説明

パターン形成方法及び液滴吐出装置

【課題】液状体の粘度を低下させるとともに、その液状体の吐出動作の安定性を向上させたパターン形成方法及び液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】吐出ヘッド21の近傍に、キャビティ25(ノズルN)に貯留された紫外線硬化性インクFを加熱可能にするレーザ光Iを照射するレーザヘッド31を設けた。そして、キャビティ25内の紫外線硬化性インクFを液滴として吐出させる前に、同キャビティ25の紫外線硬化性インクFに対してレーザ光Iの照射を開始させるようにした。また、液滴を吐出させた後に、同紫外線硬化性インクFに対するレーザ光Iの照射を終了させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法及び液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液滴からなるパターンを形成するようにしたパターン形成方法には、各種基板や記録紙等の対象物に向かって、紫外線硬化性インクや液晶等の液状体を液滴として吐出させるインクジェット法が知られている。
【0003】
インクジェット法は、一般的に、吐出口に形成される液状体の界面(メニスカス)を振動させて、そのメニスカスの一部から、液滴を吐出させるようにしている。そのため、例えば、液状体の粘度が20cPよりも高くなると、メニスカスを振動させることが困難となって、液滴サイズやその着弾位置等にバラツキを来たし、液滴の吐出不良を招く問題があった。
【0004】
そこで、上記するインクジェット法では、従来より、高い粘度の液状体に対して、その吐出動作を安定させる提案がなされている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、吐出口を有した液滴吐出ヘッドや、液滴吐出ヘッドに液状体を供給する供給ライン等にヒータを設けて、そのヒータの加熱によって、液状体の粘度を低下させている。これによって、メニスカスを円滑に振動させるとともに、高い粘度の液状体の吐出動作を安定させるようにしている。
【特許文献1】特開2003−19790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記するインクジェット法では、加熱した液状体を吐出口に供給させるために、以下の問題を招いていた。
すなわち、加熱された液状体は、その待機時間が長くなると、吐出口の近傍から、その構成成分(例えば、溶媒あるいは分散媒)を蒸発させるようになる。その結果、上記するインクジェット法では、吐出口の近傍で液状体の増粘を招き、再びメニスカスの振動不良や吐出口の目詰まり等、各種液滴の吐出不良を来たす問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、液状体の粘度を低下させるとともに、その液状体の吐出動作の安定性を向上させたパターン形成方法及び液滴吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパターン形成方法は、貯留室の液状体を液滴として対象物に吐出し、前記液滴からなるパターンを前記対象物に形成するようにしたパターン形成方法において、前記液滴を吐出する前に、前記貯留室にレーザ光を照射して前記液状体を加熱し、前記液滴を吐出した後に、前記貯留室に対する前記レーザ光の照射を停止するようにした。
【0008】
本発明のパターン形成方法によれば、液滴の吐出動作の間だけ、液状体を加熱させることができ、その液状体の粘度を低下させることができる。従って、加熱に起因した液状体の増粘を回避させることができ、液状体の吐出動作の安定性を向上させることができる。
【0009】
このパターン形成方法において、前記液滴を吐出する前に、前記貯留室の液状体にレーザ光を照射して前記液状体を加熱するようにしてもよい。
このパターン形成方法によれば、照射するレーザ光によって、貯留室の液状体を直接加熱させることができる。従って、レーザ光の照射によって、より短時間に液状体を加熱させることができ、レーザ光の照射停止によって、より短時間に液状体の加熱状態を解除させることができる。その結果、加熱に起因した液状体の増粘を、より確実に回避させることができる。
【0010】
本発明の液滴吐出装置は、液状体を液滴として吐出する液滴吐出装置において、前記液滴を吐出する吐出口を有した前記液状体を貯留する貯留室と、前記貯留室の液状体を流動させて前記液滴を吐出させる吐出手段と、前記液状体を加熱可能なレーザ光を前記貯留室に照射する照射手段と、前記吐出手段が前記液滴を吐出させる前に、前記照射手段を駆動制御して前記貯留室にレーザ光を照射させるとともに、前記吐出手段が前記液滴を吐出した後に、前記照射手段を駆動制御して前記貯留室に対する前記レーザ光の照射を停止させる照射制御手段と、を備えた。
【0011】
本発明の液滴吐出装置によれば、液滴の吐出動作の間だけ、液状体を加熱して低粘度化させることができる。従って、加熱に起因する液状体の増粘を回避させることができ、液状体の吐出動作の安定性を向上させることができる。
【0012】
この液滴吐出装置において、前記照射手段は、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光源からのレーザ光を変調して、前記液状体を加熱可能なレーザ光を前記貯留室に照射する光変調素子と、を備え、前記照射制御手段は、前記光変調素子を駆動制御して前記貯留室に前記光変調素子からのレーザ光を照射させるようにしてもよい。
【0013】
この液滴吐出装置によれば、光変調素子によるレーザ光の変調によって、貯留室に対するレーザ光の照射及び非照射を制御させることができる。従って、貯留室に対するレーザ光の照射制御性を向上させることができる。
【0014】
この液滴吐出装置において、前記光変調素子は、前記レーザ光源からのレーザ光を偏向するミラー素子であってもよい。
この液滴吐出装置によれば、ミラー素子によるレーザ光の偏向によって、貯留室に対するレーザ光の照射及び非照射を制御させることができる。従って、より簡便な構成で、レーザ光の照射及び非照射を制御させることができる。
【0015】
この液滴吐出装置において、前記照射手段は、前記ミラー素子からのレーザ光を前記貯留室に照射する透過部と、前記ミラー素子からのレーザ光を前記貯留室に対して遮光する遮光部と、を備え、前記照射制御手段は、前記吐出手段が前記液滴を吐出させる前に、前記光変調素子からのレーザ光を前記貯留室の前記透過部に導き、前記液滴を吐出させた後に、前記光変調素子からのレーザ光を前記遮光部に導くようにしてもよい。
【0016】
この液滴吐出装置によれば、液滴を吐出させないときに、ミラー素子からのレーザ光を、貯留室に対して遮光させることができる。従って、貯留室の液状体に対する加熱を、より確実に、停止させることができる。
【0017】
この液滴吐出装置において、複数の前記貯留室と、前記貯留室に対応する複数の前記吐出手段と、選択した前記吐出手段を駆動制御して、前記選択した吐出手段に対応する前記貯留室の吐出口から前記液滴を吐出させる吐出制御手段と、を備え、前記照射制御手段は、前記選択した吐出手段に対応する前記貯留室にレーザ光を照射させるようにしてもよい。
【0018】
この液滴吐出装置によれば、複数の貯留室の中から、液滴を吐出する貯留室にのみ、レ
ーザ光を照射させることができる。従って、所望する貯留室にのみ、より確実に、レーザ光を照射させることができる。
【0019】
この液滴吐出装置において、前記吐出制御手段は、前記液滴を吐出させる前記吐出口を規定する吐出制御情報に基づいて前記吐出手段を駆動制御し、前記照射制御手段は、前記吐出制御情報に基づいて前記照射手段を駆動制御するようにしてもよい。
【0020】
この液滴吐出装置によれば、各吐出手段と各照射手段を、共通する吐出制御情報に基づいて駆動制御させることができる。従って、液滴を吐出する貯留室の紫外線硬化インクに対して、より確実に、レーザ光を照射させることができる。
【0021】
この液滴吐出装置において、前記照射制御手段は、前記吐出手段が前記液滴を吐出させる前に、前記照射手段を駆動制御して前記貯留室の液状体に前記レーザ光を照射させるようにしてもよい。
【0022】
この液滴吐出装置によれば、照射するレーザ光によって、貯留室の液状体を直接加熱させることができる。従って、レーザ光の照射によって、より短時間に液状体を加熱させることができ、レーザ光の照射停止によって、より短時間に液状体の加熱状態を解除させることができる。その結果、加熱に起因した液状体の増粘を、より確実に回避させることができる。
【0023】
この液滴吐出装置において、前記照射制御手段は、前記吐出手段が前記液滴を吐出させる前に、前記照射手段を駆動制御して、前記吐出口の近傍に位置する液状体に前記レーザ光を照射させるようにしてもよい。
【0024】
この液滴吐出装置によれば、吐出口の近傍に位置する液状体を低粘度化させることができる。従って、液状体の吐出動作を、より確実に安定化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図6に従って説明する。
図1において、液滴吐出装置10には、直方体形状に形成された基台11が備えられるとともに、その基台11の上面には、その長手方向(X矢印方向)に沿って延びる一対の案内溝12が形成されている。その基台11の上方には、基台11に設けられたX軸モータMX(図6の左上参照)の出力軸に駆動連結されるステージ13が、前記案内溝12に沿ってX矢印方向及び反X矢印方向に往復動する(X矢印方向に沿って走査される)ようになっている。そのステージ13の上側には、対象物としてのガラス基板(以下単に、基板という。)Sbを載置可能にする載置面14が形成されるとともに、載置された基板Sbを位置決め固定するようになっている。
【0026】
尚、本実施形態では、基板Sb上の位置であって、紫外線硬化性インクF(図3及び図4参照)からなるパターンを形成させるために予め設定された位置を、目標吐出位置P(図4の下側参照)という。
【0027】
基台11のY矢印方向両側には、門型に形成されたガイド部材15が配設されるとともに、そのガイド部材15には、Y矢印方向に延びる上下一対のガイドレール16が形成されている。また、ガイド部材15には、ガイド部材15に設けられたY軸モータMY(図6の左下参照)の出力軸に駆動連結されるキャリッジ17が、前記ガイドレール16に沿って、Y矢印方向及び反Y矢印方向に往復動する(Y矢印方向に沿って走査される)ようになっている。
【0028】
キャリッジ17の内部には、紫外線硬化性インクF(図3参照)を導出可能に収容するインクタンク18が配設されるとともに、そのキャリッジ17の下側に搭載されるヘッドユニット20に対して、インクタンク18の収容する紫外線硬化性インクFを導出させるようになっている。
【0029】
図2は、キャリッジ17を下方(ステージ13側)から見た斜視図であって、図3〜図5は、それぞれキャリッジ17をX矢印方向側から見た概略側面図である。
図2において、ヘッドユニット20には、その反Y矢印方向側に、直方体形状に形成された液滴吐出ヘッド(以下単に、吐出ヘッドという。)21が備えられている。吐出ヘッド21は、透過部を構成する透過プレート22、キャビティプレート23及び支持プレート24を接合させた積層構造を有する、いわゆる静電駆動式の吐出ヘッドである。
【0030】
透過プレート22は、無色透明のガラス基板であって、レーザ光I(図3参照)を透過するようになっている。
キャビティプレート23は、透過プレート22に接合されたシリコン基板であって、所定の共通電圧が供給されるようになっている。キャビティプレート23の反Z矢印方向(ステージ13側:図2において上側)の側面には、キャビティプレート23と透過プレート22の接合によって形成される吐出口としての複数のノズルNが、X矢印方向に沿って一列に配列形成されている。
【0031】
本実施形態では、基板Sb上の位置であって、前記各ノズルNと相対向する位置を、着弾位置PF(図3の下側参照)という。
図3において、前記各ノズルNは、それぞれZ矢印方向に沿って延びるように形成されるとともに、そのZ矢印方向(上側)には、それぞれキャビティプレート23と透過プレート22の接合によってキャビティ25が形成されている。キャビティ25は、対応するノズルNの上側を反Y矢印方向に拡開して形成された空間であるとともに、その反Y矢印方向側の側面には、反Y矢印方向に撓曲(振動)可能な薄肉の可動電極25aを有している。本実施形態では、ノズルNと、同ノズルNに連結されたキャビティ25によって、貯留室が構成されている。
【0032】
各キャビティ25の上側には、それぞれキャビティプレート23と透過プレート22の接合によって形成される連通路26が連通されるとともに、各連通路26の上側には、前記インクタンク18からの紫外線硬化性インクFを各連通路26に供給可能にする共通の供給路27が形成されている。
【0033】
そして、インクタンク18からの紫外線硬化性インクFが供給路27に導出されると、供給路27に導出された紫外線硬化性インクFは、各連通路26を介して、各キャビティ25(各ノズルN)内に貯留されるとともに、各ノズルN内の所定の高さ位置に、紫外線硬化性インクFの界面(メニスカスM)を形成するようになっている。
【0034】
支持プレート24は、キャビティプレート23に接合された無色透明のガラス基板であって、そのキャビティプレート23側の側面には、各キャビティ25に対応する複数の対向電極24aと、前記各対向電極24aに共通する絶縁層24bが積層されている。
【0035】
各対向電極24aは、それぞれITO等からなる透明導電膜で形成されるとともに、対応する可動電極25aと対峙するように、Z矢印方向に沿って形成されている。絶縁層24bは、シリコン酸化膜等からなる絶縁膜で形成されるとともに、各対向電極24aのキャビティプレート23側の略全体を覆って、前記各可動電極25aと相対向する領域のみを開放させるように形成されている。この絶縁層24bが形成されることによって、各対向電極24aと、対応する可動電極25aとの間に、それぞれ可動電極25aを撓曲可能
にする狭い密閉空間(振動空間V)が形成されるようになっている。
【0036】
尚、本実施形態では、各対向電極24aと、対応する可動電極25aによって、複数の吐出手段が構成されている。
そして、対向電極24aに所定の駆動信号(可動電極駆動電圧COM1:図6参照)を供給すると、対向電極24aと、対応する可動電極25aとの間に、共通電圧と可動電極駆動電圧COM1の電位差に応じた静電気力が誘起されて、対応する可動電極25aが、対峙する対向電極24a側に吸引されて撓む。すると、可動電極25aに対応するキャビティ25が、可動電極25aの撓んだ分だけ、その容積を増大させるとともに、増大した容積に対応する容量の紫外線硬化性インクFを、同キャビティ25内に流入させる。
【0037】
この状態から、共通電圧と可動電極駆動電圧COM1の電位差に応じて静電気力を解除させると、撓んだ可動電極25aが、その弾性復帰力によって、透過プレート22側に急峻に変位(復帰)する。すると、可動電極25aに対応するキャビティ25が、可動電極25aの変位した分だけ、その容積を急峻に縮小させるとともに、その貯留する紫外線硬化性インクFの圧力振動を誘起させて、対応するメニスカスMを上下方向に振動させる。上下方向に振動するメニスカスMは、その振動過程において、紫外線硬化性インクFの一部を、対応するノズルNから液滴Fb(図5参照)として吐出させるとともに、液滴Fbを吐出させることによって、その高さ位置や形状を、振動前の状態に復帰させる。
【0038】
尚、本実施形態では、可動電極駆動電圧COM1の供給時から、対応するメニスカスMが液滴Fbを吐出するまでの間の期間を、「吐出動作期間」という。また、本実施形態では、前記「吐出動作期間」の間に走査されるキャリッジ17(吐出ヘッド21)の移動距離を、吐出動作距離Lw(図4の下側参照)という。さらに、本実施形態では、目標吐出位置Pの反走査方向(図4におけるY矢印方向)に前記吐出動作距離Lwだけ変位した位置を、照射開始位置PT(図4の下側参照)という。
【0039】
そして、図4に示すように、ノズルN(着弾位置PF)が照射開始位置PTに相対するタイミングで、対向電極24aに可動電極駆動電圧COM1を供給して、前記「吐出動作期間」だけ経過する。すると、図5に示すように、キャリッジ17の走査によって、ノズルN(着弾位置PF)が目標吐出位置Pに相対するとともに、ノズルNから吐出された液滴Fbが、対応する着弾位置PF、すなわち目標吐出位置Pに着弾するようになっている。
【0040】
図2において、透過プレート22のY矢印方向側(キャビティプレート23の反対側)には、遮光部としての遮光プレート29が配設されている。遮光プレート29は、レーザ光Iを吸収する光収性材料によって形成されるとともに、透過プレート22のY矢印方向側の側面略全体を覆って、透過プレート22の側面略全体を、レーザ光Iから遮光させるようになっている。その遮光プレート29には、各キャビティ25(ノズルN)と相対向する位置に、それぞれ透過プレート22までを貫通して透過部を構成する複数の照射孔29hが形成されている。そして、各ノズルN内の紫外線硬化性インクFは、それぞれ照射孔29hの領域からのレーザ光Iの照射のみを許容するようになっている。
【0041】
遮光プレート29のY矢印方向(透過プレート22の反対側)には、ヒートシンク30が配設されている。ヒートシンク30は、遮光プレート29に密着された銅板等の放冷板を有して、遮光プレート29に蓄積される熱量を放熱させるようになっている。そして、ヒートシンク30は、遮光プレート29及び透過プレート22を介して、キャビティ25や連通路26内の紫外線硬化性インクFの温度上昇を抑制させるようになっている。
【0042】
図2において、ヘッドユニット20には、その吐出ヘッド21のY矢印方向側に、直方
体形状に形成されて照射手段としてのレーザヘッド31が備えられている。レーザヘッド31には、箱体状に形成されたケース32が備えられるとともに、そのケース32の吐出ヘッド21側の側面には、前記複数の照射孔29hと相対向する出射口33が貫通形成されている。
【0043】
図3において、ケース32の内部には、レーザ光源としての半導体レーザLDが配設されている。半導体レーザLDは、所定の駆動信号(レーザ駆動電圧COM2:図6の右下参照)を受けて、所定の波長領域のレーザ光Iを出射するようになっている。詳述すると、レーザ光Iの波長は、前記紫外線硬化性インクF(金属微粒子、溶媒あるいは分散媒)の吸収波長に対応した紫外領域以外の波長であって、紫外線硬化性インクFを加熱する領域(例えば、赤外領域)に設定されている。すなわち、レーザ光Iは、紫外線硬化性インクFの構成成分に吸収されることによって、同紫外線硬化性インクFの粘度を低下させるように設定されている。
【0044】
半導体レーザLDのY矢印方向下側(出射方向)には、半導体レーザLDからのレーザ光Iを平行光束にするコリメータや、コリメータからのレーザ光IをX矢印方向(図3において紙面に垂直方向)に延びる帯状のレーザ光Iに成形するシリンドリカルレンズ等からなる光学系34が備えられている。
【0045】
光学系34のY矢印方向下側(出射方向)には、偏向器35が配設されるとともに、その偏向器35には、各ノズルNに対応する光変調素子としての複数のミラー素子35Mが、ノズルNの配列方向に沿って一列に配列されている。各ミラー素子35Mは、所定の駆動制御信号(ミラー制御信号SI:図6の右下参照)に基づいて、それぞれX矢印方向に沿う回動軸を中心にして回動するデジタルミラーデバイスである。
【0046】
そして、偏向器35にミラー制御信号SIを供給すると、各ミラー素子35Mは、それぞれ光学系34からのレーザ光Iの進行方向をミラー制御信号SIに対応させて偏向させるようになっている。
【0047】
詳述すると、図3に示すように、各ミラー素子35Mは、それぞれ光学系34からのレーザ光Iを紫外線硬化性インクFに照射させないための信号を受けて、図3に示す位置(「非照射位置」)に配置されるようになっている。「非照射位置」のミラー素子35Mは、光学系34からのレーザ光Iを受けて、そのレーザ光Iを、略反Y矢印方向に反射させるとともに、反射させたレーザ光Iを、対応する照射孔29hから離間した遮光プレート29の領域に導くようになっている。
【0048】
そして、ミラー素子35Mを「非照射位置」に配置して、ミラー素子35Mからのレーザ光Iを遮光プレート29に照射すると、ミラー素子35Mからのレーザ光Iは、遮光プレート29に吸収されて減衰する。遮光プレート29に吸収されたレーザ光Iは、遮光プレート29の熱量に変換されて、ヒートシンク30によって放熱される。すなわち、「非照射位置」のミラー素子35Mに向けて出射されたレーザ光Iは、紫外線硬化性インクFに照射させることなく減衰する。
【0049】
尚、本実施形態の偏向器35は、前記ミラー制御信号SIを受けるまで、全てのミラー素子35Mを、「非照射位置」に配置維持させるようになっている。
一方、図4に示すように、各ミラー素子35Mは、それぞれ光学系34からのレーザ光Iを紫外線硬化性インクFに照射させるための信号を受けて、図4の2点鎖線位置(前記「非照射位置」)から、図4の実線位置(「照射位置」)に配置移動されるようになっている。「照射位置」のミラー素子35Mは、光学系34からのレーザ光Iを受けて、そのレーザ光Iを、反Y矢印方向下側に反射させるとともに、反射させたレーザ光Iの進行方
向を、対応する照射孔29hに向けて偏向させるようになっている。しかも、「照射位置」のミラー素子35Mは、照射孔29h及び透過プレート22を介して、反射したレーザ光Iを、対応するキャビティ25とノズルN内の紫外線硬化性インクFの領域に集光させるようになっている。
【0050】
そして、図4に示すように、ノズルN(着弾位置PF)が照射開始位置PTに相対するタイミングで、ミラー素子35Mを、「非照射位置」から「照射位置」に配置移動させる。すると、「照射位置」のミラー素子35Mは、光学系34からのレーザ光Iを、対応するキャビティ25(ノズルN)内の紫外線硬化性インクFに照射させるとともに、そのレーザ光Iを、対応するキャビティ25(ノズルN)内の紫外線硬化性インクFに吸収させて、同紫外線硬化性インクFの領域を加熱する。すなわち、対応するキャビティ25(ノズルN)内の紫外線硬化性インクFの粘度を低下させる。
【0051】
続いて、図5に示すように、ミラー素子35Mの配置移動の開始時から前記「吐出動作期間」だけ経過するタイミングで、ミラー素子35Mを、「照射位置」から「非照射位置」に再び配置移動させる。すると、「非照射位置」のミラー素子35Mは、光学系34からのレーザ光Iを、対応する照射孔29hから遮光プレート29の領域に偏向させて、紫外線硬化性インクFへのレーザ光Iの照射を終了させる。そして、レーザ光Iの照射によって加熱された紫外線硬化性インクFは、透過プレート22及び遮光プレート29を介して、ヒートシンク30に冷却されて、その温度を、所定の温度(例えば、室温)に安定させる。
【0052】
すなわち、キャビティ25(ノズルN)内の紫外線硬化性インクFは、レーザ光Iの照射される「吐出動作期間」の間だけ、急峻に加熱されて低粘度化されるようになっている。
【0053】
この際、「吐出動作期間」の可動電極25aの圧力振動によって振動するメニスカスMは、紫外線硬化性インクFが低粘度化される分だけ円滑に振動し、液滴Fbの吐出動作を安定化させる。そのため、吐出される液滴Fbは、その吐出動作を安定化させた分だけ、その飛行曲がりや位置ズレ等を来たすことなく、対応する目標吐出位置Pに着弾する。
【0054】
そして、目標吐出位置Pに着弾した液滴Fbを有する基板Sbを公知の紫外線照射装置に搬送して、液滴Fbの領域に紫外線を照射させると、基板Sb上の目標吐出位置Pに、紫外線硬化性インクFを硬化させた半球面状のパターン(例えば、マイクロレンズ)を形成させることができる。
【0055】
次に、上記のように構成した液滴吐出装置10の電気的構成を図6に従って説明する。
図6において、照射制御手段及び吐出制御手段を構成する制御装置41には、CPU、RAM、ROM等が備えられて、ROM等に格納された各種データ及び各種プログラムに従って、ステージ13及びキャリッジ17を走査させるとともに、吐出ヘッド21及びレーザヘッド31を駆動制御させる。詳述すると、制御装置41のROMには、液滴Fbを吐出して基板Sbにパターンを形成させるためのビットマップデータBMDが格納されている。
【0056】
ビットマップデータBMDは、基板Sbの表面に規定した多数の格子点に、それぞれ各ビットの値(0あるいは1)を対応させたデータであって、各ビットの値に応じて、各ミラー素子35Mの配置位置(「非照射位置」と「照射位置」)を規定するデータである。すなわち、ビットマップデータBMDは、ノズルNが格子点の直上に位置するときに、紫外線硬化性インクFに対するレーザ光Iの照射と非照射を規定するデータであって、ノズルNが、前記照射開始位置PTに対応する格子点の直上に位置するときに、レーザ光Iの
照射を規定するようになっている。
【0057】
制御装置41には、入力装置42、X軸モータ駆動回路43、Y軸モータ駆動回路44、照射制御手段を構成するレーザヘッド駆動回路45及び照射制御手段を構成する吐出ヘッド駆動回路46が接続されている。
【0058】
入力装置42は、起動スイッチ、停止スイッチ等の操作スイッチを有して制御装置41に各種操作信号を入力するとともに、基板Sbに形成するパターンに関する情報(例えば、基板Sbの表面におけるパターンの位置座標やサイズに関する情報)を、既定形式の描画データIaとして制御装置41に入力するようになっている。
【0059】
そして、制御装置41は、入力装置42からの描画データIaを受けて、同描画データIaに対応する前記ビットマップデータBMD、前記可動電極駆動電圧COM1及び前記レーザ駆動電圧COM2を生成するようになっている。
【0060】
X軸モータ駆動回路43は、制御装置41からのX軸モータ駆動回路43に対応する駆動制御信号に応答して、ステージ13を往復移動させるX軸モータMXを正転又は逆転させるようになっている。そのX軸モータ駆動回路43には、X軸モータ回転検出器MXEが接続されて、X軸モータ回転検出器MXEからの検出信号が入力されるようになっている。X軸モータ駆動回路43は、X軸モータ回転検出器MXEからの検出信号に基づいて、ステージ13の移動方向及び移動量を演算するとともに、ステージ13の現在位置に関する情報をステージ位置情報SPIとして生成するようになっている。
【0061】
そして、制御装置41は、X軸モータ駆動回路43からのステージ位置情報SPIに基づいて、レーザヘッド駆動回路45及び吐出ヘッド駆動回路46に、各種信号を出力するようになっている。
【0062】
Y軸モータ駆動回路44は、制御装置41からのY軸モータ駆動回路44に対応する駆動制御信号に応答して、キャリッジ17を往復移動させるY軸モータMYを正転又は逆転させるようになっている。そのY軸モータ駆動回路44には、Y軸モータ回転検出器MYEが接続されて、Y軸モータ回転検出器MYEからの検出信号が入力されるようになっている。Y軸モータ駆動回路44は、Y軸モータ回転検出器MYEからの検出信号に基づいて、キャリッジ17の移動方向及び移動量を演算するとともに、キャリッジ17の現在位置に関する情報をキャリッジ位置情報CPIとして生成するようになっている。
【0063】
そして、制御装置41は、Y軸モータ駆動回路44からのキャリッジ位置情報CPIに基づいて、レーザヘッド駆動回路45及び吐出ヘッド駆動回路46に、各種駆動信号を出力するようになっている。
【0064】
詳述すると、制御装置41は、キャリッジ17の1回の走査(一回の往動、もしくは復動)分に対応する前記ビットマップデータBMDを所定のクロック信号に同期させて吐出制御情報としてのミラー制御信号SIを生成するようになっている。そして、制御装置41は、前記ステージ位置情報SPIと前記キャリッジ位置情報CPIに基づいて、キャリッジ17の往動もしくは復動を開始させる前に、同キャリッジ17の走査に対応するミラー制御信号SIを、レーザヘッド駆動回路45に順次シリアル転送するようになっている。
【0065】
また、制御装置41は、前記ステージ位置情報SPIと前記キャリッジ位置情報CPIに基づいて、ノズルN(着弾位置PF)が、前記ビットマップデータBMDで規定する基板Sbの各格子点(例えば、照射開始位置PT)の直上に位置するタイミングで、制御タ
イミング信号LPを生成するようになっている。そして、制御装置41は、各着弾位置PFがそれぞれ各格子点(例えば、照射開始位置PT)の直上に位置するタイミングで、生成した制御タイミング信号LPをレーザヘッド駆動回路45に出力するようになっている。
【0066】
レーザヘッド駆動回路45には、レーザヘッド31(半導体レーザLD及びミラー素子35M)が接続されて、制御装置41からのレーザ駆動電圧COM2を受けて、そのレーザ駆動電圧COM2を半導体レーザLDに供給させるようになっている。また、レーザヘッド駆動回路45は、制御装置41からのミラー制御信号SIを受けて、そのミラー制御信号SIを、各ミラー素子35Mに対応させて順次シリアル/パラレル変換するようになっている。
【0067】
そして、レーザヘッド駆動回路45は、制御装置41からのレーザ駆動電圧COM2を半導体レーザLDに出力して、レーザ光Iを出射させるようになっている。また、レーザヘッド駆動回路45は、制御装置41からの制御タイミング信号LPを受ける毎に、シリアル/パラレル変換したミラー制御信号SIに基づいて、選択された各ミラー素子35Mの配置位置を、それぞれ「照射位置」あるいは「非照射位置」に回動させるようになっている。さらに、レーザヘッド駆動回路45は、制御装置41からの制御タイミング信号LPを受ける度に、シリアル/パラレル変換したミラー制御信号SIを、各対向電極24aに対応させて、吐出ヘッド駆動回路46に出力するようになっている。
【0068】
吐出ヘッド駆動回路46には、吐出ヘッド21(対向電極24a)が接続されて、制御装置41からの可動電極駆動電圧COM1とレーザヘッド駆動回路45からのミラー制御信号SIが供給されるようになっている。
【0069】
そして、吐出ヘッド駆動回路46は、レーザヘッド駆動回路45からのミラー制御信号SIに基づいて、選択された対向電極24aに、可動電極駆動電圧COM1を出力するようになっている。
【0070】
次に、上記する液滴吐出装置10を使用して、紫外線硬化性インクFからなるパターンを形成する方法について説明する。
まず、図1に示すように、ステージ13上に、基板Sbを配置固定する。このとき、ステージ13は、キャリッジ17よりも反X矢印方向側に配置されて、キャリッジ17は、ガイド部材15の最も反Y矢印方向に配置されている。
【0071】
この状態から、入力装置42を操作して描画データIaを制御装置41に入力する。すると、制御装置41は、描画データIaに基づくビットマップデータBMDを生成して格納するとともに、描画データIaに基づく可動電極駆動電圧COM1及びレーザ駆動電圧COM2を生成する。
【0072】
可動電極駆動電圧COM1及びレーザ駆動電圧COM2を生成すると、制御装置41は、X軸モータ駆動回路43及びY軸モータ駆動回路44を介して、X軸モータMX及びY軸モータMYを駆動制御し、ステージ13及びキャリッジ17の走査を開始する。すなわち、制御装置41は、ステージ13を所定の周期で順次X矢印方向に走査しながら、キャリッジ17を、ステージ13の走査周期に同期させて、Y矢印方向に沿って往復動(走査)させる。また、制御装置41は、レーザヘッド駆動回路45を介して、半導体レーザLDを駆動制御し、半導体レーザLDによるレーザ光Iの出射を開始させる。
【0073】
この間、制御装置41は、ビットマップデータBMDに基づいたミラー制御信号SIを順次生成するとともに、生成したミラー制御信号SIを、レーザヘッド駆動回路45にシ
リアル転送して、制御タイミング信号LPの出力タイミングを待つ。
【0074】
そして、各ノズルN(着弾位置PF)が基板Sbの格子点(照射開始位置PT)に走査されると、制御装置41は、ステージ位置情報SPI及びキャリッジ位置情報CPIに基づいて、レーザヘッド駆動回路45に、制御タイミング信号LPの出力を開始する。
【0075】
制御装置41が制御タイミング信号LPを出力すると、レーザヘッド駆動回路45は、ミラー制御信号SIに基づいて選択されたミラー素子35Mのみを「照射位置」に配置移動させるとともに、同ミラー素子35Mに対応するレーザ光Iの進行方向を、対応するメニスカスM直上の紫外線硬化性インクFの領域に向けて偏向させる。これによって、選択されたノズルN(照射開始位置PT)に対応する紫外線硬化性インクFを加熱させて、その粘度を低下させる。
【0076】
また、制御装置41が制御タイミング信号LPを出力すると、吐出ヘッド駆動回路46は、レーザヘッド駆動回路45からのミラー制御信号SIに基づいて選択された対向電極24aのみに可動電極駆動電圧COM1を供給して、同可動電極25aに対応するメニスカスMのみを振動させる。
【0077】
この際、対応する紫外線硬化性インクFの低粘度化によって、メニスカスMが円滑に振動して、安定した液滴吐出動作が行われる。
そして、制御タイミング信号LPの出力時から「吐出動作期間」だけ経過すると、安定した液滴吐出動作によって、選択されたノズルNから、紫外線硬化性インクFの液滴Fbが吐出される。吐出された液滴Fbは、その吐出動作が安定している分だけ、その飛行動作を安定させて、対応する着弾位置PF(目標吐出位置P)に着弾する。
【0078】
以後同様に、制御装置41は、各ノズルN(着弾位置PF)が照射開始位置PTの直上に走査される度に、紫外線硬化性インクFを低粘度化させて、安定した吐出動作に基づく液滴Fbを吐出させる。そして、基板Sbの各目標吐出位置Pに、それぞれ紫外線硬化性インクFからなる液滴Fbを着弾させると、基板Sbを公知の紫外線照射装置に搬送して、各液滴Fbの領域に紫外線を照射させる。これによって、描画データIaに対応した紫外線硬化性インクFからなる半球面状のパターン(例えば、マイクロレンズ)を基板Sbに形成させることができる。
【0079】
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、吐出ヘッド21の近傍に、キャビティ25(ノズルN)に貯留された紫外線硬化性インクFを加熱可能にするレーザ光Iを照射するレーザヘッド31を設けた。そして、キャビティ25内の紫外線硬化性インクFを液滴Fbとして吐出させる前に、同キャビティ25の紫外線硬化性インクFに対してレーザ光Iの照射を開始させるようにした。また、液滴Fbを吐出させた後に、同紫外線硬化性インクFに対するレーザ光Iの照射を終了させるようにした。
【0080】
従って、液滴Fbの吐出動作の間だけ、紫外線硬化性インクFを加熱して低粘度化させることができる。その結果、紫外線硬化性インクFの粘度を低下させた分だけ、メニスカスMの振動を円滑にさせることができ、過剰な加熱に起因する紫外線硬化性インクFの増粘を回避させることができる。
(2)上記実施形態によれば、レーザヘッド31に、レーザ光Iを出射する半導体レーザLDと、半導体レーザLDからのレーザ光Iを偏向してキャビティ25の紫外線硬化性インクに照射するミラー素子35Mを設けた。そして、ミラー素子35Mを、「照射位置」と「非照射位置」との間で移動させて、紫外線硬化性インクFに対するレーザ光Iの照射と非照射を切替えるようにした。従って、紫外線硬化性インクFに対するレーザ光Iの照
射動作を、より確実に制御させることができる。
(3)上記実施形態によれば、透過プレート22のレーザヘッド31側に、レーザ光Iを遮光する遮光プレート29を配設するとともに、遮光プレート29のノズルNと相対向する位置に、その遮光プレート29を貫通する照射孔29hを設けた。そして、液滴Fbの吐出動作を開始するタイミングで、ミラー素子35Mからのレーザ光Iを照射孔29hに導いて、液滴Fbの吐出動作を終了するタイミングで、ミラー素子35Mからのレーザ光Iを遮光プレート29の領域に導くようにした。
【0081】
従って、液滴Fbを吐出させないときに、ミラー素子35Mからのレーザ光Iを、紫外線硬化性インクFに対して、より確実に遮光させることができる。
(4)上記実施形態によれば、遮光プレート29のレーザヘッド31側に、ヒートシンク30を配設するようにした。そして、遮光プレート29に蓄積される熱量を放熱させるようにした。従って、液滴Fbを吐出しないときに、ヒートシンク30の放熱分だけ、紫外線硬化性インクFの温度上昇を抑制させることができる。その結果、過剰な加熱に起因する紫外線硬化性インクFの増粘を、より確実に回避させることができる。
(5)上記実施形態によれば、ビットマップデータBMD(描画データIa)に基づいてミラー制御信号SIを生成させるとともに、各ミラー素子35Mと各対向電極24a(可動電極25a)を、それぞれ共通するミラー制御信号SIに基づいて駆動制御させるようにした。従って、複数のキャビティ25の中から、液滴Fbを吐出させるキャビティ25の紫外線硬化性インクFにのみ、レーザ光Iを照射させることができる。その結果、液滴Fbを吐出させないキャビティ25へのレーザ光Iの照射を、より確実に回避させることができる。そのため、過剰な加熱に起因する紫外線硬化性インクFの増粘を、さらに確実に回避させることができ、液滴Fbの吐出動作を安定させることができる。
【0082】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、キャビティ25とノズルN内の紫外線硬化性インクFの領域に、レーザ光Iを照射させる構成にした。これに限らず、例えば、メニスカスMの紫外線硬化性インクFのみにレーザ光Iを照射させる構成にしてもよく、あるいは、キャビティ25とノズルNの領域にレーザ光Iを走査させる構成にしてもよい。つまり、レーザ光Iの照射によって、紫外線硬化性インクFを低粘度化し、メニスカスMを円滑に振動させる構成であればよい。
・上記実施形態では、透過プレート22を透過したレーザ光Iによって、紫外線硬化性インクFを直接加熱させる構成にした。これに限らず、例えば、キャビティ25(ノズルN)に照射したレーザ光Iによって、キャビティ25(ノズルN)を加熱させるととともに、加熱されたキャビティ25(ノズルN)によって、同キャビティ25(ノズルN)に貯留された紫外線硬化性インクFを間接的に加熱させる構成にしてもよい。
【0083】
つまり、貯留室に照射するレーザ光によって、直接的あるいは間接的に、液状体を加熱させる構成であればよい。
・上記実施形態では、光変調素子を、ミラー素子35Mとして具体化した。これに限らず、例えば、光変調素子を、レーザ光Iを偏光する液晶素子に具体化してもよい。これによれば、遮光部(遮光プレート29)を設けることなく、液晶素子に対応する所定の領域のみに、レーザ光Iを照射させることができる。あるいは、光変調素子を、レーザ光Iを偏光する磁気光学素子に具体化してもよい。これによれば、レーザ光Iの変調速度を向上させることができ、紫外線硬化性インクFの温度(粘度)制御性を、さらに向上させることができる。
・上記実施形態では、偏向器35によって、レーザ光Iを偏向させる構成にした。これに限らず、例えば、レーザ光Iの強度や位相を変調させて、レーザ光Iの照射と非照射を切替える構成にしてもよい。
・上記実施形態では、1つのキャビティ25に対して、1つの光変調素子(ミラー素子3
5M)を対応させる構成にした。これに限らず、1つのキャビティ25に対して、複数の光変調素子(ミラー素子35M)を対応させる構成にしてもよい。これによれば、照射するレーザ光Iの制御範囲を拡張させることができる。
・上記実施形態では、複数のミラー素子35Mの配置位置よって、各キャビティ25の紫外線硬化性インクFに対する照射動作を制御させる構成にした。これに限らず、各キャビティ25に対応する複数の光源(半導体レーザLD)を設けて、各光源の駆動制御(オンあるいはオフ)によって、各キャビティ25(紫外線硬化性インクF)に対する照射動作を制御させる構成にしてもよい。
・上記実施形態では、紫外線硬化性インクFに対するレーザ光Iの照射期間を、「吐出動作期間」にする構成にした。これに限らず、例えば、レーザ光Iの照射時間を、「吐出動作期間」よりも長い期間に設定する構成にしてもよく、あるいは「吐出動作期間」よりも短い期間に設定する構成にしてもよい。
【0084】
つまり、紫外線硬化性インクFに対するレーザ光Iの照射期間は、紫外線硬化性インクFの低粘度化によって、メニスカスMの振動を円滑にできる期間であればよい。
・上記実施形態では、制御タイミング信号LPに基づいて、レーザ光Iの照射動作と液滴Fbの吐出動作を同時に開始させる構成にした。これに限らず、例えば、レーザ光Iの照射動作を、液滴Fbの吐出動作の開始時よりも先行させて開始させる構成にしてもよく、あるいはレーザ光Iの照射動作を、液滴Fbの吐出動作の開始時よりも遅延させて開始させる構成にしてもよい。
【0085】
つまり、レーザ光Iを紫外線硬化性インクFに照射させるタイミングは、紫外線硬化性インクFの低粘度化によって、メニスカスMの振動を円滑にできるタイミングであればよい。
・上記実施形態では、吐出手段を、対向電極24aと可動電極25aによって構成するようにした。これに限らず、例えば、吐出手段を、キャビティ25の一側面を振動させる圧電素子に具体化してもよく、キャビティ25内の紫外線硬化性インクFを加熱して、キャビティ25内に気泡を形成する抵抗加熱素子であってもよい。すなわち、吐出手段は、キャビティ25内の紫外線硬化性インクFを流動させて、紫外線硬化性インクFの液滴Fbを吐出させるものであればよい。
・上記実施形態では、透過部を、無色透明ガラスからなる透過プレート22と照射孔29hによって構成するようにした。これに限らず、例えば、透過部は、レーザ光Iを透過する樹脂材料によって構成してもよく、使用するレーザ光Iを透過して、キャビティ25内の紫外線硬化性インクFに導く部材であればよい。
・上記実施形態では、対象物を、基板Sbに具体化した。これに限らず、例えば、対象物を、記録紙、ラスター紙、金属基板等に具体化してもよい。つまり、対象物は、液状体の液滴によってパターンを形成する対象物であればよい。
・上記実施形態では、液状体を、紫外線硬化性インクに具体化した。これに限らず、例えば、液状体を、金属微粒子を分散させた金属インクや液晶等に具体化してもよい。あるいは、液状体を、熱硬化性インクに具体化してもよい。
【0086】
つまり、液状体は、レーザ光Iの照射によって粘度を低下させる液状体であればよい。尚、熱硬化性インクを利用する場合には、レーザ光Iの照射による昇温が、同熱硬化性インクの硬化反応の開始温度未満で制御される構成が好ましい。
・上記実施形態では、パターンを、紫外線硬化性インクからなる半球面状のパターンに具体化した。これに限らず、例えば、パターンを、金属インクからなる配線や、液晶分子からなる液晶層に具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本実施形態を具体化した液滴吐出装置を示す概略斜視図。
【図2】同じく、ヘッドユニットを示す概略斜視図。
【図3】同じく、ヘッドユニットを示す概略側面図。
【図4】同じく、ヘッドユニットを示す概略側面図。
【図5】同じく、ヘッドユニットを示す概略側面図。
【図6】同じく、液滴吐出装置の電気的構成を示す電気ブロック回路図。
【符号の説明】
【0088】
10…液滴吐出装置、25…貯留室を構成するキャビティ、25a…吐出手段を構成する可動電極、22…透過部を構成する透過プレート、29…遮光部を構成する遮光プレート、31…照射手段としてのレーザヘッド、35M…光変調素子としてのミラー素子、41…照射制御手段を構成する制御装置、F…液状体としての紫外線硬化性インク、Fb…液滴、LD…レーザ光源としての半導体レーザ、N…吐出口としてのノズル、Sb…対象物としての基板、SI…吐出制御情報としてのミラー制御情報、I…レーザ光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留室の液状体を液滴として対象物に吐出し、前記液滴からなるパターンを前記対象物に形成するようにしたパターン形成方法において、
前記液滴を吐出する前に、前記貯留室にレーザ光を照射して前記液状体を加熱し、前記液滴を吐出した後に、前記貯留室に対する前記レーザ光の照射を停止するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成方法において、
前記液滴を吐出する前に、前記貯留室の液状体にレーザ光を照射して前記液状体を加熱するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
液状体を液滴として吐出する液滴吐出装置において、
前記液滴を吐出する吐出口を有した前記液状体を貯留する貯留室と、
前記貯留室の液状体を流動させて前記液滴を吐出させる吐出手段と、
前記液状体を加熱可能なレーザ光を前記貯留室に照射する照射手段と、
前記吐出手段が前記液滴を吐出させる前に、前記照射手段を駆動制御して前記貯留室に前記レーザ光を照射させるとともに、前記吐出手段が前記液滴を吐出した後に、前記照射手段を駆動制御して前記貯留室に対する前記レーザ光の照射を停止させる照射制御手段と、
を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液滴吐出装置において、
前記照射手段は、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光源からのレーザ光を変調して、前記液状体を加熱可能なレーザ光を前記貯留室に照射する光変調素子と、を備え、
前記照射制御手段は、前記光変調素子を駆動制御して前記貯留室に前記光変調素子からのレーザ光を照射させることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液滴吐出装置において、
前記光変調素子は、前記レーザ光源からのレーザ光を偏向するミラー素子であることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液滴吐出装置において、
前記照射手段は、前記ミラー素子からのレーザ光を前記貯留室に照射する透過部と、前記ミラー素子からのレーザ光を前記貯留室に対して遮光する遮光部と、を備え、
前記照射制御手段は、前記吐出手段が前記液滴を吐出させる前に、前記光変調素子からのレーザ光を前記貯留室の前記透過部に導き、前記吐出手段が前記液滴を吐出させた後に、前記光変調素子からのレーザ光を前記遮光部に導くことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1つに記載の液滴吐出装置において、
複数の前記貯留室と、
前記貯留室に対応する複数の前記吐出手段と、
選択した前記吐出手段を駆動制御して、前記選択した吐出手段に対応する前記貯留室の吐出口から前記液滴を吐出させる吐出制御手段と、を備え、
前記照射制御手段は、
前記選択した吐出手段に対応する前記貯留室にレーザ光を照射させることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液滴吐出装置において、
前記吐出制御手段は、前記液滴を吐出させる前記吐出口を規定する吐出制御情報に基づいて前記吐出手段を駆動制御し、
前記照射制御手段は、前記吐出制御情報に基づいて前記照射手段を駆動制御することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれか1つに記載の液滴吐出装置において、
前記照射制御手段は、前記吐出手段が前記液滴を吐出させる前に、前記照射手段を駆動制御して前記貯留室の液状体に前記レーザ光を照射させることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項10】
請求項3〜9のいずれか1つに記載の液滴吐出装置において、
前記照射制御手段は、前記吐出手段が前記液滴を吐出させる前に、前記照射手段を駆動制御して、前記吐出口の近傍に位置する液状体に前記レーザ光を照射させることを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−168199(P2007−168199A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367069(P2005−367069)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】