説明

パフォーマンスモニタ装置およびそのパフォーマンスモニタ装置が備えられたレーダ装置

【目的】本発明は、レーダ装置の送信電力や受信感度等の性能の監視を行うパフォーマンスモニタ装置およびそのパフォーマンスモニタ装置が備えられたレーダ装置に関し、目標の位置や方向の如何にかかわらず、運用中に性能の監視を安定に行えることを目的とする。
【解決手段】目標の測位または測距のためにレーダから送信信号が送信される方向と異なる特定の方向に、前記レーダのパフォーマンスチェックに供される測定信号を送信する制御手段と、前記レーダの受信系によって受信された測定信号に基づいて前記パフォーマンスチェックを行うチェック手段とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置の送信電力や受信感度等の性能の監視を行うパフォーマンスモニタ装置およびそのパフォーマンスモニタ装置が備えられたレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置の多くには、運用中にマグネトロンから出力される送信波の電力を監視することにより、そのマグネトロンが交換されるべき時期の適切な判定を可能とするパフォーマンスモニタ装置が備えられている。したがって、レーダ装置の性能は、このようなパフォーマンスモニタ装置によって、稼働中に所定の頻度で監視される。
【0003】
図3は、パフォーマンスモニタが搭載されたレーダ装置の構成例を示す図である。
図において、アンテナ31pmt、31pmrの給電点にはパフォーマンスモニタ40が接続され、そのパフォーマンスモニタ40の入出力端子にはレーダ本体50が接続される。レーダ本体50のアンテナ端子と表示用入出力とには、アンテナ32の給電点とレーダ表示器60とがそれぞれ接続される。
【0004】
パフォーマンスモニタ40は、アンテナ31pmrの給電点に縦続接続された検波器41、増幅器42およびピークホールド回路43と、そのピークホールド回路43の出力と共にレーダ本体50の対応する入出力に接続された第1の入力を有する制御回路44と、この制御回路44の出力と既述のアンテナ31pmtの給電点との間に縦続接続されたVCO45および減衰器46とを備える。減衰器46のモニタ端子は、制御回路44の第2の入力に接続される。
【0005】
レーダ本体50は、アンテナ32の給電点に第1の開口が接続されたサーキュレータ51と、そのサーキュレータ51の第2の開口と第3の開口との間に縦続された受信機52、空中線制御回路53、変調回路54およびマグネトロン55とを備える。空中線制御回路53は、レーダ表示器60の対応する入出力端子と、既述のピークホールド回路43の出力と、制御回路44の入力とに接続される。
このような構成のレーダ装置では、マグネトロン55から出力されたレーダ送信波は、サーキュレータ51を介してアンテナ32から送信される。このようなレーダ送信波の一部は、アンテナ31pmrに到来し、検波器41によって検波された後、さらに、増幅器42を介してピークホールド回路43に与えられる。ピークホールド回路43は、検波器41が行う検波の下で得られ、かつ上記マグネトロン55によって出力されたレーダ送信波の送信電力を電圧(または電流)の瞬時値として示すモニタ信号(図4(1))に変換される。
【0006】
空中線制御回路53は、このモニタ信号をレーダ表示器60に引き渡し、そのモニタ信号に同期したトリガ信号(図4(2))を制御回路44に与える。制御回路44は、そのトリガ信号に基づいて上記レーダ送信波に同期した変調波形をVCO45に与える。VCO45は、図4に示すように、その変調波形に基づいて変調された変調波(以下、「リファレンス信号」という。)を生成する。このリファレンス信号(図4(3))は、減衰器46およびアンテナ31pmtを介して送信される。
アンテナ32に到来したリファレンス信号は、受信機52および空中線制御回路53を介してレーダ表示器60に引き渡され、そのレーダ表示器60の表示画面(PPI)上には、図5(a)に示すパターンとして表示される。
【0007】
なお、このパターンは、一般に、アンテナ31pmt、31pmrが船首の方向に設置されているため、図5(a)に示すように、表示画面上における船首の方向に、アンテナ32のスキャン方向における指向性が反映されて表示される。
【0008】
レーダ表示器60の表示画面を参照する操作者は、このようにして表示されたパターンのレンジ方向における長さを目視等により測定することにより、規定の閾値(周知のレーダ方程式に基づいて予め得られる)に対するその縮小度として、レーダ装置の性能の劣化を判定することができる。
【0009】
レーダ装置の性能が劣化した状態では、レーダ表示器60の表示画面に表示されるパターンは、既述のモニタ信号のレベルが低下するため、図5(b)に示すように、理想的なパターンより小さなパターンとなる。
【0010】
なお、本願発明に関連性がある先行技術としては、以下のものがある。
特許文献1には、解読した受信信号に関するデータを記録媒体に記録し、異常の発生時に原因の特定に利用するデータを提示する点に特徴がある「レーダパフォーマンスモニタ装置」が開示されている。
【0011】
特許文献2には、入力された回数及び時間間隔を記録するメモリと、モノパルス方式二次監視レーダから質問信号を受信する受信器と、測定モードに設定されているときにその受信器が質問信号を受信すると、質問信号に対して回数の応答信号を時間間隔で生成する応答発生器と、この応答発生器によって生成された応答信号を送信する送信器とを備えることにより、測角テーブルの生成時間を短縮させる点に特徴がある「レーダパフォーマンスモニタ装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−96612号公報
【特許文献2】特開2008−256407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上述した従来例では、リファレンス信号に応じたパターンの表示がレーダ映像に重畳されて行われるため、船舶に搭載された場合には、航行に支障を来す可能性があった。
本発明は、測位や測距の対象となる目標の位置や方向の如何にかかわらず、運用中に性能の監視を安定に行えるレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明では、制御手段は、目標の測位または測距のためにレーダ装置から送信信号が送信される方向と異なる特定の方向に、前記レーダ装置のパフォーマンスチェックに供される測定信号を送信する。チェック手段は、前記レーダ装置の受信系によって受信された測定信号に基づいて前記パフォーマンスチェックを行う。
すなわち、パフォーマンスチェックは、レーダ装置の空中線系を共用することにより、レーダ装置の空中線系の主ビームが測位あるいは測距の対象外となる方向を向いている期間に送信される測定信号に基づいて行われる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、制御手段は、目標の測位または測距のためにレーダ装置から送信信号が送信される方向と異なる方向に前記レーダ装置のビームが向いているときに、前記レーダ装置の受信系に前記レーダ装置のパフォーマンスチェックに供される測定信号を注入する。チェック手段は、前記受信系によって受信された測定信号に基づいて前記レーダ装置のパフォーマンスチェックを行う。
すなわち、パフォーマンスチェックは、レーダ装置の空中線系の主ビームが測位あるいは測距の対象外となる方向を向いている期間に、そのレーダ装置の受信系に注入される送信される測定信号に基づいて、しかも、レーダ装置の受信系の内、上記と測定信号が注入された段以降の系を介して行われる。
【0016】
請求項3に記載の発明では、送信信号が目標で反射して到来した反射信号に基づいて前記目標の測位あるいは測距を行うレーダ装置において、制御手段は、前記送信信号が送信される方向と異なる特定の方向に、前記レーダ装置のパフォーマンスチェックに供される測定信号を送信する。チェック手段は、前記レーダ装置の受信系によって受信された測定信号に基づいて前記パフォーマンスチェックを行う。
すわなち、パフォーマンスチェックは、レーダ装置の空中線系を共用することにより、レーダ装置の空中線系の主ビームが測位あるいは測距の対象外となる方向を向いている期間に送信される測定信号に基づいて行われる。
【0017】
請求項4に記載の発明では、送信信号が目標で反射して到来した反射信号に基づいて前記目標の測位あるいは測距を行うレーダ装置において、制御手段は、前記送信信号が送信される方向と異なる特定の方向に前記レーダ装置のビームが向いているときに、前記レーダ装置の受信系に前記レーダ装置のパフォーマンスチェックに供される測定信号を与える。チェック手段は、前記受信系によって受信された測定信号に基づいて前記レーダ装置のパフォーマンスチェックを行う。
すなわち、パフォーマンスチェックは、レーダ装置の空中線系の主ビームが測位あるいは測距の対象外となる方向を向いている期間に、そのレーダ装置の受信系に注入される送信される測定信号に基づいて、しかも、レーダ装置の受信系の内、上記と測定信号が注入された段以降の系を介して行われる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来例に比べて構成が簡略化され、かつ測位や測距の対象となる目標に制約が生じることなく、レーダ装置のパフォーマンスチェックが実現される。
また、本発明によれば、レーダ装置の総合的な信頼性が高められる。
【0019】
さらに、本発明によれば、測位や測距の対象となる目標の多様な配置に対する柔軟な適応が可能となり、所望の頻度によるレーダ装置のパフォーマンスチェックが実現される。
また、本発明によれば、操作者の判断に柔軟に適応したパフォーマンスチェックが可能となる。
したがって、本発明が適用されたレーダ装置は、多様な目標の測位や測距が高い精度および頻度で実現され、価格性能比が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】本実施形態の動作を説明する図である。
【図3】パフォーマンスモニタ装置が搭載されたレーダ装置の構成例を示す図である。
【図4】従来のレーダ装置の動作を説明する図(1)である。
【図5】従来のレーダ装置の動作を説明する図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。なお、以下では、図3に示される従来例にも備えられている要素については、本実施形態と従来例との相違を明確とするために、同図3に示す「30」番代、「40」番代、「50」番代の符号を付与することとする。
【0022】
図1において、送受信部10の第1のアンテナ端子および第2のアンテナ端子には、アンテナ31pmt、32の給電点がそれぞれ接続される。送受信部10の受信出力、送信入力、制御入力およびモニタ出力は、それぞれ信号処理部20の対応する入出力端子に接続される。信号処理部20の表示用入出力にはレーダ表示器60が接続される。
【0023】
送受信部10では、上述したアンテナ32の給電点にサーキュレータ51の第1の開口が接続され、そのサーキュレータ51の第2の開口は受信器52を介して信号処理部20の対応する入力に接続される。既述の送信入力には縦続接続された増幅器11t、周波数変換器12t、フィルタ13tが接続され、そのフィルタ13tの出力はスイッチ14の共通接点に接続される。スイッチ14のブレーク接点にはアンテナ31pmtの給電点が接続され、そのスイッチ14のメーク接点は縦続接続された増幅器15および方向性結合器16を介してサーキュレータ51の第3の開口に接続される。方向性結合器16のモニタ端子は検波器41を介して信号処理部20のモニタ入力に接続される。
【0024】
なお、受信器52は、縦続接続された増幅器15r、フィルタ13r、周波数変換器12r、増幅器11rから構成され、既述の増幅器11t、周波数変換器12t、フィルタ13t、増幅器15によって行われる処理とそれぞれ反対の処理を行う。
また、周波数変換器12t、12rの局発入力には、局発部17の対応する出力が接続される。
【0025】
信号処理部20は、以下の要素から構成される。
(1) 受信器52(増幅器11r)に縦続接続されたA/D変換器21
(2) 増幅器11tの前段に相当する信号発生回路22
(3) 検波器41に縦続接続されたピークホールド回路43
(4) スイッチ14および信号発生回路22の制御入力にそれぞれ接続された第1および第2の出力を有する空中線制御回路23
(5) 空中線制御回路23の第3の出力、ピークホールド回路43およびA/D変換器21の出力にそれぞれ接続された3つの入力を有し、かつ既述のレーダ表示器60の入出力端子に接続された信号処理回路24
【0026】
以下、本実施形態の動作を説明する。
信号発生回路22は、所定の中間周波帯のレーダ送信波を生成する。このレーダ送信波は、増幅器11tによって増幅された後、周波数変換器12tによって無線周波数帯のレーダ送信波に変換される。フィルタ13tは、局発部17によって生成された局発信号の成分を抑圧する濾波処理をこのレーダ送信波に施してスイッチ14に引き渡す。
【0027】
空中線制御回路23は、アンテナ32の主ローブの方位角を監視し、その方位がPPI上で図2に示す領域Aを示す期間(以下、「期間A」という。)には、スイッチ14の共通接点を既述のブレーク接点に接続する。したがって、フィルタ13tから出力されたレーダ送信波は、スイッチ14、増幅器15t、方向性結合器16、サーキュレータ51およびアンテナ32を介して送信される。
【0028】
なお、上記領域Aは、一般に、本実施形態に係るレーダ装置が船舶に備えられた場合には、航行上重要である船首方向を含んだ領域に設定される。
このレーダ送信波が周辺の船舶等の物標で反射することによって発生し、アンテナ32に到来した受信波は、サーキュレータ51を介して受信機52に入力され、増幅器15r、フィルタ13r、周波数変換器12rおよび増幅器11rによって中間周波信号に変換される。A/D変換器21は、この中間周波信号を量子化してディジタル信号に変換する。信号処理回路24は、このディジタル信号にクラッタ除去やCFAR(Constant False Alarm Rate)等の信号処理を施した後、レーダ表示器60に引き渡す。
【0029】
レーダ表示器60は、このようにして引き渡されたディジタル信号で示されるレーダ画像を既述の領域A上にPPI表示する。
一方、方向性結合器16は、スイッチ14および増幅器15tを介して与えられる既述のレーダ送信波の一部(以下、「モニタ信号」という。)を微少な電力で抽出する。
【0030】
検波器41は、このモニタ信号を検波することにより、上記レーダ送信波の送信電力を電圧(または電流)の瞬時値として示すパルス信号を生成する。ピークホールド回路43は、そのパルス信号の瞬時値の最大値を順次保持することにより、既述のレーダ送信波の電力を示す直流情報を生成し、その直流情報を信号処理回路24に引き渡す。信号処理回路24は、この直流情報をレーダ表示器60に引き渡す。
【0031】
レーダ表示器60は、直流情報で示される既述の受信波の電力を示すレーダ画像と、レーダ送信波の送信電力がとるべき規定の初期値を示す画像とをスキャン(スイープ)方向で対応させて既述の領域AにPPI表示する。
【0032】
また、空中線制御回路23は、アンテナ32の主ローブの方位角がPPI上で図2に斜線が付された領域Bを示す期間(以下、「期間B」という。)には、スイッチ14の共通接点を既述のメイク接点に接続する。信号発生回路22、増幅器11t、周波数変換器12tおよびフィルタ13tは、このような期間Bにも、期間Aと同様に連係することにより既述のレーダ送信波をスイッチ14に供給し続ける。したがって、フィルタ13tから出力されたレーダ送信波は、アンテナ32からは送信されず、このアンテナ32に代わるアンテナ31pmtからリファレンス信号として送信される。
【0033】
なお、このようなリファレンス信号については、以下の通りに生成されてもよい。
(a) 期間Aにアンテナ32から送信されるレーダ送信波の生成時に用いられる変調処理と異なる変調方式に基づいて生成される。
(b) 性能判定の対象となる受信機52の入力飽和レベルより低く、その受信機52の有能雑音電力のレベルより高いレベル(例えば、受信機52の入力端において−70dBm)で生成される。
【0034】
アンテナ31pmTから送信されたリファレンス信号の一部は、アンテナ32に到来する。
アンテナ32に到来したリファレンス信号は、サーキュレータ51、増幅器15r、フィルタ13r、周波数変換器12rおよび増幅器11rによって中間周波信号に変換され、さらに、A/D変換器21によってディジタル信号に変換されて信号処理回路24に引き渡される。
【0035】
信号処理回路24は、このようにして引き渡されたディジタル信号を処理することにより、アンテナ32に到来したリファレンス信号のレベルを求め、そのレベルがとるべき理想的な値である閾値との差の適否を判別することにより、本実施形態に係るレーダ装置の性能の劣化(低下)を識別する。信号処理回路24は、レーダ表示器60によって表示されるPPI表示と共に、所定の配置および形式でこの識別の結果を表示する。
【0036】
すなわち、本実施形態に係るレーダ装置は、船舶等の移動体に搭載された場合には、航行(移動)中に識別されるべき船舶、島、陸等の目標が位置しない方向にアンテナ32の主ローブの方向がある期間Bは、性能劣化の有無の判定(パフォーマンスチェック)を行うが、このような目標の測位や測距に供されるレーダ送信波の送信は行わない。
【0037】
したがって、本実施形態によれば、上記の航行や移動の過程でレーダ装置が連続的に運用される場合であっても、パフォーマンスチェックが安定に行われ、レーダ装置の性能の確認と総合的な信頼性の確保とが可能となる。
【0038】
なお、本発明は、船舶レーダに限定されず、レーダ送信波の送受信に併せて、リファレンス信号の受信に共用可能な空中線系が備えられるならば、如何なるレーダ(CWレーダを含む。)にも適用可能である。
【0039】
本実施形態では、アンテナ32の主ローブの方向は、全方向に亘ってサイクリックにスキャンされなくてもよく、例えば、測位や測距の対象となる目標がある方向とこのような目標がない方向との幅や個数の如何にかかわらず、これらの方向が既知であるならば、動的なビームフォーミングにより切り替えられてもよい。
本実施形態では、既述の領域Bは、船尾方向等に予め決められた領域でなくてもよく、例えば、操作者が行うレーダ表示器60の操作に応じて信号処理回路24、空中線制御回路23およびスイッチ14が連係することによって、どのように設定され、あるいは変更されてもよい。また、このような領域Bは、異なる複数の方向に個別に設定された複数の領域であってもよい。
【0040】
本実施形態では、このような領域Bおよびこれに代わる複数の領域は、例えば、先行して行われたスキャンの過程で信号処理回路24によって、測位や測距の対象となる目標がない方向が特定され、これらの特定された個々の方向にある領域として逐次更新されてもよい。
本実施形態は、信号発生回路22にマグネトロンが搭載されたレーダ装置に限定されず、レーダ送信波の生成が固体発振回路その他の如何なる方式の回路によって生成されるレーダ装置にも、適用可能である。
【0041】
本実施形態では、パフォーマンスチェックの対象は、レーダ送信波の送信電力だけではなく、アンテナ32およびその給電系の利得や指向性に併せて、受信機52の感度を含むレーダ装置の総合的な性能となっている。しかし、本発明では、アンテナ32およびその給電系の利得や指向性がパフォーマンスチェックの対象とならなくてもよい場合には、例えば、アンテナ31pmtを備えることなく構成され、かつ図1に二点鎖線で示されるように、リファレンス信号がスイッチ14のブレーク接点からサーキュレータ51を介して受信器52(増幅器15r)に供給されてもよい。
本実施形態では、信号発生回路22がレーダ送信波およびリファレンス信号の信号源を兼ねているが、このようなリファレンス信号は、信号発生回路22とは別に備えられた信号源によって生成されてもよい。
【0042】
本実施形態では、パフォーマンスチェックによって検出された性能の低下は、文字情報に限定されず、音や光により操作者に通知されてもよく、あるいは所定の通信リンク(コンピュータネットワークを含む。)を介して遠隔地に通知されてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態が可能であり、構成要素の一部全てに如何なる改良が施されてもよい。
以下、本願に開示された発明を整理し、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段」の欄に準じた形式で列記する。
【0043】
[請求項1]
目標の測位または測距のためにレーダ装置から送信信号が送信される方向と異なる特定の方向に、前記レーダ装置のパフォーマンスチェックに供される測定信号を送信する制御手段と、
前記レーダ装置の受信系によって受信された測定信号に基づいて前記パフォーマンスチェックを行うチェック手段と
を備えたことを特徴とするパフォーマンスモニタ装置。
このような構成のパフォーマンスモニタ装置では、制御手段は、目標の測位または測距のためにレーダ装置から送信信号が送信される方向と異なる特定の方向に、前記レーダ装置のパフォーマンスチェックに供される測定信号を送信する。チェック手段は、前記レーダ装置の受信系によって受信された測定信号に基づいて前記パフォーマンスチェックを行う。
すなわち、パフォーマンスチェックは、レーダ装置の空中線系を共用することにより、かつレーダ装置の空中線系の主ビームが測位あるいは測距の対象外となる方向を向いている期間に送信される測定信号に基づいて行われる。
したがって、従来例に比べて構成が簡略化され、かつ測位や測距の対象となる目標に制約が生じることなく、レーダ装置のパフォーマンスチェックが実現される。
【0044】
[請求項2]
目標の測位または測距のためにレーダ装置から送信信号が送信される方向と異なる方向に前記レーダ装置のビームが向いているときに、前記レーダ装置の受信系に前記レーダ装置のパフォーマンスチェックに供される測定信号を注入する制御手段と、
前記受信系によって受信された測定信号に基づいて前記レーダ装置のパフォーマンスチェックを行うチェック手段と
を備えたことを特徴とするパフォーマンスモニタ装置。
このような構成のパフォーマンスモニタ装置では、制御手段は、目標の測位または測距のためにレーダ装置から送信信号が送信される方向と異なる方向に前記レーダ装置のビームが向いているときに、前記レーダ装置の受信系に前記レーダ装置のパフォーマンスチェックに供される測定信号を注入する。チェック手段は、前記受信系によって受信された測定信号に基づいて前記レーダ装置のパフォーマンスチェックを行う。
すなわち、パフォーマンスチェックは、レーダ装置の空中線系の主ビームが測位あるいは測距の対象外となる方向を向いている期間に、そのレーダ装置の受信系に注入される送信される測定信号に基づいて、しかも、レーダ装置の受信系の内、上記と測定信号が注入された段以降の系を介して行われる。
したがって、従来例に比べて構成が簡略化され、かつ測位や測距の対象となる目標に制約が生じることなく、レーダ装置のパフォーマンスチェックが実現される。
【0045】
[請求項3]
請求項1または請求項2に記載のパフォーマンスモニタ装置において、
前記制御手段は、
前記レーダ装置に備えられた前記送信信号の信号源が生成する信号を前記測定信号とする
ことを特徴とするパフォーマンスモニタ装置。
このような構成のパフォーマンスモニタ装置では、請求項1または請求項2に記載のパフォーマンスモニタ装置において、前記制御手段は、前記レーダ装置に備えられた前記送信信号の信号源が生成する信号を前記測定信号とする。
このような構成のパフォーマンスモニタ装置では、パフォーマンスチェックに供される測定信号は、専用の信号源が備えられなく得られる。
すなわち、請求項1、2に記載のパフォーマンスモニタ装置に比べて、構成が簡略化され、消費電力およびコストの節減が図られる。
したがって、レーダ装置の総合的な信頼性が高められる。
【0046】
[請求項4]
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のパフォーマンスモニタ装置において、
前記制御手段は、
前記測位あるいは測距の対象となる目標が無い方向を前記特定の方向とする
ことを特徴とするパフォーマンスモニタ装置。
このような構成のパフォーマンスモニタ装置では、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のパフォーマンスモニタ装置において、前記制御手段は、前記測位あるいは測距の対象となる目標が無い方向を前記特定の方向とする。
すなわち、パフォーマンスチェックに供される測定信号は、上記測位や測距の対象となる目標が無い方向にレーダ装置の空中線系の主ビームが向いている期間に、そのレーダ装置の受信系に与えられ、あるいは注入される。
したがって、レーダ装置のパフォーマンスチェックは、上記目標の多様な配置に柔軟に適応し、かつ所望の頻度で実現される。
【0047】
[請求項5]
請求項1ないし請求項4に記載のパフォーマンスモニタ装置において、
前記制御手段は、
操作者の指示に応じて前記特定の方向を設定する
ことを特徴とするパフォーマンスモニタ装置。
このような構成のパフォーマンスモニタ装置では、請求項1ないし請求項4に記載のパフォーマンスモニタ装置において、前記制御手段は、操作者の指示に応じて前記特定の方向を設定する。
すなわち、パフォーマンスチェックは、操作者が指示する特定の方向にレーダ装置の空中線系の主ビームが向いているときに行われる。
したがって、操作者の判断に柔軟に適応したパフォーマンスチェックが可能となる。
【0048】
[請求項6]
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載のパフォーマンスモニタ装置において、
前記制御手段は、
操作者の指示に応じて前記特定の方向の範囲を設定する
ことを特徴とするパフォーマンスモニタ装置。
このような構成のパフォーマンスモニタ装置では、請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載のパフォーマンスモニタ装置において、前記制御手段は、操作者の指示に応じて前記特定の方向の範囲を設定する。
すなわち、パフォーマンスチェックが行われる期間は、操作者が指示する特定の方向の範囲内にレーダ装置の空中線系の主ビームが向いている期間として指定される。
したがって、操作者の判断に柔軟に適応したパフォーマンスチェックが可能となる。
【0049】
[請求項7]
送信信号が目標で反射して到来した反射信号に基づいて前記目標の測位あるいは測距を行うレーダ装置において、
前記送信信号が送信される方向と異なる特定の方向に、前記レーダ装置のパフォーマンスチェックに供される測定信号を送信する制御手段と、
前記レーダ装置の受信系によって受信された測定信号に基づいて前記パフォーマンスチェックを行うチェック手段と
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
このような構成のレーダ装置では、送信信号が目標で反射して到来した反射信号に基づいて前記目標の測位あるいは測距を行うレーダ装置において、制御手段は、前記送信信号が送信される方向と異なる特定の方向に、前記レーダ装置のパフォーマンスチェックに供される測定信号を送信する。チェック手段は、前記レーダ装置の受信系によって受信された測定信号に基づいて前記パフォーマンスチェックを行う。
すなわち、パフォーマンスチェックは、レーダ装置の空中線系を共用することにより、レーダ装置の空中線系の主ビームが測位あるいは測距の対象外となる方向を向いている期間に送信される測定信号に基づいて行われる。
したがって、従来例に比べて構成が簡略化され、かつ測位や測距の対象となる目標に制約が生じることなく、パフォーマンスチェックが実現される。
【0050】
[請求項8]
送信信号が目標で反射して到来した反射信号に基づいて前記目標の測位あるいは測距を行うレーダ装置において、
前記送信信号が送信される方向と異なる特定の方向に前記レーダ装置のビームが向いているときに、前記レーダ装置の受信系に前記レーダ装置のパフォーマンスチェックに供される測定信号を注入する制御手段と、
前記受信系によって受信された測定信号に基づいて前記レーダ装置のパフォーマンスチェックを行うチェック手段と
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
このような構成のレーダ装置では、送信信号が目標で反射して到来した反射信号に基づいて前記目標の測位あるいは測距を行うレーダ装置において、制御手段は、前記送信信号が送信される方向と異なる特定の方向に前記レーダ装置のビームが向いているときに、前記レーダ装置の受信系に前記レーダ装置のパフォーマンスチェックに供される測定信号を与える。チェック手段は、前記受信系によって受信された測定信号に基づいて前記レーダ装置のパフォーマンスチェックを行う。
すなわち、パフォーマンスチェックは、レーダ装置の空中線系の主ビームが測位あるいは測距の対象外となる方向を向いている期間に、そのレーダ装置の受信系に注入される送信される測定信号に基づいて、しかも、レーダ装置の受信系の内、上記と測定信号が注入された段以降の系を介して行われる。
したがって、従来例に比べて構成が簡略化され、かつ測位や測距の対象となる目標に制約が生じることなく、レーダ装置のパフォーマンスチェックが実現される。
【0051】
[請求項9]
請求項7または請求項8に記載のレーダ装置において、
前記制御手段は、
前記送信信号の信号源が生成する信号を前記測定信号とする
ことを特徴とするレーダ装置。
このような構成のレーダ装置では、請求項7または請求項8に記載のレーダ装置において、前記制御手段は、前記レーダ装置に備えられた前記送信信号の信号源が生成する信号を前記測定信号とする。
すなわち、請求項1、2に記載のパフォーマンスモニタ装置に比べて、構成が簡略化され、消費電力およびコストの節減が図られる。
したがって、レーダ装置の総合的な信頼性が高められる。
【0052】
[請求項10]
請求項7ないし請求項9の何れか1項に記載のレーダ装置において、
前記制御手段は、
前記測位あるいは測距の対象となる目標が無い方向を前記特定の方向とする
ことを特徴とするレーダ装置。
このような構成のレーダ装置では、請求項7ないし請求項9の何れか1項に記載のレーダ装置において、前記制御手段は、前記測位あるいは測距の対象となる目標が無い方向を前記特定の方向とする。
すなわち、パフォーマンスチェックに供される測定信号は、上記測位や測距の対象となる目標が無い方向にレーダ装置の空中線系の主ビームが向いている期間に、そのレーダ装置の受信系に与えられ、あるいは注入される。
したがって、レーダ装置のパフォーマンスチェックは、上記目標の多様な配置に柔軟に適応し、かつ所望の頻度で実現される。
【0053】
[請求項11]
請求項7ないし請求項10に記載のレーダ装置において、
前記制御手段は、
操作者の指示に応じて前記特定の方向を設定する
ことを特徴とするレーダ装置。
このような構成のレーダ装置では、請求項7ないし請求項10に記載のレーダ装置において、前記制御手段は、操作者の指示に応じて前記特定の方向を設定する。
すなわち、パフォーマンスチェックは、操作者が指示する特定の方向にレーダ装置の空中線系の主ビームが向いているときに行われる。
したがって、操作者の判断に柔軟に適応したパフォーマンスチェックが可能となる。
【0054】
[請求項12]
請求項7ないし請求項11の何れか1項に記載のレーダ装置において、
前記制御手段は、
操作者の指示に応じて前記特定の方向の範囲を設定する
ことを特徴とするレーダ装置。
このような構成のレーダ装置では、請求項7ないし請求項11の何れか1項に記載のレーダ装置において、前記制御手段は、操作者の指示に応じて前記特定の方向の範囲を設定する。
すなわち、パフォーマンスチェックが行われる期間は、操作者が指示する特定の方向の範囲内にレーダ装置の空中線系の主ビームが向いている期間として指定される。
したがって、操作者の判断に柔軟に適応したパフォーマンスチェックが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
10 送受信部
11r,11t,15r,15t,42 増幅器
12r,12t 周波数変換器
13r,13t フィルタ
14 スイッチ
16 方向性結合器
17 局発部
20 信号処理部
21 A/D変換器
22 信号発生回路
23,53 空中線制御回路
24 信号処理回路
31pmr,31pmt,32 アンテナ
40 パフォーマンスモニタ
41 検波器
43 ピークホールド回路
44 制御回路
45 VCO
46 減衰器
50 レーダ本体
51 サーキュレータ
52 受信器
54 変調回路
55 マグネトロン
60 レーダ表示器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標の測位または測距のためにレーダ装置から送信信号が送信される方向と異なる特定の方向に、前記レーダ装置のパフォーマンスチェックに供される測定信号を送信する制御手段と、
前記レーダ装置の受信系によって受信された測定信号に基づいて前記パフォーマンスチェックを行うチェック手段と
を備えたことを特徴とするパフォーマンスモニタ装置。
【請求項2】
目標の測位または測距のためにレーダ装置から送信信号が送信される方向と異なる方向に前記レーダ装置のビームが向いているときに、前記レーダ装置の受信系に前記レーダ装置のパフォーマンスチェックに供される測定信号を注入する制御手段と、
前記受信系によって受信された測定信号に基づいて前記レーダ装置のパフォーマンスチェックを行うチェック手段と
を備えたことを特徴とするパフォーマンスモニタ装置。
【請求項3】
送信信号が目標で反射して到来した反射信号に基づいて前記目標の測位あるいは測距を行うレーダ装置において、
前記送信信号が送信される方向と異なる特定の方向に、前記レーダ装置のパフォーマンスチェックに供される測定信号を送信する制御手段と、
前記レーダ装置の受信系によって受信された測定信号に基づいて前記パフォーマンスチェックを行うチェック手段と
を備えたことを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
送信信号が目標で反射して到来した反射信号に基づいて前記目標の測位あるいは測距を行うレーダ装置において、
前記送信信号が送信される方向と異なる特定の方向に前記レーダ装置のビームが向いているときに、前記レーダ装置の受信系に前記レーダ装置のパフォーマンスチェックに供される測定信号を注入する制御手段と、
前記受信系によって受信された測定信号に基づいて前記レーダ装置のパフォーマンスチェックを行うチェック手段と
を備えたことを特徴とするレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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