説明

パラジウム−金触媒の調製

チタニアの押出し品を含むパラジウム−金触媒を調製するための方法が開示される。チタニアの押出し品は、カルボキシアルキルセルロースとヒドロキシアルキルセルロースを押出し助剤として用いることによって製造される。このチタニアの押出し品は、改善された加工性および/または機械的性質を有する。焼成した後に、押出し品はパラジウム−金触媒のための担体として用いられる。その触媒は、酢酸の存在下でエチレンを酸素で酸化することによって酢酸ビニルを製造するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタニアの押出し品を含むパラジウム−金触媒を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パラジウム−金触媒は、酢酸の存在下でエチレンまたはプロピレンを酸化して酢酸ビニルまたは酢酸アリルを製造するのに有用である。通常、担持されたパラジウム−金触媒を用いて蒸気相中でアセトキシル化が行われる。チタニアの担体を含むパラジウム−金触媒が公知である(米国特許6022823号、米国特許出願公開2008/0146721号および2008/0281122号、同時係属出願11/801935号(2007年5月11日提出)。アセトキシル化は好ましくは固定床反応器において行われる。
【0003】
市販用としては、チタニアは細かい粉末として製造される。固定床反応に適した触媒を調製するために、チタニアの粉末を球状物、タブレット、押出し物、その他同種類のものなどの粒子に成形する必要がある。チタニアの押出し品を製造するための方法を開発することにおける過去の多くの努力にもかかわらず、それらの多くは、チタニアの加工性の低さ故に、工業的な製造のためには適切なものではない。従って、パラジウム−金触媒のための担体として用いることのできるチタニアの押出し品を製造するための新たなプロセスを開発する継続した必要性が存在する(例えば、2009年12月16日に提出された同時係属出願の整理番号01−2767A(出願番号はまだ付与されていない)を参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許6022823号
【特許文献2】米国特許出願公開2008/0146721号
【特許文献3】米国特許出願公開2008/0281122号
【発明の概要】
【0005】
本発明はパラジウム−金触媒を調製するための方法である。この方法は、(a)チタニア、カルボキシアルキルセルロース、およびヒドロキシアルキルセルロースを混合し、それによりドウ(dough:練り粉)を形成すること、(b)ドウを押出し、それにより押出し品を製造すること、(c)押出し品を焼成し、それにより焼成された押出し品を製造すること、(d)焼成された押出し品にパラジウム化合物と金化合物を含浸させ、それにより含浸された押出し品を製造すること、および(e)含浸された押出し品を焼成し、それによりパラジウム−金触媒を製造することを含む。本発明はまた、パラジウム−金触媒の存在下でエチレン、酸素、および酢酸を反応させることを含む、酢酸ビニルを製造するための方法を含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、チタニアの担体を含むパラジウム−金触媒を調製するための方法である。この方法は、チタニア、カルボキシアルキルセルロース、およびヒドロキシアルキルセルロースを混合し、それによりドウを形成することを含む。適当なチタニアは、ルチル、アナターゼ、板チタン石(ブローカイト:brookite)、またはこれらの混合物とすることができる。好ましくは、チタニアはアナターゼである。チタニアは、クロリド法、スルフェート法、熱水法、または四塩化チタンの火炎加水分解法によって製造することができる。適当なチタニアの例としては、Millennium Inorganic Chemicals社のTiONA(登録商標)、DT−51、DT−52、DT−51D、DT−40、およびDT−20がある。
【0007】
セルロースは、スキームIで示すように、式(C10の有機化合物であり、β−1,4−結合の直鎖からなる多糖である(ここで、n=50〜20000)。セルロースは緑色植物の一次細胞膜の構造成分である。セルロースは多くの誘導体に転化することができる。
【0008】
【化1】

【0009】
この方法はカルボキシアルキルセルロースを用いる。カルボキシアルキルセルロースは、スキームIIで示すように、セルロースの主鎖を構成するグルコピラノースモノマーのヒドロキシル基の幾つかに結合したカルボキシアルキル基を有するセルロースの誘導体である(ここで、R=H、カルボキシアルキルであり、m=50〜20000である)。それはしばしば、そのナトリウム塩であるナトリウムカルボキシアルキルセルロースとして用いられる。カルボキシアルキルセルロースの機能特性は、セルロース構造の置換の程度(すなわち、どれだけ多くのヒドロキシル基が置換されているか)、さらにはセルロースの主鎖の長さ、および置換基の集合の程度に依存する。セルロース誘導体におけるグルコースの単位当りの置換ヒドロキシル基の平均の数が、置換度(DS)とされる。完全な置換は3のDSを与えるだろう。好ましくは、カルボキシメチルセルロースが用いられる。好ましいカルボキシメチルセルロースは0.5〜0.9の置換度を有する(D.B.Braun and M.R.Rosen,Rheology Modifiers Handbook: Practical Use and Applications(2000) William Andrew Publishing,pp.109−131)。カルボキシメチルセルロースは押出し助剤として知られている(米国特許5884138号および6709570号、米国特許出願公開2008/0146721号)。
【0010】
【化2】

【0011】
この方法はヒドロキシアルキルセルロースも用いる。ヒドロキシアルキルセルロースはセルロースの誘導体であり、これにおいては、反復グルコース単位におけるヒドロキシル基の幾つかがヒドロキシアルキル化されている。ヒドロキシアルキルセルロースにおけるヒドロキシル基の幾つかは、アルキル化されていてもよい。ヒドロキシアルキルセルロースの典型的な構造はスキームIIで示され、ここで、R=H、アルキル、ヒドロキシアルキルであり、m=50〜20000である。
【0012】
好ましくは、ヒドロキシアルキル基は2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、およびこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、ヒドロキシアルキルセルロースはアルキル化されている。最も好ましくは、ヒドロキシアルキルセルロースは、メチル2−ヒドロキシエチルセルロース、メチル2−ヒドロキシプロピルセルロース、およびこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、メチルの置換度は1〜2、より好ましくは1.5〜1.8であり、そして2−ヒドロキシエチルまたは2−ヒドロキシプロピルのモル置換度は0.1〜0.3である。1.4のメチル置換度と0.21のヒドロキシプロピルのモル置換度を有する、The Dow Chemical Companyの製品であるMETHOCEL(商標)K4Mセルロース誘導体が、好ましいものとして用いられる。ヒドロキシアルキルセルロースは押出し助剤として知られている(米国特許5884138号、6316383号、および6709570号)。
【0013】
チタニアに対するカルボキシアルキルセルロースの重量比は、好ましくは0.2:100から5:100まで、より好ましくは0.5:100から4:100まで、最も好ましくは1:100から3:100までである。チタニアに対するヒドロキシアルキルセルロースの重量比は、好ましくは0.1:100から2.5:100まで、より好ましくは0.2:100から2:100まで、最も好ましくは0.5:100から1:100までである。カルボキシアルキルセルロース対ヒドロキシアルキルセルロースの重量比は、好ましくは5:1から1:2まで、より好ましくは3:1から1:1までである。
【0014】
この方法は、チタニア、カルボキシアルキルセルロース、およびヒドロキシアルキルセルロースを混合し、それによりドウを形成することを含む。必要であれば、溶剤を用いてもよい。適当な溶剤としては、水、アルコール、エーテル、エステル、アミド、芳香族化合物、ハロゲン化化合物、その他同種類のもの、およびこれらの混合物がある。好ましい溶剤は水とアルコールである。
【0015】
チタニアの供給源としてチタニアゾルを用いてもよい。チタニアゾルは、液体中にあるチタニア粒子のコロイド懸濁液である。チタニアゾルは、チタニアの先駆物質を加水分解することによって調製することができる。適当なチタニアの先駆物質としては、チタニウム塩、ハロゲン化チタニウム、チタニウムアルコキシド、オキシハロゲン化チタニウム、その他同種類のものがある。
【0016】
この方法は、押出しと呼ばれる操作によって押出し品を製造するために、ドウを押出すことを含む。押出しは、ドウがダイまたはオリフィス(孔口)から押出されて、一定の断面を有する長尺の物体を形成する加工処理である。押出しは通常、プラスチックや食品を加工処理したり、吸着剤、触媒、または触媒の担体を形成するために用いられる。任意の慣用の押出し機を用いてもよい。適当なスクリュー式の押出し機は「Particle Size Enlargement(粒子サイズの増大)」 Handbook of Powder Technology,vol.1(1980)pp.112−22に記載されている。
【0017】
カルボキシアルキルセルロースとヒドロキシアルキルセルロースは押出し助剤として用いられる。押出し助剤は混合、つき混ぜ、および押出しの操作に役立ち、そして圧潰強度、表面積、細孔サイズ、または細孔容積のような、押出し品の機械的および/または物理的性質を改善するだろう。チタニア、カルボキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロースを含む押出し品は滑らかな外表面を有する。それらは、成形、乾燥、および焼成される間に互いに粘着しにくく、このことは大規模生産に適している。さらに、カルボキシアルキルセルロースとヒドロキシアルキルセルロースの組み合わせは「羽毛化(feathering)」を最小限にする。「羽毛化」という用語は、押出し品が、滑らかな外表面をもつのではなく、その表面で亀裂を呈し、そこで押出し品の小さな薄片すなわち「羽毛」が表面から分離することを意味する。「羽毛化」によって貴重な材料の損失が生じるだけでなく、押出し品の物理的強度も損なわれがちとなる。
【0018】
ドウを形成するために、その他の押出し助剤を用いてもよい。その他の適当な押出し助剤としては、アルキルアミン、カルボン酸、アルキルアンモニウム化合物、アミノアルコール、澱粉、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アミノ酸)、ポリエーテル、ポリ(テトラヒドロフラン)、金属カルボキシレート、その他同種類のもの、およびこれらの混合物がある。好ましいポリ(アルキレンオキシド)はポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーである。有機押出し助剤は通常は焼成によって除去される。
【0019】
押出し品は場合により、成形された後に乾燥される。乾燥の操作によって、押出し品から溶剤の少なくとも一部が除去される。乾燥の操作は、大気圧または減圧下で30〜200℃において行なうことができる。乾燥は空気中または不活性雰囲気中で生じるだろう。場合により、押出し品が割れるか、あるいは弱くならないように、乾燥温度を緩やかに上昇させるのが好ましい。
【0020】
この方法は、押出し品を焼成し、それにより焼成された押出し品を製造することを含む。好ましくは、焼成は酸素を含有するガス中で行われ、それにより押出し品の中に含まれる有機物質(例えば残留溶剤や押出し助剤)を焼き飛ばす。焼成は400〜1000℃、より好ましくは450〜800℃、最も好ましくは650〜750℃において行なうことができる。場合により、押出し品を最初に不活性雰囲気(例えば窒素、ヘリウム)中で焼成することによって押出し品の中に含まれる有機化合物を熱分解し、次いで酸素含有ガス中で有機物質を焼き飛ばすのが有益である。一般に、焼成された後の焼成押出し品は0.5重量%未満の炭素を含む。好ましくは、それは0.1重量%未満の炭素を含む。
【0021】
この方法は、焼成された押出し品にパラジウム化合物と金化合物を含浸させ、それにより含浸された押出し品を製造することを含む。適当なパラジウム化合物としては、塩化パラジウム、塩化パラジウム酸ナトリウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、その他同種類のもの、およびこれらの混合物がある。適当な金化合物としては、塩化金、テトラクロロ金酸、テトラクロロ金酸ナトリウム、その他同種類のもの、およびこれらの混合物がある。
【0022】
含浸された押出し品は、0.1重量%〜3重量%のパラジウムと0.1重量%〜3重量%の金を含んでいてもよく、そして5:1〜1:3の範囲内のパラジウム対金の重量比を有していてもよい。より好ましくは、含浸された押出し品は、0.5重量%〜1.5重量%のパラジウムと0.25重量%〜0.75重量%の金を含む。
【0023】
好ましくは、押出し品に含浸を行っている間に、押出し品に定着剤を添加してもよい。定着剤は、パラジウム化合物と金化合物が押出し品に結合するのを助ける。適当な定着剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウム化合物、例えば、それらの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、メタケイ酸塩、その他同種類のもの、およびこれらの混合物がある。
【0024】
含浸された押出し品を製造するために、いかなる適当な含浸方法を用いてもよい。焼成された押出し品に、同時に、または連続的に、パラジウム化合物と金化合物、そして場合により定着剤を含浸してもよい。好ましくは、それには水溶液が含浸されるが、他の含浸用溶媒を用いてもよい。
【0025】
好ましくは、押出し品から全てのハロゲン化物(例えば塩化物)を除去するために、含浸された押出し品は水またはその他の溶剤で洗浄される。
場合により、この方法は、含浸された押出し品を乾燥することを含む。主として溶剤の少なくとも一部を除去するために、典型的には、含浸された押出し品を大気圧または減圧下で50〜150℃において乾燥することができる。乾燥は、大気圧または減圧下で空気中または不活性ガス中で行うことができる。場合により、乾燥温度をゆっくり上昇させて、押出し品がその機械的強度を失うのを防ぐことが重要である。
【0026】
この方法は、パラジウム−金触媒を製造するために、含浸された押出し品を(好ましくは最初にそれを乾燥した後に)焼成することを含む。一般に、含浸された押出し品の焼成は、高温において非還元性雰囲気中で行われる。好ましくは、含浸された押出し品の焼成は、150〜600℃の温度において行われる。焼成のために用いられる適当な非還元性ガスとしては、ヘリウム、窒素、アルゴン、ネオン、酸素、空気、二酸化炭素、その他同種類のもの、およびこれらの混合物のような不活性ガスまたは酸化性ガスがある。好ましくは、焼成は窒素、酸素、または空気、またはこれらの混合物の雰囲気中で行われる。
【0027】
焼成の工程によって得られたパラジウム−金触媒は、好ましくは化学的に還元され、それにより還元されたパラジウム−金触媒が生成される。還元は通常、パラジウム−金触媒を還元剤と接触させることによって行われる。適当な還元剤としては、水素、一酸化炭素、炭化水素類、オレフィン類、アルデヒド類、アルコール類、ヒドラジン、その他同種類のもの、およびこれらの混合物がある。水素、エチレン、プロピレン、アルカリヒドラジンおよびアルカリホルムアルデヒドは好ましい還元剤であり、そしてエチレンと水素は特に好ましい。還元のために用いられる温度は20〜700℃の範囲とすることができる。水素が還元剤である場合、水素と他のガス(例えばアルゴン、ヘリウム、窒素、その他同種類のもの)を含むガス混合物が通常用いられる。水素を用いる場合の還元温度は、好ましくは300〜700℃の範囲であり、より好ましくは450〜550℃の範囲である。
【0028】
本発明に従って調製されたパラジウム−金触媒はエチレンやプロピレンのようなオレフィンのアセトキシル化のために用いることができて、それにより酢酸ビニルまたは酢酸アリルのようなアセトキシル化オレフィンが生成する。好ましくは、還元されたパラジウム−金触媒に活性剤を添加することによって製造することのできる活性化(promoted)パラジウム−金触媒が、アセトキシル化反応において用いられる。活性剤はアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物であり、それらの例は水酸化物類、酢酸塩類、硝酸塩類、炭酸塩類、およびカリウム、ナトリウム、セシウム、マグネシウム、バリウム、およびその他同種類のものの重炭酸塩類である。カリウム塩は好ましい活性剤である。活性剤の含有量は触媒の0〜15重量%、好ましくは1.5〜10重量%の範囲としてよい。
【0029】
本発明はまた、酢酸ビニルを調製するための方法を含み、この方法は、エチレン、酸素、および酢酸を含む供給物を、パラジウム−金触媒の存在下で、好ましくは還元されたパラジウム−金触媒の存在下で、より好ましくは活性化パラジウム−金触媒の存在下で反応させることを含む。
【0030】
供給物は典型的には、20〜70モル%のエチレン、2〜8モル%の酸素、および2〜20モル%の酢酸を含む。供給物は希釈剤を含んでいてもよい。適当な希釈剤の例としては、プロパン、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、その他同種類のもの、およびこれらの混合物がある。
【0031】
反応は一般に、100〜250℃、好ましくは125〜200℃の範囲の温度、および15〜500psigの圧力下で行われる。
【実施例】
【0032】
実施例1
DT−51チタニア(2500g)、高純度のWALOCEL(商標)Cナトリウムカルボキシメチルセルロース(The Dow Chemical Company、52.5g)、ポリ(エチレンオキシド)(MW=100000、35g)、およびセルロース誘導体(METHOCEL(商標)K4M、25g)を、アイリッヒ(Eirich)ミキサーの中で5分間混合した。水(1005g)、水酸化アンモニウム水溶液(14.8M、100g)、およびベンジルアルコール(17.5g)をミキサーの中に加えた。それらを「低速度」の設定で5分間混合し、次いで、「高速度」の設定で10分間混合した。製造されたドウを、1/8インチの直径を有する25個の穴のあるダイ前面を備えたボノ(Bonnot)2インチ押出し機(The Bonnot Company)のホッパーの中に置いた。約0.25kg/分の速度で押出しを行った。製造された押出し品は滑らかな外表面を有し、相互の粘着の発生は最小限となった。羽毛化はほとんど認められなかった。
【0033】
押出し品を収集トレーの上に1インチの深さに積み重ね、そして空気中で80℃において12時間乾燥した。次いでそれらを空気中で焼成した。焼成温度を室温から500℃まで2℃/分の速度で上げ、500℃で2時間保持し、500℃から700℃まで10℃/分の速度で上げ、700℃で3時間保持し、次いで室温まで下げた。
【0034】
焼成されたチタニアの押出し品の幾つかの物理的性質を表1に示す。焼成されたチタニアの押出し品の圧潰強度を、チャテロン(Chatillon)圧潰強度分析器(モデルDPP50)を用いて測定した。25回の測定で破損するのに要した力を平均して、報告された値が得られた。40gの焼成された押出し品を100mLのメスシリンダー(1インチの呼称外径)の中に置くことによって、かさ密度を測定した。見掛けの容積が変化しなくなるまでメスシリンダーを軽くたたき、次いで、この値をかさ密度を計算するための質量に分割した。第二のメスシリンダーの中で50mLの水にペレットを加え、次いで全ての空隙が充填されるまで軽くたたくことによって空隙率を測定した。水の全容積から最終的な水の高さを引き算し、そしてペレットを個々に取り出すことによって、水が占める空隙容積を決定した。篩バスケットを通して混合物を注ぎ、過剰な水を除去するために振り動かし、次いで湿った押出し品を秤量することによって、トータルの細孔容積を決定した。最初の40gの押出し品を上回る質量の増大量を水の密度で割った値を、細孔容積の測定値とした。
【0035】
比較例2
表1に示す配合を用いて実施例1の手順を繰り返した。押出し品は押出し機のダイ前面を出るときに垂れる状態であり、また収集トレーの上に置くときに互いに粘着する傾向があった。
【0036】
比較例3
表1に示す配合を用いて実施例1の手順を繰り返した。押出し品は押出し機のダイ前面を出るときに垂れる状態であり、また収集トレーの上に置くときに互いに粘着する傾向があった。
【0037】
【表1】

【0038】
比較例4
実施例1の手順を繰り返したが、ただし、配合は次のようであった:DT−51(2000g)、TAMOL(商標)1124分散剤(The Dow Chemical Companyからの親水性高分子電解質コポリマー、32.6g)、METHOCEL(商標)K4Mセルロース誘導体(54.6g)、乳酸(6g)、水(950g)、水酸化アンモニウム水溶液(14.8M、70g)。
【0039】
比較例5
比較例4の手順を繰り返したが、ただし、アルミナ(DISPERAL(登録商標)P2、Sasolから入手できる、20g)が用いられた。押出し品は押出し機のダイ前面を出るときに垂れる状態であり、また金属トレーの上に置くときに互いに粘着する傾向があった。焼成された押出し品は1重量%のアルミナと99重量%のチタニアを含んでいた。
【0040】
【表2】

【0041】
実施例6
実施例1の手順を繰り返したが、ただし、配合は次のようであった:DT−51(300g)、TAMOL(商標)1124分散剤(5g)、WALOCEL(商標)Cセルロース(6g)、METHOCEL(商標)K4Mセルロース誘導体(6g)、乳酸(4.5g)、水(155g)、および水酸化アンモニウム水溶液(14.8M、11g)。押出し品は滑らかな外表面を有していた。最少限度の羽毛化が認められた。ほとんどの押出し品が、他のものに粘着することはなかった。
【0042】
比較例7
実施例6の手順を繰り返したが、ただし、配合は表3に示す通りであった。押出し品はダイから出ると同時に崩れた。それらは収集トレーの上で互いに粘着した。
【0043】
比較例8
実施例6の手順を繰り返したが、ただし、配合は表3に示す通りであった。押出し品を収集トレーの上に置いた後、互いに粘着する傾向はなかった。しかし、それらには羽毛化が生じたように見えた。
【0044】
【表3】

【0045】
実施例9
NaPdCl・3HO(31.4g)、NaAuCl・2HO(11.3g)、および水(235.4g)を含む水溶液にNaHCO粉末(27g)をゆっくり添加した。混合物を室温において10分間攪拌した。この溶液を、実施例1で調製された焼成チタニア押出し品(1000g)の上にピペットを用いて噴霧し、それと同時に押出し品を回転フラスコの中で転がした。含浸を完了させると、回転フラスコをヒートガンを用いて約100℃になるまで加熱した。含浸された押出し品を100℃においてさらに30分間転がし、次いでオーブンの中に80℃において2時間置き、その後、室温まで冷却した。
【0046】
乾燥した押出し品は温水(50〜80℃)で洗浄し、この作業を、洗浄ろ過溶液を1重量%の硝酸銀溶液と混合して沈殿を観察することによって塩化物が検出されなくなるまで行った。洗浄が完了した後、触媒を80〜100℃で乾燥させて水を除去した。次いで、それらを空気中で230℃において3時間加熱し、そして窒素流の下で230℃において30分間加熱した。窒素ガス中の10モル%の水素の流れの下で温度を500℃に上げ、3時間保持し、そしてそれを室温まで冷却した。
【0047】
押出し品は、10重量%の酢酸カリウムと1重量%の水酸化カリウムを含む水溶液(10L)を用いて洗浄した。洗浄された押出し品は、窒素の下で125℃において2時間乾燥した。パラジウム−金の触媒が得られた。それは0.93重量%のPd、0.54重量%のAu、および1.5重量%のKを含んでいた。
【0048】
実施例10
実施例9で調製されたパラジウム−金触媒は、固定床反応器(ステンレス鋼、外径1インチ)の中での酢酸ビニルの製造のために試験した。反応器に、触媒(10g)と不活性アルファアルミナの円筒形ペレット(直径1/8インチ、表面積4m/g、細孔容積0.25mL/g、25g)の混合物を装填した。供給物(feed)は、46.1モル%のヘリウム、33.9モル%のエチレン、11.48モル%の酢酸、4.2モル%の酸素、および4.2モル%の窒素を含んでいた。反応器の圧力は80psigであり、また触媒の容積に対する空間速度は、標準温度と圧力において3050h−1であった。反応器を流動砂の浴を用いて冷却し、その温度を130℃に設定した。生成物の流れはガスクロマトグラフィ(GC)によって分析した。流れについての75〜100時間の間の酸素の転化率、酢酸ビニルに対する酸素の選択率と酸素の収率、および酢酸ビニルに対するエチレンの選択率はGCの結果から計算し、それらを表4に挙げる。酸素の転化率は、消費された酸素の量を、反応器に供給された酸素の総量で割ることによって計算した。酢酸ビニルに対する酸素の選択率は、酢酸ビニルを生成するのに消費された酸素の量を、消費された酸素の総量で割ったものである。酢酸ビニルに対する酸素の収率は、酸素の転化率に酸素の選択率を掛けた積である。酢酸ビニルに対するエチレンの選択率は、酢酸ビニルを生成するのに消費されたエチレンの量を、消費されたエチレンの総量で割ったものである。触媒の生産性は、触媒の1リットル当たり1時間に生成された酢酸ビニルのグラム数である。
【0049】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム−金触媒を調製するための方法であって、(a)チタニア、カルボキシアルキルセルロース、およびヒドロキシアルキルセルロースを混合し、それによりドウを形成すること、(b)ドウを押出し、それにより押出し品を製造すること、(c)押出し品を焼成し、それにより焼成された押出し品を製造すること、(d)焼成された押出し品にパラジウム化合物と金化合物を含浸させ、それにより含浸された押出し品を製造すること、および(e)含浸された押出し品を焼成し、それによりパラジウム−金触媒を製造すること、を含む方法。
【請求項2】
パラジウム−金触媒を還元し、それにより還元された触媒を製造することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
パラジウム−金触媒は水素によって還元される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
還元された触媒に活性剤を添加し、それにより活性化パラジウム−金触媒を製造することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
チタニアはアナターゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
カルボキシアルキルセルロース対チタニアの重量比は1:100から3:100までである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ヒドロキシアルキルセルロース対チタニアの重量比は0.5:100から1:100までである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
カルボキシアルキルセルロース対ヒドロキシアルキルセルロースの重量比は3:1から1:1までである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ヒドロキシアルキルセルロースは、メチル2−ヒドロキシプロピルセルロース、メチル2−ヒドロキシエチルセルロース、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
押出し品は650〜750℃の温度において焼成される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(a)チタニア、カルボキシアルキルセルロース、およびヒドロキシアルキルセルロースを混合し、それによりドウを形成すること、(b)ドウを押出し、それにより押出し品を製造すること、(c)押出し品を焼成し、それにより焼成された押出し品を製造すること、(d)焼成された押出し品にパラジウム化合物と金化合物を含浸させ、それにより含浸された押出し品を製造すること、および(e)含浸された押出し品を焼成し、それによりパラジウム−金触媒を製造すること、を含む方法に従って調製されたパラジウム−金触媒の存在下で、エチレン、酸素、および酢酸を反応させることを含む、酢酸ビニルを調製するための方法。
【請求項12】
パラジウム−金触媒はさらに還元される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
パラジウム−金触媒は水素によって還元される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
還元された触媒が活性剤によってさらに活性化される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
チタニアはアナターゼである、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2013−514175(P2013−514175A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544546(P2012−544546)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/057373
【国際公開番号】WO2011/075278
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(505341095)ライオンデル ケミカル テクノロジー、 エル.ピー. (61)
【氏名又は名称原語表記】LYONDELL CHEMICAL TECHNOLOGY, L.P.
【Fターム(参考)】