説明

パネル固定具

【課題】部品点数を減らすことができ、構造を簡単化することができるパネル固定具を提供する。
【解決手段】同一平面内に配置された平板により構成される基板部22と、基板部22から上方に高さを有するように形成され、上端部に開口部42が形成された水平板部40を有する複数の架台部30と、複数の架台部30のそれぞれにおける水平板部40に水平移動自在に係合され、開口部42と同軸方向に連通するように形成された雌ネジ52を有する複数のナット部材32とを備えることを特徴とする。
【効果】部品点数を減らすことができ、構造を簡単化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、フリーアクセスフロアのパネル部材を固定するのに用いられるようなパネル固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来のパネル固定具2(例えば、特許文献1参照)と、この従来のパネル固定具2上に載置され固定されるパネル部材4、及びこのパネル部材4の隅部をパネル固定具2に固定するためのネジ部材6を示す断面図である。
【0003】
パネル固定具2は、図示しない支持脚の調整台の上や、図示しない水平に設置された角パイプ材を用いたフレーム上などに固定されて用いられる。また、雄ネジ部6aを有するネジ部材6は、その先端部側が、パネル部材4の隅部に形成された段付き孔部8に上方から挿入され、その雄ネジ部6aが、パネル固定具2におけるキャップ部材10の上端部に形成された雌ネジ部12に、ネジ締結されるようになっている。
【0004】
パネル固定具2のキャップ部材10は、水平方向(図9中、左右方向及び紙面に垂直の方向)に一定範囲内で自在に移動することができるように設けられているので、パネル部材4の取り付け位置が水平方向に多少ずれても、その隅部を止めるネジ部材6は、確実に、上記キャップ部材10の雌ネジ部12にネジ締結することができるようになっている。
【特許文献1】特開2007−218000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のパネル固定具2は、部品点数が多いため、構造が複雑化しているという面で問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、部品点数を減らすことができ、構造を簡単化することができるパネル固定具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明によるパネル固定具は、
同一平面内に配置された平板により構成される基板部と、
前記基板部から上方に高さを有するように形成され、上端部に開口部が形成された水平板部を有する複数の架台部と、
前記複数の架台部のそれぞれにおける前記水平板部に水平移動自在に係合され、前記開口部と同軸方向に連通するように形成された雌ネジを有する複数のナット部材と
を備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明によるパネル固定具は、前記基板部と前記複数の架台部とが一体的に形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明によるパネル固定具は、
前記ナット部材が、帯板状部材の長さ方向両端部のそれぞれを折り返して形成した互いに対向する2つの係止部を有し、
前記2つの係止部のそれぞれが、前記水平板部の互いに対向する2辺のそれぞれに隙間を介して水平移動自在に係合されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
このような本発明のパネル固定具によれば、
同一平面内に配置された平板により構成される基板部と、
前記基板部から上方に高さを有するように形成され、上端部に開口部が形成された水平板部を有する複数の架台部と、
前記複数の架台部のそれぞれにおける前記水平板部に水平移動自在に係合され、前記開口部と同軸方向に連通するように形成された雌ネジを有する複数のナット部材と
を備えることにより、
部品点数を減らすことができ、構造を簡単化することができる。
【0011】
また、本発明のパネル固定具によれば、前記基板部と前記複数の架台部とが一体的に形成されていることにより、
さらに、部品点数を減らすことができ、構造を簡単化することができる。
【0012】
また、本発明のパネル固定具によれば、
前記ナット部材が、帯板状部材の長さ方向両端部のそれぞれを折り返して形成した互いに対向する2つの係止部を有し、
前記2つの係止部のそれぞれが、前記水平板部の互いに対向する2辺のそれぞれに隙間を介して水平移動自在に係合されることにより、
パネル部材の取り付け位置が水平方向に多少ずれても、その隅部を止めるネジ部材は、確実に、ナット部材の雌ネジ部にネジ締結することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るパネル固定具を実施するための最良の形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
図1から図8は、本発明の一実施の形態に係るパネル固定具20について説明するために参照する図である。
【0014】
本実施の形態に係るパネル固定具20は、図1から図3に示すように、基板部22と、4つの架台部30と、4つのナット部材32とを備えて構成されている。また、パネル固定具20の基板部22は、1枚の中央基板部22aと、それを図中左右両側から挟むよう配置された、2枚の端部側基板部22bとを備えて構成されている。
【0015】
基板部22の中央基板部22aは、図1に示すように、十字形状に形成された平板であって、パネル固定具20の中央部に配置されている。この中央基板部22aには、その厚さ方向(図1中、紙面に垂直の方向)に貫通する4つの取付け用孔34が設けられている。
【0016】
また、基板部22の2枚の端部側基板部22bのそれぞれは、図1中の上下方向に長さを有する帯状の平板であって、同図中におけるパネル固定具20の左右両側に配置されている。この基板部22の1枚の中央基板部22aと2枚の端部側基板部22bは、図2に示すように、同一平面上に配置されている。
【0017】
パネル固定具20の4つの架台部30は、図1に示すように、基板部22における1枚の中央基板部22aの十字形状と、2枚の端部側基板部22bとの間に配置される、4つの領域のそれぞれに形成されていることにより、互いに離れて縦横2列に並んで配置されている。
【0018】
この4つの架台部30のそれぞれは、図1,2中左右方向に離れて互いに対向するように平行に配置される一対の垂直板部36a,36bを有している。架台部30のそれぞれは、この一対の垂直板部36a,36bのうちの、図1中左右方向に互いに離れて並ぶ隣同士の架台部30に互に対向する側(内側)の垂直板部36aの下端部が、基板部22における中央基板部22aの十字形状の図中縦方向部分で直角に折れ曲がって、中央基板部22aに一体的に繋がっている。
【0019】
また、架台部30のそれぞれにおける、一対の垂直板部36a,36bのうちの垂直板部36aとは反対側(外側)の垂直板部36bは、その下端部が端部側基板部22bの図1中上下両端部の縦方向部分で直角に折れ曲がって、端部側基板部22bに一体的に繋がっている。これにより、図1中上下方向に互いに離れて並ぶ隣同士の架台部30は、その垂直板部36b同士が、端部側基板部22bを介して一体的に繋がるようになっている。
【0020】
また、架台部30のそれぞれは、その高さ上端部に1枚の水平板部40を有している。この水平板部40はその両端部から直角に下方に折れ曲がるように、一対の垂直板部36a,36bの上端部に一体的に繋がって形成されている。また、この水平板部40の中央部には、その厚さ方向に貫通する円形状の開口部42が形成されている。この開口部42はその円形状の直径が、後述するナット部材32の雌ネジ部52の最大の径(雌ネジ部52の谷の径)よりも大きくなるように形成されている。
【0021】
このパネル固定具20の基板部22と4つの架台部30は、図4に示すような形状の1枚の平板素材44から、折曲げ加工により一体的に形成されるようになっている。すなわち、パネル固定具20の基板部22と4つの架台部30は、図4に示す平板素材44を、同図中に示すような互いに逆方向の折り目となる仮想線X,Yのそれぞれにおいて直角に折り曲げることにより、形成されるものである。すなわち、仮想線Xにおいては直角の内側になるよう折り曲げられ、仮想線Yにおいて直角の外側になるよう折り曲げるようになっている。
【0022】
また、図1に示すように、パネル固定具20の4つのナット部材32のそれぞれは、初めは帯板状部材であって、図1中上下方向の長さ両端部のそれぞれを中央部側に折り返すように折り曲げて形成した2つの係止部48を有している。
【0023】
ナット部材32の長さ中央部は、図3に示すように、架台部30の水平板部40の下側に配置され、その両端部の上記2つの係止部48のそれぞれが、架台部30の水平板部40における外周の4辺のうちの、一対の垂直板部36a,36bと連結する2辺以外の2辺、すなわち、図1中左右方向に伸びる一対の2辺のそれぞれの縁部に、すなわち、図3中の水平板部40の左右両側の縁部に隙間を有して係合している。このとき、水平板部40とその下側のナット部材32の中央部との間にも隙間を有している。
【0024】
すなわち、ナット部材32のそれぞれは、その2つの係止部48同士が互いに対向する方向の全体長さから、この2つの係止部48のそれぞれの折り返し部の厚さ分を差し引いた長さ(図3中、寸法S)が、このような長さ方向と同じ方向の、水平板部40の幅の長さ(図3中、寸法T)よりも長くなるように形成されている。これによりナット部材32は、その2つの係止部48同士が互いに対向する方向に、(S−T)の長さ範囲内で自在に移動することができるようになっている。
【0025】
また、ナット部材32のそれぞれは、図2に示すように、水平方向であって、その図2中の左右方向の長さ(図2中、寸法U)が、架台部30における一対の垂直板部36a,36b間の内側の長さ(図2中、寸法V)よりも短い長さとなるように形成されている。
【0026】
これによりナット部材32は、水平板部40に対して、水平方向であって、かつ、その2つの係止部48同士が互いに対向する方向と直角の方向に、(V−U)の長さ範囲内で自在に移動することができるようになっている。したがって、ナット部材32のそれぞれは、結局、水平板部40に対して水平方向の所定範囲内で、任意の方向に移動自在となっている。このとき、水平板部40とその下側のナット部材32の中央部との間にも隙間を有しているので、上記ナット部材32の移動を円滑にすることができる。
【0027】
また、ナット部材32には、図3に示すように、基板部22側に突出する筒状部50が、その両端部の係止部48間にテーパ部51を介して形成されている。このような筒状部50は、例えば、絞り加工等により形成することができる。この筒状部50は、ナット部材32がその水平方向の移動可能範囲の中央部に位置するときに、上記水平板部40の開口部42と同軸方向に形成されている。
【0028】
また、このナット部材32の筒状部50には、その内周部に雌ネジ部52が形成されている。このナット部材32の雌ネジ部52は、図1及び図3に示すように、架台部30における水平板部40の開口部42と、同軸方向に連通するような位置に形成されている。
【0029】
図5から図8は、本実施の形態に係るパネル固定具20の使用法を説明するために参照する図である。パネル固定具20は、図5及び図6に示すように、高さ調整自在の支持脚54の調整台56の上に載置されている。
【0030】
また、パネル固定具20における基板部22の中央基板部22a上には、この中央基板部22aとほぼ相似形の十字形状に形成され、中央基板部22aの4つの取付け用孔34のそれぞれに対応する位置に取付け用孔58が設けられた固定板部材60が重ねて載置されている。
【0031】
また、支持脚54の調整台56には、パネル固定具20の中央基板部22a及び固定板部材60それぞれの4つの取付け用孔34,58に対応する位置に、4つの取付け用孔62が設けられている。これにより、パネル固定具20の中央基板部22aは、固定板部材60と調整台56の間に挟まれて、4本のリベット部材64により固定されている。
【0032】
そして、図7及び図8に示すように、固定板部材60上には、一箇所に集められた4枚のパネル部材70の各隅部が載置されるようになっている。ここで、図7においては、図面の複雑化を防止するため、パネル固定具20、固定板部材60、及び調整台56は、その外形線のみを破線で示してある。図8に示すように、4枚のパネル部材70の各隅部を固定する4本のネジ部材72それぞれの雄ネジ部72aは、パネル固定具20のナット部材32の雌ネジ部52にネジ締結するようになっている。
【0033】
本実施の形態に係るパネル固定具20においては、そのナット部材32が独自に水平移動自在の構造になっているので、パネル部材70の取り付け位置が水平方向に多少ずれても、その隅部を止めるネジ部材72は、確実に、パネル固定具20のナット部材32の雌ネジ部52にネジ締結することができるようになっている。
【0034】
このような本実施の形態に係るパネル固定具20によれば、前記従来のパネル固定具2に比べて、部品点数を減らすことができ、構造を簡単化することができる。
【0035】
また、本実施の形態に係るパネル固定具20によれば、基板部22と架台部30とが一体的に形成されているので、さらに部品点数を減らすことができ、構造を簡単化することができる。
【0036】
また、本実施の形態に係るパネル固定具20によれば、ナット部材32のそれぞれが、折り返して形成した2つの係止部48を有し、この2つの係止部48のそれぞれが、水平板部40の2辺のそれぞれの縁に水平移動自在に係合されるようになっていることにより、ナット部材32を単一品として形成することができるので、さらに構造を簡単化することができる。
【0037】
なお、本実施の形態に係るパネル固定具20においては、その基板部22と4つの架台部30とが、図4に示す平板素材44から、折曲げ加工により一体的に形成されるようになっていたが、他の実施例として、基板部22に相当する1枚の平板上に、この平板とは別個に作製された4つの架台部を、溶接等により固定するようにしてもよい。
【0038】
また、本実施の形態に係るパネル固定具20においては、そのナット部材32の筒状部50が、架台部30の水平板部40の下側に配置されるようになっていたが、その筒状部50が水平板部40の上側に配置されるように、ナット部材32を水平板部40に係合させるようにしてもよい。
【0039】
また、本実施の形態においては、パネル固定具20が支持脚54の調整台56の上に、リベット部材64により固定されるようになっていたが、パネル固定具20は、ボルトとナット等のネジ部材や、接着剤等により固定されるようになっていてもよい。
【0040】
また、本実施の形態においては、パネル固定具20の使用法として、このパネル固定具20を支持脚54の調整台56の上に固定する場合について説明したが、パネル固定具20は、このような使用法に限定されず、例えば、角パイプにより構成されて水平に配置されるフレーム構造体等の上に固定されるようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態に係るパネル固定具20を示す平面図である。
【図2】図1に示すパネル固定具20の正面図である。
【図3】図1に示すパネル固定具20のA−A線矢視の断面図である。
【図4】図1に示す基板部22及び架台部30の素材となる平板素材44を示す展開図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るパネル固定具20の使用法を説明するための平面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るパネル固定具20の使用法を説明するための側面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係るパネル固定具20の使用法を説明するための平面図である。
【図8】図7に示すパネル部材70のB−B線矢視の断面図及びパネル固定具20、支持脚54の側面図である。
【図9】従来のパネル固定具2、パネル部材4、及びネジ部材6を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
2 パネル固定具
4 パネル部材
6 ネジ部材
8 段付孔部
10 キャップ部材
12 雌ネジ部
20 パネル固定具
22 基板部
22a 中央基板部
22b 端部側基板部
30 架台部
32 ナット部材
34 取付け用孔
36a,36b 垂直板部
40 水平板部
42 開口部
44 平板素材
48 係止部
51 テーパ部
50 筒状部
52 雌ネジ部
54 支持脚
56 調整台
58 取付け用孔
60 板部材
62 取付け用孔
64 リベット部材
70 パネル部材
72 ネジ部材
72a 雄ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一平面内に配置された平板により構成される基板部と、
前記基板部から上方に高さを有するように形成され、上端部に開口部が形成された水平板部を有する複数の架台部と、
前記複数の架台部のそれぞれにおける前記水平板部に水平移動自在に係合され、前記開口部と同軸方向に連通するように形成された雌ネジを有する複数のナット部材と
を備えることを特徴とするパネル固定具。
【請求項2】
前記基板部と前記複数の架台部とが一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパネル固定具。
【請求項3】
前記ナット部材が、帯板状部材の長さ方向両端部のそれぞれを折り返して形成した互いに対向する2つの係止部を有し、
前記2つの係止部のそれぞれが、前記水平板部の互いに対向する2辺のそれぞれに隙間を介して水平移動自在に係合されることを特徴とする請求項1又は2に記載のパネル固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−191443(P2009−191443A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30111(P2008−30111)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000233239)日立機材株式会社 (225)
【出願人】(591201217)大滝成形工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】