パネルの検査装置及び検査方法
【課題】プレス成形を行う前の板材の板厚のばらつきを考慮したパネル検査装置及びパネル検査方法を提供すること。
【解決手段】パネル検査装置は、パネルの複数の共振周波数を抽出する共振周波数抽出手段と、抽出された複数の共振周波数の中から、振動伝播経路が異なる2つの共振周波数A,Bで構成される共振周波数の組み合わせを選択する共振周波数選択手段と、予め良品と判断された複数の良品パネルについて、各良品パネルに対して選択された共振周波数A,Bの集合を統計処理し、共振周波数A,Bを座標軸とする座標上に良品範囲91を生成する良品範囲生成手段と、検査対象のパネルについて、検査対象のパネルに対して選択された共振周波数A,Bと良品範囲生成手段により作成された良品範囲91とを比較し、この比較に基づいて検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル品質判定手段と、を備える。
【解決手段】パネル検査装置は、パネルの複数の共振周波数を抽出する共振周波数抽出手段と、抽出された複数の共振周波数の中から、振動伝播経路が異なる2つの共振周波数A,Bで構成される共振周波数の組み合わせを選択する共振周波数選択手段と、予め良品と判断された複数の良品パネルについて、各良品パネルに対して選択された共振周波数A,Bの集合を統計処理し、共振周波数A,Bを座標軸とする座標上に良品範囲91を生成する良品範囲生成手段と、検査対象のパネルについて、検査対象のパネルに対して選択された共振周波数A,Bと良品範囲生成手段により作成された良品範囲91とを比較し、この比較に基づいて検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル品質判定手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルの検査装置及び検査方法に関する。詳しくは、プレス成形品として形成されたパネルの共振周波数を測定し、この共振周波数に基づいて、パネルの品質の良否を判定するパネルの検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板材をプレス成形してパネルを形成すると、このパネルにはくびれや割れが生じる場合がある。このようなくびれや割れは、フランジ部や入り隅部など特にプレス成形時に歪みが集中する箇所に発生し易いものの、単発で発生する箇所もあり、発生箇所を予測することが難しい。このため、くびれや割れの検査は、成形品の全てを広範囲に亘って行う必要があり、検査に時間がかかる場合がある。
【0003】
そこで、従来より、パネルのくびれや割れの検査を短時間で行うことが可能な検査装置が提案されている。このような検査装置として、例えば特許文献1及び2には、パネルを試験的に加振するとともに、このパネルの振動を検出し、検出した振動から抽出されるパネル固有の周波数特性に基づいて、パネルの品質の良否を判断する検査装置が示されている。
【特許文献1】特開平9−171008号公報
【特許文献2】特開2007−147512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図24は、一規格に含まれる複数の板材の板厚の分布を示すヒストグラムである。
図24において、横軸は板材の板厚であり、縦軸は頻度である。この図に示すように、プレス成形品の材料となる板材は、同一の規格に含まれるものであっても板厚にばらつきがある。
【0005】
しかしながら、材料となる板材に、このような板厚のばらつきがあると、パネルの周波数特性の変化の要因が、くびれや割れの存在によるものか、或いは板材の板厚のばらつきによるものかで区別がつかない場合がある。上述の特許文献1,2では、このような板厚のばらつきが考慮されておらず、このため、パネルの品質の良否の判断が実際とは異なるものになるおそれがある。
【0006】
本発明は、パネルの周波数特性に基づいて品質の良否を判定するものであり、特にプレス成形を行う前の板材の板厚のばらつきを考慮したパネル検査装置及びパネル検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパネル検査装置(例えば、後述のパネル検査装置1)は、予め良品と判断されたパネルを加振して得られる共振周波数に基づいて、検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル検査装置であって、パネルを加振する加振器(例えば、後述の加振器20)と、パネルの振動を検出する振動検出器(例えば、後述の振動センサ30)と、前記加振器及び前記振動検出器を使用して、パネルの複数の共振周波数を抽出する共振周波数抽出手段(例えば、後述の制御装置40、及び図2のステップST3,ST6を実行する手段等)と、前記共振周波数抽出手段により抽出された複数の共振周波数の中から、振動伝播経路が異なる2つ以上の共振周波数で構成される共振周波数の組み合わせを一組以上選択する共振周波数選択手段(例えば、後述の制御装置40、図12のステップST32を実行する手段等)と、予め良品と判断された複数の良品パネルについて、前記共振周波数抽出手段、前記共振周波数選択手段を実行し、各良品パネルに対して選択された共振周波数の組み合わせの集合を統計処理し、共振周波数を座標軸とする座標上に良品範囲(例えば、図13の良品範囲91)を生成する良品範囲生成手段(例えば、後述の制御装置40、及び図12のステップST33を実行する手段等)と、前記検査対象のパネルについて、前記共振周波数抽出手段、前記共振周波数選択手段を実行し、前記検査対象のパネルに対して選択された共振周波数の組み合わせと前記良品範囲生成手段により作成された良品範囲とを比較し、この比較に基づいて前記検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル品質判定手段(例えば、後述の制御装置40、及び図2のステップST7を実行する手段等)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、予め良品と判断された複数の良品パネルから、各良品パネル特有の共振周波数の組み合わせを選択し、これら共振周波数の組み合わせの集合を統計処理して、共振周波数を座標軸とする座標上に良品範囲を生成する。次に、検査対象のパネルから、検査対象パネル特有の共振周波数の組み合わせを選択し、この共振周波数の組み合わせと、生成された良品範囲とを比較し、パネルの品質の良否を判定する。
【0009】
ここで特に、共振周波数の組み合わせとして、振動伝播経路が異なる2つ以上の共振周波数を選択することにより、材料となる板材の板厚のばらつきが考慮された拡がりを持つ良品範囲を生成することができる。このような良品範囲に基づいて、検査対象パネルの品質の良否を判定することにより、材料となる板厚のばらつきを考慮してパネルの品質を検査することが可能となる。
【0010】
また、加振器でパネルを加振しながら振動検出器でパネルの振動を検出することにより、短時間でパネルの品質の検査を行うことができる。これにより、例えば、パネル検査装置を、パネルの製造ラインに組み込むことができる。
【0011】
この場合、前記パネル品質判定手段は、前記良品範囲生成手段により生成された良品範囲のうち、共振周波数の間に正の相関があるもののみを検査対象のパネルの品質の良否の判定に用いることが好ましい。
【0012】
ここで、パネルの共振周波数は、材料となる板材の板厚に比例する。このため、パネルの共振周波数の間には、正の相関がある。
この発明によれば、検査対象のパネルの品質の良否の判定において、共振周波数の間に正の相関がある良品範囲のみを用いることで、パネルの品質の誤判定を防ぐことができる。
【0013】
この場合、複数の工程からなるプレスパネルの製造ライン(例えば、後述の製造ライン100)に組み込まれることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、パネル検査装置を、プレスパネルの製造ラインに組み込むことにより、パネルの製造、及びパネルの検査にかかるタイムサイクルを短縮することができる。
【0015】
本発明のパネル検査方法は、予め良品と判断されたパネルを加振して得られる共振周波数に基づいて、検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル検査方法であって、パネルを加振して振動を検出し、当該パネルの複数の共振周波数を抽出する共振周波数抽出手順と、前記共振周波数抽出手順で抽出された複数の共振周波数の中から、振動伝播経路が異なる2つ以上の共振周波数で構成される共振周波数の組み合わせを一組以上選択する共振周波数選択手順と、を含む検査手順を用いて、予め良品と判断された複数の良品パネルについて、前記検査手順を実行し、各良品パネルに対して選択された共振周波数の組み合わせの集合を統計処理し、共振周波数を座標軸とする座標上に良品範囲を生成する良品範囲生成手順と、前記検査対象のパネルについて、前記検査手順を実行し、前記検査対象のパネルに対して選択された共振周波数の組み合わせと前記良品範囲生成手段により作成された良品範囲とを比較し、この比較に基づいて前記検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル品質判定手順と、を備えることを特徴とする。
【0016】
この場合、前記検査対象のパネルの品質の良否を判定する際には、前記良品範囲のうち、共振周波数の間に正の相関があるもののみを検査対象のパネルの品質の良否の判定に用いることが好ましい。
【0017】
このパネル検査方法は、上述のパネル検査装置を、検査方法として展開したものであり、上述のパネル検査装置と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のパネル検査装置によれば、共振周波数の組み合わせとして、振動伝播経路が異なる2つ以上の共振周波数を選択することにより、材料となる板材の板厚のばらつきが考慮された拡がりを持つ良品範囲を生成することができる。このような良品範囲に基づいて、検査対象パネルの品質の良否を判定することにより、材料となる板厚のばらつきを考慮してパネルの品質を検査することが可能となる。また、加振器でパネルを加振しながら振動検出器でパネルの振動を検出することにより、短時間でパネルの品質の検査を行うことができる。これにより、例えば、パネル検査装置を、パネルの製造ラインに組み込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るパネル検査装置1の構成を示す概略図である。
【0020】
パネル検査装置1は、プレス成形により形成されたパネル10を加振する加振器20と、パネル10の振動を検出する振動検出器としての振動センサ30と、これら加振器20及び振動センサ30を制御する制御装置40と、を含んで構成される。
【0021】
このパネル検査装置1は、パネル10の一端部に設けられた加振位置12を加振器20で加振しつつ、パネル10の他端部に設けられた検出位置14において振動センサ30により振動を検出し、検出された振動を制御装置40で処理することにより、パネル10の品質の良否を判定する。
【0022】
加振器20は、安定して振幅の大きい振動を加えることが可能な電磁式(動電式)加振器を用いる。この加振器20は、制御装置40により作成された電圧波形に応じた振動を発生させる。加振器20の出力軸は、パネル10の加振位置12に接触しており、入力された電圧波形に応じてパネル10を加振する。また、この加振器20は、出力軸の振動をパネル10に確実に伝達するために、パネル10を出力軸に吸着する磁石を備える。
【0023】
振動センサ30は、加振器20による加振の応答としてのパネル10の振動を、検出位置14から検出する。具体的には、振動センサ30には、レーザドップラ速度計などの非接触型の速度計を用いる。振動センサ30は、制御装置40に接続されており、検出信号を制御装置40へ出力する。
【0024】
制御装置40は、作業者が各種データや指令を入力する入力装置と、この入力装置からの入力に応じて各種演算処理を実行する演算装置と、この演算処理の結果を画像として表示する表示装置と、を含んで構成される。また、制御装置40の演算装置は、加振器20に出力する電圧波形を作成したり、振動センサ30から入力された検出信号に応じて、後述のパネル検査処理を実行したりし、パネル10の品質の良否を判定する。
【0025】
次に、パネル検査装置1によりパネルを検査する手順について説明する。
図2は、パネル検査処理の手順を示すフローチャートである。
【0026】
先ず、ステップST1では、パネルに加振する加振波形を作成する(後述の図3及び図4参照)。
ステップST2では、予め良品と判断されたパネルを複数用意し、これら良品パネルを加振器で加振し、その応答としての振動波形を収集する(後述の図5〜図8参照)。
ステップST3では、ステップST2において収集した振動波形から、各良品パネルの複数の共振周波数を抽出する(後述の図9〜図11参照)。
ステップST4では、ステップST3において抽出した各パネルの複数の共振周波数に基づいて、良品範囲を生成する(後述の図12〜図17参照)。
ステップST5では、検査対象となるパネルを加振器で加振し、その応答としての振動波形を収集する。
ステップST6では、ステップST5において収集した振動波形から、検査対象パネルの複数の共振周波数を抽出する。
ステップST7では、ステップST6において抽出した検査対象パネルの複数の共振周波数と、ステップST4において生成した良品範囲とを比較して、検査対象パネルの品質の良否を判定する(後述の図19〜図20参照)。
ステップST8では、検査が終了したか否かを判別する。この判別がYESである場合には、パネル検査処理を終了し、NOである場合には、検査対象パネルを交換し、ステップST5に移る。
以下、これらステップST1〜ST8の処理について順に説明する。
【0027】
先ず、加振波形の作成(図2中ステップST1)、すなわち、加振器に入力する電圧波形の作成について、図3及び図4を参照して説明する。
図3は、加振波形の一例を示す図である。図3において、横軸は時間であり、縦軸は電圧である。加振波形は、後に詳述するパネルの複数の共振周波数成分を全て含む振動波形でなければならない。そこで、本実施形態では、加振波形は、それぞれ異なる周波数を有する複数の正弦波を重ね合わせることによって作成する。
【0028】
図4は、加振波形を構成する複数の正弦波のうちの2つを示す図である。
加振波形は、図4に示すような異なる周波数を有する正弦波を、それぞれピークの位相をずらして重ね合わせて構成される。本実施形態では加振波形として、例えば、500Hz〜4000Hzの間において、0.38Hz毎に9210個の周波数成分を含むものを用いる。また、加振波形の振幅は、加振器に入力可能な最大電圧値に合わせて作成する。
【0029】
ところで、加振器の特性上、加振器の駆動能力は、周波数が高くなるに従い低くなる。そこで、異なる周波数の正弦波を重ね合わせる際、このような加振器の周波数特性に合わせて周波数成分の強度を高めることで、比較的高い共振周波数であっても振動センサで取得することができる。
【0030】
次に、良品パネルの振動波形を収集する手順(図2中ステップST2)について、図5〜図8を参照して説明する。
図5は、振動波形を収集する手順を示すフローチャートである。
図6は、パネル10の構成を示す図である。
【0031】
先ず、ステップST11では、所定時間に亘り、加振器でパネル10を加振しつつ、このパネル10の振動速度を振動センサで測定し、ステップST12に移る。より具体的には、このステップでは、上述のステップST1で作成した加振波形に基づいて、加振器で加振位置12を加振しつつ、検出位置14におけるパネル10の振動速度を振動センサで測定する。ここで、パネルを加振し振動を検出する時間は、具体的には例えば1秒とする。
ステップST12では、測定した振動速度の波形を測定データとして保存し、ステップST13に移る。
【0032】
ステップST13では、測定した振動速度の波形のうち、検査に使用する部分のみを切り出し、ステップST14に移る。
図7は、測定した振動速度の波形の一例を示す図であり、時刻0において加振するとともに振動速度の測定を開始し、その後約1秒に亘って振動速度を計測した例を示す図である。加振を開始した直後は、パネルの振動が安定しておらず、後に詳述する共振周波数の抽出には不向きである。そこでこのステップでは、図7中2点鎖線に示すような、振動波形が安定し、定常状態となった部分のみを切り出す。
【0033】
ステップST14では、ステップST13において切り出した振動速度の波形を、周波数変換(スペクトル変換)して、パネルの振動を周波数成分に分解する。
図8は、周波数成分の波形の一例を示す図である。図8において、横軸は周波数であり、縦軸は各周波数の振動の強度である。
【0034】
図8に示すように、パネルの振動速度の波形を周波数分解すると、幾つかの周波数において鋭いピークが検出される。これらピークは、パネルを加振することにより共振現象が発生したことを示すものである。つまり、これらピークを有する周波数の振動は、パネルを加振することにより発生した振動と、この振動の反射波とが重ね合わさり増幅したことを示すものである。これらピークを有する周波数の値すなわち共振周波数の値と、これらピークの値は、パネルの形状及び板厚等に依存するものであり、パネル特有の値である。
【0035】
また、共振現象は、一般的に複数の周波数の振動において発生する。図6に示すように、振動が伝播する経路は、破線矢印16,17に示すように複数存在する。このため、一のパネルには、これら振動伝播経路毎に異なる値の共振周波数が存在する。
【0036】
なお、このステップでは、振動速度の波形を周波数成分に分解する方法として、最大エントロピー法を用いるが、これに限らず高速フーリエ変換などの方法を用いてもよい。
【0037】
図5に戻って、ステップST15では、全良品パネルの振動波形の収集が終了したか否かを判別する。この判別がYESである場合には、良品パネルの振動波形の収集を終了し、NOである場合には、良品パネルを交換し(ST16)、ステップST11に移る。
【0038】
次に、良品パネルの共振周波数を抽出する手順(図2中ステップST3)について、図9〜図11を参照して説明する。
図9は、共振周波数を抽出する手順を示すフローチャートである。
【0039】
ステップST21では、抽出条件を設定し、ステップST22に移る。このステップでは、上述のステップST14において、各良品パネルに対して収集された周波数成分の波形から、全ての良品パネルに共通した共振周波数を抽出する。
【0040】
図10は、上述のステップST14において得られた周波数成分の波形の一例を示す図である。より具体的には、図10の(a)は、良品パネル1の周波数成分の波形を示し、図10の(b)は、良品パネル2の周波数成分の波形を示す図である。
【0041】
図10に示すように、良品パネル1の周波数成分の波形では、周波数が400Hz〜1100Hzの間において、約550Hzを中心としたピーク1と、約650Hzを中心としたピーク2と、約800Hzを中心としたピーク3と、約900Hzを中心としたピーク4と、が観測される。一方、良品パネル2では、良品パネル1のピーク1,2,4に対応するピークが観測されるが、良品パネル1のピーク3に対応するピークは観測されない。また、これら良品パネル1,2におけるピークの値も異なる。このように、周波数成分の波形は、良品と判断されたパネルであっても、材料となる板材の板厚の違いや測定ノイズ等の影響により、パネル毎に異なったものとなる。
【0042】
そこで、このステップでは、これら良品パネルの全てにおいて共通かつ安定して観測できるピークを共振周波数として抽出するための条件を作成する。
具体的には、基準となるパネルを選択し、この基準パネルのピークの中心周波数値に対して±3%以内に収まり、かつ、全良品パネルを通じて安定した強度で検出できることを抽出条件として設定する。これにより、例えば、図10におけるピーク3は、安定した強度で検出できないものとして、抽出する共振周波数から除外されることとなる。
【0043】
ステップST22では、作成された抽出条件の下で、共振周波数の抽出を実行する。これにより、図11に示すように、複数の良品パネル1,2,3,4,5…毎に、複数の共振周波数A,B,C,D…を抽出することができる。
【0044】
次に、良品範囲を生成する手順(図2中ステップST4)について、図12〜図17を参照して説明する。
図12は、良品範囲を生成する手順を示すフローチャートである。
【0045】
ステップST31では、良品範囲を生成するために使用する良品パネルを選択する。
ステップST32では、上述のステップST22において抽出された良品パネル1,2,3,4,…の複数の共振周波数A,B,C,D,…の中から、2つの共振周波数で構成される共振周波数の組み合わせを選択する。
【0046】
ステップST33では、上述のステップST32において選択された一組の共振周波数の集合を2変数統計処理し、共振周波数を座標軸とする座標上に良品範囲を生成する。
図13は、統計処理の結果に基づいて生成された良品範囲91を示す図である。図13において、横軸及び縦軸は、ステップST32において選択された共振周波数の組み合わせ(共振周波数A,B)に対応する。
【0047】
このステップでは、これら共振周波数A,Bの平均値AX,AY、並びに、各々の標準偏差SX,SY、及び共分散SXYを算出し、これら平均及び偏差に基づいて、図14に示すような、共振周波数A,Bを座標軸とした2次元正規分布を求める。
次に、この2次元正規分布から、所定の確率K(0<K<1)の楕円確率範囲を切り出し、これを良品範囲とする。ここで、確率Kは、例えば98%とする。
より具体的には、確率楕円の長軸の長さをW1とし、短軸の長さをW2とし、長軸の傾きをTとした楕円状の良品範囲は、次式により算出される。
【0048】
【数1】
【0049】
ここで、変数L1,L2及びA,Bは、次式により算出される。
【数2】
【0050】
また、図13に示すように、共振周波数A,Bは、正に相関する。すなわち、良品範囲91の楕円の長軸92の傾きは正となる。この理由について説明する。
次式は、板材の長さをLとし、板材のヤング率をEとし、板材の密度をρとした場合の、板材の共振周波数fと板材の板厚bの関係を示す式である。
【0051】
【数3】
【0052】
この式に示すように、板材の共振周波数は、板厚に比例する。
図15は、板材の共振周波数と板厚との関係を示す図である。図15において、横軸は板材の板厚であり、縦軸は板材の一共振周波数である。
図15の実線93に示すように、板材の板厚が大きくなると、板材固有の共振周波数も比例して大きくなる。つまり、成形後のパネルにくびれや割れが生じなければ、成形後のパネルの板厚は成形前の板材の板厚に比例するので、くびれや割れのない良品パネルの共振周波数は、成形前の板材の板厚に比例する。
【0053】
したがって、図13に示すように、一組の共振周波数A,Bは正に相関する。つまり、各良品パネルの板材の板厚のばらつきにより、共振周波数は、傾きが正の材料板厚比例直線92に沿って分布したものとなる。
【0054】
実際には、図13に示すように、各良品パネルの共振周波数は、良品範囲内において材料板厚比例直線92からずれたものとなるが、これは、形状及び測定誤差に由来するものと言える。このように、一組の共振周波数の集合を統計処理して生成された良品範囲は、材料となる板材の板厚のばらつきを含んだ形状であるといえる。
【0055】
また、図6を参照して詳述したように、パネル10には、振動伝播経路16,17毎に異なる共振周波数が存在する。
そこで、例えば、共振周波数Aを振動伝播経路16に付随した共振周波数とし、共振周波数Bを振動伝播経路17に付随した共振周波数とする。またここで、振動伝播経路17には、くびれや割れなどの成形不良箇所があるものとする。
【0056】
このようなパネル10の共振周波数A,Bを測定し、座標上にプロットすると、くびれや割れの影響により、図13中の点Aに示すように良品範囲91から外れたものとなる。ここで、上述のように、成形不良箇所は、共振周波数Bに付随した振動伝播経路17上に存在するため、点Aの良品範囲91からのずれは、共振周波数Bのずれとして現れることとなる。このようにして、生成された良品範囲に基づいて、パネルの品質の良否を判定することができる。
【0057】
図12に戻って、ステップST34では、生成された良品範囲が適切なものであるか検証する。
図16及び図17は、それぞれ、統計処理の結果に基づいて生成された良品範囲の一例を示す図である。より具体的には、図16の(a)は、選択した共振周波数の組み合わせ(共振周波数A,B)の各良品パネルの値を示し、図16の(b)は、統計処理の結果、生成された良品範囲94を示す図である。また、図17の(a)は、選択した共振周波数の組み合わせ(共振周波数A,B)の各良品パネルの値を示し、図17の(b)は、統計処理の結果、生成された良品範囲95を示す図である。
【0058】
上述のように、材料となる板材の板厚のばらつきを考慮した良品範囲は、その共振周波数の間に正の相関がある。そこで、このステップでは、正の相関が無い良品範囲は、適切なものではないとして、これを除外する。これにより、図17の良品範囲95のような、正に相関していない良品範囲は除外される。
【0059】
また、このステップでは、選択した共振周波数の組み合わせに外乱の影響を大きく受けたものの良品範囲を除外する。具体的には、先ず、生成された良品範囲の範囲外に含まれる共振周波数のデータを取り除いた上で、上述の統計処理を再度行い、良品範囲を再生成する。
【0060】
図18は、統計処理の結果に基づいて生成された良品範囲の一例を示す図である。より具体的には、図18(a)は、生成された良品範囲81の範囲外に共振周波数のデータを含む一例を示す図であり、図18(b)は、再生成した良品範囲83の一例を示す図である。
図18(a)中破線82に示すように、外乱の影響により、良品範囲81の範囲外に渡って共振周波数の値がばらつく場合がある。このようなデータを多く含むと誤判定の原意となるので、除外することが好ましい。そこで、これら良品範囲81の範囲外の共振周波数のデータを外乱として取り除いた上で、図18(b)に示すような良品範囲83を再生成する。
【0061】
次に、再生成した良品範囲内のワークの数を、再生成する前の良品範囲内のワークの数で割ることで、次に示すような検定値を算出する。
検定値=再生成した良品範囲内のワーク数/再生成する前の良品範囲内のワーク数。
【0062】
次に、算出された検定値が所定の閾値(例えば、98%)以下であるか否かを判定し、検定値が所定の閾値以下である良品範囲は、外乱の影響を大きく受けたものとして除外する。これにより、判定の精度をさらに向上することができる。
【0063】
図12に戻って、ステップST35では、全ての組み合わせに対する良品範囲を生成したか否かを判別する。この判別がYESである場合には、良品範囲を生成する処理を終了し、NOである場合には、ステップST32に移る。
【0064】
次に、検査対象パネルの検査(図2中ステップST7)を実行する手順について、図19及び図20を参照して説明する。
図19は、検査対象パネルの検査を実行する手順を示すフローチャートである。
【0065】
ステップST41では、上述のステップST4において生成された複数の良品範囲から一つの良品範囲を選択する。
【0066】
ステップST42では、選択された良品範囲と検査対象パネルの共振周波数とを比較し、確率距離を算出する。
図20は、選択された良品範囲96に、ステップST5,6において抽出された検査対象パネルの共振周波数を判定データ97としてプロットした図である。
このステップでは、選択された良品範囲96の楕円中心98と判定データ97とを直線で結び、楕円中心98から楕円交点99までの距離をAとし、楕円中心98から判定データ97までの距離をBとする。
次に、確率距離=B/Aとして、この確率距離を算出する。ここで、確率距離が1以下である場合、すなわち、判定データ97が良品範囲96内に含まれる場合には、この確率距離を1とする。
【0067】
ステップST43では、全良品範囲における検査対象パネルの確率距離を算出したか否かを判別する。この判別がYESである場合には、ステップST44に移り、NOである場合には、ステップST41に移る。
【0068】
ステップST44では、算出された全良品範囲における検査対象パネルの確率距離に基づいて、検査対象パネルの品質を判定するための指標となる判定値を算出し、検査対象パネルの品質の良否を判定する。
より具体的には、このステップでは、次式のように、全良品範囲における検査対象パネルの確率距離(B1/A1,B2/A2,B3/A3,…)を掛け合わせることにより、判定値を算出する。
【0069】
【数4】
【0070】
次に、この判定値が所定の設定値よりも小さいか否かを判定することにより、検査対象パネルが良品か否かを判定する。ここで、設定値は、1以上の任意の値である。このように、検査対象のパネルの品質の判定を、複数の良品範囲から算出される複数の確率距離に基づいて行うことにより、誤判定の確率を低減することができる。
【0071】
本実施形態のパネル検査装置1によれば、以下のような作用効果がある。
(1)予め良品と判断された複数の良品パネルから、各良品パネル特有の共振周波数の組み合わせを選択し、これら共振周波数の組み合わせの集合を2変数統計処理して、共振周波数を座標軸とする座標上に良品範囲を生成する。次に、検査対象のパネルから、検査対象パネル特有の共振周波数の組み合わせを選択し、この共振周波数の組み合わせと、生成された良品範囲とを比較し、パネルの品質の良否を判定する。
【0072】
ここで特に、共振周波数の組み合わせとして、振動伝播経路が異なる2つ以上の共振周波数を選択することにより、材料となる板材の板厚のばらつきが考慮された拡がりを持つ良品範囲を生成することができる。このような良品範囲に基づいて、検査対象パネルの品質の良否を判定することにより、材料となる板厚のばらつきを考慮してパネルの品質を検査することが可能となる。
【0073】
上述のように、振動伝達経路の異なる2つ以上の共振周波数を選択することが重要である。そこで、2つ以上のセンサを使用して互いに異なる位置の振動を測定することにより、確実に異なる伝達経路の振動を測定することができる。この場合、振動波形を周波数変換し、安定して抽出できる共振周波数を統計処理して良品範囲を生成する際には、各センサで得られた共振周波数を組み合わせることで良品範囲の生成が可能になる。
【0074】
また、加振器でパネルを加振しながら振動センサでパネルの振動を検出することにより、短時間でパネルの品質の検査を行うことができる。これにより、例えば、パネル検査装置1を、パネルの製造ラインに組み込むことができる。
【0075】
(2)検査対象のパネルの品質の良否の判定において、共振周波数の間に正の相関がある良品範囲のみを用いることで、パネルの品質の誤判定を防ぐことができる。
【0076】
<応用例>
上記実施形態のパネル検査装置1の応用例について説明する。上述のように、上記実施形態のパネル検査装置1は、短時間で検査を行うことができので、パネル検査装置1を、既存のプレスパネルの製造ラインに、大幅な改造を加えることなく組み込むことができる。
【0077】
図21は、パネル検査装置1を組み込んだプレスパネルの製造ライン100の構成を示す側面図である。
【0078】
製造ライン100は、パネル101を成形するプレス機102と、パネル101を次の工程へ搬送する帯状のコンベア103と、を含んで構成される。
このような製造ライン100において、パネル検査装置1は、コンベア103の余りスペースを利用して設けられる。
【0079】
より具体的には、パネル検査装置1の加振器20は、プレス機102で成形されたパネル101を保持するハンドリング104に取り付けられる。また、パネル検査装置1の2つの振動センサ30a,30bは、コンベア103の下方に設置されるとともに、コンベア103の隙間からパネル101の振動を検出する。
このように、ハンドリング104に加振器20を取り付け、コンベア103の隙間から振動センサ30a,30bで振動を検出することにより、パネル101を搬送しながら、パネル101の品質の検査を行うことができる。これにより、パネル101の検査にかかるサイクルタイムを短縮することができる。
【0080】
また、ハンドリング104は、ゴムやウレタン等の弾性体で形成された複数のバキュームカップ105を備えており、このバキュームカップ105にパネル101を吸着させることで、このパネル101を保持する。
このようなバキュームカップ105を用いることにより、ハンドリング104を移動させることにより生じた振動等の、加振器20以外による振動が、パネル101に伝達するのを抑制することができる。また、バキュームカップ105を用いることにより、その形状にかかわらず安定してパネル101を保持することができる。特に、プレス機102でプレス成形されたパネル101には、反りが生じた場合があるが、このような反りが生じた場合であっても、パネル101を確実に保持することができる。
【0081】
図22は、パネル検査装置1を組み込んだプレスパネルの製造ライン100の構成を示す上面図である。
図22に示すように、コンベア103a,103bに分割することにより、振動センサ30aでパネル101の振動を検出可能な領域115aと、振動センサ30bでパネル101の振動を検出可能な領域115bとを確保することができる。これにより、加振位置111を加振器20で加振しつつ、検出位置112a,112bにおけるパネル101の振動を振動センサ30a,30bで検出することができる。
【0082】
またここで、パネル101の端部に位置する検出位置112a,112bで、パネル101の振動を検出することにより、ノイズの影響の小さい振動を検出することができる。これは、開放端となるパネル101の端部では、パネル101の振動の位相が一致し、振動強度が大きくなるためである。
【0083】
次に、搬送による振動が、品質の検査に及ぼす影響について図23を参照して説明する。
図23は、パネルの振動の周波数成分の波形を示す図である。より具体的には、図23中破線は、搬送を停止して測定したパネルの振動の周波数成分の波形を示し、図23中実線は、搬送させながら測定したパネルの振動の周波数成分の波形を示す。
【0084】
図23に示すように、搬送を停止して十分に時間が経過してパネル全体の揺れが収まった場合と、搬送を停止した直後に停止した場合とでは、約200Hz以下の領域でのみ大きく異なる。つまり、搬送による振動の周波数帯域は、数Hz〜約200Hzであり、加振器による振動の周波数帯域とは異なる。そこで、パネルの共振周波数を抽出する際に、約200Hz以下の低周波数帯域をカットし、高い周波数帯域のみを検査に使用することにより、搬送による振動の影響を受けることなくパネルの品質の検査を行うことができる。
【0085】
前記実施形態のパネル検査装置1を組み込んだ、本応用例の製造ライン100によれば、前記実施形態と同様の効果に加えて、以下の効果がある。
(3)パネル検査装置1を、プレスパネルの製造ライン100に組み込むことにより、パネルの製造、及びパネルの検査にかかるタイムサイクルを短縮することができる。
【0086】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態に係るパネル検査装置の構成を示す概略図である。
【図2】前記実施形態に係るパネル検査装置のパネル検査処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】加振波形の一例を示す図である。
【図4】加振波形を構成する複数の正弦波のうちの2つを示す図である。
【図5】振動波形を収集する手順を示すフローチャートである。
【図6】パネルの構成を示す図である。
【図7】振動速度の波形の一例を示す図である。
【図8】周波数成分の波形の一例を示す図である。
【図9】共振周波数を抽出する手順を示すフローチャートである。
【図10】周波数成分の波形の一例を示す図である。
【図11】複数の良品パネルから共通して抽出した複数の共振周波数の一例を示す図である。
【図12】良品範囲を生成する手順を示すフローチャートである。
【図13】統計処理の結果に基づいて生成された良品範囲を示す図である。
【図14】共振周波数A,Bの2次元正規分布図である。
【図15】板材の共振周波数と板厚との関係を示す図である。
【図16】統計処理の結果に基づいて生成された良品範囲の一例を示す図である。
【図17】統計処理の結果に基づいて生成された良品範囲の一例を示す図である。
【図18】統計処理の結果に基づいて生成された良品範囲の一例を示す図である。
【図19】検査対象パネルの検査を実行する手順を示すフローチャートである。
【図20】良品範囲に検査対象パネルの共振周波数を判定データとしてプロットした図である。
【図21】前記実施形態に係るパネル検査装置を備えるプレスパネルの製造ラインの構成を示す側面図である。
【図22】前記実施形態に係るパネル検査装置を備えるプレスパネルの製造ラインの構成を示す上面図である。
【図23】パネルの振動の周波数成分の波形を示す図である。
【図24】一規格に含まれる複数の鋼板の板厚のばらつきを示すヒストグラムである。
【符号の説明】
【0088】
1 パネル検査装置
20 加振器(加振器)
30 振動センサ(振動検出器)
40 制御装置
100 製造ライン
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルの検査装置及び検査方法に関する。詳しくは、プレス成形品として形成されたパネルの共振周波数を測定し、この共振周波数に基づいて、パネルの品質の良否を判定するパネルの検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板材をプレス成形してパネルを形成すると、このパネルにはくびれや割れが生じる場合がある。このようなくびれや割れは、フランジ部や入り隅部など特にプレス成形時に歪みが集中する箇所に発生し易いものの、単発で発生する箇所もあり、発生箇所を予測することが難しい。このため、くびれや割れの検査は、成形品の全てを広範囲に亘って行う必要があり、検査に時間がかかる場合がある。
【0003】
そこで、従来より、パネルのくびれや割れの検査を短時間で行うことが可能な検査装置が提案されている。このような検査装置として、例えば特許文献1及び2には、パネルを試験的に加振するとともに、このパネルの振動を検出し、検出した振動から抽出されるパネル固有の周波数特性に基づいて、パネルの品質の良否を判断する検査装置が示されている。
【特許文献1】特開平9−171008号公報
【特許文献2】特開2007−147512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図24は、一規格に含まれる複数の板材の板厚の分布を示すヒストグラムである。
図24において、横軸は板材の板厚であり、縦軸は頻度である。この図に示すように、プレス成形品の材料となる板材は、同一の規格に含まれるものであっても板厚にばらつきがある。
【0005】
しかしながら、材料となる板材に、このような板厚のばらつきがあると、パネルの周波数特性の変化の要因が、くびれや割れの存在によるものか、或いは板材の板厚のばらつきによるものかで区別がつかない場合がある。上述の特許文献1,2では、このような板厚のばらつきが考慮されておらず、このため、パネルの品質の良否の判断が実際とは異なるものになるおそれがある。
【0006】
本発明は、パネルの周波数特性に基づいて品質の良否を判定するものであり、特にプレス成形を行う前の板材の板厚のばらつきを考慮したパネル検査装置及びパネル検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパネル検査装置(例えば、後述のパネル検査装置1)は、予め良品と判断されたパネルを加振して得られる共振周波数に基づいて、検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル検査装置であって、パネルを加振する加振器(例えば、後述の加振器20)と、パネルの振動を検出する振動検出器(例えば、後述の振動センサ30)と、前記加振器及び前記振動検出器を使用して、パネルの複数の共振周波数を抽出する共振周波数抽出手段(例えば、後述の制御装置40、及び図2のステップST3,ST6を実行する手段等)と、前記共振周波数抽出手段により抽出された複数の共振周波数の中から、振動伝播経路が異なる2つ以上の共振周波数で構成される共振周波数の組み合わせを一組以上選択する共振周波数選択手段(例えば、後述の制御装置40、図12のステップST32を実行する手段等)と、予め良品と判断された複数の良品パネルについて、前記共振周波数抽出手段、前記共振周波数選択手段を実行し、各良品パネルに対して選択された共振周波数の組み合わせの集合を統計処理し、共振周波数を座標軸とする座標上に良品範囲(例えば、図13の良品範囲91)を生成する良品範囲生成手段(例えば、後述の制御装置40、及び図12のステップST33を実行する手段等)と、前記検査対象のパネルについて、前記共振周波数抽出手段、前記共振周波数選択手段を実行し、前記検査対象のパネルに対して選択された共振周波数の組み合わせと前記良品範囲生成手段により作成された良品範囲とを比較し、この比較に基づいて前記検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル品質判定手段(例えば、後述の制御装置40、及び図2のステップST7を実行する手段等)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、予め良品と判断された複数の良品パネルから、各良品パネル特有の共振周波数の組み合わせを選択し、これら共振周波数の組み合わせの集合を統計処理して、共振周波数を座標軸とする座標上に良品範囲を生成する。次に、検査対象のパネルから、検査対象パネル特有の共振周波数の組み合わせを選択し、この共振周波数の組み合わせと、生成された良品範囲とを比較し、パネルの品質の良否を判定する。
【0009】
ここで特に、共振周波数の組み合わせとして、振動伝播経路が異なる2つ以上の共振周波数を選択することにより、材料となる板材の板厚のばらつきが考慮された拡がりを持つ良品範囲を生成することができる。このような良品範囲に基づいて、検査対象パネルの品質の良否を判定することにより、材料となる板厚のばらつきを考慮してパネルの品質を検査することが可能となる。
【0010】
また、加振器でパネルを加振しながら振動検出器でパネルの振動を検出することにより、短時間でパネルの品質の検査を行うことができる。これにより、例えば、パネル検査装置を、パネルの製造ラインに組み込むことができる。
【0011】
この場合、前記パネル品質判定手段は、前記良品範囲生成手段により生成された良品範囲のうち、共振周波数の間に正の相関があるもののみを検査対象のパネルの品質の良否の判定に用いることが好ましい。
【0012】
ここで、パネルの共振周波数は、材料となる板材の板厚に比例する。このため、パネルの共振周波数の間には、正の相関がある。
この発明によれば、検査対象のパネルの品質の良否の判定において、共振周波数の間に正の相関がある良品範囲のみを用いることで、パネルの品質の誤判定を防ぐことができる。
【0013】
この場合、複数の工程からなるプレスパネルの製造ライン(例えば、後述の製造ライン100)に組み込まれることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、パネル検査装置を、プレスパネルの製造ラインに組み込むことにより、パネルの製造、及びパネルの検査にかかるタイムサイクルを短縮することができる。
【0015】
本発明のパネル検査方法は、予め良品と判断されたパネルを加振して得られる共振周波数に基づいて、検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル検査方法であって、パネルを加振して振動を検出し、当該パネルの複数の共振周波数を抽出する共振周波数抽出手順と、前記共振周波数抽出手順で抽出された複数の共振周波数の中から、振動伝播経路が異なる2つ以上の共振周波数で構成される共振周波数の組み合わせを一組以上選択する共振周波数選択手順と、を含む検査手順を用いて、予め良品と判断された複数の良品パネルについて、前記検査手順を実行し、各良品パネルに対して選択された共振周波数の組み合わせの集合を統計処理し、共振周波数を座標軸とする座標上に良品範囲を生成する良品範囲生成手順と、前記検査対象のパネルについて、前記検査手順を実行し、前記検査対象のパネルに対して選択された共振周波数の組み合わせと前記良品範囲生成手段により作成された良品範囲とを比較し、この比較に基づいて前記検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル品質判定手順と、を備えることを特徴とする。
【0016】
この場合、前記検査対象のパネルの品質の良否を判定する際には、前記良品範囲のうち、共振周波数の間に正の相関があるもののみを検査対象のパネルの品質の良否の判定に用いることが好ましい。
【0017】
このパネル検査方法は、上述のパネル検査装置を、検査方法として展開したものであり、上述のパネル検査装置と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のパネル検査装置によれば、共振周波数の組み合わせとして、振動伝播経路が異なる2つ以上の共振周波数を選択することにより、材料となる板材の板厚のばらつきが考慮された拡がりを持つ良品範囲を生成することができる。このような良品範囲に基づいて、検査対象パネルの品質の良否を判定することにより、材料となる板厚のばらつきを考慮してパネルの品質を検査することが可能となる。また、加振器でパネルを加振しながら振動検出器でパネルの振動を検出することにより、短時間でパネルの品質の検査を行うことができる。これにより、例えば、パネル検査装置を、パネルの製造ラインに組み込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るパネル検査装置1の構成を示す概略図である。
【0020】
パネル検査装置1は、プレス成形により形成されたパネル10を加振する加振器20と、パネル10の振動を検出する振動検出器としての振動センサ30と、これら加振器20及び振動センサ30を制御する制御装置40と、を含んで構成される。
【0021】
このパネル検査装置1は、パネル10の一端部に設けられた加振位置12を加振器20で加振しつつ、パネル10の他端部に設けられた検出位置14において振動センサ30により振動を検出し、検出された振動を制御装置40で処理することにより、パネル10の品質の良否を判定する。
【0022】
加振器20は、安定して振幅の大きい振動を加えることが可能な電磁式(動電式)加振器を用いる。この加振器20は、制御装置40により作成された電圧波形に応じた振動を発生させる。加振器20の出力軸は、パネル10の加振位置12に接触しており、入力された電圧波形に応じてパネル10を加振する。また、この加振器20は、出力軸の振動をパネル10に確実に伝達するために、パネル10を出力軸に吸着する磁石を備える。
【0023】
振動センサ30は、加振器20による加振の応答としてのパネル10の振動を、検出位置14から検出する。具体的には、振動センサ30には、レーザドップラ速度計などの非接触型の速度計を用いる。振動センサ30は、制御装置40に接続されており、検出信号を制御装置40へ出力する。
【0024】
制御装置40は、作業者が各種データや指令を入力する入力装置と、この入力装置からの入力に応じて各種演算処理を実行する演算装置と、この演算処理の結果を画像として表示する表示装置と、を含んで構成される。また、制御装置40の演算装置は、加振器20に出力する電圧波形を作成したり、振動センサ30から入力された検出信号に応じて、後述のパネル検査処理を実行したりし、パネル10の品質の良否を判定する。
【0025】
次に、パネル検査装置1によりパネルを検査する手順について説明する。
図2は、パネル検査処理の手順を示すフローチャートである。
【0026】
先ず、ステップST1では、パネルに加振する加振波形を作成する(後述の図3及び図4参照)。
ステップST2では、予め良品と判断されたパネルを複数用意し、これら良品パネルを加振器で加振し、その応答としての振動波形を収集する(後述の図5〜図8参照)。
ステップST3では、ステップST2において収集した振動波形から、各良品パネルの複数の共振周波数を抽出する(後述の図9〜図11参照)。
ステップST4では、ステップST3において抽出した各パネルの複数の共振周波数に基づいて、良品範囲を生成する(後述の図12〜図17参照)。
ステップST5では、検査対象となるパネルを加振器で加振し、その応答としての振動波形を収集する。
ステップST6では、ステップST5において収集した振動波形から、検査対象パネルの複数の共振周波数を抽出する。
ステップST7では、ステップST6において抽出した検査対象パネルの複数の共振周波数と、ステップST4において生成した良品範囲とを比較して、検査対象パネルの品質の良否を判定する(後述の図19〜図20参照)。
ステップST8では、検査が終了したか否かを判別する。この判別がYESである場合には、パネル検査処理を終了し、NOである場合には、検査対象パネルを交換し、ステップST5に移る。
以下、これらステップST1〜ST8の処理について順に説明する。
【0027】
先ず、加振波形の作成(図2中ステップST1)、すなわち、加振器に入力する電圧波形の作成について、図3及び図4を参照して説明する。
図3は、加振波形の一例を示す図である。図3において、横軸は時間であり、縦軸は電圧である。加振波形は、後に詳述するパネルの複数の共振周波数成分を全て含む振動波形でなければならない。そこで、本実施形態では、加振波形は、それぞれ異なる周波数を有する複数の正弦波を重ね合わせることによって作成する。
【0028】
図4は、加振波形を構成する複数の正弦波のうちの2つを示す図である。
加振波形は、図4に示すような異なる周波数を有する正弦波を、それぞれピークの位相をずらして重ね合わせて構成される。本実施形態では加振波形として、例えば、500Hz〜4000Hzの間において、0.38Hz毎に9210個の周波数成分を含むものを用いる。また、加振波形の振幅は、加振器に入力可能な最大電圧値に合わせて作成する。
【0029】
ところで、加振器の特性上、加振器の駆動能力は、周波数が高くなるに従い低くなる。そこで、異なる周波数の正弦波を重ね合わせる際、このような加振器の周波数特性に合わせて周波数成分の強度を高めることで、比較的高い共振周波数であっても振動センサで取得することができる。
【0030】
次に、良品パネルの振動波形を収集する手順(図2中ステップST2)について、図5〜図8を参照して説明する。
図5は、振動波形を収集する手順を示すフローチャートである。
図6は、パネル10の構成を示す図である。
【0031】
先ず、ステップST11では、所定時間に亘り、加振器でパネル10を加振しつつ、このパネル10の振動速度を振動センサで測定し、ステップST12に移る。より具体的には、このステップでは、上述のステップST1で作成した加振波形に基づいて、加振器で加振位置12を加振しつつ、検出位置14におけるパネル10の振動速度を振動センサで測定する。ここで、パネルを加振し振動を検出する時間は、具体的には例えば1秒とする。
ステップST12では、測定した振動速度の波形を測定データとして保存し、ステップST13に移る。
【0032】
ステップST13では、測定した振動速度の波形のうち、検査に使用する部分のみを切り出し、ステップST14に移る。
図7は、測定した振動速度の波形の一例を示す図であり、時刻0において加振するとともに振動速度の測定を開始し、その後約1秒に亘って振動速度を計測した例を示す図である。加振を開始した直後は、パネルの振動が安定しておらず、後に詳述する共振周波数の抽出には不向きである。そこでこのステップでは、図7中2点鎖線に示すような、振動波形が安定し、定常状態となった部分のみを切り出す。
【0033】
ステップST14では、ステップST13において切り出した振動速度の波形を、周波数変換(スペクトル変換)して、パネルの振動を周波数成分に分解する。
図8は、周波数成分の波形の一例を示す図である。図8において、横軸は周波数であり、縦軸は各周波数の振動の強度である。
【0034】
図8に示すように、パネルの振動速度の波形を周波数分解すると、幾つかの周波数において鋭いピークが検出される。これらピークは、パネルを加振することにより共振現象が発生したことを示すものである。つまり、これらピークを有する周波数の振動は、パネルを加振することにより発生した振動と、この振動の反射波とが重ね合わさり増幅したことを示すものである。これらピークを有する周波数の値すなわち共振周波数の値と、これらピークの値は、パネルの形状及び板厚等に依存するものであり、パネル特有の値である。
【0035】
また、共振現象は、一般的に複数の周波数の振動において発生する。図6に示すように、振動が伝播する経路は、破線矢印16,17に示すように複数存在する。このため、一のパネルには、これら振動伝播経路毎に異なる値の共振周波数が存在する。
【0036】
なお、このステップでは、振動速度の波形を周波数成分に分解する方法として、最大エントロピー法を用いるが、これに限らず高速フーリエ変換などの方法を用いてもよい。
【0037】
図5に戻って、ステップST15では、全良品パネルの振動波形の収集が終了したか否かを判別する。この判別がYESである場合には、良品パネルの振動波形の収集を終了し、NOである場合には、良品パネルを交換し(ST16)、ステップST11に移る。
【0038】
次に、良品パネルの共振周波数を抽出する手順(図2中ステップST3)について、図9〜図11を参照して説明する。
図9は、共振周波数を抽出する手順を示すフローチャートである。
【0039】
ステップST21では、抽出条件を設定し、ステップST22に移る。このステップでは、上述のステップST14において、各良品パネルに対して収集された周波数成分の波形から、全ての良品パネルに共通した共振周波数を抽出する。
【0040】
図10は、上述のステップST14において得られた周波数成分の波形の一例を示す図である。より具体的には、図10の(a)は、良品パネル1の周波数成分の波形を示し、図10の(b)は、良品パネル2の周波数成分の波形を示す図である。
【0041】
図10に示すように、良品パネル1の周波数成分の波形では、周波数が400Hz〜1100Hzの間において、約550Hzを中心としたピーク1と、約650Hzを中心としたピーク2と、約800Hzを中心としたピーク3と、約900Hzを中心としたピーク4と、が観測される。一方、良品パネル2では、良品パネル1のピーク1,2,4に対応するピークが観測されるが、良品パネル1のピーク3に対応するピークは観測されない。また、これら良品パネル1,2におけるピークの値も異なる。このように、周波数成分の波形は、良品と判断されたパネルであっても、材料となる板材の板厚の違いや測定ノイズ等の影響により、パネル毎に異なったものとなる。
【0042】
そこで、このステップでは、これら良品パネルの全てにおいて共通かつ安定して観測できるピークを共振周波数として抽出するための条件を作成する。
具体的には、基準となるパネルを選択し、この基準パネルのピークの中心周波数値に対して±3%以内に収まり、かつ、全良品パネルを通じて安定した強度で検出できることを抽出条件として設定する。これにより、例えば、図10におけるピーク3は、安定した強度で検出できないものとして、抽出する共振周波数から除外されることとなる。
【0043】
ステップST22では、作成された抽出条件の下で、共振周波数の抽出を実行する。これにより、図11に示すように、複数の良品パネル1,2,3,4,5…毎に、複数の共振周波数A,B,C,D…を抽出することができる。
【0044】
次に、良品範囲を生成する手順(図2中ステップST4)について、図12〜図17を参照して説明する。
図12は、良品範囲を生成する手順を示すフローチャートである。
【0045】
ステップST31では、良品範囲を生成するために使用する良品パネルを選択する。
ステップST32では、上述のステップST22において抽出された良品パネル1,2,3,4,…の複数の共振周波数A,B,C,D,…の中から、2つの共振周波数で構成される共振周波数の組み合わせを選択する。
【0046】
ステップST33では、上述のステップST32において選択された一組の共振周波数の集合を2変数統計処理し、共振周波数を座標軸とする座標上に良品範囲を生成する。
図13は、統計処理の結果に基づいて生成された良品範囲91を示す図である。図13において、横軸及び縦軸は、ステップST32において選択された共振周波数の組み合わせ(共振周波数A,B)に対応する。
【0047】
このステップでは、これら共振周波数A,Bの平均値AX,AY、並びに、各々の標準偏差SX,SY、及び共分散SXYを算出し、これら平均及び偏差に基づいて、図14に示すような、共振周波数A,Bを座標軸とした2次元正規分布を求める。
次に、この2次元正規分布から、所定の確率K(0<K<1)の楕円確率範囲を切り出し、これを良品範囲とする。ここで、確率Kは、例えば98%とする。
より具体的には、確率楕円の長軸の長さをW1とし、短軸の長さをW2とし、長軸の傾きをTとした楕円状の良品範囲は、次式により算出される。
【0048】
【数1】
【0049】
ここで、変数L1,L2及びA,Bは、次式により算出される。
【数2】
【0050】
また、図13に示すように、共振周波数A,Bは、正に相関する。すなわち、良品範囲91の楕円の長軸92の傾きは正となる。この理由について説明する。
次式は、板材の長さをLとし、板材のヤング率をEとし、板材の密度をρとした場合の、板材の共振周波数fと板材の板厚bの関係を示す式である。
【0051】
【数3】
【0052】
この式に示すように、板材の共振周波数は、板厚に比例する。
図15は、板材の共振周波数と板厚との関係を示す図である。図15において、横軸は板材の板厚であり、縦軸は板材の一共振周波数である。
図15の実線93に示すように、板材の板厚が大きくなると、板材固有の共振周波数も比例して大きくなる。つまり、成形後のパネルにくびれや割れが生じなければ、成形後のパネルの板厚は成形前の板材の板厚に比例するので、くびれや割れのない良品パネルの共振周波数は、成形前の板材の板厚に比例する。
【0053】
したがって、図13に示すように、一組の共振周波数A,Bは正に相関する。つまり、各良品パネルの板材の板厚のばらつきにより、共振周波数は、傾きが正の材料板厚比例直線92に沿って分布したものとなる。
【0054】
実際には、図13に示すように、各良品パネルの共振周波数は、良品範囲内において材料板厚比例直線92からずれたものとなるが、これは、形状及び測定誤差に由来するものと言える。このように、一組の共振周波数の集合を統計処理して生成された良品範囲は、材料となる板材の板厚のばらつきを含んだ形状であるといえる。
【0055】
また、図6を参照して詳述したように、パネル10には、振動伝播経路16,17毎に異なる共振周波数が存在する。
そこで、例えば、共振周波数Aを振動伝播経路16に付随した共振周波数とし、共振周波数Bを振動伝播経路17に付随した共振周波数とする。またここで、振動伝播経路17には、くびれや割れなどの成形不良箇所があるものとする。
【0056】
このようなパネル10の共振周波数A,Bを測定し、座標上にプロットすると、くびれや割れの影響により、図13中の点Aに示すように良品範囲91から外れたものとなる。ここで、上述のように、成形不良箇所は、共振周波数Bに付随した振動伝播経路17上に存在するため、点Aの良品範囲91からのずれは、共振周波数Bのずれとして現れることとなる。このようにして、生成された良品範囲に基づいて、パネルの品質の良否を判定することができる。
【0057】
図12に戻って、ステップST34では、生成された良品範囲が適切なものであるか検証する。
図16及び図17は、それぞれ、統計処理の結果に基づいて生成された良品範囲の一例を示す図である。より具体的には、図16の(a)は、選択した共振周波数の組み合わせ(共振周波数A,B)の各良品パネルの値を示し、図16の(b)は、統計処理の結果、生成された良品範囲94を示す図である。また、図17の(a)は、選択した共振周波数の組み合わせ(共振周波数A,B)の各良品パネルの値を示し、図17の(b)は、統計処理の結果、生成された良品範囲95を示す図である。
【0058】
上述のように、材料となる板材の板厚のばらつきを考慮した良品範囲は、その共振周波数の間に正の相関がある。そこで、このステップでは、正の相関が無い良品範囲は、適切なものではないとして、これを除外する。これにより、図17の良品範囲95のような、正に相関していない良品範囲は除外される。
【0059】
また、このステップでは、選択した共振周波数の組み合わせに外乱の影響を大きく受けたものの良品範囲を除外する。具体的には、先ず、生成された良品範囲の範囲外に含まれる共振周波数のデータを取り除いた上で、上述の統計処理を再度行い、良品範囲を再生成する。
【0060】
図18は、統計処理の結果に基づいて生成された良品範囲の一例を示す図である。より具体的には、図18(a)は、生成された良品範囲81の範囲外に共振周波数のデータを含む一例を示す図であり、図18(b)は、再生成した良品範囲83の一例を示す図である。
図18(a)中破線82に示すように、外乱の影響により、良品範囲81の範囲外に渡って共振周波数の値がばらつく場合がある。このようなデータを多く含むと誤判定の原意となるので、除外することが好ましい。そこで、これら良品範囲81の範囲外の共振周波数のデータを外乱として取り除いた上で、図18(b)に示すような良品範囲83を再生成する。
【0061】
次に、再生成した良品範囲内のワークの数を、再生成する前の良品範囲内のワークの数で割ることで、次に示すような検定値を算出する。
検定値=再生成した良品範囲内のワーク数/再生成する前の良品範囲内のワーク数。
【0062】
次に、算出された検定値が所定の閾値(例えば、98%)以下であるか否かを判定し、検定値が所定の閾値以下である良品範囲は、外乱の影響を大きく受けたものとして除外する。これにより、判定の精度をさらに向上することができる。
【0063】
図12に戻って、ステップST35では、全ての組み合わせに対する良品範囲を生成したか否かを判別する。この判別がYESである場合には、良品範囲を生成する処理を終了し、NOである場合には、ステップST32に移る。
【0064】
次に、検査対象パネルの検査(図2中ステップST7)を実行する手順について、図19及び図20を参照して説明する。
図19は、検査対象パネルの検査を実行する手順を示すフローチャートである。
【0065】
ステップST41では、上述のステップST4において生成された複数の良品範囲から一つの良品範囲を選択する。
【0066】
ステップST42では、選択された良品範囲と検査対象パネルの共振周波数とを比較し、確率距離を算出する。
図20は、選択された良品範囲96に、ステップST5,6において抽出された検査対象パネルの共振周波数を判定データ97としてプロットした図である。
このステップでは、選択された良品範囲96の楕円中心98と判定データ97とを直線で結び、楕円中心98から楕円交点99までの距離をAとし、楕円中心98から判定データ97までの距離をBとする。
次に、確率距離=B/Aとして、この確率距離を算出する。ここで、確率距離が1以下である場合、すなわち、判定データ97が良品範囲96内に含まれる場合には、この確率距離を1とする。
【0067】
ステップST43では、全良品範囲における検査対象パネルの確率距離を算出したか否かを判別する。この判別がYESである場合には、ステップST44に移り、NOである場合には、ステップST41に移る。
【0068】
ステップST44では、算出された全良品範囲における検査対象パネルの確率距離に基づいて、検査対象パネルの品質を判定するための指標となる判定値を算出し、検査対象パネルの品質の良否を判定する。
より具体的には、このステップでは、次式のように、全良品範囲における検査対象パネルの確率距離(B1/A1,B2/A2,B3/A3,…)を掛け合わせることにより、判定値を算出する。
【0069】
【数4】
【0070】
次に、この判定値が所定の設定値よりも小さいか否かを判定することにより、検査対象パネルが良品か否かを判定する。ここで、設定値は、1以上の任意の値である。このように、検査対象のパネルの品質の判定を、複数の良品範囲から算出される複数の確率距離に基づいて行うことにより、誤判定の確率を低減することができる。
【0071】
本実施形態のパネル検査装置1によれば、以下のような作用効果がある。
(1)予め良品と判断された複数の良品パネルから、各良品パネル特有の共振周波数の組み合わせを選択し、これら共振周波数の組み合わせの集合を2変数統計処理して、共振周波数を座標軸とする座標上に良品範囲を生成する。次に、検査対象のパネルから、検査対象パネル特有の共振周波数の組み合わせを選択し、この共振周波数の組み合わせと、生成された良品範囲とを比較し、パネルの品質の良否を判定する。
【0072】
ここで特に、共振周波数の組み合わせとして、振動伝播経路が異なる2つ以上の共振周波数を選択することにより、材料となる板材の板厚のばらつきが考慮された拡がりを持つ良品範囲を生成することができる。このような良品範囲に基づいて、検査対象パネルの品質の良否を判定することにより、材料となる板厚のばらつきを考慮してパネルの品質を検査することが可能となる。
【0073】
上述のように、振動伝達経路の異なる2つ以上の共振周波数を選択することが重要である。そこで、2つ以上のセンサを使用して互いに異なる位置の振動を測定することにより、確実に異なる伝達経路の振動を測定することができる。この場合、振動波形を周波数変換し、安定して抽出できる共振周波数を統計処理して良品範囲を生成する際には、各センサで得られた共振周波数を組み合わせることで良品範囲の生成が可能になる。
【0074】
また、加振器でパネルを加振しながら振動センサでパネルの振動を検出することにより、短時間でパネルの品質の検査を行うことができる。これにより、例えば、パネル検査装置1を、パネルの製造ラインに組み込むことができる。
【0075】
(2)検査対象のパネルの品質の良否の判定において、共振周波数の間に正の相関がある良品範囲のみを用いることで、パネルの品質の誤判定を防ぐことができる。
【0076】
<応用例>
上記実施形態のパネル検査装置1の応用例について説明する。上述のように、上記実施形態のパネル検査装置1は、短時間で検査を行うことができので、パネル検査装置1を、既存のプレスパネルの製造ラインに、大幅な改造を加えることなく組み込むことができる。
【0077】
図21は、パネル検査装置1を組み込んだプレスパネルの製造ライン100の構成を示す側面図である。
【0078】
製造ライン100は、パネル101を成形するプレス機102と、パネル101を次の工程へ搬送する帯状のコンベア103と、を含んで構成される。
このような製造ライン100において、パネル検査装置1は、コンベア103の余りスペースを利用して設けられる。
【0079】
より具体的には、パネル検査装置1の加振器20は、プレス機102で成形されたパネル101を保持するハンドリング104に取り付けられる。また、パネル検査装置1の2つの振動センサ30a,30bは、コンベア103の下方に設置されるとともに、コンベア103の隙間からパネル101の振動を検出する。
このように、ハンドリング104に加振器20を取り付け、コンベア103の隙間から振動センサ30a,30bで振動を検出することにより、パネル101を搬送しながら、パネル101の品質の検査を行うことができる。これにより、パネル101の検査にかかるサイクルタイムを短縮することができる。
【0080】
また、ハンドリング104は、ゴムやウレタン等の弾性体で形成された複数のバキュームカップ105を備えており、このバキュームカップ105にパネル101を吸着させることで、このパネル101を保持する。
このようなバキュームカップ105を用いることにより、ハンドリング104を移動させることにより生じた振動等の、加振器20以外による振動が、パネル101に伝達するのを抑制することができる。また、バキュームカップ105を用いることにより、その形状にかかわらず安定してパネル101を保持することができる。特に、プレス機102でプレス成形されたパネル101には、反りが生じた場合があるが、このような反りが生じた場合であっても、パネル101を確実に保持することができる。
【0081】
図22は、パネル検査装置1を組み込んだプレスパネルの製造ライン100の構成を示す上面図である。
図22に示すように、コンベア103a,103bに分割することにより、振動センサ30aでパネル101の振動を検出可能な領域115aと、振動センサ30bでパネル101の振動を検出可能な領域115bとを確保することができる。これにより、加振位置111を加振器20で加振しつつ、検出位置112a,112bにおけるパネル101の振動を振動センサ30a,30bで検出することができる。
【0082】
またここで、パネル101の端部に位置する検出位置112a,112bで、パネル101の振動を検出することにより、ノイズの影響の小さい振動を検出することができる。これは、開放端となるパネル101の端部では、パネル101の振動の位相が一致し、振動強度が大きくなるためである。
【0083】
次に、搬送による振動が、品質の検査に及ぼす影響について図23を参照して説明する。
図23は、パネルの振動の周波数成分の波形を示す図である。より具体的には、図23中破線は、搬送を停止して測定したパネルの振動の周波数成分の波形を示し、図23中実線は、搬送させながら測定したパネルの振動の周波数成分の波形を示す。
【0084】
図23に示すように、搬送を停止して十分に時間が経過してパネル全体の揺れが収まった場合と、搬送を停止した直後に停止した場合とでは、約200Hz以下の領域でのみ大きく異なる。つまり、搬送による振動の周波数帯域は、数Hz〜約200Hzであり、加振器による振動の周波数帯域とは異なる。そこで、パネルの共振周波数を抽出する際に、約200Hz以下の低周波数帯域をカットし、高い周波数帯域のみを検査に使用することにより、搬送による振動の影響を受けることなくパネルの品質の検査を行うことができる。
【0085】
前記実施形態のパネル検査装置1を組み込んだ、本応用例の製造ライン100によれば、前記実施形態と同様の効果に加えて、以下の効果がある。
(3)パネル検査装置1を、プレスパネルの製造ライン100に組み込むことにより、パネルの製造、及びパネルの検査にかかるタイムサイクルを短縮することができる。
【0086】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態に係るパネル検査装置の構成を示す概略図である。
【図2】前記実施形態に係るパネル検査装置のパネル検査処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】加振波形の一例を示す図である。
【図4】加振波形を構成する複数の正弦波のうちの2つを示す図である。
【図5】振動波形を収集する手順を示すフローチャートである。
【図6】パネルの構成を示す図である。
【図7】振動速度の波形の一例を示す図である。
【図8】周波数成分の波形の一例を示す図である。
【図9】共振周波数を抽出する手順を示すフローチャートである。
【図10】周波数成分の波形の一例を示す図である。
【図11】複数の良品パネルから共通して抽出した複数の共振周波数の一例を示す図である。
【図12】良品範囲を生成する手順を示すフローチャートである。
【図13】統計処理の結果に基づいて生成された良品範囲を示す図である。
【図14】共振周波数A,Bの2次元正規分布図である。
【図15】板材の共振周波数と板厚との関係を示す図である。
【図16】統計処理の結果に基づいて生成された良品範囲の一例を示す図である。
【図17】統計処理の結果に基づいて生成された良品範囲の一例を示す図である。
【図18】統計処理の結果に基づいて生成された良品範囲の一例を示す図である。
【図19】検査対象パネルの検査を実行する手順を示すフローチャートである。
【図20】良品範囲に検査対象パネルの共振周波数を判定データとしてプロットした図である。
【図21】前記実施形態に係るパネル検査装置を備えるプレスパネルの製造ラインの構成を示す側面図である。
【図22】前記実施形態に係るパネル検査装置を備えるプレスパネルの製造ラインの構成を示す上面図である。
【図23】パネルの振動の周波数成分の波形を示す図である。
【図24】一規格に含まれる複数の鋼板の板厚のばらつきを示すヒストグラムである。
【符号の説明】
【0088】
1 パネル検査装置
20 加振器(加振器)
30 振動センサ(振動検出器)
40 制御装置
100 製造ライン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め良品と判断されたパネルを加振して得られる共振周波数に基づいて、検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル検査装置であって、
パネルを加振する加振器と、
パネルの振動を検出する振動検出器と、
前記加振器及び前記振動検出器を使用して、パネルの複数の共振周波数を抽出する共振周波数抽出手段と、
前記共振周波数抽出手段により抽出された複数の共振周波数の中から、振動伝播経路が異なる2つ以上の共振周波数で構成される共振周波数の組み合わせを一組以上選択する共振周波数選択手段と、
予め良品と判断された複数の良品パネルについて、前記共振周波数抽出手段、前記共振周波数選択手段を実行し、各良品パネルに対して選択された共振周波数の組み合わせの集合を統計処理し、共振周波数を座標軸とする座標上に良品範囲を生成する良品範囲生成手段と、
前記検査対象のパネルについて、前記共振周波数抽出手段、前記共振周波数選択手段を実行し、前記検査対象のパネルに対して選択された共振周波数の組み合わせと前記良品範囲生成手段により作成された良品範囲とを比較し、この比較に基づいて前記検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル品質判定手段と、を備えることを特徴とするパネル検査装置。
【請求項2】
前記パネル品質判定手段は、前記良品範囲生成手段により生成された良品範囲のうち、共振周波数の間に正の相関があるもののみを検査対象のパネルの品質の良否の判定に用いることを特徴とする請求項1に記載のパネル検査装置。
【請求項3】
複数の工程からなるプレスパネルの製造ラインに組み込まれることを特徴とする請求項1または2に記載のパネル検査装置。
【請求項4】
予め良品と判断されたパネルを加振して得られる共振周波数に基づいて、検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル検査方法であって、
パネルを加振して振動を検出し、当該パネルの複数の共振周波数を抽出する共振周波数抽出手順と、
前記共振周波数抽出手順で抽出された複数の共振周波数の中から、振動伝播経路が異なる2つ以上の共振周波数で構成される共振周波数の組み合わせを一組以上選択する共振周波数選択手順と、を含む検査手順を用いて、
予め良品と判断された複数の良品パネルについて、前記検査手順を実行し、各良品パネルに対して選択された共振周波数の組み合わせの集合を統計処理し、共振周波数を座標軸とする座標上に良品範囲を生成する良品範囲生成手順と、
前記検査対象のパネルについて、前記検査手順を実行し、前記検査対象のパネルに対して選択された共振周波数の組み合わせと前記良品範囲生成手順により作成された良品範囲とを比較し、この比較に基づいて前記検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル品質判定手順と、を備えることを特徴とするパネル検査方法。
【請求項5】
前記検査対象のパネルの品質の良否を判定する際には、前記良品範囲のうち、共振周波数の間に正の相関があるもののみを検査対象のパネルの品質の良否の判定に用いることを特徴とする請求項4に記載のパネル検査方法。
【請求項1】
予め良品と判断されたパネルを加振して得られる共振周波数に基づいて、検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル検査装置であって、
パネルを加振する加振器と、
パネルの振動を検出する振動検出器と、
前記加振器及び前記振動検出器を使用して、パネルの複数の共振周波数を抽出する共振周波数抽出手段と、
前記共振周波数抽出手段により抽出された複数の共振周波数の中から、振動伝播経路が異なる2つ以上の共振周波数で構成される共振周波数の組み合わせを一組以上選択する共振周波数選択手段と、
予め良品と判断された複数の良品パネルについて、前記共振周波数抽出手段、前記共振周波数選択手段を実行し、各良品パネルに対して選択された共振周波数の組み合わせの集合を統計処理し、共振周波数を座標軸とする座標上に良品範囲を生成する良品範囲生成手段と、
前記検査対象のパネルについて、前記共振周波数抽出手段、前記共振周波数選択手段を実行し、前記検査対象のパネルに対して選択された共振周波数の組み合わせと前記良品範囲生成手段により作成された良品範囲とを比較し、この比較に基づいて前記検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル品質判定手段と、を備えることを特徴とするパネル検査装置。
【請求項2】
前記パネル品質判定手段は、前記良品範囲生成手段により生成された良品範囲のうち、共振周波数の間に正の相関があるもののみを検査対象のパネルの品質の良否の判定に用いることを特徴とする請求項1に記載のパネル検査装置。
【請求項3】
複数の工程からなるプレスパネルの製造ラインに組み込まれることを特徴とする請求項1または2に記載のパネル検査装置。
【請求項4】
予め良品と判断されたパネルを加振して得られる共振周波数に基づいて、検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル検査方法であって、
パネルを加振して振動を検出し、当該パネルの複数の共振周波数を抽出する共振周波数抽出手順と、
前記共振周波数抽出手順で抽出された複数の共振周波数の中から、振動伝播経路が異なる2つ以上の共振周波数で構成される共振周波数の組み合わせを一組以上選択する共振周波数選択手順と、を含む検査手順を用いて、
予め良品と判断された複数の良品パネルについて、前記検査手順を実行し、各良品パネルに対して選択された共振周波数の組み合わせの集合を統計処理し、共振周波数を座標軸とする座標上に良品範囲を生成する良品範囲生成手順と、
前記検査対象のパネルについて、前記検査手順を実行し、前記検査対象のパネルに対して選択された共振周波数の組み合わせと前記良品範囲生成手順により作成された良品範囲とを比較し、この比較に基づいて前記検査対象のパネルの品質の良否を判定するパネル品質判定手順と、を備えることを特徴とするパネル検査方法。
【請求項5】
前記検査対象のパネルの品質の良否を判定する際には、前記良品範囲のうち、共振周波数の間に正の相関があるもののみを検査対象のパネルの品質の良否の判定に用いることを特徴とする請求項4に記載のパネル検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2009−109460(P2009−109460A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284919(P2007−284919)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]