説明

パルス光ビーム照射装置、パルス光ビーム照射方法及び光情報記録装置

【課題】レーザ光源が発生し得るパルス周期よりも短いパルス間隔で複数のパルスを照射できるようにする。
【解決手段】光ディスク装置1は、パルス列生成部11においてレーザ光源21からパルスP0を含む光ビームL1を出射させ、パルス変換部23により間隔が約1[ns]である4本のパルスでなるパルス列PLに分割する。光ピックアップ7は、パルス列PLを含む光ビームLを対物レンズ8により記録層101内に集光する。これにより光ピックアップ7は、光ビームLの焦点Fの近傍で、最初のパルスP1の2光子吸収により生じた記録材料Mの励起状態を維持したまま2番目以降のパルスP2〜P4により励起状態吸収による反応を生じさせることができるので、極めて短い時間で記録層101に記録マークRMを形成することができる。この結果光ディスク装置1は、情報の記録速度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパルス光ビーム照射装置、パルス光ビーム照射方法及び光情報記録装置に関し、例えばパルス状のレーザ光を用いて光ディスクに情報を記録する光ディスク装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスク装置においては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)及びBlu−ray Disc(登録商標、以下BDと呼ぶ)等の光ディスクに対して情報を記録し、また当該光ディスクから当該情報を読み出すようになされたものが広く普及している。
【0003】
かかる光ディスク装置では、音楽コンテンツや映像コンテンツ等の各種コンテンツ、或いはコンピュータ用の各種データ等のような種々の情報を光ディスクに記録するようになされている。
【0004】
特に近年では、映像の高精細化や音楽の高音質化等により情報量が増大し、また1枚の光ディスクに記録するコンテンツ数の増加が要求されているため、当該光ディスクのさらなる大容量化が求められている。
【0005】
そこで、かかる光ディスクを大容量化する手法の一つとして、情報を表す記録マークの形成に2光子吸収を呈する材料(以下、これを2光子吸収材料と呼ぶ)を記録材料に用いて反応を生ぜしめ、当該記録マークを3次元に配列する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この2光子吸収による反応を利用する光ディスク装置では、例えばチタンサファイヤ等を用いたレーザ光源からパルス状のレーザ光を集光することにより、光ディスク内に高いエネルギーを集中させて記録ピットを形成するようになされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−37658公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、2光子吸収による反応は、比較的小さなエネルギーの光が照射されたとしても生じない。このことは、2光子吸収材料を記録材料として光ディスクに用いた場合、保存中等に比較的弱い光が照射されたとしても、記録マークの有無に拘わらずその状態が維持されるため、容易には破壊されず、安定性を高め得ることを意味している。
【0009】
その反面、2光子吸収材料により構成される記録材料は、比較的大きなエネルギーの光を集中的に照射しなければ反応が生じない。このため、2光子吸収による反応を利用する光ディスク装置は、例えば専用のレーザ光源等を用いる必要があり、装置構成が複雑化・大型化してしまっていた。
【0010】
ここで、2光子吸収材料のなかには、ある程度の強度の光が照射され生じた活性化状態、いわゆる励起状態で光が照射されると、さらに光吸収(いわゆる励起状態吸収)を生じるものがある。しかしながら、この励起状態は、極めて短い時間、例えば数[ns]程度しか維持されない。
【0011】
一方、既存の高強度のレーザ光源は、複数のパルスを連続的に発生させる場合、当該パルス同士の時間間隔(以下これをパルス間隔と呼ぶ)が短くとも13[ns]程度であり、数[ns]程度の間隔で発生させることができない。
【0012】
従って、既存のレーザ光源を用いた場合、光ディスク装置は、短いパルス間隔で複数のパルスを発生させることができず、2光子吸収材料における活性化された状態を利用できない、という問題があった。
【0013】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、光源が発生し得るパルス間隔よりも短い時間間隔で複数のパルスを含む光ビームを照射できるパルス光ビーム照射装置及びパルス光ビーム照射方法並びに光源が発生し得るパルス間隔よりも短い時間間隔で複数のパルスを含む光ビームを光情報記録媒体に照射できる光情報記録装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するため本発明のレーザ駆動装置及びレーザ駆動方法においては、1の光源から出射され所定時間幅内に1のパルスを含む光ビームが複数に分割されてなる複数の光ビーム、又は複数の光源からそれぞれ出射され所定時間幅内にそれぞれ1のパルスを含む複数の光ビームについて、それぞれに含まれるパルスの立ち上がりタイミングを互いに相違させ、複数の光ビームを合成することにより複数のパルスが順次立ち上がる合成光ビームを生成し、合成光ビームを所定の照射対象に照射するようにした。
【0015】
これにより本発明は、光源から出射される段階ではパルス間隔が所定時間幅以上であっても、合成された光ビームに含まれるパルス同士の間隔を所定時間幅以下に設定することができる。
【0016】
また本発明の光情報記録装置においては、所定時間幅内に1のパルスを含む光ビームを出射する光源を1又は複数有する光源部と、1の光源から出射された1の光ビームが複数に分割されてなる複数の光ビーム又は複数の光源からそれぞれ出射された複数の光ビームにそれぞれ含まれるパルスの立ち上がりタイミングを互いに相違させるタイミング調整部と、各パルスの立ち上がりタイミングが互いに相違する複数の光ビームを合成して合成光ビームを生成するパルス合成部と、光情報記録媒体に記録すべき情報に応じて、1の光ビーム、複数の光ビーム又は合成光ビームの光強度を変調させる情報変調部と、光情報記録媒体における多光子吸収材料でなる記録部に対し合成光ビームを集光する対物レンズとを設けるようにした。
【0017】
これにより本発明は、光源から出射される段階ではパルス間隔が所定時間幅以上であっても、合成された光ビームに含まれるパルス同士の間隔を所定時間幅以下に設定でき、情報に応じた変調パターンで光情報記録媒体の記録部に照射することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光源から出射される段階ではパルス間隔が所定時間幅以上であっても、合成された光ビームに含まれるパルス同士の間隔を、所定時間幅以下に設定することができる。かくして本発明は、レーザ光源が発生し得るパルス間隔よりも短い時間間隔で複数のパルスを照射できるレーザ駆動装置及びレーザ駆動方法を実現できる。
【0019】
また本発明によれば、光源から出射される段階ではパルス間隔が所定時間幅以上であっても、合成された光ビームに含まれるパルス同士の間隔を、所定時間幅以下に設定でき、情報に応じた変調パターンで光情報記録媒体の記録部に照射することができる。かくして本発明は、光源が発生し得るパルス間隔よりも短い時間間隔で複数のパルスを含む光ビームを光情報記録媒体に照射できる光情報記録装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】光ディスク装置の全体構成を示す略線図である。
【図2】光ディスクの構成を示す略線図である。
【図3】光ピックアップの構成を示す略線図である。
【図4】光ビームのパルス波形を示す略線図である。
【図5】第1の実施の形態によるパルス列生成部の構成を示す略線図である。
【図6】第1の実施の形態によるパルス列の生成の説明に供する略線図である。
【図7】パルス分割素子の構成を示す略線図である。
【図8】パルス合成素子の構成を示す略線図である。
【図9】データに応じた変調の説明に供する略線図である。
【図10】記録材料のエネルギー準位を示す略線図である。
【図11】一分子あたりの光子の吸収量を示す略線図である。
【図12】第2の実施の形態によるパルス列生成部の構成を示す略線図である。
【図13】第2の実施の形態によるパルス列の生成の説明に供する略線図である。
【図14】光ディスク初期化装置の構成を示す略線図である。
【図15】ガイドマークの形成位置の説明に供する略線図である。
【図16】他の実施の形態によるパルス列を示す略線図である。
【図17】他の実施の形態による変調の説明に供する略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(光ディスク装置・1つのレーザ光源を用いた例)
2.第2の実施の形態(光ディスク装置・複数のレーザ光源を用いた例)
3.第3の実施の形態(光ディスク初期化装置・1つのレーザ光源を用いた例)
4.他の実施の形態
【0022】
<1.第1の実施の形態>
本実施の形態では、図1に示す光ディスク装置1により、光情報記録媒体としての光ディスク100に情報を記録し、また当該光ディスク100から情報を再生するようになされている。
【0023】
[1−1.光ディスクの構成]
図2に断面図を示すように、光ディスク100は、光ディスク装置1から光ビームLを照射することにより情報が記録されるようになされている。また光ディスク100は、当該光ビームLを反射して反射光ビームLrとし、これが光ディスク装置1に検出されることにより情報が再生されるようになされている。
【0024】
実際上光ディスク100は、全体として略円板状に構成されており、情報を記録するための記録層101及びある程度の強度を有する基板102が貼り合わされたような構成を有している。
【0025】
光ディスク装置1は、後述するレーザ光源から出射される光ビームLを対物レンズ8により光ディスク100の記録層101内に集光するようになされている。
【0026】
記録層101は、波長約400[nm]の光を2光子吸収する2光子吸収材料を含有している。この2光子吸収材料は、光強度の2乗に比例して2光子吸収を生じさせることが知られており、光強度の非常に大きい光に対してのみ2光子吸収を生じさせる。なおこの2光子吸収材料としては、ヘキサジイン化合物、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、フタロシアニン色素及びアゾ色素などを用いることができる。以下の説明では、この2光子吸収材料を記録材料Mとも呼ぶ。
【0027】
記録層101は、比較的強い強度でなる光ビームLが内部に照射されると、2光子吸収をきっかけにした反応、例えば2光子吸収材料の分解反応により気泡を形成し、この結果焦点Fの位置を中心とした空孔でなる記録マークRMを記録する。
【0028】
ここで記録層101は、2光子吸収材料を含有するため、光強度の2乗に比例して反応が生じる。すなわち記録層101では、例えば対物レンズ8により集光された焦点近傍のように光の照射強度が極めて高い箇所では反応が生じ、当該焦点以外のように光の照射強度が低い箇所では殆ど反応を生じない。
【0029】
また記録層101には、記録マークRMを形成すべき位置を識別するためのガイドマークGMが予め形成されている。このガイドマークGMは、光ディスク100の盤面と略平行な複数の仮想平面内でそれぞれ螺旋状のトラックを間欠的に描くように配置されており、図2に示したように当該仮想平面毎に層を形成している。以下、ガイドマークGMにより形成される各層をそれぞれマーク層Yと呼ぶ。
【0030】
実際上、光ディスク装置1は、後述するフォーカス制御及びトラッキング制御により光ビームLの焦点を所望のマーク層Yに形成されたガイドマークGMに追従させ、当該ガイドマークGMの間欠部分で光ビームLの強度を高める。これにより光ディスク100の記録層101には、当該光ビームLの焦点近傍に記録マークRMが形成される。
【0031】
一方、光ディスク装置1は、光ディスク100から情報を再生する際、所望のマーク層Yに比較的弱い光ビームLを集光する。ここで焦点Fの位置に記録マークRMが形成されている場合、当該光ビームLが当該記録マークRMによって反射され、反射光ビームLrとなる。
【0032】
光ディスク装置1は、反射光ビームLrを検出すると共にその検出結果に応じた検出信号を生成し、当該検出信号を基に記録マークRMが形成されているか否かを検出する。
【0033】
このように光ディスク100は、比較的強い光ビームLが集光されると、その焦点F近傍において2光子吸収をきっかけにした反応を生じることにより、記録マークRMを形成するようになされている。
【0034】
[1−2.光ディスク装置の構成]
次に、光ディスク装置1の具体的な構成について説明する。図1に示したように、光ディスク装置1は制御部2を中心に構成されている。制御部2は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、各種プログラム等が格納されるROM(Read Only Memory)と、当該CPUのワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)とによって構成されている。
【0035】
制御部2は、光ディスク100に情報を記録する場合、駆動制御部3を介してスピンドルモータ5を回転駆動させ、ターンテーブル5Tに装着された光ディスク100を所望の速度で回転させる。
【0036】
また制御部2は、駆動制御部3を介してスレッドモータ6を駆動させることにより、光ピックアップ7を移動軸Gに沿ってトラッキング方向、すなわち光ディスク100の内周側又は外周側へ向かう方向へ大きく移動させるようになされている。
【0037】
光ピックアップ7は、対物レンズ8等の複数の光学部品が組み込まれており、制御部2の制御に基づいて光ディスク100へ光ビームL(図2)を照射するようになされている。
【0038】
また光ピックアップ7は、光ビームLが光ディスク100のガイドマークGM(図2)により反射されてなる反射光ビームLrを検出し、その検出結果に基づいた複数の検出信号を生成し、これらを信号処理部4へ供給する。
【0039】
信号処理部4は、検出信号を用いた所定の演算処理を行うことにより、フォーカスエラー信号SFE及びトラッキングエラー信号STEをそれぞれ生成し、これらを駆動制御部3へ供給する。
【0040】
因みにフォーカスエラー信号SFEは、サーボ光ビームLSのサーボ層103に対するフォーカス方向のずれ量を表す信号である。またトラッキングエラー信号STEは、サーボ光ビームLSの目標とするサーボトラックTS(すなわち目標サーボトラックTSG)に対するトラッキング方向のずれ量を表す信号である。
【0041】
駆動制御部3は、フォーカスエラー信号SFE及びトラッキングエラー信号STEを基に、後述するフォーカス制御及びトラッキング制御を行う。これにより駆動制御部3は、対物レンズ8によって集光される光ビームLの焦点Fを所望のマーク層Yに追従させる。
【0042】
また制御部2は、外部から供給される情報を信号処理部4に供給する。信号処理部4は、この情報に所定の変調処理等を施して記録データを生成し、光ピックアップ7へ供給する。
【0043】
光ピックアップ7は、記録データに基づいた強度の光ビームLを出射することにより、記録層101に記録マークRMを形成させる。かくして光ディスク装置1は、光ディスク100に情報を記録することができる。
【0044】
また光ピックアップ7は、光ディスク100から情報を再生する場合、比較的弱い光ビームLの焦点Fを所望のマーク層Yに追従させる。
【0045】
このとき光ビームLは、ガイドマークGM又は記録マークRMが形成されている箇所において反射され、反射光ビームLrとなる。光ピックアップ7は、この反射光ビームLrを検出し、その検出結果に基づいた検出信号を生成して、これを信号処理部4へ供給する。
【0046】
信号処理部4は、検出信号に対し所定の復調処理及び復号化処理等を施すことにより、記録マークRMとして記録されている情報を復元する。かくして光ディスク装置1は、光ディスク100から情報を再生することができる。
【0047】
このように光ディスク装置1は、光ピックアップ7から光ビームLを出射し光ディスク100の記録層101に照射することにより、光ディスク100に対する情報の記録処理及び再生処理を行うようになされている。
【0048】
[1−3.光ピックアップの構成]
次に、光ピックアップ7の構成について説明する。光ピックアップ7は、パルス列生成部11からパルス列を含む光ビームLを出射し、これを対物レンズ8により光ディスク100の記録層101内に集光するようになされている。これと共に光ピックアップ7は、光ビームLが光ディスク100により反射されてなる反射光ビームLrを受光するようにもなされている。
【0049】
パルス列生成部11は、図4(A)に示すように、複数のパルスでなるパルス列PLを含む光ビームLを出射し、偏光ビームスプリッタ12へ入射させる(詳しくは後述する)。
【0050】
偏光ビームスプリッタ12は、偏光面12Sにおいて、P偏光でなる光ビームを透過させると共に、S偏光でなる光ビームを反射させるようになされている。実際上偏光ビームスプリッタ12は、偏光面12SにおいてP偏光でなる光ビームLを透過させ、1/4波長板13へ入射させる。
【0051】
1/4波長板13は、光ビームLをP偏光(すなわち直線偏光)から円偏光(例えば左円偏光)に変換してリレーレンズ14へ入射させる。
【0052】
リレーレンズ14は、光ビームLの光軸方向に移動し得る可動レンズ14A及び固定された固定レンズ14Bにより構成されている。実際上リレーレンズ14は、可動レンズ14Aにより当該光ビームLを平行光から収束光に変換し、収束後に発散光となった当該光ビームLの発散角を固定レンズ14Bにより再度変換し、ミラー15へ入射させる。
【0053】
ミラー15は、光ビームLを反射することによりその進行方向を変化させ、対物レンズ8へ入射させる。対物レンズ8は、光ビームLの光軸方向に沿って移動し得るようになされており、当該光ビームLを集光して光ディスク100へ照射する。光ビームLは、図2に示したように記録層101内に合焦する。
【0054】
ここで光ビームLの焦点Fの位置は、対物レンズ8と光ディスク100との距離により定まる。このとき光ビームLには、対物レンズ8の性質上、光ディスク100の表面から焦点Fまでの距離に応じた球面収差が発生してしまう。この球面収差の量は、当該光ビームLがリレーレンズ14の固定レンズ14Bから出射され対物レンズ8へ入射される際の発散状態により定められることになる。
【0055】
そこで光ピックアップ7は、対物レンズ8の位置に応じて可動レンズ14Aを移動させることにより、記録層101内で焦点Fをフォーカス方向に移動させたときにも球面収差を最少に抑えることができ、良好な集光特性を得ることができる。
【0056】
実際上光ピックアップ7は、制御部2(図1)によって対物レンズ8及び可動レンズ14Aの位置が制御されるようになされている。これにより光ピックアップ7は、光ディスク100の記録層101内における光ビームLの焦点F(図2)の深さZ(すなわち表面100Aからの距離)を調整し、所望の箇所に焦点Fを合致させるようになされている。
【0057】
ここで光ビームLの光強度が比較的弱い場合、焦点Fの箇所にガイドマークGM又は記録マークRMが記録されていた場合、焦点Fに集光された光ビームLが当該記録マークRMにより反射されて反射光ビームLrとなる。
【0058】
このとき反射光ビームLrは、光ビームLと反対方向へ進行して対物レンズ8へ入射される。また反射光ビームLrは、円偏向における旋回方向が光ビームLとは反転される。
【0059】
対物レンズ8は、反射光ビームLrをおおよそ平行光とし、ミラー15により反射させてリレーレンズ14へ入射させる。
【0060】
リレーレンズ14は、反射光ビームLrを平行光に変換し、1/4波長板13へ入射させる。1/4波長板13は、右円偏光でなる反射光ビームLrをS偏光(すなわち直線偏光)に変換し、偏光ビームスプリッタ12へ入射させる。
【0061】
偏光ビームスプリッタ12は、S偏光でなる反射光ビームLrを偏光面12Sにより反射し、集光レンズ16へ入射させる。集光レンズ16は、反射光ビームLrを収束させ、シリンドリカルレンズ17により非点収差を持たせた上でフォトディテクタ18へ照射する。
【0062】
フォトディテクタ18は、複数の受光領域を有しており、各受光領域において反射光ビームLrの光量に応じた検出信号をそれぞれ生成し、これらを信号処理部4(図1)へ送出する。
【0063】
因みに光ピックアップ7は、対物レンズ8により光ビームLが集光され光ディスク100における所望の箇所へ照射されるときの合焦状態が、集光レンズ16により反射光ビームLrが集光されフォトディテクタ17に照射されるときの合焦状態に反映されるよう、各種光学部品の光学的位置が調整されている。
【0064】
信号処理部4は、いわゆる非点収差法に基づいて光ビームLの焦点Fと光ディスク100における所望のマーク層Yとのずれ量を表すフォーカスエラー信号SFEを算出し、これを駆動制御部3へ供給する。
【0065】
また信号処理部4は、いわゆるプッシュプル法に基づいて焦点Fと光ディスク100のマーク層Yにおける所望のトラックとのずれ量を表すトラッキングエラー信号STEを算出し、これを駆動制御部3へ供給する。
【0066】
駆動制御部3は、フォーカスエラー信号SFEを基にフォーカス駆動信号を生成し、当該フォーカス駆動信号を2軸アクチュエータ8Aへ供給する。これにより駆動制御部3は、光ビームLが光ディスク100における所望のマーク層Yに合焦するよう、対物レンズ8をフィードバック制御(すなわちフォーカス制御)する。
【0067】
また駆動制御部3は、トラッキングエラー信号STEを基にトラッキング駆動信号を生成し、当該トラッキング駆動信号を2軸アクチュエータ8Aへ供給する。これにより駆動制御部3は、光ビームLが光ディスク100の所望のマーク層Yにおける所望のトラックに合焦するよう、対物レンズ8をフィードバック制御(すなわちトラッキング制御)する。
【0068】
因みに信号処理部4は、記録マークRMが形成されていた場合、検出信号を基に再生RF信号を生成し、これに所定の復調処理や復号化処理等を施すことにより再生情報を生成して、この再生情報を制御部2へ供給するようになされている。
【0069】
また光ディスク装置1は、光ディスクに情報を記録する場合、記録すべき情報に変調処理等を施して得られる記録データをパルス列生成部11へ供給することにより、比較的高い光強度でなると共に記録データに基づいて変調された光ビームLを出射させる。
【0070】
この結果光ディスク100の記録層101には、光強度が強い光ビームLが照射されたときのみ、その焦点Fの近傍に記録マークRMが形成される。かくして光ディスク100には、記録マークRMの有無により情報が記録されることになる。
【0071】
このように光ピックアップ7は、パルス列生成部11により生成されたパルス列PLを記録部101に集光することにより、記録すべき情報を記録マークRMにより光ディスク100に記録するようになされている。
【0072】
[1−4.パルス列の生成]
[1−4−1.パルス列生成部の構成]
パルス列生成部11は、図5に示すように、レーザ光源21から出射するレーザ光を元に、パルス列PL(図4(A))を生成するようになされている。
【0073】
レーザ光源21は、例えばチタンサファイヤレーザでなり、波長約800[nm]の発散光でなる光ビームL1を出射し、コリメータレンズ22により平行光に変換して、これをパルス変換部23へ供給するようになされている。
【0074】
因みにパルス列生成部11は、図示しない波長変換器により、レーザ光の波長を約800[nm]からその半分の約400[nm]にSHG(Second Harmonic Generation)変換するようになされている。
【0075】
またレーザ光源21は、図4(B)に示すように、パルス幅twが約10[ps]〜約100[fs]でなるパルス状のレーザ光を、約76[MHz]の周期で、すなわちパルス周期tcが約13[ns]となる間隔で、繰り返し出射し得るようになされている。因みにレーザ光源21は、その性質上、パルス同士の間隔が最短で約13[ns]となっている。
【0076】
以下では、説明の便宜上、図6(A)に示すように、光ビームL1においてパルスP0が立ち上がるタイミングをタイミングt1とする。
【0077】
パルス変換部23(図5)は、大きく分けて、分割部としてのパルス分割素子31、遅延部としての遅延素子32A、32B、32C及び32D並びにパルス合成部としてのパルス合成素子33により構成されている。
【0078】
パルス分割素子31は、図7に示すように、偏光板41、43及び45と偏光ビームスプリッタ(PBS)42、44及び46との組み合わせにより構成されている。
【0079】
パルス分割素子31は、まず偏光板41により光ビームL1の偏光方向を所定角度回転させて光ビームL2とし、これを偏光ビームスプリッタ42へ入射させる。
【0080】
偏光ビームスプリッタ42は、偏光面42Sにおいて、光ビームL2における所定の偏光方向成分を所定の割合で反射させることにより、当該光ビームL2を約1/4の強度割合で反射させて光ビームL14とする。光ビームL14には、図6(B)に示すように、パルスP0の約1/4の光強度でなるパルスP4が含まれる。また偏光ビームスプリッタ42(図7)は、光ビームL2の残りを透過し、これを光ビームL3として偏光板43へ入射させる。
【0081】
偏光板43は、光ビームL3の偏光方向を所定角度回転させて光ビームL4とし、これを偏光ビームスプリッタ44へ入射させる。
【0082】
偏光ビームスプリッタ44は、偏光面44Sにおいて、光ビームL4における所定の偏光方向成分を所定の割合で反射させることにより、当該光ビームL4を約1/3の強度割合で反射させて光ビームL13とする。光ビームL13には、図6(B)に示すように、パルスP0の約1/4の光強度でなるパルスP3が含まれる。また偏光ビームスプリッタ44(図7)は、光ビームL4の残りを透過し、これを光ビームL5として偏光板45へ入射させる。
【0083】
偏光板45は、光ビームL5の偏光方向を所定角度回転させて光ビームL6とし、これを偏光ビームスプリッタ46へ入射させる。
【0084】
偏光ビームスプリッタ46は、偏光面46Sにおいて、光ビームL6における所定の偏光方向成分を所定の割合で反射させることにより、当該光ビームL6を約1/2の強度割合で反射させて光ビームL12とする。また偏光ビームスプリッタ46は、光ビームL6のうち残りを透過し、これを光ビームL11とする。光ビームL11及びL12には、図6(B)に示すように、パルスP0の約1/4の光強度でなるパルスP1及びP2がそれぞれ含まれる。
【0085】
このようにパルス分分割素子31は、偏光板による偏光方向の回転と偏光ビームスプリッタによる所定偏光成分のみの反射とを組み合わせることにより、光ビームL1の一部を順次分割し、最終的に複数の光ビームを生成するようになされている。
【0086】
この結果パルス分割素子31は、パルスP0を含む光ビームL1を4分割することにより、パルスP0の約1/4の光強度でなるパルスP1、P2、P3及びP4をそれぞれ含む分割光ビームとしての光ビームL11、L12、L13及びL14を生成し、それぞれ光路W1、W2、W3及びW4へ進行させる。
【0087】
因みに光ビームL11、L12、L13及びL14にそれぞれ含まれるパルスP1、P2、P3及びP4は、パルスP0からほとんど遅延されないため、図6(B)に示したように、いずれもタイミングt1に立ち上がる。
【0088】
光路W1、W2、W3及びW4をそれぞれ進行する光ビームL11、L12、L13及びL14は、遅延素子32A、32B、32C及び32Dへそれぞれ入射される。遅延素子32Aは、図6(C)に示すように、光ビームL11を遅延させることなくそのまま光ビームL21とし、パルス合成素子33へ入射させる。
【0089】
遅延素子32Bは、図6(C)に示すように、光ビームL12を約1[ns]遅延させることにより、パルスP2が立ち上がるタイミングをタイミングt2とした光ビームL22とし、これをパルス合成素子33へ入射させる。
【0090】
遅延素子32Cは、図6(C)に示すように、光ビームL13を約2[ns]遅延させることにより、パルスP3が立ち上がるタイミングをタイミングt3とした光ビームL23とし、これをパルス合成素子33へ入射させる。
【0091】
遅延素子32Dは、図6(C)に示すように、光ビームL14を約3[ns]遅延させることにより、パルスP4が立ち上がるタイミングをタイミングt4とした光ビームL24とし、これをパルス合成素子33へ入射させる。
【0092】
因みに遅延素子32B、32C及び32Dは、光ビームが1[ns]の間に約30[cm]進行することを利用し、それぞれの光路長を遅延素子32Aよりも約30、約60及び約90[cm]延長することにより、それぞれタイミングを約1、約2及び約3[ns]遅延させている。具体的な光路長の延長手段としては、単なる空間や光ファイバ等を用いることができる。
【0093】
パルス合成素子33は、図8に示すように、ミラー51、58及び60と、偏光板52、54、56及び59と、偏光ビームスプリッタ53及び57と、ハーフミラー55との組み合わせにより構成されている。
【0094】
パルス合成素子33は、光路W1から進行してきた光ビームL21をミラー51により反射させ、偏光板52により偏光方向を回転させてS偏光とし、偏光ビームスプリッタ53へ入射させる。
【0095】
またパルス合成素子33は、光路W2から進行してきた光ビームL22について、偏光板54により偏光方向を回転させてP偏光とし、偏光ビームスプリッタ53へ入射させる。
【0096】
偏光ビームスプリッタ53は、偏光面53SにおいてS偏光の光ビームL21を反射すると共にP偏光の光ビームL22を透過させることにより両者を合成して光ビームL31を生成し、これをハーフミラー55へ入射させる。
【0097】
またパルス合成素子33は、光路W3から進行してきた光ビームL23について、偏光板56により偏光方向を回転させてP偏光とし、偏光ビームスプリッタ57へ入射させる。
【0098】
さらにパルス合成素子33は、光路W4から進行してきた光ビームL24をミラー58により反射させ、偏光板59により偏光方向を回転させてS偏光とし、偏光ビームスプリッタ57へ入射させる。
【0099】
偏光ビームスプリッタ57は、偏光面57SにおいてP偏光の光ビームL23を透過させると共にS偏光の光ビームL24を反射することにより両者を合成して光ビームL32を生成し、これをミラー60で反射させた後ハーフミラー55へ入射させる。
【0100】
ハーフミラー55は、光ビームL31の一部を反射すると共に光ビームL32の一部を透過することにより両者を合成して合成光ビームとしての光ビームL33を生成し、これをデータ変調素子24(図5)へ入射させる。
【0101】
このとき光ビームL33には、図6(D)に示すように、4本のパルスP1、P2、P3及びP4が含まれる。また各パルスP1、P2、P3及びP4の間隔tp(図4(A))は、いずれも約1[ns]となる。
【0102】
このようにパルス合成素子33は、光路W1〜W4をそれぞれ進行してきた光ビームL21〜L24を合成することにより、パルスP1〜P4が約1[ns]毎に順次立ち上がる光ビームL33を生成することができる。
【0103】
すなわちパルス変換部23(図5)は、光ビームに含まれるパルス同士の間隔を、パルスP0同士の約13[ns]からパルスP1〜P4の約1[ns]に変換することができる。
【0104】
ところで信号処理部4(図1)は、光ディスク100に記録すべき情報をマークエッジ方式で変調することにより、図9(A)に示すように、符号「0」及び「1」の組み合わせでなる記録データを生成する。
【0105】
さらに信号処理部4は、この記録データを基に、図9(B)に示すように、「ローレベル」及び[ハイレベル」の組み合わせでなる記録信号に変換してデータ変調素子24へ供給する。
【0106】
データ変調素子24(図5)は、図9(C)に示すように、記録信号の信号レベルに応じてパルス列PLをそのまま出射するか否かを切り替えることにより、当該記録信号に基づいた変調処理を行い、その変調結果を光ビームL34とする。
【0107】
その後光ピックアップ7(図3)は、パルス列生成部11により生成された光ビームL34を光ビームLとして偏光ビームスプリッタ12へ入射させるようになされている。
【0108】
[1−4−2.パルスによる記録マークの形成]
ところで光ピックアップ7(図3)は、上述したように、パルス列PL(図6(D))を含む光ビームLを光ディスク100の記録層101内における焦点Fの近傍に集光する。
【0109】
このとき記録層101では、パルス列PLのうち1番目のパルスP1により記録層101の材料が2光子吸収により励起状態となり、この励起状態が維持されたまま2番目以降のパルスP2〜P4によって励起状態吸収による反応が生じることにより、空孔でなる記録マークRMが形成される。
【0110】
ところで、一般に2光子吸収を介して情報を記録する場合、記録マークRMの形成に要する時間(以下これを形成時間と呼ぶ)は、光ビームのパルスにおけるピーク強度の2乗に比例して短くなることが知られている。
【0111】
これに対し光ディスク装置1では、1本のパルスP0(図4(A))を分割することによりパルスP1〜P4(図4(B))の光強度を低下させて記録層101に照射している。このため光ディスク装置1は、パルスP0をそのまま記録層101に照射した場合よりも形成時間が長くなると予想される。
【0112】
しかしながら実際の光ディスク装置1では、パルスP0をそのまま記録層101に照射した場合よりも形成時間が短縮されること、すなわち記録速度が高速化されることがわかった。
【0113】
以下では、図10に示す4準位系のエネルギー準位を用いてその理由を検討する。まず、記録層101を構成する記録材料Mが、光が照射される前には基底状態S0にあるものとする。記録材料Mは、エネルギーhνでなる光を吸収すると、励起一重項状態Snになる。ここでは、その遷移の速度をkABSとする。
【0114】
また記録材料Mによる光の吸収量は、通常の光吸収であれば吸収断面積σS0の関数となり、2光子吸収であれば2光子吸収断面積δS0の関数となる。ここでは、この遷移が2光子吸収によるものであると仮定する。
【0115】
ところで、材料のなかには、励起一重項状態Snに励起されたのち、項間交差により最低三重項状態T1へ速やかに遷移するものが数多く知られている。ここでは、その速度をkiscとする。
【0116】
最低三重項状態T1は、エネルギーhνでなる光を吸収すると励起三重項状態Tmになる。この吸収は励起状態吸収の一種であり、TT吸収(三重項間吸収)と呼ばれている。ここではその速度をkTT、吸収断面積をσT1とする。
【0117】
励起三重項状態Tmは、速度kTmで最低三重項状態T1に緩和する。最低三重項状態T1は、光を吸収しなければ速度kT1で基底状態S0に緩和する。
【0118】
このモデルにおいて、励起一重項状態Snの寿命τSn、最低三重項状態T1の寿命τT1、励起三重項状態Tmの寿命τTmは、それぞれ速度kisc、kT1、kTmの逆数となる。
【0119】
最低三重項状態T1は励起一重項状態Sn、励起三重項状態Tmと比較して安定であり、数百[ns]〜数[μs]の寿命を持つものが多い。一方励起一重項状態Snは、その寿命が1[ns]以下となるものが多い。また励起三重項状態Tmは、その寿命が1[ps]以下となるものが多い。
【0120】
ここで、仮に記録材料Mにおける励起一重項状態Sn、最低三重項状態T1及び励起三重項状態Tmそれぞれの寿命τSn、τT1及びτTmの典型的な値として、寿命τSn=100[ps]、τT1=100[ns]、τTm=0.1[ps]とする。
【0121】
また、記録材料Mが基底状態S0から励起一重項状態Snに遷移する際の2光子吸収断面積をδS0=1000[GM]、TT吸収断面積σT1=1.91×10−17[cm](ε=5000)とする。この二つの吸収断面積も、記録材料Mが一般的にとり得る値である。
【0122】
ここで、この記録材料Mに対し、波長400[nm]、時間幅2[ps]のレーザでなる光ビームを開口数(NA)が0.85の対物レンズにより3.5[ns]の間集光して照射した場合を想定する。この場合における、基底状態S0、励起一重項状態Sn、最低三重項状態T1及び励起三重項状態Tmの比率をレート方程式により計算し、また1分子あたりの吸収フォトンの個数を計算した。
【0123】
まず、光ビームのパワーを100[W]、繰り返しの周波数を76[MHz]とした場合、図11(A)に示すような計算結果が得られた。図11(A)では、基底状態S0、励起一重項状態Sn、最低三重項状態T1及び励起三重項状態Tmの比率をそれぞれ曲線QS0、QSn、QT1及びQTmとして表し、また1分子あたりの吸収フォトンの個数を曲線QΣとして表している。
【0124】
図11(A)の曲線QΣにも表れているように、このとき1分子あたりの吸収フォトンの個数は0.888個であった。
【0125】
次に、光ビームのパワーを1/4倍した25[W]とし、繰り返しの周波数を1[GHz]とした場合、図11(B)に示すような計算結果が得られた。図11(B)の曲線QΣにも表れているように、4本目のパルスを照射した段階では、1分子あたりの吸収フォトンの個数は3.36個となった。
【0126】
すなわち図11(B)の場合は、図11(A)の場合と比較して、光ビームのパワーを1/4に低減しているにも拘わらず、記録材料Mによる光吸収量が約3.78倍となることが判明した。このことは、記録材料Mに対し、空孔を形成する際に要する時間を大幅に短縮できることを意味している。
【0127】
従って光ディスク装置1は、パルス変換部23を用い、光ビームLに含まれるパルスの光強度(パワー)を低減すると共に各パルスの周期を短縮することにより、光ディスク100に対する情報の記録速度を高めることができる。
【0128】
[1−5.動作及び効果]
以上の構成において第1の実施の形態による光ディスク装置1は、光ピックアップ7のパルス列生成部11により、チタンサファイヤレーザでなるレーザ光源21から約13[ns]の間隔でパルス状の光ビームLを出射させる。
【0129】
続いて光ピックアップ7は、パルス列生成部11のパルス変換部23により、光ビームLに含まれる1本のパルスP0を、光強度が約1/4であり間隔が約1[ns]のパルス列PL(すなわちパルスP1〜P4)に変換する。
【0130】
その後光ピックアップ7は、対物レンズ8を介してパルス列PLを含む光ビームLを光ディスク100の記録層101内に集光することにより、その焦点Fの近傍に2光子吸収反応を生じさせ、空孔でなる記録マークRMを形成する。
【0131】
従って光ディスク装置1は、パルスP0をパルス列PLに変換した光ビームLを光ディスク100へ照射することにより、パルスP0を含む光ビームを照射した場合と同様、記録層101に情報を記録することができる。
【0132】
特に光ピックアップ7は、各パルスの間隔が約1[ns]と極めて短いパルス列PL(図6(D))を照射することにより、最初のパルスP1により記録材料Mが励起状態となりその励起状態が継続している間にパルスP2〜P4を順次照射することができる。
【0133】
このため光ピックアップ7は、励起状態の記録材料MにおいてパルスP2〜P4により光吸収量を大幅に高めることができる(図11)。これにより光ピックアップ7は、各パルスP1〜P4を元のパルスP0の約1/4の光強度としているにも拘わらず、より短い時間で2光子吸収材料の反応を生起できる。
【0134】
この結果光ディスク装置1は、各記録マークRMの形成に要する時間を大幅に短縮することができるので、情報の記録速度を格段に高めることができる。
【0135】
また光ピックアップ7は、パルス列生成部11において、パルス変換部23により1個のパルスP0を4個のパルスP1〜P4でなるパルス列PLに分割することができる。
【0136】
これにより光ピックアップ7は、パルス列生成部11において、パルス間隔を最短でも約13[nm]程度までにしか短縮できないレーザ光源21を用いているにも拘わらず、パルス間隔tpが約1[ns]であるパルス列PLを生成することができる。
【0137】
さらにパルス変換部23は、波長板、偏光ビームスプリッタ及びミラー等、並びに単なる空間又は光ファイバ等といった、極めて簡素な光学素子を組み合わせることにより容易に構成することができる。
【0138】
以上の構成によれば、光ディスク装置1は、パルス列生成部11においてレーザ光源21からパルスP0を含む光ビームL1を出射させ、パルス変換部23により間隔が約1[ns]である4本のパルスでなるパルス列PLに分割する。光ピックアップ7は、パルス列PLを含む光ビームLを対物レンズ8により記録層101内に集光する。これにより光ピックアップ7は、光ビームLの焦点Fの近傍で、最初のパルスP1の2光子吸収により生じた記録材料Mの励起状態を維持したまま2番目以降のパルスP2〜P4を効率的に吸収させて反応を生じさせることができるので、極めて短い時間で記録層101に記録マークRMを形成することができる。この結果光ディスク装置1は、情報の記録速度を高めることができる。
【0139】
<2.第2の実施の形態>
[2−1.パルス列の生成]
第2の実施の形態は、第1の実施の形態と比較して、光ピックアップ7(図3)のパルス列生成部11に代えてパルス列生成部71が用いられている点が相違しているものの、他の点については同様に構成されている。
【0140】
パルス列生成部71は、図3及び図5との対応部分に同一符号を付した図12に示すように、1のレーザ光源21(図5)に対応する複数のレーザ光源21A、21B、21C及び22Dを有している点が大きく異なっている。
【0141】
パルス列生成部71は、信号処理部4(図1)から記録信号(図9(B))の供給を受け、これを遅延信号発生器81へ供給する。遅延信号発生器81は、記録信号をそのまま駆動信号S1としてレーザドライバ82Aへ供給する。また遅延信号発生器81は、この記録信号をそれぞれ1、2及び3[ns]遅延させることにより駆動信号S2、S3及びS4を生成し、それぞれレーザドライバ82B、82C及び82Dへ供給する。
【0142】
レーザドライバ82A、82B、82C及び82Dは、それぞれ駆動信号S1、S2、S3及びS4をトリガとしてパルス状の駆動電流D1、D2、D3及びD4を生成し、それぞれをレーザ光源21A、21B、21C及び21Dへ供給する。
【0143】
このとき駆動電流D1、D2、D3及びD4は、それぞれに含まれるパルスが順次1[ns]ずつ遅延した状態となっている。
【0144】
レーザ光源21A、21B、21C及び21Dは、それぞれ駆動電流D1、D2、D3及びD4に基づき、それぞれ1個のパルスを含む光ビームL41、L42、L43及びL44を出射し、コリメータレンズ22A、22B、22C及び22Dへ入射させる。因みに光ビームL41〜L44の光強度は、第1の実施の形態における光ビームL1の光強度に対し約1/4となっている。
【0145】
このとき光ビームL41、L42、L43及びL44には、図6(C)と対応する図13(A)に示すように、互いの間隔が約1[ns]でなるタイミングt1、t2、t3及びt4にそれぞれ立ち上がるパルスP1、P2、P3及びP4が含まれることになる。
【0146】
コリメータレンズ22A、22B、22C及び22D(図12)は、光ビームL41、L42、L43及びL44をそれぞれ平行光に変換し、強度変調素子83A、83B、83C及び83Dへそれぞれ入射させる。
【0147】
強度変調素子83A、83B、83C及び83Dは、光ビームL41、L42、L43及びL44の光強度をそれぞれ所定の割合で減衰させることにより光ビームL51、L52、L53及びL54を生成し、それぞれをパルス合成素子33へ入射させる。
【0148】
このとき、例えば強度変調素子83A及び83Dは光ビームL41及びL44をそれぞれ減衰させず、強度変調素子83B及び83Cは光ビームL42及びL43をそれぞれ所定の割合で減衰させる。これにより光ビームL52及びL53は、図13(B)に示すように、パルスP2及びP3の光強度が低減されることになる。
【0149】
パルス合成素子33は、第1の実施の形態と同様に、光ビームL51、L52、L53及びL54を合成することにより、図13(C)に示すようにパルスP1〜P4が約1[ns]毎に順次立ち上がる光ビームL55を生成する。
【0150】
光ピックアップ7(図3)は、パルス列生成部71により生成された光ビームL55を光ビームLとして偏光ビームスプリッタ12へ入射させるようになされている。
【0151】
その後光ピックアップ7は、この光ビームLを光ディスク100の記録層101内に集光することにより、第1の実施の形態と同様、その焦点Fの近傍においてパルス列PLによる反応を生じさせ、空孔でなる記録マークRMを形成する。
【0152】
[2−2.動作及び効果]
以上の構成において、第2の実施の形態による光ディスク装置1は、光ピックアップ7のパルス列生成部71により、レーザ光源21A〜21Dから約1[ns]ずつずれたタイミングt1〜t4でパルスP1〜P4がそれぞれ立ち上がる光ビームL41〜L44を出射させる。
【0153】
続いて光ピックアップ7は、パルス列生成部71のパルス合成素子33により、パルスP1〜P4が約1[ns]の間隔で順次立ち上がるパルス列PLを生成する。
【0154】
その後光ピックアップ7は、対物レンズ8を介してパルス列PLを含む光ビームLを光ディスク100の記録層101内に集光することにより、第1の実施の形態と同様、その焦点Fの近傍に反応を生じさせ、空孔でなる記録マークRMを形成する。
【0155】
従って第2の実施の形態による光ディスク装置1は、パルス列PLを含む光ビームLを光ディスク100へ照射することにより、第1の実施の形態と同様、記録層101に情報を記録することができる。
【0156】
特にパルス列生成部71(図12)は、パルス列生成部11と異なり、複数のレーザ光源21A〜21Dから約1[ns]ごとの間隔でパルスP1〜P4を立ち上げることにより、第1の実施の形態と同様のパルス列PLを生成することができる。
【0157】
このときパルス列生成部71のレーザ光源21A〜21Dについては、第1の実施の形態におけるレーザ光源21の約1/4の光強度でなる光ビームL41〜L44を出射すれば良いため、比較的出力が小さいレーザ光源を用いることが可能となる。
【0158】
またパルス列生成部71は、強度変調素子83A〜83Dにより、パルス列PLの各パルスP1〜P4の光強度をそれぞれ自在に調整することができる(図13(B))。このためパルス列生成部71は、例えば最初の励起状態を形成するパルスP1のみ光強度を高くし、他のパルスP2〜P4を比較的弱い光強度にするといった細かな光強度の調整を行うことができる。
【0159】
また第2の実施の形態による光ディスク装置1は、その他の点について、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0160】
以上の構成によれば、第2の実施の形態による光ディスク装置1は、パルス列生成部71においてレーザ光源21A〜21Dにより約1[ns]毎の間隔でパルスP1〜P4を順次立ち上げるよう光ビームL41〜L44を出射させ、パルス合成素子33により、これらを合成してパルス列PLを生成する。これにより光ピックアップ7は、第1の実施の形態と同様、光ビームLの焦点Fの近傍で、記録材料Mを最初のパルスP1により励起状態としたまま2番目以降のパルスP2〜P4により反応を生じさせることができるので、極めて短い時間で記録層101に記録マークRMを形成することができる。この結果光ディスク装置1は、第1の実施の形態と同様、情報の記録速度を高めることができる。
【0161】
<3.第3の実施の形態>
[3−1.光ディスクの初期化]
第3の実施の形態による光ディスク初期化装置90は、上述した第1の実施の形態において光情報記録媒体として用いた光ディスク100に対し、初期化処理として、その製造段階でガイドマークGMを形成するようになされている。
【0162】
光ディスク初期化装置90は、図3との対応部分に同一符号を付した図14に示すように、制御部91を中心に構成されている。制御部91は、図示しないCPUと、各種プログラム等が格納されるROMと、当該CPUのワークエリア等として用いられるRAMとによって構成されており、所定の光ディスク初期化プログラムに従って所定の制御処理を実行するようになされている。
【0163】
制御部91は、光ディスク100を初期化する場合、駆動制御部92を介してスピンドルモータ5を回転駆動させ、ターンテーブル5Tに装着された光ディスク100を所望の速度で回転させる。
【0164】
また制御部91は、駆動制御部92を介してスレッドモータ95を駆動させることにより、スピンドルモータ5及びターンテーブル5Tと一体に光ディスク100をその半径方向へ、すなわち図の上下方向へ移動させるようになされている。
【0165】
その上で制御部91は、パルス列生成部11を制御することにより、第1の実施の形態と同様、パルス列PL(図6(D))を含む光ビームLを生成させ、リレーレンズ94へ入射させる。
【0166】
このとき制御部91は、変調信号発生器93によりガイドマークGMの形成パターンに応じた変調信号を生成し、これをパルス列生成部11(図5)のデータ変調素子24へ供給することにより、当該変調信号に応じた変調パターンで光ビームL出射させる。
【0167】
因みに変調信号発生器93としては、一般の任意波形発生器であれば良く、例えばテクトロニクス社製のAWG5000Bを用いることができる。またデータ変調素子24(図5)としては、KD*Pのような電気光学結晶(EO)をそのドライバと共に用いることができる。例えば、コンオプティクス社製のEOデバイス&システムを用いることができる。
【0168】
リレーレンズ94は、リレーレンズ14(図3)と対応した構成となっており、固定レンズ14Bと同様の固定レンズ94Bを有しているものの、凸レンズである可動レンズ14Aに代えて凹レンズである可動レンズ94Aを有している点が相違している。
【0169】
すなわちリレーレンズ94は、可動レンズ94Aにより当該光ビームLを平行光から発散光に変換し、固定レンズ94Bによりその発散角を変換して、対物レンズ8へ入射させる。
【0170】
対物レンズ8は、照射位置制御部92の制御に基づき、アクチュエータ8Aにより光ディスク100に近接する方向又は離隔する方向へ移動されるようになされており、光ビームLを集光して光ディスク100へ照射する。
【0171】
このとき光ビームLは、図15に示すように、光ディスク100の記録層101内に、表面100Aからの距離である深さZとなる箇所に焦点Fを形成する。
【0172】
実際上、光ディスク初期化装置90は、駆動制御部92を介してスピンドルモータ5、スレッドモータ95及びアクチュエータ8Aを適宜制御することにより、光ディスク100の記録層101における所望の箇所に焦点Fを形成するようになされている。
【0173】
このとき光ビームLには、記録層101の構成材料と空気との屈折率の差により球面収差が生じ得る。そこで制御部91は、照射位置制御部92を介し、対物レンズ8の位置に応じて(すなわち深さZに応じて)可動レンズ94Aの位置を調整することにより、光ビームLの球面収差を打ち消すようになされている。
【0174】
これに応じて記録層101では、光ビームLに含まれるパルス列PLが順次照射されることにより、第1の実施の形態において記録マークRMが形成される場合と同様、焦点Fの近傍において反応が生じて空孔が形成される。この結果記録層101内には、焦点Fの近傍にガイドマークGMが設けられる。
【0175】
また光ディスク初期化装置90は、駆動制御部92を介して焦点Fの深さZを切り替えながらガイドマークGMを順次設けることにより、複数のマーク層Yを形成するようになされている。
【0176】
かくして光ディスク初期化装置90は、光ディスク100に対しパルス列PLを含む光ビームLを照射することにより、光ディスク100の記録層101内にガイドマークGMが設けられるようになされている。
【0177】
[3−2.動作及び効果]
以上の構成において、光ディスク初期化装置90は、制御部91の制御に基づき、パルス列生成部11によりパルス列PLを含む光ビームLを出射させ、リレーレンズ94及び対物レンズ8を介して光ディスク100の記録層101内に集光する。
【0178】
これと共に制御部91は、照射位置制御部92を介してスピンドルモータ5、スレッドモータ95及びアクチュエータ8Aを適宜制御することにより、光ビームLの焦点Fを記録層101内の所望の箇所に合わせる。
【0179】
これに応じて記録層101内では、光ビームLに含まれるパルス列PLの各パルスP1〜P4が順次照射されることにより、光ビームLの焦点Fの近傍で反応が生じ、空孔が形成される。
【0180】
従って光ディスク初期化装置90は、パルス列PLを含む光ビームLを光ディスク100へ照射することにより、記録層101における所望の箇所にガイドマークGMを設けることができる。
【0181】
このとき光ディスク初期化装置90は、第1の実施の形態と同様、パルス列生成部11によりパルス列PLを含む光ビームLを生成して光ディスク100へ照射する。これにより光ディスク初期化装置90は、最初のパルスP1により記録材料Mが励起状態となりその励起状態が継続している間に、パルスP2〜P4を順次照射することができ、反応を起こさせることができる。
【0182】
この結果、光ディスク初期化装置90は、パルスP0(図4(B))を用いる場合よりも短い時間でガイドマークGMを形成することができる。
【0183】
またパルス列生成部11については、この第3の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0184】
以上の構成によれば、光ディスク初期化装置90は、パルス列生成部11からパルス列PLを含む光ビームLを出射し、対物レンズ8を介して光ディスク100の記録層101内における所望の箇所に集光する。これにより光ディスク初期化装置90は、光ビームLの焦点Fの近傍で、記録材料Mを最初のパルスP1により励起状態としたまま2番目以降のパルスP2〜P4により反応を生じさせることができるので、極めて短い時間で記録層101にガイドマークGMを形成することができる。
【0185】
<4.他の実施の形態>
なお上述した第1の実施の形態においては、パルス列生成部11(図5)においてパルス変換部23から出射された光ビームL33に対し、データ変調素子24により変調処理を施すようにした場合について述べた。
【0186】
本発明はこれに限らず、例えばデータ変調素子24をコリメータレンズ22とパルス変換部23との間に設け、パルスP0に対し変調処理を施すようにしても良い。あるいは、レーザ光源21へ供給する電流の大きさを変調させることにより、レーザ光源21から出射される段階でパルスP0の光強度を変化させるようにしても良い。第3の実施の形態についても同様である。
【0187】
また上述した第2の実施の形態においては、パルス列生成部71(図12)の強度変調素子83A〜83Dによって光ビームL41〜L44に対し変調処理を施すことにより、パルスP1〜P4(図13(B))の光強度を変化させる場合について述べた。
【0188】
本発明はこれに限らず、例えば遅延信号発生器81により駆動信号S1〜S4の信号強度をそれぞれ変調させることにより、パルスP1〜P4の光強度を変化させるようにしても良い。
【0189】
或いは、第1の実施の形態におけるパルス列生成部11のパルス変換部23内にパルス列生成部71と同様の強度変調素子83A〜83Dを設けることにより、光ビームL11〜L14又はL21〜L24の光強度をそれぞれ変化させるようにしても良い。さらには、パルス変換部23内のパルス分割素子31(図7)における各偏光板の回転角度や各偏光ビームスプリッタの偏光面における反射率をそれぞれ調整することにより、光ビームL11〜L14の分割比率を調整しても良い。また、パルス変換部23内のパルス合成素子33(図8)における各偏光板の回転角度等を調整することにより、光ビームL21〜L24の合成比率を調整しても良い。
【0190】
さらに上述した第1の実施の形態においては、パルス列PLの各パルスP1〜P4の間隔tp(図4(A))をいずれも約1[ns]とするようにした場合について述べた。
【0191】
本発明はこれに限らず、例えば遅延素子32B〜32Dによる遅延時間を相違させ、各パルスP1〜P4の間隔tpを2[ns]や3[ns]とするようにしても良い。また各パルスP1〜P4のそれぞれの間隔については、図4(A)と対応する図16に示すように、間隔tp以外の間隔tp1やtp2等として互いに相違させるようにしても良い。さらに本発明では、パルスP1〜P4の間隔の相違と第2の実施の形態のようなパルス毎の光強度の変調とを組み合わせても良い。
【0192】
いずれにおいても、要は1番目のパルスP1により記録材料Mが励起した状態が維持されている間に、2番目以降のパルスP2等が照射されることにより反応が生じれば良い。従って各パルスの間隔については、1番目のパルスP1の光強度や記録材料Mにおける励起状態の継続時間等に応じて定めることが考えられる。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0193】
さらに上述した第1の実施の形態においては、パルス列生成部11により4本のパルスP1〜P4の組み合わせでなるパルス列PLを生成する場合について述べた。
【0194】
本発明はこれに限らず、3本以下や5本以上のパルスでなるパルス列PLを生成するようにしても良い。この場合も、要は、1番目のパルスP1により記録材料Mが励起した状態が維持されている間に2番目以降の各パルスが照射されることにより反応が生じれば良い。
【0195】
またこの場合、例えばパルス列生成部11のパルス変換部23におけるパルスの分割数やパルス同士の間隔等を適宜調整することにより、パルス列PLの各パルスがほぼ一定間隔で継続的に立ち上がるようにしても良い。これにより、図9と対応する図17に示すように、記録信号がハイレベルとなっている間、パルス列PLの各パルスが継続的に立ち上がるようにすることができる。このとき1番目のパルスP1からパルス列PLにおける最後のパルスまでの時間間隔及びパルス列PLに含まれるパルスの数等については、記録層101内に形成したい空孔(すなわち記録マークRM)の大きさや形状等に応じて適宜定めれば良い。
【0196】
さらに上述した第1の実施の形態においては、略円盤状の光ディスク100を回転させると共に光ピックアップ7を半径方向に移動させることにより、当該光ディスク100における所望の箇所に光ビームを照射するようにした場合について述べた。
【0197】
本発明はこれに限らず、例えば略直方体状でなり2光子吸収材料でなる光情報記録媒体に対し、XYステージ等を用いて光ピックアップ7と当該光情報記録媒体との相対的な位置を調整することにより、当該光情報記録媒体内の所望の箇所に記録マークRMを形成するようにしても良い。第2及び第3の実施の形態についても同様である。
【0198】
さらに上述した実施の形態においては、光ディスク装置1により、光情報記録媒体である光ディスク100の記録層101内に、パルス列PLを含む光ビームLを集光することにより、情報を表す記録マークRMを形成するようにした場合について述べた。また上述した第3の実施の形態においては、光ディスク初期化装置90により、光ディスク100の記録層101内に、パルス列PLを含む光ビームLを集光することにより、情報を記録する際の位置決めに用いられるガイドマークGMを形成するようにした場合について述べた。
【0199】
本発明はこれに限らず、例えば2光子吸収材料でなる樹脂材料の内部や表面に微細加工を施す微細加工装置において、パルス列生成部11により生成したパルス列PLを含む光ビームLを照射することにより当該微細加工を行うようにしても良い。すなわち本発明は、2光子吸収材料に光ビームを照射して2光子吸収反応を生じさせる種々の光照射装置に搭載される、パルスを含む光ビームを出射するためのパルス光ビーム照射装置に適用するようにしても良い。
【0200】
さらに上述した第1の実施の形態においては、パルス列PLを含む光ビームLを光ディスク100の記録層101に照射することにより、2光子吸収反応を生じさせ記録マークRMを形成するようにした場合について述べた。
【0201】
本発明はこれに限らず、通常のレーザ光源21における最も短いパルス周期tc(図4)よりも短いパルス間隔tp(例えば約1[ns])ごとにパルス状のパルス光ビーム照射を所定の照射対象に照射する種々のパルス光ビーム照射装置に適用するようにしても良い。また照射対象については、2光子吸収反応に限らず、3以上の光子を吸収する反応や、他の種々の反応を生じるものであっても良い。
【0202】
さらに上述した実施の形態においては、光源としてのレーザ光源21と、タイミング調整部としてのパルス分割素子31及び遅延素子32A〜32Dと、パルス合成部としてのパルス合成素子33とによってパルス光ビーム照射装置としてのパルス列生成部11を構成する場合について述べた。
【0203】
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる光源と、タイミング調整部と、パルス合成部とによってパルス光ビーム照射装置を構成するようにしても良い。
【0204】
さらに上述した実施の形態においては、光源としてのレーザ光源21と、タイミング調整部としてのパルス分割素子31及び遅延素子32A〜32Dと、パルス合成部としてのパルス合成素子33と、情報変調部としてのデータ変調素子24と、対物レンズとしての対物レンズ8とによって光情報記録装置としての光ディスク装置1を構成する場合について述べた。
【0205】
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる光源と、タイミング調整部と、パルス合成部と、情報変調部と、対物レンズとによって光情報記録装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0206】
本発明は、2光子吸収材料に対しパルス状のレーザ光を照射することにより反応を生じさせる種々のレーザ光照射装置でも利用できる。
【符号の説明】
【0207】
1……光ディスク装置、2……制御部、3……駆動制御部、4……信号処理部、7……光ピックアップ、8……対物レンズ、11、71……パルス列生成部、21……レーザ光源、23……パルス変換部、24……データ変調素子、31……パルス分解素子、32A、32B、32C、32D……遅延素子、33……パルス合成素子、81……遅延信号発生器、83A、83B、83C、83D……強度変調素子、91……制御部、92……照射位置制御部、93……変調信号発生器、100……光ディスク、101……記録層、RM……記録マーク、GM……ガイドマーク、L……光ビーム、F……焦点、P0、P1、P2、P3、P4……パルス、PL……パルス列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定時間幅内に1のパルスを含む光ビームを出射する光源を1又は複数有する光源部と、
1の上記光源から出射された1の上記光ビームが複数に分割されてなる複数の上記光ビーム又は複数の上記光源からそれぞれ出射された複数の上記光ビームにそれぞれ含まれるパルスの立ち上がりタイミングを互いに相違させるタイミング調整部と、
各パルスの立ち上がりタイミングが互いに相違する複数の上記光ビームを合成するパルス合成部と
を有するパルス光ビーム照射装置。
【請求項2】
上記光源部は、1の上記光源を有し、
上記タイミング調整部は、
上記光ビームからそれぞれに上記パルスを含む複数の分割光ビームに分割する分割部と、
上記複数の分割光ビームを互いに異なる時間幅ずつ遅延させる遅延部と
を有し、
上記パルス合成部は、複数の上記分割光ビームを合成する
請求項1に記載のパルス光ビーム照射装置。
【請求項3】
上記光源部は、複数の上記光源を有し、
上記タイミング調整部は、
上記複数の光ビームそれぞれにおいて上記パルスが立ち上がるタイミングを互いに相違させるよう複数の上記光源をそれぞれ制御するパルスタイミング制御部と
を有する請求項1に記載のパルス光ビーム照射装置。
【請求項4】
1の光源から出射され所定時間幅内に1のパルスを含む光ビームが複数に分割されてなる複数の光ビーム、又は複数の上記光源からそれぞれ出射され所定時間幅内にそれぞれ1のパルスを含む複数の光ビームについて、それぞれに含まれるパルスの立ち上がりタイミングを互いに相違させるタイミング調整ステップと、
上記複数の光ビームを合成することにより複数のパルスが順次立ち上がる合成光ビームを生成するパルス合成ステップと、
上記合成光ビームを所定の照射対象に照射する照射ステップと
を有するパルス光ビーム照射方法。
【請求項5】
所定時間幅内に1のパルスを含む光ビームを出射する光源を1又は複数有する光源部と、
1の上記光源から出射された1の上記光ビームが複数に分割されてなる複数の上記光ビーム又は複数の上記光源からそれぞれ出射された複数の上記光ビームにそれぞれ含まれるパルスの立ち上がりタイミングを互いに相違させるタイミング調整部と、
各パルスの立ち上がりタイミングが互いに相違する複数の上記光ビームを合成して合成光ビームを生成するパルス合成部と、
光情報記録媒体に記録すべき情報に応じて、上記1の光ビーム、上記複数の光ビーム又は上記合成光ビームの光強度を変調させる情報変調部と、
上記光情報記録媒体における多光子吸収材料でなる記録部に対し上記合成光ビームを集光する対物レンズと
を有する光情報記録装置。
【請求項6】
上記タイミング調整部は、
最初に立ち上がる上記パルスにより上記記録部の上記多光子吸収材料を励起させ、当該多光子記録材料が励起状態を維持している間に2番目以降の上記パルスを立ち上げるよう、上記パルスそれぞれの立ち上がりタイミングを調整する
請求項5に記載の光情報記録装置。
【請求項7】
上記光源部は、1の上記光源を有し、
上記タイミング調整部は、
上記光ビームからそれぞれに上記パルスを含む複数の分割光ビームに分割する分割部と、
上記複数の分割光ビームを互いに異なる時間幅ずつ遅延させる遅延部と
を有し、
上記パルス合成部は、
上記パルス合成部は、複数の上記分割光ビームを合成する
請求項5に記載の光情報記録装置。
【請求項8】
上記複数の分割光ビームそれぞれの光強度を変調させる光強度変調部
をさらに有する請求項7に記載の光情報記録装置。
【請求項9】
上記光源部は、複数の上記光源を有し、
上記タイミング調整部は、
上記複数の光ビームそれぞれにおいて上記パルスが立ち上がるタイミングを互いに相違させるよう複数の上記光源をそれぞれ制御するパルスタイミング制御部と
を有する請求項5に記載の光情報記録装置。
【請求項10】
上記タイミング調整部は、
上記複数の光源が上記光ビームをそれぞれ出射する際の光強度をそれぞれ変調させる光強度変調部
をさらに有する請求項9に記載の光情報記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−48872(P2011−48872A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195689(P2009−195689)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】