説明

パトローネ型固体撮像装置

【課題】 フォーカルプレーンシャッタ搭載のフィルムカメラに装着できる薄型のパトローネ型固体撮像装置を提供する。
【解決手段】 パトローネからフィルムを所定長さ引き出した形状の筐体41を備え、フィルムに対応する箇所42に固体撮像素子43を搭載し、パトローネに対応する箇所44に固体撮像素子43を駆動すると共に固体撮像素子43から読み出したデータを処理する電子回路及びバッテリ電源を収納して構成され、フィルムカメラにフィルムの代わりに装着してデジタル画像を撮影するパトローネ型固体撮像装置30において、緑色光を光電変換する光電変換膜が半導体基板の上層に少なくとも1層積層された光電変換膜積層型カラー固体撮像素子43をフイルムに対応する箇所42に搭載する。これにより、1画素で複数色の信号を検出でき、厚さの厚い光学ローパスフィルタを設ける必要がなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銀塩フィルムカメラに装着してデジタル画像を撮像するパトローネ型固体撮像装置に係り、特に、フォーカルプレーンシャッタを搭載した銀塩フィルムカメラにも装着可能なパトローネ型固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、従来のパトローネ型固体撮像装置の斜視図であり、下記の特許文献1,2,3に開示されている。このパトローネ型固体撮像装置1は、銀塩フィルムを収納するパトローネから10cm程度の所定長さのフィルムを引き出した形状の筐体2を備え、この筐体2のフィルム対応部分3に従来の固体撮像素子4を取り付け、パトローネ対応部分5に電子回路やバッテリ電源を収納する構成になっている。
【0003】
そして、図13に示す様に、フィルムカメラ5の裏蓋6を開けて、固体撮像素子4がレンズ7方向に向くようにパトローネ型固体撮像装置1をフィルムカメラ5内に装着し、裏蓋6を閉じる。
【0004】
フィルムカメラ5のレリーズボタン8を半押ししてS1スイッチが投入されると、フィルムカメラ5のオートフォーカス機能や露出機能が動作してフォーカスレンズ位置や絞り開口量、シャッター速度が決定され、レリーズボタン8を全押ししてS2スイッチが投入されると、シャッターが切られる。これにより、レンズ7を通して撮像された被写体画像が固体撮像素子4に結像され、固体撮像素子4からデジタル画像データが電子回路内のメモリに取り込まれる。
【0005】
図14は、パトローネ型固体撮像装置に搭載される従来の固体撮像素子の断面模式図であり、図12のa―a線断面のうち、3画素分の断面を示している。
【0006】
従来の固体撮像素子4は、半導体基板10の表面部にフォトダイオード11R,11G,11Bが形成され、各フォトダイオード11R,11G,11B間に電荷転送路12が形成され、電荷転送路12の上に転送電極13が形成され、転送電極13の上を光遮蔽し各フォトダイオード11R,11G,11Bの受光面上方に開口を持つ光遮蔽膜14が積層される。光遮蔽膜14の上は透明絶縁層15が積層され、その上に、赤色(R)緑色(G)青色(B)のカラーフィルタ16が積層され、その上に、マイクロレンズ17が積層される。
【0007】
更にその上には、保護用のカバーガラス18と、光学ローパスフィルタ19と、IRカットフィルタ20とが重ねて設けられる。カバーガラス18の機能を、IRカットフィルタ20や光学ローパスフィルタ19に兼用させることもある。
【0008】
従来の固体撮像素子4は、赤色(R)を検出するフォトダイオード11Rと、緑色(G)を検出するフォトダイオード11Gと、青色(B)を検出するフォトダイオード11Bとが異なる位置に形成されているので、ナイキスト周波数以上の空間周波数成分をカットしないと撮像画像中に色モアレ等が目立ってしまうため、光学ローパスフィルタ19は必須の構成要素になっている。
【0009】
IRカットフィルタ20は、固体撮像素子4に入射する光の中から長波長の赤外域成分をカットするものである。半導体基板10に設けられ各画素を構成するフォトダイオード11R,11G,11Bは、R,G,Bの可視光よりも赤外域に感度が高いため、カラーフィルタ16で不要な可視光をカットしても、赤外光をカットできないので、R,G,Bを精度良く色分離して検出するには、IRカットフィルタ20は必須の構成要素になっている。
【0010】
通常のデジタルカメラでは、このIRカットフィルタ20は、カメラのレンズ系に設けられるが、パトローネ型固体撮像装置は、IRカットフィルタを搭載していない銀塩フィルムカメラのレンズ系をそのまま利用するため、固体撮像素子4の前面にIRカットフィルタ20を設けることが必要になる。
【0011】
以上述べた従来の固体撮像素子4は、CCD型イメージセンサを例に説明したが、CMOS型イメージセンサでも、光学ローパスフィルタやIRカットフィルタが必須になっている。
【0012】
【特許文献1】特開平9―98326号公報
【特許文献2】特開2000―184250号公報
【特許文献3】特開2003―234932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
パトローネ型固体撮像装置に搭載される従来の固体撮像素子4は、IRカットフィルタ20と光学ローパスフィルタ19が必須である。しかもこれらの厚さは3mm〜5mmとかなり厚く、パトローネ型固体撮像装置のフィルム部分3全体の厚さを厚くする原因になっている。
【0014】
パトローネ型固体撮像装置を装着する銀塩フィルムカメラには、一眼レフカメラの様にフォーカルプレーンシャッタを搭載したものがある。フォーカルプレーンシャッタは、フィルムの直前に配置されており、フィルム直前で前幕と後幕とが走行する構造になっている。
【0015】
従って、パトローネ型固体撮像装置のフィルム対応部分すなわち固体撮像素子を搭載したフィルム部分3が厚いと、パトローネ型固体撮像装置をフォーカルプレーンシャッタ搭載の銀塩フィルムカメラに装着することすらできなくなり、高機能な一眼レフタイプの銀塩フィルムカメラを利用してデジタル画像を撮像することができない。
【0016】
また、一眼レフカメラの様にレンズ交換可能なカメラの場合、交換するレンズ毎に射出瞳位置が変わり、特に小型で短焦点レンズに交換すると、射出瞳距離が短くなる。固体撮像素子の表面部分に積層される図14のマイクロレンズ17は、限定された射出瞳距離に対してシェーディングが適性に設計されているため、レンズが交換されて射出瞳位置が変わると、シェーディングが発生してしまうという問題もある。
【0017】
しかし、従来の固体撮像素子は、電荷転送路やMOSトランジスタ回路等の信号読出回路を半導体基板表面に設ける関係で、フォトダイオード11R,11G,11Bの受光面面積が小さくなり、このため、マイクロレンズ17を設けないと、光利用効率が低くなってしまうという問題がある。
【0018】
本発明の目的は、フォーカルプレーンシャッタを搭載したフィルムカメラにも装着できる薄いカラー固体撮像素子を搭載し、また、レンズ交換してもシェーディングの発生が抑制されるカラー固体撮像素子を搭載したパトローネ型固体撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のパトローネ型固体撮像装置は、パトローネからフィルムを所定長さ引き出した形状の筐体を備え、前記フィルムに対応する箇所に固体撮像素子を搭載し、前記パトローネに対応する箇所に前記固体撮像素子を駆動すると共に該固体撮像素子から読み出したデータを処理する電子回路及びバッテリ電源を収納して構成され、フィルムカメラにフィルムの代わりに装着してデジタル画像を撮影するパトローネ型固体撮像装置において、緑色光を光電変換する光電変換膜が半導体基板の上層に少なくとも1層積層された光電変換膜積層型カラー固体撮像素子を前記フイルムに対応する箇所に搭載したことを特徴とする。
【0020】
本発明のパトローネ型固体撮像装置の前記光電変換膜積層型カラー固体撮像素子は、赤色光を光電変換する光電変換膜と青色光を光電変換する光電変換膜とが更に前記半導体基板の上層に積層されていることを特徴とする。
【0021】
本発明のパトローネ型固体撮像装置の前記半導体基板には青色光を受光して光電変換する第1のフォトダイオードと赤色光を受光して光電変換する第2のフォトダイオードとが形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明のパトローネ型固体撮像装置の前記第1のフォトダイオードと前記第2のフォトダイオードとは前記半導体基板の深さ方向に積層して形成されていることを特徴とする。
【0023】
本発明のパトローネ型固体撮像装置の前記光電変換膜積層型からー固体撮像素子には赤外線カットフィルタ層が一体に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、1画素で複数色の信号を検出する構成のため、光学ローパスフィルタが不要となり、それだけ薄型にすることが可能となる。また、光電変換膜で受光する構成のため受光面積が広くなり、マイクロレンズを搭載する必要がなくなるため、フィルムカメラのレンズを交換してもシェーディングの発生が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るパトローネ型固体撮像装置を装着した銀塩フィルムカメラの説明図である。本実施形態に係るパトローネ型固体撮像装置30は、図13と同様にフィルムカメラ31内に裏蓋32を開けて装着されるが、本実施形態では更に、フィルムカメラ31のレリーズボタン33が設けられた部分に着脱自在に嵌合することができるカメラ用アタッチメント35を設ける。このカメラ用アタッチメント35には、レリーズボタン33を覆いレリーズボタン33と一体に押下することができるボタン36が設けられている。
【0027】
図2は、カメラ用アタッチメント35の内部回路を示す図である。このカメラ用アタッチメント35は、ボタン36にユーザの指がタッチしたことを感知するタッチセンサ37と、ボタン36にタッチされていることをタッチセンサ37が感知したとき所定周波数で発振する発振回路(無線発信手段)38と、発振回路38の出力を無線により出力するアンテナ39と、発振回路38やタッチセンサ37に電力を供給するボタン電池40とを備える。
【0028】
図3は、本実施形態に係るパトローネ型固体撮像装置30の正面斜視図である。このパトローネ型固体撮像装置30の筐体41のフィルム対応部分42には詳細は後述する光電変換膜積層型カラー固体撮像素子43が取り付けられており、パトローネ対応部分44には、交換可能なバッテリ電源45と、電子回路46とが収納されている。
【0029】
図4は、図3に示すパトローネ型固体撮像装置30の背面斜視図である。パトローネ型固体撮像装置30の背面部分の所定箇所には、電源投入用の押しボタン50と、アンテナ51とが設けられている。この所定箇所は、フィルムカメラ31にフィルム確認用の窓が設けられている場合にはこの窓に対面する箇所が好ましく、押しボタン50が押され押しボタン50自身を発光させたときこれを窓から容易に確認可能となる。
【0030】
図5は、図3,図4に示すパトローネ型固体撮像装置30の機能構成ブロック図(図3に示す電子回路46の機能構成を含む。)である。本実施形態のパトローネ型固体撮像装置30は、パトローネ型固体撮像装置30の全体を統括制御するCPU53と、固体撮像素子43の駆動をCPU(制御部)53からの指示により制御する撮像素子駆動部55と、固体撮像素子43の出力データを取り込んでCPU53からの指示により信号処理するアナログ信号処理部56と、アナログ信号処理部56から出力される画像データをデジタルデータに変換するA/D変換器57とを備える。
【0031】
パトローネ型固体撮像装置30の電気制御系は、フレームメモリ61に接続されたメモリ制御部62と、A/D変換器57から出力されるデジタルの画像データを取り込んでガンマ補正やRGB/YC変換等の画像処理を行うデジタル信号処理部63と、撮像画像をJPEG画像に圧縮したり圧縮画像を伸張したりする圧縮伸張処理部64と、撮像画像データを積算してホワイトバランスのゲインを調整させる積算部65と、JPEG画像データ等の撮像画像データを保存する記録媒体66及びこの記録媒体66を制御するメモリ制御部67と、アンテナ51に接続され外部との間で無線通信を行う無線インタフェース68と、これらを相互に接続する制御バス69及びデータバス70を備える。
【0032】
パトローネ型固体撮像装置30の電源回路71は図3に示すバッテリ45を電力源とし、開閉スイッチ71aを介してCPU53及び無線インタフェース68に電力を供給すると共に、開閉スイッチ71bを介してパトローネ型固体撮像装置30を構成する各処理部(CPU53と無線インタフェース68を除く。)に電力を供給する構成になっている。
【0033】
そして、スイッチ71aは、図4に示す押しボタンスイッチ50がユーザにより押下されたとき閉成され、CPU53と無線インタフェース68とに電力供給がなされる。また、スイッチ71bは、CPU53からの電源投入指令により開閉制御される。
【0034】
次に、上述した構成のパトローネ型固体撮像装置30の動作を、図6の電源制御処理手順を示すフローチャートを参照して説明する。
【0035】
ユーザがパトローネ型固体撮像装置30を使用するために、パトローネ型固体撮像装置30を図1のフィルムカメラ31内に装着するとき、押しボタン50を押下してから装着する。これにより、図5の開閉スイッチ71aが閉成され、CPU53と無線インタフェース68だけに電力が供給される。即ち、節電モードのもとで、図6の電源制御プログラムが起動する。そして、ユーザは、カメラ用アタッチメント35をフィルムカメラ31のレリーズボタン33部分に嵌合装着する。
【0036】
ユーザがデジタル画像を撮像しようとしてボタン36に触れると、これをタッチセンサ37が感知し、「タッチ有り」を示す無線信号がアタッチメント35のアンテナ39から発信される。図5のCPU53は、図6のステップS1で「タッチ有り」の信号受信を待機しており、CPU53が無線インタフェース68を介してアンテナ51から「タッチ有り」の信号を受信したとき、ステップS2に進み、図5に示すスイッチ71bを閉成する。これにより、パトローネ型固体撮像装置30の全機能が動作可能状態となる。
【0037】
その後に、ユーザはデジタル画像の撮像動作を行うが、この撮像動作は、図6の処理とは関係なく行われる。撮像動作は、通常のフィルムカメラの撮影と同様に行われる。即ち、ユーザがボタン36を半押しすると、その下のレリーズボタン33のS1スイッチが投入される。これにより、フィルムカメラ11のオートフォーカス機能や露出機能等が動作してフォーカスレンズ位置の調整や絞り開口量の制御が行われ、また、フィルムカメラ11に搭載されている図示しないCPU(勿論、CPU53とは異なる)がシャッター速度を決定する。
【0038】
ユーザがボタン36を全押しすると、その下のレリーズボタン33のS2スイッチが投入され、フィルムカメラ31のシャッタが上記のシャッター速度で切られる。即ち、フォーカルプレーンシャッタを搭載しているカメラであれば、フォーカルプレーンシャッタの前幕と後幕とが走行し、レンズシャッタを搭載しているカメラであれば、レンズシャッタの開閉が行われる。尚、勿論、シャッター速度や絞り開口量の制御、ピント調整等をマニュアル操作することも可能である。
【0039】
これにより、固体撮像素子43の受光面に被写体画像が結像し、固体撮像素子43から、撮像画像のデータが、通常のデジタルカメラと同様に読み出され、記録媒体66に格納される。
【0040】
図6の電源制御プログラムは、デジタル画像の撮影中であってもアタッチメント35からの「タッチ有り」信号が受信できなくなるのを待機しており(ステップS3)、「タッチ有り」信号が受信できなくなったときはステップS4に進み、スイッチ71bを開放する。これにより再び節電モードに入ってCPU53と無線インタフェース68にのみ電力が供給され、バッテリ45の消費が抑制される。
【0041】
尚、図6に示す実施形態では、ユーザがボタン36から指を離したとき直ちにスイッチ71bが開放され指を接触させたときスイッチ71bを閉成する構成としたが、指の接触、離間を検出する度に一々電源がオンオフされるのを避けるために、ソフトタイマなどを設け、指を離してから所定時間、例えば1分間は電源がオン状態に保たれるようにしてもよい。
【0042】
次に、本実施形態のパトローネ型固体撮像装置30に搭載する薄型の光電変換膜積層型からー固体撮像素子43について説明する。本実施形態で用いるカラー固体撮像素子43は、薄型とするために、図14に示す光学ローパスフィルタ19を不要とする構成にしている。即ち、1画素で、R,G,Bの3色の信号を検出する構成としている。また、IRカットフィルタを固体撮像素子43とは別に設けるのではなく、カラー固体撮像素子43を構成する1つの層として固体撮像素子43に一体に形成している。以下、本実施形態の固体撮像素子43の構成を詳述する。
【0043】
図7は、光電変換膜積層型カラー固体撮像素子43の単位セルの断面模式図である。この図7に示す構造が縦横に二次元的に配列されることで、1つの固体撮像素子43が形成される。
【0044】
p型半導体基板100の画素部位置101の表面深部にはn型半導体層102が形成され、その上にはp型半導体層103が形成される。この結果、半導体層103と半導体層102との間に形成されたpn接合が第1のフォトダイオードを構成し、半導体層102と半導体基板100との間に形成されたpn接合が第2のフォトダイオードを構成する。
【0045】
本実施形態では、例えば特開2003―332551号公報の図5に示される固体撮像素子と同様に、シリコンの光吸収係数の波長依存性を利用し、短波長(青色光)の入射光量に応じて発生した信号電荷を浅部の第1のフォトダイオードで検出し、長波長(赤色光)の入射光量に応じて発生した信号電荷を深部の第2のフォトダイオードで検出する。
【0046】
半導体基板100の表面には、画素部位置101に隣接して電荷転送路104が形成され、この電荷転送路104の上に転送電極105が形成される。第1,第2の各フォトダイオードに蓄積された信号電荷は、転送電極105に読み出しパルスが印加されたとき、別々に電荷転送路104に読み出され、転送電極105に転送パルスが印加されたとき、別々に電荷転送路104に沿って転送される。
【0047】
半導体基板100の表面の画素部位置101から少し離間した適宜位置には緑色(G)信号用の信号電荷蓄積領域106が形成され、また、信号電荷蓄積領域106と画素部位置101との間に電荷転送路107が形成され、電荷転送路107の上に転送電極108が形成される。
【0048】
転送電極108に読み出しパルスが印加されたとき、信号電荷蓄積領域106に蓄積されている信号電荷が電荷転送路107に読み出され、転送電極108に転送パルスが印加されたとき電荷転送路107に沿って転送される。
【0049】
半導体基板100の表面には、光遮蔽膜109が積層される。この光遮蔽膜109には、第1,第2のフォトダイオードの受光面上方に設けられた開口109aと、信号電荷蓄積領域106の上方に設けられた開口109bとが穿設されている。光遮蔽膜109はシリコン酸化膜等の透明絶縁層110内に埋設され、絶縁層110の上には、透明な画素電極膜111が隣接する画素の画素電極膜と区分けして積層されている。画素電極膜111は例えばITO等で成り、この画素電極膜111と信号電荷蓄積領域106とが、開口109bを通して、タングステンプラグ等の縦配線112によって電気的に接続される。
【0050】
画素電極膜111の上には、各画素共通に一枚構成で光電変換膜113が積層される。光電変換膜113は、中間波長域すなわち緑色(G)の波長域の光を受光して緑色の入射光量に応じた光電荷を発生させる材料で構成される。例えば有機半導体を用いて構成したり、また、Alqやキナクリドン化合物で構成したり、最適な粒径のナノシリコンを積層することで構成する。図8(a)(b)に、夫々、Alqとキナクリドン化合物の化学式を示す。
【0051】
光電変換膜113の上には、各画素共通の一枚構成でなるITO等の透明共通電極膜114を積層し、その上に、フィルタ層115を積層する。更にその上に保護層を設けてもよい。
【0052】
本実施形態においては、フィルタ層115は、少なくとも400nm以下の紫外線を吸収または反射することができ、好ましくは400nm以下の波長域での吸収率が50%以上のものを用いる。更に、フィルタ層115は、少なくとも700nm以上の赤外線を吸収または反射することができ、好ましくは700nm以上の波長域での吸収率が50%以上のものを用いる。
【0053】
これらの紫外線吸収、赤外線吸収を行うフィルタ層115は、従来公知の方法によって形成できる。例えば、基板上にゼラチン、カゼイン、グリューあるいはポリビニルアルコールなどの親水性高分子物質からなる媒染層を設け、その媒染層に所望の吸収波長を有する色素を添加もしくは染色して着色層を形成する方法が知られている。さらには、ある種の着色材が透明樹脂中に分散されてなる着色樹脂を用いた方法が知られている。例えば、特開昭58−46325号公報、特開昭60−78401号公報、特開昭60−184202号公報、特開昭60−184203号公報、特開昭60−184204号公報、特開昭60−184205号公報等に示されている様に、ポリアミノ系樹脂に着色材を混合した着色樹脂膜を用いることができる。感光性を有するポリイミド樹脂を用いた着色剤も可能である。
【0054】
特公平7−113685号公報記載の感光性を有する基を分子内に持つ、200℃以下にて硬化膜を得ることのできる芳香族系のポリアミド樹脂中に着色材料を分散することや、特公平7−69486号公報記載の顔料を分散着色樹脂に用いることも可能である。
【0055】
本実施形態においては、フィルタ層115として、誘電体多層膜を用いても良い。誘電体多層膜は、光の透過の波長依存性がシャープであり、好ましい。
【0056】
製造上、フィルタ層115や光電変換膜113を絶縁層によって分離形成する場合には、フィルタ層115や光電変換膜113は、絶縁層から分離されていることが好ましい。絶縁層は、ガラス、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン等の透明性絶縁材料を用いて形成することができる。窒化珪素、酸化珪素等も好ましく用いられる。プラズマCVDで製膜した窒化珪素は緻密性が高く透明性も良いため好ましい。
【0057】
酸素や水分等との接触を防止する目的で保護層あるいは封止層を設ける場合には、保護層としては、ダイヤモンド薄膜、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料膜、フッ素樹脂、ポリパラキシレン、ポリエチレン、シリコン樹脂、ポリスチレン樹脂等の高分子膜、さらには、光硬化性樹脂等が挙げられる。また、ガラス、気体不透過性プラスチック、金属などで素子部分をカバーし、適当な封止樹脂により素子自体をパッケージングしても良い。この場合、吸水性の高い物質をパッケージング内に存在させることも可能である。
【0058】
斯かる構成の固体撮像素子43に被写体からの光が入射すると、赤外線と紫外線とがフィルタ層115でカットされ、可視光が内部に入射する。可視光の内の緑色(G)光は光電変換膜113で吸収され、緑色(G)光の入射光量に応じた光電荷が光電変換膜113内に発生する。共通電極膜114と画素電極膜111との間にバイアス電圧を印加しておくと、この光電荷は速やかに縦配線112を通して信号電荷蓄積領域106に移動する。
【0059】
入射光のうちの青色(B)光と赤色(R)光とは光遮蔽膜109の開口109aに入射し、半導体基板100内に侵入する。波長の短い青色光は主に半導体基板100の浅部で吸収され、光電荷を発生させる。この光電荷は、第1のフォトダイオードに蓄積される。波長の長い赤色光は主に半導体基板100の深部にまで達し、光電荷を発生させる。この光電荷は、第2のフォトダイオードに蓄積される。
【0060】
信号電荷蓄積領域106に蓄積された緑色(G)光に応じた信号電荷と、第1フォトダイオードに蓄積された青色(B)光に応じた信号電荷と、第2フォトダイオードに蓄積された赤色(R)光に応じた信号電荷は、夫々電荷転送路に読み出され、転送され、この固体撮像素子43から出力される。
【0061】
この様に、本実施形態に係る固体撮像素子43では、1つの画素からR,G,bの3色の信号電荷を得ることができるため、光学ローパスフィルタを用いなくても色モアレ等が発生することが無くなる。このため、光学ローパスフィルタ分だけ厚さを薄くすることができる。また、フィルタ層115や保護膜を一体に積層した構成のため、赤外線カットフィルタや保護カバーガラスを重ねて設ける必要がなくなり、その分の厚さも薄くなる。
【0062】
これにより、パトローネ型固体撮像装置に固体撮像素子43を搭載してもフィルム部分42の厚さが薄いため、フォーカルプレーンシャッタを搭載した銀塩フィルムカメラにも装着することが可能となる。また、輝度信号として用いる緑色光を受光する光電変換膜113の受光面は広いためマイクロレンズが不要となり、レンズを交換し射出瞳位置が変化してもシェーディングの発生は抑制される。
【0063】
尚、図7に示す実施形態では、信号読出回路を電荷転送路で構成した固体撮像素子を例に説明したが、信号読出回路を、電荷転送路ではなく、CMOSイメージセンサと同様にMOSトランジスタで構成しても良いことはいうまでもない。
【0064】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態に係る光電変換膜積層型カラー固体撮像素子の単位セルの断面模式図である。第1の実施形態の構成と殆ど同じであるため同一構成要素には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0065】
第1の実施形態では、フィルタ層115を固体撮像素子の上層部に設けて赤外線をカットしたが、本実施形態では、このフィルタ層115の代わりに、光遮蔽膜109の開口109a内に、赤外線カットフィルタ層116を設けた点が異なる。赤外線カットフィルタ層116は、フィルタ層115と異なり、赤外線のみをカットする。
【0066】
本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、光学ローパスフィルタと赤外線カットフィルタが不要となるため、固体撮像素子の厚さを薄くすることが可能となる。
【0067】
(第3の実施形態)
図10は、本発明の第3の実施形態に係る光電変換膜積層型カラー固体撮像素子の単位セルの断面模式図である。第1,第2の実施形態では、光電変換膜を1層だけ半導体基板100に積層し、半導体基板に2層のフォトダイオードを設けることで、3色を同一画素で検出する構成としたが、本実施形態では、半導体基板200の上に、青色検出用の光電変換膜201と、緑色検出用の光電変換膜202と、赤色検出用の光電変換膜203とを3層積層した構成にしている。
【0068】
本実施形態の固体撮像素子は、n型半導体基板200の表面部にpウェル層205が形成され、その表面部に、赤色電荷蓄積部206と、緑色電荷蓄積部207と、青色電荷蓄積部208とが形成され、各電荷蓄積部206,207,208間に、電荷転送路209が形成され、各電荷転送路209の上に転送電極210が形成され、各転送電極210の上に、光遮蔽膜211が積層される。
【0069】
各光電変換膜201,202,203は、夫々、画素毎に区分けされた透明な画素電極膜212,213,214と、各画素共通の一枚構成の透明な共通電極膜215,216,217とによって挟まれ、これらが、透明絶縁層218,219,220を介して積層される。そして、画素電極膜212と青色電荷蓄積部208とが縦配線221によって接続され、画素電極膜213と緑色電荷蓄積部207とが縦配線222によって接続され、画素電極膜214と赤色電荷蓄積部206とが縦配線223によって接続される。尚、最上層の共通電極膜215の上に、紫外線カットフィルタ層を設けるのが好ましい。
【0070】
本実施形態の固体撮像素子に光に入射すると、入射光の内の青色光が光電変換膜201に吸収されて光電荷が発生し、この光電荷が青色電荷蓄積部208に蓄積される。光電変換膜201を透過した光のうち緑色光は光電変換膜202に吸収されて光電荷が発生し、この光電荷が緑色電荷蓄積部207に蓄積される。光電変換膜202を透過した光のうち赤色光は光電変換膜203に吸収されて光電荷が発生し、この光電荷が赤色電荷蓄積部206に蓄積される。各電荷蓄積部206,207,208に蓄積された信号電荷は、隣接する電荷転送路209に読み出された後、転送され、固体撮像素子から出力される。
【0071】
入射光に含まれる赤外線は、光電変換膜201,202,203のいずれにも吸収されず、半導体基板100の表面に到達するが、光遮蔽膜211に阻まれる。
【0072】
本実施形態の固体撮像素子は、第1,第2の実施形態の固体撮像素子に比較して光電変換膜を多層構造にしたためその分だけ厚さが厚くなるが、そのオーダは1μm程度であり、半導体基板200の厚さ0.5mm程度に比較して薄いため、本実施形態でも第1,第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0073】
尚、本実施形態の固体撮像素子では、電荷転送路による信号読出回路を半導体基板の表面に形成したが、MOSトランジスタで信号読出回路を構成しても良いことはいうまでもない。
【0074】
(第4の実施形態)
図11は、本発明の第4の実施形態に係る光電変換膜積層型カラー固体撮像素子の単位セル1.5個分の断面模式図である。本実施形態の単位セルは、緑色(G)と青色(B)を検出する単位セルと、緑色(G)と赤色(R)を検出する単位セルとを縦方向,横方向に交互に設けた点が第1の実施形態と異なる。図11の他の構成要素は第1の実施形態と同様であるので、同一部材には同一符号を付してその説明は省略する。
【0075】
上述した図7に示す第1の実施形態では、半導体基板に2層のフォトダイオードを設けて青色(B)と赤色(R)の両方をシリコンの光吸収係数の波長依存性を利用して分離検出したが、本実施形態では、半導体基板300の表面部に1層のフォトダイオード301のみを設け、ある単位セルではフォトダイオード301の上に青色カラーフィルタ302を積層して青色信号を検出し、隣接する単位セルのフォトダイオード301の上には赤色カラーフィルタ303を積層して赤色信号を検出する構成になっている。
【0076】
本実施形態の固体撮像素子では、1画素で2色を検出し、残り1色については周りの画素で検出した信号を補間演算して求める。1画素で2色を検出する構成であるが、補間演算で生成された画素のサンプル点が他の2色の画素のサンプル点とほぼ同一となる様に補間演算することで、色のモアレは発生しない、という理由により、光学ローパスフィルタが不要となるため、固体撮像素子を薄くでき、第1〜第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0077】
以上述べた各実施形態のパトローネ型固体撮像装置30は、フィルムカメラ31側を何ら改造する必要がないため、フィルムカメラ31を銀塩フィルムカメラとして使用するときは、単にパトローネ型固体撮像装置30をカメラ31から取り外し、代わりに銀塩フィルムを装着するだけで、フィルムカメラとして使用可能である。
【0078】
即ち、本発明の各実施形態に係るパトローネ型固体撮像装置は、既存のフィルムカメラが持つ高価で高機能なレンズや堅牢なカメラボディをそのまま利用できると共に、固体撮像素子の製造技術が進歩して固体撮像素子の高画素化が更に進んだ場合には、新しい固体撮像素子を搭載したパトローネ型固体撮像装置をフィルムの様に交換して使用するだけで、ユーザは技術進歩の恩恵を安価に享受可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係るパトローネ型固体撮像装置は、既存のフィルムカメラを何ら改造することなくそのレンズやカメラボディを利用可能となるため、既存のレンズ付きデジタルカメラに代わるカメラとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るパトローネ型固体撮像装置を装着したフィルムカメラの背面斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すカメラ用アタッチメントの構成回路図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るパトローネ型固体撮像装置の正面斜視図である。
【図4】図3に示すパトローネ型固体撮像装置の背面斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るパトローネ型固体撮像装置の機能ブロック図である。
【図6】図5に示すCPUが実行する電源制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るパトローネ型固体撮像装置に搭載する固体撮像素子の単位セルの断面模式図である。
【図8】図7に示す光電変換膜を構成する材料の一例であるAlq(a)とキナクリドン化合物(b)の化学式を例示する図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る固体撮像素子の単位セルの断面模式図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る固体撮像素子の単位セルの断面模式図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る固体撮像素子の単位セル1.5個分の断面模式図である。
【図12】パトローネ型固体撮像装置の斜視図である。
【図13】パトローネ型固体撮像装置を装着したフィルムカメラの斜視図である。
【図14】従来のパトローネ型固体撮像装置に搭載される従来の固体撮像素子の3画素分の断面模式図である。
【符号の説明】
【0081】
30 パトローネ型固体撮像装置
31 フィルムカメラ
36 ボタン
43 固体撮像素子
100,200,300 半導体基板
111,212,213,214 画素電極膜
112,221,222,223 縦配線
113,201,202,203 光電変換膜
114,215,216,217 共通電極膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パトローネからフィルムを所定長さ引き出した形状の筐体を備え、前記フィルムに対応する箇所に固体撮像素子を搭載し、前記パトローネに対応する箇所に前記固体撮像素子を駆動すると共に該固体撮像素子から読み出したデータを処理する電子回路及びバッテリ電源を収納して構成され、フィルムカメラにフィルムの代わりに装着してデジタル画像を撮影するパトローネ型固体撮像装置において、緑色光を光電変換する光電変換膜が半導体基板の上層に少なくとも1層積層された光電変換膜積層型カラー固体撮像素子を前記フイルムに対応する箇所に搭載したことを特徴とするパトローネ型固体撮像装置。
【請求項2】
前記光電変換膜積層型カラー固体撮像素子は、赤色光を光電変換する光電変換膜と青色光を光電変換する光電変換膜とが更に前記半導体基板の上層に積層されていることを特徴とする請求項1に記載のパトローネ型固体撮像装置。
【請求項3】
前記半導体基板には青色光を受光して光電変換する第1のフォトダイオードと赤色光を受光して光電変換する第2のフォトダイオードとが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパトローネ型固体撮像装置。
【請求項4】
前記第1のフォトダイオードと前記第2のフォトダイオードとは前記半導体基板の深さ方向に積層して形成されていることを特徴とする請求項3に記載のパトローネ型固体撮像装置。
【請求項5】
前記光電変換膜積層型からー固体撮像素子には赤外線カットフィルタ層が一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のパトローネ型固体撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−262106(P2006−262106A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77037(P2005−77037)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】