説明

パターン生成方法及びパターン生成プログラム

【課題】回折像の広がり、断線、配線視認性の問題を解消することができる導電性フイルムの配線パターンを生成することができるパターン生成方法及びパターン生成プログラムを提供する。
【解決手段】透明フイルム基材12上に導電部14と開口部16とを有する導電性フイルム10における導電部14を構成する配線パターンをコンピュータを使用して生成するパターン生成方法において、第1方向に沿って形成された複数の波線路20が、第1方向と直交する第2方向に配列されてなる主線路パターン22と、隣接する波線路20間を電気的に接続する複数の副線路24とを有し、波線路20と副線路24とで区画された部分が開口部16を構成し、主線路パターン22は、各波線路を構成する波線の少なくとも周期が不規則である導電部14の配線パターンを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン生成方法及びパターン生成プログラムに関し、導電性フイルムの配線パターンを生成するのに好適なパターン生成方法及びパターン生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、視認性および電磁波のシールド性が要求される窓に用いて好適な乗用移動体用窓として、例えば特許文献1記載の窓が提案されている。この窓は、メッシュ層が設けられており、該メッシュ層は、円の一部を切り欠いた円弧状の導電性を有する線材が格子状に繰り返し配置され,前記円弧状の線材の端部が、隣接する円弧状の線材の中央部近傍に接続された形状の配線パターンを有する。すなわち、特許文献1記載のメッシュ層は、規則性を有する配線パターンにて形成されている。
【0003】
また、導電性フイルムに形成される配線パターンとしては、線材を一方向に沿って形成した一次元方向に成分を持つパターン(特許文献2参照)や、線材を一方向と、他方向(一方向に対して直交する方向)とに沿って形成した二次元方向に成分をもつ不規則なパターン(特許文献3参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−137455号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10−2009−0113757号公報
【特許文献3】韓国公開特許第10−2009−0113758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、配線パターンを例えば車両の窓ガラスに設置する場合、少なくとも回折像の広がり、断線、配線視認性の3点に注目する必要がある。
【0006】
すなわち、配線パターンを例えば車両の窓ガラスに設置した際、二次元方向に成分を持つパターンによる光の回折像は二次元的に広がりを持って分布する(回折像の広がり)。一次元方向に成分を持つパターンでは、車両の窓ガラスに発熱体として設置する際に、断線による面内の発熱むらの悪化の影響がある(断線)。二次元方向に成分を持つパターンにおいて、配線が有する不規則性が強くなり、配線パターンが視認され易くなる、すなわち、配線視認性が著しく悪化するという問題がある(配線視認性)。
【0007】
上述した特許文献1は、二次元方向に成分を持つ規則性を有する配線パターンであるため、車両の窓ガラスに適用した場合、光源と配線パターンによる回折像の広がりが問題となる。また、規則的なパターンに起因する干渉縞の発生が著しいという問題もある。
【0008】
特許文献2は、一次元方向に成分を持つ配線パターンであるため、車両の窓ガラスに設置される発熱体として適用した場合、線材の断線による発熱量の不均一性を回避することができないという問題がある。
【0009】
特許文献3は、二次元方向に成分を持つ不規則な配線パターンであるため、配線パターンが著しく目立ち、配線視認性が悪化するという問題がある。
【0010】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、回折像の広がり、断線、配線視認性の問題を解消することができ、電流を流すことで発熱シートとして使用する場合に、発熱効率を向上させることができると共に、車両用灯具や外灯等による光のぎらつきを防止することができ、車両の窓ガラス等に使用して好適な導電性フイルムの配線パターンを生成することができるパターン生成方法及びパターン生成プログラムを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明の他の目的は、タッチパネル用電極、無機EL素子又は有機EL素子の電極として使用した場合に、バックライトによるぎらつき等を防止することができる導電性フイルムの配線パターンを生成することができるパターン生成方法及びパターン生成プログラムを提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明の他の目的は、太陽電池の電極として使用した場合に、電磁波シールド膜として機能し、さらに、表面抵抗を低く保持して、発電効率の低下を防止することができる導電性フイルムの配線パターンを生成することができるパターン生成方法及びパターン生成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[1] 第1の本発明に係るパターン生成方法は、透明フイルム基材上に導電部と開口部とを有する導電性フイルムにおける導電部を構成する配線パターンをコンピュータを使用して生成するパターン生成方法において、前記導電部は、第1方向に沿って形成された複数の波線路が、前記第1方向と直交する第2方向に配列されてなる主線路パターンと、隣接する波線路間を電気的に接続する複数の副線路とを有し、初期関数を入力するステップと、前記初期関数の少なくとも周期をランダムに変更しながら第1方向に波線路のパターンを生成する第1ステップと、描画された前記波線路と、該波線路に隣接する波線路との第2方向(前記第1方向と直交する方向)の間隔をランダムに変更する第2ステップと、前記第1ステップと第2ステップとを繰り返して、前記第1方向に沿って形成された複数の波線路が、前記第1方向と直交する前記第2方向に配列されてなる前記主線路パターンを生成する第3ステップと、隣接する波線路間を行間と定義したとき、前記主線路パターンにおける各行間において、隣接する波線路を接続する2以上の副線路のパターンを生成する第4ステップとを有することを特徴とする。
【0014】
これにより、本発明のパターン生成方法にて生成される配線パターンは、二次元方向に成分を持つ配線パターンではあるが、一次元方向に成分を持つ波線路が不規則性を有するため、回折像の広がりを一次元的な広がりに抑えることができ、さらに、干渉縞も不鮮明にすることができる。また、隣接する波線路間に複数の副線路を電気的に接続するようにしているため、一部に断線が生じても、発熱むらの影響を抑えることができる。しかも、不規則性を有するのは、第1方向に沿って形成された波線路であるため、配線パターンが目立つということがなくなり、配線視認性を良好にすることができる。
【0015】
すなわち、本発明にて生成された配線パターンは、回折像の広がり、断線、配線視認性の問題を解消することができる。その結果、電流を流すことで発熱シートとして使用する場合に、発熱効率を向上させることができると共に、車両用灯具や外灯等による光のぎらつきを防止することができ、車両の窓ガラス等に使用して好適となる。断線による窓ガラスの交換回数も減らすことができ、使用者のランニングコストの低減に寄与することができる。
【0016】
また、本発明にて生成された配線パターンは、タッチパネル用電極、無機EL素子又は有機EL素子の電極として使用した場合に、バックライトによるぎらつき等を防止することができる。
【0017】
また、本発明にて生成された配線パターンは、太陽電池の電極として使用した場合に、電磁波シールド膜として機能し、さらに、表面抵抗を低く保持して、発電効率の低下を防止することができる。
【0018】
[2] 第1の本発明において、前記第3ステップは、前記第1ステップが前記コンピュータの画像メモリに前記波線路のパターンを描画することで、前記画像メモリに前記主線路パターンを描画し、前記第4ステップは、前記画像メモリに前記副線路のパターンを描画し、前記画像メモリに前記配線パターンを描画することを特徴とする。
【0019】
[3] 第1の本発明において、前記初期関数は正弦波関数であり、前記第1ステップは、前記正弦波の半周期の波線を、半周期毎に少なくとも前記正弦波の周期をランダムに変更しながら生成して、前記波線路のパターンを生成することを特徴とする。
【0020】
[4] 第1の本発明において、前記第1ステップは、前記正弦波の半周期の波線を、半周期毎に少なくとも前記正弦波の周期及び振幅をランダムに変更しながら生成して、前記波線路のパターンを生成することを特徴とする。
【0021】
[5] 第1の本発明において、前記第1ステップは、前記正弦波の半周期の波線を、半周期毎に少なくとも前記正弦波の周期、振幅及び位相をランダムに変更しながら生成して、前記波線路のパターンを生成することを特徴とする。
【0022】
[6] 第1の本発明において、前記第1ステップは、前記正弦波の半周期の波線を、半周期毎に周期、振幅、位相及び線幅をランダムに変更しながら生成して、前記波線路のパターンを生成することを特徴とする。
【0023】
[7] 第1の本発明において、前記第2ステップは、一方の波線路における前記波線の振幅の最大値が、該一方の波線路に隣接する他方の波線路との間の間隔の1/2以下に制限して、前記間隔を設定することを特徴とする。
【0024】
[8] 第1の本発明において、前記第4ステップは、前記第2方向に沿った直線状の前記副線路のパターンを生成することを特徴とする。
【0025】
[9] 第1の本発明において、前記第4ステップは、各行間毎にそれぞれ前記副線路の位置をランダムに変更しながら前記副線路のパターンを生成することを特徴とする。
【0026】
[10] 第1の本発明において、前記配線パターンは、隣接する波線路の各中心線と、該隣接する波線路間における隣接する副線路の各中心線とで囲まれる閉区画の形状が四角形であり、前記閉区画が多数配列された形態を有することを特徴とする。
【0027】
[11] 第1の本発明において、各前記閉区画の面積がほぼ同一であることを特徴とする。
【0028】
[12] 第1の本発明において、各前記閉区画の周囲の長さがほぼ同一であることを特徴とする。
【0029】
[13] 第1の本発明において、前記閉区画を構成する波線路の中心線による第1辺の長さをL1、前記閉区画を構成する副線路の中心線による第2辺の長さをL2としたとき、前記第1辺の長さL1と前記第2辺の長さL2の比(L1/L2)は5以上であることを特徴とする。
【0030】
[14] 第2の本発明に係るパターン生成プログラムは、透明フイルム基材上に導電部と開口部とを有する導電性フイルムにおける導電部を構成する配線パターンを生成するパターン生成プログラムであって、前記導電部は、第1方向に沿って形成された複数の波線路が、前記第1方向と直交する第2方向に配列されてなる主線路パターンと、隣接する波線路間を電気的に接続する複数の副線路とを有し、コンピュータに、初期関数を入力するステップ、前記初期関数の少なくとも周期をランダムに変更しながら第1方向に波線路のパターンを生成する第1ステップ、描画された前記波線路と、該波線路に隣接する波線路との第2方向(前記第1方向と直交する方向)の間隔をランダムに変更する第2ステップ、前記第1ステップと第2ステップとを繰り返して、前記第1方向に沿って形成された複数の波線路が、前記第1方向と直交する前記第2方向に配列されてなる前記主線路パターンを生成する第3ステップ、隣接する波線路間を行間と定義したとき、前記主線路パターンにおける各行間において、隣接する波線路を接続する2以上の副線路のパターンを生成する第4ステップを実行させるためのパターン生成プログラムである。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明に係るパターン生成方法及びパターン生成プログラムによれば、以下の効果を奏することができる。
【0032】
(1) 回折像の広がり、断線、配線視認性の問題を解消することができる。その結果、電流を流すことで発熱シートとして使用する場合に、発熱効率を向上させることができると共に、車両用灯具や外灯等による光のぎらつきを防止することができ、車両の窓ガラス等に使用して好適となる導電性フイルムを得ることができる。
【0033】
(2) タッチパネル用電極、無機EL素子又は有機EL素子の電極として使用した場合に、バックライトによるぎらつき等を防止することができる導電性フイルムを得ることができる。
【0034】
(3) 太陽電池の電極として使用した場合に、電磁波シールド膜として機能し、さらに、表面抵抗を低く保持して、発電効率の低下を防止することができる導電性フイルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施の形態に係る導電性フイルムを一部省略して示す断面図である。
【図2】本実施の形態に係る導電性フイルムを一部省略して示す上面図である。
【図3】本実施の形態に係る導電性フイルムの製造方法を示すフローチャートである。
【図4】導電性フイルムを作製するための露光パターンを生成する方法を示すフローチャート(その1)である。
【図5】導電性フイルムを作製するための露光パターンを生成する方法を示すフローチャート(その2)である。
【図6】導電性フイルムを作製するための露光パターンを生成する方法を示すフローチャート(その3)である。
【図7】図7A〜図7Eは本実施の形態に係る導電性フイルムの第1の製造方法を示す工程図である。
【図8】図8A及び図8Bは本実施の形態に係る導電性フイルムの第2の製造方法を示す工程図である。
【図9】図9A及び図9Bは本実施の形態に係る導電性フイルムの第3の製造方法を示す工程図である。
【図10】本実施の形態に係る導電性フイルムの第4の製造方法を示す工程図である。
【図11】閉区画の第1辺の長さL1及び第2辺の長さL2の比(L1/L2)の違いによる回折像及び配線視認性の官能評価を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係るパターン生成方法及びパターン生成プログラムの実施の形態例を図1〜図11を参照しながら説明する。なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0037】
先ず、本実施の形態に係るパターン生成方法及びパターン生成プログラムを説明する前に、パターン生成方法及びパターン生成プログラムにて生成された配線パターンに基づいて作製された導電性フイルム及び製造方法について図1〜図3を参照しながら説明する。
【0038】
作製される導電性フイルム10は、車両のデフロスタ(霜取り装置)や、窓ガラス等の一部として使用可能である。この導電性フイルムは、電流を流すことで発熱する透明発熱体としても機能する。
【0039】
そして、この導電性フイルム10は、図1に示すように、透明フイルム基材12上に導電部14と開口部16とを有する。なお、以下の説明では、導電部14を配線パターン14と記す場合もある。
【0040】
導電部14は、図2に拡大して示すように、第1方向(X方向)に沿って形成された複数の波線路20が、第1方向と直交する第2方向(Y方向)に配列されてなる主線路パターン22と、隣接する波線路20間を電気的に接続する複数の副線路24とを有する。波線路20と副線路24とで区画された部分が開口部16を構成する。
【0041】
主線路パターン22における各波線路20を構成する複数の波線20aは、少なくとも周期が不規則となっている。図2の例では、周期と、振幅と、隣接する波線路間の間隔が共に不規則になっている例を示す。
【0042】
また、本実施の形態では、各波線路20を構成する複数の波線20aは、それぞれ半周期毎に不規則性が付与されている。すなわち、半周期毎に周期や振幅が異なった波線とされている。ここで、一方の波線路20における波線20aの振幅の最大値は、該一方の波線路20に隣接する他方の波線路20との間の間隔の1/2以下に設定されている。これは、隣接する波線路20間で波線20aが重ならないようにするためである。
【0043】
各波線路20は、それぞれ位相も不規則に設定されている。図2の例では、上から1本目、3本目及び4本目の波線路20についてはそれぞれ位相0°で開始され、上から2本目及び5本目の波線路20についてはそれぞれ位相180°で開始された例を示す。
【0044】
また、本実施の形態では、図示していないが、各波線20aの線幅も不規則になっており、半周期毎に異なった線幅に設定されている。
【0045】
一方、副線路24は、第2方向に沿って直線状に形成されている。隣接する一組の波線路20間に配線される副線路24は、配線視認性を考慮した場合、できるだけ少ない方が好ましい。本実施の形態では、2〜3本に設定してある。
【0046】
さらに、主線路パターン22は、隣接する波線路20の各中心線Lmと、該隣接する波線路20間における隣接する副線路24の各中心線Lnとで囲まれる閉区画26の形状が四角形であり、この閉区画26が多数配列された形態を有する。図2の例では、各閉区画26の面積がほぼ同一であり、また、各閉区画26の周囲の長さがほぼ同一である例を示す。ここで、「ほぼ同一」としたのは、製造ばらつきを考慮したものであって、理想的には、各閉区画26の面積が同一であり、また、各閉区画26の周囲の長さが同一であることが望ましい。
【0047】
また、波線路20の中心線Lmによる第1辺の長さをL1、閉区画26を構成する副線路24の中心線Lnによる第2辺の長さをL2としたとき、第1辺の長さL1と第2辺の長さL2の比(L1/L2)は5以上であることが好ましい。
【0048】
また、波線路20の線幅と副線路24の線幅とが異なるようにしてもよい。波線路20の線幅を副線路24の線幅よりも太くすれば、副線路24が目立たなくなるため、配線視認性を向上させる上で、また、表面抵抗を低くする上で好ましい。反対に、副線路24の線幅を波線路20の線幅よりも太くすれば、透明発熱体とした場合に、波線路20の断線による発熱量の影響を小さく抑える上で好ましい。もちろん、隣接する波線路20間の間隔を狭くすることで、断線による影響を小さく抑えることができる。
【0049】
但し、波線路20や副線路24の線幅を太くしたり、隣接する波線路20間の間隔を狭くする場合、可視光透過率が低下するため、可視光透過率が70〜80%を維持できる程度に調整することが好ましい。この場合、波線路20の線幅及び副線路24の線幅は、100μm以下であることが好ましく、隣接する波線路20間の間隔が1000μm以下であることが好ましい。
【0050】
このように、本実施の形態に係る導電性フイルム10及び透明導電体においては、第1方向と第2方向に成分を持つ配線パターン14ではあるが、第1方向に成分を持つ波線路20が不規則性を有するため、回折像の広がりを一次元的な広がりに抑えることができ、さらに、干渉縞も不鮮明にすることができる。また、隣接する波線路20間に複数の副線路24を電気的に接続するようにしているため、一部に断線が生じても、発熱むらの影響を抑えることができる。しかも、不規則性を有するのは、第1方向に沿って形成された波線路20であるため、配線パターン14が目立つということがなくなり、配線視認性を良好にすることができる。
【0051】
すなわち、本実施の形態においては、回折像の広がり、断線、配線視認性の問題を解消することができる。その結果、電流を流すことで透明発熱体として使用する場合に、発熱効率を向上させることができると共に、車両用灯具や外灯等による光のぎらつきを防止することができ、車両の窓ガラス等に使用して好適となる。断線による窓ガラスの交換回数も減らすことができ、使用者のランニングコストの低減に寄与することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、タッチパネル用電極、無機EL素子又は有機EL素子の電極として使用した場合に、バックライトによるぎらつき等を防止することができる。
【0053】
また、本実施の形態では、太陽電池の電極として使用した場合に、電磁波シールド膜として機能し、さらに、表面抵抗を低く保持して、発電効率の低下を防止することができる。
【0054】
次に、本実施の形態に係る導電性フイルム10の製造方法、パターン生成方法を含めた製造方法について図3〜図10を参照しながら説明する。
【0055】
先ず、図3のステップS1において、感光材料を作製する。感光材料としては、後述するように、透明フイルム基材12と、該透明フイルム基材12上に設けられた銀塩感光層とを有する感光材料や、上面に銅箔が形成された透明フイルム基材12と、銅箔上に形成されたフォトレジスト膜とを有する感光材料等が挙げられる。
【0056】
ステップS2において、パターン生成装置にて露光パターン(導電部14の配線パターン:描画データ)を生成する。
【0057】
ステップS3において、生成された露光パターンに対応したマスクパターンを有するマスクを作製し、露光装置からマスクパターンを介して光を感光材料(銀塩感光層やフォトレジスト層)に照射することで、感光材料に前記露光パターンを露光する。あるいは、生成された露光パターンを露光装置に入力し、該露光装置のデジタル書込み露光によって感光材料に前記露光パターンを露光する。なお、感光材料が銀塩感光層やネガ型のフォトレジスト層を有する場合は、露光パターンと対向する部位を露光し、感光材料がポジ型のフォトレジスト層を有する場合は、露光パターンと対向しない部位(すなわち、反転パターン)を露光する。
【0058】
ステップS4において、感光材料を現像処理して、透明フイルム基材12上に露光パターンに沿ったパターンを有する導電部14を形成する。この段階で、導電性フイルム10が完成する。
【0059】
その後、ステップS5において、例えばフロントガラスを構成する2枚の貼合せガラスの間に導電性フイルム10を、透明発熱体として設置する。
【0060】
ここで、本実施の形態に係るパターン生成方法及びパターン生成プログラムによる露光パターンの生成方法について図4〜図6を参照しながら説明する。パターン生成方法及びパターン生成プログラムが適用されるパターン生成装置は、コンピュータにて構成され、キーボードやマウス等の入力装置、ハードディスク、擬似乱数発生部、露光パターンが描画される画像メモリ、各種レジスタ、入出力インターフェース等を有する。
【0061】
先ず、図4のステップS101において、基準となる初期関数をパターン生成装置に入力する。これは、オペレータによる入力装置からの操作入力によってもよいし、パターン生成のプログラム起動時に、例えばハードディスクに予め記憶されている初期関数を読み出してもよい。
【0062】
ステップS102において、初期設定を行う。初期設定としては、画像メモリに対する描画開始位置(アドレス)の初期設定、1つの波線路20に含まれる半周期の波線20aの個数Na、波線路20の本数Nb、隣接する一組の波線路20間に配線される副線路24の本数Nc、閉区画26の面積(又は閉区画26の全周の長さ)、各種不規則性のパラメータの設定が挙げられる。
【0063】
不規則性のパラメータは、波線20aの周期等の変動幅を示すもので、例えば初期関数が正弦波関数であれば、正弦波の周期の変動幅、正弦波の振幅の変動幅、線幅の変動幅、隣接する波線路20間の間隔の変動幅、各1本目の副線路の描画位置の変動幅であり、最大何パーセントまで許容するかで規定する。
【0064】
ステップS103において、生成した波線路20の本数の計数に用いるカウンタiに初期値「1」をセットする。
【0065】
ステップS104において、生成した半周期の波線20aの個数の計数に用いるカウンタjに初期値「1」をセットする。
【0066】
ステップS105において、i番目の波線路20におけるj番目の半周期の波線20aの周期を設定する。このとき、2回の乱数発生が行われる。
【0067】
1回目は変動方向(正負)を設定する乱数であり、0〜100のうち、ランダムに発生したいずれか1つの数字である。この乱数が0〜50のいずれかであれば、「負」に設定し、乱数が51〜100のいずれかであれば、「正」に設定する。
【0068】
2回目は変動幅を設定する乱数である。例えば上述した初期設定で基準の正弦波関数の半周期を1.35mm、変動幅を50%に設定した場合、波線20aの半周期は、2回目の乱数をnとしたとき、1回目の乱数が負を示すのであれば、1.35×(1−0.5×(n/100))mmとなる。1回目の乱数が正を示す場合は、1.35×(1+0.5×(n/100))mmとなる。従って、このステップS105では、波線20aの半周期として、0.675〜2.025mmのうち、いずれかの数字に設定されることになる。
【0069】
ステップS106において、半周期の波線20aの振幅を設定する。この場合も2回の乱数発生が行われる。1回目は、ステップS105と同様に、変動方向(正負)を設定する乱数である。
【0070】
2回目は、振幅の変動幅を設定する乱数である。例えば上述した初期設定で基準の正弦波関数の振幅を0.5mm、変動幅を30%に設定した場合、半周期の波線20aの振幅は、2回目の乱数をnとしたとき、1回目の乱数が負を示すのであれば、0.5×(1−0.3×(n/100))mmとなる。1回目の乱数が正を示す場合は、0.5×(1+0.3×(n/100))mmとなる。従って、このステップS106では、半周期の波線20aの振幅として、0.35〜0.65mmのうち、いずれかの数字に設定されることになる。
【0071】
ステップS107において、半周期の波線20aの線幅を設定する。この場合も2回の乱数発生が行われる。1回目は、ステップS105と同様に、変動方向(正負)を設定する乱数である。
【0072】
2回目は、線幅の変動幅を設定する乱数である。例えば上述した初期設定で基準の正弦波関数の線幅を20μm、変動幅を20%に設定した場合、半周期の波線20aの振幅は、2回目の乱数をnとしたとき、1回目の乱数が負を示すのであれば、20×(1−0.2×(n/100))μmとなる。1回目の乱数が正を示す場合は、20×(1+0.2×(n/100))μmとなる。従って、このステップS107では、半周期の波線20aの線幅として、16〜24μmのうち、いずれかの数字に設定されることになる。
【0073】
ステップS108において、半周期の波線20aの位相を設定する。このとき、1回の乱数発生が行われる。この乱数も上述と同様に、0〜100のうち、ランダムに発生したいずれか1つの数字であり、この乱数が0〜50のいずれかであれば、位相0°に設定し、乱数が51〜100のいずれかであれば、位相180°に設定する。
【0074】
ステップS109において、設定後の半周期の波線20a(i番目の波線路20におけるj番目の半周期の波線20a)を、画像メモリのうち、設定された描画開始位置から描画する。上述した各種パラメータの設定の説明では、実際の露光パターンが把握できるように実測値で示したが、この画像メモリへの描画では、実測値をスクリーン座標にアフィン変換して行われる。以下同様である。なお、露光装置への露光パターンの送出の際には、画像メモリに描画されたパターンが実測値に基づいた大きさに変換されて露光装置に供給されることになる。あるいは、画像メモリに描画されたパターンが露光装置に供給された後に、該露光装置において実測値に基づいた大きさに変換される。
【0075】
ステップS110において、カウンタjの値を+1更新する。
【0076】
ステップS111において、i番目の波線路20について、全ての半周期の波線20aの描画が終了したか否かが判別される。この判別は、カウンタjの値が半周期の波線20aの個数Naを超えたかどうかで行われる。終了していなければ、ステップS112に進み、描画開始位置を、ステップS109にて描画した半周期の波線20aの周期だけ第1方向(X方向)に移動させた位置に設定(更新)する。その後、ステップS105に戻り、該ステップS105以降の処理、すなわち、次の半周期の波線20aの設定、描画を行う。
【0077】
i番目の波線路20について、全ての半周期の波線20aの描画が終了した段階で、図5のステップS113に進み、カウンタiの値を+1更新する。
【0078】
ステップS114において、i番目の波線路20について、全ての半周期の波線20aの描画が終了したか否かが判別される。この判別は、カウンタiの値が波線路の本数Nbを超えたかどうかで行われる。終了していなければ、ステップS115に進み、隣接する波線路間の間隔を設定する。この場合も2回の乱数発生が行われる。1回目は、ステップS105と同様に、変動方向(正負)を設定する乱数である。
【0079】
2回目は、波線路20間の間隔の変動幅を設定する乱数である。例えば上述した初期設定で波線路20間の間隔の基準値を2.7mm、変動幅を10%に設定した場合、波線路20間の間隔は、2回目の乱数をnとしたとき、1回目の乱数が負を示すのであれば、2.7×(1−0.1×(n/100))mmとなる。1回目の乱数が正を示す場合は、2.7×(1+0.1×(n/100))mmとなる。従って、このステップS115では、波線路20間の間隔として、2.43〜2.97mmのうち、いずれかの数字に設定されることになる。
【0080】
ステップS116において、行間テーブルのi番目のレコードに、ステップS115にて設定した波線路20間の間隔の情報を格納する。
【0081】
ステップS117において、描画開始位置を、i番目の波線路の先頭位置からステップS115にて設定した波線路20の間隔だけ第2方向(Y方向)に移動させた位置に設定する。その後、図4のステップS104に戻り、該ステップS104以降の処理、すなわち、次の波線路20の設定、描画を行う。
【0082】
全ての波線路20の描画が終了した段階で、図5のステップS118に進み、隣接する波線路20間を行間と定義したとき、生成した波線路20の行間数の計数に用いるカウンタkに初期値「1」をセットする。
【0083】
ステップS119において、k番目の行間に描画する1本目の副線路24の描画開始位置(第1方向の座標)を設定する。このとき、1回の乱数発生が行われる。例えば上述した初期設定で基準の正弦波関数の半周期を1.35mm、波線の個数Nbを120本とし、変動幅を20%に設定した場合、乱数をnとしたとき、1本目の副線路24の描画開始位置は、第1方向の原点(各波線路20の第1方向の描画開始位置)から1.35×120×0.2×(n/100)mmの位置となる。
【0084】
ステップS120において、k番目の行間を構成する隣接する波線路20と、ステップS119にて設定された描画開始位置を延長した線との交点(第2方向に並ぶ2つの交点)の位置を求める。
【0085】
ステップS121において、ステップS121にて求めた交点間に副線路24を描画する。
【0086】
ステップS122において、1つの行間に描画される2本目以降の副線路24の本数の計数に用いるカウンタpに初期値「1」をセットする。
【0087】
ステップS123において、行間テーブルに登録された隣接する波線間の間隔のうち、k番目の行間に対応する間隔の情報を読み出す。
【0088】
ステップS124において、読み出した間隔の情報と予め設定されている閉区画26の面積(又は閉区画26の全周の長さ)に基づいて隣接する副線路24間の距離(L1)を求める。
【0089】
ステップS125において、現在の描画開始位置に、ステップS123にて求めた副線路24間の距離を加算した位置を描画開始位置に設定(更新)する。
【0090】
ステップS126において、k番目の行間を構成する隣接する波線路20と、ステップS125にて設定された描画開始位置を延長した線との交点(第2方向に並ぶ2つの交点)の位置を求める。
【0091】
ステップS127において、ステップS126にて求めた交点間に副線路24を描画する。
【0092】
図6のステップS128において、カウンタpを+1更新する。
【0093】
ステップS129において、2本目以降の副線路の描画が終了したか否かが判別される。この判別は、カウンタpの値が副線路24の本数Ncから1を差し引いた数(Nb−1)を超えたかどうかで行われる。終了していなければ、図5のステップS123に戻り、該ステップS123以降の処理、すなわち、次の副線路24の設定、描画を行う。
【0094】
k番目の行間について、全ての副線路24の描画が終了した段階で、図6のステップS130に進み、カウンタkの値を+1更新する。
【0095】
ステップS131において、全ての行間における副線路24の描画が終了したか否かが判別される。この判別は、カウンタkの値が全行間数(波線路20の本数Nb−1)を超えたかどうかで行われる。終了していなければ、図5のステップS119に戻り、該ステップS119以降の処理、すなわち、次の行間における副線路24の設定、描画を行う。
【0096】
全ての行間における副線路24の描画が終了した段階で、次のステップS131に進み、画像メモリに描画されているパターン(露光パターン)を露光装置に出力する。この段階で、パターン生成処理が終了する。
【0097】
次に、上述した図3の工程に基づいた導電性フイルム10の具体的な製造方法について図7A〜図10を参照しながら説明する。
【0098】
第1の製造方法は、透明フイルム基材12上に設けられた銀塩感光層を露光し、現像、定着することによって形成された金属銀部と、該金属銀部に担持された導電性金属にて導電部14(配線パターン)を形成する。
【0099】
具体的には、図7Aに示すように、ハロゲン化銀36(例えば臭化銀粒子、塩臭化銀粒子や沃臭化銀粒子)をゼラチン38に混ぜてなる銀塩感光層40を透明フイルム基材12上に塗布して感光材料を得る。なお、図7A〜図7Cでは、ハロゲン化銀36を「粒々」として表記してあるが、あくまでも本発明の理解を助けるために誇張して示したものであって、大きさや濃度等を示したものではない。
【0100】
その後、図7Bに示すように、銀塩感光層40に対して導電部14の形成に必要な露光を行う。すなわち、図4〜図6に示すパターン生成処理を経て得られた露光パターンに対応したマスクパターンを介して光を銀塩感光層40に照射する。あるいは、銀塩感光層40に対するデジタル書込み露光によって、銀塩感光層40に、前記パターン生成処理にて生成された露光パターンを露光する。ハロゲン化銀36は、光エネルギーを受けると感光して「潜像」と称される肉眼では観察できない微小な銀核を生成する。
【0101】
その後、潜像を肉眼で観察できる可視化された画像に増幅するために、図7Cに示すように、現像処理を行う。具体的には、潜像が形成された銀塩感光層40を現像液(アルカリ性溶液と酸性溶液のどちらもあるが通常はアルカリ性溶液が多い)にて現像処理する。この現像処理とは、ハロゲン化銀粒子ないし現像液から供給された銀イオンが現像液中の現像主薬と呼ばれる還元剤により潜像銀核を触媒核として金属銀に還元されて、その結果として潜像銀核が増幅されて可視化された銀画像(現像銀42)を形成する。
【0102】
現像処理を終えたあとに銀塩感光層40中には光に感光できるハロゲン化銀36が残存するのでこれを除去するために図7Dに示すように定着処理液(酸性溶液とアルカリ性溶液のどちらもあるが通常は酸性溶液が多い)により定着を行う。
【0103】
この定着処理を行うことによって、露光された部位には金属銀部44が形成され、露光されていない部位にはゼラチン38のみが残存し、光透過性部46となる。すなわち、透明フイルム基材12上に金属銀部44と光透過性部46との組み合わせが形成されることになる。
【0104】
ハロゲン化銀36として臭化銀を用い、チオ硫酸塩で定着処理した場合の定着処理の反応式は以下の通りである。
【0105】
AgBr(固体)+2個のS23イオン → Ag(S232
(易水溶性錯体)
すなわち、2個のチオ硫酸イオンS23とゼラチン38中の銀イオン(AgBrからの銀イオン)が、チオ硫酸銀錯体を生成する。チオ硫酸銀錯体は水溶性が高いのでゼラチン38中から溶出されることになる。その結果、現像銀42が金属銀部44として定着されて残ることになる。
【0106】
従って、現像工程は、潜像に対し還元剤を反応させて現像銀42を析出させる工程であり、定着工程は、現像銀42にならなかったハロゲン化銀36を水に溶出させる工程である。詳細は、T.H.James, The Theory of the Photographic Process, 4th ed., Macmillian Publishing Co.,Inc, NY,Chapter15, pp.438−442. 1977を参照されたい。
【0107】
なお、現像処理は多くの場合アルカリ性溶液で行われることから、現像処理工程から定着処理工程に入る際に、現像処理にて付着したアルカリ溶液が定着処理溶液(多くの場合は酸性溶液である)に持ち込まれるため、定着処理液の活性が変わるといった問題がある。また、現像処理槽を出た後、膜に残留した現像液により意図しない現像反応がさらに進行する懸念もある。そこで、現像処理後で、定着処理工程に入る前に、酢酸(酢)溶液等の停止液で銀塩感光層40を中和もしくは酸性化することが好ましい。
【0108】
そして、図7Eに示すように、例えばめっき処理(無電解めっきや電気めっきを単独ないし組み合わせる)を行って、金属銀部44のみに導電性金属48を担持させることによって、透明フイルム基材12上に金属銀部44と、該金属銀部44に担持された導電性金属48にて導電部14が形成され、光透過性部46が開口部16となる。すなわち、透明フイルム基材12上に、図2に示すように、第1方向(X方向)に沿って形成された複数の波線路20が、第1方向と直交する第2方向(Y方向)に配列されてなる主線路パターン22と、隣接する波線路20間を電気的に接続する複数の副線路24とを有する導電部14が形成される。
【0109】
ここで、上述した銀塩感光層40を用いた方法(銀塩写真技術)と、フォトレジストを用いた方法(レジスト技術)との違いを説明する。
【0110】
レジスト技術では、露光処理により光重合開始剤が光を吸収して反応が始まりフォトレジスト膜(樹脂)自体が重合反応して現像液に対する溶解性の増大又は減少させ、現像処理により露光部分又は未露光部分の樹脂を除去する。なお、レジスト技術で現像液とよばれる液は還元剤を含まず、未反応の樹脂成分を溶解する例えばアルカリ性溶液である。一方、本発明の銀塩写真技術の露光処理では上記に記載したように、光を受けた部位のハロゲン化銀36内において発生した光電子と銀イオンからいわゆる「潜像」と呼ばれる微小な銀核が形成され、その潜像銀核が現像処理(この場合の現像液は必ず現像主薬と呼ばれる還元剤を含む)により増幅されて可視化された銀画像になる。このように、レジスト技術と銀塩写真技術とでは、露光処理から現像処理での反応が全く異なる。
【0111】
レジスト技術の現像処理では露光部分又は未露光部分の重合反応しなかった樹脂部分が除去される。一方、銀塩写真技術の現像処理では、潜像を触媒核にして現像液に含まれる現像主薬と呼ばれる還元剤により還元反応がおこり、目に見える大きさまで現像銀42が成長するものであって、未露光部分のゼラチン38の除去は行われない。このように、レジスト技術と銀塩写真技術とでは、現像処理での反応も全く異なる。
【0112】
なお、未露光部分のゼラチン38に含まれるハロゲン化銀36は、その後の定着処理によって溶出されるものであって、ゼラチン38自体の除去は行われない。
【0113】
このように、銀塩写真技術では反応(感光)主体がハロゲン化銀であるのに対し、レジスト技術では光重合開始剤である。また、現像処理では、銀塩写真技術ではバインダ(ゼラチン38)は残存するが、レジスト技術ではバインダがなくなる。このような点で、銀塩写真技術とフォトレジスト技術は大きく相違する。
【0114】
その他の製造方法(第2の製造方法)としては、図8Aに示すように、例えば透明フイルム基材12上に形成された銅箔50上のフォトレジスト膜52を形成して感光材料を得る。その後、感光材料に対して露光を行う。すなわち、図4〜図6に示すパターン生成処理を経て得られた露光パターンに対応したマスクパターンを介して光をフォトレジスト膜52に照射する。あるいは、フォトレジスト膜52に対するデジタル書込み露光によって、フォトレジスト膜52に、パターン生成装置にて生成された露光パターンを露光する。その後、現像処理することで、透明フイルム基材12上に導電部14に対応したレジストパターン54を形成し、図8Bに示すように、レジストパターン54から露出する銅箔50をエッチングする。この段階で、銅箔による導電部14が形成される。すなわち、透明フイルム基材12上に、図2に示すように、第1方向(X方向)に沿って形成された複数の波線路20が、第1方向と直交する第2方向(Y方向)に配列されてなる主線路パターン22と、隣接する波線路20間を電気的に接続する複数の副線路24とを有する導電部14が形成される。
【0115】
また、第3の製造方法としては、図9Aに示すように、透明フイルム基材12上に金属微粒子を含むペースト56を印刷し、図9Bに示すように、ペースト56に金属めっき58を行うことによって、導電部14を形成するようにしてもよい。
【0116】
あるいは、第4の製造方法として、図10に示すように、透明フイルム基材12に、図4〜図6に示すパターン生成処理を経て得られた露光パターンに対応した配線パターン14をスクリーン印刷版又はグラビア印刷版によって印刷形成するようにしてもよい。
【0117】
次に、本実施の形態に係る導電性フイルム10において、特に好ましい態様であるハロゲン化銀写真感光材料を用いる導電性金属薄膜の作製方法を中心にして述べる。
【0118】
本実施の形態に係る導電性フイルム10は、上述したように、透明フイルム基材12上に感光性ハロゲン化銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理を施すことによって露光部及び未露光部に、それぞれ金属銀部44及び光透過性部46を形成し、さらに金属銀部44に物理現像及び/又はめっき処理を施すことによって金属銀部44に導電性金属48を担持させることで製造することができる。
【0119】
本実施の形態に係る導電性フイルム10の形成方法は、感光材料と現像処理の形態によって、次の3通りの形態が含まれる。
【0120】
(1) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は熱現像して金属銀部44を該感光材料上に形成させる態様。
【0121】
(2) 物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を溶解物理現像して金属銀部44を該感光材料上に形成させる態様。
【0122】
(3) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部44を非感光性受像シート上に形成させる態様。
【0123】
上記(1)の態様は、一体型黒白現像タイプであり、感光材料上に電磁波シールドフイルムや光透過性導電膜等の透光性導電性膜が形成される。得られる現像銀は化学現像銀又は熱現像銀であり、高比表面のフィラメントである点で後続するめっき又は物理現像過程で活性が高い。
【0124】
上記(2)の態様は、露光部では、物理現像核近縁のハロゲン化銀粒子が溶解されて現像核上に沈積することによって感光材料上に透光性電磁波シールド膜や光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。これも一体型黒白現像タイプである。現像作用が、物理現像核上への析出であるので高活性であるが、現像銀は比表面は小さい球形である。
【0125】
上記(3)の態様は、未露光部においてハロゲン化銀粒子が溶解されて拡散して受像シート上の現像核上に沈積することによって受像シート上に電磁波シールドフイルムや光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。いわゆるセパレートタイプであって、受像シートを感光材料から剥離して用いる態様である。
【0126】
いずれの態様もネガ型現像処理及び反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理が可能となる)。
【0127】
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社、1955年刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Processes, 4th ed.」(Mcmillan社、1977年刊行)に解説されている。本件は液処理に係る発明であるが、その他の現像方式として熱現像方式を適用する技術も参考にすることができる。例えば、特開2004−184693号、同2004−334077号、同2005−010752号の各公報、特願2004−244080号、同2004−085655号の各明細書に記載された技術を適用することができる。
【0128】
(感光材料)
被めっき素材としての感光材料(感光ウエブ)は、例えば、透明フイルム基材12上に銀塩(例えばハロゲン化銀)が含有した銀塩含有層を設けた長尺フレキシブル基材である。また、銀塩含有層上には保護層が設けられていてもよく、この保護層とは例えばゼラチンや高分子ポリマーといったバインダーからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために銀塩含有層上に形成される。保護層の厚みは0.02〜20μmであることが好ましい。
【0129】
これらの銀塩含有層や保護層の組成等は、銀塩写真フィルム、印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に適用されるハロゲン化銀乳剤層(銀塩含有層)や保護層を適宜適用することができる。
【0130】
特に、感光材料としては、銀塩写真フィルム(銀塩感光材料)が好ましく、白黒銀塩写真フィルム(白黒銀塩感光材料)が最もよい。また、銀塩含有層に適用する銀塩としては、特にハロゲン化銀が最も好適である。なお、感光材料の幅は、例えば、20cm以上とし、厚みは50〜200μmとすることがよい。
【0131】
[透明フイルム基材12]
本実施の形態の製造方法に用いられる感光材料の透明フイルム基材12としては、プラスチックフイルム等を用いることができる。
【0132】
上記プラスチックフイルムの原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVA等のポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、PVB等のビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
【0133】
本実施の形態においては、透光性、耐熱性、取り扱い易さ及び価格の点から、上記プラスチックフイルムはポリエチレンテレフタレートフイルム又はトリアセチルセルロース(TAC)であることが好ましい。
【0134】
窓ガラス用の透明発熱体では透光性が要求されるため、透明フイルム基材12の透光性は高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフイルムの全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。また、本発明では、前記プラスチックフイルムとして本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0135】
本実施の形態におけるプラスチックフイルムは、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フイルムとして用いることも可能である。
【0136】
[保護層]
用いられる感光材料は、後述する乳剤層上に保護層を設けていてもよい。本実施の形態において「保護層」とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する乳剤層に形成される。上記保護層はめっき処理する上では設けない方が好ましく、設けるとしても薄い方が好ましい。その厚みは0.2μm以下が好ましい。上記保護層の塗布方法の形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法を適宜選択することができる。
【0137】
[乳剤層]
本実施の形態の製造方法に用いられる感光材料は、透明フイルム基材12上に、光センサとして銀塩を含む乳剤層(銀塩含有層)を有することが好ましい。本実施の形態における乳剤層には、銀塩のほか、必要に応じて、染料、バインダ、溶媒等を含有することができる。
【0138】
<銀塩>
本実施の形態で用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩が好ましく、特に銀塩がハロゲン化銀写真感光材料用ハロゲン化銀粒子の形で用いられるのが好ましい。ハロゲン化銀は、光センサとしての特性に優れている。
【0139】
ハロゲン化銀写真感光材料の写真乳剤の形で好ましく用いられるハロゲン化銀について説明する。
【0140】
本実施の形態では、光センサとして機能させるためにハロゲン化銀を使用することが好ましく、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本実施の形態においても用いることができる。
【0141】
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらの組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、さらにAgBrやAgClを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀もまた好ましく用いられる。より好ましくは、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀であり、最も好ましくは、塩化銀50モル%以上を含有する塩臭化銀、沃塩臭化銀が用いられる。
【0142】
なお、ここで、「AgBr(臭化銀)を主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。このAgBrを主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに沃化物イオン、塩化物イオンを含有していてもよい。
【0143】
本実施の形態に用いられるハロゲン化銀乳剤は、VIII族、VIIB族に属する金属を含有してもよい。特に、4以上の階調を得るためや低かぶりを達成するために、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテニウム化合物、鉄化合物、オスミウム化合物等を含有することが好ましい。
【0144】
また、高感度化のためにはK4〔Fe(CN)6〕やK4〔Ru(CN)6〕、K3〔Cr(CN)6〕のごとき六シアノ化金属錯体のドープが有利に行われる。
【0145】
これらの化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当り10-10〜10-2モル/モルAgであることが好ましく、10-9〜10-3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0146】
その他、本実施の形態では、Pd(II)イオン及び/又はPd金属を含有するハロゲン化銀も好ましく用いることができる。Pdはハロゲン化銀粒子内に均一に分布していてもよいが、ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有させることが好ましい。ここで、Pdが「ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有する」とは、ハロゲン化銀粒子の表面から深さ方向に50nm以内において、他層よりもパラジウムの含有率が高い層を有することを意味する。
【0147】
このようなハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化銀粒子を形成する途中でPdを添加することにより作製することができ、銀イオンとハロゲンイオンとをそれぞれ総添加量の50%以上添加した後に、Pdを添加することが好ましい。また、Pd(II)イオンを後熟時に添加する等の方法でハロゲン化銀表層に存在させることも好ましい。
【0148】
このPd含有ハロゲン化銀粒子は、物理現像や無電解めっきの速度を速め、所望の発熱体の生産効率を上げ、生産コストの低減に寄与する。Pdは、無電解めっき触媒としてよく知られて用いられているが、本発明では、ハロゲン化銀粒子の表層にPdを偏在させることが可能なため、極めて高価なPdを節約することが可能である。
【0149】
本実施の形態において、ハロゲン化銀に含まれるPdイオン及び/又はPd金属の含有率は、ハロゲン化銀の、銀のモル数に対して10-4〜0.5モル/モルAgであることが好ましく、0.01〜0.3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0150】
使用するPd化合物の例としては、PdCl4や、Na2PdCl4等が挙げられる。
【0151】
本実施の形態では、さらに光センサとしての感度を向上させるため、写真乳剤で行われる化学増感を施すこともできる。化学増感の方法としては、硫黄増感、セレン増感、テルル増感等のカルコゲン増感、金増感等の貴金属増感、還元増感等を用いることができる。これらは、単独又は組み合わせて用いられる。上記化学増感の方法を組み合わせて使用する場合には、例えば、硫黄増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法と金増感法、硫黄増感法とテルル増感法と金増感法等の組み合わせが好ましい。
【0152】
<バインダ>
乳剤層には、銀塩粒子を均一に分散させ、且つ、乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダを用いることができる。本発明において、上記バインダとしては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれもバインダとして用いることができるが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
【0153】
上記バインダとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0154】
乳剤層中に含有されるバインダの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。例えば乳剤層中に含有されるバインダの含有量として、銀塩含有層中のAg/バインダ体積比が1/4以上になるように調節したり、1/2以上になるように調節することができる。
【0155】
<溶媒>
上記乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0156】
本発明の乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、前記乳剤層に含まれる銀塩、バインダ等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0157】
次に、導電部14を形成するための各工程について説明する。
【0158】
[露光]
本実施の形態では、透明フイルム基材12上に設けられた銀塩乳剤層58を有する感光材料への露光が行われる。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
【0159】
パターン像を形成させる露光方式としては、均一光をマスクパターンを介して感光面に照射してマスクパターンを像様形成させる面露光方式と、レーザ光等のビームを走査してパターン状の照射部を感光性面上に形成させる走査露光方式とがある。コンパクトで、安価、さらに寿命が長く、安定性が高い装置を設計するためには、露光は半導体レーザを用いて行うことが最も好ましい。
【0160】
[現像処理]
本実施の形態では、乳剤層を露光した後、さらに現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、市販品では、例えば、富士フイルム社処方のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、KODAK社処方のC−41、E−6、RA−4、D−19、D−72等の現像液、又はそのキットに含まれる現像液を用いることができる。また、リス現像液を用いることもできる。
【0161】
リス現像液としては、KODAK社処方のD85等を用いることができる。本発明では、上記の露光及び現像処理を行うことにより露光部に金属銀部44、好ましくはパターン状金属銀部が形成されると共に、未露光部に上述した光透過性部46が形成される。
【0162】
現像処理で用いられる現像液は、画質を向上させる目的で、画質向上剤を含有することができる。画質向上剤としては、例えばベンゾトリアゾール等の含窒素へテロ環化合物を挙げることができる。また、リス現像液を利用する場合、特に、ポリエチレングリコールを使用することも好ましい。
【0163】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
【0164】
本実施の形態における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透光性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープが挙げられる。
【0165】
[物理現像及びめっき処理]
本実施の形態では、上述した露光及び現像処理により形成された金属銀部44の導電性を向上させる目的で、金属銀部44に導電性金属粒子を担持させるための物理現像及び/又はめっき処理を行ってもよい。本実施の形態では物理現像又はめっき処理のいずれか一方のみで導電性金属粒子を金属銀部44に担持させることが可能であるが、さらに物理現像とめっき処理とを組み合わせて導電性金属粒子を金属銀部44に担持させることもできる。
【0166】
[カレンダー処理]
現像処理済みの金属銀部44(全面金属銀部、金属メッシュパターン部又は金属配線パターン部)にカレンダー処理を施して平滑化するようにしてもよい。これによって金属銀部44の導電性が顕著に増大する。カレンダー処理は、カレンダーロールにより行うことができる。カレンダーロールは通常一対のロールからなる。
【0167】
カレンダー処理に用いられるロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のプラスチックロール又は金属ロールが用いられる。特に、両面に乳剤層を有する場合は、金属ロール同士で処理することが好ましい。片面に乳剤層を有する場合は、シワ防止の点から金属ロールとプラスチックロールの組み合わせとすることもできる。線圧力の上限値は1960N/cm(200kgf/cm、面圧に換算すると699.4kgf/cm2)以上、さらに好ましくは2940N/cm(300kgf/cm、面圧に換算すると935.8kgf/cm2)以上である。線圧力の上限値は、6880N/cm(700kgf/cm)以下である。
【0168】
カレンダーロールで代表される平滑化処理の適用温度は10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、金属メッシュパターンや金属配線パターンの画線密度や形状、バインダ種によって異なるが、おおよそ10℃(温調なし)〜50℃の範囲にある。
【0169】
[蒸気接触処理]
カレンダー処理の直前あるいは直後に蒸気に接触させるとカレンダー処理による効果をより引き出すことができる。すなわち、導電性を著しく向上させることができる。使用する蒸気の温度は80℃以上が好ましく、100℃以上140℃以下がさらに好ましい。蒸気への接触時間は10秒から5分程度が好ましく、1分から5分がさらに好ましい。
【0170】
なお、本発明は、下記表1及び表2に記載の公開公報及び国際公開パンフレットの技術と適宜組合わせて使用することができる。「特開」、「号公報」、「号パンフレット」等の表記は省略する。
【0171】
【表1】

【0172】
【表2】

【実施例】
【0173】
以下に、本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0174】
[第1実施例]
(ハロゲン化銀感光材料)
水媒体中のAg60gに対してゼラチン10.0gを含む、球相当径平均0.1μmの沃臭塩化銀粒子(I=0.2モル%、Br=40モル%)を含有する乳剤を調製した。
【0175】
また、この乳剤中にはK3Rh2Br9及びK2IrCl6を濃度が10-7(モル/モル銀)になるように添加し、臭化銀粒子にRhイオンとIrイオンをドープした。この乳剤にNa2PdCl4を添加し、さらに塩化金酸とチオ硫酸ナトリウムを用いて金硫黄増感を行った後、ゼラチン硬膜剤と共に、銀の塗布量が1g/m2となるようにポリエチレンテレフタレート(PET)上に塗布した。この際、Ag/ゼラチン体積比は1/2とした。
【0176】
幅30cmのPET支持体に25cmの幅で20m分塗布を行ない、塗布の中央部24cmを残すように両端を3cmずつ切り落としてロール状のハロゲン化銀感光材料を得た。
【0177】
(露光パターンの生成)
図4のステップS101における初期関数として、基準となる正弦波情報を入力した。この正弦波情報は、半周期が1.35mm、振幅が0.5mmである。また、ステップS102での初期設定として、波線路20間の間隔を2.7mmとした。この際、振幅が線間隔を越えない範囲で設定した。波線路20の線幅を20μm、半周期の波線の個数Naを120個、主線路パターン22に含まれる波線路20の本数Nbを60本、隣接する一組の波線路20間に配線される副線路24の本数Ncを2本とした。
【0178】
擬似乱数発生器には、例としてMersenne Twisterを用い、周期が219937−1となる。不規則性は、基準となる正弦波の周期、振幅、線間隔に対して、最大何パーセントまで許容するかで規定した。周期に±50%、振幅に±30%、線間隔に±10%と設定した場合、周期は最大で|0.675|mm、振幅は|0.15|mm、線間隔は|0.27|mmの範囲で変化させることができる。図4〜図6に示すフローチャートで示すように、波線20aを半周期分描画する毎に、上記乱数発生器により擬似乱数を取得(0−100に変換)し、次に描画する半周期分のパラメータを更新するようにした。
【0179】
一方向に不規則性を有する波線20aが120個描画されると、線間隔に上記範囲の不規則性を有した線間隔をあけて隣接する波線路20を描画する。この際の線間隔も1ライン描画されるごとに乱数を取得して更新される。
【0180】
一方向の波線路20の描画、すなわち、主線路パターン22の描画が終わると、既に描画された主線路パターン22の各行間に設定された本数だけ、閉区画26の面積が同じになるように、副線路24を描画した。
【0181】
露光パターンの描画(主線路パターン22の描画及び副線路の描画)が終了した段階で、露光パターンを露光装置に入力した。
【0182】
(露光)
ハロゲン化銀感光材料に対する露光パターンの露光は、特開2004−1224号公報の発明の実施の形態記載のDMD(デジタル・ミラー・デバイス)を用いた露光ヘッドを25cm幅になるように並べ、感光材料の感光層上にレーザ光が結像するように露光ヘッド及び露光ステージを湾曲させて配置し、感材送り出し機構及び巻取り機構を取り付けた上、露光面のテンション制御及び巻取り、送り出し機構の速度変動が露光部分の速度に影響しないようにバッファ作用を有する撓みを設けた連続露光装置にて行った。露光の波長は400nmで、ビーム形は12μmの略正方形、及びレーザ光源の出力は100μJであった。
【0183】
(現像処理)
・現像液1L処方
ハイドロキノン 20 g
亜硫酸ナトリウム 50 g
炭酸カリウム 40 g
エチレンジアミン・四酢酸 2 g
臭化カリウム 3 g
ポリエチレングリコール2000 1 g
水酸化カリウム 4 g
pH 10.3に調整
・定着液1L処方
チオ硫酸アンモニウム液(75%) 300 ml
亜硫酸アンモニウム・1水塩 25 g
1,3−ジアミノプロパン・四酢酸 8 g
酢酸 5 g
アンモニア水(27%) 1 g
pH 6.2に調整
【0184】
上記処理剤を用いて露光済み感材を、富士フイルム社製自動現像機 FG−710PTSを用いて処理条件:現像35℃ 30秒、定着34℃ 23秒、水洗 流水(5L/分)の20秒処理で行った。
【0185】
ランニング条件として、感材の処理量を100m2/日で現像液の補充を500ml/m2、定着液を640ml/m2で3日間行った。このとき、めっき処理後の銅のパターンが12μm線幅300ミクロンピッチであることが確認された。
【0186】
さらに、めっき液(硫酸銅0.06モル/L,ホルマリン0.22モル/L,トリエタノールアミン0.12モル/L,ポリエチレングリコール100ppm、黄血塩50ppm、α、α‘−ビピリジン20ppmを含有する、pH=12.5の無電解Cuめっき液)を用い、45℃にて無電解銅めっき処理を行った後、10ppmのFe(III)イオンを含有する水溶液で酸化処理を行ない、10種類の導電性フイルムを得た。
【0187】
〔評価〕
(表面抵抗測定)
表面抵抗率の均一性を評価するために、導電性フイルム10の表面抵抗率をダイアインスツルメンツ社製ロレスターGP(型番MCP−T610)直列4探針プローブ(ASP)にて任意の10箇所測定した値の平均値である。
【0188】
(ぎらつきの評価)
導電性フイルム10を設置するための透明板を配置する。透明板は厚さ5mmのガラスでできており、窓ガラスを模している。透明板に導電性フイルムを貼り付け、部屋を暗室にし、透明板から3mの距離に白熱灯(40ワット球)を点灯させ、透明板越しに光を観察し、回折光の干渉によるぎらつきの目視観察・評価を行った。ぎらつきの視認性は透明板の正面(導電性フイルム10が設置された面)から観察距離1mで行った。
【0189】
(評価結果)
10枚の導電性フイルム共に、ぎらつきは顕在化せず、表面抵抗率も透明発熱体として十分に実用化できるレベルであり、透光性も良好であった。
【0190】
[第2実施例]
次に、図4〜図6に示すパターン生成処理を調整して、閉区画(四角形)の第1辺の長さL1と第2辺の長さL2の比(L1/L2)を様々に変え、第1実施例と同様にして、6種類の導電性フイルム(サンプル1〜6)を得た。サンプル1〜6の内訳は、図11に示すように、サンプル1は比(L1/L2)が1、サンプル2は比(L1/L2)が2.5、サンプル3は比(L1/L2)が5、サンプル4は比(L1/L2)が10、サンプル5は比(L1/L2)が50、サンプル6は比(L1/L2)が100である。
【0191】
サンプル1〜6について、4名の評価者によって、回折像及び配線視認性の官能評価を行った。評価結果を図11に示す。図11のグラフは、横軸に比(L1/L2)、縦軸に評価点をとったものである。回折像の評価結果を「△」、配線視認性の評価結果を「○」で示す。また、評価点の内訳は、以下の通りである。
評価点0:非常に目立つ
評価点1:目立つ
評価点2:わずかに目立つ
評価点3:ほとんど目立たない
評価点4:全く目立たない
【0192】
図11の評価結果から、比(L1/L2)が5以上であれば、回折像及び配線視認性がほとんど目立たず、比(L1/L2)が50以上であれば、回折像及び配線視認性が目立たないことがわかる。
【0193】
なお、本発明に係る導電性フイルム及び透明発熱体は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0194】
10…導電性フイルム 12…透明フイルム基材
14…導電部 16…開口部
20…波線路 20a…波線
22…主線路パターン 24…副線路
40…銀塩感光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フイルム基材上に導電部と開口部とを有する導電性フイルムにおける導電部を構成する配線パターンをコンピュータを使用して生成するパターン生成方法において、
前記導電部は、第1方向に沿って形成された複数の波線路が、前記第1方向と直交する第2方向に配列されてなる主線路パターンと、隣接する波線路間を電気的に接続する複数の副線路とを有し、
初期関数を入力するステップと、
前記初期関数の少なくとも周期をランダムに変更しながら第1方向に波線路のパターンを生成する第1ステップと、
描画された前記波線路と、該波線路に隣接する波線路との第2方向(前記第1方向と直交する方向)の間隔をランダムに変更する第2ステップと、
前記第1ステップと第2ステップとを繰り返して、前記第1方向に沿って形成された複数の波線路が、前記第1方向と直交する前記第2方向に配列されてなる前記主線路パターンを生成する第3ステップと、
隣接する波線路間を行間と定義したとき、前記主線路パターンにおける各行間において、隣接する波線路を接続する2以上の副線路のパターンを生成する第4ステップとを有することを特徴とするパターン生成方法。
【請求項2】
請求項1記載のパターン生成方法において、
前記第3ステップは、前記第1ステップが前記コンピュータの画像メモリに前記波線路のパターンを描画することで、前記画像メモリに前記主線路パターンを描画し、
前記第4ステップは、前記画像メモリに前記副線路のパターンを描画し、
前記画像メモリに前記配線パターンを描画することを特徴とするパターン生成方法。
【請求項3】
請求項1記載のパターン生成方法において、
前記初期関数は正弦波関数であり、
前記第1ステップは、前記正弦波の半周期の波線を、半周期毎に少なくとも前記正弦波の周期をランダムに変更しながら生成して、前記波線路のパターンを生成することを特徴とするパターン生成方法。
【請求項4】
請求項3記載のパターン生成方法において、
前記第1ステップは、前記正弦波の半周期の波線を、半周期毎に少なくとも前記正弦波の周期及び振幅をランダムに変更しながら生成して、前記波線路のパターンを生成することを特徴とするパターン生成方法。
【請求項5】
請求項3記載のパターン生成方法において、
前記第1ステップは、前記正弦波の半周期の波線を、半周期毎に少なくとも前記正弦波の周期、振幅及び位相をランダムに変更しながら生成して、前記波線路のパターンを生成することを特徴とするパターン生成方法。
【請求項6】
請求項3記載のパターン生成方法において、
前記第1ステップは、前記正弦波の半周期の波線を、半周期毎に周期、振幅、位相及び線幅をランダムに変更しながら生成して、前記波線路のパターンを生成することを特徴とするパターン生成方法。
【請求項7】
請求項3記載のパターン生成方法において、
前記第2ステップは、
一方の波線路における前記波線の振幅の最大値が、該一方の波線路に隣接する他方の波線路との間の間隔の1/2以下に制限して、前記間隔を設定することを特徴とするパターン生成方法。
【請求項8】
請求項1記載のパターン生成方法において、
前記第4ステップは、前記第2方向に沿った直線状の前記副線路のパターンを生成することを特徴とするパターン生成方法。
【請求項9】
請求項1記載のパターン生成方法において、
前記第4ステップは、各行間毎にそれぞれ前記副線路の位置をランダムに変更しながら前記副線路のパターンを生成することを特徴とするパターン生成方法。
【請求項10】
請求項1記載のパターン生成方法において、
前記配線パターンは、
隣接する波線路の各中心線と、該隣接する波線路間における隣接する副線路の各中心線とで囲まれる閉区画の形状が四角形であり、
前記閉区画が多数配列された形態を有することを特徴とするパターン生成方法。
【請求項11】
請求項10記載のパターン生成方法において、
各前記閉区画の面積がほぼ同一であることを特徴とするパターン生成方法。
【請求項12】
請求項10記載のパターン生成方法において、
各前記閉区画の周囲の長さがほぼ同一であることを特徴とするパターン生成方法。
【請求項13】
請求項10記載のパターン生成方法において、
前記閉区画を構成する波線路の中心線による第1辺の長さをL1、前記閉区画を構成する副線路の中心線による第2辺の長さをL2としたとき、
前記第1辺の長さL1と前記第2辺の長さL2の比(L1/L2)は5以上であることを特徴とするパターン生成方法。
【請求項14】
透明フイルム基材上に導電部と開口部とを有する導電性フイルムにおける導電部を構成する配線パターンを生成するパターン生成プログラムであって、
前記導電部は、第1方向に沿って形成された複数の波線路が、前記第1方向と直交する第2方向に配列されてなる主線路パターンと、隣接する波線路間を電気的に接続する複数の副線路とを有し、
コンピュータに、
初期関数を入力するステップ、
前記初期関数の少なくとも周期をランダムに変更しながら第1方向に波線路のパターンを生成する第1ステップ、
描画された前記波線路と、該波線路に隣接する波線路との第2方向(前記第1方向と直交する方向)の間隔をランダムに変更する第2ステップ、
前記第1ステップと第2ステップとを繰り返して、前記第1方向に沿って形成された複数の波線路が、前記第1方向と直交する前記第2方向に配列されてなる前記主線路パターンを生成する第3ステップ、
隣接する波線路間を行間と定義したとき、前記主線路パターンにおける各行間において、隣接する波線路を接続する2以上の副線路のパターンを生成する第4ステップを実行させるためのパターン生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−210888(P2011−210888A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76251(P2010−76251)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】