説明

パック用水溶性ゲル基材

【課題】保形性及び柔軟性に優れ、凹凸のある貼着部位でもその凹凸に沿って密着状に容易に貼着できるようにする。
【解決手段】このパック用水溶性ゲル基材は、カラギーナン1.0〜1.5重量%、ローカストビーンガム0.4〜0.6重量%、水80.0重量%以上、多価アルコール5.0重量%以上を含有し、カラギーナンとローカストビーンガムとの合計配合量を2.0重量%以下とする。そして、これをシート状に成形することにより、保形性、柔軟性を有するものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔面の一部又は全部等の皮膚表面に貼着するためのパック材の基材として使用するパック用水溶性ゲル基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
保湿作用のある美容成分を含有し、顔面等の皮膚表面に貼着して使用するパック材には、シート状の不織布を基材として使用するものの他、シート状の水溶性ゲル基材を使用したものがある(特許文献1)。
【0003】
一方、人体の患部に貼着して湿布する湿布剤には、グルコマンナンとローカストビーンガムとを含有する含水性ゲル基材を使用したものがある(特許文献2)。
【特許文献1】実用新案登録第3117357号号公報
【特許文献2】特開平8−290051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水溶性ゲル基材を使用したパック材は、浴水等の熱水に浸せば水溶性ゲル基材が溶解するため、パック後のパック材を浴水等に入れて溶解することにより、パック材自体が含有する美容成分を有効に再利用でき、しかもゴミとして廃棄する必要がない等の利点がある。
【0005】
水性ゼリーを製造するためのゲル化剤の基材には、例えば寒天、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン、グルコマンナンなどが一般的に広く知られている。中でも蒟蒻の元の物質であるグルコマンナンは保形剤として機能するため、ローカストビーンガムにグルコマンナンを配合した含水性ゲル基材は型崩れが生じ難く、安定した保形性を有するものとなる。
【0006】
しかし、グルコマンナンを配合したゲル基材は保形性に優れる分、ゲルが硬くなり柔軟性に乏しくなる。このため比較的凹凸の少ない患部に貼着する湿布用には適するものの、顔面等の凹凸のある部位に貼着するパック用の場合には、鼻の下側から左右両側に対応して切り込みを入れ、また周縁部の頬、顎に対応して切り込みを入れても、凹凸形状に沿って顔面に密着させることが困難である。従って、パック用のゲル基材には適しない。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、保形性及び柔軟性に優れ、凹凸のある貼着部位でもその凹凸に沿って密着状に容易に貼着できるパック用水溶性ゲル基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るパック用水溶性ゲル基材は、カラギーナン1.0〜1.5重量%、ローカストビーンガム0.4〜0.6重量%、水80.0重量%以上、多価アルコール5.0重量%以上を含有し、カラギーナンとローカストビーンガムとの合計配合量を2.0重量%以下としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、保形性及び柔軟性に優れ、凹凸のある貼着部位でもその凹凸に沿って密着状に容易に貼着できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1〜図3は顔面の略全体を対象とするパック材1を容器2に入れて密封したパック材密封包装体3を示し、図4はそのパック剤に使用する水溶性ゲル基材4を示す。
【0011】
水溶性ゲル基材4は人の顔面に対応する大きさ、形状を有するシート状であって、例えば略円形状に形成されている。そして、この水溶性ゲル基材4は保湿剤、その他のパック用化粧液と共に容器2に密封され、パックに際しては容器2から取り出して顔面に密着状に貼着する。なお、パック材1は水溶性ゲル基材4と、この水溶性ゲル基材4に付着して担持されたパック用化粧液とから構成されている。
【0012】
水溶性ゲル基材4には、図4に示すように、中央上部に顔面の目に対応する左右一対の横方向の切欠き部5が、下部に口に対応する切り欠き部6が夫々形成され、その両者間の略中央に鼻の下側から左右両側に対応する切り欠き部7が形成されている。また外周側には、左右の頬に対応する切り欠き部8と、顎の左右両側に対応する切り欠き部9とが夫々形成されている。
【0013】
容器2は、図1〜図3に示すように、所定の保形性を有する合成樹脂製の偏平な皿状の容器本体10と、この容器本体10の開口部側に接着、溶着その他の方法で易剥離可能に装着された封口フィルム11とを備え、パック材1を密封するようになっている。
【0014】
容器本体10は、水溶性ゲル基材4の外周に対応する周縁部12と、この周縁部12内に形成され且つ水溶性ゲル基材4を収容する収容凹部13と、この収容凹部13内に水溶性ゲル基材4の各切り欠き部5〜7に対応して形成された中間凸部14〜16と、周縁部12に連続して水溶性ゲル基材4の各切り欠き部8,9に対応して収容凹部13内に形成された凸部17,18とを有する。収容凹部13には水溶性ゲル基材4と保湿剤、その他のパック用化粧液とが収容されている。
【0015】
封口フィルム11はイージーピールフィルム等の単体フィルム、アルミ泊にイージーピールフィルムをラミネートした複合フィルム等の密封性を有する合成樹脂製のフィルムにより構成されている。そして、この封口フィルム11は容器本体10の開口側の周縁部12にシール部19(図1の点線部分を参照)で周方向の全周が易剥離可能に固着され、また中間凸部14,15上の固着部14a,15a(図1に×印で示す)で易剥離可能に固着されている。なお、封口フィルム11の外周側は、周方向の複数個の固着部10a(図1に×印で示す)で易剥離可能に接着してもよい。
【0016】
パック材1に使用する水溶性ゲル基材4は、カラギーナン1.0〜1.5重量%、ローカストビーンガム0.4〜0.6重量%、水80.0重量%以上、多価アルコール5.0重量%以上を含有し、そのカラギーナンとローカストビーンガムとの合計配合量が2.0重量%以下であり、全体として保形性及び柔軟性に優れたシート形状になっている。
【0017】
カラギーナンは、海藻である紅藻類から抽出・精製した水溶性の天然多糖類である。このカラギーナンは単独でゲル化能を有しているため、ゲル化材の基材として広く利用されている。しかし、カラギーナン単独での配合ではゲル化力が弱く、固くて脆いゲルができてしまい、保形性、柔軟性に乏しいものとなる。
【0018】
ローカストビーンガムは、豆科の多年性の常緑樹であるカブロ樹の種子の胚乳から得られた水溶性の天然高分子多糖類である。このローカストビーンガムは、単独でのゲル化能はないが、カラギーナンと併用することによって、カラギーナンのゲル化力を上げ、保形性を有するようになる。また増粘剤として利用されるため、水溶性ゲル基材4の粘度を上げ柔軟性を有するものにできる。
【0019】
多価アルコールは、濃グリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,3−プロピレングリコール等のことを云い、離水防止のためにも保水、保湿性物質として機能し、ゲル強度を出すことができる。
【0020】
次に水溶性ゲル基材4の製造方法を含むパック材密封包装体3の製造方法を説明する。製造に際しては、先ず濃グリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,3−プロピレングリコール等の多価アルコールを略80℃に加熱し、そこにカラギーナン及びローカストビーンガムの全量を徐々に加えながら、ダマができないように水の半分ほどを徐々に加えて行く。その後に保湿剤(又は化粧液)、防腐剤、薬剤等の所定の配合剤を順次加えて、最後に残った水を加える。おな、カラギーナン、ローカストビーンガムは混ぜておいてもよい。また水は先の水添加工程で全量を加え、その後に配合剤を順次加えてもよい。
【0021】
これらの一連の工程は、常に略80℃に加熱し攪拌しながら行う。そしてカラギーナン、ローカストビーンガム等が全部溶けて透明な溶液になれば、それを確認してから、その溶液を容器本体10の収容凹部13にシャワー状に流し込んだ後、徐々に冷し完全にゲル化させて水溶性ゲル基材4とする。従って、溶液を容器本体10に流し込めば、その後冷却することにより、容器本体10側の凹凸形状により、切り欠き部5〜9を有する所定の形状の水溶性ゲル基材4を製造できる。その後、容器本体10の開口側に封口フィルム11を重ねて開口側の全周をシール部19で周方向にシールし、同時に固着部10a,14a,15aを固着すれば、容器2にパック材1を収容し密封したパック材密封包装体3ができる。
【0022】
なお、保湿剤、防腐剤、薬剤等の所要配合剤の添加は、溶液のゲル化により水溶性ゲル基材4ができた後でもよい。保湿剤としては、水分を蓄えることのできるヒアルロン酸、水溶性コラーゲン、アミノ酸等を20%程度まで、また防腐剤としては、抗菌・抗カビ剤として働くパラベン、フェノキシエタノール等を0.3%程度まで、薬剤としては、抗酸化成分であるビタミンC誘導体等を5%程度まで夫々配合することが可能である。
【0023】
次に実験結果を図5及び図6に示す。図5の表はカラギーナンとローカストビーンガムとの合計配合量を2.0重量%とし、水及び多価アルコールの配合割合を変えて、水と多価アルコールとの関係を調べた結果を示す。図6の表は水80.0重量%以上、多価アルコール5.0重量%以上とし、カラギーナンとローカストビーンガムとの配合割合を変えて、カラギーナンとローカストビーンガムとの関係を調べた結果を示す。
【0024】
図5の表に示す割合で水と多価アルコールとを配合したが、水が79.0重量%以下ではカラギーナン、ローカストビーンガムは溶けず、溶液が固まらなかった。従って、カラギーナン、ローカストビーンガムを溶くためには、80.0重量%以上の水を配合する必要がある。
【0025】
多価アルコールは4.0重量%以下のときにはゲルが柔らかく伸びすぎてしまい、パック材1用の水溶性ゲル基材4として必要な保形性がなく、5.0重量%以上のときに所定の保形性が得られた。また水が80.0重量%を切らない程度までであれば、5.0重量%以上の多価アルコールを配合することが可能であった。
【0026】
そして、図5の表からも判るように、カラギーナンとローカストビーンガムとの配合量を2.0重量%とした場合には、水は80.0〜93.0重量%、多価アルコールは5.0〜18.0重量%のときに保形性、柔軟性に優れた水溶性ゲル基材4が得られた。
【0027】
カラギーナンは単独で1.0重量%未満では溶液が固まらず、逆に1.5重量%を超えると、ローカストビーンガムを配合しても固く脆いゲルのままであった。またカラギーナンは1.0重量%未満でもローカストビーンガムの配合量によってはゲル化したが、ゲルが柔らかく、形を保つことができなかった。一方、カラギーナンは1.0〜1.5重量%のときに、所定のローカストビーンガムを配合することによりパック材1用の水溶性ゲル基材4として必要な保形性、柔軟性が得られた。
【0028】
ローカストビーンガムはカラギーナン1.0〜1.5重量%に0.4〜0.6重量%を配合したときに、水溶性ゲル基材4としての保形性、柔軟性を得ることができた。しかし、カラギーナンが1.0重量%未満のときは、ゲル化してもゲルが柔らかく、形を保つことができなかった。またローカストビーンガムを0.6重量%よりも多くすると、非常に溶け難かった。
【0029】
従って、カラギーナンとローカストビーンガムは、図6の表に示すように、水80.0重量%以上、多価アルコール5.0重量%以上のときには、カラギーナン1.0〜1.5重量%、ローカストビーンガム0.4〜0.6重量%の割合で配合することにより、水溶性ゲル基材4として必要な保形性、柔軟性を得ることができた。またカラギーナンとローカストビーンガムとの合計配合量が2.0重量%を超えると溶け難くなった。
【0030】
この実験によれば、カラギーナン1.0〜1.5重量%、ローカストビーンガム0.4〜0.6重量%、水80.0重量%以上、多価アルコール5.0重量%以上を配合し、しかもカラギーナンとローカストビーンガムとの合計配合量を2.0重量%以下とすれば、保形性、柔軟性に優れた水溶性ゲル基材4となることを確認できた。
【0031】
従って、このような配合割合の水溶性ゲル基材4をパック材1に使用することにより、凹凸のある顔面等の貼着部位でも、その凹凸形状に沿ってパック材1を密着状に貼着でき、またその取り扱いも容易に行える利点がある。
【0032】
図7は本発明の別の実施例を例示する。この水溶性ゲル基材4には、その一側面の略全面に細かい凹凸部4aが形成されている。このようにすれば、水溶性ゲル基材4の凹凸部4a側を顔面に当てることにより、パック材1の顔面からの滑り落ちを防止できる。また水溶性ゲル基材4の顔面に当てる側に凹凸部4aあり、その表面積が大になっているため、水溶性ゲル基材4に対する保湿剤等の付着量もそれだけ多くできる。
【0033】
更に水溶性ゲル基材4は、図1に二点鎖線で示すように、収容凹部13の底面の略全域に、溝13a,13bで区画された角錐状の突部13cを設ける等、多数の凹凸部13dが形成された容器本体10を使用し、その収容凹部13に所定の溶液を流し込んでゲル化させることによって容易に製造できる。
【0034】
以上、本発明の実施例について詳述したが、この実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、配合剤である保湿剤、防腐剤、薬剤として種々のものを例示しているが、例示以外の保湿剤、防腐剤、薬剤を配合してもよいし、また保湿剤、防腐剤等以外のものを配合してもよい。
【0035】
また水溶性ゲル基材4を基準にカラギーナン、ローカストビーンガム、水及び多価アルコールの夫々の配合割合を崩さない限りは、水溶性ゲル基材4の製造工程で保湿剤等の化粧液、又は他の配合剤を配合することも可能である。
【0036】
更に水溶性ゲル基材4の製造方法は適宜変更してもよい。また水溶性ゲル基材4と化粧液とを含むパック材1を密封する場合、実施例では所定の保形性を有する容器本体10と封口フィルム11とにより容器2を構成しているが、ガスバリヤー性を有する密封袋により容器2を構成してもよい。
【0037】
また実施例では、顔面の全体を対象とするパック材1又はその水溶性ゲル基材4を例示しているが、目の周辺、鼻の周辺等のように顔面の一部を対象とするパック材1又はその水溶性ゲル基材4にも採用可能であるし、顔面以外の部分を対象とするパック材1又はその水溶性ゲル基材4にも採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例を示すパック材密封包装体の平面図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】図1のY−Y線断面図である。
【図4】本発明の一実施例を示す水溶性ゲル基材の平面図である。
【図5】本発明の一実施例を示す水と多価アルコールとの関係の表である。
【図6】本発明の一実施例を示すカラギーナンとローカストビーンガムとの関係の表である。
【図7】本発明の別の実施例を示す水溶性ゲル基材の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 パック材
2 容器
3 パック材密封包装体
4 水溶性ゲル基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラギーナン1.0〜1.5重量%、ローカストビーンガム0.4〜0.6重量%、水80.0重量%以上、多価アルコール5.0重量%以上を含有し、カラギーナンとローカストビーンガムとの合計配合量が2.0重量%以下であることを特徴とするパック用水溶性ゲル基材。
【請求項2】
シート状であることを特徴とする請求項1に記載のパック用水溶性ゲル基材。
【請求項3】
保形性、柔軟性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のパック用水溶性ゲル基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−67765(P2009−67765A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262072(P2007−262072)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願変更の表示】意願2007−7058(D2007−7058)の変更
【原出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(507304616)有限会社SPC (3)
【Fターム(参考)】