説明

パチンコ遊技機

【課題】電源電圧が遮断される状況においても遊技球の払出し状態を検出し、正確な制御情報を記憶保持することができるパチンコ遊技機を提供することにある。
【解決手段】電源監視回路により電源電圧V1が電源電圧Vに降下したことが検出されると、前記電源監視回路は各基板15,17に対し電源断信号Sを出力する。そして、主基板15及び払出し制御基板17ではバックアップ処理、即ち、球計数センサにおける遊技球の検出動作を検出処理時間T2の間だけ繰り返し実行する。また、遊技球の払出しが検出されると、前記両基板15,17では、RAMに記憶している主基板/払出し制御基板用賞球総数を減算し書き換える。その結果、電源遮断後のRAMには前記賞球総数が正確に記憶保持されることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、停電などにより遊技機に供給される電源電圧が遮断状態になった場合でも遊技機における各種制御情報を記憶保持しておくことができるパチンコ遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、遊技機に供給される電源電圧(例えば、AC24V)が、例えば、停電などにより遮断されると、その遮断時点における遊技機の制御情報(例えば、遊技球の払出し個数など)を記憶保持しておくパチンコ遊技機が知られている。そして、このようなパチンコ遊技機によれば、電源電圧が遮断されても当該電源電圧が復電されると、記憶保持した制御情報に基づき遊技を再開させることができるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来のパチンコ遊技機では、電源の遮断時点において記憶手段(例えば、RAMなど)に記憶されている制御情報を対象として電源遮断後に記憶保持させるようになっていた。そのため、遊技球の払出しを行う球払出装置を構成する球払出手段が作動した直後に電源電圧が遮断された場合、払い出された遊技球を検出する球検出手段が作動せず、遊技球の払出し個数に関する制御情報(賞球総数)が正確に記憶保持できないという問題があった。即ち、前記球払出手段の作動に基づき遊技球が払出されているにも拘わらず、前記球検出手段による遊技球の検出が行われていないため前記賞球総数の値が変更されずに記憶保持されている。従って、復電後、記憶保持された前記賞球総数に基づき遊技球の払出しを行うと余分に遊技球を払い出すことになっていた。
【0004】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、電源電圧が遮断される状況においても遊技球の払出し状態を検出し、正確な制御情報を記憶保持することができるパチンコ遊技機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも所定の球通路内を通入出する遊技球の通過を許容あるいは規制する球払出手段と、当該球払出手段の作動制御に基づき前記球通路を通過し払出された遊技球を検出する球検出手段から構成される球払出装置を有するパチンコ遊技機において、遊技状態制御のために各種の制御信号を出力する主基板と、前記球払出装置を作動させて遊技球の払出しを制御する払出し制御基板と、前記主基板に前記払出し制御基板とは別に接続され、前記主基板から入力した制御信号に基づき遊技機の各種構成部材の制御を行うサブ基板と、遊技機に供給される電源を前記各基板に供給する電源基板と、前記電源基板に設けられ、遊技機に供給される電源電圧値が予め定められた所定の電圧値に降下したか否かを判定し、当該判定結果が肯定の場合に電源断信号を出力する電源監視回路と、前記電源基板に設けられ、前記電源断信号を入力した場合に当該電源断信号の入力から予め定めた時間の経過を契機としてリセット信号を出力するリセット信号回路と、前記遊技機への電源電圧の遮断時に、前記主基板に記憶した制御情報を記憶保持させておくためのバックアップ用電源と、を備え、前記主基板は、遊技盤に配設された各入賞口への遊技球の入賞に伴い当該入賞口に各別に対応する賞球数を合算した主基板用賞球総数を記憶し、前記球検出手段が前記遊技球を検出した際に出力する払出し信号の入力により前記球払出装置が払出した遊技球の個数分だけ前記主基板用賞球総数の値を減算して書き換えることにより前記主基板用賞球総数を管理するとともに、前記主基板は、前記電源断信号の入力を契機として、前記球検出手段における遊技球の検出動作を予め定められた所定の検出処理時間だけ繰り返し実行させるバックアップ処理を実行し、前記バックアップ処理において前記球払出装置が前記遊技球を払出したことによる前記払出し信号を入力した場合、前記主基板が管理する前記賞球総数の値を減算して書き換え、その減算後の値を記憶して電源遮断後も保持し、前記主基板、前記払出し制御基板、及び前記サブ基板は、前記リセット信号の入力を契機に動作を停止することを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のパチンコ遊技機において、前記主基板は、前記電源断信号を入力してから前記予め定めた時間が経過する迄の間に前記バックアップ処理を実行し、前記サブ基板は、前記電源監視回路の判定結果が肯定の場合であっても、前記主基板が前記バックアップ処理を実行している間は通常処理を実行するとともに、前記リセット信号の入力を契機に動作を終了することを要旨とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のパチンコ遊技機において、前記遊技機における給電経路中には、同一構成とされた前記電源監視回路が複数箇所に配置されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電源電圧が遮蔽される状況においても遊技球の払出し状態を検出し、正確な制御情報を記憶保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】遊技機に配設された各種基板の接続態様を示すブロック図。
【図2】電源電圧の降下時における各種基板の動作態様を示すタイミングチャート。
【図3】球払出装置の遊技球の払出し態様を示すタイミングチャート。
【図4】主基板におけるバックアップ処理を示すフローチャート。
【図5】払出し制御基板におけるバックアップ処理を示すフローチャート。
【図6】電源電圧の瞬間的な降下時における各種基板の動作態様を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のパチンコ遊技機(以下、「遊技機」という。)を具体化した一実施形態を図1〜図5に基づき詳細に説明する。
最初に、図1を用いて遊技機の機内部に配設された各種制御基板の構成について詳細に説明すると、遊技場の電源AC(本実施形態ではAC24V)は電源基板10に供給されている。そして、前記電源基板10には、供給された前記電源ACを遊技機の各種構成部材及び各種制御基板に対し供給すべき電源電圧V1(本実施形態ではDC30V、「遊技機に供給される電源電圧値」に相当する。)に変換処理する電源回路11が備えられている。また、前記電源回路11には、後述する制御手段としての主基板15、制御手段としての払出し制御基板17及びサブ基板18が給電経路としての電源線L1〜L3を介して接続されている。そして、前記電源回路11は、前記電源電圧V1を前記各基板15,17,18に各別に対応する供給すべき電源電圧V2〜V4に変換処理し、前記各基板15,17,18に対し前記電源線L1〜L3を介して供給するようになっている。
【0011】
また、前記電源回路11には電圧判定手段としての電源監視回路12が給電経路としての電源線L4を介して接続されており、当該電源監視回路12には前記電源回路11からの前記電源電圧V1が供給されると共に、当該電源電圧V1の電圧値を監視している。即ち、前記電源監視回路12は前記電源電圧V1が電源電圧V(本実施形態ではDC20V、「予め定められた所定の電圧値」に相当する。)に降下したか否かを判定している。また、前記電源監視回路12にはリセット信号回路13が接続されており、前記電源監視回路12における判定結果が肯定である場合に前記電源電圧V1が電源電圧Vに降下したことを示す電源断信号Sが入力されるようになっている。そして、前記リセット信号回路13は、入力した前記電源断信号Sに基づき前記各基板15,17,18に対しリセット信号Reを出力するようになっている。また、前記電源基板10には、例えば、電気二重層コンデンサからなるバックアップ用電源14が配設されている。
【0012】
そして、前記主基板15は、遊技機における遊技状態制御のために各種制御信号を前記各基板17、18などに出力する制御基板であって、前記主基板15には遊技機の遊技状態を制御するためのCPU15aが備えられている。また、前記CPU15aには遊技状態(大当たり状態、リーチ状態、図柄変動状態など)に応じて逐次変更される制御情報を記憶するためのRAM15bが接続されている。なお、前記制御情報としてRAM15bには、例えば、始動保留球及び普通図柄保留球数の記憶値、始動入賞口への遊技球の入賞に伴い抽出された各種乱数(大当たり、リーチ、表示図柄に関する。)に基づく制御信号などが記憶されている。また、前記RAM15bには、遊技盤に配設された各入賞口への遊技球の入賞に伴い当該入賞口に各別に対応する賞球数を合算した主基板用賞球総数が記憶されている。そして、前記RAM15bには前記電源基板10のバックアップ用電源14が接続されており、前記電源電圧V1(電源AC)の遮断時において前記バックアップ用電源14から供給された電源VBに基づき前記制御情報を記憶保持できるようになっている。
【0013】
また、前記CPU15aには前記電源基板10の電源監視回路12が接続されており、当該電源監視回路12の判定結果が肯定である場合に前記電源断信号Sが入力されるようになっている。そして、前記電源断信号Sを入力した前記CPU15aは、後述するバックアップ処理を実行するようになっている。また、前記CPU15aにはリセット入力回路15cが接続されており、前記電源監視回路12の判定結果が肯定である場合に前記リセット信号回路13が出力したリセット信号Reを入力するようになっている。そして、前記CPU15aは、前記リセット入力回路15cを介して入力された前記リセット信号Reに基づきその動作を停止するようになっている。
【0014】
さらに、前記主基板15には、遊技球を払出すための球払出装置16が接続されている。そして、前記球払出装置16は、周知のとおり球通路の途中に当該球通路内を通入出する遊技球の通過を許容あるいは規制する球払出手段としてのソレノイド16aと、当該ソレノイド16aの上流側において賞球用(貸し球用)の遊技球の有無を検出するための球制御センサ16bを備えている。また、前記球払出装置16は、前記ソレノイド16aの下流側においてソレノイド16aの作動制御に基づき球通路を通過し払出された遊技球(賞球又は貸し球)を検出するための球検出手段としての球計数センサ16cを備えている。そして、前記主基板15には、球計数センサ16cが遊技球を検出する毎に(即ち、1個の遊技球が払い出される毎に)出力する制御信号(払出し信号)が入力されるようになっており、前記主基板15は前記払出し信号を入力することで前記RAM15bに記憶された前記主基板用賞球総数の値を減算(−1)し書き換えるようになっている。
【0015】
また、前記払出し制御基板17は、前記主基板15からの制御信号(賞球制御信号)に基づき前記球払出装置16を作動制御するための制御基板であって、遊技球の払出しを制御するためのCPU17aが備えられている。なお、前記賞球制御信号は、前記賞球数に各別に対応する制御信号である。また、前記CPU17aには遊技球の払出し状態に応じて逐次変更される制御情報を記憶するためのRAM17bが接続されている。そして、前記制御情報としてRAM17bには、前記主基板15から入力した前記賞球制御信号に対応した賞球数を逐次加算し、前記球払出装置16の駆動制御回数に対応する賞球数を合算した払出し制御基板用賞球総数が記憶されている。さらに、前記RAM17bには前記電源基板10のバックアップ用電源14が接続されており、前記電源電圧V1の遮断時において前記バックアップ用電源14から供給された電源VBに基づき前記制御情報を記憶保持できるようになっている。
【0016】
また、前記CPU17aには前記電源基板10の電源監視回路12が接続されており、当該電源監視回路12の判定結果が肯定の場合に前記電源断信号Sが入力されるようになっている。そして、前記電源断信号Sを入力した前記CPU17aは後述するバックアップ処理を実行するようになっている。また、前記払出し制御基板17のCPU17aにはリセット入力回路17cが接続されており、前記電源監視回路12の判定結果が肯定である場合に前記リセット信号回路13が出力したリセット信号Reを入力するようになっている。そして、前記CPU17aは、前記リセット入力回路17cを介して入力された前記リセット信号Reに基づきその動作を停止するようになっている。
【0017】
さらに、前記払出し制御基板17には、前記球払出装置16が双方向に信号の入出力が可能な状態で接続されており、前記払出し制御基板17からは球払出装置16に対し遊技球の払出しを制御するための制御信号が出力されるようになっている。また、前記球払出装置16からは前記払出し制御基板17に対し前記球制御センサ16b及び球計数センサ16cからの制御信号が出力されるようになっている。そして、前記払出し制御基板17では、前記球計数センサ16cが遊技球を検出する毎に出力する制御信号(払出し信号)が入力されるようになっており、前記払出し制御基板17は前記払出し信号を入力することで前記RAM17bに記憶された前記払出し制御基板用賞球総数の値を減算(−1)し書き換えるようになっている。従って、球計数センサ16cから出力された前記払出し信号に基づき前記両基板15,17では主基板/払出し制御基板用賞球総数が書き換えられ、前記両賞球総数は通常一致するようになっている。
【0018】
また、前記サブ基板18には、前記主基板15からの制御信号に基づき対応する制御を行うためのCPU18aが備えられている。なお、前記サブ基板18とは、主基板15から入力した制御信号、あるいは、前記主基板15とは独立して前記遊技機の各種構成部材(特別図柄表示装置、ランプなどの電飾表示部、スピーカなど)の制御を行うための制御基板である。そして、遊技機には前記サブ基板18として、例えば、特別図柄表示基板、ランプ制御基板や音声制御基板などが配設されている。また、前記CPU18aにはリセット入力回路18bが接続されており、前記電源監視回路12の判定結果が肯定の場合に前記リセット信号回路13が出力したリセット信号Reを入力するようになっている。そして、前記CPU18aは、前記リセット入力回路18bを介して入力された前記リセット信号Reに基づきその動作を停止するようになっている。
【0019】
次に、このように構成された遊技機において、前記電源監視回路12の判定結果が肯定、即ち、電源電圧V1が電源電圧Vに降下した場合における各基板10,15,17,18の動作態様を図2に示すタイミングチャートに基づき説明する。
【0020】
通常時、前記電源基板10には遊技場の電源ACが供給されると共に、各基板15,17,18には前記電源ACに基づく電源電圧V2〜V4が供給されている。このとき、通常処理として前記主基板15では遊技機の遊技状態制御が、前記払出し制御基板17では遊技球の払出し制御が、前記サブ基板18では遊技機の各種構成部材の制御が行われている。そして、前記電源監視回路12により前記電源電圧V1が電源電圧Vに降下したことが検出されると、前記電源監視回路12は電源基板10のリセット信号回路13及び前記各基板15,17に対し前記電源断信号Sを出力する。
【0021】
なお、本実施形態では、前記電源電圧Vとして球計数センサ16cが遊技球を検出するために最低限必要な作動電圧値(例えば、12V(実測値))に所定の裕度電圧値(例えば、8V)を加算した電圧値(本実施形態では、20V)としている。なぜなら、前記電源監視回路12が前記電源断信号Sを出力するまでの間、例えば、大当たり遊技中であれば、通常処理として前記主基板15では大入賞口の開閉動作に基づく制御が、前記払出し制御基板17では遊技球の払出し制御が行われている。そのため、遊技盤に配設された始動入賞口や大入賞口を開閉動作させるソレノイドや前記球払出装置16のソレノイド16aを作動制御(ON動作)するために最低限必要な電圧値を確保できるように前記所定の裕度電圧値を決定し加算している。従って、前記各基板15,17,18が通常処理を行うために必要な電源電圧Vをしきい値としてバックアップ処理を実行させることで、前記各基板15,17,18による通常処理を正常に行うことができる。但し、バックアップ処理においては、球計数センサ16cが遊技球を検出するために最低限必要な前記作動電圧値が確保されていれば、前記球計数センサ16cにおける遊技球の検出動作を十分に行うことができる。
【0022】
そして、前記電源断信号Sを入力した前記主基板15,払出し制御基板17の各CPU15a,17aは、前記各RAM15b,17bに記憶された制御情報を電源遮断後に記憶保持させるために通常処理からバックアップ処理を処理時間T1の間だけ実行させる。このバックアップ処理では、主に、球計数センサ16cにおける遊技球の検出動作を検出処理時間T2の間だけ繰り返し実行すると共に、前記RAM15b,17bに対し制御情報を記憶させる処理を処理時間T3(例えば、3ms程度)の間だけ実行するようになっている。なお、前記サブ基板18は、前記主基板15及び払出し制御基板17が電源断信号Sの入力によりバックアップ処理を実行しても前記処理時間T1が経過するまで通常処理を行うようになっている。
【0023】
ここで、前記検出処理時間T2について図3に基づき説明すると、前記検出処理時間T2は、遊技球がソレノイド16aにより球通路内の通過を許容された位置から前記球計数センサ16cにより検出される位置に至る(落下移動による)までに要する時間T(遊技球の払出し時間T)に所定の裕度時間Teを加算した時間となっている。そして、前記遊技球の払出し時間Tは、ソレノイド16aの作動に要する時間Ta,Td及び球計数センサ16cの作動に要する時間Tb,Tcから次式により算出することができる。
【0024】
T=(Ta+Tb+Tc)−Td ・・・(1)
なお、前記時間Taは、ソレノイド16aの作動制御により遊技球が払出されるまでに前記ソレノイド16aがON状態を維持している時間を、前記時間Tdはソレノイド16aが作動(ON状態)してから球通路内を遊技球が通過できる状態となるまでに要する時間を示している。また、前記時間Tbはソレノイド16aがOFF状態となってから遊技球が球計数センサ16cにより検出されるまでの時間を、前記時間Tcは球計数センサ16cから前記払出し信号が出力されてから前記両基板15、17において遊技球の払出しが検出されるまでの時間を示している。なお、前記(1)式では、ソレノイド16aが作動(ON状態)しても時間Tdが経過するまで遊技球が球通路内の通過を許容されていないことから遊技球の払出し時間Tには時間Tdを含めず差分している。そして、実測値に基づき前記遊技球の払出し時間Tを算出すると、球払出装置16では遊技球を1個払い出すために略29msの時間が必要となっている。
【0025】
従って、前記検出処理時間T2は前記(1)式で算出した遊技球の払出し時間Tに裕度時間Teを加算して算出することができる(T2=T+Te)。
なお、前記裕度時間Teは遊技球が球通路内を通過する際に、当該球通路内での球詰まりなどが原因で通過を阻害された場合を見込んで決定された時間(例えば、3ms程度)となっている。また、本実施形態では、前記ソレノイド16aが作動した直後に前記電源断信号Sが入力された場合を考慮し、前記球計数センサ16cが遊技球を検出するために最低限必要な遊技球の払出し時間Tに前記裕度時間Teを加算した検出処理時間T2を確保している。
【0026】
そして、前記処理時間T1が経過すると、前記電源基板10のリセット信号回路13からは前記各リセット入力回路15c,17c,18bに対しリセット信号Reが出力される。その結果、前記各基板15,17,18の各CPU15a,17a,18aは前記リセット信号Reの入力に基づきその動作を停止するようになっている。また、前記電源監視回路12では、処理時間T1に所定の裕度時間T4(例えば、2ms程度)を加算した時間が経過すると、前記電源断信号Sの出力を停止させる。そして、遊技機に対し電源ACが復電されず完全に遮断されると、各CPU15a,17a,18aにはその動作に最低限必要な動作電圧V5(本実施形態ではDC5V)も供給されず、前記電源電圧V1は略0Vに降下する(時間T5)。そのため、前記リセット信号回路13は、前記各リセット入力回路15c,17c,18bへのリセット信号Reの出力を停止する。
【0027】
次に、前記主基板15及び払出し制御基板17で行われる前記バックアップ処理について図4及び図5に示すフローチャートに基づきさらに詳細に説明する。
最初に、図4に基づき主基板15におけるバックアップ処理について説明すると、前記CPU15aは電源ACの遮断後にRAM15bに記憶保持させる制御情報として新たにレジスタ及びスタックポインタを前記RAM15bに記憶させる(ステップM101,ステップM102)。
【0028】
次に、前記CPU15aは、遊技機を構成する各種構成部材の各種出力を停止させるための処理を行う(ステップM103)。即ち、具体的に例示すれば、普通図柄の変動処理、大入賞口・普通電動役物などを開閉させるための各種ソレノイドの作動処理を停止させる。また、前記CPU15aは、例えば、サブ基板18であるランプ制御基板に対し各種表示部材(ランプなど)の消灯を指示する制御信号を、同じくサブ基板18である音声制御基板に対しスピーカからの音声出力の停止を指示する制御信号を出力する。従って、前記サブ基板18では、入力した前記制御信号に基づき前記処理時間T1の間に所定の制御が行われる。
【0029】
次に、前記CPU15aは、前記電源断信号Sが球計数センサ16cにおける遊技球の検出動作中に入力されたか否か、即ち、遊技球の検出動作中に電源電圧V1が降下したか否かを判定する(ステップM104)。なお、前記CPU15aは、遊技球の検出動作の開始(遊技球の払出し開始)に伴い設定されるフラグに基づきその判定処理を行っている。そして、この判定結果が肯定の場合、前記CPU15aは前記検出動作に伴ってRAM15bに記憶された制御情報、即ち、前記球計数センサ16cが出力するON信号(払出し信号)/OFF信号を一旦初期化(クリア)する(ステップM105)。
【0030】
その後、前記CPU15aは、前記球計数センサ16cにおける遊技球の検出動作を前記検出処理時間T2だけ繰り返し実行する(ステップM106)。即ち、前記CPU15aは、球計数センサ16cが遊技球を検出した際に出力する前記払出し信号の入力に基づき遊技球の払出しを検出する処理を前記検出処理時間T2の間だけ行うようになっている。このとき、前記CPU15aは、遊技球の検出動作に基づき遊技球の払出しが検出されると、RAM15bに記憶された主基板用賞球総数の値を減算し書き換えを行い、遊技球が払い出されていない場合、前記前記主基板用賞球総数の値を書き換えない。そして、このステップM106において前記CPU15aは、前記電源断信号Sの入力により前記球払出装置16のソレノイド16aを作動させて球通路内への遊技球の通過を許容し、前記球計数センサ16cで遊技球を検出する動作を強制的に行っているわけではない。なお、前記CPU15aは、前記ステップM104の判定結果が否定である場合、前記ステップM106に移行する。
【0031】
次に、前記CPU15aは、前記検出処理時間T2が経過したか否かを判定する(ステップM107)。そして、その判定結果が否定、即ち、検出処理時間T2が経過していない場合、前記CPU15aは所定時間T6(例えば、2ms)だけ処理を待機し(ステップM108)、その後、前記ステップM106に移行し遊技球の検出動作を繰り返し実行する。また、前記ステップM107の判定結果が肯定、即ち、検出処理時間T2が経過した場合、前記CPU15aは球計数センサ16cによる遊技球の検出動作を終了させる。
【0032】
そして、前記CPU15aは、RAM15bにバックアップフラグを設定する(ステップM109)。なお、前記バックアップフラグとは、復電時において前記RAM15bに記憶された制御情報が正常か否かを判定するためのフラグである。そして、前記CPU15aは前記RAM15bへのアクセスを禁止した後(ステップM110)、前記リセット入力回路15cを介してリセット信号Reが入力されるまでその動作を待機する(ステップM111)。その後、遊技機に供給された電源ACが完全に遮断されると、前記RAM15bに記憶された制御情報は前記バックアップ用電源14からの電源VBにより記憶保持される。
【0033】
次に、図5に基づき払出し制御基板17におけるバックアップ処理について説明する。
まず、前記CPU17aは電源ACの遮断後にRAM17bに記憶保持させる制御情報として新たにレジスタ、裏レジスタ及びスタックポインタを前記RAM17bに記憶する(ステップS101〜S103)。そして、前記CPU17aは、遊技機を構成する各種構成部材の各種出力を停止させるための処理を行う(ステップS104)。即ち、具体的に例示すれば、前記球払出装置16のソレノイド16aの作動処理を停止させる(OFF状態にする)。従って、球払出装置16による遊技球の払出しにおいて前記時間Tdの間に前記電源断信号Sが入力されると、球通路内への遊技球の通過が許容されないために遊技球の払出しが行われないようになっている。そして、前記CPU17aは、前記主基板15から出力された制御信号(例えば、賞球制御信号)を電源ACの遮断後にRAM17bに記憶保持させる制御情報としてRAM17bに記憶する(ステップS105)。
【0034】
なお、以下に説明するステップS106〜S113は、前記主基板15のバックアップ処理におけるステップM104〜M111とその処理内容が同一であるため重複する説明は簡略あるいは省略する。即ち、バックアップ処理時には、両基板15,17で同一の処理内容が独立して行われるようになっている。
【0035】
そして、前記ステップS105を終了した前記CPU17aは、前記電源断信号Sが球計数センサ16cにおける遊技球の検出動作中に入力されたか否かを判定する(ステップS106)。この判定結果が肯定の場合、前記CPU17aは前記球計数センサ16cが出力するON信号(払出し信号)/OFF信号を一旦初期化(クリア)する(ステップS107)。そして、前記CPU17aは、前記球計数センサ16cにおける遊技球の検出動作を前記検出処理時間T2だけ繰り返し実行させる(ステップS108)。このとき、前記CPU17aは、遊技球の検出動作に基づき遊技球の払出しが検出されると、RAM17bに記憶された払出し制御基板用賞球総数の値を減算し書き換えを行い、遊技球が払い出されていない場合、前記払出し制御基板用賞球総数の値を書き換えない。そして、このステップS108において前記CPU17aは、前記主基板15のバックアップ処理(ステップM106)と同様にソレノイド16aを作動させて球計数センサ16cで遊技球を検出する動作を強制的に行っているわけではない。なお、前記CPU17aは、前記ステップS106の判定結果が否定である場合、前記ステップS108に移行する。
【0036】
そして、前記CPU17aは、前記検出処理時間T2が経過したか否かを判定する(ステップS109)。その判定結果が否定、即ち、検出処理時間T2が経過していない場合、前記CPU17aは所定時間T6(例えば、2ms)だけ処理を待機し(ステップS110)、その後、前記ステップS108に移行して遊技球の検出動作を繰り返し実行する。また、前記ステップM109の判定結果が肯定、即ち、検出処理時間T2が経過した場合、前記CPU17aは球計数センサ16cによる遊技球の検出動作を終了させる。
【0037】
そして、前記CPU17aは、RAM17bにバックアップフラグを設定する(ステップS111)。また、前記CPU17aは前記RAM17bへのアクセスを禁止した後(ステップS112)、前記リセット入力回路17cを介してリセット信号Reが入力されるまでその動作を待機する(ステップS113)。その後、遊技機に供給された電源ACが完全に遮断されると、前記RAM17bに記憶された制御情報は前記バックアップ用電源14からの電源VBにより記憶保持される。
【0038】
従って、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)電源電圧V1が電源電圧Vに降下すると前記両基板15,17は、前記電源断信号Sに基づき検出処理時間T2だけ球計数センサ16cにおける遊技球の検出動作を実行するようになっている。そのため、前記電源ACが遮断される前に、前記ソレノイド16aの作動による遊技球の払出し状態を前記球計数センサ16cで検出することができる。その結果、前記RAM15b,17bに記憶される制御情報に前記検出動作の実行結果(払出しの有無)を反映させることができ、遊技球の払出し個数に関する主基板/払出し制御基板用賞球総数を正確に記憶保持させることができる。また、復電後には前記RAM15b,17bに記憶保持された前記賞球総数に基づき正確な遊技球の払出しを行うことができる。
【0039】
(2)球計数センサ16cにおける遊技球の検出動作に必要な時間として前記遊技球の払出し時間Tに所定の裕度時間Teが加算された前記検出処理時間T2を確保している。そのため、電源ACが遮断される前に確実に前記検出動作を終了させることができ、正確な前記賞球総数を記憶保持させることができる。また、裕度時間Teが加算されているため、球通路内の球詰まりなどが原因で遊技球の通過が阻害された場合でも余裕を持って前記検出動作を行うことができる。
【0040】
(3)前記電源監視回路12は、前記電源電圧V1が球計数センサ16cの作動電圧値に所定の裕度電圧値を加算した電源電圧Vに前記電源断信号Sを出力している。そのため、前記電源電圧V1が電源電圧Vに降下するまでの間、前記各基板15,17,18において正常な通常処理を行うことができる。従って、異常動作(例えば、大当たり遊技中に大入賞口が開閉動作しないなど)に基づき遊技者へ与える不快感を抑制することができる。また、前記主基板15及び払出し制御基板17のバックアップ処理において前記球計数センサ16cが遊技球の検出動作を確実に行うことができる。従って、RAM15b、17bに正確な前記賞球総数を記憶保持させることができる。
【0041】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、図6に示すように、前記電源電圧V1が瞬間的に電源電圧Vに降下した場合も前記主基板15及び払出し制御基板17でバックアップ処理を実行しても良い。そして、電源電圧V1が復電した場合、リセット信号回路13が時間T5の経過後にリセット信号Reの出力を停止することで前記各基板15,17,18は通常処理に移行できる。また、主基板15及び払出し制御基板17のバックアップ処理中に電源電圧V1が復電し、再び二点鎖線で示すように降下した場合でも確実にバックアップ処理を実行でき、何ら不具合が発生することはない。
【0042】
・前記実施形態では、球計数センサ16cにおける遊技球の検出処理時間T2として遊技球の払出し時間Tに裕度時間Teを加算した時間を確保しているが、裕度時間Teが加算される必要はない。即ち、前記検出処理時間T2として、少なくとも遊技球の払出し時間Tが確保されていれば、球計数センサ16cにおける遊技球の検出動作を行うことができる。
【0043】
・前記実施形態では、電源電圧Vとして前記各基板15,17,18の通常処理において最低限必要な電圧値を設定しているが、前記電源電圧Vとして球計数センサ16cの作動電圧値を設定しても良い。また、前記作動電圧値に所定の裕度電圧(例えば、3V,5Vなど)を加算した電圧値を電源電圧Vとしても良い。なお、電源電圧V1と電源電圧Vとの差がない場合には、前記電源電圧V1が瞬間的に降下すると、その都度バックアップ処理が実行されてしまうため、前記電源電圧Vの決定に際しては電源電圧Vを電源電圧V1に対しある程度の差を持って決定することが好ましい。
【0044】
・前記実施形態では、電源監視回路12が前記電源線L4に接続されているが、前記電源線L1〜L3中にさらに配置しても良い。このようにすれば、各基板15,17,18に供給される電源電圧V2〜V4の降下状態を監視することができ、例えば、電源線L1〜L3の断線などによる遊技機の故障状態において主基板15や払出し制御基板17でバックアップ処理を実行させることができる。
【0045】
・前記実施形態では、主基板15と払出し制御基板17において球計数センサ16cにおける遊技球の検出動作を行っているが、例えば、主基板15のみで賞球総数が管理されている場合、前記主基板15で前記検出動作を実行するようにしても良い。即ち、前記検出動作は、賞球総数が管理されている基板で実行すれば良い。
【0046】
・前記実施形態で記載した各時間や電圧値、RAM15b,17bに記憶保持される制御情報は、実施形態に記載した内容に限定されるものではない。即ち、これらの数値や制御情報は、遊技機や遊技機を構成する各種構成部材の仕様などに基づき遊技機メーカが適宜決定するものである。
【0047】
次に上記実施形態及び別例から把握できる請求項に記載した以外の技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記制御手段は、前記検出動作の実行結果を前記電源電圧値の降下時における遊技機の遊技状態制御に関する制御情報に反映させて記憶保持する。
【0048】
(ロ)前記所定の電圧値は、前記制御手段が遊技機の遊技状態を正常に制御するために最低限必要な作動電圧値である。
(ハ)前記電圧判定手段は、遊技機における給電経路中に配置されている。
【0049】
(ニ)前記主基板には、当該主基板から入力した制御信号に基づき遊技機の各種構成部材の制御を行うサブ基板が前記払出し制御基板とは別に接続されており、前記主基板と前記払出し制御基板は、前記電源監視回路の判定結果が肯定の場合に前記バックアップ処理を実行する一方で、前記サブ基板は、前記電源監視回路の判定結果が肯定の場合であっても、通常処理を行う。
【0050】
(ホ)前記検出処理時間は、前記球払出装置から前記遊技球が払出されるまでに前記球払出装置の前記球払出手段が前記遊技球の通過を許容した状態を維持している時間Taと、前記遊技球の通過を許容した状態の前記球払出手段が前記遊技球の通過を規制した状態になってから前記遊技球が前記球検出手段により検出されるまでの時間Tbと、前記球検出手段が前記払出し信号を出力してから前記主基板と前記払出し制御基板において前記払出し信号の入力により前記遊技球の払出しが検出されるまでの時間Tcと、前記球払出手段が前記遊技球の通過を許容するように作動してから前記遊技球が前記球通路を通過できる状態となるまでの時間Tdをもとに、(Ta+Tb+Tc)−Tdの演算式から算出される時間である。
【符号の説明】
【0051】
L1〜L4…信号線(給電経路)、T…遊技球の払出し時間、T2…検出処理時間、Te…裕度時間、V…電源電圧(所定の電圧値)、V1…電源電圧(遊技機に供給される電源電圧値)、12…電源監視回路(電圧判定手段)、15…主基板(制御手段)、16…球払出装置、16a…ソレノイド(球払出手段)、16c…球計数センサ(球検出手段)、17…払出し制御基板(制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも所定の球通路内を通入出する遊技球の通過を許容あるいは規制する球払出手段と、当該球払出手段の作動制御に基づき前記球通路を通過し払出された遊技球を検出する球検出手段から構成される球払出装置を有するパチンコ遊技機において、
遊技状態制御のために各種の制御信号を出力する主基板と、
前記球払出装置を作動させて遊技球の払出しを制御する払出し制御基板と、
前記主基板に前記払出し制御基板とは別に接続され、前記主基板から入力した制御信号に基づき遊技機の各種構成部材の制御を行うサブ基板と、
遊技機に供給される電源を前記各基板に供給する電源基板と、
前記電源基板に設けられ、遊技機に供給される電源電圧値が予め定められた所定の電圧値に降下したか否かを判定し、当該判定結果が肯定の場合に電源断信号を出力する電源監視回路と、
前記電源基板に設けられ、前記電源断信号を入力した場合に当該電源断信号の入力から予め定めた時間の経過を契機としてリセット信号を出力するリセット信号回路と、
前記遊技機への電源電圧の遮断時に、前記主基板に記憶した制御情報を記憶保持させておくためのバックアップ用電源と、を備え、
前記主基板は、遊技盤に配設された各入賞口への遊技球の入賞に伴い当該入賞口に各別に対応する賞球数を合算した主基板用賞球総数を記憶し、前記球検出手段が前記遊技球を検出した際に出力する払出し信号の入力により前記球払出装置が払出した遊技球の個数分だけ前記主基板用賞球総数の値を減算して書き換えることにより前記主基板用賞球総数を管理するとともに、
前記主基板は、前記電源断信号の入力を契機として、前記球検出手段における遊技球の検出動作を予め定められた所定の検出処理時間だけ繰り返し実行させるバックアップ処理を実行し、前記バックアップ処理において前記球払出装置が前記遊技球を払出したことによる前記払出し信号を入力した場合、前記主基板が管理する前記賞球総数の値を減算して書き換え、その減算後の値を記憶して電源遮断後も保持し、
前記主基板、前記払出し制御基板、及び前記サブ基板は、前記リセット信号の入力を契機に動作を停止するパチンコ遊技機。
【請求項2】
前記主基板は、前記電源断信号を入力してから前記予め定めた時間が経過する迄の間に前記バックアップ処理を実行し、
前記サブ基板は、前記電源監視回路の判定結果が肯定の場合であっても、前記主基板が前記バックアップ処理を実行している間は通常処理を実行するとともに、前記リセット信号の入力を契機に動作を終了する請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記遊技機における給電経路中には、同一構成とされた前記電源監視回路が複数箇所に配置されている請求項1又は請求項2に記載のパチンコ遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−188212(P2010−188212A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133810(P2010−133810)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【分割の表示】特願2007−260258(P2007−260258)の分割
【原出願日】平成12年10月31日(2000.10.31)
【出願人】(000135210)株式会社ニューギン (1,935)
【Fターム(参考)】