説明

パッキン

【課題】 漏れ止めすべき流体の圧力が高い場合にも、優れたシールをもたらし、経時的にシール特性を保持可能な、簡易な構造の新規のパッキンを提供する。
【解決手段】 本発明のパッキンは、少なくとも一つのシールバリア(16)が嵌め込まれている厚みIの芯部材を含むパッキンであって、芯部材が、厚みIよりも厚い厚みを形成する高さhを有する係止部(20)と、その係止部(20)の高さhよりも低い高さを有し、シールバリアの位置に設けられている突出形状部分(22)とを有し、シールバリアが、特にエラストマー等の柔軟な材料からなる柔軟エレメント(24)から構成され、柔軟エレメントが突出形状部分(22)の位置に配置され、柔軟エレメントが、突出形状部分を含んで突出形状部分(22)を超えて延伸するように、芯部材(18)の表面に嵌め込まれ、柔軟エレメント(24)の高さが係止部(20)よりも高いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッキンに関する。より詳細には、本発明は、剛性を有する芯部材と、特にエラストマー等の柔軟な材料からなる少なくとも一つのシールバリアとを含むパッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
両面がエラストマー層で被覆されている金属製の芯部材、中間部材を含むパッキンが公知である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1によれば、芯部材とエラストマー層をよりよく連結させるために、芯部材には凹部が設けられている。また凹部は、係止具としての機能を有し、エラストマー層と等しい高さを有する。
【0004】
その結果、装置に組み込まれてシールを行う際に、パッキンがシールバリアを形成することができるように、エラストマー層には圧縮可能な突出縁部が設けられている。
【0005】
この種のパッキンでは、エラストマー被覆の圧縮率が制御されておらず、特に突出縁部の位置でこの圧縮率が比較的小さいことから、完全に満足のいくものではなく、最適なシール機能を得ることができない。このような欠点は、現行モータ又は内燃機関の内部に存在する漏れ止めすべき流体の圧力が高ければ高いほど重大なものとなる。
【0006】
別の変形例には、圧縮されてシールバリアを形成可能な突出縁部を備えているエラストマー層によって、金属製の芯部材の少なくとも片面が被覆されているパッキンが含まれる。
【0007】
この変形例は、完全に満足のいくものではない。何故なら、このような構成では、パッキンを設置する場合、エラストマー被覆が過度に圧縮されて、その結果弾性特性が失われることのないように、係止力が制御されなければならないためである。
【特許文献1】仏国特許第2,768,211号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、漏れ止めすべき流体の圧力が高い場合にも、優れたシール、密封をもたらし、経時的にシール特性を保持可能な、簡易な構造の新規のパッキンを提案することにより、従来技術に存在する欠点の解消を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、少なくとも一つのシールバリアが嵌め込まれている厚みIの芯部材を含むパッキンであって、芯部材が、この厚みIよりも厚い厚みを形成する高さhを有する係止部と、この係止部の高さよりも低い高さを有し、シールバリアの形成される位置に設けられている突出形状部分とを有し、シールバリアが、特にエラストマー等の柔軟な材料からなる柔軟エレメントから構成され、この柔軟エレメントが突出形状部分の位置に配置され、かつこの柔軟エレメントが、突出形状部分を含むとともに突出形状部分を超えて延伸する芯部材の表面に嵌め込まれ、柔軟な材料からなる柔軟エレメントの上面が、係止部の支持面又は上面より上方に位置していることを特徴とするパッキンを提供することにより解決される。本発明は、少なくとも一つのシールバリアが嵌め込まれている厚みIの芯部材を含むパッキンであって、芯部材が、厚みIを上回る高さhの係止部と、この係止部よりも低い高さでシールバリアの位置に設けられている突出形状部分とを有し、シールバリアが、特にエラストマー等の柔軟な材料からなる柔軟エレメントから構成され、この柔軟エレメントが、突出形状部分の位置に配置されているとともに、突出形状部分を含んで突出形状部分を超えて延びる芯部材の面に嵌め込まれ、柔軟な材料からなる柔軟エレメントの高さが、係止部よりも高いことを特徴とするパッキンに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、少なくとも一つのシールバリア(16)が嵌め込まれている厚みIの芯部材を含むパッキンであって、芯部材が、厚みIよりも厚い厚みを形成する高さhを有する係止部(20)と、この係止部(20)の高さよりも低い高さを有し、シールバリアの形成される位置に設けられている突出形状部分(22)とを有し、シールバリアが、特にエラストマー等の柔軟な材料からなる柔軟エレメント(24)から構成され、この柔軟エレメントが、突出形状部分(22)の位置に配置され、この柔軟エレメントが、突出形状部分を含むとともに突出形状部分(22)を超えて延伸する芯部材(18)の表面に嵌め込まれ、柔軟な材料からなる柔軟エレメント(24)の上面が、係止部(20)の支持面、上面よりも上方に位置していることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本願発明の他の特徴及び長所を、添付図面に関して例示することのみを目的として挙げる本発明の以下の説明からさらに明らかにする。
【0012】
各図において、シールされる2個のシールエレメント12、12'の間に配置可能なパッキン10を示す。パッキンは、シールエレメントの位置に設けられている管路又は開口部と共働可能な少なくとも一つの開口部14を含む。そのため、パッキンは、各開口部14の間及び開口部と外部との間をシール、密封しなければならない。本願発明のパッキンは、例えばシリンダヘッドガスケット、軸受シール、カム軸室用又はウォーターポンプ用のシールといった多くの用途において利用することができる。
【0013】
パッキン10は、連続又は不連続の、流体の伝播を制限するようにパッキン面に適切に配置されている少なくとも一つのシールバリア16を含む。例えば、シールバリアは、パッキンの周辺縁部又は開口部14の周囲から近い距離のところに設けられている。
【0014】
本発明によれば、パッキン10は、厚みIの芯部材又は中間部材18と、この厚みIを上回る厚みを形成する高さhの係止部20と、シールバリア16の位置に設けられたリブ22を含み、係止部20を含むパッキン面にリブの突出形状部分が設けられている。芯部材は、少なくともリブ22の位置において十分に剛性を示す材料から構成され、リブは、応力を受けたときにリブの変形を制限するような形状に形成されている。係止部20は、例えば止め具の追加、特に折り曲げ、切断、その他の加工による鋼板の変形により様々な仕方で形成される。係止部20は、シールエレメント間の隔たりよりも小さな限界値を課すことにより、パッキンの圧縮を制限する役割を果たす。
【0015】
好適な実施形態によれば、芯部材又は中間部材は、折り曲げることによって隆起部を設けてリブ22を形成し、係止部20を形成された鋼板から構成されている。
【0016】
係止部20を、図1、3、4に示すように、パッキンの周辺縁部又は開口部14に隣接して配置することもでき、あるいは図2に示すように、パッキンの周辺縁部又は開口部14以外の個所に配置することもできる。場合に応じて、係止部20を、図4に示すように芯部材の各側又は両面に突出させることができ、図1、2、3に示すように片側だけに突出させることができる。
【0017】
本発明によれば、リブ22の突出部の高さは係止部の高さよりも低く、リブ22の突出部の上面は係止部の支持面、上面よりも下方に位置し、この高低差を図1において参照符号aにより示す。
【0018】
補足的に、シールバリア16は、特にエラストマー等の柔軟な材料からなる柔軟エレメント24から構成され、この柔軟エレメントは、リブ22の位置に配置されているとともに、リブの突出形状部分を含んでリブ22の両側に延伸する芯部材18の表面に嵌め込まれている。芯部材の表面は、係止部により画定され、係止部の内側の領域を占めている。そのため、柔軟エレメント24は、リブ22の突出形状部分に面する領域で厚みe1を有し、この領域以外では厚みe2を有する。
【0019】
本発明によれば、柔軟な材料からなる柔軟エレメント24の高さは係止部より高く、柔軟エレメント24の上面は係止部の支持面、上面よりも上方に位置し、この高低差を図1において参照符号bにより示す。
【0020】
パッキン10が2個のシールエレメント12、12'の間で圧縮される場合、柔軟な材料からなる柔軟エレメント24は、実質上剛性を有する芯部材18と一方のシールエレメント12との間で圧縮される(図1〜3)。係止部20は、柔軟な材料からなる柔軟エレメント24の圧縮を制限し、その柔軟エレメントが劣化する恐れ、特に経時的に弾性特性が劣化する恐れを低減する。
【0021】
圧縮時に、柔軟エレメント24は、リブ22の突出形状部分に面する領域で厚みe1'を有し、この領域以外では厚みe2'を有する。従って、リブ22の突出形状部分に面する領域での圧縮率e1'/e1は、リブ以外に位置する領域での圧縮率e2'/e2よりも大きい。
【0022】
柔軟な材料からなる柔軟エレメントの圧縮率の値が高いことにより、リブ22の突出形状部分の領域において、高圧に耐えうる有効なシールバリアを形成することができる。
【0023】
本発明によるパッキンは、強い応力を受ける剛性を有する剛性シールエレメント間のシールに特に適しており、そのためにパッキンの可撓性よりもパッキンの圧縮抵抗が重視される。
【0024】
変形実施形態によれば、パッキン10を、柔軟な材料からなる柔軟エレメントで芯部材の全面を被覆することができる。この場合、被覆層の高さを領域に応じて異なるものにすることができ、一つ又は複数のシールバリアの位置、リブの突出形状部分に、より高い高さの領域を設けることができる。
【0025】
本発明の別の特徴によれば、図4に示すように、シールバリアをパッキンの各面、両面に設け、リブ22を反対向きに配向させ、各面において突出させることができる。パッキンの上面と下面において、シールバリアをずらして設けることが有利である。
【0026】
本発明の別の特徴によれば、一般にパッキンの接触面で変化する係止力に応じて圧縮率を調整するために、その長さに沿ってシールバリアの厚みe1を可変とすることができる。こうした厚みe1の変化は、リブの高さ及び/又は柔軟な材料からなる柔軟エレメントの高さを調節することによって達成される。
【0027】
例えば、芯部材を、必要なシール力に応じて様々な特徴を有する金属鋼板から製造することができる。芯部材18を、軟鋼(処理済又は処理前)又はステンレス鋼からなる中間部材、中間鋼板とすることができる。目安として、芯部材の機械抵抗は、500〜1300 MPaである。
【0028】
特に有害な作用の強い環境で使用する場合、芯部材を、例えば亜鉛を主成分とするような腐食防止被覆により保護することが有利である。
【0029】
柔軟な材料からなる柔軟エレメントは、適切な温度耐性があり、液体及び冷却オイルに対して強い耐性を有し、圧縮時の残留ひずみが50%未満でなければならない。柔軟な材料からなる柔軟エレメントとして、例えばニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン-プロピレン三量体(EPDM)、ビニルメチルシリコーンゴム(MVQ)、フッ素ゴム(FPM)系のエラストマーを使用することができる。
【0030】
芯部材又は中間部材の厚みIは、約0.1〜1mmであることが好ましい。
【0031】
係止部の厚み又は高さhは、約0.15〜1.2mmであることが好ましい。
【0032】
リブの突出形状部分と係止部の支持面、上面との高低差a(図1)は、柔軟エレメント24の厚みe1の約30%以上であることが好ましい。
【0033】
柔軟な材料からなる柔軟エレメントと係止部の支持面、上面との高低差b(図1)は、柔軟エレメント24の厚みe1の約10〜70%であることが好ましい。
【0034】
好適な実施形態によれば、鋼板は、芯部材18が形成されるように適切に折り曲げられ、隆起をつけられる。その後、芯部材18が少なくとも部分的に金型に配置されている金型に液体エラストマーを射出し、シールバリアの形が形成される。エラストマーを加硫後、適切な開口部及び穴、ならびにパッキンの周辺部分が形成されるように、芯部材又は中間部材が切断、加工される。
【0035】
芯部材が成形された後に、エラストマーが芯部材に配置されるので、エラストマー被覆の劣化する恐れが制限される。
【0036】
変形実施形態では、リブ22を、芯部材の位置に設けられている全ての突出形状に代えることができ、この場合、柔軟な材料からなる柔軟エレメントの厚みを薄くし、パッキン使用時の柔軟な材料からなる柔軟エレメントの圧縮率を増すことができる。このような突出形状部分は、芯部材の折り曲げ及び/又は切断、あるいは止め具の付加により得られる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態による圧縮前のパッキンを示す断面図である。
【図2】本発明の別の実施形態による圧縮前のパッキンを示す断面図である。
【図3】シールされる2個のエレメントの間に配置されている図1のパッキンの断面図である。
【図4】本発明の改良された実施形態による圧縮前のパッキンを示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 パッキン
12 シールエレメント
16 シールバリア
18 芯部材
20 係止部
22 リブ
24 柔軟エレメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのシールバリア(16)が嵌め込まれている厚みIの芯部材を含むパッキンであって、
前記芯部材が、前記厚みIよりも厚い厚みを形成する高さhを有する係止部(20)と、その係止部(20)の高さhよりも低い高さを有し、シールバリアの位置に設けられている突出形状部分(22)とを有し、
前記シールバリアが、特にエラストマー等の柔軟な材料からなる柔軟エレメント(24)から構成され、
前記柔軟エレメントが突出形状部分(22)の位置に配置され、
前記柔軟エレメントが、前記突出形状部分を含んで前記突出形状部分(22)を超えて延伸するように、前記芯部材(18)の表面に嵌め込まれ、
前記柔軟エレメント(24)の高さが前記係止部(20)よりも高いことを特徴とするパッキン。
【請求項2】
前記突出形状部分がリブ(22)の突出部である請求項1に記載のパッキン。
【請求項3】
両面にシールバリアが嵌め込まれている請求項1又は2に記載のパッキン。
【請求項4】
前記柔軟エレメント(24)の厚みが前記突出形状部分において可変である請求項1〜3のいずれか一項に記載のパッキン。
【請求項5】
前記突出形状部分と前記係止部の支持面との高低差aが、前記突出形状部分に面する前記柔軟エレメント(24)の厚みの約30%以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載のパッキン。
【請求項6】
前記突出形状部分に面する前記柔軟エレメント(24)と前記係止部の支持面との高低差bが、前記突出形状部分に面する柔軟エレメント(24)の厚みe1の約10〜70%である請求項1〜5のいずれか一項に記載のパッキン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−29587(P2006−29587A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209211(P2005−209211)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(501479868)カール・フロイデンベルク・カーゲー (73)
【Fターム(参考)】