説明

パネル装置

【課題】本発明は、コストを低減しつつ複数の導体を積層できるパネル装置を提供する。
【解決手段】パネル装置10は、パネル部分31と、パネル部分31の一方の面31a側に配置されるシールド電極38と、シールド電極38に積層される絶縁層34と、絶縁層34に積層される接続パターン32とを備える。シールド電極38と接続パターン32とは、導電性を有する溶剤系の物質の一例であるインク38a,32aが塗布されて形成される。絶縁層34は、硬化促進系の物質の一例であるインク34aが塗布されて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子機器の操作入力に用いられる入力部を備えるパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車に搭載されるオーディオ装置を操作するために、インストルメントパネルにおいて運転席や助手席に着座する乗員の操作しやすい位置には、スイッチパネル装置が設置されている。スイッチパネル装置には、静電容量式のセンサが設けられるものがある。この種のスイッチパネル装置では、操作者が、スイッチパネル装置のパネル部分に形成される例えば検出電極に触れると、静電容量式のセンサの静電容量が変化し、この変化を検出することによって、操作されたことが検出される。
【0003】
静電容量式のセンサを用いるスイッチパネル装置のパネル部分には、パネル部分に形成される検出電極とパネル部分外に形成される検出回路とを電気的に接続する接続パターンが形成されている。このため、静電容量式のセンサの誤検出を防止するために、パネルスイッチ装置のパネル部分において接続パターンの周囲には、シールド電極が設けられている。
【0004】
パネル部分には、接続パターンとシールド電極とが電気的に接続されることを防止するために、接続パターンとシールド電極との間に、絶縁層が形成されている。
【0005】
この絶縁層を形成するために、パネル部分とは別途に設けられる樹脂など絶縁性のシート部材を用いることが提案されている。この場合、パネル部分に絶縁層を形成するシート部材を重ねて固定する。しかしながら、絶縁性のシート部材を用いる構造であると、部品点数が増加するとともにシート部材をパネル部に重ねて固定する作業を必要とするので、コストが増加する。
【0006】
このため、絶縁層を、印刷することによって形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平5−217454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、接続パターンとシールド電極とを、導電性のインクをパネル部分に印刷することによって形成することが提案されている。しかしながら、接続パターンとシールド電極とを、例えば溶剤系の導電性インクを用いて印刷により形成し、かつ、絶縁層を溶剤系の絶縁性インクを用いて印刷により形成した場合、絶縁層の両側に配置される接続パターンとシールド電極中の溶剤が絶縁層を溶かすとともに、接続パターンとシールド電極中の導電性フィラーなどの電気を通す成分が絶縁層内に侵入してしまう。
【0008】
上記のように、接続パターンとシールド電極中の電気を通す成分が絶縁層内に侵入することによって、絶縁層の絶縁性が低下してしまう。この結果、絶縁層を介して接続パターンとシールド電極とが電気的に接続されてしまう。接続パターンとシールド電極とが電気的に接続されることは好ましくない。
【0009】
したがって、本発明の目的は、コストを低減しつつ、複数の導体を積層できるパネル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のパネル装置は、パネル部分と、前記パネル部分の一方の面側に配置されて電気を通す性質を有する第1の導体層と、前記第1の導体層に積層される絶縁層と、前記絶縁層に積層されて電気を通す性質を有する第2の導電層とを備える。前記第1,2の導電層は、導電性を有する溶剤系の物質を塗布することによって形成され、前記絶縁層は、絶縁性を有する硬化促進系の物質を塗布することによって形成される。
【0011】
この構造によれば、電気を通す性質を有する第1の導体層と、電気を通す性質を有する第2の導体層との間に、これら両者を絶縁する絶縁層が介装されても、第1,2の導体層を形成する溶剤系の物質と、絶縁層を形成する硬化促進系の物質とが異種の材料となるので、お互いを溶かしあうことが抑制される。それゆえ、絶縁層を介して、第1,2の導体操が電気的に接続することが抑制される。
【0012】
他の本発明のパネル装置は、パネル部分と、前記パネル部分の一方の面側に配置されて電気を通す性質を有する第1の導体層と、前記第1の導体層に積層される絶縁層と、前記絶縁層に積層されて電気を通す性質を有する第2の導体層とを備える。前記第1の導体層は、導電性を有する硬化促進系の物質を塗布することによって形成される。前記第2の導体層は、導電性を有する溶剤系の物質を塗布することによって形成される。前記絶縁層は、絶縁性を有する溶剤系の物質を塗布することによって形成される。
【0013】
この構造によれば、電気を通す性質を有する第1の導体層と、電気を通す性質を有する第2の導体層との間に、これら両者を絶縁する絶縁層が介装されても、第1の導体層を形成する硬化促進系の物質と、絶縁層を形成する溶剤系の物質とが異種の材料となるので、お互いを溶かしあうことが抑制される。それゆえ、絶縁層を介して、第1,2の導体操が電気的に接続することが抑制される。
【0014】
他の本発明のパネル装置は、パネル部分と、前記パネル部分の一方の面側に配置されて電気を通す性質を有する第1の導体層と、前記第1の導体層に積層される絶縁層と、前記絶縁層に積層されて電気を通す性質を有する第2の導体層とを備える。前記第1,2の導体層は、導電性を有する硬化促進系の物質を塗布することによって形成される。前記絶縁層は、絶縁性を有する溶剤系の物質を塗布することによって形成される。
【0015】
この構造によれば、電気を通す性質を有する第1の導体層と、電気を通す性質を有する第2の導体層との間に、これら両者を絶縁する絶縁層が介装されても、第1,2の導体層を形成する硬化促進系の物質と、絶縁層を形成する溶剤系の物質とが異種の材料となるので、お互いを溶かしあうことが抑制される。それゆえ、絶縁層を介して、第1,2の導体操が電気的に接続することが抑制される。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、コストを低減しつつ、複数の導体層を積層できるスイッチパネル装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施例に係るパネル装置を、図1〜8を用いて説明する。なお、本実施形態では、パネル装置の一例として、例えば自動車に搭載されるオーディオ装置の入力操作を行う、スイッチパネル装置10を用いて説明する。なお、本発明で言うパネル装置は、スイッチパネル装置10に限定されるものではない。
【0018】
図1は、スイッチパネル装置10が組み込まれるインストルメントパネル20を示している。また、図1中には、スイッチパネル装置10が分解された状態も示している。インストルメントパネル20は、スイッチパネル装置10とインストルメントパネル本体21(インストルメントパネル20においてスイッチパネル装置10以外の部位)とをインサートインジェクションによって、一体に形成することによって、構成されている。
【0019】
スイッチパネル装置10は、パネル本体30と、スイッチ40とを備えている。パネル本体30は、スイッチパネル装置10の外観形状を規定している。パネル本体30は、跡で詳細に説明される。
【0020】
スイッチ40は、静電容量センサ式であって、タッチ検出電極41と、検出回路42とを備えている。タッチ検出電極41と検出回路42とは、電気的に接続される。図1に示すように、タッチ検出電極41は、乗員が操作する際に、触れる電極である。タッチ検出電極41は、パネル本体30に複数形成されている。
【0021】
操作者がタッチ検出電極41に触れると、センサの静電容量が変化する。検出回路42は、静電容量の変化を検出し、操作者がタッチ検出電極41に触れたことを検出する。なお、検出回路42は、図示しない制御装置に接続されており、検出回路42の検出結果に基づいて、制御装置がオーディオ装置を制御する。
【0022】
図2は、図1中に2点鎖線で囲まれる範囲F2を拡大して示す平面図である。図2は、スイッチパネル装置10(パネル本体30)を外側から見ているとともに、スイッチパネル装置10に形成される複数のタッチ検出電極41のうち1つのタッチ検出電極41の近傍を示している。
【0023】
なお、スイッチ40の構造、および、パネル本体30におけるタッチ検出電極41の近傍の構造は、全て同様であってよい。このため、図2に示す、1つのタッチ検出電極41近傍の構造を用いて、スイッチ40の構造、および、スイッチパネル装置10の構造を説明する。
【0024】
図3は、図2に示すF3−F3線に沿って示す、パネル本体30の断面図である。図3は、パネル本体30において、タッチ検出電極41の近傍を断面して示している。図4は、図3中に示されるF4−F4線に沿って示すパネル本体30の断面図である。図4は、パネル本体30における、タッチ検出電極41がない部分での断面図を示している。
【0025】
パネル本体30は、パネル部分31と、意匠層36と、接続パターン32と、シールド部33と、絶縁層34とを備えている。
【0026】
パネル部分31は、スイッチパネル装置10(パネル本体30)の外観形状を規定している。パネル部分31は、樹脂シート35によって形成される。樹脂シート35は、例えば、透明な樹脂で形成されている。
【0027】
図3に示すように、タッチ検出電極41は、パネル部分31の一方の面31a上に設けられている。操作者は、パネル部分31を通して(パネル部分31の上から)タッチ検出電極41に触れる。操作者は、面31aと反対側の面である他方の面31側から触れる。面31bは、車室側に露出する面である。
【0028】
図3,4に示すように、意匠層36は、パネル部分31の一方の面31a上に積層されており、パネル本体30の色や模様などを規定している。パネル部分31を通して意匠層36を見ることで、パネル本体30の色や模様が認識される。
【0029】
図3に示すように、樹脂シート35においてタッチ検出電極41を含むタッチ検出電極41の近傍の範囲には、意匠層36は積層されていない。図4に示すように、意匠層36は、タッチ検出電極41およびタッチ検出電極41がない範囲に積層されている。
【0030】
接続パターン32は、パネル部分31の一方の面31a側に形成されている。接続パターン32は、タッチ検出電極41と検出回路42とを電気的に接続すべく設けられている。接続パターン32は、電気を通す性質を有している。
【0031】
なお、本発明において、面31a側とは、パネル部分31を境に、面31aがある側を示す。このため、面31a側に設けられる、面31aに設けられる場合と、面31aには形成されないが、パネル部分31を境に面31aがある側に設けられる場合とを含む概念である。このため、接続パターン32は、実際には、後述される絶縁層34上に設けられており、面31aに形成されていないが、面31a側に形成されていることになる。
【0032】
図1に示すように、パネル本体30の外側に検出回路42が配置されるために、接続パターン32は、パネル部分31の例えば縁まで延びており、第1の配線37aに電気的に接続されている。第1の配線37aと検出回路42とが電気的に接続されている。タッチ検出電極41は、接続パターン32と第1の配線37aとを介して、検出回路42に電気的に接続される。
【0033】
図2〜4に示すように、シールド部33は、スイッチ40の誤動作を防止するために設けられている。シールド部33は、シールド電極38と、シールド信号生成回路39とを備えている。シールド電極38は、接続パターン32と意匠層36との間に配置されており、意匠層36上に積層されている。シールド電極38は、接続パターン32を覆う面積を有している。シールド電極38は、電気を通す性質を有している。
【0034】
パネル部分31側から操作者がパネル部分31を通して(パネル部分31の上から)接続パターン32に触れた場合に、スイッチ40の静電容量が変化することを防止するために、シールド電極38にはタッチ検出電極41と同電位同位相の電圧が印加されている。
【0035】
このため、パネル部分31において接続パターン32が形成される範囲には、シールド電極38が形成されるとともに、接続パターン32とシールド電極38とが互いに対向配置されている。
【0036】
図3に示すように、シールド電極38は、タッチ検出電極41およびタッチ検出電極41の近傍に形成されておらず、それゆえ、シールド電極38とタッチ検出電極41とは互いに電気的に接続されていない。
【0037】
図1に示すように、シールド信号生成回路39は、パネル本体30の外側に配置されている。シールド信号生成回路39は、上記したように、シールド電極38に、タッチ検出電極41と同電位同位相の電圧を印加している。
【0038】
シールド電極38は、パネル部分31の例えば縁まで延びており、第2の配線37bと電気的に接続されている。第2の配線37bは、シールド信号生成回路39に電気的に接続されている。シールド電極38は、第2の配線37bを介してシールド信号生成回路39に電気的に接続されている。
【0039】
図3,4に示すように、絶縁層34は、接続パターン32とシールド電極38との間に設けられている。具体的には、シールド電極38上に絶縁層34が積層され、絶縁層34上に接続パターン32が積層されている。
【0040】
絶縁層34は、シールド電極38と接続パターン32層とが互いに絶縁されるように(互いに電気的に接続されないように)形成されている。絶縁層34は、5MΩ以上であることが好ましい。絶縁層34は、タッチ検出電極41とタッチ検出電極41の近傍とには形成されていない。
【0041】
上記のように形成されるパネル本体30では、パネル部分31の一方の面31aに意匠層36が積層されるとともに、タッチ検出電極41が形成される。意匠層36上にシールド電極38が積層される。シールド電極38上に絶縁層34が積層される。絶縁層34上に接続パターン32が積層される。
【0042】
なお、上記では、スイッチ40の説明として、1つのタッチ検出電極41を用いたが、他のタッチ検出電極41から検出回路42までの間には、同様にシールド電極38と絶縁層34と接続パターン32とが形成されている。
【0043】
つぎに、パネル本体30を形成する際の手順について、一例を説明する。まず、平板状の樹脂シート35に、意匠層36と、タッチ検出電極41と、シールド電極38と、絶縁層34と、接続パターン32とを、各種インクをスクリーン印刷することにより、形成する。樹脂シート35は、各種インクが印刷される状態では、板状である。この点について、具体的に説明する。
【0044】
まず、図5に示すように、樹脂シート35の一方の面(パネル部分31の一方の面31a)に、インク36aを用いてスクリーン印刷することによって、意匠層36が形成される。意匠層36を形成する際に用いられるインク36aは、液状であって色素を有する。意匠層36が印刷された後は、十分な温度と時間をかけて、インク36aが十分乾燥される。
【0045】
ついで、樹脂シート35の一方の面に、タッチ検出電極41をスクリーン印刷によって形成する。タッチ検出電極41を形成する際に用いられるインク41aは、液状であり導電性のフィラーなどを備えるなどして、電気を通す性質を有する。タッチ検出電極41が印刷された後は、十分な温度と時間をかけて、インク41aが十分乾燥される。なお、タッチ検出電極41を形成するインクは、電気を通す性質を有していればよい。
【0046】
なお、先にタッチ検出電極41が先に形成されてもよい。また、意匠層36とタッチ検出電極41が印刷された後、インク36a,41aを同時に十分乾燥させてもよい。
【0047】
ついで、図6に示すように、シールド電極38を、意匠層36上にインク38aを用いてスクリーン印刷することによって形成(積層)する。シールド電極38は、溶剤系のインク38aが用いられる。
【0048】
インク38aは、液状であり導電性のフィラーなどを備えており、電気を通す性質を有している。なお、シールド電極38を形成する際に用いられるインク38aは、溶剤系であって、電気を通す性質を有していればよい。シールド電極38が印刷された後は、インク38aが、十分な温度と時間をかけて十分乾燥される。
【0049】
本発明で言う溶剤系の物質とは、溶剤としてアルコールやトルエンなどを有する物質である。
【0050】
シールド電極38は、本発明で言う第1の導体層の一例である。インク38aは、本発明で言う溶剤系の物質の一例である。インク38aに含まれるビヒクルは、有機溶剤(例えば、上記したアルコールやトルエンなど)である。このため、インク38aは、溶剤系となる。また、スクリーン印刷は、本発明で言う塗布の一例である。インク38aは、他の方法で塗布されてもよい。なお、溶剤系の物質は、インク38aに限定されない。要するに、溶剤系の物質は、電気を通す性質を有し、溶剤系であって、塗布可能であればよい。
【0051】
ついで、図7に示すように、絶縁層34を、インク34aを用いてシールド電極38上にスクリーン印刷することによって、形成する。絶縁層34を形成する際に用いられるインク34aは、液状であり硬化促進可能なタイプであって、絶縁性を有している。
【0052】
本実施形態では、硬化促進可能なタイプのインクとして、絶縁性を有するとともに紫外線硬化剤系のインクが用いられている。紫外線硬化剤系のインクとは、紫外線が照射されることによって、硬化が促進されるものである。絶縁層34が印刷された後は、紫外線を十分あててインク34aが十分乾燥される。
【0053】
なお、硬化促進可能なタイプの物質としては、紫外線硬化剤系のインクに限定されない。他の例としては、2液反応型インクであってもよい。2液反応型インクとは、反応性樹脂をインキバインダーとして用いるとともに、硬化剤の液状物質を印刷直後に混合して、印刷後に化学反応させて硬化乾燥するインクである。
【0054】
本実施形態で言う硬化促進可能なタイプのインクとは、絶縁性を有しており、インク中のビヒクルとして有機溶剤が用いられておらず、印刷後に化学反応などによって硬化乾燥を促進できるインクを示す。
【0055】
なお、本発明で言う硬化促進系の物質とは、有機溶剤を用いない液状物質であって、塗布後、科学反応によって硬化乾燥を促進できる物質である。一例として、紫外線硬化型インクがある。紫外線硬化型インクは、速乾インクとして広く用いられている。この紫外線硬化型インクは、有機溶剤を使わないことによるVOC(Volatile Organic Compounds)低減や、乾燥工程の削減にコストの低減ができる。
【0056】
インク34aは、本発明で言う硬化促進系の物質の一例である。また、スクリーン印刷は、本発明で言う塗布の一例である。インク34aは、他の方法で塗布されてもよい。なお、硬化促進系の物質は、インク34aに限定されない。要は、絶縁性を有し、硬化促進系であって、塗布可能であればよい。
【0057】
ついで、図8に示すように、接続パターン32を、インク32aを用いてスクリーン印刷をすることによって絶縁層34上に形成する。接続パターン32が印刷された後は、たとえばインク32aを用いて接続パターン32とタッチ検出電極41とを電気的に接続する。
【0058】
なお、接続パター32とタッチ検出電極とは、印刷によって電気的に接続されてもよいし、他の手段によって互いに電気的に接続されてもよい。
【0059】
接続パターン32を形成する際に用いられるインク32aは、溶剤系のインク32aが用いられる。このインク32aは、液状であり導電性のフィラーなどを備えており、電気を通す性質を有している。なお、接続パターン32に用いられるインク32aは、溶剤系であって、電気を通す性質を有していればよい。接続パターン32が印刷された後は、インク32aが、十分な温度と時間をかけて、十分乾燥される。
【0060】
接続パターン32は、本発明で言う第2の導体層の一例である。インク32aは、本発明で言う、溶剤系の物質の一例である。インク32aに含まれるビヒクルは、有機溶剤である。このため、インク32aは、溶剤系となる。スクリーン印刷は、本発明で言う塗布の一例である。インク32aは、他の方法で塗布されてもよい。なお、溶剤系の物質は、インク32aに限定されない。要するに、溶剤系の物質は、電気を通す性質を有し、溶剤系であって、塗布可能であればよい。
【0061】
上記のように、各印刷工程(意匠層36、タッチ検出電極41、シールド電極38、絶縁層34、接続パターン32)の後では、つぎの印刷が行われる前に、直前に印刷されたインクが十分乾燥される。なお、ここで言う十分乾燥されるとは、つぎの印刷が行われても、前の印刷層とその上に積層される印刷層とが混合しない程度に乾燥されることを示す。
【0062】
例えば、シールド電極38が印刷形成された後は、インク38aが十分乾燥されることによって、つぎに絶縁層34を印刷しても、シールド電極38を形成するインク38aと絶縁層34を形成するインク34aとが混ざることがない。このことは、互いに隣り合う層において同様である。
【0063】
十分乾燥させる手段の一例として、十分な温度下において十分な時間をかけること、紫外線を十分あてることを用いたが、これに限定されない。要は、印刷された層が十分に乾燥すればよい。
【0064】
ついで、全ての印刷(意匠層36とタッチ検出電極41とシールド電極38と絶縁層34と接続パターン32)が施された後では、パネル本体30は、まだ平板状であるので、これを真空圧空成形によって、製品形状に賦形する。具体的には、金型内を真空状態にし、型内にセットされた板状のパネル本体30を加熱、加圧することで、パネル本体30を金型形状に成形する。このことによって、パネル本体30が製品形状となる。
【0065】
このため、各種印刷工程において用いられるインク(インク36a,41a,38a,34a,32a)は、賦形に耐えられるように、延びのよいインクであることが好ましい。
【0066】
賦形された後は、インサートインジェクションによって、パネル本体30がインストルメントパネル本体21と一体に形成される。
【0067】
パネル本体30がインストルメントパネル本体21と一体に形成された後は、接続パターン32と第1の配線37aが電気的に接続されるとともに、シールド電極38が第2の配線37bと電気的に接続される。
【0068】
このように構成されるスイッチパネル装置10では、絶縁層34に用いられるインク34aが硬化促進可能なタイプであるとともに、絶縁層34を挟んで両側に配置されるシールド電極38と接続パターン32とに用いられるインク38a,32aが溶剤系のインクである。
【0069】
このため、互いに隣り合う、シールド電極38と絶縁層34、絶縁層34と接続パターン32とを形成するインクどうし(インク38aとインク34a、インク34aとインク32a)が、互いに異種となるので、互いに溶け合うことが抑制される。
【0070】
具体的には、溶剤系インクであるインク32a,38aは、印刷後、加熱され、溶剤が蒸発して硬化する。硬化促進系インクであるインク34aは、印刷直後に紫外線を照射されてすぐに硬化する。このため、乾燥済みのパターンと混ざり合うことが妨げる。
【0071】
この結果、シールド電極38中の導電性フィラーなど電気を通す性質を有する成分が絶縁層34内に侵入することが抑制され、接続パターン32中の導電性フィラーなどの電気を通す成分が絶縁層34内に侵入することが抑制される。
【0072】
このことによって、絶縁層34の絶縁性が低下することが抑制されるので、シールド電極38と接続パターン32とが電気的に接続することがない。
【0073】
このように、電気を通す性質を有する一対の層をインクの印刷によって形成するとともに、その間に絶縁層をインクの印刷によって形成しても、絶縁層を挟んだ両側の電気を通す層どうしの絶縁(互いに電気的い接続されない)は確保される。このため、部品点数を削減(絶縁層を形成するために別途の絶縁シートなどが不要となるので)できる。それゆえ、複数の導体層を備えるスイッチパネル装置10のコストを低減できる。
【0074】
言い換えると、第1,2の導体層を溶剤系の物質を塗布して形成し、かつ、絶縁層を硬化促進系の物質を塗布して形成することによって、絶縁層によって第1,2の絶縁性を確保することができるので、コストを低減しつつ、複数の導体層を積層するパネル装置を形成することができる。
【0075】
また、各層を形成する各印刷工程が施された後毎に、印刷された層が十分に乾燥される。このため、絶縁層34の絶縁性が低下することがより一層抑制される。
【0076】
また、スイッチ40は、タッチ検出電極41を備えるとともに静電容量式のセンサを備える構造である。タッチ検出電極41は、印刷により形成することができるので、タッチ検出電極41によってパネル本体30の賦形が抑制されることはない。
【0077】
このため、パネル本体30の形状の自由度が向上する。さらに、スイッチ40は、機械式接点などを用いない構造であるので、部品点数を削減でき、それゆえ、スイッチパネル装置10のコストを削減することができる。
【0078】
なお、本実施形態では、電気を通す性質を有する導体層の一例として、シールド電極38と接続パターン32とを用い、これらの間に介装されて導体層どうしが電気的に接続をすることを防止する絶縁層の一例として、絶縁層34を用いて説明している。
【0079】
しかしながら、これに限定されない。例えば、意匠層36を形成するインク36a中に導電性物質が含まれる場合には、意匠層36も導体層となり、それゆえ、意匠層36とシールド電極38との間にも、これらを互いに電気的に接続しないために絶縁層が形成される。
【0080】
この場合、意匠層36を形成するインク36aは、溶剤系のインクとする。介装される絶縁層は、絶縁層34を形成するインク34aと同様でよい。
【0081】
このことによって、意匠層36とシールド電極38との間に形成される絶縁層の絶縁性が低下することが抑制され、それゆえ、意匠層36とシールド電極38とが電気的に接続することが防止される。
【0082】
また、本実施形態では、スイッチパネル装置10は、一対の電気を通す性質を有する導体層(シールド電極38と接続パターン32)を備えているが、これに限定されない。3つ以上の電気を通す導体層を備えてもよい。この場合、互いに隣り合う導体層間には、絶縁層が設けられる。そして、これら、導体層と絶縁層も上記同様に形成されることによって、複数の導体層を積層しても、同様の効果を得ることができる。
【0083】
つぎに、本発明の第2の実施形態に係るパネル装置を、図5〜8を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、シールド電極38、絶縁層34を形成するインクが、第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同様であってよい。このため、第1の実施形態で用いた図5〜8を用いて、上記異なる点について説明する。
【0084】
図5〜8は、本実施形態のスイッチパネル装置10の各層を形成する様子を示す断面図である。
【0085】
図5は、パネル部分31にスクリーン印刷によって意匠層36が形成される状態と、タッチ検出電極41がスクリーン印刷によって形成される状態とを示している。図5に示すように、意匠層36は、第1の実施形態と同様に、インク36aが用いられる。タッチ検出電極41は、第1の実施形態と同様に、インク41aが用いられる。
【0086】
図6は、意匠層36上に、シールド電極38がスクリーン印刷により形成される状態を示している。図6に示すように、本実施形態では、シールド電極38は、インク38aに代えて、インク38cが用いられる。インク38cは、電気を通す性質を有する硬化促進系のインクである。例えば、紫外線硬化剤系や2液反応型のインク(第1の実施形態で説明)であって、電気を通す性質を有するインクである。
【0087】
図7は、シールド電極38上に、絶縁層34がスクリーン印刷によって形成される状態を示している。図11に示すように、本実施形態では、絶縁装置34は、インク34aに代えて、インク34cが用いられる。インク34cは、絶縁性を有する溶剤系のインク(第1の実施形態で説明済)である。
【0088】
図8は、絶縁層34上に、接続パターン32がスクリーン印刷によって形成される状態を示している。接続パターン32は、第1の実施の形態と同様、電気を通す性質を有する溶剤系のインクが用いられ、それゆえ、インク32aが用いられる。
【0089】
インク38cは、上記したように、第1の実施形態で説明された硬化促進系のインクであって、電気を通す性質を有するインクである。インク38cは、本発明で言う電気を通す硬化促進系の物質の一例である。
【0090】
インク34cは、上記したように、第1の実施形態で説明された溶剤系のインクであって、絶縁性を有するインクである。インク34cは、本発明で言う絶縁性を有する溶剤系の物質の一例である。
【0091】
本実施形態であっても、各インクは、印刷後十分乾燥される。本実施形態であっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0092】
なお、本実施形態では、第1の導体層であるシールド電極38が、電気を通す性質を有する硬化促進系のインク38c(硬化促進系の物質の一例)で形成され、第2の導体層である接続パターン32は、電気を通す溶剤系のインク32a(溶剤系の物質の一例)で形成されている。
【0093】
しかしながら、シールド電極38が、第1の実施形態で用いられた電気を通す性質を有する溶剤系のインク38aで形成されて、図8に示すように、接続パターン32が、電気を通す性質を有する硬化促進系のインク32cで形成されても、同様の効果が得られる。
【0094】
つぎに、本発明の第3の実施形態に係るパネル装置を、図5〜8を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、シールド電極38、絶縁層34、接地電極32、タッチ検出電極41を形成するインクが、第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同様であってよい。このため、第1の実施形態で用いた図5〜8を用いて、上記異なる点について説明する。
【0095】
図5〜8は、本実施形態のスイッチパネル装置10の各層を形成する様子を示す断面図である。
【0096】
図5は、パネル部分31にスクリーン印刷によって意匠層36が形成される状態と、タッチ検出電極41がスクリーン印刷によって形成される状態とを示している。図5に示すように、意匠層36は、第1の実施形態と同様に、インク36aが用いられる。
【0097】
タッチ検出電極41は、インク41aに代えて、インク41bが用いられる。インク41bは、電気を通す性質を有する硬化促進系のインクである。例えば、紫外線硬化剤系や2液反応型のインク(第1の実施形態で説明)であって、電気を通す性質を有するインクである。
【0098】
図6は、意匠層36上に、シールド電極38がスクリーン印刷により形成される状態を示している。図6に示すように、本実施形態では、シールド電極38は、インク38aに代えて、インク38bが用いられる。インク38bは、電気を通す性質を有する硬化促進系のインクである。例えば、紫外線硬化剤系や2液反応型のインク(第1の実施形態で説明)であって、電気を通す性質を有するインクである。
【0099】
図7は、シールド電極38上に、絶縁層34がスクリーン印刷によって形成される状態を示している。図7に示すように、本実施形態では、絶縁装置34は、インク34aに代えて、インク34bが用いられる。インク34bは、絶縁性を有する溶剤系のインクである。
【0100】
図8は、絶縁層34上に、接続パターン32がスクリーン印刷によって形成される状態を示している。図8に示すように、接続パターン32は、インク32aに代えて、インク32bが用いられる。インク32bは、電気を通す性質を有する硬化促進系のインクである。例えば、紫外線硬化剤系や2液反応型のインク(第1の実施形態で説明)であって、電気を通す性質を有するインクである。
【0101】
インク32b,38b,41bは、上記したように、第1の実施形態で説明された硬化促進系のインクであって、電気を通す性質を有するインクである。インク32b,38b,41bは、本発明で言う電気を通す硬化促進系の物質の一例である。
【0102】
インク34bは、上記したように、第1の実施形態で説明された溶剤系のインクであって、絶縁性を有するインクである。インク34bは、本発明で言う絶縁性を有する溶剤系の物質の一例である。
【0103】
本実施形態であっても、各は、印刷後十分乾燥される。本実施形態であっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0104】
なお、本実施形態では、タッチ検出電極41は、インク41bを用いて形成されたが、第1の実施形態で説明されたインク41aでもよい。要するに、接続パターン32とタッチ検出電極41とが互いに電気的に接続されればよい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るパネル装置が組み込まれるインストルメントパネルを示す斜視図。
【図2】図1中に2点鎖線で囲まれる範囲F2を拡大して示す平面図。
【図3】図2に示すF3−F3線に沿って示す、パネル本体の断面図。
【図4】図2中に示されるF4−F4線に沿って示すパネル本体の断面図。
【図5】本発明の第1〜3の実施形態のパネル本体に意匠層とタッチ検出電極が印刷される固定を示す断面図。
【図6】本発明の第1〜3の実施形態の意匠層にシールド電極が印刷される工程を示す断面図。
【図7】本発明の第1〜3の実施形態のシールド電極に絶縁層が印刷される工程を示す断面図。
【図8】本発明の第1〜3の本実施形態の絶縁層に接続パターンが印刷される工程を示す断面図。
【0106】
10…スイッチパネル装置(パネル装置)、31…パネル部分、32…接続パターン、(第1の導電層)、32a…インク(導電性を有する溶剤系の物質)、32b…インク(導電性を有する硬化促進系の物質)、32c…インク(導電性を有する硬化促進系の物質、34…絶縁層、34a…インク(絶縁性を有する硬化促進系の物質)、34b…インク(絶縁性を有する溶剤系のインク)、34c…インク(絶縁性を有する溶剤系のインク)、38a…インク(導電性を有する溶剤系の物質)、38b…インク(導電性を有する硬化促進系の物質)、38c…インク(導電性の硬化促進系の物質)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル部分と、
前記パネル部分の一方の面側に配置されて電気を通す性質を有する第1の導体層と、
前記第1の導体層に積層される絶縁層と、
前記絶縁層に積層されて電気を通す性質を有する第2の導体層と
を具備し、
前記第1,2の導体層は、導電性を有する溶剤系の物質を塗布することによって形成され、
前記絶縁層は、絶縁性を有する硬化促進系の物質を塗布することによって形成される
ことを特徴とするパネル装置。
【請求項2】
パネル部分と、
前記パネル部分の一方の面側に配置されて電気を通す性質を有する第1の導体層と、
前記第1の導体層に積層される絶縁層と、
前記絶縁層に積層されて電気を通す性質を有する第2の導体層と
を具備し、
前記第1の導体層は、導電性を有する硬化促進系の物質を塗布することによって形成され、
前記第2の導体層は、導電性を有する溶剤系の物質を塗布することによって形成され、
前記絶縁層は、絶縁性を有する溶剤系の物質を塗布することによって形成される
ことを特徴とするパネル装置。
【請求項3】
パネル部分と、
前記パネル部分の一方の面側に配置されて電気を通す性質を有する第1の導体層と、
前記第1の導体層に積層される絶縁層と、
前記絶縁層に積層されて電気を通す性質を有する第2の導体層と
を具備し、
前記第1,2の導体層は、導電性を有する硬化促進系の物質を塗布することによって形成され、
前記絶縁層は、絶縁性を有する溶剤系の物質を塗布することによって形成される
ことを特徴とするパネル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−245906(P2009−245906A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94388(P2008−94388)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(591003345)ビステオン・ジャパン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】