パラジクロロベンゼンの製造方法
【課題】高い反応選択性を有し、かつ実装置として稼働可能なパラジクロロベンゼンの製造方法を提供する。
【解決手段】ベンゼン及びモノクロロベンゼンの少なくとも一方を原料として塩素ガスにより塩素化してパラジクロロベンゼンを製造する方法において、ゼオライトを含む触媒を内装した複数段を有する反応器のうち、初段の反応器に前記原料、塩素ガス及び/又は後段の未反応塩素ガスを供給し、前段の反応生成物を次段の反応器に供給し、次段以降の反応器には過剰量の塩素ガスを供給し、最終段の生成反応物からパラジクロロベンゼンを得る。
【解決手段】ベンゼン及びモノクロロベンゼンの少なくとも一方を原料として塩素ガスにより塩素化してパラジクロロベンゼンを製造する方法において、ゼオライトを含む触媒を内装した複数段を有する反応器のうち、初段の反応器に前記原料、塩素ガス及び/又は後段の未反応塩素ガスを供給し、前段の反応生成物を次段の反応器に供給し、次段以降の反応器には過剰量の塩素ガスを供給し、最終段の生成反応物からパラジクロロベンゼンを得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラジクロロベンゼンの製造方法、特にベンゼン(以下「Bz」とも表す)及びモノクロロベンゼン(以下「MCB」とも表す)の少なくとも一方を原料として、ゼオライトを触媒として、塩素ガスにより塩素化してパラジクロロベンゼン(以下「p−DCB」又は「PDCB」とも表す)を製造する方法に関するものである。なお、本明細書において、「ゼオライト触媒」は、「ゼオライトを含む触媒」を示す。
【背景技術】
【0002】
p−DCBは、医薬、農薬の原料として、またそれ自体が殺虫剤、防虫剤として、さらにポリフェニレンサルファイド(PPS)の原料として工業的価値のきわめて高い化合物である。
【0003】
従来、p−DCBは、塩化第二鉄、五塩化アンチモン等のルイス酸を触媒として、ベンゼン及び/又はモノクロロベンゼンを液相塩素化する製造法が知られている。塩化第二鉄は活性が高く、塩素転化率は99.99%以上に達し、副生する塩酸ガス中の未反応塩素は極微量残存する程度である。しかし、目的とするパラ置換体の選択率は触媒単独ではせいぜい60%程度で、助触媒を加えて75%程度まで引き上げている。
【0004】
近年、p−DCBを選択率90%以上のものとして製造する方法として、特許文献1や特許文献2などに示されているように、触媒としてL型ゼオライトを用いる方法が開示されている。
【0005】
しかし、触媒としてゼオライトを使用する方法は、いずれも実験室レベルのものであり、実装置としての稼働できる程度の具体的なものではないと思われる。ちなみに、本発明での塩素化反応は、激しい発熱反応であるために、実装置では、温度上昇を適確に抑制し、ある温度範囲に運転を維持することが非常に重要である。
【0006】
この塩素化反応の発熱を抑制する方法として、発明者らは、ゼオライト触媒を内装した反応器に、原料(ベンゼン及び/またはモノクロロベンゼン)、塩素ガス、冷却媒体(クロロメタン及び/又はクロロエタン)を導入し、塩素化反応を行うPDCBの製造方法を示した(特許文献3)。前記方法によって、激しい発熱反応である塩素化反応において、冷却媒体の蒸発潜熱により温度上昇を的確に抑制し、ある温度範囲内に運転を維持することが可能となった。前記方法において反応活性を向上させることにより、使用触媒量の低減、設備の小規模化が得られることから、更に高い反応活性が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭63−12450号公報
【特許文献2】特開2001−213815号公報
【特許文献3】特願2007−276890号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】浅岡佐知夫「ナノポーラスゼオライト触媒表面設計と調製法」、ケミカル・エンジニヤリング、2008年4月号、pp.286−289
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする主たる課題は、高い反応活性を有するp−DCBの製造方法を提供するものである。他の課題は、以下の説明により明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
ベンゼン及びモノクロロベンゼンの少なくとも一方を原料として塩素ガスにより塩素化してパラジクロロベンゼンを製造する方法において、ゼオライトを含む触媒を内装した複数段を有する反応器のうち、初段の反応器に前記原料、塩素ガス及び/又は後段の未反応塩素ガスを供給し、前段の反応生成物を次段の反応器に供給し、次段以降の反応器には過剰量の塩素ガスを供給し、最終段の生成反応物からパラジクロロベンゼンを得ることを特徴とするパラジクロロベンゼンの製造方法。
【0011】
〔請求項2記載の発明〕
クロロメタン及びクロロエタンの少なくとも一種の冷却媒体を前記反応器の各段に導入し、前記冷却媒体を蒸発させて前記塩素化反応の温度上昇を抑制する請求項1記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【0012】
〔請求項3記載の発明〕
前記冷却媒体の蒸発ガス分は、反応器外で凝縮させその凝縮液を前記冷却媒体として再利用する請求項2記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【0013】
〔請求項4記載の発明〕
前記反応器内に前記ゼオライトを含む触媒を固定床として内装する請求項1〜3のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【0014】
〔請求項5記載の発明〕
前記ゼオライトを含む触媒が、ゼオライトがアルミナゾルを主成分とする成型基剤により成型されて得られる請求項1〜4のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【0015】
〔請求項6記載の発明〕
前記ゼオライトがプロトンタイプのゼオライトである請求項1〜5のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【0016】
〔請求項7記載の発明〕
前記ゼオライトがベータ型のゼオライトである請求項1〜6のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
〔請求項8記載の発明〕
【0017】
前記ゼオライトがMFI型のゼオライトである請求項1〜6のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【0018】
〔請求項9記載の発明〕
前記原料、塩素ガス及び冷却媒体をダウンフローで流通させる請求項1〜8のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【0019】
〔請求項10記載の発明〕
前記塩素化反応を温度40〜130℃、圧力10atm以下で行う請求項1〜9のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、工業生産規模でp−DCBを高収率で生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態のフローシートである。
【図2】シリカゾル、アルミナゾルをそれぞれ成型基剤としたBEAを使用した場合における、DCB収率、パラ選択性を示すグラフである。
【図3】シリカ−アルミナ触媒を使用した場合における、DCB収率、パラ選択性を示すグラフである。
【図4】アルミナゾルを成型基剤としたBEA、MFI、USYをそれぞれ使用した場合における、DCB収率、パラ選択性を示すグラフである。
【図5】ゼオライト触媒のイオン交換サイトの金属カチオン置換率変化に伴うDCB収率、パラ選択性の変化を示すグラフである。
【図6】ゼオライト触媒を使用した場合における反応進行のグラフである。
【図7】反応温度80℃、液相冷却温度58℃の条件下での、圧力及びクロロホルム/ベンゼン比との関係で、回収率などを示す説明用グラフである。
【図8】本発明の実施形態における反応進行のグラフである。
【図9】本発明の実施形態における反応生成物の塩素化度のグラフである。
【図10】従来例(比較例:均一系触媒使用)の反応装置の概要構成図である。
【図11】従来例(均一系触媒使用)での各物質の組成変化グラフである。
【図12】従来例(均一系触媒使用)でのp−DCBの選択性のグラフである。
【図13】従来例(均一系触媒使用)での塩素化に伴うp−DCB収率のグラフである。
【図14】従来例(均一系触媒使用)での選択性の反応温度の影響を示すグラフである。
【図15】従来例(均一系触媒使用)での選択性の触媒量の影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の基本的な思想)
前述のように、塩化第二鉄などの均一系触媒では、p−DCBの選択性が低いばかりでなく、触媒の分離回収の装置的な負担が大きくなる。そこで、ゼオライト触媒を使用することで、p−DCBの選択性を高め、また、固体触媒として使用することにより、再利用を可能とした。
【0023】
また、前述のように、塩素化反応は、激しい発熱反応である。ちなみに、除熱しないと、400〜500℃に簡単に昇温してしまう。したがって、温度上昇を適確に抑制し、ある温度範囲に運転を維持することが必要である。温度が低すぎると粘性が高くなり、圧損が増加する。逆に高温の場合、塩素溶解律速となり反応は抑制される。また、ベンゼンの沸点は80.1℃であり、当然ベンゼンが蒸発する条件では反応は抑制される。適正な反応温度(反応速度)を維持できるように反応圧を決定する必要もある。
【0024】
発熱反応を抑制する方法として、ジャケットやコイルなど反応器に冷却部を備える方法、多量の溶剤を用いることにより温度上昇を抑制する方法(溶剤の候補としては、1.2ジクロロエタンやMCBが考えられる。)、及び冷却部と溶剤の併用による方法などが考えられ、当然にこれらの方法を使用することも可能である。しかし、好適な反応条件(40〜130℃、10atm以下)では、気液混相状態となるが、反応部-金属部-冷却部の全体の伝熱速度は、気相容積が液相容積に圧倒的に勝るため反応部での伝熱速度が支配的となり、総括伝熱係数は10〜30kcal/m2hr℃程度しかにならず、この条件では巨大な伝熱面積が必要となり、反応器として具体化することが困難となる。
【0025】
そこで、本発明では、より好適な条件として、冷却溶媒の蒸発潜熱を利用した直接冷却方式を提案するものである。これは反応条件と同じ程度の沸点をもつ化合物を反応系に存在させることにより、その化合物が蒸発することに伴う蒸発潜熱をその化合物に移行させ、発生する巨大な反応熱を吸収することが可能となる。
【0026】
蒸発した化合物は凝縮して再利用すればよく、凝縮の際は、総括伝熱係数600〜1100kcal/m2hr℃を確保できるシェルアンドチューブなどの、汎用の外部熱交換器を用いることが可能である。
【0027】
このような直接冷却媒体に利用できる化合物は反応しないことが条件となり、p−DCB合成の塩素化反応に適するのは、ジクロロメタン(Tb 40.2℃)、トリクロロメタン(Tb61.1℃)、テトラクロロメタン(Tb76.8℃)、1.1−ジクロロエタン(Tb57.℃),1.1.1−トリクロロエタン(Tb73.9℃)などのクロロメタン類、クロロエタン類である。望ましい反応温度と、ベンゼンと直接冷却媒体の沸点を考慮して適した圧力条件を選定することにより安定した温度管理が可能となる。
【0028】
以下に説明するプロセスでは、常圧沸点61℃をもつトリクロロメタン(別名、クロロホルム)を採用した例をもって説明するが、前記の他のクロロメタン類やクロロエタン類の使用も可能であり、また、これらは複数使用できることも確認済みである。
【0029】
ところで、本発明は、ベンゼン及び塩素ガスを使用するとともに、前記直接冷却媒体(以下の例ではクロロホルム)を使用する。これを整理すると次記のとおりである。
1)原料及び原料不純物:ベンゼン、塩素
2)溶剤・用役及びその不純物: クロロホルム、水
3)反応生成物:モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化水素
以上の成分を考慮して、適宜の分離手段を組み合わせて、目的にパラジクロロベンゼンを得る。
【0030】
反応式の一例を示すと、次記のとおりである。
Bz(C6H6)→MCB(C6H5Cl)→PDCB、MDCB、ODCB(p−C6H4Cl2、o−C6H4Cl2、m−C6H4Cl2→ TCB(C6H3Cl3)
PDCB合成反応システム:
C6H6 +Cl2 → C6H5Cl+HCl (1)
C6H5Cl +Cl2 → p−C6H4Cl2+HCl (2)
C6H5Cl +Cl2 → o−C6H4Cl2+HCl (3)
C6H5Cl +Cl2 → m−C6H4Cl2+HCl (4)
p−C6H4Cl2+Cl2 → C6H3Cl3+HCl (5)
o−C6H4Cl2+Cl2 → C6H3Cl3+HCl (6)
C6H3Cl3 +Cl2 → C6H2Cl4+HCl (7)
【0031】
好ましくない副反応である塩素付加反応の一例を示すと次期のとおりである。
ベンゼンの塩素付加反応によるテトラクロロシクロヘキサン及びベンゼンヘキサクロライドの生成:
C6H6 + 2Cl2 → C6H6Cl4 (8)
C6H6 + 3Cl2 → C6H6Cl6 (9)
【0032】
好ましくない副反応により生成するテトラクロロシクロヘキセン及びベンゼンヘキサクロライドは触媒の被毒物質となる可能性があり、触媒の劣化につながる可能性が懸念される。
【0033】
また本反応では微量の水分がゼオライト触媒でのイオン反応の発現に必要と考えられる。ただし必要以上の水分は装置の腐食を引き起こし、また反応に関しても反応性の低下、及び副生成物生成の可能性がある。従って原料中の水分は適宜調整されることが望ましい。
【0034】
(ゼオライト触媒の好適な形態)
本発明では、ゼオライトを含む触媒を使用する。このゼオライトとしては、小細孔径タイプのエリオナイト、オフレタイト、フェリエライト、中細孔径タイプのL型、ZSM−5(MFI)、MCM−22(MWW)、大細孔径タイプのベータ型 (BEA)、モルデナイト(MOR)、X型、T型(FAU)等が挙げられ、いずれも使用できる。好ましくは、中細孔径タイプの L型、ZSM−5(MFI)、MCM−22(MWW)、大細孔径タイプのベータ型 (BEA)、モルデナイト(MOR)、X型、T型(FAU) 、Y型(USY)が使用できる。
【0035】
ゼオライトは単体では成型することはできず、直径約500Åの微小な粉体となるため、成型基剤(成型助剤)を用いるのが一般的である。たとえばナノ粒子サイズのシリカエアロゾル、アルミナゾルなどが用いられるが、本形態においては、アルミナゾルを主成分とする成型基剤を使用する。特に、アルミナゾルを単体で使用するものが望ましい。プロトンタイプのBEAを、アルミナゾル、シリカゾルでそれぞれ成型した触媒のDCBの収率、パラ選択性を比較したところ、パラ選択性に大きな差異は見られなかったものの、アルミナゾルで成型した触媒で高い収率が比較的長時間安定して得られることが判明した(図2)。ゼオライトの成型は、従来はシリカゾルで行うことが、ゼオライト表面に新たなイオン交換サイトを形成しづらく、ゼオライトの反応特異性を阻害しないことから、好適とされていた。しかし、本形態における反応においては、アルミナゾルの使用により、パラ選択性は落ちず、触媒自体の安定性が向上した。これにより、上記反応は、ゼオライトの孔内でのみ起こっているのではなく、アルミナにより成型触媒表面に形成されたイオン交換サイトでも起こっていることが示唆される。反応がゼオライトの孔内でのみ起こっていれば、孔の閉塞による触媒の劣化が起こり得るが、触媒表面における反応であれば、劣化速度を従来よりも低減させることが可能である。
【0036】
上記のようにゼオライト表面のアルミナが上記イオン交換サイトであれば、ゼオライトを使用する必然性はないともいえる。しかし、シリカ−アルミナ触媒を使用して同様の反応を行うと、非常に収率が低くなり、触媒活性が非常に低いことが示された(図3)。またパラ選択性もゼオライト使用時より低い値となった。これにより、p−DCB生成において、アルミナを有する触媒が高い収率、パラ選択性を保持するためには、ゼオライトの有する特異な骨格が担体として必須であることが判明した。ゼオライトの構造によって、アルミナの触媒活性が高められることは、非特許文献1において明らかにされている。
【0037】
ゼオライト骨格は、ゼオライト種によって大きく異なる。ゼオライトの中でも、中細孔径、大細孔径のゼオライトとして代表的に使用される、ZSM−5(MFI)、ベータ型(BEA)、Y型(USY)のアルミナゾル成型触媒について、その活性を比較したところ、図4に示すように、USY使用時にはDCB収率が低かったのに対し(副反応でTCBが多く生成されるため(図示せず))、BEA、MFIでは高いDCB収率を示すことが判明した。ゼオライトの骨格構造に起因する表面構造の差異が、アルミナの触媒活性に影響を与えることが示唆された。本発明においては、特に、ZSM−5(MFI)、ベータ型(BEA)の使用が好ましいといえる。
【0038】
アルミナを主成分とする成型基剤は、全触媒量に対して10重量%から50重量%、好ましくは15重量%から35重量%が選ばれる。10重量%未満であると触媒活性が低くなり、またゼオライトと成型基剤の結合性が悪くなる。50重量%以上であると必要以上に触媒のボリュームが大きくなるとともに、上記のゼオライト骨格の特性が生かせず、やはり触媒活性が低くなる。
【0039】
本形態のゼオライト触媒のゼオライトは、プロトンタイプを使用することがより好ましい。ゼオライトのイオン交換サイトを金属カチオン、例えばナトリウムイオンで置換したものを使用すると、初期活性は向上するものの、触媒活性が短時間で急速に低下することが知見されたためである(図示せず)。
【0040】
(ゼオライト触媒の他の形態)
以下、アルミナを主成分とする成型基剤を用いない例におけるゼオライト触媒を開示する。本形態では、イオン交換サイトを金属カチオンで置換したゼオライトを使用する。
【0041】
本形態において、ゼオライトのイオン交換サイトの少なくとも一部は金属カチオン、好ましくはナトリウムカチオンで占められている状態で使用される。特に、ゼオライトを主成分とする成型触媒のゼオライトのイオン交換サイトの少なくとも10%以上、好ましくは10%以上、85%以下が前記金属カチオンで占められている場合には、本発明の効果が大きい(図5)。前記金属カチオンが占める割合が10%未満であると、上記塩素化反応の効率低下や、副反応の増加等が生じる。
【0042】
ゼオライトのイオン交換サイトの少なくとも一部を金属カチオン、特にナトリウムカチオンで占められている状態にするために、公知の方法によってイオン交換して用いてもよい。ナトリウムカチオンにイオン交換するには、一般的にナトリウム塩の水溶液、好ましくは塩化ナトリウム水溶液を用いた複数回のイオン交換操作により行われる。
【0043】
さらに、塩化第二鉄などの均一系触媒の場合、反応が逐次的だけでなく併発的にも進行しているのに対し、ゼオライト触媒は、ほぼ100%、反応が逐次的に進行していることが判明した(図6)。これは均一系触媒ではベンゼンが残留している段階で生成物であるモノ体やジ体がベンゼンと同じく自由に触媒と錯合体を作り反応が進行するのとは逆に、ゼオライト触媒には反応分子の拡散の抵抗があるため、ベンゼン、モノ体、ジ体、トリ体、テトラ体と拡散しやすい順に反応が逐次的進行するためであると考えられる。
【0044】
この2種のゼオライトをそれぞれ主成分とする成型触媒にて比較したところ、ZSM−5 (MFI)ゼオライトを主成分とする触媒の性能が流通系では十分に発揮されないという問題点が存在し、ベータ型のゼオライトがより優れていることが明らかとなり本発明をなした。
【0045】
選択性を向上させるために選ばれたゼオライト触媒の拡散の抵抗は、成型触媒を内装した反応器において安定して使用することが要求される流通系においては、活性の著しい低下を引き起こす。また、本発明のベータ型のゼオライトを主成分とする成型触媒を内装した反応器にての流通式の結果は、成型触媒を粉末化してスラリー反応器にて回分式の結果と比較したところ、活性においても選択性においてもより優れていることが明らかとなった。
【0046】
また、本発明の反応器に内装するゼオライトを主成分とする成型触媒のベータ型のゼオライトとしては、そのSiO2/Al2O3比が 14以上、100以下であるものが好ましい(より好適には16〜50)。14より小さいとゼオライト結晶ないし粒子の外表面部分に八面体のアルミニウムが存在し、それ単独あるいはゼオライトの外表面に存在する官能基との相互作用で、非選択的塩素化反応を進行させるようなゼオライト外表面の種々の強度の酸点すなわち金属(ナトリウム)カチオンイオン交換サイトあるいは、塩素付加反応を進行させる塩基点が形成されると考えられるので好ましくない。また 100より大きいとゼオライトの細孔の中の活性点の濃度が低くなり拡散距離が長くなることで反応がトリ体まで進行することとなり、また、生成物の滞留によって原料分子の細孔内拡散が抵抗を受け目的反応の進行が妨げられる。
【0047】
また、イオン交換を短時間で目的の程度まで進行させるためには複数回のイオン交換操作、好適にはナトリウム塩の水溶液を交換しながら行われる。さらには、最終回の操作においては溶液側のpHが酸性側で終了するとともに、付着する塩化ナトリウムを洗浄、除去して行う方法が選ばれる。このときの塩化ナトリウムの水溶液濃度や量およびイオン交換操作の回数は、適宜選ぶことが出来る。
【0048】
しかるに、ゼオライトのイオン交換サイトのうち少なくとも一部が、ナトリウムカチオンで占められている状態になっているのが、塩化ナトリウムでナトリウムカチオンにイオン交換できるサイトであると考えられる。そのようなサイトとしては、プロトン型にしたときに強酸性を示すブレンステッド酸であると考えられる。
【0049】
ちなみに、本形態のゼオライト触媒のゼオライトの状態を作るには、ゼオライトないしゼオライトを主成分とする成型触媒が、プロトンタイプにされた後、金属、特にナトリウムの強酸塩にてイオン交換されて、イオン交換サイトの少なくとも 10%以上がナトリウムカチオンで占められている状態にすることが効果的である。
【0050】
また、本形態のゼオライト触媒を作るには、ゼオライトと新たなイオン交換サイトを形成しないようなマトリックスが好ましい。そのような好ましいマトリックスとして、たとえばナノ粒子サイズのシリカエアロゾルなどが単独で用いられる。複数の成型基剤を同時に使用するとゼオライト表面で新たなイオン交換サイトができ、触媒の活性に悪影響を与える可能性がある。またゼオライトは主にSiO2から成り立つため、成型助剤としてSiO2を使用する事は好ましい。ゼオライト表面のAlを酸処理によって除去した後にSiO2を成型助剤として使用する事もできる。
【0051】
成型基剤の役割としては、成型体にゼオライトの触媒性能を損なうことなく与えかつ工業的に使用できる強度を有しなければならない。そのような成型基剤としての量は、10重量%から50重量%、好ましくは15重量%から35重量%が選ばれる。10重量%未満であるとゼオライトと成型基剤の結合性が悪くなる。50重量%以上であると必要以上に触媒のボリュームが大きくなるとともに、反応原料がゼオライト活性点まで到達しにくくなるという拡散の影響を受け易い。
【0052】
(反応装置の概要)
ゼオライト触媒は、固定床として使用し、原料、塩素ガス及び冷却媒体を流通させるのが望ましい。
【0053】
前記原料、塩素ガス及び冷却媒体は、アップフローで流通させることも可能であるが、ダウンフローでの流通がより好ましい。アップフローで流通させると、反応器内が液の連続相となるために、溶液への塩素ガスの溶解が律速となることや、液中反応生成物の逆混合が起こるという問題が残るが、ダウンフローにすることにより、反応器内をガスの連続相とすることで前記の問題を解決することが可能である。
【0054】
この場合、塩素ガス中心とするガス相の分散と液相均一流れを確保し、逆混合を排除するようにするのが望ましい。採用する反応器径によりガス液混相流のフローパターンが変化する。採用すべきフローパターンは、脈動流(Pulsing and Foaming Flow)か潅液流(Gas−continuous or Tricking Flow)であるが、望ましくは潅液流である。脈動流とは液ホールドアップの大きい個所と小さな個所が交互にながれる状態であり、潅液流は液体が触媒粒子上を重力によって膜状に流下し、その空間をガスが連続相となって流れる状態である。ガス液混相流の流速が大きくなるにしたがって、フローパターンは脈動流から潅液流に変化する。
【0055】
また、反応器固定床の段数は複数段を有し、好適には3段を有する。固体触媒の劣化は多くの場合、劣化原因物質の入口部からの流入による活性点の消失がある。これに対する対策としては、各固定床を独立槽3基をシリーズで接続し、劣化したら接続を入れ替えてサイクリックに運用する方式とできる。クロロホルムの添加量も多段にすることにより使いまわしが可能となり、系内循環のクロロホルム量を抑制できる。
【0056】
反応温度としては、温度が低すぎると粘性が高くなり、圧損が増加する。逆に高温の場合、塩素溶解律速となり反応は抑制される。したがって、反応温度としては、40〜130℃、より好ましくは、55〜90℃である。
【0057】
反応圧としては、反応温度例として80℃とした図7に示すように、クロロホルムの添加量やPDCB液相回収率の相関からして、950〜1450Torrが望ましい(55〜90℃の範囲内であれば同様。)。
【0058】
図7から次のことが判る。すなわち、(1)運転圧が高くなると、クロロホルム/ベンゼン比を高めないと、反応温度を維持できない、(2)ある操作温度である圧力以上では、クロロホルムが蒸発しなくなり、その温度を維持するために、膨大なクロロホルムが必要となる、(3)逆に、ある操作温度である圧力以下では、クロロホルムが全蒸発する。その際にPDCBを同様に蒸発する、(4)したがって、クロロホルムやPDCBが反応器の塔底に残る条件が適当であり、クロロホルム/ベンゼン比に対して、クロロホルムやPDCBの回収が大きく影響されない領域で操作するのが好ましく、クロロホルム/ベンゼン比が16〜20、PDCB回収率が90〜95%の領域が望ましい。
【0059】
反応後、断熱蒸発したクロロホルム及び反応生成物を回収して次段で再利用するために冷却することとなる。クロロホルムの凝縮冷却のためには、シェルアンドチューブなどの、汎用の外部熱交換器を用いることができる。
【0060】
PDCBも気化するがPDCBの融点は53℃であるため、PDCBが単独で凝縮するような環境では53℃以下にできない。しかし、クロロホルムはPDCBに対して溶剤として働くのでクロロホルムが存在すれば、常温近辺でもPDCBの析出は起きないことを実験的に確認している。40℃以下まで下げることは不可能ではない。
【0061】
直接冷却媒体のトリクロロメタン(クロロホルム)は塩素と反応しテトラクロロメタンに転化する。その結果、テトラクロロメタンがトリクロロメタン循環系に蓄積することがないように、テトラクロロメタンをトリクロロメタンより分離して系外に除去するのが望ましい。
【0062】
ところで、ベンゼンを原料として塩素ガスにより塩素化してパラジクロロベンゼンを製造する方法において、ベンゼンと塩素ガスとの反応速度と比較して、反応中間体であるもモノクロロベンゼンと塩素ガスとの反応速度が遅いことにより(図8)、必要触媒量が相対的に大きくなる。それにより触媒を充填する反応器が大きくなり、併せて設備投資が増大する。
【0063】
そこで、本発明では、塩素ガスの供給方法に関して新規提案を行うものである。具体的には、前記反応器は複数段を有し、初段の反応器に前記原料、冷却媒体、塩素ガス及び/又は後段の未反応塩素ガスを供給し、前段の反応生成物と次段の反応器に供給し、次段以降の反応器には冷却媒体、及び過剰量の塩素ガスを供給し、最終段の生成反応物からお粗ジクロロベンゼンを得るパラジクロロベンゼンの製造方法である。この方法によりモノクロロベンゼンと塩素ガスとの反応速度を向上させることができる(図8)。
【0064】
加えて、塩素ガスを過剰量供給すると、従来技術である均一系触媒の場合、目的生成物であるパラジクロロベンゼンを含むジクロロベンゼンが過剰量の塩素ガスと反応し、トリクロロベンゼンを生成するが、本発明においてはゼオライト触媒を使用することにより、トリクロロベンゼンの生成を抑制することが可能である。図9に示されるように、Cl2/MCB=1.0以上の条件でパラジクロロベンゼンの製造を行っても反応生成物の塩素化度は2.0付近で止まり、トリクロロベンゼン合成反応が抑制される。
【0065】
次に、プロセス構築に望ましい操作について補足的に説明する。
反応器での反応生成物中には、副生物(炭化水素化合物)及び塩化水素が含まれている。塩化水素の沸点は−85℃であり、極めて液体回収が難しいので、水溶液として回収する。回収する塩化水素濃度はできるだけ高い方が望ましいが、35%HCl程度ならば容易に回収できる。
【0066】
すなわち、反応器での反応生成物を塩化水素除去塔に送り、塩化水素除去塔の塔頂から塩化水素及びこれに同伴する炭化水素化合物を分離し、これを冷却塔に送り、この冷却塔内に、付属のコンデンサで冷却した水相分を塔内に散布して冷却することにより、冷却塔底で水相とクロロホルム相に分離するようにし、その分離した水相分として35%HCl水溶液を得る。なお、反応器最終段からの冷却媒体は、コンデンサにより冷却した後、混合器に導き、新クロロホルムの供給用に使用できる。前記混合器からのクロロホルムの一部は、冷却塔内に送り込み、前述のように冷却塔底で水相とクロロホルム相に分離する。クロロホルム相については、後段の分離塔により水とクロロホルムとに分離し、クロロホルムについては再利用する。
【0067】
塩化水素除去塔の塔底に集まる反応生成物については、その後に、TCB、m-DCB、o-DCBを除去しながら、目的のp−DCBを晶析させて製品化することができる。
【0068】
また、系内の液はプロセス内の適宜の位置に返送して再利用することができる。
【0069】
(実施の形態)
次に、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の好適な実施の形態を示す。
10は反応器であり、実施の形態では3段構成である。原料たるベンゼン1は、必要により図示しない水分除去手段により予め水分が除去された後に、第1段の反応器10の塔頂から供給される。
【0070】
塩素ガス2は、最終段の反応器10の塔頂から供給される。各反応器10、10、10にはコンデンサ12、12、12が付設されている。クロロホルム(冷却媒体)3は、貯蔵タンクから、混合器14に送られ、ポンプ16により、第1段の反応器10にその塔頂から供給される。また、詳細は図示していない処理フローの後工程で回収された回収クロロホルム3Aがベンゼン1と共に、第1段の反応器10の塔頂から供給されるようになっている。また、前記混合器14には、同じく詳細は図示していない処理フローの後工程で回収された回収クロロホルム3Bが供給される。
【0071】
各反応器10、10、10内にはゼオライト触媒18(成形体)が固定床として内装されており、原料(ベンゼン)、塩素ガス及び冷却媒体がダウンフローで流通するようになっている。反応器10周壁には冷却用ジャケット11が設けられ、水などの冷却媒体によって冷却されるようになっている。
【0072】
反応生成物は、順次ポンプ20、20により次段の反応器10、10に導かれる。反応器10内で蒸発成分(主に冷却媒体)は、コンデンサ12、12、12により凝縮された後、次段の反応器10、10及び混合器14に送られる。未反応塩素ガス及び/又は反応により生成した塩化水素は前段の反応器10の塔頂から供給される。凝縮しなかった少量の反応生成物の一部とクロロホルムは、冷却塔24に送られる。
【0073】
最終段の反応器10の塔底成分は、塩化水素除去塔22に送られ、下部加熱により、塩化水素除去塔22の塔頂から塩化水素及びこれに同伴する炭化水素化合物を分離し、これを冷却塔24に送り、この冷却塔24内に、付属のコンデンサ26で冷却した水相分を、ポンプ28により塔内に散布して冷却することにより、冷却塔24において水相とクロロホルム相に分離するようにし、その分離した水相分として35%HCl水溶液を得る。冷却塔24の塔底の下部に設けた沈殿槽30に集めたクロロホルム相については、後段の分離塔(図示せず)により水とクロロホルムとに分離し、クロロホルムについては再利用する。
【0074】
反応器10最終段からの冷却媒体は、コンデンサ12により冷却した後、混合器14に導き、新クロロホルムの供給用に使用できる。
【0075】
塩化水素除去塔22の塔底に集まる反応生成物については、その後に、適宜の処理手段を使用して、TCB、m-DCB、o-DCBを除去しながら、目的のp−DCBを晶析させて製品化することができる。なお、符号32は減圧ポンプである。
【実施例】
【0076】
(実施例)
図1のフローに従ってベンゼンを原料として塩素ガスにより塩素化してパラジクロロベンゼンを製造した。反応器内にBEAゼオライト触媒のシリカ成形体を固定床として内装した。
反応温度80℃、圧力1.8kg/cm2の条件で塩素化反応を行った。塩素化度としては約2.0とした。
得られたp−DCBの選択性は74.6%であり、高い選択性をもって、p−DCBを安定して製造できた。
【0077】
(比較例)
従来法である均一系触媒塩化第二鉄FeCl3を用いた比較例を示す。反応装置としては、図10に示すように、ジャケット51及び攪拌機52付き完全混合型反応器50を使用し、これに塩素を供給ブロアから、ベンゼン及びFeCl3を供給し、冷却水ユニット53によりジャケット51を介して冷却しながら反応を行うものである。底部からの反応生成物は冷却後に液貯槽54に、頂部からのガス液成分は冷却後にガス液貯槽55に貯留した。
【0078】
反応条件は、次記のとおりである。
○ 触媒FeCl3濃度:0.0088触媒mol/ベンゼンmol
○ 原料塩素ガス供給速度:0.85mol/ベンゼンmol
○ 反応温度:80℃
【0079】
この反応過程におけるベンゼンの塩素化の生成物変化を反応進行度(塩素化度)であらわすと図11となる。
図11から均一系触媒は反応が逐次及び併発的にも進行していることがわかる。この理由として、均一系触媒は拡散の抵抗がないため、ベンゼンとMono体、あるいはMono体とDi体が同時に反応したためだと考えられる。それ故、反応におけるDi体選択性は最大80%に留まる。
【0080】
DCB収率に伴うDCBの中でのPDCBの選択性の変化を図12、塩素化に伴うPDCB収率の推移を図13に示す。均一系触媒はOrtho−Para配向に立体障害がないため、Para体選択性は図12に示すように60%と低い値である。またDi体選択性は最大80%に留まるため反応におけるPara体最大収率は図13に示すように50%である。
【0081】
標準条件の反応温度80℃から70℃に下げて実験を行った。結果を図14に示す。反応温度を下げても、Para体選択性は変わらないことがわかる。
【0082】
次に、触媒量を0.0181 g−cat/g−Bz (0.0088触媒mol/ベンゼンmol)から約1/20の0.0010 g−cat/g−Bz (0.00049触媒mol/ベンゼンmol)にまで減らした結果、活性は変わらず、図15に示すように一本の曲線で整理され選択性も変わらないことが明らかとなった。
【0083】
以上のように、均一系触媒を使用する限り、p−DCBを高い選択性をもって製造することはできないものであることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、PPSの原料として工業的価値のきわめて高い化合物を連続的に得ることができる。
【符号の説明】
【0085】
1…ベンゼン、2…塩素ガス、3…クロロホルム(冷却媒体)、10…反応器、11…ジャケット、12…コンデンサ、14…混合器、16…ポンプ、18…ゼオライト触媒、20…ポンプ、22…塩化水素除去塔、24…冷却塔、26…コンデンサ、28…ポンプ、30…沈殿槽、32…減圧ポンプ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラジクロロベンゼンの製造方法、特にベンゼン(以下「Bz」とも表す)及びモノクロロベンゼン(以下「MCB」とも表す)の少なくとも一方を原料として、ゼオライトを触媒として、塩素ガスにより塩素化してパラジクロロベンゼン(以下「p−DCB」又は「PDCB」とも表す)を製造する方法に関するものである。なお、本明細書において、「ゼオライト触媒」は、「ゼオライトを含む触媒」を示す。
【背景技術】
【0002】
p−DCBは、医薬、農薬の原料として、またそれ自体が殺虫剤、防虫剤として、さらにポリフェニレンサルファイド(PPS)の原料として工業的価値のきわめて高い化合物である。
【0003】
従来、p−DCBは、塩化第二鉄、五塩化アンチモン等のルイス酸を触媒として、ベンゼン及び/又はモノクロロベンゼンを液相塩素化する製造法が知られている。塩化第二鉄は活性が高く、塩素転化率は99.99%以上に達し、副生する塩酸ガス中の未反応塩素は極微量残存する程度である。しかし、目的とするパラ置換体の選択率は触媒単独ではせいぜい60%程度で、助触媒を加えて75%程度まで引き上げている。
【0004】
近年、p−DCBを選択率90%以上のものとして製造する方法として、特許文献1や特許文献2などに示されているように、触媒としてL型ゼオライトを用いる方法が開示されている。
【0005】
しかし、触媒としてゼオライトを使用する方法は、いずれも実験室レベルのものであり、実装置としての稼働できる程度の具体的なものではないと思われる。ちなみに、本発明での塩素化反応は、激しい発熱反応であるために、実装置では、温度上昇を適確に抑制し、ある温度範囲に運転を維持することが非常に重要である。
【0006】
この塩素化反応の発熱を抑制する方法として、発明者らは、ゼオライト触媒を内装した反応器に、原料(ベンゼン及び/またはモノクロロベンゼン)、塩素ガス、冷却媒体(クロロメタン及び/又はクロロエタン)を導入し、塩素化反応を行うPDCBの製造方法を示した(特許文献3)。前記方法によって、激しい発熱反応である塩素化反応において、冷却媒体の蒸発潜熱により温度上昇を的確に抑制し、ある温度範囲内に運転を維持することが可能となった。前記方法において反応活性を向上させることにより、使用触媒量の低減、設備の小規模化が得られることから、更に高い反応活性が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭63−12450号公報
【特許文献2】特開2001−213815号公報
【特許文献3】特願2007−276890号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】浅岡佐知夫「ナノポーラスゼオライト触媒表面設計と調製法」、ケミカル・エンジニヤリング、2008年4月号、pp.286−289
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする主たる課題は、高い反応活性を有するp−DCBの製造方法を提供するものである。他の課題は、以下の説明により明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
ベンゼン及びモノクロロベンゼンの少なくとも一方を原料として塩素ガスにより塩素化してパラジクロロベンゼンを製造する方法において、ゼオライトを含む触媒を内装した複数段を有する反応器のうち、初段の反応器に前記原料、塩素ガス及び/又は後段の未反応塩素ガスを供給し、前段の反応生成物を次段の反応器に供給し、次段以降の反応器には過剰量の塩素ガスを供給し、最終段の生成反応物からパラジクロロベンゼンを得ることを特徴とするパラジクロロベンゼンの製造方法。
【0011】
〔請求項2記載の発明〕
クロロメタン及びクロロエタンの少なくとも一種の冷却媒体を前記反応器の各段に導入し、前記冷却媒体を蒸発させて前記塩素化反応の温度上昇を抑制する請求項1記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【0012】
〔請求項3記載の発明〕
前記冷却媒体の蒸発ガス分は、反応器外で凝縮させその凝縮液を前記冷却媒体として再利用する請求項2記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【0013】
〔請求項4記載の発明〕
前記反応器内に前記ゼオライトを含む触媒を固定床として内装する請求項1〜3のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【0014】
〔請求項5記載の発明〕
前記ゼオライトを含む触媒が、ゼオライトがアルミナゾルを主成分とする成型基剤により成型されて得られる請求項1〜4のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【0015】
〔請求項6記載の発明〕
前記ゼオライトがプロトンタイプのゼオライトである請求項1〜5のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【0016】
〔請求項7記載の発明〕
前記ゼオライトがベータ型のゼオライトである請求項1〜6のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
〔請求項8記載の発明〕
【0017】
前記ゼオライトがMFI型のゼオライトである請求項1〜6のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【0018】
〔請求項9記載の発明〕
前記原料、塩素ガス及び冷却媒体をダウンフローで流通させる請求項1〜8のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【0019】
〔請求項10記載の発明〕
前記塩素化反応を温度40〜130℃、圧力10atm以下で行う請求項1〜9のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、工業生産規模でp−DCBを高収率で生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態のフローシートである。
【図2】シリカゾル、アルミナゾルをそれぞれ成型基剤としたBEAを使用した場合における、DCB収率、パラ選択性を示すグラフである。
【図3】シリカ−アルミナ触媒を使用した場合における、DCB収率、パラ選択性を示すグラフである。
【図4】アルミナゾルを成型基剤としたBEA、MFI、USYをそれぞれ使用した場合における、DCB収率、パラ選択性を示すグラフである。
【図5】ゼオライト触媒のイオン交換サイトの金属カチオン置換率変化に伴うDCB収率、パラ選択性の変化を示すグラフである。
【図6】ゼオライト触媒を使用した場合における反応進行のグラフである。
【図7】反応温度80℃、液相冷却温度58℃の条件下での、圧力及びクロロホルム/ベンゼン比との関係で、回収率などを示す説明用グラフである。
【図8】本発明の実施形態における反応進行のグラフである。
【図9】本発明の実施形態における反応生成物の塩素化度のグラフである。
【図10】従来例(比較例:均一系触媒使用)の反応装置の概要構成図である。
【図11】従来例(均一系触媒使用)での各物質の組成変化グラフである。
【図12】従来例(均一系触媒使用)でのp−DCBの選択性のグラフである。
【図13】従来例(均一系触媒使用)での塩素化に伴うp−DCB収率のグラフである。
【図14】従来例(均一系触媒使用)での選択性の反応温度の影響を示すグラフである。
【図15】従来例(均一系触媒使用)での選択性の触媒量の影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の基本的な思想)
前述のように、塩化第二鉄などの均一系触媒では、p−DCBの選択性が低いばかりでなく、触媒の分離回収の装置的な負担が大きくなる。そこで、ゼオライト触媒を使用することで、p−DCBの選択性を高め、また、固体触媒として使用することにより、再利用を可能とした。
【0023】
また、前述のように、塩素化反応は、激しい発熱反応である。ちなみに、除熱しないと、400〜500℃に簡単に昇温してしまう。したがって、温度上昇を適確に抑制し、ある温度範囲に運転を維持することが必要である。温度が低すぎると粘性が高くなり、圧損が増加する。逆に高温の場合、塩素溶解律速となり反応は抑制される。また、ベンゼンの沸点は80.1℃であり、当然ベンゼンが蒸発する条件では反応は抑制される。適正な反応温度(反応速度)を維持できるように反応圧を決定する必要もある。
【0024】
発熱反応を抑制する方法として、ジャケットやコイルなど反応器に冷却部を備える方法、多量の溶剤を用いることにより温度上昇を抑制する方法(溶剤の候補としては、1.2ジクロロエタンやMCBが考えられる。)、及び冷却部と溶剤の併用による方法などが考えられ、当然にこれらの方法を使用することも可能である。しかし、好適な反応条件(40〜130℃、10atm以下)では、気液混相状態となるが、反応部-金属部-冷却部の全体の伝熱速度は、気相容積が液相容積に圧倒的に勝るため反応部での伝熱速度が支配的となり、総括伝熱係数は10〜30kcal/m2hr℃程度しかにならず、この条件では巨大な伝熱面積が必要となり、反応器として具体化することが困難となる。
【0025】
そこで、本発明では、より好適な条件として、冷却溶媒の蒸発潜熱を利用した直接冷却方式を提案するものである。これは反応条件と同じ程度の沸点をもつ化合物を反応系に存在させることにより、その化合物が蒸発することに伴う蒸発潜熱をその化合物に移行させ、発生する巨大な反応熱を吸収することが可能となる。
【0026】
蒸発した化合物は凝縮して再利用すればよく、凝縮の際は、総括伝熱係数600〜1100kcal/m2hr℃を確保できるシェルアンドチューブなどの、汎用の外部熱交換器を用いることが可能である。
【0027】
このような直接冷却媒体に利用できる化合物は反応しないことが条件となり、p−DCB合成の塩素化反応に適するのは、ジクロロメタン(Tb 40.2℃)、トリクロロメタン(Tb61.1℃)、テトラクロロメタン(Tb76.8℃)、1.1−ジクロロエタン(Tb57.℃),1.1.1−トリクロロエタン(Tb73.9℃)などのクロロメタン類、クロロエタン類である。望ましい反応温度と、ベンゼンと直接冷却媒体の沸点を考慮して適した圧力条件を選定することにより安定した温度管理が可能となる。
【0028】
以下に説明するプロセスでは、常圧沸点61℃をもつトリクロロメタン(別名、クロロホルム)を採用した例をもって説明するが、前記の他のクロロメタン類やクロロエタン類の使用も可能であり、また、これらは複数使用できることも確認済みである。
【0029】
ところで、本発明は、ベンゼン及び塩素ガスを使用するとともに、前記直接冷却媒体(以下の例ではクロロホルム)を使用する。これを整理すると次記のとおりである。
1)原料及び原料不純物:ベンゼン、塩素
2)溶剤・用役及びその不純物: クロロホルム、水
3)反応生成物:モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化水素
以上の成分を考慮して、適宜の分離手段を組み合わせて、目的にパラジクロロベンゼンを得る。
【0030】
反応式の一例を示すと、次記のとおりである。
Bz(C6H6)→MCB(C6H5Cl)→PDCB、MDCB、ODCB(p−C6H4Cl2、o−C6H4Cl2、m−C6H4Cl2→ TCB(C6H3Cl3)
PDCB合成反応システム:
C6H6 +Cl2 → C6H5Cl+HCl (1)
C6H5Cl +Cl2 → p−C6H4Cl2+HCl (2)
C6H5Cl +Cl2 → o−C6H4Cl2+HCl (3)
C6H5Cl +Cl2 → m−C6H4Cl2+HCl (4)
p−C6H4Cl2+Cl2 → C6H3Cl3+HCl (5)
o−C6H4Cl2+Cl2 → C6H3Cl3+HCl (6)
C6H3Cl3 +Cl2 → C6H2Cl4+HCl (7)
【0031】
好ましくない副反応である塩素付加反応の一例を示すと次期のとおりである。
ベンゼンの塩素付加反応によるテトラクロロシクロヘキサン及びベンゼンヘキサクロライドの生成:
C6H6 + 2Cl2 → C6H6Cl4 (8)
C6H6 + 3Cl2 → C6H6Cl6 (9)
【0032】
好ましくない副反応により生成するテトラクロロシクロヘキセン及びベンゼンヘキサクロライドは触媒の被毒物質となる可能性があり、触媒の劣化につながる可能性が懸念される。
【0033】
また本反応では微量の水分がゼオライト触媒でのイオン反応の発現に必要と考えられる。ただし必要以上の水分は装置の腐食を引き起こし、また反応に関しても反応性の低下、及び副生成物生成の可能性がある。従って原料中の水分は適宜調整されることが望ましい。
【0034】
(ゼオライト触媒の好適な形態)
本発明では、ゼオライトを含む触媒を使用する。このゼオライトとしては、小細孔径タイプのエリオナイト、オフレタイト、フェリエライト、中細孔径タイプのL型、ZSM−5(MFI)、MCM−22(MWW)、大細孔径タイプのベータ型 (BEA)、モルデナイト(MOR)、X型、T型(FAU)等が挙げられ、いずれも使用できる。好ましくは、中細孔径タイプの L型、ZSM−5(MFI)、MCM−22(MWW)、大細孔径タイプのベータ型 (BEA)、モルデナイト(MOR)、X型、T型(FAU) 、Y型(USY)が使用できる。
【0035】
ゼオライトは単体では成型することはできず、直径約500Åの微小な粉体となるため、成型基剤(成型助剤)を用いるのが一般的である。たとえばナノ粒子サイズのシリカエアロゾル、アルミナゾルなどが用いられるが、本形態においては、アルミナゾルを主成分とする成型基剤を使用する。特に、アルミナゾルを単体で使用するものが望ましい。プロトンタイプのBEAを、アルミナゾル、シリカゾルでそれぞれ成型した触媒のDCBの収率、パラ選択性を比較したところ、パラ選択性に大きな差異は見られなかったものの、アルミナゾルで成型した触媒で高い収率が比較的長時間安定して得られることが判明した(図2)。ゼオライトの成型は、従来はシリカゾルで行うことが、ゼオライト表面に新たなイオン交換サイトを形成しづらく、ゼオライトの反応特異性を阻害しないことから、好適とされていた。しかし、本形態における反応においては、アルミナゾルの使用により、パラ選択性は落ちず、触媒自体の安定性が向上した。これにより、上記反応は、ゼオライトの孔内でのみ起こっているのではなく、アルミナにより成型触媒表面に形成されたイオン交換サイトでも起こっていることが示唆される。反応がゼオライトの孔内でのみ起こっていれば、孔の閉塞による触媒の劣化が起こり得るが、触媒表面における反応であれば、劣化速度を従来よりも低減させることが可能である。
【0036】
上記のようにゼオライト表面のアルミナが上記イオン交換サイトであれば、ゼオライトを使用する必然性はないともいえる。しかし、シリカ−アルミナ触媒を使用して同様の反応を行うと、非常に収率が低くなり、触媒活性が非常に低いことが示された(図3)。またパラ選択性もゼオライト使用時より低い値となった。これにより、p−DCB生成において、アルミナを有する触媒が高い収率、パラ選択性を保持するためには、ゼオライトの有する特異な骨格が担体として必須であることが判明した。ゼオライトの構造によって、アルミナの触媒活性が高められることは、非特許文献1において明らかにされている。
【0037】
ゼオライト骨格は、ゼオライト種によって大きく異なる。ゼオライトの中でも、中細孔径、大細孔径のゼオライトとして代表的に使用される、ZSM−5(MFI)、ベータ型(BEA)、Y型(USY)のアルミナゾル成型触媒について、その活性を比較したところ、図4に示すように、USY使用時にはDCB収率が低かったのに対し(副反応でTCBが多く生成されるため(図示せず))、BEA、MFIでは高いDCB収率を示すことが判明した。ゼオライトの骨格構造に起因する表面構造の差異が、アルミナの触媒活性に影響を与えることが示唆された。本発明においては、特に、ZSM−5(MFI)、ベータ型(BEA)の使用が好ましいといえる。
【0038】
アルミナを主成分とする成型基剤は、全触媒量に対して10重量%から50重量%、好ましくは15重量%から35重量%が選ばれる。10重量%未満であると触媒活性が低くなり、またゼオライトと成型基剤の結合性が悪くなる。50重量%以上であると必要以上に触媒のボリュームが大きくなるとともに、上記のゼオライト骨格の特性が生かせず、やはり触媒活性が低くなる。
【0039】
本形態のゼオライト触媒のゼオライトは、プロトンタイプを使用することがより好ましい。ゼオライトのイオン交換サイトを金属カチオン、例えばナトリウムイオンで置換したものを使用すると、初期活性は向上するものの、触媒活性が短時間で急速に低下することが知見されたためである(図示せず)。
【0040】
(ゼオライト触媒の他の形態)
以下、アルミナを主成分とする成型基剤を用いない例におけるゼオライト触媒を開示する。本形態では、イオン交換サイトを金属カチオンで置換したゼオライトを使用する。
【0041】
本形態において、ゼオライトのイオン交換サイトの少なくとも一部は金属カチオン、好ましくはナトリウムカチオンで占められている状態で使用される。特に、ゼオライトを主成分とする成型触媒のゼオライトのイオン交換サイトの少なくとも10%以上、好ましくは10%以上、85%以下が前記金属カチオンで占められている場合には、本発明の効果が大きい(図5)。前記金属カチオンが占める割合が10%未満であると、上記塩素化反応の効率低下や、副反応の増加等が生じる。
【0042】
ゼオライトのイオン交換サイトの少なくとも一部を金属カチオン、特にナトリウムカチオンで占められている状態にするために、公知の方法によってイオン交換して用いてもよい。ナトリウムカチオンにイオン交換するには、一般的にナトリウム塩の水溶液、好ましくは塩化ナトリウム水溶液を用いた複数回のイオン交換操作により行われる。
【0043】
さらに、塩化第二鉄などの均一系触媒の場合、反応が逐次的だけでなく併発的にも進行しているのに対し、ゼオライト触媒は、ほぼ100%、反応が逐次的に進行していることが判明した(図6)。これは均一系触媒ではベンゼンが残留している段階で生成物であるモノ体やジ体がベンゼンと同じく自由に触媒と錯合体を作り反応が進行するのとは逆に、ゼオライト触媒には反応分子の拡散の抵抗があるため、ベンゼン、モノ体、ジ体、トリ体、テトラ体と拡散しやすい順に反応が逐次的進行するためであると考えられる。
【0044】
この2種のゼオライトをそれぞれ主成分とする成型触媒にて比較したところ、ZSM−5 (MFI)ゼオライトを主成分とする触媒の性能が流通系では十分に発揮されないという問題点が存在し、ベータ型のゼオライトがより優れていることが明らかとなり本発明をなした。
【0045】
選択性を向上させるために選ばれたゼオライト触媒の拡散の抵抗は、成型触媒を内装した反応器において安定して使用することが要求される流通系においては、活性の著しい低下を引き起こす。また、本発明のベータ型のゼオライトを主成分とする成型触媒を内装した反応器にての流通式の結果は、成型触媒を粉末化してスラリー反応器にて回分式の結果と比較したところ、活性においても選択性においてもより優れていることが明らかとなった。
【0046】
また、本発明の反応器に内装するゼオライトを主成分とする成型触媒のベータ型のゼオライトとしては、そのSiO2/Al2O3比が 14以上、100以下であるものが好ましい(より好適には16〜50)。14より小さいとゼオライト結晶ないし粒子の外表面部分に八面体のアルミニウムが存在し、それ単独あるいはゼオライトの外表面に存在する官能基との相互作用で、非選択的塩素化反応を進行させるようなゼオライト外表面の種々の強度の酸点すなわち金属(ナトリウム)カチオンイオン交換サイトあるいは、塩素付加反応を進行させる塩基点が形成されると考えられるので好ましくない。また 100より大きいとゼオライトの細孔の中の活性点の濃度が低くなり拡散距離が長くなることで反応がトリ体まで進行することとなり、また、生成物の滞留によって原料分子の細孔内拡散が抵抗を受け目的反応の進行が妨げられる。
【0047】
また、イオン交換を短時間で目的の程度まで進行させるためには複数回のイオン交換操作、好適にはナトリウム塩の水溶液を交換しながら行われる。さらには、最終回の操作においては溶液側のpHが酸性側で終了するとともに、付着する塩化ナトリウムを洗浄、除去して行う方法が選ばれる。このときの塩化ナトリウムの水溶液濃度や量およびイオン交換操作の回数は、適宜選ぶことが出来る。
【0048】
しかるに、ゼオライトのイオン交換サイトのうち少なくとも一部が、ナトリウムカチオンで占められている状態になっているのが、塩化ナトリウムでナトリウムカチオンにイオン交換できるサイトであると考えられる。そのようなサイトとしては、プロトン型にしたときに強酸性を示すブレンステッド酸であると考えられる。
【0049】
ちなみに、本形態のゼオライト触媒のゼオライトの状態を作るには、ゼオライトないしゼオライトを主成分とする成型触媒が、プロトンタイプにされた後、金属、特にナトリウムの強酸塩にてイオン交換されて、イオン交換サイトの少なくとも 10%以上がナトリウムカチオンで占められている状態にすることが効果的である。
【0050】
また、本形態のゼオライト触媒を作るには、ゼオライトと新たなイオン交換サイトを形成しないようなマトリックスが好ましい。そのような好ましいマトリックスとして、たとえばナノ粒子サイズのシリカエアロゾルなどが単独で用いられる。複数の成型基剤を同時に使用するとゼオライト表面で新たなイオン交換サイトができ、触媒の活性に悪影響を与える可能性がある。またゼオライトは主にSiO2から成り立つため、成型助剤としてSiO2を使用する事は好ましい。ゼオライト表面のAlを酸処理によって除去した後にSiO2を成型助剤として使用する事もできる。
【0051】
成型基剤の役割としては、成型体にゼオライトの触媒性能を損なうことなく与えかつ工業的に使用できる強度を有しなければならない。そのような成型基剤としての量は、10重量%から50重量%、好ましくは15重量%から35重量%が選ばれる。10重量%未満であるとゼオライトと成型基剤の結合性が悪くなる。50重量%以上であると必要以上に触媒のボリュームが大きくなるとともに、反応原料がゼオライト活性点まで到達しにくくなるという拡散の影響を受け易い。
【0052】
(反応装置の概要)
ゼオライト触媒は、固定床として使用し、原料、塩素ガス及び冷却媒体を流通させるのが望ましい。
【0053】
前記原料、塩素ガス及び冷却媒体は、アップフローで流通させることも可能であるが、ダウンフローでの流通がより好ましい。アップフローで流通させると、反応器内が液の連続相となるために、溶液への塩素ガスの溶解が律速となることや、液中反応生成物の逆混合が起こるという問題が残るが、ダウンフローにすることにより、反応器内をガスの連続相とすることで前記の問題を解決することが可能である。
【0054】
この場合、塩素ガス中心とするガス相の分散と液相均一流れを確保し、逆混合を排除するようにするのが望ましい。採用する反応器径によりガス液混相流のフローパターンが変化する。採用すべきフローパターンは、脈動流(Pulsing and Foaming Flow)か潅液流(Gas−continuous or Tricking Flow)であるが、望ましくは潅液流である。脈動流とは液ホールドアップの大きい個所と小さな個所が交互にながれる状態であり、潅液流は液体が触媒粒子上を重力によって膜状に流下し、その空間をガスが連続相となって流れる状態である。ガス液混相流の流速が大きくなるにしたがって、フローパターンは脈動流から潅液流に変化する。
【0055】
また、反応器固定床の段数は複数段を有し、好適には3段を有する。固体触媒の劣化は多くの場合、劣化原因物質の入口部からの流入による活性点の消失がある。これに対する対策としては、各固定床を独立槽3基をシリーズで接続し、劣化したら接続を入れ替えてサイクリックに運用する方式とできる。クロロホルムの添加量も多段にすることにより使いまわしが可能となり、系内循環のクロロホルム量を抑制できる。
【0056】
反応温度としては、温度が低すぎると粘性が高くなり、圧損が増加する。逆に高温の場合、塩素溶解律速となり反応は抑制される。したがって、反応温度としては、40〜130℃、より好ましくは、55〜90℃である。
【0057】
反応圧としては、反応温度例として80℃とした図7に示すように、クロロホルムの添加量やPDCB液相回収率の相関からして、950〜1450Torrが望ましい(55〜90℃の範囲内であれば同様。)。
【0058】
図7から次のことが判る。すなわち、(1)運転圧が高くなると、クロロホルム/ベンゼン比を高めないと、反応温度を維持できない、(2)ある操作温度である圧力以上では、クロロホルムが蒸発しなくなり、その温度を維持するために、膨大なクロロホルムが必要となる、(3)逆に、ある操作温度である圧力以下では、クロロホルムが全蒸発する。その際にPDCBを同様に蒸発する、(4)したがって、クロロホルムやPDCBが反応器の塔底に残る条件が適当であり、クロロホルム/ベンゼン比に対して、クロロホルムやPDCBの回収が大きく影響されない領域で操作するのが好ましく、クロロホルム/ベンゼン比が16〜20、PDCB回収率が90〜95%の領域が望ましい。
【0059】
反応後、断熱蒸発したクロロホルム及び反応生成物を回収して次段で再利用するために冷却することとなる。クロロホルムの凝縮冷却のためには、シェルアンドチューブなどの、汎用の外部熱交換器を用いることができる。
【0060】
PDCBも気化するがPDCBの融点は53℃であるため、PDCBが単独で凝縮するような環境では53℃以下にできない。しかし、クロロホルムはPDCBに対して溶剤として働くのでクロロホルムが存在すれば、常温近辺でもPDCBの析出は起きないことを実験的に確認している。40℃以下まで下げることは不可能ではない。
【0061】
直接冷却媒体のトリクロロメタン(クロロホルム)は塩素と反応しテトラクロロメタンに転化する。その結果、テトラクロロメタンがトリクロロメタン循環系に蓄積することがないように、テトラクロロメタンをトリクロロメタンより分離して系外に除去するのが望ましい。
【0062】
ところで、ベンゼンを原料として塩素ガスにより塩素化してパラジクロロベンゼンを製造する方法において、ベンゼンと塩素ガスとの反応速度と比較して、反応中間体であるもモノクロロベンゼンと塩素ガスとの反応速度が遅いことにより(図8)、必要触媒量が相対的に大きくなる。それにより触媒を充填する反応器が大きくなり、併せて設備投資が増大する。
【0063】
そこで、本発明では、塩素ガスの供給方法に関して新規提案を行うものである。具体的には、前記反応器は複数段を有し、初段の反応器に前記原料、冷却媒体、塩素ガス及び/又は後段の未反応塩素ガスを供給し、前段の反応生成物と次段の反応器に供給し、次段以降の反応器には冷却媒体、及び過剰量の塩素ガスを供給し、最終段の生成反応物からお粗ジクロロベンゼンを得るパラジクロロベンゼンの製造方法である。この方法によりモノクロロベンゼンと塩素ガスとの反応速度を向上させることができる(図8)。
【0064】
加えて、塩素ガスを過剰量供給すると、従来技術である均一系触媒の場合、目的生成物であるパラジクロロベンゼンを含むジクロロベンゼンが過剰量の塩素ガスと反応し、トリクロロベンゼンを生成するが、本発明においてはゼオライト触媒を使用することにより、トリクロロベンゼンの生成を抑制することが可能である。図9に示されるように、Cl2/MCB=1.0以上の条件でパラジクロロベンゼンの製造を行っても反応生成物の塩素化度は2.0付近で止まり、トリクロロベンゼン合成反応が抑制される。
【0065】
次に、プロセス構築に望ましい操作について補足的に説明する。
反応器での反応生成物中には、副生物(炭化水素化合物)及び塩化水素が含まれている。塩化水素の沸点は−85℃であり、極めて液体回収が難しいので、水溶液として回収する。回収する塩化水素濃度はできるだけ高い方が望ましいが、35%HCl程度ならば容易に回収できる。
【0066】
すなわち、反応器での反応生成物を塩化水素除去塔に送り、塩化水素除去塔の塔頂から塩化水素及びこれに同伴する炭化水素化合物を分離し、これを冷却塔に送り、この冷却塔内に、付属のコンデンサで冷却した水相分を塔内に散布して冷却することにより、冷却塔底で水相とクロロホルム相に分離するようにし、その分離した水相分として35%HCl水溶液を得る。なお、反応器最終段からの冷却媒体は、コンデンサにより冷却した後、混合器に導き、新クロロホルムの供給用に使用できる。前記混合器からのクロロホルムの一部は、冷却塔内に送り込み、前述のように冷却塔底で水相とクロロホルム相に分離する。クロロホルム相については、後段の分離塔により水とクロロホルムとに分離し、クロロホルムについては再利用する。
【0067】
塩化水素除去塔の塔底に集まる反応生成物については、その後に、TCB、m-DCB、o-DCBを除去しながら、目的のp−DCBを晶析させて製品化することができる。
【0068】
また、系内の液はプロセス内の適宜の位置に返送して再利用することができる。
【0069】
(実施の形態)
次に、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の好適な実施の形態を示す。
10は反応器であり、実施の形態では3段構成である。原料たるベンゼン1は、必要により図示しない水分除去手段により予め水分が除去された後に、第1段の反応器10の塔頂から供給される。
【0070】
塩素ガス2は、最終段の反応器10の塔頂から供給される。各反応器10、10、10にはコンデンサ12、12、12が付設されている。クロロホルム(冷却媒体)3は、貯蔵タンクから、混合器14に送られ、ポンプ16により、第1段の反応器10にその塔頂から供給される。また、詳細は図示していない処理フローの後工程で回収された回収クロロホルム3Aがベンゼン1と共に、第1段の反応器10の塔頂から供給されるようになっている。また、前記混合器14には、同じく詳細は図示していない処理フローの後工程で回収された回収クロロホルム3Bが供給される。
【0071】
各反応器10、10、10内にはゼオライト触媒18(成形体)が固定床として内装されており、原料(ベンゼン)、塩素ガス及び冷却媒体がダウンフローで流通するようになっている。反応器10周壁には冷却用ジャケット11が設けられ、水などの冷却媒体によって冷却されるようになっている。
【0072】
反応生成物は、順次ポンプ20、20により次段の反応器10、10に導かれる。反応器10内で蒸発成分(主に冷却媒体)は、コンデンサ12、12、12により凝縮された後、次段の反応器10、10及び混合器14に送られる。未反応塩素ガス及び/又は反応により生成した塩化水素は前段の反応器10の塔頂から供給される。凝縮しなかった少量の反応生成物の一部とクロロホルムは、冷却塔24に送られる。
【0073】
最終段の反応器10の塔底成分は、塩化水素除去塔22に送られ、下部加熱により、塩化水素除去塔22の塔頂から塩化水素及びこれに同伴する炭化水素化合物を分離し、これを冷却塔24に送り、この冷却塔24内に、付属のコンデンサ26で冷却した水相分を、ポンプ28により塔内に散布して冷却することにより、冷却塔24において水相とクロロホルム相に分離するようにし、その分離した水相分として35%HCl水溶液を得る。冷却塔24の塔底の下部に設けた沈殿槽30に集めたクロロホルム相については、後段の分離塔(図示せず)により水とクロロホルムとに分離し、クロロホルムについては再利用する。
【0074】
反応器10最終段からの冷却媒体は、コンデンサ12により冷却した後、混合器14に導き、新クロロホルムの供給用に使用できる。
【0075】
塩化水素除去塔22の塔底に集まる反応生成物については、その後に、適宜の処理手段を使用して、TCB、m-DCB、o-DCBを除去しながら、目的のp−DCBを晶析させて製品化することができる。なお、符号32は減圧ポンプである。
【実施例】
【0076】
(実施例)
図1のフローに従ってベンゼンを原料として塩素ガスにより塩素化してパラジクロロベンゼンを製造した。反応器内にBEAゼオライト触媒のシリカ成形体を固定床として内装した。
反応温度80℃、圧力1.8kg/cm2の条件で塩素化反応を行った。塩素化度としては約2.0とした。
得られたp−DCBの選択性は74.6%であり、高い選択性をもって、p−DCBを安定して製造できた。
【0077】
(比較例)
従来法である均一系触媒塩化第二鉄FeCl3を用いた比較例を示す。反応装置としては、図10に示すように、ジャケット51及び攪拌機52付き完全混合型反応器50を使用し、これに塩素を供給ブロアから、ベンゼン及びFeCl3を供給し、冷却水ユニット53によりジャケット51を介して冷却しながら反応を行うものである。底部からの反応生成物は冷却後に液貯槽54に、頂部からのガス液成分は冷却後にガス液貯槽55に貯留した。
【0078】
反応条件は、次記のとおりである。
○ 触媒FeCl3濃度:0.0088触媒mol/ベンゼンmol
○ 原料塩素ガス供給速度:0.85mol/ベンゼンmol
○ 反応温度:80℃
【0079】
この反応過程におけるベンゼンの塩素化の生成物変化を反応進行度(塩素化度)であらわすと図11となる。
図11から均一系触媒は反応が逐次及び併発的にも進行していることがわかる。この理由として、均一系触媒は拡散の抵抗がないため、ベンゼンとMono体、あるいはMono体とDi体が同時に反応したためだと考えられる。それ故、反応におけるDi体選択性は最大80%に留まる。
【0080】
DCB収率に伴うDCBの中でのPDCBの選択性の変化を図12、塩素化に伴うPDCB収率の推移を図13に示す。均一系触媒はOrtho−Para配向に立体障害がないため、Para体選択性は図12に示すように60%と低い値である。またDi体選択性は最大80%に留まるため反応におけるPara体最大収率は図13に示すように50%である。
【0081】
標準条件の反応温度80℃から70℃に下げて実験を行った。結果を図14に示す。反応温度を下げても、Para体選択性は変わらないことがわかる。
【0082】
次に、触媒量を0.0181 g−cat/g−Bz (0.0088触媒mol/ベンゼンmol)から約1/20の0.0010 g−cat/g−Bz (0.00049触媒mol/ベンゼンmol)にまで減らした結果、活性は変わらず、図15に示すように一本の曲線で整理され選択性も変わらないことが明らかとなった。
【0083】
以上のように、均一系触媒を使用する限り、p−DCBを高い選択性をもって製造することはできないものであることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、PPSの原料として工業的価値のきわめて高い化合物を連続的に得ることができる。
【符号の説明】
【0085】
1…ベンゼン、2…塩素ガス、3…クロロホルム(冷却媒体)、10…反応器、11…ジャケット、12…コンデンサ、14…混合器、16…ポンプ、18…ゼオライト触媒、20…ポンプ、22…塩化水素除去塔、24…冷却塔、26…コンデンサ、28…ポンプ、30…沈殿槽、32…減圧ポンプ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンゼン及びモノクロロベンゼンの少なくとも一方を原料として塩素ガスにより塩素化してパラジクロロベンゼンを製造する方法において、ゼオライトを含む触媒を内装した複数段を有する反応器のうち、初段の反応器に前記原料、塩素ガス及び/又は後段の未反応塩素ガスを供給し、前段の反応生成物を次段の反応器に供給し、次段以降の反応器には過剰量の塩素ガスを供給し、最終段の生成反応物からパラジクロロベンゼンを得ることを特徴とするパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項2】
クロロメタン及びクロロエタンの少なくとも一種の冷却媒体を前記反応器の各段に導入し、前記冷却媒体を蒸発させて前記塩素化反応の温度上昇を抑制する請求項1記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項3】
前記冷却媒体の蒸発ガス分は、反応器外で凝縮させその凝縮液を前記冷却媒体として再利用する請求項2記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項4】
前記反応器内に前記ゼオライトを含む触媒を固定床として内装する請求項1〜3のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項5】
前記ゼオライトを含む触媒が、ゼオライトがアルミナゾルを主成分とする成型基剤により成型されて得られる請求項1〜4のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項6】
前記ゼオライトがプロトンタイプのゼオライトである請求項1〜5のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項7】
前記ゼオライトがベータ型のゼオライトである請求項1〜6のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項8】
前記ゼオライトがMFI型のゼオライトである請求項1〜6のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項9】
前記原料、塩素ガス及び冷却媒体をダウンフローで流通させる請求項1〜8のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項10】
前記塩素化反応を温度40〜130℃、圧力10atm以下で行う請求項1〜9のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項1】
ベンゼン及びモノクロロベンゼンの少なくとも一方を原料として塩素ガスにより塩素化してパラジクロロベンゼンを製造する方法において、ゼオライトを含む触媒を内装した複数段を有する反応器のうち、初段の反応器に前記原料、塩素ガス及び/又は後段の未反応塩素ガスを供給し、前段の反応生成物を次段の反応器に供給し、次段以降の反応器には過剰量の塩素ガスを供給し、最終段の生成反応物からパラジクロロベンゼンを得ることを特徴とするパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項2】
クロロメタン及びクロロエタンの少なくとも一種の冷却媒体を前記反応器の各段に導入し、前記冷却媒体を蒸発させて前記塩素化反応の温度上昇を抑制する請求項1記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項3】
前記冷却媒体の蒸発ガス分は、反応器外で凝縮させその凝縮液を前記冷却媒体として再利用する請求項2記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項4】
前記反応器内に前記ゼオライトを含む触媒を固定床として内装する請求項1〜3のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項5】
前記ゼオライトを含む触媒が、ゼオライトがアルミナゾルを主成分とする成型基剤により成型されて得られる請求項1〜4のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項6】
前記ゼオライトがプロトンタイプのゼオライトである請求項1〜5のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項7】
前記ゼオライトがベータ型のゼオライトである請求項1〜6のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項8】
前記ゼオライトがMFI型のゼオライトである請求項1〜6のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項9】
前記原料、塩素ガス及び冷却媒体をダウンフローで流通させる請求項1〜8のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【請求項10】
前記塩素化反応を温度40〜130℃、圧力10atm以下で行う請求項1〜9のいずれかに記載のパラジクロロベンゼンの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−229059(P2010−229059A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77002(P2009−77002)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】
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