に追随できなくなり、絶縁層にひびや割れが発生するので好ましくない。より好ましくは12〜30GPaである。
これに対して、突起部の側面に形成される絶縁層の硬度は1〜15GPaであることが好ましい。突起部の側面に形成される絶縁層は、少なくとも基材2又は導電層6の上に形成される絶縁層の硬度よりも低くなるように形成しなければならない。そうすることにより両者間に境界面が形成され、後の絶縁層の付着した突起部からなる凸状パターンを剥離する工程を経た後に、底面に向かって末広がりな凸形状の絶縁層が形成されることになる。突起部の側面に形成される絶縁層の硬度は1〜10GPaであることがより好ましい。
【0048】
絶縁層の硬度は、ナノインデンテーション法を用いて測定することができる。ナノインデンテーション法とは、先端形状がダイヤモンドチップから成る正三角錐(バーコビッチ型)の圧子を薄膜や材料の表面に押込み,そのときの圧子にかかる荷重と圧子の下の射影面積から硬度を求める。ナノインデンテーション法による測定として、ナノインデンターという装置が市販されている。導電性基材上に形成された膜の硬度はそのまま導電性基材上から圧子を押し込んで測定することができる。また、凸部側面に形成される膜の硬度を測定するためには、導電性基材の一部を切り取って樹脂で注型し、断面から凸部側面に形成された絶縁層に圧子を押し込んで測定することができる。通常ナノインデンテーション法では圧子に1〜100mNの微少荷重をかけて硬度測定を行うが、本発明では3mNの荷重で10秒間負荷をかけて測定した値を硬度の値として記載している。
【0049】
本発明において、パターン化金属箔は、
(A)前記のめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程、
(B)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程
を含む方法により製造される。
【0050】
本発明におけるめっき法は公知の方法を採用することができる。めっき法としては、電解めっき法、無電解めっき法その他のめっき法を適用することができる。
電解めっきについてさらに説明する。例えば、電解銅めっきであれば、めっき用の電解浴には硫酸銅浴、ほうふっ化銅浴、ピロリン酸銅浴、または、シアン化銅浴などを用いることができる。このときに、めっき浴中に有機物等による応力緩和剤(光沢剤としての効果も有する)を添加すれば、より電着応力のばらつきを低下させることができることが知られている。また、電解ニッケルめっきであれば、ワット浴、スルファミン酸浴などを使用することができる。これらの浴にニッケル箔の柔軟性を調整するため、必要に応じてサッカリン、パラトルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタリントリスルホン酸ナトリウムのような添加剤、及びその調合剤である市販の添加剤を添加してもよい。さらに、電解金めっきの場合は、シアン化金カリウムを用いた合金めっきや、クエン酸アンモニウム浴やクエン酸カリウム浴を用いた純金めっきなどが用いられる。合金めっきの場合は、金−銅、金−銀、金−コバルトの2元合金や、金−銅−銀の3元合金が用いられる。他の金属に関しても同様に公知の方法を用いることができる。電界めっき法としては、例えば、「現場技術者のための実用めっき」(日本プレーティング協会編、1986年槇書店発行)第87〜504頁を参照することができる。
【0051】
次に、無電解めっきについてさらに説明する。無電解めっき法としては、銅めっき、ニッケルめっき、代表的であるが、その他、すずめっき、金めっき、銀めっき、コバルトめっき、鉄めっき等が挙げられる。工業的に利用されている無電解めっきのプロセスでは、還元剤をめっき液に添加し、その酸化反応によって生ずる電子を金属の析出反応に利用するのであり、めっき液は、金属塩、錯化剤、還元剤、pH調整剤、pH緩衝材、安定剤等から成り立っている。無電解銅めっきの場合は、金属塩として硫酸銅、還元剤としてホルマリン、錯化剤としてロッセル塩やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が好んで用いられる。また、pHは主として水酸化ナトリウムによって調整されるが、水酸化カリウムや水酸化リチウムなども使用でき、緩衝剤としては、炭酸塩やリン酸塩が用いられ、安定化剤としては、1価の銅と優先的に錯形成するシアン化物、チオ尿素、ビピリジル、O−フェナントロリン、ネオクプロイン等が用いられる。また、無電解ニッケルめっきの場合は、金属塩として硫酸ニッケル、還元剤には、次亜りん酸ナトリウムやヒドラジン、水素化ホウ素化合物等が好んで用いられる。次亜りん酸ナトリウムを用いた場合には、めっき皮膜中にりんが含有され、耐食性や耐摩耗性が優れている。また、緩衝剤としては、モノカルボン酸またはそのアルカリ金属塩を使用する場合が多い。錯化剤は、めっき液中でニッケルイオンと安定な可溶性錯体を形成するものが使用され、酢酸、乳酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸、グリシン、アラニン、EDTA等が用いられ、安定化剤としては、硫黄化合物や鉛イオンが添加される。無電解めっき法については上記「現場技術者のための実用めっき」(日本プレーティング協会編、1986年槇書店発行)の第505〜545頁を参照することができる。
さらに、還元剤の還元作用を得るためには、金属表面の触媒活性化が必要になることがある。素地が鉄、鋼、ニッケルなどの金属の場合には、それらの金属が触媒活性を持つため、無電解めっき液に浸漬するだけで析出するが、銅、銀あるいはそれらの合金、ステンレスが素地となる場合には、触媒活性化を付与するために、塩化パラジウムの塩酸酸性溶液中に被めっき物を浸漬し、イオン置換によって、表面にパラジウムを析出させる方法が用いられる。
【0052】
本発明で利用できる無電解めっきは、例えば、めっき用導電性基材の表面に、必要に応じてパラジウム触媒を付着させたあと、温度60〜90℃程度とした無電解銅めっき液に浸漬して、銅めっきを施す方法である。
無電解めっきでは、基材は必ずしも導電性である必要はない。しかし、基材を陽極酸化処理するような場合は、基材は導電性である必要がある。
特に、導電性基材の材質がNiである場合、無電解めっきするには、表面を陽極酸化した後、無電解銅めっき液に浸漬して、銅を析出させる方法がある。
【0053】
めっきによって出現又は析出する金属としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、ニッケル、鉄、クロム等の導電性を有するものが使用されるが、20℃での体積抵抗率(比抵抗)が20μΩ・cm以下の金属を少なくとも1種類以上含むことが望ましい。本発明により得られる構造体を電磁波遮蔽シートとして用いる場合には電磁波を電流としてアースするためにこれを構成する金属は導電性が高い方が電磁波遮蔽性に優れるためである。このような金属としては、銀(1.62μΩ・cm)、銅(1.72μΩ・cm)、金(2.4μΩ・cm)、アルミニウム(2.75μΩ・cm)、タングステン(5.5μΩ・cm)、ニッケル(7.24μΩ・cm)、鉄(9.0μΩ・cm)、クロム(17μΩ・cm、全て20℃での値)などがあるが特にこれらに限定するものではない。できれば体積抵抗率が10μΩ・cmであることがより好ましく、5μΩ・cmであることがさらに好ましい。金属の価格や入手の容易さを考慮すると銅を用いることが最も好ましい。これらの金属は単体で用いてもよく、さらに機能性を付与するために他の金属との合金でも構わないし、金属の酸化物であってもよい。ただし、体積抵抗率が20μΩ・cmである金属が成分として最も多く含まれていることが導電性の観点から好ましい。
前記しためっき用導電性基材の表面にめっきにより形成される金属層の厚さ(めっき厚さ)は、十分な導電性を示すためには、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、金属箔にピンホールが形成される可能性を小さくするためには、3μm以上の厚さであることがさらに好ましい。また、厚すぎても抵抗はほとんど変化しないため、材料費、工程時間が増え、コスト的に不利にならないよう、30μm以下であることが好ましく、20μmであることがより好ましく、15μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0054】
析出する金属層の厚さに対して相対的に凹部がより深くなることにより、析出する金属層をより形状的に規正することができるという観点から、めっきにより形成される金属箔の厚さを絶縁層の高さの2倍以下とすることが好ましく、特に1.5倍以下、さらに1.2倍以下とすることが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0055】
析出される金属層の平面形状は適宜決定されるが、例えば、光透過性を重視し、網目状の金属層を形成する場合には、金属層の幅は、ライン作製の容易さや非視認性の観点から1〜50μmであることが好ましく、5〜30μmとすることがさらに好ましい。また、ライン間隔は、四角格子のとき、50μm以上の範囲とすることが好ましい。ライン間隔は、大きいほど開口率は向上し、可視光透過率は向上する。ライン間隔が大きくなり過ぎると、表明抵抗の低下効果が低下するため、ライン間隔は2000μm(1mm)以下とするのが好ましく、特に100〜1000μmであることが好ましい。また、三角格子及びハニカム格子その他の複雑な形状の網目の場合における、ライン間隔は、繰り返し単位を基準として、その面積を正方形の面積に換算してその一辺の長さをライン間隔とする。
光透過性を重視した場合、網目状の金属層の開口率は、50%以上が好ましく、60%以上がさらに好ましく、特に好ましくは80%以上が好ましい。
析出される金属層が、穴あき金属箔である場合、穴の形状と配置は使用目的を勘案して適宜決定されるが、例えば、キャパシタ用の穴あき金属箔としては、穴の面積は1〜1×106平方ミクロンメートルが好ましく、1×102〜1×104平方ミクロンメートルであることがより好ましく、穴の間隔は10〜100μmであることがより好ましい。開口率を好ましくは10%以上、特に好ましくは30%以上とすることを考慮して決定することが好ましい。
めっき用導電性基材の凹部の大きさは、このような金属層の形状を考慮して決定される。
【0056】
上記のめっき用導電性基材を用いて、めっきした後、その基材上に形成されたパターン化金属箔を剥離することにより、パターン化金属箔を取得することができる。めっきからパターン化金属箔を取得するまでの工程を図6及び図7に示す。図6はパターン化金属箔の作製工程の一例を示す断面図、図7はパターン化金属箔の作製工程の別の例を示す断面図である。
まず、図6を用いて第二の絶縁層を設けないめっき用導電性基材を用いた場合について説明する。めっき用導電性基材(図4(e)に例示したもの)にめっきにより金属15を析出させる(図6(a))。このとき、基材の凹部11には、めっきにより金属が埋まるように析出させる。例えば銅めっきであれば、フィルドビア用のめっき液組成及び条件などを適用することにより、この凹部を容易に埋めることができる。次いで、めっきにより析出した金属を剥離することで、表面にパターンが形成されたパターン化金属箔15を得ることができる(図6(b))。パターン化金属箔15の表面に凸状に形成されたパターンは、めっき用導電性基材の凹部11の形状に対応している。
【0057】
次に、図7を用いて第二の絶縁層を設けためっき用導電性基材を用いた場合について説明する。めっき用導電性基材(図5(i)に例示したもの)にめっきにより金属15を析出させる(図7(a))。このとき、めっき用導電性基材の凹部11には、めっきにより金属が埋まるように析出させる。ただし、めっきは、通常、等方的に成長するので、凹部11から溢れるようにして絶縁層14上にもめっきが形成される。このとき、例えば、絶縁層5及び絶縁層6を平面形状が円形となるように形成しておくことにより、第二の絶縁層14上のめっきが析出しない部分を円形にすることができ、従って、得られた金属15には貫通穴16が形成される。次いで、めっきにより析出した金属を剥離することで、貫通孔を有するパターン化金属箔15を得ることができる(図7(b)及び(c))。
【0058】
本発明においてめっきにより析出させたパターン化金属箔を粘着性を有する別の基材に転写することもできる。
ここでいう基材とは、支持基材上に、粘着剤層が積層されたものであり、場合により、支持基材がなく粘着剤層だけでもよい。また、粘着剤とは、粘着性を有するもの又は加熱、加圧等により粘着性を示すものである。
【0059】
支持基材としては、ガラス板、プラスチック板、プラスチックフィルム等がある。
プラスチックとしては、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、フッ素樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリウレタン樹脂、フタル酸ジアリル樹脂などの熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。プラスチックの中では、透明性に優れるポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂が好適に用いられる。別の基材の厚みは、0.5mm〜5mmがディスプレイの保護や強度、取扱い性から好ましい。
【0060】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂などのプラスチックからなるフィルムで全可視光透過率が70%以上のものが好ましい。これらは単層で使うこともできるが、2層以上を組合せた多層フィルムとして使用してもよい。前記プラスチックフィルムのうち透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、価格の点からポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリカーボネートフィルムが特に好ましい。
上記プラスチックフィルムの厚さは特に制限はないが、1mm以下のものが好ましく、厚すぎると可視光透過率が低下しやすくなる傾向がある。また、薄く成りすぎると取扱い性が悪くなることを勘案すると、上記プラスチックフィルムの厚さは5〜500μmがより好ましく、50〜200μmとすることがさらに好ましい。
【0061】
粘着剤層(樹脂層)の厚さは、薄すぎると十分な強度が得られないため、めっきで形成された導体層を転写する際に、導体層が粘着剤層に密着せず、転写不良が発生することがある。したがって、粘着剤層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、量産時の転写信頼性を確保するためには3μm以上であることが更に好ましい。また、粘着剤層の厚さが厚すぎると、粘着剤層の製造コストが高くなるとともに、ラミネートした際に、粘着剤層の変形量が多くなるため、粘着剤層の厚みは100μm以下が好ましく、50μm以下がさらに好ましい。
基材を、めっき用導電性基材の導体層が形成されている面に貼り合わせる際には、粘着剤層の特性に応じて、特に、粘着剤層が適度な流動性又は粘着性を発揮するために、必要ならば加熱される。基材が粘着剤層を保持する支持基材を有する場合、支持基材は、このような加熱に際しても形状を維持する程度に十分な耐熱性を有することが好ましい。
【0062】
粘着剤としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂などが使用される。
上記の熱可塑性樹脂として代表的なものとして以下のものがあげられる。たとえば天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1,2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、ポリ−1,3−ブタジエン)などの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテル、ポリビニルブチルエーテルなどのポリエーテル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルホン、ポリスルフィド、フェノキシ樹脂、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート、ポリ−t−ブチルアクリレート、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート)、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリドデシルメタクリレート、ポリテトラデシルメタクリレート、ポリ−n−プロピルメタクリレート、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂などが使用可能である。これらのポリマを構成するモノマーは、必要に応じて、2種以上共重合させて得られるコポリマとして用いてもよいし、以上のポリマ又はコポリマを2種類以上ブレンドして使用することも可能である。
【0063】
前記硬化性樹脂のうち、活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等をベースポリマとし、各々にラジカル重合性あるいはカチオン重合性官能基を付与させた材料が例示できる。ラジカル重合性官能基として、アクリル基(アクリロイル基)、メタクリル基(メタクリロイル基)、ビニル基、アリル基などの炭素−炭素二重結合があり、反応性の良好なアクリル基(アクリロイル基)が好適に用いられる。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基(グリシジルエーテル基、グリシジルアミン基)が代表的であり、高反応性の脂環エポキシ基が好適に用いられる。具体的な材料としては、アクリルウレタン、エポキシ(メタ)アクリレート、エポキシ変性ポリブタジエン、エポキシ変性ポリエステル、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、アクリル変性ポリエステル等が挙げられる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が利用される。
活性エネルギー線が紫外線の場合、紫外線硬化時に添加される光増感剤あるいは光開始剤としては、ベンゾフェノン系、アントラキノン系、ベンゾイン系、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、オニウム塩、ハロニウム塩等の公知の材料を使用することができる。また、上記の材料の他に汎用の熱可塑性樹脂をブレンドしても良い。
【0064】
また、前記硬化性樹脂のうち、熱硬化性樹脂としては、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチル、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソブテン、カルボキシゴム、ネオプレン、ポリブタジエン等の樹脂と架橋剤としての硫黄、アニリンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、リグリン樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ホルマリン樹脂、金属酸化物、金属塩化物、オキシム、アルキルフェノール樹脂等の組み合わせで用いられるものがある。なおこれらには、架橋反応速度を増加する目的で、汎用の加硫促進剤等の添加剤を使用することもできる。
【0065】
熱硬化性樹脂として、硬化剤を利用するものとしては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、不飽和炭化水素基等の官能基を有する樹脂とエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、チオール基等の官能基を有する硬化剤あるいは金属塩化物、イソシアネート、酸無水物、金属酸化物、過酸化物等の硬化剤との組み合わせで用いられるものがある。なお、硬化反応速度を増加する目的で、汎用の触媒等の添加剤を使用することもできる。具体的には、硬化性アクリル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物等が例示される。
【0066】
さらに、熱硬化性樹脂又は活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、アクリル酸又はメタクリル酸の付加物が好ましいものとして例示できる。
アクリル酸又はメタクリル酸の付加物としては、エポキシアクリレート(n=1.48〜1.60)、ウレタンアクリレート(n=1.5〜1.6)、ポリエーテルアクリレート(n=1.48〜1.49)、ポリエステルアクリレート(n=1.48〜1.54)なども使うこともできる。特に接着性の点から、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れており、エポキシアクリレートとしては、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。エポキシアクリレートなどのように分子内に水酸基を有するポリマは接着性向上に有効である。これらの共重合樹脂は必要に応じて、2種以上併用することができる。
【0067】
なお、熱硬化性樹脂又は活性エネルギー線で硬化する樹脂には、汎用の熱可塑性樹脂がブレンドされていてもよい。
また、粘着剤層には、可塑剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤などの添加剤が配合されていてもよい。
前記粘着剤層の厚さは、少なくとも、導体層を埋設させる厚さよりも厚いことが必要である。より確実に導体層を樹脂中に埋没させるためには、樹脂層の厚さは、導体層を埋設させる厚さの1.5倍以上であることがさらに好ましい。また、樹脂層の厚さは、100μm以下が好ましい。必要以上に厚くしてもコストが嵩むことになる。
【0068】
上記の基材への転写について、図面を用いて説明する。図8は導体層パターン付き基材の作製工程の一例を示す断面図、図9は別の導体層パターン付き基材の追加の作製工程の一例を示す断面図である。
めっき用導電性基材(図5(i)に例示したもの)にめっきにより金属15を析出させる(図8(a))。ただし、凹部11はストライプ状に紙面に対し垂直方向に形成されており、従って、絶縁層5及び絶縁層6もストライプ状に紙面に対し垂直方向に形成されている。そして、前記と同様にめっき用導電性基材の凹部11には、めっきにより金属が埋まるように析出させ、また、凹部11から溢れるようにして絶縁層14上にもめっきを形成させ、結果として、ストライプ状の金属15を形成させる。
【0069】
次いで、プラスチックフィルム等の支持基材17上に粘着剤層18が形成された粘着性を有する別の基材19をめっきが析出した状態のめっき用導電性基材に圧着させる(図8(b))。この後、別の基材19を剥離すると、めっきにより析出させた金属15が別の基材19の粘着剤層18の面に転写され、導体層パターン付基材20を得ることができる(図8(c))。
【0070】
さらに、図8(c)に示す導体層パターン付基材から、さらに、他の基材に導体層を転写して別の導体層パターン付き基材とすることができる。すなわち、図8(c)に示す導体層パターン付基材の導体層に、プラスチックフィルム等の支持基材21上に別の粘着剤層22が形成された粘着性を有する他の基材23を粘着剤層22の面を向けて圧着する(図9(d))。次いで、別の基材23を剥離すると、導体層(金属)15が他の基材23の粘着剤層22の面に転写され、別の導体層パターン付基材24を得ることができる(図9(e))。この導体層パターン付き基材24の平面図を図9(f)に示す。図9(e)は、図9(f)のB−B断面図である。この導体層パターン付き基材24は、露出している導体層15の表面が平らであり、表面全体がより滑らかであり、この点、図8(c)に示す導体層パターン付基材20よりすぐれている。もっとも、図8(c)又は図9(e)で示される導体層パターン付き基材において、導体層が最上の表面を露出させた状態で、全体が埋設されているように導体層の埋設の程度を調整することができる。この調整は、図8(c)又は図9(e)で示される導体層パターン付き基材をブレス機、圧着ロール等を利用して、必要に応じて加熱下に加圧することにより行うことができる。
【0071】
前記したいずれの導体層パターン付き基材においても、粘着剤層は、もはや粘着性を示さなくてもよい。そのためには、硬化性樹脂であれば、十分に硬化を進め、熱可塑性樹脂であれば、相対的に冷却して固化させるとよい。
【0072】
前記した図6(b)に示すようなパターン化金属箔の一例として、金属15の突起部の面積を大きくし、従って凹部の部分を狭くして溝としたものがある。このようなパターン化金属箔の一例を図10及び図11に示す。溝の形状は、例えば、図10に示すようなパターン、すなわちライン幅p、ラインピッチq、ラインの折り返し長さrで、ラインの両端に直径φで丸パッドが形成されている。他の例として、直径φの丸パッドが、詳細には図11に示すように、溝25に囲まれた中に円形状の突起部26がある。
以上のような金属箔は、その表面に溝が掘られているため、タンパク質が固定された基板等と貼り合せてマイクロ流体チップとして使用することができる。また、表面に疎水化、あるいは親水化処理を施し、マイクロリアクターとして化学合成や化学分析などに適用することもできる。さらに、形成されたマイクロ流路に冷媒を流すことで、集積回路素子やダイオード素子などのヒートシンクとしても適用できる。本特許に記載の製法を用いることにより、微細なラインパターンを大面積で容易に作製することが可能である。
【0073】
本発明で用いられるめっき用導電性基材として、回転体(ロール)を用いることができることは前記したが、さらに、この詳細を説明する。回転体(ロール)は金属製が好ましい。さらに、回転体としてはドラム式電解析出法に用いるドラム電極などを用いることが好ましい。ドラム電極の表面を形成する物質としては上述のようにステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料などのめっき付着性が比較的低い材料を用いることが好ましい。導電性基材として回転体を用いることにより連続的に作製して巻物として導体層パターン付き基材を得ることが可能となるため、この場合、生産性が飛躍的に大きくなる。
【0074】
回転体を用いて、電解めっきにより形成されたパターンを連続的に剥離しながら、構造体を巻物として得る工程を、図12を用いて説明する。図12は、導電性基材としてドラム電極を用いた場合に、ドラム電極を回転させつつ、金属を電界めっきにより連続的に析出させ、また、析出した金属を連続的に剥離する装置の概念を示す断面図(一部正面図)である。
【0075】
すなわち、電解浴100内の電解液101が陽極102とドラム電極などの回転体103の間のスペースに配管104とポンプ105により供給されるようになっている。陽極102と回転体103の間に電圧をかけ、回転体103を一定速度で回転させると、回転体103の表面に金属が電解析出し、電解液101の外で、回転体103表面の導電性の凹部に析出した金属106に、粘着層を形成した剥離用フィルム(転写用の基材)107の粘着層を圧着ロール108で圧着し、連続的に回転体103から金属106を剥離しつつ表面に粘着層が形成されている剥離用フィルム107にその金属106を転写し、金属106が転写された剥離フィルム(導体層パターン付き基材)109とする。これはロール(図示せず)に巻き取ることができる。なお、剥離用フィルム107及び圧着ロール108を使用せず、金属106を回転体103から剥離するようにしてもよい。
【0076】
なお、上記の回転体103の表面には、絶縁層が形成されており、これに対応しためっき部である凹部が存在する。また、回転中の回転体103から、凹部に析出した金属106が剥離させられた後で、電解液101に浸かる前に、回転体103表面をエッチング洗浄したり(図示せず)してもよい。なお、図示していないが陽極102の上端には高速で循環している電解液が上方へ噴出するのを防ぐために水切りロールを設置しても良く、水切りロールによってせき止められた電解液は陽極102の外部から下の電解液の浴槽へと戻り、ポンプにより循環される。また、図示しないがこの循環の間に消費された銅イオン源や添加剤等を必要に応じて追加する態様を加えることが好ましい。
【0077】
さらに、本発明で用いられる導電性基材として、フープ状の導電性基材を用いることができることは前記したが、さらに、この詳細を説明する。
フープ状の導電性基材に関しては、帯状の導電性基材の表面に絶縁層と凹部を形成した後、端部をつなぎ合わせるなどして作製できる。導電性基材の表面を形成する物質としては上述のようにステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料などのめっき付着性が比較的小さい材料を用いることが好ましい。フープ状の導電性基材を用いた場合には、黒化処理、防錆処理、転写等の工程を、1つの連続した工程で処理可能となるため、パターン化金属箔の生産性が高く、また、パターン化金属箔を連続的に作製して巻物として製品とすることができる。フープ状の導電性基材の厚さは適宜決定すればよいが、100〜1000μmであることが好ましい。
【0078】
また、本発明におけるパターン化金属箔は、上記のような回転ロールやフープを利用した連続的なめっき方法に限らず枚葉で作製することも可能である。枚葉で行った場合、めっき用導電性基材の作製時の取扱が容易であり、同一のめっき用導電性基材を繰り返し使用した後に一箇所だけ絶縁層が剥離した、といった場合でもドラム状やフープ状の基材であると特定部分だけの抜き取りあるいは交換は困難であるが、枚葉であれば不良が発生しためっき用導電性基材のみを抜き取りあるいは交換することが可能である。このように枚葉で作製することにより、めっき用導電性基材に不具合が発生したときの対応が容易である。枚葉状の導電性基材の厚みは適宜決定すればよいが、めっき槽内で液の攪拌等に左右されない十分な強度を持たせることを考慮すると厚みは20μm以上が好ましい。厚すぎると重量が増え取扱が困難であるため10cm以下の厚みであることが好ましい。
【0079】
本発明おける導体層パターン付き基材は、導体層のパターンを適宜調整することにより、電磁波シールド部材、フィルムアンテナ部材、タッチパネル部材、太陽電池用電極基材等として有用である。これらの用途において、好ましいパターンとしてメッシュ状パターンがある。
【実施例1】
【0080】
(レジストからなる凸状パターンの形成)
レジストフィルム(フォテックRY3315、10μm厚、日立化成工業株式会社製)を100mm角のステンレス基板(SUS304、鏡面仕上げ、厚み0.5mm、日新製鋼(株)製。以下、「基板」という)に貼り合わせた。貼り合わせの条件は、ロール温度105℃、圧力0.5MPa、ラインスピード1m/minで行った。次いで、図10に示すようなパターン、すなわち、ライン幅pが20μm、ラインピッチqが20mmで、ラインの折り返し長さrが80mmで、ラインの両端に直径φ1mmで丸パッド204が非露光部として形成されている90mm角のネガフィルムを、上記基板上のレジストフィルムの上に静置した。紫外線照射装置を用いて、600mmHg以下の真空下において、ネガフィルムを載置し、ネガフィルムの上から、紫外線を120mJ/cm2照射した。さらに。1%炭酸ナトリウム水溶液で現像することで、基板の上にライン幅19〜21μm、ラインピッチ20mm、ラインの折り返し長さ80mm、ラインの両端にφ1mmで丸パッドからなる溝が形成されているレジスト膜(厚み10μm)からなるパターン(レジスト膜の突起部からなる凸状パターン)を形成した。
【0081】
(絶縁層の形成)
PBII/D装置(TypeIII、株式会社栗田製作所製)によりDLC膜を形成する。すなわち、チャンバー内にパターン状のレジスト膜が付いたままの基板を入れ、チャンバー内を真空状態にした後、基板のレジスト膜が形成された面をアルゴンガスで表面のクリーニングを行った。次いで、チャンバー内にヘキサメチルジシロキサンを導入し、膜厚0.1μmとなるように中間層を成膜した。次いで、トルエン、メタン、アセチレンガスを導入し、膜厚が5〜6μmとなるように、中間層の上にDLC層を形成した。そのときレジスト膜により形成された突起部(本実施例の場合、ラインパターン以外のベタ部分が全て凸となる)側面のDLC膜の厚さは、4〜6μmであった。境界面の角度は基材の表面に対して45〜51度であった。なお、絶縁層の厚さ及び境界面の角度の測定は上記で得られた積層物(基材、レジスト膜及び絶縁層を含む)の一部を切り取って樹脂で注型し、倍率は3000倍で断面をSEM観察することにより実測した。測定点は5点で、レジスト膜の両側を測定したので計10点の最大値と最小値を採用した。
【0082】
(絶縁層の付着した凸状パターンの除去;凹部の形成)
上記で得られた積層物(基材、レジスト膜及び絶縁層を含む)を水酸化ナトリウム水溶液(10%、50℃)に浸漬し、時々揺動を加えながら8時間放置した。レジストからなる凸状パターンを形成するレジスト膜とそれに付着したDLC膜が剥離してきた。一部剥がれにくい部分があったため、その部分は布で軽くこすることにより完全に剥離した。これにより、基板上に絶縁層を有し、この絶縁層に凹部(凹部の底部は基材が露出している)が形成されている基材を得た。
DLCからなる凸部(絶縁層)は、レジストからなる凸部をちょうどネガポジ反転した形状になる。DLCからなる凸部(絶縁層)の形状(平面形状は図10に示すようなラインパターンに相当する)は、凸部山頂方向に向かって狭まっており、そのDLCからなる凸部側面の傾斜角は、前記境界面の角度と同じであった。すなわち、絶縁層に形成された凹部の側面は開口方向に向かって幅広に広がっていた。DLCからなる凸部(絶縁層)の高さは5〜6μmであった。また、DLCからなる凸部(絶縁層)の底部での幅(最大幅)は、19〜21μm、山頂部での幅は8〜11μmであった。
【0083】
(導電性無機材料膜の形成:めっき用導電性基材の作製)
装置内にガス導入管とスパッタリング用のターゲットの両方を有するコーティング装置(HAUZER社製、HTC1500)を用いて窒化クロム膜を形成した。詳しくは、上記で得た凹部を有する絶縁層を有する基材を真空チャンバー内に入れ、最初にArガスによるプラズマを励起し基板のクリーニングを行なった後、ターゲットとしてクロムを用い、反応性ガスとして窒素を流しながらクロムを厚みが2μmになるまでスパッタし、窒化クロムからなる導電層を最表面に形成し、めっき用導電性基材を得た。
【0084】
(めっき〜金属箔剥離:パターン化金属箔の作製)
ついで、上記で得られためっき用導電性基材を陰極として、また、含燐銅を陽極として電解銅めっき用の電解浴(硫酸銅(5水塩)210g/L、硫酸100g/L、Micro Fill(添加剤) A液0.5ml/L、B液5ml/L、25℃)中に浸し、両極に電圧をかけて電流密度を5A/dm2として、めっき用導電性基材の凹部に析出した金属の厚さがほぼ20μmになるまでめっきした。めっきがめっき用導電性基材の全表面に形成され、得られた銅めっきは銅箔として剥離した。得られた銅箔の溝部の幅は最大幅で19〜21μm、底部の幅は8〜11μmであった。
【0085】
(繰り返し使用)
次いで、上記のめっき用導電性基材を用いて、銅めっき−金属箔剥離の工程を上記と同様にして100回繰り返した結果、銅めっきの析出性及び剥離性に変化が無く、パターンの欠けも観測されなかった。また、100回使用後にめっき用導電性を切り取って導電性DLCの表面形状を電子顕微鏡で観察したが、形状に変化は見られなかった。
【実施例2】
【0086】
(レジストからなる凸状パターンの形成)
実施例1と同様にして基板上にレジスト膜からなるパターン(レジスト膜の突起部からなる凸状パターン)を形成した。
【0087】
(絶縁層の形成)
上記で得られたパターン状のレジスト膜が付いた基板の表面に、実施例1と同様にして絶縁層を形成した。
【0088】
(絶縁層の付着した凸状パターンの除去;凹部の形成)
上記で得られた積層物(基材、レジスト膜及び絶縁層を含む)から、実施例1と同様にして、絶縁層の付着した凸状パターンを除去し、基板上に絶縁層を有し、この絶縁層に凹部(凹部の底部は基材が露出している)が形成されている基材を得た。
【0089】
(導電性DLC膜の形成)
スパッタリング装置(株式会社神戸製鋼所製、UBMS504)を用いて導電性DLC膜を形成した。詳しくは、上記で得た凹部を有する絶縁層を有する基材を真空チャンバー内に入れ、最初にArガスによるプラズマを励起し基板のクリーニングを行なった。ターゲットとしてクロムを用いて中間層を0.2μm形成した。最初タングステンカーバイド(WC)とカーボンを同時に成膜して傾斜層を作った後、カーボンのみを成膜して水素フリーの導電性DLCを厚み1μmになるまで成膜し、導電性DLCが最表面に形成された基板を得た。
【0090】
(第2の凸状パターンの形成)
図10に記載されたように凸部として形成されたパターンの丸パッド部分の拡大図を図11に示す。図11の破線部分25が図10の丸パッド部分にあたる。その中の第二の丸パッド26(直径φ0.7mm)に対応する部分2カ所を非露光部(光線非透過部)とするパターンが形成されたマスク(ネガフィルム)を用意した。
上記で得た導電性DLCが最表面に形成された基板の上に、レジストフィルムを密着して積層し、その上に上記マスクを静置した。ついで、紫外線照射装置を用いて、600mmHg以下の真空下において、マスクの上から、紫外線を120mJ/cm2照射した。さらに。1%炭酸ナトリウム水溶液で現像することで、第二の丸パッド26にあたる箇所が穴になるようにレジスト膜を形成した。
【0091】
(第二の絶縁層の形成)
上記で得られた第2の凸状パターン状が付いた基板の表面に、実施例1と同様にして第二の絶縁層を形成した。第二の絶縁層を膜厚5〜6μmになるように形成した。第二の絶縁層の側面の角度は上方に基材の表面に対して45〜51度で、第二の絶縁層の直径は、上方に向かって小さくなっていた。
【0092】
(第二の絶縁層の付着した第2の凸状パターンの除去)
第二の絶縁層の付着した第2の凸状パターンを前記した絶縁層の付着した凸状パターンの除去の手法と同様にして除去し、めっき用導電基材を得た。
【0093】
(めっき〜金属箔剥離)
ついで、上記で得られためっき用導電性基材を陰極として、また、含燐銅を陽極として電解銅めっき用の電解浴(硫酸銅(5水塩)210g/L、硫酸100g/L、Micro Fill(添加剤) A液0.5ml/L、B液5ml/L、25℃)中に浸し、両極に電圧をかけて電流密度を5A/dm2として、めっき用導電性基材の凹部に析出した金属の厚さがほぼ25μmになるまでめっきした。第二の丸パッド26の部分は第二の絶縁層があるためめっきが析出せず、それ以外の全面にめっきが析出した。めっきされた銅は銅箔として剥離した。得られた銅箔の溝部の幅は最大幅で19〜21μm、底部の幅は8〜11μmであった。また、第二の丸パッドに対応する部分はφ0.65mmの貫通孔が形成されていた。
【0094】
(繰返し使用)
次いで、上記のめっき用導電性基材を用いて、銅めっき−剥離の工程を上記と同様にし
て300回繰り返した結果、銅めっきの析出性及び剥離性に変化が無く、絶縁層の剥離箇
所も観測されなかった。また、300回使用後にめっき用導電性を切り取って導電性DL
Cの表面形状を電子顕微鏡で観察したが、形状に変化は見られなかった。
【符号の説明】
【0095】
1:めっき用導電性基材
2:基材
3:凸部
4:凹部
5:絶縁層(第一の絶縁層)
6:導電層
7:第二の絶縁層
8:感光性レジスト層(感光性樹脂層)
9:レジストにより形成される突起部
10:凹部(絶縁層による)
11:凹部
12:感光性レジスト層(感光性樹脂層)
13:レジストにより形成される突起部
14:第二の絶縁層
15:めっき(金属)
16:貫通孔
17:支持基材
18:粘着剤層
19:別の基材
20:導体層パターン付基材
21:支持基材
22:粘着剤層
23:他の基材
24:導体層パターン付基材
25:丸パッド
26:第二の丸パッド
100:電解浴
101:電解液
102:陽極
103:回転体
104:配管
105:ポンプ
106:金属
107:フィルム
108:圧着ロール
109:導体層パターン付き基材
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンが施された金属箔(以下、パターン化金属箔という)の製造方法、導体層パターン付基材の製造方法、めっき用導電性基材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面にパターンが施された金属箔を作製するには、フォトリソグラフ法を用いて金属箔をエッチングして加工する方法や、表面に凹凸が形成されたロール、または金型で圧延、プレスして金属箔表面に凹凸形状を転写する方法などが知られている。しかし、これらの方法では、加工に手間がかかりすぎてコストがかかる、形状の制御が困難である、特に微細なパターンの形成が困難である、といった課題があった。
そこで、特許文献1に記載されるように、導電性基材上にめっき形成部としての凹部を有する絶縁層を形成しためっき用導電性基材とこれを用いたパターン化金属箔の作製が提案されている。このめっき用導電性基材によれば、導電性基材上に形成された絶縁層の凹部の平面形状を種々変更することにより、金属メッシュ等の種々のパターン化金属箔を作製できる。また、パターン化金属箔のめっき用導電性基材からの剥離を接着性支持体で行うことにより、電磁波遮蔽部材等に有用な導体層パターン付き基材が容易に作製できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2008/081904
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるめっき用導電性基材並びにこれを用いたパターン化金属箔及び導体層パターン付き基材の製造方法は、生産性、微細なパターンの形成が容易であるなど有用性に優れるが、さらに種々のパターン化金属箔の作製には、さらなる改善が要望されている。
そこで、本発明は、生産性よく、種々の微細なパターン化金属箔の作製が可能なパターン化金属箔の製造方法、そのようなパターン化金属箔を利用する導体層パターン付き基材の製造方法並びにそれに用いるめっき用導電性基材及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次のものに関する。
1. (A)表面に開口方向に向かって幅広な凹部が形成されており、表面が導電性であるめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程、
(B)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程
を含むことを特徴とする、少なくとも片面にパターンが施された金属箔の製造方法。
2. (A)表面に開口方向に向かって幅広な導電性の表面を有する凹部と少なくともその凹部を除いた表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層の開口部が開口方向に向かって幅広になっているめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程
(B)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程
を含むことを特徴とする、パターンが施された金属箔の製造方法
3. (A)表面に開口方向に向かって幅広な導電性の表面を有する凹部と少なくともその凹部を除いた表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層の開口部が開口方向に向かって幅広になっているめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程
(B)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を別の基材に転写する工程
を含むことを特徴とする導体層パターン付基材の製造方法。
4. 基材の上に開口方向に向かって幅広な凹部を有する絶縁層が形成されており、さらにその上に導電層を形成してなるめっき用導電性基材。
5. 基材が導電性である項4記載のめっき用導電性基材。
6. 基材の上に開口方向に向かって幅広な凹部を有する第一の絶縁層が形成されており、その上に導電層が形成されており、さらにその上に第一の絶縁層に形成されている凹部を含むように開口方向に向かって幅広な開口を有する第二の絶縁層が形成されているめっき用導電性基材。
7. 基材が導電性である項6記載のめっき用導電性基材。
8. めっき用導電性基材の絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)又は無機材料からなる項4〜7のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
9. めっき用導電性基材の絶縁層がDLC、Al2O3又はSiO2である項8記載のめっき用導電性基材。
10. めっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは導電性無機膜からなることを特徴とする項4〜9のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
11. めっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは窒化クロムからなることを特徴とする項10記載のめっき用導電性基材。
12. めっき用導電性基材において、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上90度未満である項4〜11に記載のめっき用導電性基材。
13. めっき用導電性基材において、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下である項4〜11のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
14. めっき用導電性基材において、絶縁層の厚さが、0.1〜100μmである項4〜13のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
15. めっき用導電性基材において、導電層の厚さが、0.1〜100μmである項4〜14のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
16. 導電性のロール(ドラム)またはロールに巻き付けるものである項4〜15のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
17. (A)基材の表面に、除去可能な凸部のパターンを形成する工程、
(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている基材の表面に、DLC又は無機材料からなる絶縁層を形成する工程、
(C)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程、
及び
(D)得られた絶縁層付基材の表面に、導電性DLCまたは導電性無機膜を形成する工程を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造方法
18. (A)基材の表面に、除去可能な凸部のパターンを形成する工程、
(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている基材の表面に、DLC又は無機材料からなる第一の絶縁層を形成する工程、
(C)第一の絶縁層が付着している凸状のパターンを除去し、絶縁層に開口方向に向かって幅広な凹部を形成する工程、
(D)得られた第一の絶縁層付基材の表面に、導電性DLCまたは導電性無機膜を形成する工程、
(E)導電性DLCまたは導電性無機膜が形成された第一の絶縁層付基材の表面に、少なくとも上記で形成された第一の絶縁層の凹部上に除去可能な凸部のパターンを形成する工程
(F)除去可能な凸状のパターンが形成されている、導電性DLCまたは導電性無機膜が形成された第一の絶縁層付基材の表面の表面に、DLC又は無機材料からなる第二の絶縁層を形成する工程、
及び、
(G)第二の絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程
を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造方法。
19. 除去可能な凸状のパターンが、感光性レジストを用いるフォトリソグラフ法により形成されたものである項17または18記載のめっき用導電性基材の製造方法。
20. めっき用導電性基材の絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)又は無機材料からなる項17〜19のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造方法。
21. めっき用導電性基材の絶縁層がDLC、Al2O3又はSiO2である項20記載のめっき用導電性基材の製造方法。
22. めっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは導電性無機膜からなることを特徴とする項17〜21のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造方法。
23. めっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは窒化クロムからなることを特徴とする項22記載のめっき用導電性基材。
24. めっき用導電性基材において、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上90度未満である項17〜23に記載のめっき用導電性基材。
25. めっき用導電性基材において、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下である項17〜24のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
26. めっき用導電性基材において、絶縁層の厚さが、0.1〜100μmである項17〜25のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
27. めっき用導電性基材において、導電層の厚さが、0.1〜100μmである項17〜26のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【発明の効果】
【0006】
本発明におけるめっき用導電性基材は、めっきにより金属層が形成される凹部が開口方向に向かった幅広となっているため、また、第二の絶縁層が露出しているときは、その絶縁層が末広がりの凸形状であるため、めっきにより得られるパターン化金属箔の剥離が容易である。従って、本発明のパターン化金属箔の製造方法によれば、その作製が容易で、生産性が優れる。また、本発明におけるめっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは導電性無機膜からなる場合には、基材及び(第一の)絶縁層への密着性が優れ、その耐食性が優れ、本発明のパターン化金属箔の製造方法において、繰り返しの使用に対し耐久性に優れる。また、さらに本発明におけるめっき用導電性基材は、導電層の上に第二の絶縁層を形成することにより、表面にパターンが形成されているのみならず、金属箔自体を穴あきにした立体構造のパターン化金属箔を作製することができる。さらに、めっき用導電性基材上に形成されたパターン化金属箔を接着性支持体に転写させることで、導体層パターン付基材を容易に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のめっき用導電性基材の一例を示す斜視図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】本発明のめっき用導電性基材の他の例を示す断面図。
【図4】めっき用導電性基材の製造方法を示す工程の一例を示す断面図。
【図5】めっき用導電性基材の製造方法を示す追加の工程の一例を示す断面図。
【図6】パターン化金属箔の作製工程の一例を示す断面図。
【図7】パターン化金属箔の作製工程の別の例を示す断面図。
【図8】導体層パターン付き基材の作製工程の一例を示す断面図。
【図9】別の導体層パターン付き基材の追加の作製工程の一例を示す断面図。
【図10】パターン化金属箔のパターンの一例を示す平面図。
【図11】パターン化金属箔のパターンの別の例を示す平面図の一部拡大した図。
【図12】回転体を用いて導体層パターン付き基材を連続的に作製するための装置の概念断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一例を図面を用いて説明する。
図1は、本発明のめっき用導電性基材の一例を示す一部斜視図である。図2は、図1のA−A断面図を示す。図2の(a)は凹部の側面が平面的であるが、(b)は凹部の側面になだらかな凹凸がある場合を示す。めっき用導電性基材1は、導電性であってもよい基材2の上に凸部3と凹部4が形成されている。さらに詳しくは、図2に示すように、基材2上に絶縁層5が形成されており、これが、上記凸部の基礎となっている。この例において、絶縁層5は平面形状が正方形であり、規則正しく配列されており、絶縁層のない部分が格子状に配置されている。この絶縁層のない部分が凹部4の基礎となっている。絶縁層5及び基材2を覆うように導電層6が形成されている。従って、凸部3及び凹部4の表面は導電層6からなるが、凸部は絶縁層5とその上の導電層6からなり、凹部4の底面を形成する導電層6は、基材2と接触している。基材2は、めっきに際し基材を経由して電流を印可することができることから、導電性基材であることが好ましい。導電性基材2と絶縁層3の間には、絶縁層3の接着性の改善等を目的として、導電性又は絶縁性の中間層(図示せず)が積層されていてもよい。なお、絶縁層5を第一の絶縁層という。
【0009】
凹部は、開口方向に向かって幅広であるが、これについて、詳述する。
前記の凹部4は、その幅が、開口方向に向かって全体として幅広になっている。図面のよう勾配αで一定に幅広になっている必要は必ずしもない。めっきにより形成される導体層パターンの剥離に問題がなければ、凹部は、開口方向に向かって幅が狭くなっている部分があってもよいが、このような部分がない方が良く、凹部は開口方向に向かって狭まっておらず全体として広がっていることが好ましい。特に、凹部の一側面がその対面と共に、底面に対して垂直となっている部分が高さ方向で1μm以上続く部分がないようにすることが好ましい。このようなめっき用導電性基材であれば、それを用いてめっきを行った後、析出した金属層をめっき用導電性基材から剥離するに際し、金属層と絶縁層との間の摩擦又は抵抗を小さくすることができ、その剥離がより容易になる。
【0010】
凹部の側面は、必ずしも平面ではない。この場合には、図2(b)に示すように、前記の勾配αは、凹部の高さh(これは、すなわち、絶縁層の厚さとなる)と凹部の側面の幅s(水平方向で凹部の側面の幅方向)を求め、
【数1】
によってαを決定する。
αは、角度で30度以上90度未満が好ましく、30度以上80度以下がより好ましく、30度以上60度以下が特に好ましい。この角度が小さいと作製が困難となる傾向があり、大きいと凹部にめっきにより形成し得た金属層(導体層パターン)を剥離する際、又は、別の基材に転写する際の抵抗が大きくなる傾向がある。
【0011】
図3は、本発明のめっき用導電性基材の他の例を示す一部断面図である。これは、図2(a)に示すめっき用導電性基材の凸部3の部分の導電層6上にさらに絶縁層(第二の絶縁層)7を形成したものである。第二の絶縁層7も、開口方向に向かって幅広な形状をしていることが好ましい。ここで、「開口方向に向かって幅広」の意味は、前記したのと同様である。第二の絶縁層7は、凸部3の部分の導電層6上に形成されていれば、どのような平面形状であってもよく、目的に応じて適宜決定すればよく、また、この時の導電層6の露出の程度も目的に応じて適宜決定される。第二の絶縁層の側面について、その角度や必ずしも平面ではなくてよいこと等は、前記の凹部の側面と同様である。
さらに、第二の絶縁層の上に第二の導電層、その上に第三の絶縁層、と導電層と絶縁層を繰返し交互に積層することで何段でも積層することが可能であるが、めっき用導電性基材の作製にコストがかかりすぎるため、第三の絶縁層以上に積層することはあまり好ましくない。これらの場合においても、絶縁層の側面について、その角度、必ずしも平面ではなくてよいこと、形成範囲等は、前記の凹部や第二の絶縁層の側面と同様である。
【0012】
前記したいずれのめっき用導電性基材においても、基材2と絶縁層3又は導電層6との間には、絶縁層3又は導電層6の接着性の改善等を目的として、中間層(図示せず)が積層されていてもよい。
【0013】
上記めっき用導電性基材の凹部4の形状は、パターン化金属箔の金属部分のパターンに対応するものであり、さらに、第二の絶縁層はパターン化金属箔の穴のパターンに対応する。
【0014】
絶縁層又は凹部の一方は、目的に応じて、適宜の形状が形成され、他方は、これに対応した形状となる。このような形状としては、平面形状として、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形(nは3以上の整数)、円、だ円、星型、直線などがあり、目的に応じてその形状が選択される。このような形状は、組合せて使用できる。また、絶縁層又は凹部の分布密度は、目的応じて適宜決定される。ここで例示したのは単純な幾何学図形の組合せであるが、例えば、配線板の回路やマイクロ流路チップのような用途に用いる場合には、単純な幾何学図形の組合せだけによらず、その目的に対して最適な形状を設計し、適用することができる。
【0015】
また、第一の絶縁層、第二の絶縁層等の絶縁層の厚さは、0.1μm以上、100μm以下の範囲であることが好ましい。絶縁層が厚すぎると、絶縁層を形成する時間が長くなり、作業効率が低下しやすくなる。また、絶縁層が薄すぎると絶縁層にピンホールが発生しやすくなるため、めっきした際に、絶縁層を施した部分にも金属が析出しやすくなる。さらに第一の絶縁層が厚いと、基材2として導電性のものを使用してこの基材2を通して電流を印可するときは、凸部3の導電層5との距離が遠くなるため、めっきの際に抵抗が大きくなってしまう可能性がある。絶縁層の厚さは、1〜5μmであることが特に好ましい。
【0016】
前記のめっき用導電性基材の形状としては、シート状、プレート状、ロール状、フープ状等がある。ロール状の場合は、ロール状それ自体とシート状、プレート状のものを回転体(ロール)に取り付けたものであってもよい。フープ状の場合は、フープの内側の2箇所から数箇所にロールを設置し、そのロールにフープ状の導電性基材を通すような形態等が考えられる。ロール状、フープ状ともに金属箔を連続的に生産することが可能であるため、シート状、プレート状に比較すると、生産効率が高く、好ましい。
【0017】
本発明において、基材は、導電性であるものが好ましい。その導電性の程度は、その基材を経由して電流を印可するときは、導電層と併せて、導電層上に電解めっきで金属を析出させるために十分な導電性を有するものである。このような基材としては、金属が好ましい。さらに具体的には、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、チタンをライニングした材料、ニッケル、ニッケル基合金、などを用いることができる。また、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、ニッケル合金めっきが施された鋼などのめっきにより耐食層を形成することもできる。あるいはサーメットや超硬合金などを溶射により形成することもできる。
基材は、セラミック等の絶縁体であってもよい。この場合、導電層は電解めっきで金属を析出させるために十分な導電性を有するものである。
基材は耐食性があり、かつ高硬度であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明で用いられる絶縁層の材料として、ダイヤモンドに類似したカーボン、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(以下、「DLC」という)のうち、絶縁性を有するものにて形成させることができる。DLCは、特に耐薬品性にも優れているため、特に好ましい。
【0019】
絶縁層としてのDLC薄膜を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、アーク放電法、イオン化蒸着法等の物理気相成長法、プラズマCVD法等の化学気相成長法等のドライコーティング法を採用し得るが、成膜温度が室温から制御できる高周波やパルス放電を利用するプラズマCVD法が特に好ましい。
上記DLC薄膜をプラズマCVD法で形成するために、原料となる炭素源として炭化水素系のガスが好んで用いられる。例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン系ガス類、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン系ガス類、ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類、アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン系ガス類、ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素系ガス類、シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロアルカン系ガス類、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン系ガス類、メタノール、エタノール等のアルコール系ガス類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系ガス類、メタナール、エタナール等のアルデヒド系ガス類等が挙げられる。上記ガスは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。また、元素として炭素と水素を含有する原料ガスとして上記した炭素源と水素ガスとの混合物、上記した炭素源と一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみからなる化合物のガスとの混合物、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみから構成される化合物のガスと水素ガスとの混合物、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等の炭素と酸素のみからなる化合物のガスと酸素ガスまたは水蒸気との混合物等が挙げられる。更に、これらの原料ガスには希ガスが含まれていてもよい。希ガスは、周期律表第0属の元素からなるガスであり、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等が挙げられる。これらの希ガスは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0020】
絶縁層は、その全体を、上述した絶縁性のDLC薄膜によって形成してもよいが、当該DLC薄膜の、基材に対する密着性を向上させて、絶縁層の耐久性をさらに向上させるためには、この両者の間に、Ti、Cr、W、Siもしくはそれらの窒化物又は炭化物から選ばれる一種以上の成分又はその他よりなる中間層を介挿することが好ましい。
上記SiまたはSiCの薄膜は、例えば、ステンレス鋼などの金属との密着性に優れる上、その上に積層する絶縁性のDLC薄膜との界面においてSiCを形成して、当該DLC薄膜の密着性を向上させる効果を有している。
中間層は、前記したようなドライコーティング法により形成させることができる。
中間層の厚みは、1μm以下であることが好ましく、生産性を考慮すると0.5μm以下であることが更に好ましい。1μm以上コーティングするには、コーティング時間が長くなると共に、コーティング膜の内部応力が大きくなるため適さない。
【0021】
絶縁層をAl2O3、SiO2のような無機材料で形成することができる。この場合にも、スパッタリング法、イオンプレーティング法といった物理的気相成長法やプラズマCVDといった化学気相成長法を用いることができる。例えばスパッタリング法で形成する場合には、ターゲットをSiまたはAlにして反応性ガスとして酸素、窒素などの導入することでSiO2、Si3N4などの酸化物、窒化物を成膜することができる。また、イオンプレーティング法を用いる場合にはSiやAlを原料とし、電子ビームをこれらに照射することで蒸発させ、基板に成膜することができる。その際に、酸素、窒素、アセチレンといった反応性ガスを導入することで酸化物、窒化物、炭化物を成膜することができる。
また、CVD法で成膜する場合には金属塩化物、金属水素化物、有機金属化合物などのような化合物ガスを原料とし、それらの化学反応を利用して成膜することでできる。酸化シリコンの成膜は、例えばTEOS、オゾンを用いたプラズマCVD法で行える。窒化シリコンの成膜は、例えばアンモニアとシランを用いたプラズマCVD法で行える。
第一の絶縁層と第二の絶縁層を同じ材質で形成しても構わないし、異なる材質を使用しても実用上問題はない。
【0022】
前記導電層としては、導電性ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜、導電性無機材料膜等があり、電解めっきによりその表面にめっきを施すことができるものである。
上記導電性DLC膜、導電性無機材料膜等の導電層の導電性の程度は、より具体的には体積抵抗率で1×103Ω・cm以下が好ましく、1×102Ω・cm以下がより好ましく、1×10Ω・cm以下が最も好ましい。導電性が高い程めっきが析出しやすく体積抵抗率は低い方が好ましい。1×103Ω・cmを越えると、めっきが析出しない或は析出しても抵抗値が高いため、めっき時の電圧が高くなったり、発熱等が起こる傾向がある。体積抵抗率は1×10−6Ω・cm未満になるとその生成が困難に成る傾向があるので、それ以上が好ましい。導電層の導電性の、体積抵抗率による評価は、後記するように、その下に中間層を有するときは、中間層に導電層を積層してこれらを併せて測定した値である。
体積抵抗率の測定は、別途シリコンウェハやガラス等の絶縁物に上記導電性DLC膜若しくは導電性無機材料膜、又は、中間層を形成後その上に上記導電性DLC膜若しくは導電性無機材料膜を成膜し、四端針抵抗測定法(装置としては、例えばロレスターGP、三菱化学株式会社製を使用することができる)により測定できる。中間層を使用した場合、中間層の厚みと上記導電性DLC膜若しくは導電性無機材料膜の厚みとの和を試料厚みとして、体積抵抗率を算出した。
【0023】
基材上に導電性DLC膜若しくは導電性無機材料膜を形成する方法は、基本的には上記の絶縁性DLC膜若しくは無機材料膜を形成する方法と同様であるが、DLC膜若しくは無機材料膜に導電性を付与する方法が加味される。
【0024】
DLC膜に導電性を付与する方法としては様々な手法を用いることができる。以下にその例を幾つか列挙するが、下記に記載された方法に限定されるものではない。
例えば、炭素、水素以外にホウ素、窒素、リンのような1種類以上の不純物を混ぜることによりDLC膜を導電性にすることができる。プラズマCVD方式で不純物を混ぜる際には、それら不純物を含有するDLC形成用ガスをチャンバー内に混入させてDLC膜を形成することで不純物(ホウ素及び窒素)がDLC膜内に分子又は原子の形で取り込まれ、得られた膜は導電性を発現する。
その際に使用するプラズマCVD反応ガスとして、不純物であるホウ素源としては、例えば、ジボラン(B2H2)、酸化ホウ素(B2O3)を用いることができる。また、窒素源としては、例えば、窒素(N2)を用いることができる。これらの元素を混ぜることはシリコンのような単結晶を素材とする半導体の製造に不純物として用いられているように、電気絶縁性を有する硬質炭素を用いるにもかかわらず、DLC膜を導電性にする。
また、上記不純物以外にもそれ自体が導電性を有する物質(不純物)を膜中に取り込むことにより、DLC膜に導電性を付与することができる。例えば、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Hf(ハフニウム)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Au(金)、Pt(白金)、Ag(銀)から選ばれる元素を少なくとも1種類以上を膜中に添加することにより、導電性膜を得ることができる。
【0025】
電気抵抗率を下げるべく不純物添加量を多くすると、一方で耐摩耗性などの特性が悪化する傾向がある。不純物添加量の下限は、たとえばプラズマCVD法によるタングステン(W)添加の場合は、0.0001原子%以上添加しないと体積抵抗率は1×106Ω・cm以下にならない。一方、Auをイオン注入法で添加する場合、0.000001原子%の添加でも体積抵抗率は1×106Ω・cm以下になる。このように、添加する元素や方法により電気抵抗率の下限は異なってくる。したがって、本発明のDLC膜における不純物添加量の下限は、各添加元素を考慮して0.001原子%以下を好ましい値とする。
【0026】
本発明の導電性DLC膜の形成において不純物を添加する方法として以下に示すような方法が適用できる。
(a)公知の方法でDLC膜を形成中に、不純物元素を含むガスを反応系に供給して膜中に添加する方法。特にプラズマCVD法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザアブレーション法などにおいてこの方法は有効である。
(b) 公知の方法でDLC膜を形成中に不純物元素を含む固体源を、加熱蒸発、スパッタ蒸発、またはアブレーションさせ、膜中に添加する方法。この方法は、特にスパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタ法、レーザアブレーション法などにおいて有効である。
(c) 公知の方法でDLC膜を形成中に、不純物元素を含むイオンビームを照射することにより、膜中に不純物を添加する方法。
(d) 公知の方法でDLC膜を形成した後、不純物を含むイオンを注入して不純物を添加する方法。
(e) 公知の方法で不純物元素を含む固体源をスパッタしながら、反応性の炭素源となるガスを流して不純物元素を含むDLCを成膜する方法。
【0027】
不純物を添加したDLC膜の形成には、上記の方法を単独で適用してもよく、複数の方法を併用してもよい。また、上記の方法とそれ以外の方法とを併用してもよい。
また、それら不純物元素を膜中に添加する際、成膜と同時に、堆積されつつあるDLC膜にイオン照射を行うことにより、炭素非晶質ネットワークの密度を高め、さらに前記の添加元素をクラスタリングさせることなく、微細に分散させることができる。さらに、成膜後、低エネルギーの電子線を前記非晶質炭素膜に照射することにより、マクロには炭素の非晶質ネットワークの構造を変えることなく、微細分散させた不純物元素の周辺のみに局所的な極微細グラファイトクラスターを形成させることができる。
【0028】
他に、不純物を添加せず、基板側から順に上層に向かって連続的又は段階的に、グラファイト成分が多いsp2軌道の含有割合の高いDLC層からダイヤモンド成分が多いsp3軌道の含有割合の高いDLC層を堆積し、DLC膜を形成する、といった手法で導電性DLC膜を形成することができる。
【0029】
上記以外の方法として、パルス電源を用いたイオン注入法で、正パルスを印可しながら導電性を付与する方法もある。すなわち、メタンプラズマ中に置いた基材に、負高電圧パルスを印加することによって、基材の全方向からメタンイオン照射を行い、基材表面の酸化膜など高抵抗層を除去すると共に、イオン注入によって、基材表面に、炭素原子の分散した導電性皮膜を形成する。次に、トルエンなど分子量の大きい炭化水素を真空槽に導入し、高周波放電、グロー放電などによって、これらのプラズマを生成し、ラジカルを堆積させるとともに、基材に、負高電圧パルスを印加し、正イオンを基材に加速して照射する。この際に、正高電圧パルスを基材に印加し、プラズマ中の電子を基材に照射することによって、表層のみをパルス的に活性化、及び高温状態にさせ、炭化水素ラジカル及びイオンを堆積させる。これらの工程を有機的に組み合わせることにより、高導電性、高耐食性、及び高密着性のDLC膜を形成することができる。また、上記DLC膜生成工程のガス中に窒素を混入させてもよい。
【0030】
また、逆に不純物を混ぜない水素フリーのDLC膜なども導電性を有する。スパッタリング法や真空アーク蒸着法を用い、カーボンをターゲット又は陰極材料として、メタンやアセチレンといった水素源となる雰囲気ガスを流さずに成膜することにより水素フリーのDLC膜を作製することができる。スパッタリング法でできる一般的な水素フリーのDLC膜では体積抵抗率(比抵抗)が100〜1×105Ω・cmの膜が得られ、真空アーク蒸着法でもsp2成分を増やすことで導電性を上げることができる。
上記の水素フリー膜といっても、スパッタリングターゲット、基材、チャンバー内壁に吸着した水分等の影響で膜中に数%程度の水素が含まれることがあるが、必要な導電性を有していれば、導電性DLC膜として使用できることは言うまでもない。
【0031】
無機材料を導電性にする方法も上記のDLCを導電性にする方法に準じて行うことができる。しかし、それ自体導電性の無機材料であれば、導電性付与の操作は不要である。それ自体導電性の無機材料としては、窒化チタンアルミニウム、窒化クロム、窒化チタン、窒化チタンクロム、炭窒化チタン、炭化チタンなどの無機化合物などがある。これらの製膜は、スパッタリング法、イオンプレーティング法といった物理的気相成長法やプラズマCVDといった化学気相成長法を用いることができる。その中でも窒化クロムが耐薬品性に優れているため特に好ましい。窒化クロムは、イオンプレーティング法やスパッタリング法等で成膜することができる。例えばスパッタリング法で成膜する場合には窒化クロムをターゲットとしてそのまま成膜する方法や、クロムをターゲットとして窒素ガスを導入しながら反応性スパッタリングで成膜する方法があるが、そのどちらでも適用できる。反応性スパッタリングではクロムと窒素の比が1対1にならず、局所的に金属クロム成分などがそのまま含まれる可能性があるが、その場合でも耐食性に問題はなく使用できる。
【0032】
めっき用導電性基材はめっき部の表面に電解めっきにより形成された金属層を容易に剥離できるものであることが好ましく、また、接着性支持体に転写させることができるように、その上に形成された金属層との密着力が低く、容易に剥離できるものであるものが好ましい。めっきが形成される導電層としては、このようなことを考慮してその材質を選択することが好ましい。このような導電層として、前記した導電性DLC膜又は導電性無機材料膜は、好適である。また、導電層は、仮にピンホールがあった場合でも耐食性を維持できるようにある程度の耐食性があることが好ましい。このような導電層として、前記した導電性DLC膜又は導電性無機材料膜は、好適である。さらに、めっきは、絶縁層上にも成長することがあるので、ここで説明したのと同様に、めっきで析出した金属の剥離性が良好な絶縁層が好ましく、このような絶縁層としても、前記したDLC膜や無機膜は国的である。
【0033】
本発明におけるめっき用導電性基材の製造方法としては、基材の表面に幾何学図形が描かれるように絶縁層を形成する工程を含む。
この工程は、
(A)基材の表面に、除去可能な凸部のパターンを形成する工程、
(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている導電性基材の表面に、DLC又は無機材料からなる絶縁層を形成する工程
及び
(C)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程
を含む。
この後、(D)得られた絶縁層付基材の表面に、導電層を形成する工程を行うことにより、本発明のめっき用導電性基材を得ることができる。
【0034】
さらに、前記の(D)の工程に、引き続き、
(E)(D)工程で得られためっき用導電性基材(「導電性基材I」という)の表面(導電層表面)に、除去可能な凸状のパターンを再度形成する工程
(F)除去可能な凸状のパターンが形成されている導電性基材Iの表面に絶縁層を形成する工程、
及び、
(G)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程
を順次行うことにより本発明の別のめっき用導電性基材を得ることができる。
上記(E)工程において、凸状のパターンは、導電性基材Iの凹部を覆うように形成することが好ましい。
【0035】
めっき用導電性基材の作製のための各工程について説明する。
上記(A)基材の表面に、除去可能な凸状パターンを形成する工程は、フォトリソグラフ法を利用して、レジストパターンを形成する方法を利用する方法により行うことができる。
この方法は、
(a−1)基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、
(a−2)感光性レジスト層をパターン化金属箔の形状に対応したマスクを通して露光する工程
及び
(a−3)露光後の感光性レジスト層を現像する工程
を含む。
【0036】
また、上記(A)基材の表面に、除去可能な凸状パターンを形成する工程は、
(b−1)基材の上に感光性レジスト層を形成する工程、
(b−2)感光性レジスト層にパターン化金属箔の形状に対応した部分にレーザ光を照射する工程
及び
(b−3)レーザ光を照射後の感光性レジスト層を現像する工程
を含む。
【0037】
前記感光性レジストとしては、よく知られたネガ型レジスト(光が照射された部分が硬化する)を使用することができる。また、このとき、マスクもネガ型マスク(凸状のパターンに対応する部分は光が通過する)が使用される。また、感光性レジストとしてはポジ型レジストを用いることができる。
【0038】
具体的方法として、基材上にドライフィルムレジスト(感光性樹脂層)をラミネートし、マスクを装着して露光することにより、凸状パターンとして残存させる部分を硬化状態に不要部を現像可能状態とし、不要部を現像して除去することにより形成することができる。また、凸状パターンは、基材に液状レジストを塗布した後に溶剤を乾燥するかあるいは仮硬化させた後、マスクを装着して露光することにより、凸状パターンとして残存させる部分を硬化状態に不要部を現像可能状態とし、不要部を現像して除去することにより形成することもできる。液状レジストは、スプレー、ディスペンサー、ディッピング、ロール、スピンコート等により塗布できる。
【0039】
上記において、ドライフィルムレジストをラミネートし、又は液状レジストを塗布した後に、マスクを介して露光する代わりにレーザ光などでマスクを使用せず直接に露光する方法を採用することもできる。光硬化性樹脂にマスクを介して又は介さずして活性エネルギー線を照射することでパターニングできればその態様は問わない。
【0040】
基材のサイズが大きい場合などはドライフィルムレジストを用いる方法が生産性の観点からは好ましく、基材がめっきドラムなどの場合は、ドライフィルムレジストをラミネートし、又は液状レジストを塗布した後にマスクを介さずにレーザ光などで直接に露光する方法が好ましい。
【0041】
本発明におけるめっき用導電性基材の製造方法の一例を図面を用いて説明する。
図4は、めっき用導電性基材の製造方法を示す工程の一例を断面図で示したものである。
基材2の上に感光性レジスト層(感光性樹脂層)8が形成されている(図4(a))。この積層物の感光性レジスト層(感光性樹脂層)8に対し、フォトリソグラフ法を適用して感光性レジスト層8をパターン化する(図4(b))。パターン化(凸状パターンの形成)は、パターンが形成されたフォトマスクを感光性レジスト層8の上に載置し、露光した後、現像して感光性レジスト層8の不要部を除去して突起部9を残すことにより行われる。突起部9の形状とそれからなる凸状パターンは、基材2上の凹部4とそのパターンに対応するよう考慮される。
【0042】
この時、突起部9の断面形状において、突起部9の幅の最大値d1は、突起部9と基材2に接する幅d0と等しいか大きくすることが特に好ましい。これは、形成される密着性の良い絶縁層の凹部幅はd1によって決定されるからである。ここで、突起部9の断面形状で、突起部9の幅の最大値d1が突起部9と基材2に接する幅d0と等しいか大きくする方法としては、突起部9の現像時にオーバ現像とするか、形状がアンダカットとなる特性を有するレジストを使用すれば良い。d1は突起部の上部で実現されていることが好ましい。
除去可能な凸状パターンを構成する突起部9の形状は、第一の絶縁層3に対応づけられるが、その作製の容易性から、幅1μm以上、間隔が1μm以上及び高さ1〜50μmであることがそれぞれ好ましい。
【0043】
ついで、突起部9からなる凸状パターンを有する基材2の表面に絶縁層5を形成する(図4(c))。絶縁層の形成方法は、前記したとおりである。
さらに、絶縁層5が付いている状態で、突起部9を除去し、凹部10を形成する(図4(d))。
絶縁層の付着しているレジスト(突起部8)の除去には、市販のレジスト剥離液や無機、有機アルカリ、有機溶剤などを用いることができる。また、パターンを形成するのに使用したレジストに対応する専用の剥離液があれば、それを用いることもできる。
剥離の方法としては、例えば薬液に浸漬することでレジストを膨潤、破壊あるいは溶解させた後これを除去することが可能である。液をレジストに十分含浸させるために超音波、加熱、撹拌等の手法を併用しても良い。また、剥離を促進するためにシャワー、噴流等で液をあてることもできるし、柔らかい布や綿棒などでこすることもできる。
また、絶縁層の耐熱が十分高い場合には高温で焼成してレジストを炭化させて除去することもできるし、レーザーを照射して焼き飛ばす、といった方法も利用できる。
剥離液としては、例えば、3%NaOH溶液を用い、剥離法としてシャワーや浸漬が適用できる。
【0044】
次に、絶縁層5が形成されている基材2の全面又は必要な箇所に導電層6を形成し、本発明のめっき用導電性基材を得、凹部10は、新たに凹部11となる(図4(e))。導電層6の形成方法は、前述の通りである。凹部4は開口方向に向かって幅広であるため、陰になる部分がなく、基材2の上にも絶縁層5の上にもほぼ均一に導電層6を形成することができる。導電層を形成したくない部分には、レジスト膜の形成又はフィルムの貼着等により保護しておくことができる。
【0045】
続いて、第二の絶縁層を有するめっき用導電性基材の作製方法について説明する。図5は、めっき用導電性基材の製造方法を示す追加の工程の一例を示す断面図である。基本的には上記で得られためっき用導電性基材に、図4(a)〜(d)に示されるような工程を繰り返し適用することになる。図4(e)に示されるめっき用導電性基材に対し、さらに感光性レジスト層(感光性樹脂層)12を形成する(図5(f))。これを、前述と同様の方法で感光性樹脂層12からなる突起部13を形成し(図5(g))、続いて第二の絶縁層14を形成する(図5(h))。最後に、第二の絶縁層14のついた突起部13を除去することにより、導電層6上にパターン化された第二の絶縁層14を有するめっき用導電性基材を得る(図5(i))。このめっき用導電性基材には、言うまでもないが、凹部11が露出しており、第二の絶縁層を形成したことにより、凹部11が大きくなっている。
【0046】
以上の工程において、基材2又は導電層6の上に形成される絶縁層と、突起部9又は突起部13の側面に形成される絶縁層とでは、性質が異なる。例えば、硬度は、前者の方が後者より大きい。これは、絶縁層の形成において、基材2又は導電層6は突起部の影にならないので、基材2又は導電層6の上には均一な絶縁層が形成される。これに対し、突起部9又は13の側面への絶縁層の形成は、突起部9又は13の側面は基材2又は導電層6の膜厚方向に対し角度を有しているため、形成される絶縁層(特に、プラズマCVD法等により形成されるDLC膜や無機薄膜)は、基材2又は導電層6の上の絶縁層と同じ特性(例えば、同じ硬度)の絶縁層が得られない。このような異質な絶縁層の接触面においては、絶縁層の成長に伴い絶縁層の境界面が形成され、しかも、その境界面は絶縁層の成長面であることから、滑らかである。このため、突起部9又は13を除去するとき、絶縁層は、この境界で容易に分離される。さらに、この境界面、即ち、凹部の側面となる傾斜角αは、基材2又は導電層6の上の膜厚方向に対し突起部9又は13の側面で絶縁層の成長が遅れるため、境界面が傾斜するように制御される。
凹部の側面の傾斜角αは、角度で30度以上90度未満が好ましく、30度以上60度以下が特に好ましいが、DLC膜をプラズマCVD法で作製する場合は、凹部の側面の傾斜角αは、ほぼ45〜60度の角度に制御されやすい。すなわち、絶縁層の凹部は、開口方向に向かって幅広になるように形成される。この形状は、導電層を形成しても継承される。
【0047】
本発明において基材2又は導電層6の上に形成された絶縁層の硬度は、10〜40GPaであることが好ましい。硬度が10GPa未満の絶縁層は軟質であり、繰り返しのめっきに対する耐久性が低くなる。硬度が40GPa以上では、めっき用導電性基材の彎曲、折り曲げ等の加工をした際に基材の変形に追随できなくなり、絶縁層にひびや割れが発生するので好ましくない。より好ましくは12〜30GPaである。
これに対して、突起部の側面に形成される絶縁層の硬度は1〜15GPaであることが好ましい。突起部の側面に形成される絶縁層は、少なくとも基材2又は導電層6の上に形成される絶縁層の硬度よりも低くなるように形成しなければならない。そうすることにより両者間に境界面が形成され、後の絶縁層の付着した突起部からなる凸状パターンを剥離する工程を経た後に、底面に向かって末広がりな凸形状の絶縁層が形成されることになる。突起部の側面に形成される絶縁層の硬度は1〜10GPaであることがより好ましい。
【0048】
絶縁層の硬度は、ナノインデンテーション法を用いて測定することができる。ナノインデンテーション法とは、先端形状がダイヤモンドチップから成る正三角錐(バーコビッチ型)の圧子を薄膜や材料の表面に押込み,そのときの圧子にかかる荷重と圧子の下の射影面積から硬度を求める。ナノインデンテーション法による測定として、ナノインデンターという装置が市販されている。導電性基材上に形成された膜の硬度はそのまま導電性基材上から圧子を押し込んで測定することができる。また、凸部側面に形成される膜の硬度を測定するためには、導電性基材の一部を切り取って樹脂で注型し、断面から凸部側面に形成された絶縁層に圧子を押し込んで測定することができる。通常ナノインデンテーション法では圧子に1〜100mNの微少荷重をかけて硬度測定を行うが、本発明では3mNの荷重で10秒間負荷をかけて測定した値を硬度の値として記載している。
【0049】
本発明において、パターン化金属箔は、
(A)前記のめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程、
(B)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程
を含む方法により製造される。
【0050】
本発明におけるめっき法は公知の方法を採用することができる。めっき法としては、電解めっき法、無電解めっき法その他のめっき法を適用することができる。
電解めっきについてさらに説明する。例えば、電解銅めっきであれば、めっき用の電解浴には硫酸銅浴、ほうふっ化銅浴、ピロリン酸銅浴、または、シアン化銅浴などを用いることができる。このときに、めっき浴中に有機物等による応力緩和剤(光沢剤としての効果も有する)を添加すれば、より電着応力のばらつきを低下させることができることが知られている。また、電解ニッケルめっきであれば、ワット浴、スルファミン酸浴などを使用することができる。これらの浴にニッケル箔の柔軟性を調整するため、必要に応じてサッカリン、パラトルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタリントリスルホン酸ナトリウムのような添加剤、及びその調合剤である市販の添加剤を添加してもよい。さらに、電解金めっきの場合は、シアン化金カリウムを用いた合金めっきや、クエン酸アンモニウム浴やクエン酸カリウム浴を用いた純金めっきなどが用いられる。合金めっきの場合は、金−銅、金−銀、金−コバルトの2元合金や、金−銅−銀の3元合金が用いられる。他の金属に関しても同様に公知の方法を用いることができる。電界めっき法としては、例えば、「現場技術者のための実用めっき」(日本プレーティング協会編、1986年槇書店発行)第87〜504頁を参照することができる。
【0051】
次に、無電解めっきについてさらに説明する。無電解めっき法としては、銅めっき、ニッケルめっき、代表的であるが、その他、すずめっき、金めっき、銀めっき、コバルトめっき、鉄めっき等が挙げられる。工業的に利用されている無電解めっきのプロセスでは、還元剤をめっき液に添加し、その酸化反応によって生ずる電子を金属の析出反応に利用するのであり、めっき液は、金属塩、錯化剤、還元剤、pH調整剤、pH緩衝材、安定剤等から成り立っている。無電解銅めっきの場合は、金属塩として硫酸銅、還元剤としてホルマリン、錯化剤としてロッセル塩やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が好んで用いられる。また、pHは主として水酸化ナトリウムによって調整されるが、水酸化カリウムや水酸化リチウムなども使用でき、緩衝剤としては、炭酸塩やリン酸塩が用いられ、安定化剤としては、1価の銅と優先的に錯形成するシアン化物、チオ尿素、ビピリジル、O−フェナントロリン、ネオクプロイン等が用いられる。また、無電解ニッケルめっきの場合は、金属塩として硫酸ニッケル、還元剤には、次亜りん酸ナトリウムやヒドラジン、水素化ホウ素化合物等が好んで用いられる。次亜りん酸ナトリウムを用いた場合には、めっき皮膜中にりんが含有され、耐食性や耐摩耗性が優れている。また、緩衝剤としては、モノカルボン酸またはそのアルカリ金属塩を使用する場合が多い。錯化剤は、めっき液中でニッケルイオンと安定な可溶性錯体を形成するものが使用され、酢酸、乳酸、酒石酸、りんご酸、クエン酸、グリシン、アラニン、EDTA等が用いられ、安定化剤としては、硫黄化合物や鉛イオンが添加される。無電解めっき法については上記「現場技術者のための実用めっき」(日本プレーティング協会編、1986年槇書店発行)の第505〜545頁を参照することができる。
さらに、還元剤の還元作用を得るためには、金属表面の触媒活性化が必要になることがある。素地が鉄、鋼、ニッケルなどの金属の場合には、それらの金属が触媒活性を持つため、無電解めっき液に浸漬するだけで析出するが、銅、銀あるいはそれらの合金、ステンレスが素地となる場合には、触媒活性化を付与するために、塩化パラジウムの塩酸酸性溶液中に被めっき物を浸漬し、イオン置換によって、表面にパラジウムを析出させる方法が用いられる。
【0052】
本発明で利用できる無電解めっきは、例えば、めっき用導電性基材の表面に、必要に応じてパラジウム触媒を付着させたあと、温度60〜90℃程度とした無電解銅めっき液に浸漬して、銅めっきを施す方法である。
無電解めっきでは、基材は必ずしも導電性である必要はない。しかし、基材を陽極酸化処理するような場合は、基材は導電性である必要がある。
特に、導電性基材の材質がNiである場合、無電解めっきするには、表面を陽極酸化した後、無電解銅めっき液に浸漬して、銅を析出させる方法がある。
【0053】
めっきによって出現又は析出する金属としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、ニッケル、鉄、クロム等の導電性を有するものが使用されるが、20℃での体積抵抗率(比抵抗)が20μΩ・cm以下の金属を少なくとも1種類以上含むことが望ましい。本発明により得られる構造体を電磁波遮蔽シートとして用いる場合には電磁波を電流としてアースするためにこれを構成する金属は導電性が高い方が電磁波遮蔽性に優れるためである。このような金属としては、銀(1.62μΩ・cm)、銅(1.72μΩ・cm)、金(2.4μΩ・cm)、アルミニウム(2.75μΩ・cm)、タングステン(5.5μΩ・cm)、ニッケル(7.24μΩ・cm)、鉄(9.0μΩ・cm)、クロム(17μΩ・cm、全て20℃での値)などがあるが特にこれらに限定するものではない。できれば体積抵抗率が10μΩ・cmであることがより好ましく、5μΩ・cmであることがさらに好ましい。金属の価格や入手の容易さを考慮すると銅を用いることが最も好ましい。これらの金属は単体で用いてもよく、さらに機能性を付与するために他の金属との合金でも構わないし、金属の酸化物であってもよい。ただし、体積抵抗率が20μΩ・cmである金属が成分として最も多く含まれていることが導電性の観点から好ましい。
前記しためっき用導電性基材の表面にめっきにより形成される金属層の厚さ(めっき厚さ)は、十分な導電性を示すためには、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、金属箔にピンホールが形成される可能性を小さくするためには、3μm以上の厚さであることがさらに好ましい。また、厚すぎても抵抗はほとんど変化しないため、材料費、工程時間が増え、コスト的に不利にならないよう、30μm以下であることが好ましく、20μmであることがより好ましく、15μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0054】
析出する金属層の厚さに対して相対的に凹部がより深くなることにより、析出する金属層をより形状的に規正することができるという観点から、めっきにより形成される金属箔の厚さを絶縁層の高さの2倍以下とすることが好ましく、特に1.5倍以下、さらに1.2倍以下とすることが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0055】
析出される金属層の平面形状は適宜決定されるが、例えば、光透過性を重視し、網目状の金属層を形成する場合には、金属層の幅は、ライン作製の容易さや非視認性の観点から1〜50μmであることが好ましく、5〜30μmとすることがさらに好ましい。また、ライン間隔は、四角格子のとき、50μm以上の範囲とすることが好ましい。ライン間隔は、大きいほど開口率は向上し、可視光透過率は向上する。ライン間隔が大きくなり過ぎると、表明抵抗の低下効果が低下するため、ライン間隔は2000μm(1mm)以下とするのが好ましく、特に100〜1000μmであることが好ましい。また、三角格子及びハニカム格子その他の複雑な形状の網目の場合における、ライン間隔は、繰り返し単位を基準として、その面積を正方形の面積に換算してその一辺の長さをライン間隔とする。
光透過性を重視した場合、網目状の金属層の開口率は、50%以上が好ましく、60%以上がさらに好ましく、特に好ましくは80%以上が好ましい。
析出される金属層が、穴あき金属箔である場合、穴の形状と配置は使用目的を勘案して適宜決定されるが、例えば、キャパシタ用の穴あき金属箔としては、穴の面積は1〜1×106平方ミクロンメートルが好ましく、1×102〜1×104平方ミクロンメートルであることがより好ましく、穴の間隔は10〜100μmであることがより好ましい。開口率を好ましくは10%以上、特に好ましくは30%以上とすることを考慮して決定することが好ましい。
めっき用導電性基材の凹部の大きさは、このような金属層の形状を考慮して決定される。
【0056】
上記のめっき用導電性基材を用いて、めっきした後、その基材上に形成されたパターン化金属箔を剥離することにより、パターン化金属箔を取得することができる。めっきからパターン化金属箔を取得するまでの工程を図6及び図7に示す。図6はパターン化金属箔の作製工程の一例を示す断面図、図7はパターン化金属箔の作製工程の別の例を示す断面図である。
まず、図6を用いて第二の絶縁層を設けないめっき用導電性基材を用いた場合について説明する。めっき用導電性基材(図4(e)に例示したもの)にめっきにより金属15を析出させる(図6(a))。このとき、基材の凹部11には、めっきにより金属が埋まるように析出させる。例えば銅めっきであれば、フィルドビア用のめっき液組成及び条件などを適用することにより、この凹部を容易に埋めることができる。次いで、めっきにより析出した金属を剥離することで、表面にパターンが形成されたパターン化金属箔15を得ることができる(図6(b))。パターン化金属箔15の表面に凸状に形成されたパターンは、めっき用導電性基材の凹部11の形状に対応している。
【0057】
次に、図7を用いて第二の絶縁層を設けためっき用導電性基材を用いた場合について説明する。めっき用導電性基材(図5(i)に例示したもの)にめっきにより金属15を析出させる(図7(a))。このとき、めっき用導電性基材の凹部11には、めっきにより金属が埋まるように析出させる。ただし、めっきは、通常、等方的に成長するので、凹部11から溢れるようにして絶縁層14上にもめっきが形成される。このとき、例えば、絶縁層5及び絶縁層6を平面形状が円形となるように形成しておくことにより、第二の絶縁層14上のめっきが析出しない部分を円形にすることができ、従って、得られた金属15には貫通穴16が形成される。次いで、めっきにより析出した金属を剥離することで、貫通孔を有するパターン化金属箔15を得ることができる(図7(b)及び(c))。
【0058】
本発明においてめっきにより析出させたパターン化金属箔を粘着性を有する別の基材に転写することもできる。
ここでいう基材とは、支持基材上に、粘着剤層が積層されたものであり、場合により、支持基材がなく粘着剤層だけでもよい。また、粘着剤とは、粘着性を有するもの又は加熱、加圧等により粘着性を示すものである。
【0059】
支持基材としては、ガラス板、プラスチック板、プラスチックフィルム等がある。
プラスチックとしては、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂、酢酸セルロース樹脂、フッ素樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリウレタン樹脂、フタル酸ジアリル樹脂などの熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。プラスチックの中では、透明性に優れるポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂が好適に用いられる。別の基材の厚みは、0.5mm〜5mmがディスプレイの保護や強度、取扱い性から好ましい。
【0060】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂などのプラスチックからなるフィルムで全可視光透過率が70%以上のものが好ましい。これらは単層で使うこともできるが、2層以上を組合せた多層フィルムとして使用してもよい。前記プラスチックフィルムのうち透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、価格の点からポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリカーボネートフィルムが特に好ましい。
上記プラスチックフィルムの厚さは特に制限はないが、1mm以下のものが好ましく、厚すぎると可視光透過率が低下しやすくなる傾向がある。また、薄く成りすぎると取扱い性が悪くなることを勘案すると、上記プラスチックフィルムの厚さは5〜500μmがより好ましく、50〜200μmとすることがさらに好ましい。
【0061】
粘着剤層(樹脂層)の厚さは、薄すぎると十分な強度が得られないため、めっきで形成された導体層を転写する際に、導体層が粘着剤層に密着せず、転写不良が発生することがある。したがって、粘着剤層の厚みは、1μm以上であることが好ましく、量産時の転写信頼性を確保するためには3μm以上であることが更に好ましい。また、粘着剤層の厚さが厚すぎると、粘着剤層の製造コストが高くなるとともに、ラミネートした際に、粘着剤層の変形量が多くなるため、粘着剤層の厚みは100μm以下が好ましく、50μm以下がさらに好ましい。
基材を、めっき用導電性基材の導体層が形成されている面に貼り合わせる際には、粘着剤層の特性に応じて、特に、粘着剤層が適度な流動性又は粘着性を発揮するために、必要ならば加熱される。基材が粘着剤層を保持する支持基材を有する場合、支持基材は、このような加熱に際しても形状を維持する程度に十分な耐熱性を有することが好ましい。
【0062】
粘着剤としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂などが使用される。
上記の熱可塑性樹脂として代表的なものとして以下のものがあげられる。たとえば天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1,2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、ポリ−1,3−ブタジエン)などの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテル、ポリビニルブチルエーテルなどのポリエーテル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルホン、ポリスルフィド、フェノキシ樹脂、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート、ポリ−t−ブチルアクリレート、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート)、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリドデシルメタクリレート、ポリテトラデシルメタクリレート、ポリ−n−プロピルメタクリレート、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂などが使用可能である。これらのポリマを構成するモノマーは、必要に応じて、2種以上共重合させて得られるコポリマとして用いてもよいし、以上のポリマ又はコポリマを2種類以上ブレンドして使用することも可能である。
【0063】
前記硬化性樹脂のうち、活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等をベースポリマとし、各々にラジカル重合性あるいはカチオン重合性官能基を付与させた材料が例示できる。ラジカル重合性官能基として、アクリル基(アクリロイル基)、メタクリル基(メタクリロイル基)、ビニル基、アリル基などの炭素−炭素二重結合があり、反応性の良好なアクリル基(アクリロイル基)が好適に用いられる。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基(グリシジルエーテル基、グリシジルアミン基)が代表的であり、高反応性の脂環エポキシ基が好適に用いられる。具体的な材料としては、アクリルウレタン、エポキシ(メタ)アクリレート、エポキシ変性ポリブタジエン、エポキシ変性ポリエステル、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、アクリル変性ポリエステル等が挙げられる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が利用される。
活性エネルギー線が紫外線の場合、紫外線硬化時に添加される光増感剤あるいは光開始剤としては、ベンゾフェノン系、アントラキノン系、ベンゾイン系、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、オニウム塩、ハロニウム塩等の公知の材料を使用することができる。また、上記の材料の他に汎用の熱可塑性樹脂をブレンドしても良い。
【0064】
また、前記硬化性樹脂のうち、熱硬化性樹脂としては、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチル、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソブテン、カルボキシゴム、ネオプレン、ポリブタジエン等の樹脂と架橋剤としての硫黄、アニリンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、リグリン樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ホルマリン樹脂、金属酸化物、金属塩化物、オキシム、アルキルフェノール樹脂等の組み合わせで用いられるものがある。なおこれらには、架橋反応速度を増加する目的で、汎用の加硫促進剤等の添加剤を使用することもできる。
【0065】
熱硬化性樹脂として、硬化剤を利用するものとしては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、不飽和炭化水素基等の官能基を有する樹脂とエポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、チオール基等の官能基を有する硬化剤あるいは金属塩化物、イソシアネート、酸無水物、金属酸化物、過酸化物等の硬化剤との組み合わせで用いられるものがある。なお、硬化反応速度を増加する目的で、汎用の触媒等の添加剤を使用することもできる。具体的には、硬化性アクリル樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物等が例示される。
【0066】
さらに、熱硬化性樹脂又は活性エネルギー線で硬化する樹脂としては、アクリル酸又はメタクリル酸の付加物が好ましいものとして例示できる。
アクリル酸又はメタクリル酸の付加物としては、エポキシアクリレート(n=1.48〜1.60)、ウレタンアクリレート(n=1.5〜1.6)、ポリエーテルアクリレート(n=1.48〜1.49)、ポリエステルアクリレート(n=1.48〜1.54)なども使うこともできる。特に接着性の点から、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れており、エポキシアクリレートとしては、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。エポキシアクリレートなどのように分子内に水酸基を有するポリマは接着性向上に有効である。これらの共重合樹脂は必要に応じて、2種以上併用することができる。
【0067】
なお、熱硬化性樹脂又は活性エネルギー線で硬化する樹脂には、汎用の熱可塑性樹脂がブレンドされていてもよい。
また、粘着剤層には、可塑剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤などの添加剤が配合されていてもよい。
前記粘着剤層の厚さは、少なくとも、導体層を埋設させる厚さよりも厚いことが必要である。より確実に導体層を樹脂中に埋没させるためには、樹脂層の厚さは、導体層を埋設させる厚さの1.5倍以上であることがさらに好ましい。また、樹脂層の厚さは、100μm以下が好ましい。必要以上に厚くしてもコストが嵩むことになる。
【0068】
上記の基材への転写について、図面を用いて説明する。図8は導体層パターン付き基材の作製工程の一例を示す断面図、図9は別の導体層パターン付き基材の追加の作製工程の一例を示す断面図である。
めっき用導電性基材(図5(i)に例示したもの)にめっきにより金属15を析出させる(図8(a))。ただし、凹部11はストライプ状に紙面に対し垂直方向に形成されており、従って、絶縁層5及び絶縁層6もストライプ状に紙面に対し垂直方向に形成されている。そして、前記と同様にめっき用導電性基材の凹部11には、めっきにより金属が埋まるように析出させ、また、凹部11から溢れるようにして絶縁層14上にもめっきを形成させ、結果として、ストライプ状の金属15を形成させる。
【0069】
次いで、プラスチックフィルム等の支持基材17上に粘着剤層18が形成された粘着性を有する別の基材19をめっきが析出した状態のめっき用導電性基材に圧着させる(図8(b))。この後、別の基材19を剥離すると、めっきにより析出させた金属15が別の基材19の粘着剤層18の面に転写され、導体層パターン付基材20を得ることができる(図8(c))。
【0070】
さらに、図8(c)に示す導体層パターン付基材から、さらに、他の基材に導体層を転写して別の導体層パターン付き基材とすることができる。すなわち、図8(c)に示す導体層パターン付基材の導体層に、プラスチックフィルム等の支持基材21上に別の粘着剤層22が形成された粘着性を有する他の基材23を粘着剤層22の面を向けて圧着する(図9(d))。次いで、別の基材23を剥離すると、導体層(金属)15が他の基材23の粘着剤層22の面に転写され、別の導体層パターン付基材24を得ることができる(図9(e))。この導体層パターン付き基材24の平面図を図9(f)に示す。図9(e)は、図9(f)のB−B断面図である。この導体層パターン付き基材24は、露出している導体層15の表面が平らであり、表面全体がより滑らかであり、この点、図8(c)に示す導体層パターン付基材20よりすぐれている。もっとも、図8(c)又は図9(e)で示される導体層パターン付き基材において、導体層が最上の表面を露出させた状態で、全体が埋設されているように導体層の埋設の程度を調整することができる。この調整は、図8(c)又は図9(e)で示される導体層パターン付き基材をブレス機、圧着ロール等を利用して、必要に応じて加熱下に加圧することにより行うことができる。
【0071】
前記したいずれの導体層パターン付き基材においても、粘着剤層は、もはや粘着性を示さなくてもよい。そのためには、硬化性樹脂であれば、十分に硬化を進め、熱可塑性樹脂であれば、相対的に冷却して固化させるとよい。
【0072】
前記した図6(b)に示すようなパターン化金属箔の一例として、金属15の突起部の面積を大きくし、従って凹部の部分を狭くして溝としたものがある。このようなパターン化金属箔の一例を図10及び図11に示す。溝の形状は、例えば、図10に示すようなパターン、すなわちライン幅p、ラインピッチq、ラインの折り返し長さrで、ラインの両端に直径φで丸パッドが形成されている。他の例として、直径φの丸パッドが、詳細には図11に示すように、溝25に囲まれた中に円形状の突起部26がある。
以上のような金属箔は、その表面に溝が掘られているため、タンパク質が固定された基板等と貼り合せてマイクロ流体チップとして使用することができる。また、表面に疎水化、あるいは親水化処理を施し、マイクロリアクターとして化学合成や化学分析などに適用することもできる。さらに、形成されたマイクロ流路に冷媒を流すことで、集積回路素子やダイオード素子などのヒートシンクとしても適用できる。本特許に記載の製法を用いることにより、微細なラインパターンを大面積で容易に作製することが可能である。
【0073】
本発明で用いられるめっき用導電性基材として、回転体(ロール)を用いることができることは前記したが、さらに、この詳細を説明する。回転体(ロール)は金属製が好ましい。さらに、回転体としてはドラム式電解析出法に用いるドラム電極などを用いることが好ましい。ドラム電極の表面を形成する物質としては上述のようにステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料などのめっき付着性が比較的低い材料を用いることが好ましい。導電性基材として回転体を用いることにより連続的に作製して巻物として導体層パターン付き基材を得ることが可能となるため、この場合、生産性が飛躍的に大きくなる。
【0074】
回転体を用いて、電解めっきにより形成されたパターンを連続的に剥離しながら、構造体を巻物として得る工程を、図12を用いて説明する。図12は、導電性基材としてドラム電極を用いた場合に、ドラム電極を回転させつつ、金属を電界めっきにより連続的に析出させ、また、析出した金属を連続的に剥離する装置の概念を示す断面図(一部正面図)である。
【0075】
すなわち、電解浴100内の電解液101が陽極102とドラム電極などの回転体103の間のスペースに配管104とポンプ105により供給されるようになっている。陽極102と回転体103の間に電圧をかけ、回転体103を一定速度で回転させると、回転体103の表面に金属が電解析出し、電解液101の外で、回転体103表面の導電性の凹部に析出した金属106に、粘着層を形成した剥離用フィルム(転写用の基材)107の粘着層を圧着ロール108で圧着し、連続的に回転体103から金属106を剥離しつつ表面に粘着層が形成されている剥離用フィルム107にその金属106を転写し、金属106が転写された剥離フィルム(導体層パターン付き基材)109とする。これはロール(図示せず)に巻き取ることができる。なお、剥離用フィルム107及び圧着ロール108を使用せず、金属106を回転体103から剥離するようにしてもよい。
【0076】
なお、上記の回転体103の表面には、絶縁層が形成されており、これに対応しためっき部である凹部が存在する。また、回転中の回転体103から、凹部に析出した金属106が剥離させられた後で、電解液101に浸かる前に、回転体103表面をエッチング洗浄したり(図示せず)してもよい。なお、図示していないが陽極102の上端には高速で循環している電解液が上方へ噴出するのを防ぐために水切りロールを設置しても良く、水切りロールによってせき止められた電解液は陽極102の外部から下の電解液の浴槽へと戻り、ポンプにより循環される。また、図示しないがこの循環の間に消費された銅イオン源や添加剤等を必要に応じて追加する態様を加えることが好ましい。
【0077】
さらに、本発明で用いられる導電性基材として、フープ状の導電性基材を用いることができることは前記したが、さらに、この詳細を説明する。
フープ状の導電性基材に関しては、帯状の導電性基材の表面に絶縁層と凹部を形成した後、端部をつなぎ合わせるなどして作製できる。導電性基材の表面を形成する物質としては上述のようにステンレス鋼、クロムめっきされた鋳鉄、クロムめっきされた鋼、チタン、チタンをライニングした材料などのめっき付着性が比較的小さい材料を用いることが好ましい。フープ状の導電性基材を用いた場合には、黒化処理、防錆処理、転写等の工程を、1つの連続した工程で処理可能となるため、パターン化金属箔の生産性が高く、また、パターン化金属箔を連続的に作製して巻物として製品とすることができる。フープ状の導電性基材の厚さは適宜決定すればよいが、100〜1000μmであることが好ましい。
【0078】
また、本発明におけるパターン化金属箔は、上記のような回転ロールやフープを利用した連続的なめっき方法に限らず枚葉で作製することも可能である。枚葉で行った場合、めっき用導電性基材の作製時の取扱が容易であり、同一のめっき用導電性基材を繰り返し使用した後に一箇所だけ絶縁層が剥離した、といった場合でもドラム状やフープ状の基材であると特定部分だけの抜き取りあるいは交換は困難であるが、枚葉であれば不良が発生しためっき用導電性基材のみを抜き取りあるいは交換することが可能である。このように枚葉で作製することにより、めっき用導電性基材に不具合が発生したときの対応が容易である。枚葉状の導電性基材の厚みは適宜決定すればよいが、めっき槽内で液の攪拌等に左右されない十分な強度を持たせることを考慮すると厚みは20μm以上が好ましい。厚すぎると重量が増え取扱が困難であるため10cm以下の厚みであることが好ましい。
【0079】
本発明おける導体層パターン付き基材は、導体層のパターンを適宜調整することにより、電磁波シールド部材、フィルムアンテナ部材、タッチパネル部材、太陽電池用電極基材等として有用である。これらの用途において、好ましいパターンとしてメッシュ状パターンがある。
【実施例1】
【0080】
(レジストからなる凸状パターンの形成)
レジストフィルム(フォテックRY3315、10μm厚、日立化成工業株式会社製)を100mm角のステンレス基板(SUS304、鏡面仕上げ、厚み0.5mm、日新製鋼(株)製。以下、「基板」という)に貼り合わせた。貼り合わせの条件は、ロール温度105℃、圧力0.5MPa、ラインスピード1m/minで行った。次いで、図10に示すようなパターン、すなわち、ライン幅pが20μm、ラインピッチqが20mmで、ラインの折り返し長さrが80mmで、ラインの両端に直径φ1mmで丸パッド204が非露光部として形成されている90mm角のネガフィルムを、上記基板上のレジストフィルムの上に静置した。紫外線照射装置を用いて、600mmHg以下の真空下において、ネガフィルムを載置し、ネガフィルムの上から、紫外線を120mJ/cm2照射した。さらに。1%炭酸ナトリウム水溶液で現像することで、基板の上にライン幅19〜21μm、ラインピッチ20mm、ラインの折り返し長さ80mm、ラインの両端にφ1mmで丸パッドからなる溝が形成されているレジスト膜(厚み10μm)からなるパターン(レジスト膜の突起部からなる凸状パターン)を形成した。
【0081】
(絶縁層の形成)
PBII/D装置(TypeIII、株式会社栗田製作所製)によりDLC膜を形成する。すなわち、チャンバー内にパターン状のレジスト膜が付いたままの基板を入れ、チャンバー内を真空状態にした後、基板のレジスト膜が形成された面をアルゴンガスで表面のクリーニングを行った。次いで、チャンバー内にヘキサメチルジシロキサンを導入し、膜厚0.1μmとなるように中間層を成膜した。次いで、トルエン、メタン、アセチレンガスを導入し、膜厚が5〜6μmとなるように、中間層の上にDLC層を形成した。そのときレジスト膜により形成された突起部(本実施例の場合、ラインパターン以外のベタ部分が全て凸となる)側面のDLC膜の厚さは、4〜6μmであった。境界面の角度は基材の表面に対して45〜51度であった。なお、絶縁層の厚さ及び境界面の角度の測定は上記で得られた積層物(基材、レジスト膜及び絶縁層を含む)の一部を切り取って樹脂で注型し、倍率は3000倍で断面をSEM観察することにより実測した。測定点は5点で、レジスト膜の両側を測定したので計10点の最大値と最小値を採用した。
【0082】
(絶縁層の付着した凸状パターンの除去;凹部の形成)
上記で得られた積層物(基材、レジスト膜及び絶縁層を含む)を水酸化ナトリウム水溶液(10%、50℃)に浸漬し、時々揺動を加えながら8時間放置した。レジストからなる凸状パターンを形成するレジスト膜とそれに付着したDLC膜が剥離してきた。一部剥がれにくい部分があったため、その部分は布で軽くこすることにより完全に剥離した。これにより、基板上に絶縁層を有し、この絶縁層に凹部(凹部の底部は基材が露出している)が形成されている基材を得た。
DLCからなる凸部(絶縁層)は、レジストからなる凸部をちょうどネガポジ反転した形状になる。DLCからなる凸部(絶縁層)の形状(平面形状は図10に示すようなラインパターンに相当する)は、凸部山頂方向に向かって狭まっており、そのDLCからなる凸部側面の傾斜角は、前記境界面の角度と同じであった。すなわち、絶縁層に形成された凹部の側面は開口方向に向かって幅広に広がっていた。DLCからなる凸部(絶縁層)の高さは5〜6μmであった。また、DLCからなる凸部(絶縁層)の底部での幅(最大幅)は、19〜21μm、山頂部での幅は8〜11μmであった。
【0083】
(導電性無機材料膜の形成:めっき用導電性基材の作製)
装置内にガス導入管とスパッタリング用のターゲットの両方を有するコーティング装置(HAUZER社製、HTC1500)を用いて窒化クロム膜を形成した。詳しくは、上記で得た凹部を有する絶縁層を有する基材を真空チャンバー内に入れ、最初にArガスによるプラズマを励起し基板のクリーニングを行なった後、ターゲットとしてクロムを用い、反応性ガスとして窒素を流しながらクロムを厚みが2μmになるまでスパッタし、窒化クロムからなる導電層を最表面に形成し、めっき用導電性基材を得た。
【0084】
(めっき〜金属箔剥離:パターン化金属箔の作製)
ついで、上記で得られためっき用導電性基材を陰極として、また、含燐銅を陽極として電解銅めっき用の電解浴(硫酸銅(5水塩)210g/L、硫酸100g/L、Micro Fill(添加剤) A液0.5ml/L、B液5ml/L、25℃)中に浸し、両極に電圧をかけて電流密度を5A/dm2として、めっき用導電性基材の凹部に析出した金属の厚さがほぼ20μmになるまでめっきした。めっきがめっき用導電性基材の全表面に形成され、得られた銅めっきは銅箔として剥離した。得られた銅箔の溝部の幅は最大幅で19〜21μm、底部の幅は8〜11μmであった。
【0085】
(繰り返し使用)
次いで、上記のめっき用導電性基材を用いて、銅めっき−金属箔剥離の工程を上記と同様にして100回繰り返した結果、銅めっきの析出性及び剥離性に変化が無く、パターンの欠けも観測されなかった。また、100回使用後にめっき用導電性を切り取って導電性DLCの表面形状を電子顕微鏡で観察したが、形状に変化は見られなかった。
【実施例2】
【0086】
(レジストからなる凸状パターンの形成)
実施例1と同様にして基板上にレジスト膜からなるパターン(レジスト膜の突起部からなる凸状パターン)を形成した。
【0087】
(絶縁層の形成)
上記で得られたパターン状のレジスト膜が付いた基板の表面に、実施例1と同様にして絶縁層を形成した。
【0088】
(絶縁層の付着した凸状パターンの除去;凹部の形成)
上記で得られた積層物(基材、レジスト膜及び絶縁層を含む)から、実施例1と同様にして、絶縁層の付着した凸状パターンを除去し、基板上に絶縁層を有し、この絶縁層に凹部(凹部の底部は基材が露出している)が形成されている基材を得た。
【0089】
(導電性DLC膜の形成)
スパッタリング装置(株式会社神戸製鋼所製、UBMS504)を用いて導電性DLC膜を形成した。詳しくは、上記で得た凹部を有する絶縁層を有する基材を真空チャンバー内に入れ、最初にArガスによるプラズマを励起し基板のクリーニングを行なった。ターゲットとしてクロムを用いて中間層を0.2μm形成した。最初タングステンカーバイド(WC)とカーボンを同時に成膜して傾斜層を作った後、カーボンのみを成膜して水素フリーの導電性DLCを厚み1μmになるまで成膜し、導電性DLCが最表面に形成された基板を得た。
【0090】
(第2の凸状パターンの形成)
図10に記載されたように凸部として形成されたパターンの丸パッド部分の拡大図を図11に示す。図11の破線部分25が図10の丸パッド部分にあたる。その中の第二の丸パッド26(直径φ0.7mm)に対応する部分2カ所を非露光部(光線非透過部)とするパターンが形成されたマスク(ネガフィルム)を用意した。
上記で得た導電性DLCが最表面に形成された基板の上に、レジストフィルムを密着して積層し、その上に上記マスクを静置した。ついで、紫外線照射装置を用いて、600mmHg以下の真空下において、マスクの上から、紫外線を120mJ/cm2照射した。さらに。1%炭酸ナトリウム水溶液で現像することで、第二の丸パッド26にあたる箇所が穴になるようにレジスト膜を形成した。
【0091】
(第二の絶縁層の形成)
上記で得られた第2の凸状パターン状が付いた基板の表面に、実施例1と同様にして第二の絶縁層を形成した。第二の絶縁層を膜厚5〜6μmになるように形成した。第二の絶縁層の側面の角度は上方に基材の表面に対して45〜51度で、第二の絶縁層の直径は、上方に向かって小さくなっていた。
【0092】
(第二の絶縁層の付着した第2の凸状パターンの除去)
第二の絶縁層の付着した第2の凸状パターンを前記した絶縁層の付着した凸状パターンの除去の手法と同様にして除去し、めっき用導電基材を得た。
【0093】
(めっき〜金属箔剥離)
ついで、上記で得られためっき用導電性基材を陰極として、また、含燐銅を陽極として電解銅めっき用の電解浴(硫酸銅(5水塩)210g/L、硫酸100g/L、Micro Fill(添加剤) A液0.5ml/L、B液5ml/L、25℃)中に浸し、両極に電圧をかけて電流密度を5A/dm2として、めっき用導電性基材の凹部に析出した金属の厚さがほぼ25μmになるまでめっきした。第二の丸パッド26の部分は第二の絶縁層があるためめっきが析出せず、それ以外の全面にめっきが析出した。めっきされた銅は銅箔として剥離した。得られた銅箔の溝部の幅は最大幅で19〜21μm、底部の幅は8〜11μmであった。また、第二の丸パッドに対応する部分はφ0.65mmの貫通孔が形成されていた。
【0094】
(繰返し使用)
次いで、上記のめっき用導電性基材を用いて、銅めっき−剥離の工程を上記と同様にし
て300回繰り返した結果、銅めっきの析出性及び剥離性に変化が無く、絶縁層の剥離箇
所も観測されなかった。また、300回使用後にめっき用導電性を切り取って導電性DL
Cの表面形状を電子顕微鏡で観察したが、形状に変化は見られなかった。
【符号の説明】
【0095】
1:めっき用導電性基材
2:基材
3:凸部
4:凹部
5:絶縁層(第一の絶縁層)
6:導電層
7:第二の絶縁層
8:感光性レジスト層(感光性樹脂層)
9:レジストにより形成される突起部
10:凹部(絶縁層による)
11:凹部
12:感光性レジスト層(感光性樹脂層)
13:レジストにより形成される突起部
14:第二の絶縁層
15:めっき(金属)
16:貫通孔
17:支持基材
18:粘着剤層
19:別の基材
20:導体層パターン付基材
21:支持基材
22:粘着剤層
23:他の基材
24:導体層パターン付基材
25:丸パッド
26:第二の丸パッド
100:電解浴
101:電解液
102:陽極
103:回転体
104:配管
105:ポンプ
106:金属
107:フィルム
108:圧着ロール
109:導体層パターン付き基材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)表面に開口方向に向かって幅広な凹部が形成されており、表面が導電性であるめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程、
(B)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程
を含むことを特徴とする、少なくとも片面にパターンが施された金属箔の製造方法。
【請求項2】
(A)表面に開口方向に向かって幅広な導電性の表面を有する凹部と少なくともその凹部を除いた表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層の開口部が開口方向に向かって幅広になっているめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程
(B)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程
を含むことを特徴とする、パターンが施された金属箔の製造方法
【請求項3】
(A)表面に開口方向に向かって幅広な導電性の表面を有する凹部と少なくともその凹部を除いた表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層の開口部が開口方向に向かって幅広になっているめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程
(B)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を別の基材に転写する工程
を含むことを特徴とする導体層パターン付基材の製造方法。
【請求項4】
基材の上に開口方向に向かって幅広な凹部を有する絶縁層が形成されており、さらにその上に導電層を形成してなるめっき用導電性基材。
【請求項5】
基材が導電性である請求項4記載のめっき用導電性基材。
【請求項6】
基材の上に開口方向に向かって幅広な凹部を有する第一の絶縁層が形成されており、その上に導電層が形成されており、さらにその上に第一の絶縁層に形成されている凹部を含むように開口方向に向かって幅広な開口を有する第二の絶縁層が形成されているめっき用導電性基材。
【請求項7】
基材が導電性である請求項6記載のめっき用導電性基材。
【請求項8】
めっき用導電性基材の絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)又は無機材料からなる請求項4〜7のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項9】
めっき用導電性基材の絶縁層がDLC、Al2O3又はSiO2である請求項8記載のめっき用導電性基材。
【請求項10】
めっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは導電性無機膜からなることを特徴とする請求項4〜9のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項11】
めっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは窒化クロムからなることを特徴とする請求項10記載のめっき用導電性基材。
【請求項12】
めっき用導電性基材において、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上90度未満である請求項4〜11に記載のめっき用導電性基材。
【請求項13】
めっき用導電性基材において、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下である請求項4〜11のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項14】
めっき用導電性基材において、絶縁層の厚さが、0.1〜100μmである請求項4〜13のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項15】
めっき用導電性基材において、導電層の厚さが、0.1〜100μmである請求項4〜14のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項16】
導電性のロール(ドラム)またはロールに巻き付けるものである請求項4〜15のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項17】
(A)基材の表面に、除去可能な凸部のパターンを形成する工程、
(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている基材の表面に、DLC又は無機材料からなる絶縁層を形成する工程、
(C)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程、
及び
(D)得られた絶縁層付基材の表面に、導電性DLCまたは導電性無機膜を形成する工程を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造方法
【請求項18】
(A)基材の表面に、除去可能な凸部のパターンを形成する工程、
(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている基材の表面に、DLC又は無機材料からなる第一の絶縁層を形成する工程、
(C)第一の絶縁層が付着している凸状のパターンを除去し、絶縁層に開口方向に向かって幅広な凹部を形成する工程、
(D)得られた第一の絶縁層付基材の表面に、導電性DLCまたは導電性無機膜を形成する工程、
(E)導電性DLCまたは導電性無機膜が形成された第一の絶縁層付基材の表面に、少なくとも上記で形成された第一の絶縁層の凹部上に除去可能な凸部のパターンを形成する工程
(F)除去可能な凸状のパターンが形成されている、導電性DLCまたは導電性無機膜が形成された第一の絶縁層付基材の表面の表面に、DLC又は無機材料からなる第二の絶縁層を形成する工程、
及び、
(G)第二の絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程
を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造方法。
【請求項19】
除去可能な凸状のパターンが、感光性レジストを用いるフォトリソグラフ法により形成されたものである請求項17または18記載のめっき用導電性基材の製造方法。
【請求項20】
めっき用導電性基材の絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)又は無機材料からなる請求項17〜19のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造方法。
【請求項21】
めっき用導電性基材の絶縁層がDLC、Al2O3又はSiO2である請求項20記載のめっき用導電性基材の製造方法。
【請求項22】
めっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは導電性無機膜からなることを特徴とする請求項17〜21のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造方法。
【請求項23】
めっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは窒化クロムからなることを特徴とする請求項22記載のめっき用導電性基材。
【請求項24】
めっき用導電性基材において、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上90度未満である請求項17〜23に記載のめっき用導電性基材。
【請求項25】
めっき用導電性基材において、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下である請求項17〜24のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項26】
めっき用導電性基材において、絶縁層の厚さが、0.1〜100μmである請求項17〜25のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項27】
めっき用導電性基材において、導電層の厚さが、0.1〜100μmである請求項17〜26のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項1】
(A)表面に開口方向に向かって幅広な凹部が形成されており、表面が導電性であるめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程、
(B)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程
を含むことを特徴とする、少なくとも片面にパターンが施された金属箔の製造方法。
【請求項2】
(A)表面に開口方向に向かって幅広な導電性の表面を有する凹部と少なくともその凹部を除いた表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層の開口部が開口方向に向かって幅広になっているめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程
(B)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を剥離する工程
を含むことを特徴とする、パターンが施された金属箔の製造方法
【請求項3】
(A)表面に開口方向に向かって幅広な導電性の表面を有する凹部と少なくともその凹部を除いた表面に絶縁層が形成されており、その絶縁層の開口部が開口方向に向かって幅広になっているめっき用導電性基材の表面にめっきにより金属を析出させる工程
(B)上記めっき用導電性基材の表面に析出させた金属を別の基材に転写する工程
を含むことを特徴とする導体層パターン付基材の製造方法。
【請求項4】
基材の上に開口方向に向かって幅広な凹部を有する絶縁層が形成されており、さらにその上に導電層を形成してなるめっき用導電性基材。
【請求項5】
基材が導電性である請求項4記載のめっき用導電性基材。
【請求項6】
基材の上に開口方向に向かって幅広な凹部を有する第一の絶縁層が形成されており、その上に導電層が形成されており、さらにその上に第一の絶縁層に形成されている凹部を含むように開口方向に向かって幅広な開口を有する第二の絶縁層が形成されているめっき用導電性基材。
【請求項7】
基材が導電性である請求項6記載のめっき用導電性基材。
【請求項8】
めっき用導電性基材の絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)又は無機材料からなる請求項4〜7のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項9】
めっき用導電性基材の絶縁層がDLC、Al2O3又はSiO2である請求項8記載のめっき用導電性基材。
【請求項10】
めっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは導電性無機膜からなることを特徴とする請求項4〜9のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項11】
めっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは窒化クロムからなることを特徴とする請求項10記載のめっき用導電性基材。
【請求項12】
めっき用導電性基材において、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上90度未満である請求項4〜11に記載のめっき用導電性基材。
【請求項13】
めっき用導電性基材において、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下である請求項4〜11のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項14】
めっき用導電性基材において、絶縁層の厚さが、0.1〜100μmである請求項4〜13のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項15】
めっき用導電性基材において、導電層の厚さが、0.1〜100μmである請求項4〜14のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項16】
導電性のロール(ドラム)またはロールに巻き付けるものである請求項4〜15のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項17】
(A)基材の表面に、除去可能な凸部のパターンを形成する工程、
(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている基材の表面に、DLC又は無機材料からなる絶縁層を形成する工程、
(C)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程、
及び
(D)得られた絶縁層付基材の表面に、導電性DLCまたは導電性無機膜を形成する工程を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造方法
【請求項18】
(A)基材の表面に、除去可能な凸部のパターンを形成する工程、
(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている基材の表面に、DLC又は無機材料からなる第一の絶縁層を形成する工程、
(C)第一の絶縁層が付着している凸状のパターンを除去し、絶縁層に開口方向に向かって幅広な凹部を形成する工程、
(D)得られた第一の絶縁層付基材の表面に、導電性DLCまたは導電性無機膜を形成する工程、
(E)導電性DLCまたは導電性無機膜が形成された第一の絶縁層付基材の表面に、少なくとも上記で形成された第一の絶縁層の凹部上に除去可能な凸部のパターンを形成する工程
(F)除去可能な凸状のパターンが形成されている、導電性DLCまたは導電性無機膜が形成された第一の絶縁層付基材の表面の表面に、DLC又は無機材料からなる第二の絶縁層を形成する工程、
及び、
(G)第二の絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程
を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造方法。
【請求項19】
除去可能な凸状のパターンが、感光性レジストを用いるフォトリソグラフ法により形成されたものである請求項17または18記載のめっき用導電性基材の製造方法。
【請求項20】
めっき用導電性基材の絶縁層が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)又は無機材料からなる請求項17〜19のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造方法。
【請求項21】
めっき用導電性基材の絶縁層がDLC、Al2O3又はSiO2である請求項20記載のめっき用導電性基材の製造方法。
【請求項22】
めっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは導電性無機膜からなることを特徴とする請求項17〜21のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造方法。
【請求項23】
めっき用導電性基材の導電層が導電性DLCまたは窒化クロムからなることを特徴とする請求項22記載のめっき用導電性基材。
【請求項24】
めっき用導電性基材において、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上90度未満である請求項17〜23に記載のめっき用導電性基材。
【請求項25】
めっき用導電性基材において、凹部側面の角度が絶縁層側で30度以上60度以下である請求項17〜24のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項26】
めっき用導電性基材において、絶縁層の厚さが、0.1〜100μmである請求項17〜25のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【請求項27】
めっき用導電性基材において、導電層の厚さが、0.1〜100μmである請求項17〜26のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−32522(P2011−32522A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179083(P2009−179083)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
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