説明

パリソン長測定方法及び装置

【課題】本発明は、パリソンの流れ方向に対して並行に直線移動させることにより、このリニアセンサからのパリソンに関する変化量を用いて、パリソンを測定することを目的とする。
【解決手段】本発明によるパリソン長測定方法及び装置は、パリソン(22)の側面(23)に対応した位置に配設した複数のリニアセンサ(60a)を用い、各リニアセンサ(60a)をパリソン(22)の流れ方向(A)に対して並行に直線移動させ、各リニアセンサ(60a)から得られたパリソン(22)の変化量(70)からパリソン長、ドローダウン量及びパリソンスウェルの何れか又は全てを測定する方法と構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パリソン長測定方法及び装置に関し、特に、パリソンの流れ方向に対して並行に直線移動させることにより、このリニアセンサからのパリソンに関する変化量を用いて、パリソンを測定するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のパリソン長測定方法及び装置としては、例えば、特許文献1及び特許文献2で示される方法を挙げることができる。
すなわち、図4で示される特許文献1の方法においては、ダイス10の下方の所定位置に複数のパリソンセンサ60a〜60nを上下方向に配列し、ダイス10から射出されたパリソン22の下端部を検出して、検出信号をパリソン補正部62の2次回帰曲線演算器64に入力し、2次回帰曲線演算部64によってパリソンセンサ60a〜60nの位置とパリソン22の検出時刻とから2次回帰曲線を演算する。その後、加速度演算器66において2次回帰曲線からパリソン22のドローダウン加速度を演算し、比較部70によって最適なドローダウン加速度と比較し、両者の偏差を補正値演算器72に入力する。補正値演算器72は、比較部70からの信号に基づいてプログラム信号発生器40が出力するダイスギャップ20を制御する信号の補正値を演算する。
【0003】
また、図5で示される特許文献2の方法においては、図5において1は押出機、2は押出機のダイ、3は降下しつつある溶融パリソン、4は溶融パリソンの降下状況を撮影するためのカメラ、5はカメラ4にノイズとなる有害光が入射するのを防止するための黒色のバックボード、6は画像処理装置、7はモニターテレビ、8はプリンターである。先ず押出機より溶融パリソンを押出し、定常的に押出される状態になった時点で、溶融パリソンをダイ出口の位置で切り離す。引続き押出しを続行し、溶融パリソンの先端が計測開始点を通過した時点からカメラを作動させて、溶融パリソンを撮影し且つその撮影時刻を記録する。撮影は溶融パリソンの先端が計測終了点を通過するまで続行する。なお、上述の如く、通常は溶融パリソンがダイ出口から一定距離だけ降下した位置から撮影を開始するが、溶融パリソンがダイ出口に出現した時点から計測を開始してもよい。カメラにより得られた画像は、画像処理装置7で処理して、各撮影時点における溶融パリソンの長さ又は先端位置を求める。この撮影時点とその時点での溶融パリソンの長さ又は先端位置のデータに基づいて、溶融パリソンの各時点における降下速度及び降下の加速度を算出すると、ドローダウンがどの時点で発生し、かつどのように進行するかを正確に把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−338510号公報
【特許文献2】特開平9−234783号公報
【特許文献3】特開平6−293062号公報
【特許文献4】特開2008−238727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のパリソン長測定方法及び装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の特許文献1で示されている方法においては、パリソンを吐出するクロスヘッドの下方で、かつ、パリソンの側部の所定位置に複数のパリソンセンサが上下方向に配列され、吐出されたパリソンの下端部を検出する構成であり、パリソンの長さを測定するので、パリソンスウェルの状況は全く検出することができなかった。
【0006】
また、前述の特許文献2の方法においては、クロスヘッドから吐出されるパリソンの降下状況を1台のカメラで経時的に撮影し、得られた画像データを画像処理装置で処理し、各撮影時点におけるパリソンの降下量を求める構成であるため、パリソンの全長及びパリソンスウェルの状況も計測できるが、例えば、前述の特許文献3及び4に開示されているような肉厚制御が加わった場合、パリソンの部位によってパリソンスウェルの形状が変化するが、1個のカメラではパリソンの平面しか撮影できていないので、肉厚制御が加わったパリソン外周上の部位によって異なる種々のパリソンスウェルの変化に対応することは不可能であった。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、パリソンの側部に複数のリニアセンサを上下動自在に配設し、パリソン長、ドローダウン量及びパリソンスウェルの何れか又は全てを測定し、さらに、温度センサを付加することにより、パリソンの温度分布から時間的温度変化も計測できるようにしたパリソン長測定方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるパリソン長測定方法は、クロスヘッドのダイコアのダイギャップから下方へ吐出されるパリソンのパリソン長、ドローダウン量及びパリソンスウェルの何れか又は全てをセンサによって測定するようにしたパリソン長測定方法において、前記センサとして前記パリソンの側面に対応した位置に配設した複数のリニアセンサを用い、前記各リニアセンサを動作機構を介して前記パリソンの流れ方向に対して並行に直線移動させ、前記各リニアセンサにより得られた前記パリソンの変化量を制御部によって距離に演算することにより、前記パリソンのパリソン長、ドローダウン量及びパリソンスウェルの何れか又は全てを測定する方法であり、また、前記リニアセンサには温度センサが設けられ、前記温度センサからの温度出力信号により前記パリソン長での温度分布を測定する方法であり、また、本発明によるパリソン長測定装置は、クロスヘッドのダイコアのダイギャップから下方へ吐出されるパリソンのパリソン長、ドローダウン量及びパリソンスウェルの何れか又は全てをセンサによって測定するようにしたパリソン長測定装置において、前記センサとして前記パリソンの側面に対応した位置に配設した複数のリニアセンサを用い、前記各リニアセンサを動作機構を介して前記パリソンの流れ方向に対して並行に直線移動させ、前記各リニアセンサにより得られた前記パリソンの変化量を制御部によって距離に演算することにより、前記パリソンのパリソン長、ドローダウン量及びパリソンスウェルの何れか又は全てを測定する構成であり、また、前記リニアセンサには温度センサが設けられ、前記温度センサからの温度出力信号により前記パリソン長での温度分布を測定する構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるパリソン長測定方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、クロスヘッドのダイコアのダイギャップから下方へ吐出されるパリソンのパリソン長、ドローダウン量及びパリソンスウェルの何れか又は全てをセンサによって測定するようにしたパリソン長測定方法及び装置において、前記センサとして前記パリソンの側面に対応した位置に配設した複数のリニアセンサを用い、前記各リニアセンサを動作機構を介して前記パリソンの流れ方向に対して並行に直線移動させ、前記各リニアセンサにより得られた前記パリソンの変化量を制御部によって距離に演算することにより、前記パリソンのパリソン長、ドローダウン量及びパリソンスウェルの何れか又は全てを測定することにより、リニアセンサからの出力信号を利用し、パリソン長、パリソン降下加速度、ドローダウン量、パリソンスウェルの測定はもちろんのこと、同様に温度センサを利用することで、温度分布と時間的変化の関連性の観測も行うことができる。
従来のパリソンスウェルは検査の際に、吐出されたパリソンを切り出し、人が測定していたが、この場合、切り出したパリソンが長時間常温にさらされることにより収縮してしまい、スウェル測定の精度に若干の誤差が生じているのが現状であるが、本発明による方法と装置を用いることにより、吐出中のパリソンの様々な状態をリアルタイムで観測できるので、成形するに当って必要なデータ収集が容易となる。
また、前記リニアセンサには温度センサが設けられ、前記温度センサからの温度出力信号により前記パリソン長での温度分布を測定することができ、パリソンの細部の形状データを用いて、より高精度の中空成形を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明によるパリソン長測定方法及び装置を示す全体構成図である。
【図2】本発明におけるパリソン長測定方法の測定状態を示す特性図である。
【図3】本発明におけるパリソン長測定方法におけるパリソン長変化曲線である。
【図4】従来のパリソン長測定方法を示す概略構成図である。
【図5】従来の他のパリソン長測定方法を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、パリソンの流れ方向に対して並行に直線移動させることにより、このリニアセンサからのパリソンに関する変化量を用いて、パリソンを測定するようにしたパリソン長測定方法及び装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0012】
以下、図面と共に本発明によるパリソン長測定方法及び装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例(図4)と同一又は同等部分には同一符号を付して説明する。
図1において符号15で示されるものはクロスヘッドであり、このクロスヘッド15の下部のダイコア16に形成されたダイギャップ20からは、円筒形をなすパリソン22が吐出された状態で下方へ垂下するように構成されている。
前記パリソン22は、矢印で示されるパリソンの流れ方向Aに沿って鉛直方向に流れるように構成されている。
【0013】
前記パリソン22の側面23に対応した位置には、上下動の動作を行うことができるように鉛直方向に配設された動作機構65が配設されており、この動作機構65には、センサを形成するリニアセンサ60aが、図示のように、実線及び点線で示される位置に従って上下方向Bの如く自在に上下に沿って直線移動できるように搭載されている。
【0014】
前記動作機構65の数は、図1の構成では、パリソン22の側面23に対応した位置に180度対向して一対配設した場合を示しているが、前記クロスヘッド15又はパリソン22を平面的に見た場合、前述の一対構成だけではなく、パリソン22の周囲に対応して90度毎、45度毎、30度毎等の何れかとして用いることもできる。
【0015】
前記動作機構65は、その詳細な構成を示していないが、例えば、周知の図示しないラック・アンド・ピニオンにモータを接続した構造とすることもでき、このラックに前記リニアセンサ60aを取付けることにより、前述の上下方向Bに沿う動作を行うことができる。
尚、前述のモータを周知のサーボモータ又はステップモータとして、周知のサーボ制御することにより、自在にリニアセンサ60aの上下方向Bにおける位置制御を行うことができる。
【0016】
前記リニアセンサ60aは、例えば、赤外線、レーザー、超音波、光等の周知の媒体を介して、前記パリソン22の側面23からリニアセンサ60aまでの距離を測定する構成であり、前記パリソン22の側面23の物理変化量を検知し、その変化量を距離に換算して演算することにより、リニアセンサ60aからパリソン22の距離変位を計測することができるように構成されている。
【0017】
前記各リニアセンサ60aの出力信号である前記変化量70は、制御部64を構成する演算部71に入力されて演算され、この演算により、前記変化量70が前記距離73に変換され、この距離73が処理部72に入力されて、周知のパリソン22のパリソン長の測定、パリソン22のドローダウン量の測定、及び、パリソン22のパリソンスウェルの観測を行うことができるように構成されている。
【0018】
次に、前述の構成において、本発明によるパリソン長測定方法の動作について述べる。
まず、図1のように、パリソン22の側面23の周囲に動作機構65を介して複数のリニアセンサ60aを配置する。
前述の状態で、前記ダイギャップ20を基点として各リニアセンサ60aを上下方向Bに沿って移動させることにより、図2の(A)のように、パリソン22のパリソン最下部a(最も長さLが変化した部分でパリソン長を示す)及びダイギャップ20から吐出直後のパリソンスウェルbの状態を検出することができる。
さらに、前記パリソン22が吐出されて時間が経過すると、図2の(B)で示されるように、パリソンスウェルbの変化を把握することができる。
【0019】
さらに、前記各リニアセンサ60aの上下動の動作を繰り返すことにより、パリソン22の時間的変化を継続的に測定していくことができ、このようにして得られた各リニアセンサ60aからのデータである変化量70におけるパリソン最下部22aのデータを制御部64で周知の方法で処理することによって、パリソン22の加速度、ドローダウン量を求めることができる。
【0020】
また、前記各リニアセンサ60aに温度センサ80を設け、パリソン22の各部位の温度出力信号70aを取り込むことにより、パリソン22の加速度及びドローダウン量の関係を観測し易くできる。
従って、前述のように各リニアセンサ60aから出力される変化量70に関する各種データをバックアップして積み上げることにより、その後のパリソン22の成形条件を容易に出すこと、及び、新規のダイコア製作の際における重要なデータとすることができる。
【0021】
すなわち、本発明におけるパリソン長測定方法及び装置においては、クロスヘッド15のダイコア16のダイギャップ20から下方へ吐出されるパリソン22のパリソン長、ドローダウン量及びパリソンスウェルの何れか又は全てをセンサによって測定するようにしたパリソン長測定方法及び装置において、前記センサとして前記パリソン22の側面23に対応した位置に配設した複数のリニアセンサ60aを用い、前記各リニアセンサ60aを動作機構56を介して前記パリソン22の流れ方向Aに対して並行に直線移動させ、前記各リニアセンサ60aにより得られた前記パリソン22の変化量を制御部64によって距離に演算することにより、前記パリソン22のパリソン長、ドローダウン量及びパリソンスウェルの何れか又は全てを測定することを特徴とし、前記リニアセンサ60aには温度センサ80が設けられ、前記温度センサ80からの温度出力信号70aにより前記パリソン長での温度分布を測定することを特徴とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によるパリソン長測定方法及び装置は、パリソンの流れに沿って移動する複数のリニアセンサによってデータを取ることにより、パリソン長、ドローダウン量及びパリソンスウェルの何れか又は全てを測定することができる。
【符号の説明】
【0023】
A パリソンの流れ方向
B 上下方向
15 クロスヘッド
16 ダイコア
20 ダイギャップ
22 パリソン
22a パリソン最下部
23 側面
60a リニアセンサ
64 制御部
65 動作機構
70 変化量
70a 温度出力信号
71 演算部
72 処理部
73 距離
80 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスヘッド(15)のダイコア(16)のダイギャップ(20)から下方へ吐出されるパリソン(22)のパリソン長、ドローダウン量及びパリソンスウェルの何れか又は全てをセンサによって測定するようにしたパリソン長測定方法において、
前記センサとして前記パリソン(22)の側面(23)に対応した位置に配設した複数のリニアセンサ(60a)を用い、前記各リニアセンサ(60a)を動作機構(65)を介して前記パリソン(22)の流れ方向(A)に対して並行に直線移動させ、前記各リニアセンサ(60a)により得られた前記パリソン(22)の変化量(70)を制御部(64)によって距離に演算することにより、前記パリソン(22)のパリソン長、ドローダウン量及びパリソンスウェルの何れか又は全てを測定することを特徴とするパリソン長測定方法。
【請求項2】
前記リニアセンサ(60a)には温度センサ(80)が設けられ、前記温度センサ(80)からの温度出力信号(70a)により前記パリソン長での温度分布を測定することを特徴とする請求項1記載のパリソン長測定方法。
【請求項3】
クロスヘッド(15)のダイコア(16)のダイギャップ(20)から下方へ吐出されるパリソン(22)のパリソン長、ドローダウン量及びパリソンスウェルの何れか又は全てをセンサによって測定するようにしたパリソン長測定装置において、
前記センサとして前記パリソン(22)の側面(23)に対応した位置に配設した複数のリニアセンサ(60a)を用い、前記各リニアセンサ(60a)を動作機構(65)を介して前記パリソン(22)の流れ方向(A)に対して並行に直線移動させ、前記各リニアセンサ(60a)により得られた前記パリソン(22)の変化量(70)を制御部(64)によって距離に演算することにより、前記パリソン(22)のパリソン長、ドローダウン量及びパリソンスウェルの何れか又は全てを測定することを特徴とするパリソン長測定装置。
【請求項4】
前記リニアセンサ(60a)には温度センサ(80)が設けられ、前記温度センサ(80)からの温度出力信号(70a)により前記パリソン長での温度分布を測定することを特徴とする請求項3記載のパリソン長測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−245624(P2012−245624A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116589(P2011−116589)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】