説明

パチンコ遊技機、パチンコ遊技機用の施錠装置

【課題】不正行為を抑制するのに有利なパチンコ遊技機及びパチンコ遊技機用の施錠装置を提供する。
【解決手段】パチンコ遊技機用の施錠装置は、固定体と、固定体に開閉回動可能の枢支された開閉扉とを備え、開閉扉を固定体に施錠する施錠装置が設けられ、施錠装置は、単数箇所をロックする。またパチンコ遊技機は、遊技機本体1と、パチンコ遊技面30を備えると共にパチンコ球発射用の操作部5とを備え遊技機本体1に開閉回動可能に枢支された前面扉3とを備える。前面扉3を遊技機本体1に施錠する施錠装置6が設けられている。施錠装置6のロック係止部(61)は前面扉3の高さ方向において単数個所をロックする方式とされている。施錠装置6は、前面扉3の上端面3uと操作部5の中心PCとを最短距離で結ぶ長さLAの中心点高さをPEとすると、施錠装置6のロック係止部(61)は中心点高さPEよりも操作部5に接近する側に設けられていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパチンコ球を用いて遊技するパチンコ遊技機及びパチンコ遊技機用の施錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機は健全な娯楽として広く普及している。特許文献1は、遊技機本体と、前面にパチンコ遊技面を備えると共にパチンコ球発射用の操作部とを備え且つ遊技機本体に開閉回動可能に枢支された前面扉とを備えるパチンコ遊技機に使用される施錠装置が開示されている。この施錠装置は、上部と下部との2点において前面扉と遊技機本体とを係止させる施錠装置が設けられている。施錠装置は、鈎部材を一方向に傾動させることで施錠が行われ、鈎部材を他方向に傾動させることで解錠が行われる。
【特許文献1】特開平6−6501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
パチンコ遊技機は前述のように健全な娯楽として広く普及しているにもかかわらず、不正行為者は皆無とは言えない。不正行為者対策は、パチンコ遊技機を健全な娯楽として広く普及させるためにも重要である。
【0004】
上記した従来技術によれば、施錠装置は、上部と下部との2点ロック方式において前面扉と遊技機本体とを係止させる施錠装置が設けられている。このため施錠装置自体が複雑な機構となり、部品点数が多くなる。このため、ゴト師とも呼ばれる不正行為者が針金等の異物を前面扉と遊技機本体との間に差し込んで不正行為を行うとき、施錠装置を構成する部品に針金等の異物が触れる確率が増加し、不正行為を許容することになりかねないおそれがある。
【0005】
また、遊技機本体を閉鎖する前面扉はパチンコ球発射用の操作部を備えていることが多い。操作部は、前面扉において遊技者側に突出している。しかもパチンコ球発射用の操作部は、遊技者が操作し易いように、前面扉の下部側に設けられているため、不正行為者が周囲に気づかれないように不正行為を行なうときには、操作部は不正行為の対象となり易いおそれがある。更に、操作部は前面扉の下部側に設けられているため、操作部を強制的に引っ張る不正行為が行われるときであっても、その不正行為を監視カメラから監視するには限界がある。このためパチンコ球発射用の操作部を遊技者側に強制的に引張ることにより、前面扉と遊技機本体との間に隙間を強制的に形成し、針金等の異物を隙間を介して差し込んで不正行為が行われることも間々ある。
【0006】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、不正行為を抑制するのに有利なパチンコ遊技機及びパチンコ遊技機用の施錠装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者はパチンコ遊技機の不正行為対策について鋭意開発を進めている。そして、次の(1)(2)を知見した。本発明はこの知見に基づいて開発されたものである。
【0008】
(1)パチンコ遊技機においては、上部と下部との2点ロック方式において前面扉等の開閉扉と遊技機本体等の固定体とを係止させる施錠装置よりも、高さ方向のほぼ中間領域でロックするシングルロック方式の方が不正行為対策として有効であることを、本発明者は知見した。シングルロック方式の方が施錠装置自体が単純な機構となり、部品点数が少なくなる。このため、ゴト師とも呼ばれる不正行為者が針金等の異物を前面扉等の開閉扉と遊技機本体等の固定体との間に差し込んで不正行為を行うとき、施錠装置を構成する部品に針金等の異物が触れる確率が低減される。
【0009】
(2)パチンコ遊技機では、パチンコ球発射用の操作部の高さ位置に施錠装置の高さ位置を近づけることが好ましいことを、本発明者は知見した。パチンコ球発射用の操作部を強制的に引張って隙間を形成するという不正行為に対する施錠装置の対抗性が高まり、パチンコ球発射用の操作部を引張って隙間を形成するという不正行為を抑えるのに有利となるためである。もっとも、前面扉の上端面側は施錠装置から遠くなるが、前面扉の上端面側においてはそもそも、不正行為の起点となり易い突出するパチンコ球発射用の操作部が存在しないこと、更に、前面扉の上端面側においては前面扉の下端面側の不正行為とは異なり、監視カメラ、周囲の遊技者、店員等に視認され易く、不正行為の対象となる頻度が相対的に低い。
【0010】
すなわち、第1発明に係るパチンコ遊技機は、遊技機本体と、パチンコ遊技面を備えると共にパチンコ球発射用の操作部を備え且つ遊技機本体に開閉回動可能に枢支された前面扉とを具備するパチンコ遊技機において、前面扉を遊技機本体に施錠する施錠装置が設けられ、施錠装置は前面扉の高さ方向において単数個所をロックすることを特徴とするものである。
【0011】
第1発明に係るパチンコ遊技機によれば、施錠装置は前面扉の高さ方向において単数個所をロックするものであり、従って、上部と下部との2点において前面扉と遊技機本体とを係止させる施錠装置が設けられている従来技術に比較して、部品点数の削減、サイズの小型化に有利となる。従って、不正行為の際に、施錠装置を構成する部品に針金等の異物が触れる確率が低減される。よって不正行為を抑制するのに有利となる。
【0012】
第2発明に係るパチンコ遊技機は、遊技機本体と、パチンコ遊技面を備えると共にパチンコ球発射用の操作部を備え且つ遊技機本体に開閉回動可能に枢支された前面扉とを具備するパチンコ遊技機において、施錠装置は前面扉の高さ方向において単数個所をロックする構成であり、且つ、前面扉を遊技機本体に施錠する施錠装置が設けられ、施錠装置は、前面扉の上端面と操作部の中心とを最短距離で結ぶ長さの中心点高さをPEとすると、施錠装置の施錠機能を果たすロック係止部は中心点高さPEと操作部との間の領域内に設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
第2発明に係るパチンコ遊技機によれば、施錠装置の施錠機能を果たすロック係止部は、前記した中心点高さPEと操作部との間の領域内に設けられている。このため不正行為者が前面扉の操作部を強制的に引張って、前面扉と遊技機本体との間の領域内に隙間を強制的に形成するときであっても、隙間の隙間幅をできるだけ小さくすることができる。故に不正行為を抑制するのに有利となる。
【0014】
第3発明に係るパチンコ遊技機用の施錠装置は、パチンコ遊技面を備えると共にパチンコ球発射用の操作部を備え且つ遊技機本体に開閉回動可能に枢支された前面扉を、パチンコ遊技機の遊技機本体に施錠するパチンコ遊技機用の施錠装置において、施錠装置は前面扉の高さ方向において単数個所をロックすることを特徴とするものである。
【0015】
第3発明に係るパチンコ遊技機用の施錠装置によれば、上部と下部との2点において前面扉と遊技機本体とを係止させる施錠装置が設けられている従来技術に比較して、部品点数の削減、サイズの小型化に有利となる。従って、不正行為の際に、施錠装置を構成する部品に針金等の異物が触れる確率が低減される。よって不正行為を抑制するのに有利となる。
【0016】
第4発明に係るパチンコ遊技機用の施錠装置は、パチンコ遊技面を備えると共にパチンコ球発射用の操作部を備え且つ遊技機本体に開閉回動可能に枢支された前面扉を、パチンコ遊技機の遊技機本体に施錠するパチンコ遊技機用の施錠装置において、施錠装置は前面扉の高さ方向において単数個所をロックする構成であり、前面扉の上端面と操作部の中心とを最短距離で結ぶ長さの中心点高さをPEとすると、施錠装置の施錠機能を果たすロック係止部は中心点高さPEと操作部との間の領域内に設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
第4発明に係るパチンコ遊技機によれば、施錠装置の施錠機能を果たすロック係止部は、前記した中心点高さPEと操作部との間の領域内に設けられている。このため不正行為者が前面扉の操作部を強制的に引張って、前面扉と遊技機本体との間に隙間を強制的に形成するときであっても、隙間の隙間幅をできるだけ小さくすることができる。故に操作部を起点する不正行為を抑制するのに有利となる。
【0018】
第5発明に係るパチンコ遊技機用の施錠装置は、固定体と、固定体に開閉回動可能の枢支された開閉扉とを具備するパチンコ遊技機用の施錠装置において、開閉扉を固定体に施錠する施錠装置が設けられ、施錠装置は、単数箇所をロックすることを特徴とするものである。
【0019】
第5発明に係るパチンコ遊技機用の施錠装置によれば、施錠装置は開閉扉において単数個所をロックするものであり、従って、2点において開閉扉をロック係止させる施錠装置が設けられている従来技術に比較して、部品点数の削減、サイズの小型化に有利となる。従って、不正行為の際に、施錠装置を構成する部品に針金等の異物が触れる確率が低減される。よって不正行為を抑制するのに有利となる。また、2点をロックするものは、2点が同時に施錠されず、どちらか一方のみが施錠され、所謂半ドア状態になる場合がある。このとき、施錠した者は施錠したと勘違いしてしまう可能性もあり、防犯管理上の観点から単数箇所をロックするものの方が管理しやすいという利点もある。
【0020】
なお開閉扉としては、パチンコ遊技機(アレンジボール遊技機を含む)において開閉可能な扉であれば良く、前面扉でも良いし、遊技面を視認する透明扉でも良いし、場合によっては、開閉式に枢支されている他の扉でも良い。固定体としては、開閉扉が開閉可能に枢支されているものであれば良い。
【発明の効果】
【0021】
第1発明〜第4発明によれば、パチンコ球発射用の操作部の引張りを起点とする不正行為を抑制するのに有利なパチンコ遊技機及びパチンコ遊技機用の施錠装置を提供することができる。
【0022】
第5発明によれば、部品点数の削減、サイズの小型化に有利であり、更に不正行為を抑制するのに有利なパチンコ遊技機用の施錠装置を提供することができる。従って、パチンコ球発射用の操作部の引張りを起点とする不正行為を抑制するのに有利なパチンコ遊技機を対象とする施錠装置を提供することができる。更には、第5発明によれば、パチンコ球発射用の操作部を装備していないパチンコ遊技機を対象とする施錠装置を提供することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、好ましい形態について説明を加える。本発明に係るパチンコ遊技機は、遊技機本体と、遊技機本体の前面に位置すると共に遊技機本体に開閉回動可能に枢支された前面扉とを備える。前面扉はパチンコ遊技面を備えると共にパチンコ球発射用の操作部を備えている。操作部はパチンコ球を発射させるために、遊技者等が操作するためのものである。操作部は、遊技者が操作しやすいように、一般的には、遊技者に対向しつつ前面扉の下部に設けられている。
【0024】
好ましくは、前面扉の上端面と操作部の中心とを最短距離で結ぶ長さLAの中心点高さをPEとすると、施錠装置の施錠機能を果たすロック係止部の高さ位置は、この中心点高さPEと操作部との間の領域内に設けられている。このため不正行為者が前面扉の操作部を強制的に不正行為者側に引張って、前面扉と遊技機本体との間に隙間を強制的に形成し、隙間を介して不正行為をせんとするときであっても、その隙間の隙間幅をできるだけ小さくすることができる。故に、前面扉の操作部を起点とする不正行為を抑制するのに有利となる。
【0025】
本発明によれば、前面扉の上端面と操作部の中心とを最短距離で結ぶ長さをLAとし、その長さLAを100%とするとき、施錠装置の施錠機能を果たすロック係止部の高さ位置Mは、操作部の中心から上方に相対表示で15〜45%の領域内に設けられていることが好ましい。この場合、前記した長さLAを100%とするとき、施錠装置の施錠機能を果たすロック係止部は、操作部の中心から上方に相対表示で、必要に応じて、15〜30%の領域内、または、15〜25%の領域内、または、20〜30%の領域内、または、30〜40%の領域内に設けられている形態を例示することができる。
【0026】
単数個所をロックする場合には、施錠装置の施錠機能を果たすロック係止部が位置的に操作部にあまりに接近していると、不正行為者により操作部の反対側(前面扉の上端面側)が強制的に開けられるとき、小さな荷重でも隙間が形成されてしまうおそれがある。このため施錠装置の施錠機能を果たすロック係止部としては、操作部の中心から上方に相対表示で15〜45%の領域内に設けられていることが好ましい。
【0027】
換言すると、前面扉の上端面と操作部の中心とを最短距離で結ぶ長さをLAとし、その長さLAを100%とするとき、施錠装置の施錠機能を果たすロック係止部としては、前面扉の上面から下方に相対表示で85〜65%の領域内に設けられていることが好ましい。
【0028】
施錠装置の施錠機能を果たすロック係止部としては、上記した位置関係を容易に特定できるように、施錠装置の施錠機能を果たす部品のうち可動しない部位とすることができる。従って、施錠装置の施錠機能を果たすロック係止部としてはストライカーを例示することができる。
【0029】
本発明は、パチンコ球を遊技媒体として使用するパチンコ遊技機に適用される。パチンコ遊技機にはアレンジボール遊技機等も含まれる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ具体的に説明する。パチンコ遊技機は、固定体として機能する遊技機本体1(一般的には、外枠という)と、遊技機本体1の前面に設けられた開閉扉として機能する前面扉3(一般的には、前枠という)とを備える。遊技機本体1は、下端面1d、上端面1u、側端面1sを有する。前面扉3はヒンジ部1k(枢支部)により遊技機本体1に開閉可能に枢支されている。上記前面扉3の前面には、パチンコ遊技に使用される各種器具30a,30b,30c,30d等を有するパチンコ遊技面30(一般的には、パチンコ遊技盤)が設けられている。前面扉3には、パチンコ遊技面30を覆う透明ガラス40を主要素とする透明扉4が開閉可能に設けられている。前面扉3には、施錠・解錠用のキーを差し込むキーシリンダ38(施錠・解錠操作部)が設けられている。図2に示すように、前面扉3は、遊技機本体1の前面に矢印W1方向(開放方向)及び矢印W2方向(閉鎖方向)に開閉回動可能に枢支されている。矢印W1方向および矢印W2方向は横開閉を意味する。前面扉3の下部の片側には、向かって右側(ヒンジ部1kと逆側)に、パチンコ球発射用の操作部5が設けられている。前面扉3は基本的には四角形状であり、下端面3d、上端面3u、側端面3sを有する。なお、施錠時に合わされる遊技機本体1の側端面1sと前面扉の側端面3sとは、側面視で凹凸状に重なるようにして、防犯性を高めるようにしても良い。
【0031】
操作部5は、遊技の際にパチンコ球発射のために遊技者により回動操作されるものである。従って操作部5はこれの軸芯PCの回りで矢印K1,K2方向に回動操作可能とされている。操作部5は前面扉3の表面3fよりも遊技者側にΔX突出している(図4参照)。このように操作部5が前面扉3の表面3fよりも突出しているため、不正行為者が操作部5を強制的に引っ張ると、前面扉3は同方向に移動する。この場合、前面扉3と遊技機本体1との間に隙間Δtを形成せんとする不正行為の対象となり易い。なお、操作部5を起点とする不正行為を抑制するためには、操作部5の突出量ΔXが小さい方が好ましいが、操作部5を操作する遊技操作性を確保する観点から限界がある。
【0032】
本実施例によれば、前面扉3を遊技機本体1に施錠する施錠装置6が設けられている。施錠装置6の主要素は、前面扉3のうちヒンジ部1kに対して反対側に、つまり、回動半径の外周側に設けられている。施錠装置6の要部は図5及び図6に示されている。図5及び図6に示すように、施錠装置6のうち、前面扉3と遊技機本体1とをロックするためのロック係止部であるストライカー61は、前面扉3の高さ方向において単数個所をロックするシングルロック方式とされている。このため部品点数の削減、サイズの小型化に有利である。なお、2点をロックする方式を採用するときには、2点が同時に施錠されず、どちらか一方のみが施錠され、所謂半ドア状態になる場合がある。このとき、施錠した者は施錠したと勘違いしてしまう可能性もあり、単数箇所をロックするものの方が防犯管理しやすいという利点がある。
【0033】
施錠装置6は図5及び図6に示されている。図5及び図6に示すように、施錠装置6は、矢印Y1方向及び矢印Y2方向(昇降方向)に移動可能に主可動体としてのスライダ60と、遊技機本体1に固定されたストライカー61(ロック係止部)と、ストライカー61を係脱可能に係止するための係止溝64をもつラッチとも呼ばれる回動可能な第1係止体65と、第1係止体65をロック位置に固定するポールとも呼ばれる回動可能な第2係止体70と、第1係止体65と第2係止体70とを引張るように第1係止体65と第2係止体70との間に装着された付勢部材75とを備えている。
【0034】
スライダ60は、縦長の挿通孔60rを複数有しており、挿通孔60rを通した止め具60sにより前面扉3に保持されている。故に、スライダ60は矢印Y1方向及び矢印Y2方向(昇降方向)に移動可能とされている。第1係止体65、第2係止体70、付勢部材75は前面扉3に装備されている。ストライカー61は遊技機本体1に固定されている。第1係止体65の係止溝64の高さ位置はストライカー61の高さ位置に相当する。
【0035】
付勢部材75はコイルバネで形成されている。付勢部材75の一端部75aは第1係止体65の着座部65mに接続され、付勢部材75の他端部75bは第2係止体70の着座部70mに接続されており、着座部65m,70m同士を互いに接近させる方向に付勢している。第1係止体65は爪状の第1係止部67を有しており、第1枢支軸66の回りを矢印A1方向(解錠方向),矢印A2方向(施錠方向)に回動可能に設けられている。第2係止体70は爪状の第2係止部73を有しており、第2枢支軸72の回りを矢印B1方向(解錠方向),矢印B2方向(施錠方向)に回動可能に設けられている。なお、矢印A1,A2方向、矢印B1,B2方向は前面扉3の厚み方向である。
【0036】
前面扉3が遊技機本体1に施錠されているときには、図5(A)に示すように、第1係止体65の係止溝64にストライカー61が嵌合して係止している状態で、第1係止体65の第1係止部67と第2係止体70の第2係止部73とが係止している。このため前面扉3の第1係止体65は遊技機本体1のストライカー61に係止している。この場合、付勢部材75の付勢力により、第1係止体65は矢印A1方向に付勢され、第2係止体70は矢印B2方向に付勢されている。そして付勢部材75の付勢力により第1係止体65の第1係止部67と第2係止体70の第2係止部73との係止状態(ロック状態)は維持されている。これにより前面扉3は遊技機本体1に閉鎖状態に係止されている。
【0037】
前面扉3を遊技機本体1に対して解錠するときには、キーをキーシリンダ38に差込んだ状態で一方向に回動させると、これに連動してカム62(副可動体)が一方向に回動してカム片62cによりスライダ60(主可動体)が一方向(上方向、矢印Y1方向)に移動し、第2係止体70が第2枢支軸72の回りを矢印B1方向(解錠方向)に回動する。この結果、図5(B)に示すように第1係止体65の第1係止部67と第2係止体70の第2係止部73とが離脱する。
【0038】
そして、第1係止体65の第1係止部67が第2係止体70の案内部70xに接触しつつ案内部70xに沿って矢印A1方向(解錠方向)に移動する。
【0039】
更に、図6(A)に示すように、付勢部材75の付勢力により、第1係止体65が第1枢支軸66の回りを矢印A1方向(解錠方向)に回動して方向転換する。この結果、図6(B)に示すように、第1係止体65の係止溝64の向きが解錠方向に変わり、第1係止体65の係止溝64とストライカー61との係止が解錠される。この状態で、前面扉3を開放操作すれば、前面扉3を遊技機本体1に対して開放することができる。なお矢印A1方向、矢印A2方向、矢印B1方向、矢印B2方向は前面扉3の厚みに沿った方向である。
【0040】
施錠するときには、開放している前面扉3を遊技機本体1に向けて押せば良い。この場合、図6(B)から理解できるように、前面扉3が矢印W2方向に押されると、ストライカー61が第1係止体65の係止溝64の壁面64fにあたるため、付勢部材75の付勢力に抗しつつ、第1係止体65が矢印A2方向(施錠方向)に第1枢支軸66の回りを回動する。故に、第1係止体65の係止溝64にストライカー61が係止している状態で、第1係止体65の第1係止部67と第2係止体70の第2係止部73とが係止する。この場合、前面扉3の第1係止体65は遊技機本体1のストライカー61に係止しており、付勢部材75の付勢力により第1係止体65の第1係止部67と第2係止体70の第2係止部73との係止状態は維持されている。これにより前面扉3は遊技機本体1に閉鎖状態に施錠されている。
【0041】
上記した施錠装置6は、前面扉3を遊技機本体1に対して施錠・解錠する機能を有する他に、前面扉3に対して透明扉4を施錠・解錠する機能も併有する。即ち、施錠装置6は、上下方向に並設されると共に透明扉4に係脱可能に係止する複数(2個)の係止爪80f,80sと、複数の係止爪80f,80sを連動させる連動部材としての棒状形状の連動ロッド82とを有する。係止爪80fは透明扉4の上部側(前面扉3の上部側)に位置し、透明扉4の上部側をロックする。係止爪80sは透明扉4の下部側(前面扉3の高さ方向の中間側)に位置し、透明扉4の下部側をロックする。従って施錠装置6は透明扉4に対しては複数ロック方式とされている。
【0042】
なお、上記したように透明扉4は、従来同様に複数ロック方式を採用しているが、これを前面扉3と遊技機本体1とで採用している1箇所による施錠構造を採ることにより、より構造の簡素化を図っても良い。操作部5のような大きな突出部分がなく、透明窓4を過剰な力で強制的に引張るという行為を行いにくい。更に透明窓4は透明ガラス40を主要素とするため、不正行為を行うと、破損するおそれもある。このような事情等を考慮し、透明扉4に対しては従来同様に複数ロック方式とされている。
【0043】
透明扉4が前面扉3に施錠されているときには、係止爪80f,80sが透明扉4の被係止部4mに係脱可能に係止されている。透明扉4を前面扉3に対して解錠するときには、キーをキーシリンダ38に差込んだ状態で他方向(前面扉3の場合と逆方向)に回動させると、これに連動してカム62が他方向に回動してカム片62cによりスライダ60が他方向(矢印Y2方向)に移動し、係止爪80f,80sが連動ロッド82で連動して矢印F1方向に開放作動する。これにより透明扉4が前面扉3に対して開放可能となる。また、パチンコ遊技機の裏側から施錠装置のスライダ60を操作することにより、前面扉3と遊技機本体1との解錠、前面扉3と透明扉4との解錠が可能である。即ち、スライダ60の部位60kを下降操作させることにより、係止爪80f,80sが傾動し、前面扉3と透明扉4との解錠が可能である。また、スライダ60の部位60kを上昇操作させることにより、第2係止体70を矢印B1方向に回動させて前面扉3と遊技機本体1との解錠が可能となる。
【0044】
なお、図4に示すように遊技機本体1の下部にはローラ等の転動体12が設けられ12と乗り上げ部32とを係合させることにより前面扉3を遊技機本体1に対して矢印Y4方向(図4参照)に持ち上げ、遊技機本体1に対する前面扉3の高さ方向の位置決めを行うことができる。因みに、遊技機本体1側に乗り上げ部を配置し、施錠装置側に転動体を設ける形態にすることで、施錠装置側の板金の折り曲げ加工が簡易な構造になるので加工し易いようにしても良い。
【0045】
本実施例によれば、施錠装置6の主構成要素であるストライカー61(ロック係止部)は、前面扉3の高さ方向において単数個所をロックするシングルロック方式が採用されている。従って、上部と下部との2点において前面扉3と遊技機本体1とを係止させる施錠装置が設けられている従来技術に比較して、部品点数の削減、サイズの小型化を図り得る。万一、針金等の異物を差し込まれる不正行為の際に、施錠装置6を構成する各種部品に針金等の異物が触れる確率が低減される。よって不正行為を抑制するのに有利となる。
【0046】
更に本実施例の特徴について説明を加える。即ち、図3及び図4に示すように、前面扉3の上端面3uと操作部5の中心PCとを最短距離で結ぶ長さをLAとする。高さ方向における長さLAの中心点高さをPEとする。施錠装置6の施錠機能を果たすストライカー61(ロック係止部)の高さ位置Mは、中心点高さPEと操作部5との間の領域に設けられている。換言すると、本実施例によれば、前面扉3の上端面3uと操作部5の中心PCとを最短距離で結ぶ長さをLAとし、その長さLAを100%とするとき、施錠装置6の施錠機能を果たすストライカー61(ロック係止部)の高さ位置Mは、操作部5の中心PCから上方に相対表示で15〜45%の領域内に設けられている。この場合、前記した長さLAを100%とするとき、施錠装置6の施錠機能を果たすストライカー61(ロック係止部)としては、操作部5の中心PCから上方に相対表示で15〜30%の領域内、または、30〜40%の領域内に設けられていることが好ましい。
【0047】
なお、前記した長さLAを100%とするとき、前面扉3の上端面3uと施錠装置6の施錠機能を果たすストライカー61(ロック係止部)とを最短距離で結ぶ長さをLUとすると、長さLUは、長さLAのうち85〜55%を占めることになる(LA>LU>LB)。換言すると、前面扉3の上端面3uと操作部5の中心PCとを最短距離で結ぶ長さをLAとするとき、前面扉3の上端面3uから長さLAのうち85〜55%を占める領域には、施錠装置6の施錠機能を果たすストライカー61(ロック係止部)が設けられていないことになる。
【0048】
以上説明したような構成が採用されている本実施例によれば、前面扉3の上端面3uと操作部5の中心PCとを最短距離で結ぶ長さをLAとし、その長さLAを100%とするとき、施錠装置6の施錠機能を果たすストライカー61(ロック係止部)の高さ位置Mは、操作部5の中心PCから上方に相対表示で15〜45%の領域内に設けられている。このような本実施例によれば、不正行為者が前面扉3の操作部5を強制的に不正行為者側(図4に示す矢印X1方向)引張って、前面扉3と遊技機本体1との間に隙間Δtを強制的に形成しようと不正行為を行うとき、仮に隙間Δtが形成されるときであっても、隙間Δtの隙間幅をできるだけ小さくすることができる。故に、不正行為者が操作部5を引張ることを起点とする不正行為を抑制するのに有利となる。
【0049】
なお、施錠装置6が前面扉3を遊技機本体1に施錠する部分が1カ所であるシングルロック方式である場合には、施錠装置6の施錠機能を果たすストライカー61(ロック係止部)が位置的に操作部5にあまりに接近していると、前面扉2の上端面3uと施錠装置6の施錠機能を果たすストライカー61(ロック係止部)との間の間隔が過剰になる。この結果、不正行為者により、操作部5の反対側、つまり、前面扉3の上端面3u側が強制的に開けられるとき、小さな荷重でも、前面扉2と遊技機本体1との間において隙間が形成されてしまうおそれがある。このため施錠装置6の施錠機能を果たすストライカー61(ロック係止部)を位置的に操作部5にあまりに接近させることは、好ましくない。従って、施錠装置6の施錠機能を果たすストライカー61(ロック係止部)としては、前述したように、操作部5の中心PCから上方に相対表示で15〜45%の領域内に設けられていることが好ましい。
【0050】
もっとも、前面扉3の上端面3u側においては、前面扉3の下端面3d側と異なり、引張りを伴う不正行為の起点となり易い突出状態の操作部5が設けられていない。更に、前面扉3の上端面3u側における不正行為は、前面扉3の下端面3d側の操作部5に対する不正行為とは異なり、監視カメラ、周囲の遊技者、店員等に視認され易く、不正行為の対象となる頻度が相対的に低い。
【0051】
なお本実施例によれば、前記したように操作部5の前面扉3の表面3fからの突出量をΔXとし、操作部5の最大直径をΔDとし、施錠装置6の施錠機能を果たすストライカー61(ロック係止部)と操作部5の軸心PCとの間の長さをLBとすると、図4から理解できるように、LB>ΔXの関係、LB>ΔDの関係とされている。更に、施錠装置6の施錠機能を果たすストライカー61は操作部5の最上端5xよりも上方に位置しており、操作部5を前面扉3の表面3fから裏面に向けて垂直方向に投影するとき、投影部分には施錠装置6の施錠機能を果たすストライカー61は位置していない。
【0052】
モデル品に対してモデル試験を行った。このモデル品では操作部5は設けられていないため、下端面を3d’(図3参照)と仮定しておく。この試験では、モデル品の高さ寸法を660ミリメートル(3u−3d’間の寸法)とした。また施錠装置6の施錠機能を果たすストライカー61(ロック係止部)が前記下端面3d’よりも距離LE(260ミリメートル)上方に配置されている。すなわち、モデル試験における距離LEは、実機の遊技機では、施錠装置6の施錠機能を果たすストライカー61(ロック係止部)と操作部5の中心PCとを最短距離で結ぶ距離に相当する。
【0053】
そして上記したモデル試験では、前面扉3と遊技機本体1との間に隙間を形成するように、前面扉3の下端(下端面3d’)に50Nの荷重を引張方向にかけた。このとき前面扉3と遊技機本体1との間に形成された隙間Δtの隙間幅は1ミリメートルであった。また、前面扉3の下端(下端面3d’)に100Nの荷重をかけたとき、前面扉3と遊技機本体1との間に形成された隙間Δtの隙間幅は1.5ミリメートルであった。不正行為対策としては隙間幅は小さい方が好ましいが、100Nの荷重をかけたとき、3ミリメートル内であれば、許容範囲と考えられている。なお、人が立った状態で前面扉3を思い切り引っ張ったときには100Nに相当すると推定される。
【0054】
(他の例)
その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。本実施例では、施錠装置のロックの構造は、ストライカーと第1係止部と第2係止部等を使用した構造に限定されず、例えば、鈎部材を傾動させる構造に使用しても良い。更に、本実施例では図示していないが、前面扉にはパチンコ球を受ける球皿部が設けられ、この球皿部と前面扉との間には施錠装置があるので、ここにも実施例に示したような施錠装置を採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明はパチンコ球で遊技するパチンコ遊技機及びパチンコ遊技機用の施錠装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】パチンコ遊技機の正面図である。
【図2】パチンコ遊技機の遊技機本体に対して前面扉を開放させた状態を示す斜視図である。
【図3】パチンコ遊技機において施錠装置および操作部の位置関係を概略的に示す正面図である。
【図4】パチンコ遊技機において施錠装置および操作部の位置関係を概略的に示す断面図である。
【図5】(A)は施錠装置により前面扉を遊技機本体に施錠している状態を示す構成図であり、(B)は施錠装置の解錠途中を示す構成図である。
【図6】(A)は施錠装置の解錠途中を示す構成図であり、(B)は施錠装置の解錠完了状態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0057】
図中、1は遊技機本体(固定体)、3は前面扉(開閉扉)、30はパチンコ遊技面、3uは上端面、4は透明扉、5は操作部、6は施錠装置、60はスライダ、61はストライカー(ロック係止部)、64は係止溝、65は第1係止体、70は第2係止体、75は付勢部材を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機本体と、パチンコ遊技面を備えると共にパチンコ球発射用の操作部を備え且つ前記遊技機本体に開閉回動可能に枢支された前面扉とを具備するパチンコ遊技機において、
前記前面扉を前記遊技機本体に施錠する施錠装置が設けられ、前記施錠装置は前記前面扉の高さ方向において単数個所をロックすることを特徴とするパチンコ遊技機。
【請求項2】
遊技機本体と、パチンコ遊技面を備えると共にパチンコ球発射用の操作部を備え且つ前記遊技機本体に開閉回動可能に枢支された前記前面扉とを具備するパチンコ遊技機において、
前記前面扉を前記遊技機本体に施錠する施錠装置が設けられ、前記施錠装置は前記前面扉の高さ方向において単数個所をロックする構成であり、且つ、
前記施錠装置は、前記前面扉の上端面と前記操作部の中心とを最短距離で結ぶ長さの中心点高さをPEとすると、前記施錠装置のロック係止部は中心点高さPEと前記操作部との間の領域内に設けられていることを特徴とするパチンコ遊技機。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記前面扉の上端面と前記操作部の中心とを最短距離で結ぶ長さを100%とするとき、前記施錠装置の施錠機能を果たすロック係止部は、前記操作部の中心から上方に相対表示で15〜45%の領域内に設けられていることを特徴とするパチンコ遊技機。
【請求項4】
パチンコ遊技面を備えると共にパチンコ球発射用の操作部を備え且つ遊技機本体に開閉回動可能に枢支された前面扉を、パチンコ遊技機の遊技機本体に施錠するパチンコ遊技機用の施錠装置において、
前記施錠装置は前記前面扉の高さ方向において単数個所をロックすることを特徴とするパチンコ遊技機用の施錠装置。
【請求項5】
パチンコ遊技面を備えると共にパチンコ球発射用の操作部を備え且つ前記遊技機本体に開閉回動可能に枢支された前面扉を、パチンコ遊技機の遊技機本体に施錠するパチンコ遊技機用の施錠装置において、
前記施錠装置は前記前面扉の高さ方向において単数個所をロックする構成であり、且つ、
前記前面扉の上端面と前記操作部の中心とを最短距離で結ぶ長さの中心点高さをPEとすると、前記施錠装置のロック係止部は中心点高さPEと前記操作部との間の領域内に設けられていることを特徴とするパチンコ遊技機用の施錠装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、前記前面扉の上端面と前記操作部の中心とを最短距離で結ぶ長さを100%とするとき、前記施錠装置の前記ロック係止部は、前記操作部の中心から上方に相対表示で15〜45%の領域内に設けられていることを特徴とするパチンコ遊技機用の施錠装置。
【請求項7】
固定体と、前記固定体に開閉回動可能の枢支された開閉扉とを具備するパチンコ遊技機用の施錠装置において、
前記開閉扉を前記固定体に施錠する施錠装置が設けられ、前記施錠装置は、単数箇所をロックすることを特徴とするパチンコ遊技機用の施錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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