説明

パッド

【課題】アルデヒド類のみならず、スチレン等の芳香族系のVOCの放散をも抑制することができるパッドを提供する。
【解決手段】ポリオールとイソシアネートとを主成分とするポリウレタンフォーム原料を発泡成形してなる軟質ポリウレタンフォームよりなるパッド。ポリオールがポリエーテルポリオールであり、ポリウレタンフォーム原料が、揮発性有機化合物を捕捉するキャッチャー剤と、有機化処理された無機充填材とを含む。ポリオールとして、スチレン発生源であるポリマーポリオールを用いず、ポリエーテルポリオールを用いることにより、スチレンの放散を抑制することができ、この場合のフォーム物性の低下の問題を、有機化処理された無機充填材の配合で改善することができる。有機化処理された無機充填材の配合により、パッドの薄肉化で軟質ポリウレタンフォーム使用量を低減し、より一層のVOCの発生防止を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートパッド等に好適な、軟質ポリウレタンフォームよりなるパッドに関し、特に、ホルムアルデヒドのみならず、スチレンなどの揮発性有機化合物の放散が抑制されたパッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC)は、シックハウス症候群や化学物質過敏症を引き起こす原因になることから、室内に使用される各種資材にはこれらの化合物を極力放散しないことが求められている。かかる状況は自動車などの車両室内においても同様であり、今後そのような要請が益々高まることが予想される。
【0003】
ところで、一般に、自動車用シートにはクッション性の高い軟質ポリウレタンフォームからなるシート用パッドが用いられているが、これらの中にはポリウレタンフォーム原料中に含まれていたり、ウレタン反応時に発生したりするホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどの揮発性有機化合物が原因で、発泡成形後にパッドから揮発性有機化合物が放散してしまうものもあり、その対策が求められる。
【0004】
特開2005−124743号公報には、シート用パッドの表面にVOCを捕捉するキャッチャー剤を塗布することによりホルムアルデヒド等のVOCの揮発を防止することが記載されている。
【0005】
また、特開平10−36681号公報には、建材や繊維製品等の表面に消臭成分含有液をコーティングしたり、原料に混合したりすることによりアルデヒド類を低減することが記載されており、この消臭成分としてアルデヒド類分解作用を有するヒドラジド化合物が記載されている。
【特許文献1】特開2005−124743号公報
【特許文献2】特開平10−36681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
VOCキャッチャー剤等を用いることにより、アルデヒド類の放散を防止することはできるが、ベンゼン、トルエン、スチレンなどの芳香族系のVOCの放散を防止することはできない。また、VOCキャッチャー剤をポリウレタンフォーム原料に配合した場合には、触媒活性が弱まり反応性が低下するという不具合がある。
【0007】
本発明はアルデヒド類のみならず、スチレン等の芳香族系のVOCの放散をも抑制することができるパッドを提供することを目的とする。
本発明はまた、ポリウレタンフォーム原料にVOCキャッチャー剤を配合したことによる反応性の低下を防止したパッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、スチレン等の芳香族系のVOCの発生源であるポリマーポリオールをポリオール原料として用いないことにより、芳香族系のVOCの放散を防止すると共に、ポリマーポリオールを用いないことによるフォーム物性の低下の問題を、有機化処理された無機充填材の配合で改善し、更には、VOCキャッチャー剤の配合による反応性の低下を助触媒の併用により改善することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0010】
[1] ポリオールとイソシアネートとを主成分とするポリウレタンフォーム原料を発泡成形してなる軟質ポリウレタンフォームよりなるパッドであって、
前記ポリオールがポリエーテルポリオールであり、
前記ポリウレタンフォーム原料が、揮発性有機化合物を捕捉するキャッチャー剤と、有機化処理された無機充填材とを含むことを特徴とするパッド。
【0011】
[2] [1]において、前記ポリウレタンフォーム原料に、触媒としての第3級アミンと、助触媒としての樹脂化触媒とが配合されていることを特徴とするパッド。
【0012】
[3] [1]又は[2]において、前記無機充填材が、ケイ酸塩であることを特徴とするパッド。
【0013】
[4] [3]において、前記ケイ酸塩が、天然又は合成のマイカであることを特徴とするパッド。
【0014】
[5] [4]において、前記マイカが、膨潤性マイカであることを特徴とするパッド。
【0015】
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、前記有機化処理が、無機充填材の表面を有機オニウムイオンで修飾する処理であることを特徴とするパッド。
【0016】
[7] [6]において、前記有機オニウムイオンが、有機アンモニウムイオンであることを特徴とするパッド。
【0017】
[8] [7]において、前記有機アンモニウムイオンが、ジ(ヒドロキシアルキル)ジアルキルアンモニウムイオンであることを特徴とするパッド。
【0018】
[9] [8]において、前記ジ(ヒドロキシアルキル)ジアルキルアンモニウムイオンのヒドロキシアルキル基が、炭素鎖末端にOH基を有するものであることを特徴とするパッド。
【0019】
[10] [1]ないし[9]のいずれかにおいて、前記ポリオールがポリマーポリオールを含まないことを特徴とするパッド。
【0020】
[11] [2]ないし[10]のいずれかにおいて、前記ポリウレタンフォーム原料が、前記ポリオール100重量部に対して前記助触媒を0.05〜2.0重量部含むことを特徴とするパッド。
【0021】
[12] [1]ないし[11]のいずれかにおいて、前記キャッチャー剤が含窒素有機化合物であることを特徴とするパッド。
【0022】
[13] [1]ないし[12]のいずれかにおいて、前記ポリウレタンフォーム原料が、前記ポリオール100重量部に対して前記キャッチャー剤を0.1〜5.0重量部含むことを特徴とするパッド。
【0023】
[14] [1]ないし[13]のいずれかにおいて、前記ポリウレタンフォーム原料が前記ポリオール100重量部に対して前記有機化処理された無機充填材を0.5〜5重量部含むことを特徴とするパッド。
【0024】
[15] [1]ないし[14]のいずれかにおいて、前記パッドは車両用シートパッドであることを特徴とするパッド。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、アルデヒド類のみならず、スチレン等の芳香族系のVOCの放散を抑制したパッドを提供することができる。
即ち、ポリウレタンフォーム原料中のポリオールとして、スチレン発生源であるポリマーポリオールを用いず、ポリエーテルポリオールを用いることにより、スチレンの放散を抑制することができる。
また、ポリオールとしてポリマーポリオールを用いずにポリエーテルポリオールを用いることによるフォーム物性の低下の問題を、有機化処理された無機充填材の配合で改善することができる。しかも、有機化処理された無機充填材の配合により、硬度や通気性(連続気泡の形成)を確保し、フォームを薄肉化てもパッドとしての十分な反発弾性等を得ることができるため、パッドの薄肉化で軟質ポリウレタンフォーム使用量を低減し、より一層のVOCの発生防止を図ることができる。
また、VOCキャッチャー剤の配合による反応性の低下を助触媒の併用で抑止して、反応硬化を促進することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0027】
本発明のパッドは、ポリオールとイソシアネートとを主成分とするポリウレタンフォーム原料を発泡成形してなる軟質ポリウレタンフォームよりなるパッドであって、前記ポリオールがポリエーテルポリオールであり、前記ポリウレタンフォーム原料が、揮発性有機化合物を捕捉するキャッチャー剤と、有機化処理された無機充填材とを含むことを特徴とするものである。
【0028】
まず、本発明で用いる有機化処理された無機充填材について説明する。
有機化処理された無機充填材とは、ケイ酸塩等の無機物の表面を有機化合物で処理したものであり、例えば、ケイ酸塩の表面に存在するOM基(Mは水素原子又は金属原子を表す)と有機オニウム化合物との置換反応によってケイ酸塩の表面を有機オニウムイオンで修飾することにより、ケイ酸塩の表面にカウンターイオンとして有機オニウムイオンが結合したものなどが挙げられる。
【0029】
上記ケイ酸塩としては、単位骨格中にケイ素原子を1つ含むネソケイ酸塩、数個含むソロケイ酸塩、多数のケイ素原子を含むイソケイ酸塩、フェロケイ酸塩等が挙げられ、具体的にはモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物、バーキュライト、ハロイサイト、又はマイカなどが挙げられ、天然品でも、人工合成品でもよく、また、膨潤性の有無も問わないが、本発明において、上記ケイ酸塩としては、膨潤性マイカが特に好ましい。膨潤性マイカの種類としては、天然、人工合成を問わず、また、マイカの骨格末端のOH基がフッ素原子で置換されたフッ素化マイカであっても構わない。
これらの無機物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
一方、上記無機物を処理する有機化合物としては、有機オニウムイオンを生成する有機オニウム化合物が好ましく挙げられる。上記有機オニウムイオンとしては、有機アンモニウムイオンが好ましく、例えば、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシル(ラウリル)アンモニウムイオン、オクタデシル(ステアリル)アンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオン、アルキルビピリジニウムイオン等が挙げられ、4級アンモニウムイオンが好ましいが、1級、2級、3級アミンをプロトンとして用いたものでもよい。
【0031】
上記有機アンモニウムイオンとしては、窒素原子に結合する有機基がアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基であるものが好ましく、特に、ジ(ヒドロキシアルキル)ジアルキルアンモニウムイオンが好ましい。上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。一方、ヒドロキシアルキル基としては、OH基を1つ有するもの、2つ以上のOH基を有するもののいずれでもよく、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基等の末端の炭素原子に結合するOH基を有するもの、2−ヒドロキシ−n−プロピル基、2−ヒドロキシ−n−ブチル基等の炭素鎖途中の炭素原子に結合するOH基を有するもの、1,3−ジヒドロキシ−n−ブチル基のように末端及び炭素鎖途中の炭素原子に結合するOH基を有するものなどが挙げられるが、特に、末端にOH基を有するものが好ましい。また、窒素原子に結合する有機基としては、アルキル基、ヒドロキシアルキル基等の炭素鎖の途中にエステル結合、ウレタン結合などを有するものであってもよい。
これらの有機化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
このような有機化処理された無機充填材としては、例えば、有機化マイカ(例えば、ソマシフMEE(コープケミカル(株)製)、膨潤性マイカを4級アンモニウム塩で処理したもの)が挙げられる。
【0033】
次に、VOCキャッチャー剤について説明する。
VOCキャッチャー剤としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレンなどの揮発性有機化合物を捕捉し得るものであれば特に限定されないが、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどのアルデヒド類を捕捉することができるアルデヒド類キャッチャー剤を用いることが好適である。
【0034】
アルデヒド類キャッチャー剤としては、アミン類、イミン類、アミジン類、アミド類、カルバミド類、ヒドラジド類、アゾール類、アジン類、アミノ酸類等のようにアルデヒドガスと化学的に反応して捕捉作用を発揮する含窒素有機化合物を用いることが好適であるが、活性炭やシリカゲルのように揮発性有機化合物を物理的に吸着する材料を用いることもでき、また、このような吸着材と上記含窒素有機化合物とを併用することもできる。また、特開2002−200148号公報に開示されているような、酸化チタン、酸化亜鉛などの光触媒からなる消臭剤、又は該光触媒を活性炭、珪素酸化物、珪酸塩、不溶性又は難溶性の4価金属リン酸塩(リン酸ジルコニウム等)などのガス吸着材と複合化させてなる消臭剤を用いることもできる。
【0035】
上記含窒素有機化合物として、より具体的には、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、メラミン、ジシアンジアミド、尿素、エチレン尿素、セミカルバジド、グルタミン酸塩、グリシン等が挙げられる。
【0036】
また、含窒素有機化合物として、上記ヒドラジド類には、ラウリル酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド等のモノヒドラジド化合物、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物、ポリアクリル酸ヒドラジド等のポリヒドラジド化合物が挙げられる。
【0037】
また、アゾール類としては、3−メチル−5−ピラゾロン、1,3−ジメチル−5−ピラゾロン、3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロン、3−フェニル−6−ピラゾロン、3−メチル−1−(3−スルホフェニル)−5−ピラゾロン、ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−アミノピラゾール、3−メチルピラゾール−5−カルボン酸などのジアゾール化合物、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−ブチル−1,2,4−トリアゾールなどのトリアゾール化合物が挙げられる。
【0038】
更に、アジン類としては、6−メチル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、4,5−ジクロロ−3−ピリダジン等のピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン等が挙げられる。
【0039】
VOCキャッチャー剤の市販品としては、東亞合成社製「ケスモン
NS−103」「ケスモンNS−231」「ケスモンNS−240」、大塚化学社製「ケムキャッチH−6000」「ケムキャッチ添着セピオライト」、アイカ工業社製「アイカユリUE−250」(いずれも含窒素有機化合物)等が挙げられる。
これらのVOCキャッチャー剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明のパッドを構成する軟質ポリウレタンフォームは、ポリオールとイソシアネートとを主成分とするポリウレタンフォーム原料を発泡成形して得られる。
【0041】
本発明において、ポリウレタンフォーム原料のポリオールとしては、ポリマーポリオールを用いず、ポリエーテルポリオールを用いる。ポリエーテルポリオールとしては、水酸基価20〜60mgKOH/gのものが、パッドとしての諸性能を満足するために好ましい。ポリエーテルポリオールとして具体的には、KC282(三洋化成(株)製)等の市販品を使用し得る。
【0042】
ポリウレタンフォーム原料のイソシアネートとしては、公知のイソシアネートを用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げることができ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用しても良い。
【0043】
中でも、本発明においては成形密度領域の観点から、イソシアネートとしてトリレンジイソシアネート(TDI)及び/又はジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いることが好適である。ここで、TDIとしては、特に限定されるものではないが、2,4−TDIと2,6−TDIとの配合比が80/20〜50/50(質量比)の混合物であることが好ましく、80/20〜65/35(質量比)の混合物であることが特に好ましい。MDIとしても特に限定されるものではなく、その分子量分布の広狭を問わず用いることができ、例えば、純(ピュア)MDI(4,4’−MDI)、ポリメリックMDI、粗(クルード)MDIなどを好適に用いることができる。
【0044】
TDIとMDIとを併用する場合、両者の配合比としては、TDI/MDI(質量比)の値として通常20/80〜90/10(質量比)、好ましくは50/50〜80/20(質量比)である。
【0045】
イソシアネートのイソシアネートインデックスは、70〜120とりわけ80〜110であることが好ましい。
【0046】
イソシアネートの配合量は特に制限されるものではないが、ポリオール100重量部に対して通常20〜100重量部、好ましくは25〜60重量部である。イソシアネートの配合量が少なすぎると樹脂化反応が進みすぎて独立気泡になり好適なフォームが得られない場合があり、一方多すぎると、ポリウレタンフォームの硬化が遅れる場合がある。
【0047】
ポリウレタンフォーム原料中の有機化処理された無機充填材としては、前述のものを用いることができる。なお、有機化処理された無機充填材の配合量は、ポリオール100重量部に対して0.5〜5重量部とすることが好ましい。この配合量が0.5重量部未満では、有機化処理された無機充填材を配合することによる改善効果がほとんど発現せず、5重量部を超えるとポリオール成分が高粘度化してしまい、混合液が均一化できず、有機化処理された無機充填材をウレタンフォーム中に均一に分散させることができないおそれがある。
【0048】
本発明においては、この有機化処理された無機充填材の配合による硬度や弾性率の向上効果で、パッドに必要な肉厚を有機化処理された無機充填材を配合しない場合の70%程度に低減することができ、ポリウレタンフォーム使用量の低減でより一層のVOC低減を図ることができる。
【0049】
また、ポリウレタンフォーム原料中のVOCキャッチャー剤は、ポリオール100重量部に対して0.1〜5.0重量部とすることが好ましい。この配合量が0.1重量部未満ではVOCキャッチャー剤を配合することによる十分なVOC低減効果を得ることができず、5.0重量部を超えるとキャッチャー剤による触媒活性阻害で、助触媒を併用しても反応性が著しく低下することとなる。
【0050】
また、軟質ポリウレタンフォームの硬度を調節する(高くする)観点から、上記ポリウレタンフォーム原料中に架橋剤を配合することもできる。このような架橋剤としては例えばトリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ショ糖(シュガー)、ペンタエリスリトール、1,4−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、エチレンジアミン、グリセリン等や、これらにプロピレンオキシド(PO)又はエチレンオキシド(EO)等を付加させたもの、アルキレンオキシドの単独重合体(EOの単独重合体やPOの単独重合体)等が挙げられる。中でも、架橋剤としてEOの単独重合体を用いた場合、ポリウレタンフォーム原料の発泡硬化時の初期反応を程よく抑制することが可能となり、液の広がりが良くなって金型内の隅々まで発泡原液が行き渡りやすくなる結果、モールド成形体の外形異常(隅部の「欠け」など)が起こりにくくなって好適である。
【0051】
上記架橋剤としては市販品を用いることができ、例えば旭硝子(株)製「EL555」、武田薬品工業(株)製「T−880」「GR−04」、ダウポリウレタン日本(株)製「XQ82211」等を挙げることができる。
【0052】
上記架橋剤の配合量としては、特に限定されるものではないが、ポリオール100重量部に対して通常0.1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。
【0053】
上記ポリウレタンフォーム原料には、通常のポリウレタンフォーム原料と同様にして、必要に応じて発泡剤、触媒、助触媒、整泡剤等を配合することができる。
【0054】
発泡剤は必要に応じて適宜配合し得、例えば水を好適に使用することができるが、メチレンクロライド、モノフッ化トリ塩化メタンなどの低沸点の化合物を使用することもできる。発泡剤の配合量としては適宜調製されるが、ポリオール100重量部に対して通常0〜15重量部、好ましくは1〜5重量部である。
【0055】
触媒としては、ポリウレタンに使用される一般的な触媒を用いることができ、例えばアミン系、錫系触媒が好適に用いられる。アミン系触媒としては、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス−(ジメチルアミノエチル)エーテル、テトラメチルプロピレンジアミン、トリメチルアミノエチルピペラジン、テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等、錫系触媒としては、スタナスオクテート、ジブチルチンジラウレート等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。中でも、トリエチレンジアミン、ビス−(ジメチルアミノエチル)エーテル等の第3級アミンは樹脂化の促進に好適に使用され、ジエタノールアミンは得られるフォームの通気性をコントロールするのに好適に使用される。触媒の配合量としては、ポリオール100重量部に対して通常0〜5重量部、好ましくは0.1〜1重量部である。
【0056】
助触媒としては、樹脂化反応を補う観点から上記の中で特に樹脂化を促進する触媒(環状の3級アミン、有機金属系触媒など)が好ましく用いられ、特にトリエチレンジアミン、イミダゾール系の3級アミン、錫触媒が良い。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。助触媒の配合量は、触媒の触媒活性とキャッチャー剤の配合量により異なるが、ポリオール100重量部に対して通常0.05〜2.0重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部である。
【0057】
触媒に助触媒を併用することにより、VOCキャッチャー剤を配合することによる反応性の低下を改善することができる。
【0058】
整泡剤としては、例えば、オルガノポリシロキサン、アルキルカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等を挙げることができる。整泡剤の配合量としては、ポリオール100重量部に対して通常0〜5重量部、好ましくは0.5〜2重量部である。
【0059】
更に、ポリウレタンフォーム原料に対しては、必要に応じて各種添加剤を配合することができ、例えば、顔料等の着色剤、炭酸カルシウム等の充填剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、カーボンブラック等の導電性物質、抗菌剤などを配合することができる。
【0060】
本発明のパッドは、上記ポリウレタフォーム原料を発泡硬化させて得られるものである。発泡方法としては、例えばワンショット法、プレポリマー法などを採用できる。なお、発泡温度としては通常0〜40℃、好ましくは15〜25℃であり、(フォーム成形品の比重)/(発泡前の原料の比重)の値としては通常1/10〜1/50である。
【0061】
なお、本発明において用いる有機化処理された無機充填材は、一般に、水と反応してゲル化する性質を有するため、ポリウレタンフォーム原料に配合する場合、一旦ポリオールプレミックスを調製し、ここへ徐々に添加することが好ましい。
即ち、イソシアネート成分と、これとは別にポリオール、触媒、助触媒、架橋剤、有機化処理された無機充填材とを含むポリオール成分とをそれぞれ調製し、これらを混合して反応させることが好ましく、特に、無機充填材については、無機充填材以外を混合したポリオール成分に添加混合することが好ましい。また、VOCキャッチャー剤はポリオールに含有されるアルデヒド類を低減するため、また、VOCキャッチャー剤はイソシアネートと反応する可能性があることから、ポリオール成分側に添加して配合することが好ましい。
【0062】
このような本発明のパッドは、特に自動車等の車両用シートパッドとして好適である。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
以下の実施例及び比較例で用いたポリウレタンフォーム原料成分は次の通りである。
ポリエーテルポリオール:三洋化成(株)製ポリプロピレングリコール「KC282
」水酸基価28mgKOH/g
ポリマーポリオール:三洋化成(株)製「KC855」水酸基価23mgKOH/g
架橋剤:旭硝子(株)製ポリエーテルポリオール「EL555」水酸基価550mg
KOH/g
有機化処理された無機充填材:コープケミカル(株)製有機化マイカ「ソマシフME
E」
触媒A:三共エアプロダクツ(株)製アミン系触媒「33LV」
助触媒B:栗ソー(株)製アミン系樹脂化触媒「TOYOCAT DM70」
整泡剤A:東レ(株)製シリコーン系整泡剤「SRX274C」(トルエン含有タイ
プ)
整泡剤B:東レ(株)製シリコーン系整泡剤「SZ1325B」(トルエンフリータ
イプ)
VOCキャッチャー剤:栗亜合成(株)製含窒素有機化合物「ケスモンNS240」
【0064】
イソシアネート:トリレンジイソシアネート(TDI)/ジフェニルメタンジイソ
シアネート(MDI)=80/20(重量比)の混合品。
【0065】
実施例1、比較例1〜3
表1に示す配合のポリウレタンフォーム原料を金型のキャビティ内に供給して発泡成形することにより、400mm×400mmで、表1に示す厚みのサンプルを作製し、密度、25%硬度、反発弾性率を測定した。その後、80mm×100mmのサンプルを切り出して、VOC放散量を測定した。
なお、ポリウレタンフォーム原料の調製には、有機化マイカ以外の成分で一旦ポリオールプレミックスを調製し、これに有機化マイカを加えて更に混合してポリオール成分とし、このポリオール成分と、イソシアネート成分をミキサーで撹拌混合して発泡成形した。
なお、このときポリウレタンフォーム原料のゲルタイムを測定した。
【0066】
密度、25%硬度、反発弾性率、VOC放散量、ゲルタイムの測定方法は下記の通りである。
これらの結果を表1に示した。
【0067】
<密度>
JIS K 6400に準拠して評価した。
【0068】
<25%硬度>
JIS K 6400に準拠して評価した。
【0069】
<反発弾性率>
JIS K 6400に準拠して評価した。
【0070】
<VOC放散量測定>
サンプルをバッグに入れ、バッグ内を4.5LのG1高純度窒素ガスに置換した。65℃のオーブンにて2時間加熱し、バッグ内のガス0.5Lを加熱脱着用捕集管(TENAX−TA:スペルコ社製)に吸着させ、3.5LをDNPHカートリッジ(GL Pak mini AERO:ジーエルサイエンス社製)に捕集した。TENAX−TAに捕集したサンプルを加熱脱着−GC/MS法にて定量(T,S,TVOC)した。DNPHカートリッジで捕集したガスはアセトニトリルで溶出させメスフラスコを用いて4.0mLに定容した。この溶液をHPLCを用いてアルデヒド類(FA,AA)の定量分析を行った。
FA:ホルムアルデヒド
AA:アセトアルデヒド
T:トルエン
S:スチレン
TVOC:全VOC
【0071】
<ゲルタイム>
フリー発泡を行い、鋼球(パチンコ玉)を一定の時間間隔ごとにフォーム上方より落下させた。容器の底面まで到達しなかった最初の玉を落下した時刻をゲルタイムとした。
【0072】
【表1】

【0073】
表1より次のことが明らかである。
ポリマーポリオールを用い、有機化マイカを用いず、またVOCキャッチャー剤も用いなかった比較例1では、VOC放散量が非常に多い。VOCキャッチャー剤を用いてもポリマーポリオールを用いた比較例2では、VOC放散量は殆ど改善しない。しかも、VOCキャッチャー剤を用いたことによる反応性の低下でゲルタイムが長くなっている。これら比較例1,2では、整泡剤Aからのトルエンの放散の問題もある。
【0074】
ポリマーポリオールを用いず、ポリエーテルポリオールのみを用い、有機化マイカを用い、また整泡剤Bを用いた比較例3では、薄肉化が可能でVOCの放散量の低減が可能であるが十分ではない。
【0075】
ポリマーポリオールを用いず、ポリエーテルポリオールのみを用い、有機化マイカを用いると共に、キャッチャー剤と助触媒を併用し、更に整泡剤としてトルエンフリーの整泡剤Bを用いた実施例1では、VOCキャッチャー剤によるアルデヒド類の捕捉と、ポリオールからのスチレンの放散防止、整泡剤からのトルエンの放散防止が図れると共に、薄肉化により、より一層のVOC放散量の低減が図れる。しかも、反応性が損なわれることもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールとイソシアネートとを主成分とするポリウレタンフォーム原料を発泡成形してなる軟質ポリウレタンフォームよりなるパッドであって、
前記ポリオールがポリエーテルポリオールであり、
前記ポリウレタンフォーム原料が、揮発性有機化合物を捕捉するキャッチャー剤と、有機化処理された無機充填材とを含むことを特徴とするパッド。
【請求項2】
請求項1において、前記ポリウレタンフォーム原料に、触媒としての第3級アミンと、助触媒としての樹脂化触媒とが配合されていることを特徴とするパッド。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記無機充填材が、ケイ酸塩であることを特徴とするパッド。
【請求項4】
請求項3において、前記ケイ酸塩が、天然又は合成のマイカであることを特徴とするパッド。
【請求項5】
請求項4において、前記マイカが、膨潤性マイカであることを特徴とするパッド。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記有機化処理が、無機充填材の表面を有機オニウムイオンで修飾する処理であることを特徴とするパッド。
【請求項7】
請求項6において、前記有機オニウムイオンが、有機アンモニウムイオンであることを特徴とするパッド。
【請求項8】
請求項7において、前記有機アンモニウムイオンが、ジ(ヒドロキシアルキル)ジアルキルアンモニウムイオンであることを特徴とするパッド。
【請求項9】
請求項8において、前記ジ(ヒドロキシアルキル)ジアルキルアンモニウムイオンのヒドロキシアルキル基が、炭素鎖末端にOH基を有するものであることを特徴とするパッド。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、前記ポリオールがポリマーポリオールを含まないことを特徴とするパッド。
【請求項11】
請求項2ないし10のいずれか1項において、前記ポリウレタンフォーム原料が、前記ポリオール100重量部に対して前記助触媒を0.05〜2.0重量部含むことを特徴とするパッド。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項において、前記キャッチャー剤が含窒素有機化合物であることを特徴とするパッド。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項において、前記ポリウレタンフォーム原料が、前記ポリオール100重量部に対して前記キャッチャー剤を0.1〜5.0重量部含むことを特徴とするパッド。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1項において、前記ポリウレタンフォーム原料が前記ポリオール100重量部に対して前記有機化処理された無機充填材を0.5〜5重量部含むことを特徴とするパッド。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1項において、前記パッドは車両用シートパッドであることを特徴とするパッド。

【公開番号】特開2009−91435(P2009−91435A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262379(P2007−262379)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】