パルス光伝送装置及びパルス光伝送調整方法
【課題】 光ファイバを用いてフェムト秒パルス光などのパルス光を好適に伝送することが可能なパルス光伝送装置、及びパルス光伝送調整方法を提供する。
【解決手段】 所定波長のパルス光を出射するパルスレーザ光源10と、パルス光を伝送するマルチモードファイバ15と、パルス光源10から出射されたパルス光を、所定の伝搬モードで伝送される入力条件でマルチモードファイバ15へと入力する入力光学系20とを用いてパルス光伝送装置1Aを構成する。また、マルチモードファイバ15の入力側及び出力側の少なくとも一方にパルス光制御部30を設置し、マルチモードファイバ15でのパルス光伝送についての分散補償条件などの伝送条件を制御する。
【解決手段】 所定波長のパルス光を出射するパルスレーザ光源10と、パルス光を伝送するマルチモードファイバ15と、パルス光源10から出射されたパルス光を、所定の伝搬モードで伝送される入力条件でマルチモードファイバ15へと入力する入力光学系20とを用いてパルス光伝送装置1Aを構成する。また、マルチモードファイバ15の入力側及び出力側の少なくとも一方にパルス光制御部30を設置し、マルチモードファイバ15でのパルス光伝送についての分散補償条件などの伝送条件を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス光を伝送するパルス光伝送装置、及びパルス光の伝送条件を調整するパルス光伝送調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パルスレーザ光源において、フェムト秒領域の超短パルスレーザ光源の開発が進められている。このようなレーザ光源によって生成されるフェムト秒パルス光を産業上の様々な分野に応用するため、その光学系の簡略化、あるいは操作性の向上の観点から、光ファイバによるパルス光伝送が検討されている。また、一般的な光ファイバを用いたレーザ光の伝送については、特許文献1、2にマルチモードファイバを用いたCWレーザ光の伝送に関する記載がある。
【特許文献1】特開平8−167754号公報
【特許文献2】特開平11−14869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光ファイバを用いてフェムト秒パルス光を伝送する場合、光ファイバ中での波長分散や自己位相変調などによるパルス光の波形歪みの発生が問題となる。例えば、マルチモードファイバを用いた光の伝送では、低次伝搬モードから高次伝搬モードまでの多くのモードが混在して伝送される。このとき、パルス光伝送による遅延時間がモード毎に生じる(多モード分散)ため、出力パルス光の時間波形が歪み、結果としてマルチモードファイバの帯域が劣化する。特に、広帯域のスペクトル成分を有するパルス光を伝送させる場合、同じスペクトル成分でも上記のように伝搬モードによって位相特性が異なるため、伝搬モードなどの伝送状況の変化によって出力パルス光の波形が変化することとなる。
【0004】
また、マルチモードファイバでは、その伝送帯域は伝送損失が6dBになる周波数によって定義されているが、コア径が50μmのマルチモードファイバでの代表的な帯域の値は500MHz・kmである。この場合、長さ100mの光ファイバで帯域が5GHzとなり、伝送可能なパルス光の最短パルス幅は概算で5GHzの逆数、すなわち0.2nsとなる。このことから、広帯域スペクトルのフェムト秒パルス光を100mもの長さのマルチモードファイバを用いて伝送することは困難であると考えられる。
【0005】
上記の理由により、広帯域のスペクトル成分を有するパルス光の伝送には、通常、シングルモードファイバが用いられる。しかしながら、シングルモードファイバを用いたパルス光の伝送では、シングルモードファイバはマルチモードファイバに比べて破壊閾値が低く、大きいエネルギーのパルス光を伝送することができないなどの制限があるという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、光ファイバを用いてフェムト秒パルス光などのパルス光を好適に伝送することが可能なパルス光伝送装置、及びパルス光伝送調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、上記した光ファイバによるフェムト秒パルス光の伝送について検討を重ねた結果、光ファイバへのパルス光の入力条件を好適に制御することにより、光ファイバとしてマルチモードファイバを用いた場合であってもパルス光の伝送が可能となることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明によるパルス光伝送装置は、(1)所定波長のパルス光を出射するパルス光源と、(2)パルス光を伝送するマルチモードファイバと、(3)パルス光源から出射されたパルス光を、所定の伝搬モードで伝送される入力条件でマルチモードファイバへと入力する入力光学系と、(4)マルチモードファイバを伝送されるパルス光の分散補償条件を含む伝送条件を、マルチモードファイバの入力側及び出力側の少なくとも一方において制御するパルス光制御手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記したパルス光伝送装置においては、パルス光の伝送にマルチモードファイバを用いるとともに、マルチモードファイバに対するパルス光の入力条件を所定の伝搬モードでの伝送が可能な条件に設定する入力光学系を設置している。このような入力光学系を設けることにより、マルチモードファイバを用いてフェムト秒パルス光などの短パルス光を好適に伝送することが可能となる。また、マルチモードファイバでは、例えば大きいエネルギーのパルス光の伝送など、様々な条件でのパルス光伝送が可能となる。さらに、上記装置では、入力光学系に加えて、伝送されるパルス光の伝送条件を制御するパルス光制御手段を設けている。これにより、伝送装置からの出力パルス光として、好適な特性のパルス光を得ることができる。
【0010】
ここで、パルス光源は、パルス光としてパルス幅が1ps以下のパルスレーザ光を出射するパルスレーザ光源であることが好ましい。上記構成のパルス光伝送装置は、特にこのような短パルス幅のパルス光の伝送に対して有効である。また、パルス光を伝送するマルチモードファイバは、グレーデッドインデックス型のマルチモードファイバであることが好ましい。
【0011】
また、パルス光制御手段は、マルチモードファイバを伝送されるパルス光に対して所定の変調を付与するための光変調手段を含むことが好ましい。このような光変調手段を用いることにより、例えばパルス光への所望の情報の付加など、様々なパルス光伝送の制御が可能となる。
【0012】
また、パルス光伝送装置は、マルチモードファイバによるパルス光の伝送状況を評価する伝送評価手段と、伝送評価手段による伝送状況の評価結果に基づいて、入力光学系及びパルス光制御手段の少なくとも一方の動作を制御する伝送制御手段とを備える構成としても良い。このような構成では、マルチモードファイバによるパルス光伝送を精度良く制御することが可能となる。
【0013】
また、パルス光をマルチモードファイバへと所定の入力条件で入力するための光学系の具体的な構成例としては、入力光学系が、パルス光を集光しつつマルチモードファイバへと入力するための平凸レンズを有する構成がある。
【0014】
この場合、入力光学系は、パルス光源及び平凸レンズの間の所定位置に設置された板状部材を有し、板状部材は、平凸レンズの平面でパルス光の一部が反射された平面反射像、及び平凸レンズの凸面でパルス光の一部が反射された凸面反射像の観察に用いることが可能に構成されていることが好ましい。このような構成によれば、入力光学系によるマルチモードファイバへのパルス光の入力条件を好適に設定、あるいは調整することが可能となる。また、このような板状部材としては、パルス光源及び平凸レンズの間に設置されてパルス光が開口部を通過するアパーチャを用いることが好ましい。
【0015】
また、さらに一般的な構成例としては、入力光学系が、パルス光を集光しつつマルチモードファイバへと入力するためのレンズを有する構成がある。この場合、入力光学系は、パルス光源及びレンズの間の所定位置に設置された板状部材を有し、板状部材は、レンズの光出射側の面でパルス光の一部が反射された第1の反射像、及びレンズの光入射側の面でパルス光の一部が反射された第2の反射像の観察に用いることが可能に構成されていることが好ましい。このような構成によっても、入力光学系によるマルチモードファイバへのパルス光の入力条件を好適に設定、あるいは調整することが可能となる。
【0016】
本発明によるパルス光伝送調整方法は、(a)所定波長のパルス光を出射するパルス光源、パルス光を伝送するマルチモードファイバ、及びパルス光源から出射されたパルス光を集光しつつマルチモードファイバへと入力するレンズを所定の位置関係で設置する設置ステップと、(b)パルス光源からマルチモードファイバへとパルス光を出射させ、レンズの光出射側の面でパルス光の一部が反射された第1の反射像、及びレンズの光入射側の面でパルス光の一部が反射された第2の反射像を観察する観察ステップと、(c)第1の反射像及び第2の反射像の観察結果に基づいてマルチモードファイバへのパルス光の入力条件を調整することによって、マルチモードファイバでのパルス光の伝送の伝搬モードを調整する調整ステップとを備えることを特徴とする。
【0017】
上記したパルス光伝送調整方法においては、マルチモードファイバを用いたパルス光の伝送について、マルチモードファイバへのパルス光の入力光学系としてレンズを設置するとともに、そのレンズからのパルス光の反射像を利用してパルス光の入力条件を調整している。これにより、マルチモードファイバを用いてフェムト秒パルス光などの短パルス光が好適に伝送されるように、その入力条件、及びマルチモードファイバでの伝搬モードなどの伝送条件を調整することが可能となる。
【0018】
この場合、設置ステップにおいて、パルス光源及びレンズの間の所定位置に板状部材を設置し、観察ステップにおいて、板状部材を用いて第1の反射像及び第2の反射像を観察することが好ましい。このような構成によれば、レンズを含む入力光学系によるマルチモードファイバへのパルス光の入力条件の調整を、確実かつ簡単な方法で実行することが可能となる。
【0019】
また、パルス光伝送調整方法は、(a)所定波長のパルス光を出射するパルス光源、パルス光を伝送するマルチモードファイバ、及びパルス光源から出射されたパルス光を集光しつつマルチモードファイバへと入力する平凸レンズを所定の位置関係で設置する設置ステップと、(b)パルス光源からマルチモードファイバへとパルス光を出射させ、平凸レンズの平面でパルス光の一部が反射された平面反射像、及び平凸レンズの凸面でパルス光の一部が反射された凸面反射像を観察する観察ステップと、(c)平面反射像及び凸面反射像の観察結果に基づいてマルチモードファイバへのパルス光の入力条件を調整することによって、マルチモードファイバでのパルス光の伝送の伝搬モードを調整する調整ステップとを備えることが好ましい。
【0020】
上記したパルス光伝送調整方法においては、マルチモードファイバを用いたパルス光の伝送について、マルチモードファイバへのパルス光の入力光学系として平凸レンズを設置するとともに、その平凸レンズからのパルス光の反射像を利用してパルス光の入力条件を調整している。これにより、マルチモードファイバを用いてフェムト秒パルス光などの短パルス光が好適に伝送されるように、その入力条件、及びマルチモードファイバでの伝搬モードなどの伝送条件を調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のパルス光伝送装置及びパルス光伝送調整方法によれば、パルス光の伝送にマルチモードファイバを用いるとともに、マルチモードファイバに対するパルス光の入力条件を所定の伝搬モードでの伝送が可能な条件とする入力光学系を用いることにより、マルチモードファイバを用いてフェムト秒パルス光などの短パルス光を好適に伝送することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面とともに本発明によるパルス光伝送装置、及びパルス光伝送調整方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0023】
図1は、本発明によるパルス光伝送装置の第1実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。パルス光伝送装置1Aは、光ファイバを用いてフェムト秒パルス光などのパルス光を伝送する装置である。本実施形態によるパルス光伝送装置1Aは、パルスレーザ光源10と、マルチモードファイバ15と、入力光学系20と、出力光学系25と、パルス光制御部30とを備えている。
【0024】
パルスレーザ光源10は、本伝送装置1Aでの伝送対象となる所定波長のパルス光(所定波長帯域のスペクトル成分を有するパルス光)を出射するパルス光源である。また、このパルス光源10から出射されたパルス光を伝送するための光ファイバとして、マルチモードファイバ15が所定の伝送経路に沿って設置されている。
【0025】
パルス光源10とマルチモードファイバ15との間には、入力光学系20が設けられている。この入力光学系20は、パルス光源10から出射されたパルス光を、所定の入力条件でマルチモードファイバ15へと入力端15aから入力する光学系である。また、入力光学系20を構成する光学要素と、マルチモードファイバ15の入力端15a側の所定部分とは、好ましくは、図1に模式的に示すように、互いに位置決めされた状態で保持機構(制御機構)20aによって一体に保持される。
【0026】
入力光学系20は、マルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件が、マルチモードファイバ15において所定の伝搬モードでのパルス光伝送が可能な条件、好ましくは基本モードだけが伝搬するシングルモードのパルス光伝送が可能な条件となるように構成されている。また、マルチモードファイバ15の出力端15b側には、必要に応じて出力光学系25が設けられる。
【0027】
また、パルス光源10と入力光学系20との間には、パルス光制御部30が設けられている。パルス光制御部30は、マルチモードファイバ15を伝送されるパルス光の伝送条件を制御するための制御手段である。このように、パルス光制御部30でパルス光の伝送条件を制御することにより、伝送装置1Aからの出力パルス光の特性を制御することができる。本実施形態においては、このパルス光制御部30は、マルチモードファイバ15を伝送されるパルス光の分散補償条件を制御する分散補償部31と、パルス光に対して所定の変調を付与するための光変調部32とを含んで構成されている。なお、入力光学系20及びパルス光制御部30の構成等については、具体的には後述する。
【0028】
上記実施形態によるパルス光伝送装置1Aの効果について説明する。
【0029】
図1に示したパルス光伝送装置1Aにおいては、パルス光源10から出射されるパルス光を伝送する光ファイバとして、マルチモードファイバ15を用いている。これにより、シングルモードファイバを用いた場合に比べて、例えば大きいエネルギーのパルス光の伝送など、様々な条件でのパルス光伝送が可能となる。これは、フェムト秒パルス光などのパルス光を産業上の様々な分野に応用する上で非常に有用である。
【0030】
また、このマルチモードファイバ15を用いたパルス光伝送のため、マルチモードファイバ15に対するパルス光の入力条件を所定の伝搬モードでの伝送が可能な条件に設定する入力光学系20を設置している。このような入力光学系20を設けることにより、マルチモードファイバ15を用いてフェムト秒パルス光などの短パルス光を好適に伝送することが可能となる。例えば、マルチモードファイバ15の光軸に対してパルス光の入力軸を充分な精度で一致させ、マルチモードファイバ15の中心近傍の位置にパルス光を入力することにより、基本モードだけが伝搬するパルス光のシングルモード伝送を実現することも可能である。
【0031】
ここで、伝送対象となるパルス光を出射するパルス光源としては、パルス光伝送装置の用途等に応じて様々なものを適用して良いが、特に、パルス幅が1ps以下のパルスレーザ光を出射するパルスレーザ光源を用いることが好ましい。上記構成のパルス光伝送装置1Aは、特にこのようなフェムト秒領域で短パルス幅のパルス光の伝送、例えば、広帯域のスペクトル成分を有するフェムト秒パルス光の伝送に対して有効である。このようなパルスレーザ光源としては、例えば、チタンサファイアレーザがある。また、このようなパルス光源は、単一のパルス光を出射する構成、または、複数のパルス光を合成して出射する構成として良い。
【0032】
また、パルス光源として、レーザ光源を1次光源とし、1次光源から供給されたレーザ光を媒質中で伝搬させることによって発生する2次的な光を伝送対象のパルス光として出射する構成を用いても良い。このような2次的な光の発生に用いられる媒質としては、例えばフォトニック結晶、非線形光学結晶などが挙げられる。
【0033】
また、入力光学系20において制御されるパルス光のマルチモードファイバ15への入力条件としては、具体的には例えば、入力端15aでのパルス光の入力位置(集光位置)の他、集光径、開口数、光強度、伝搬方向、空間分布、または入力する際の波面の傾き、あるいはそれらの組合せがある。また、パルス光の伝送に用いるマルチモードファイバとしては、グレーデッドインデックス型のマルチモードファイバを用いることが好ましい。あるいは、ステップインデックス型のマルチモードファイバを用いても良い。
【0034】
さらに、上記したパルス光伝送装置1Aでは、パルス光源10及びマルチモードファイバ15に対し、入力光学系20に加えて、パルス光制御部30を設けている。このようなパルス光制御部30でパルス光の伝送条件を制御することにより、伝送装置1Aからの出力パルス光として、好適な特性のパルス光を得ることができる。特に、パルス光の伝送においては、マルチモードファイバ15での分散が問題となる。これに対して、パルス光制御部30は、上記したように、マルチモードファイバ15においてパルス光に生じる分散を補償する分散補償手段の機能を有し、伝送条件としての分散補償条件を制御するように構成されている。
【0035】
このパルス光制御部30については、分散補償条件以外の伝送条件についても制御する構成としても良い。そのような制御対象としては、例えばパルス光の波形がある。この場合、制御されるパルス光の波形のパラメータとしては、例えば、パルス光の時間波形の形状自体、パルス幅、パルス強度、などが挙げられる。
【0036】
また、図1の構成では、パルス光制御部30は、パルス光に変調を付与する光変調部32を有している。このような光変調部32を用いることにより、例えばパルス光への所望の情報の付加など、様々なパルス光伝送の制御が可能となる。光変調部32によるパルス光の変調については、具体的には、パルス光源10から出射されるパルス光に対し、その波長毎の振幅(強度)、位相、及び偏光の少なくとも1つを変調する構成とすることが好ましい。
【0037】
なお、このパルス光制御部30については、図1ではマルチモードファイバ15に対して入力側に配置しているが、出力側に配置する構成としても良く、あるいは、入力側及び出力側の両方に配置する構成としても良い。一般には、パルス光制御部30は、マルチモードファイバ15の入力側及び出力側の少なくとも一方においてパルス光を制御する構成であれば良い。例えば、パルス光を変調して情報を付加した状態で伝送する場合、パルス光制御部30のうちでパルス光への情報の付加に用いる部分をマルチモードファイバ15の入力側に、分散補償などの伝送条件の制御等に用いる部分を入力側または出力側に配置する構成を用いることができる。
【0038】
また、パルス光制御部30の具体的な構成及び機能については、図1に示した構成に限定されるものではなく、様々な構成を用いて良い。例えば、光変調部32によるパルス光に対する変調の付与は、不要であれば行わない構成としても良い。また、分散補償部31による分散補償、及び光変調部32による変調の付与は、必ずしも別個に行う構成でなくても良い。したがって、分散補償部31及び光変調部32としては、別々の光学系を用いる構成、あるいは、単一の光学系を用いる構成のいずれも可能である。また、入力光学系20及びパルス光制御部30の全体を、両者の機能を併せ持つ単一の光学系から構成することも可能である。
【0039】
図2は、本発明によるパルス光伝送装置の第2実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。本実施形態によるパルス光伝送装置1Bは、図1に示した構成に加えて、伝送評価部40と、伝送制御部45とを備えている。
【0040】
伝送評価部40は、マルチモードファイバ15によるパルス光の伝送状況を評価する評価手段である。具体的には、伝送評価部40は、パルス光源10から出射されてマルチモードファイバ15の入力端15aへと入力されるパルス光、またはマルチモードファイバ15を伝送されて出力端15bから出力されるパルス光の一方または両方を計測し、その計測結果を参照してマルチモードファイバ15でのパルス光の伝送状況を評価する。この伝送評価部40での伝送状況の評価結果は、伝送制御部45へと入力されている。伝送制御部45は、伝送評価部40によるパルス光の伝送状況の評価結果に基づいて、入力光学系20及びパルス光制御部30の少なくとも一方の動作を制御する制御手段である。
【0041】
このように、伝送評価部40及び伝送制御部45を備えた構成では、マルチモードファイバ15でのパルス光の実際の伝送状況に応じて、精度良くパルス光伝送を制御することが可能となる。例えば、伝送制御部45によってパルス光制御部30の動作を制御した場合、伝送装置1Bからの出力パルス光の波形等を精度良く制御することができる。また、伝送制御部45によって入力光学系20の動作を制御した場合、マルチモードファイバ15でのパルス光の伝送の伝搬モードを精度良く制御することができる。
【0042】
なお、入力光学系20においてマルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件を制御する場合には、マルチモードファイバ15に対するパルス光の入射位置、及び入射角度を制御することが好ましい。このような入力条件の制御は、入力光学系20を構成する各光学要素に対して調整機構を付加することによって実現できる。このような調整機構としては、例えば、光学要素の3次元的な位置や傾きを調整する機構を付加すれば良い。あるいは、入力光学系20側ではなく、マルチモードファイバ15の位置や傾きを調整する構成としても良い。
【0043】
本発明によるパルス光伝送装置の具体的な構成、及びマルチモードファイバでのパルス光の伝送条件を調整するためのパルス光伝送調整方法についてさらに説明する。
【0044】
図3は、パルス光伝送装置に用いられる入力光学系の一例を示す構成図である。本構成例においては、入力光学系20を構成する光学要素として、パルス光源10から出射されたパルス光を集光しつつマルチモードファイバ15へと入力するための平凸レンズ22を用いている。
【0045】
具体的には、図3においては、平凸レンズ22の2つのレンズ面のうち、マルチモードファイバ15側のレンズ面が平面(平坦面)22a、パルス光源10側のレンズ面が凸面22bとなっている。また、パルス光源10と平凸レンズ22との間には、パルス光源10からマルチモードファイバ15へと向かうパルス光が開口部21cを通過するアパーチャ21が設置されており、これらのアパーチャ21及び平凸レンズ22によって入力光学系20が構成されている。
【0046】
このような構成により、パルス光源10からのパルス光をマルチモードファイバ15へと好適な入力条件で入力することができる。また、このような平凸レンズ22は、マルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件、及びマルチモードファイバ15でのパルス光の伝送条件の調整、設定を行う上でも有用である。
【0047】
具体的には、入力光学系20の平凸レンズ22を利用したパルス光伝送調整方法では、まず、パルス光源10、マルチモードファイバ15、及び平凸レンズ22を、それぞれ所定の位置関係となる初期位置に設置する(設置ステップ)。続いて、パルス光源10からマルチモードファイバ15へとパルス光を出射させ、平凸レンズ22の平面22aでパルス光の一部が反射された平面反射像、及び凸面22bでパルス光の一部が反射された凸面反射像を観察する(観察ステップ)。
【0048】
そして、平面反射像、及び凸面反射像の観察結果に基づいて、マルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件を調整する。具体的には、平凸レンズ22の平面22aからの平面反射像の中心位置、及び凸面22bからの凸面反射像の中心位置が、マルチモードファイバ15へと入力されるパルス光の中心軸と一致するように、パルス光源10、平凸レンズ22、及びマルチモードファイバ15の位置関係を調整する。これにより、パルス光の伝送の伝搬モードなど、マルチモードファイバ15でのパルス光の伝送条件が調整される(調整ステップ)。
【0049】
このように、平凸レンズ22からの反射像を利用してパルス光の入力条件を調整する調整方法によれば、マルチモードファイバ15を用いてフェムト秒パルス光などの短パルス光が好適に伝送されるように、その入力条件、及びマルチモードファイバ15での伝搬モードなどの伝送条件を調整することが可能となる。
【0050】
また、平凸レンズ22からのパルス光の反射像の観察方法については、パルス光源10及び平凸レンズ22の間に配置されたアパーチャ21を用いて平面反射像及び凸面反射像を観察することが好ましい。このような構成によれば、平凸レンズ22を含む入力光学系20によるマルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件の調整を、確実かつ簡単な方法で実行することが可能となる。一般には、パルス光源10及び平凸レンズ22の間の所定位置に配置された板状部材を用いて平面反射像及び凸面反射像の観察を行う構成とすることが好ましい。また、このような板状部材については、パルス光の入力条件の調整等を終えた後、取り外しが可能な機構を有する構成としても良い。
【0051】
図4は、図3に示した平凸レンズ22を含む入力光学系20を用いて行われるパルス光伝送調整方法について示す模式図である。この図4では、その中心位置に円形状の開口部21cが設けられたアパーチャ21を、平凸レンズ22側から見た状態で示し、その下流側の面である反射像観察面21a、観察面21a上に投映された平凸レンズ22の平面22aからの平面反射像A、及び観察面21a上に投映された凸面22bからの凸面反射像Bを図示している。また、図中においては、反射像A、Bのそれぞれを、斜線を付して模式的に示している。
【0052】
平凸レンズ22を介したマルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件が好適に調整された状態では、図4に示すように、平面反射像A、及び凸面反射像Bのいずれも、アパーチャ21の中心軸上の位置を中心とする円形状の光像となる。また、これらの反射像A、Bのうち、凸面反射像Bは、反射面となる平凸レンズ22の凸面22bの形状により平凸レンズ22からアパーチャ21へと広がりつつ入射するため、その像の大きさが平面反射像Aよりも大きくなっている。これら2種類の反射像A、Bを利用し、反射像A、Bがアパーチャ21の観察面21a上で同心円状のパターンとなるように調整することにより、マルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件の調整を、簡単な入力光学系20の構成及び調整方法で実現することができる。なお、マルチモードファイバ15へのパルス光の具体的な入力条件については、上記したように、マルチモードファイバ15の中心近傍の位置にパルス光を入力することが好ましい。
【0053】
上記した入力条件でパルス光源10とマルチモードファイバ15とを接続した場合、マルチモードファイバ15における高次伝搬モードでのパルス光の伝送を抑制して、光ファイバとしてマルチモードファイバ15を用いたにもかかわらず、実質的に基本モードだけが伝搬するパルス光のシングルモード伝送が実現可能である。また、パルス光の空間モードについては、マルチモードファイバ15から出力されるパルス光の空間モードを、ガウス型の強度分布に近い良好な分布形状とすることが好ましいと考えられる。したがって、このような空間モードについても考慮しつつ、入力光学系20によるパルス光の入力条件を調整することが望ましい。
【0054】
なお、マルチモードファイバ15の入力端15aの端面が平面形状に研磨されている場合には、平凸レンズ22の平面22a、凸面22bからのパルス光の反射像に加えて、マルチモードファイバ15の入力端15aからの反射像をも入力条件の調整に利用することとしても良い。これにより、入力条件の調整をさらに精度良く行うことができる。
【0055】
また、このように入力条件の調整を行うための入力光学系の構成としては、一般には、入力光学系20が、パルス光を集光しつつマルチモードファイバ15へと入力するためのレンズを有する構成とすれば良い。このような構成によっても、マルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件の調整を、簡単な入力光学系20の構成及び調整方法で実現することができる。この場合のレンズとしては、平凸レンズに限らず、両面が凸面のレンズを用いても良い。
【0056】
また、この場合のレンズからの反射像の観察については、入力光学系は、パルス光源及びレンズの間の所定位置に設置されたアパーチャなどの板状部材を有し、板状部材は、レンズの光出射側(マルチモードファイバ側)の面でパルス光の一部が反射された第1の反射像、及びレンズの光入射側(パルス光源側)の面でパルス光の一部が反射された第2の反射像の観察に用いることが可能に構成されていることとすれば良い。
【0057】
また、上記した例では、パルス光源10から供給されるパルス光が概ね均一な平面波であることを前提としているが、パルス光の波面が不均一である場合には、空間フィルタ等を介して波面を均一とした後にマルチモードファイバ15へと入力することが好ましい。また、平凸レンズなどのレンズを用いた構成の入力光学系20においても、パルス光制御部30については、入力光学系20とは別個の光学系として設置する構成、あるいは入力光学系20によってパルス光制御部30を兼ねる構成のいずれも可能であることは、図1に関して上述した通りである。
【0058】
図5は、パルス光伝送装置に用いられるパルス光制御部の一例を示す構成図である。本構成例においては、パルス光制御部30は、波形整形器36と、伸張器37とを有して構成されている。
【0059】
波形整形器36は、例えば、入力されたパルス光を回折格子やプリズム等の分光素子によって分光し、その各スペクトル成分(波長成分)に対して変調素子によって変調を付与した後にスペクトル成分を合波するように構成される。図5においては、波形整形器36は、パルス光源10からのパルス光を分光する回折格子36a、分光された光を結像する円筒凹面ミラー36b、凹面ミラー36bから入射されるパルス光の各スペクトル成分に対して位相変調を付与する空間光変調器36c、変調された光を集光する円筒凹面ミラー36d、及び集光された光を合波して変調後のパルス光とする回折格子36eから構成されている。
【0060】
また、伸張器37は、回折格子やプリズム等の分光素子によってパルス光の各スペクトル成分に対して2次の位相変調を付与するように構成される。図5においては、伸張器37は、波形整形器36からのパルス光を分光する回折格子37b、分光されたパルス光の各スペクトル成分に対して位相変調を付与するための回折格子37c、及び全反射ミラー37dから構成されている。
【0061】
また、この伸張器37には、波形整形器36の回折格子36eと、伸張器37の回折格子37bとの間に、一部反射ミラー37aが配置されている。この一部反射ミラー37aは、波形整形器36から入力された光を回折格子37bへと透過させるとともに、回折格子37bからの光を反射して入力光学系20へ向けて出力するために用いられる。
【0062】
図5に示した構成のパルス光制御部30を用いたパルス光の波形等の制御について説明する。まず、波形整形器36に入力されたパルス光源10からのパルス光は、回折格子36aによって分光された後、円筒凹面ミラー36bによって各スペクトル成分がフーリエ面上に空間的に分離した状態で結像される。このフーリエ面上に配置された空間光変調器36cでは、これらのパルス光のスペクトル成分に対して、それぞれ独立した位相変調が付与される。変調されたパルス光のスペクトル成分は、円筒凹面ミラー36d及び回折格子36eによって合波される。この波形整形器36では、主として、伸張器37では補正しきれない分の補正が行われる。
【0063】
また、伸張器37に入力された波形整形器36からのパルス光は、回折格子37b、37cによって2次の位相変調が付与された後、全反射ミラー37dによって反射され、再び回折格子37c、37bで回折されて、反射ミラー37aを介して出力される。この伸張器37では、主として、2次の位相分散に対する補正が行われる。なお、このような構成において、全反射ミラー37dを紙面に対して垂直方向にあおることにより、回折格子37b、37cの位置では入力時と出力時とでパルス光の位置が上下に分離され、変調後のパルス光の取り出しが容易となる。この場合、例えば、一部透過ミラー37aを全反射ミラーとし、パルス光の出力光路のみに対して配置する構成としても良い。
【0064】
このように波形整形器36及び伸張器37を有するパルス光制御部30は、分散補償部31及び光変調部32の機能を併せ持っている。また、パルス光制御部30については、図5に示した構成例以外にも、様々な構成を用いて良い。例えば、図5において、波形整形器36と伸張器37との設置順序は逆でも良く、また、いずれか一方のみを設置する構成としても良い。また、パルス光制御部30に用いられる光変調器としては、位相パターンを制御可能な空間光変調器や固定位相パターンの光変調器などの位相変調素子を用いることができる。あるいは、空間光変調器の前後に偏光子を配置することにより、パルス光の各スペクトル成分に対して強度変調を付与することも可能である。
【0065】
図6は、パルス光伝送装置の他の例を示す構成図である。本構成例においては、図5に示した構成に加えて、伝送評価部40として機能するパルス幅計測器41と、伝送制御部45とを備えている。
【0066】
パルス幅計測器41は、マルチモードファイバ15を伝送されて出力端から出力されるパルス光のパルス幅を計測する計測手段である。本構成例では、このパルス幅計測器41による出力パルス光のパルス幅の計測結果に基づいて、マルチモードファイバ15でのパルス光の伝送状況が評価される。伝送制御部45は、図2に関して上述したように、伝送評価部40であるパルス幅計測器41による評価結果に基づいて、入力光学系20及びパルス光制御部30の少なくとも一方の動作を制御する。このような伝送条件の制御は、例えば、マルチモードファイバ15での伝送によって生じる出力パルス光の広がりが小さい場合を好ましい伝送状況とする制御基準に基づいて実行することができる。
【0067】
伝送制御部45によってパルス光制御部30の動作を制御する場合、図6に示した構成では、伝送制御部45が波形整形器36の空間光変調器36cでの位相変調パターンを制御する構成を用いることができる。あるいは、パルス光制御部30の他の光学要素を制御する構成としても良い。
【0068】
また、伝送制御部45によって入力光学系20の動作を制御する場合、伝送制御部45が入力光学系20に設けられた集光レンズ(例えば図3に示した平凸レンズ22)の位置及び傾きを制御する構成を用いることができる。また、パルス光の伝送に用いられるマルチモードファイバ15に制御機構が付加されている場合には、マルチモードファイバ15の入射端の位置及び傾きを制御する構成としても良い。
【0069】
以下、図6に示した構成を参照しつつ、パルス光伝送装置のマルチモードファイバにおけるパルス光の伝送条件、及びその調整の実施例について説明する。
【0070】
ここでは、溝本数1200本/mmの回折格子36a、36e、及び曲率半径500mmの円筒凹面ミラー36b、36dを用いて波形整形器36を構成する。また、光の入射角度が24°となるように設置された溝本数1800本/mmの回折格子37b、37cを用いて伸張器37を構成し、回折格子37bから1300mm程度の空間を伝搬した後に回折格子37cで平行光とされる構成とする。
【0071】
また、一部透過ミラー37aを介してパルス光制御部30から出力されたパルス光に対し、入力光学系20において焦点距離50mmの平凸レンズを設置する。また、パルス光を伝送するマルチモードファイバ15としては、コア径50μm、長さ96mのマルチモードファイバを用いる。また、平凸レンズ及びマルチモードファイバには、それぞれ位置及び傾きを制御する制御機構が付加されている。一方、マルチモードファイバ15を伝送された出力パルス光に対し、パルス幅計測器41として自己相関器を設置し、マルチモードファイバ15の出力端から出力されたパルス光が10倍の対物レンズを介してコリメートされた後に、自己相関器へと導かれる構成とする。
【0072】
自己相関器は、計測対象として入射したパルス光のパルス幅に依存した電気信号を出力する。本実施例では、パルス幅が短くなると自己相関器からの出力信号強度が大きくなるように構成している。なお、伝送評価部40については、パルス幅計測器41である自己相関器に限定されるものではない。例えば、マルチモードファイバ15から出力されるパルス光のスペクトルに対して評価、制御を行う場合には、伝送評価部として分光器を用いることができる。また、パルス光の空間モードに対して評価、制御を行う場合には、伝送評価部としてCCDカメラを用いることができる。
【0073】
自己相関器からの出力信号は、伝送制御部45を構成するコンピュータに入力される。伝送制御部45は、自己相関器からの信号強度が大きくなるように入力光学系20及びパルス光制御部30の動作を制御する。この場合、伝送制御部45による伝送条件の制御の試行回数が多くなるにしたがって、短い出力パルス幅が達成されて、自己相関器からの出力信号強度が大きくなる。
【0074】
また、図3に示したように平凸レンズ22からの反射像を観察する構成において、アパーチャ21での反射像A、BをCCDカメラ等によってモニタし、そのモニタ結果をパルス光の伝送状況の評価結果として伝送条件の制御を行う構成とすることも可能である。
【0075】
図7は、パルスレーザ光源10から出射されるパルス光の自己相関波形を示すグラフであり、横軸は時間(fs)、縦軸は強度を示している。この自己相関波形に示すように、パルス光源10からのパルス光のパルス幅は95fsであった。
【0076】
このパルス光に対して、パルス光制御部30の伸張器37で位相変調の付与を行った。図8は、伸張器37の位相分散特性を示すグラフであり、横軸は波長(nm)、縦軸は位相分散(rad)を示している。また、図9は、伸張器37から出力されるパルス光の時間波形を示すグラフであり、横軸は時間(100ps/DIV)、縦軸は強度を示している。ここでは、図7に示した自己相関波形を有するパルス光に対し、図8に示す位相分散を付与した結果、図9の時間波形に示すように、パルス光のパルス幅が382psまで広げられている。
【0077】
このようにパルス幅が広げられたパルス光をマルチモードファイバ15によって伝送する。図10は、マルチモードファイバ15の位相分散特性を示すグラフであり、横軸は波長(nm)、縦軸は位相分散(rad)を示している。また、図11は、マルチモードファイバ15から出力されるパルス光の自己相関波形を示すグラフであり、横軸は時間(fs)、縦軸は強度を示している。なお、位相分散特性については、同じ長さの合成石英のパラメータにより算出された計算値を示している。
【0078】
図11の自己相関波形に示すように、図10に示すマルチモードファイバ15の位相分散と、図8に示した伸張器37の位相分散とが打ち消しあった結果、出力パルス光のパルス幅は313fsまで圧縮されている。また、このようなパルス幅の圧縮については、入力光学系20によるマルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件の制御、及びマルチモードファイバ15での伝搬モードの制御による効果も大きい。
【0079】
ここで、図6に示した構成において、波形整形器36による位相制御を行わない場合、伸張器37によってマルチモードファイバ15の2次位相分散は補正できるが、3次以上の高次の位相分散を補正することが困難である。一方、パルス光を伝送するマルチモードファイバ15が長くなるにつれて、高次の位相分散の影響も大きくなる。
【0080】
図12は、パルス光の時間波形(計算値)を示すグラフであり、横軸は時間(fs)、縦軸は強度を示している。また、図13は、合成石英ブロックの3次位相分散特性を示すグラフであり、横軸は波長(nm)、縦軸は位相分散(rad)を示している。また、図14は、分散付与後のパルス光の時間波形を示すグラフであり、横軸は時間(fs)、縦軸は強度を示している。
【0081】
図12に示すパルス幅75fsのパルス光に対して、長さ100mの合成石英ブロックに対応する図13の位相分散を付与すると、図14に示すように、パルス光の時間波形に歪みが生じる。また、マルチモードファイバ15での伝送中でパルス光に生じる高次の位相分散を正確に見積もることは困難である。これに対して、上述した自己相関器の出力信号強度に基づく伝送制御を行うことにより、このような高次の位相分散の影響を低減することが可能である。
【0082】
図15は、自己相関器の出力信号強度の変化を示すグラフであり、横軸は伝送制御の試行回数、縦軸は自己相関器の出力信号強度を示している。このように、パルス幅計測器41である自己相関器、及び伝送制御部45を用い、自己相関器からの出力信号強度が大きくなるように伝送条件のフィードバック自動制御を行うことにより、伝送制御の試行回数が多くなるにしたがって、自己相関器からの出力信号強度が徐々に大きくなっていることがわかる。
【0083】
図16は、このような自動制御を行った後の出力パルス光の自己相関波形を示すグラフであり、横軸は時間(fs)、縦軸は強度を示している。このように、自己相関器の出力信号強度を参照して伝送条件の自動制御を行うことにより、マルチモードファイバ15において生じる高次の位相分散が補正され、出力パルス光のパルス幅を184fsまで圧縮することができた。
【0084】
なお、上記した位相分散はパルス光の強度には依存しない分散であるが、非線形光学効果によってパルス光の強度波形に依存する複雑な伝搬が生じる場合等においても、上記した自動制御方法によれば、その影響を補正することが可能である。また、マルチモードファイバ15からの出力パルス光の時間波形をストリークカメラ、及び光オシロスコープを用いて計測したところ、いずれの計測結果においても、サテライトパルスが存在しないフェムト秒パルス光のマルチモードファイバ伝送が実現されていることが確認された。
【0085】
また、このようにマルチモードファイバ15を用いてパルス光を伝送する構成においても、自己位相変調によってスペクトル帯域を広げることが可能である。図17は、パルス幅50fs、中心波長812nm、繰返し周波数1kHz、平均強度0.1mWのパルス光を用いた場合に得られる出力パルス光のスペクトルを示すグラフである。また、図18は、同様の条件で平均強度46mWのパルス光を用いた場合に得られる出力パルス光のスペクトルを示すグラフである。これらのグラフにおいて、横軸は波長(nm)、縦軸は強度を示している。
【0086】
これらのグラフに示すように、パルス光を伝送させる光ファイバとしてマルチモードファイバ15を用いた場合でも、上記したように低次の伝搬モードだけで選択的に伝送させつつ、自己位相変調等の非線形光学効果を効率良く生じさせて、スペクトル帯域を広げることが可能である。さらに、パルス光制御部30によって入力パルス光の位相を制御することにより、出力パルス光のスペクトル、もしくは時間波形等を制御することも可能である。
【0087】
本発明によるパルス光伝送装置、及びパルス光伝送調整方法は、上記した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、パルス光を伝送するマルチモードファイバについては、マルチモードファイバを束ねたバンドルファイバを用いても良い。また、パルス光制御部30でのパルス光の変調については、例えばE/O変調器やA/O変調器などのように、時刻に応じて異なる位相変調が与えられる素子を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、光ファイバを用いてフェムト秒パルス光などのパルス光を好適に伝送することが可能なパルス光伝送装置、及びパルス光伝送調整方法として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】パルス光伝送装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】パルス光伝送装置の第2実施形態の構成を示すブロック図である。
【図3】伝送装置に用いられる入力光学系の一例を示す構成図である。
【図4】図3に示した入力光学系を用いたパルス光伝送調整方法について示す模式図である。
【図5】伝送装置に用いられるパルス光制御部の一例を示す構成図である。
【図6】パルス光伝送装置の他の例を示す構成図である。
【図7】パルス光源から出射されるパルス光の自己相関波形を示すグラフである。
【図8】伸張器の位相分散特性を示すグラフである。
【図9】伸張器から出力されるパルス光の時間波形を示すグラフである。
【図10】マルチモードファイバの位相分散特性を示すグラフである。
【図11】マルチモードファイバから出力されるパルス光の自己相関波形を示すグラフである。
【図12】パルス光の時間波形を示すグラフである。
【図13】合成石英ブロックの3次位相分散特性を示すグラフである。
【図14】パルス光の時間波形を示すグラフである。
【図15】自己相関器の出力信号強度の変化を示すグラフである。
【図16】出力パルス光の自己相関波形を示すグラフである。
【図17】出力パルス光のスペクトルを示すグラフである。
【図18】出力パルス光のスペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0090】
1A、1B…パルス光伝送装置、10…パルスレーザ光源、15…マルチモードファイバ、15a…入力端、15b…出力端、20…入力光学系、20a…保持機構、21…アパーチャ、21a…反射像観察面、21c…開口部、22…平凸レンズ、22a…平面、22b…凸面、25…出力光学系、30…パルス光制御部、31…分散補償部、32…光変調部、36…波形整形器、37…伸張器、40…伝送評価部、41…パルス幅計測器、45…伝送制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス光を伝送するパルス光伝送装置、及びパルス光の伝送条件を調整するパルス光伝送調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パルスレーザ光源において、フェムト秒領域の超短パルスレーザ光源の開発が進められている。このようなレーザ光源によって生成されるフェムト秒パルス光を産業上の様々な分野に応用するため、その光学系の簡略化、あるいは操作性の向上の観点から、光ファイバによるパルス光伝送が検討されている。また、一般的な光ファイバを用いたレーザ光の伝送については、特許文献1、2にマルチモードファイバを用いたCWレーザ光の伝送に関する記載がある。
【特許文献1】特開平8−167754号公報
【特許文献2】特開平11−14869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光ファイバを用いてフェムト秒パルス光を伝送する場合、光ファイバ中での波長分散や自己位相変調などによるパルス光の波形歪みの発生が問題となる。例えば、マルチモードファイバを用いた光の伝送では、低次伝搬モードから高次伝搬モードまでの多くのモードが混在して伝送される。このとき、パルス光伝送による遅延時間がモード毎に生じる(多モード分散)ため、出力パルス光の時間波形が歪み、結果としてマルチモードファイバの帯域が劣化する。特に、広帯域のスペクトル成分を有するパルス光を伝送させる場合、同じスペクトル成分でも上記のように伝搬モードによって位相特性が異なるため、伝搬モードなどの伝送状況の変化によって出力パルス光の波形が変化することとなる。
【0004】
また、マルチモードファイバでは、その伝送帯域は伝送損失が6dBになる周波数によって定義されているが、コア径が50μmのマルチモードファイバでの代表的な帯域の値は500MHz・kmである。この場合、長さ100mの光ファイバで帯域が5GHzとなり、伝送可能なパルス光の最短パルス幅は概算で5GHzの逆数、すなわち0.2nsとなる。このことから、広帯域スペクトルのフェムト秒パルス光を100mもの長さのマルチモードファイバを用いて伝送することは困難であると考えられる。
【0005】
上記の理由により、広帯域のスペクトル成分を有するパルス光の伝送には、通常、シングルモードファイバが用いられる。しかしながら、シングルモードファイバを用いたパルス光の伝送では、シングルモードファイバはマルチモードファイバに比べて破壊閾値が低く、大きいエネルギーのパルス光を伝送することができないなどの制限があるという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、光ファイバを用いてフェムト秒パルス光などのパルス光を好適に伝送することが可能なパルス光伝送装置、及びパルス光伝送調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、上記した光ファイバによるフェムト秒パルス光の伝送について検討を重ねた結果、光ファイバへのパルス光の入力条件を好適に制御することにより、光ファイバとしてマルチモードファイバを用いた場合であってもパルス光の伝送が可能となることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明によるパルス光伝送装置は、(1)所定波長のパルス光を出射するパルス光源と、(2)パルス光を伝送するマルチモードファイバと、(3)パルス光源から出射されたパルス光を、所定の伝搬モードで伝送される入力条件でマルチモードファイバへと入力する入力光学系と、(4)マルチモードファイバを伝送されるパルス光の分散補償条件を含む伝送条件を、マルチモードファイバの入力側及び出力側の少なくとも一方において制御するパルス光制御手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記したパルス光伝送装置においては、パルス光の伝送にマルチモードファイバを用いるとともに、マルチモードファイバに対するパルス光の入力条件を所定の伝搬モードでの伝送が可能な条件に設定する入力光学系を設置している。このような入力光学系を設けることにより、マルチモードファイバを用いてフェムト秒パルス光などの短パルス光を好適に伝送することが可能となる。また、マルチモードファイバでは、例えば大きいエネルギーのパルス光の伝送など、様々な条件でのパルス光伝送が可能となる。さらに、上記装置では、入力光学系に加えて、伝送されるパルス光の伝送条件を制御するパルス光制御手段を設けている。これにより、伝送装置からの出力パルス光として、好適な特性のパルス光を得ることができる。
【0010】
ここで、パルス光源は、パルス光としてパルス幅が1ps以下のパルスレーザ光を出射するパルスレーザ光源であることが好ましい。上記構成のパルス光伝送装置は、特にこのような短パルス幅のパルス光の伝送に対して有効である。また、パルス光を伝送するマルチモードファイバは、グレーデッドインデックス型のマルチモードファイバであることが好ましい。
【0011】
また、パルス光制御手段は、マルチモードファイバを伝送されるパルス光に対して所定の変調を付与するための光変調手段を含むことが好ましい。このような光変調手段を用いることにより、例えばパルス光への所望の情報の付加など、様々なパルス光伝送の制御が可能となる。
【0012】
また、パルス光伝送装置は、マルチモードファイバによるパルス光の伝送状況を評価する伝送評価手段と、伝送評価手段による伝送状況の評価結果に基づいて、入力光学系及びパルス光制御手段の少なくとも一方の動作を制御する伝送制御手段とを備える構成としても良い。このような構成では、マルチモードファイバによるパルス光伝送を精度良く制御することが可能となる。
【0013】
また、パルス光をマルチモードファイバへと所定の入力条件で入力するための光学系の具体的な構成例としては、入力光学系が、パルス光を集光しつつマルチモードファイバへと入力するための平凸レンズを有する構成がある。
【0014】
この場合、入力光学系は、パルス光源及び平凸レンズの間の所定位置に設置された板状部材を有し、板状部材は、平凸レンズの平面でパルス光の一部が反射された平面反射像、及び平凸レンズの凸面でパルス光の一部が反射された凸面反射像の観察に用いることが可能に構成されていることが好ましい。このような構成によれば、入力光学系によるマルチモードファイバへのパルス光の入力条件を好適に設定、あるいは調整することが可能となる。また、このような板状部材としては、パルス光源及び平凸レンズの間に設置されてパルス光が開口部を通過するアパーチャを用いることが好ましい。
【0015】
また、さらに一般的な構成例としては、入力光学系が、パルス光を集光しつつマルチモードファイバへと入力するためのレンズを有する構成がある。この場合、入力光学系は、パルス光源及びレンズの間の所定位置に設置された板状部材を有し、板状部材は、レンズの光出射側の面でパルス光の一部が反射された第1の反射像、及びレンズの光入射側の面でパルス光の一部が反射された第2の反射像の観察に用いることが可能に構成されていることが好ましい。このような構成によっても、入力光学系によるマルチモードファイバへのパルス光の入力条件を好適に設定、あるいは調整することが可能となる。
【0016】
本発明によるパルス光伝送調整方法は、(a)所定波長のパルス光を出射するパルス光源、パルス光を伝送するマルチモードファイバ、及びパルス光源から出射されたパルス光を集光しつつマルチモードファイバへと入力するレンズを所定の位置関係で設置する設置ステップと、(b)パルス光源からマルチモードファイバへとパルス光を出射させ、レンズの光出射側の面でパルス光の一部が反射された第1の反射像、及びレンズの光入射側の面でパルス光の一部が反射された第2の反射像を観察する観察ステップと、(c)第1の反射像及び第2の反射像の観察結果に基づいてマルチモードファイバへのパルス光の入力条件を調整することによって、マルチモードファイバでのパルス光の伝送の伝搬モードを調整する調整ステップとを備えることを特徴とする。
【0017】
上記したパルス光伝送調整方法においては、マルチモードファイバを用いたパルス光の伝送について、マルチモードファイバへのパルス光の入力光学系としてレンズを設置するとともに、そのレンズからのパルス光の反射像を利用してパルス光の入力条件を調整している。これにより、マルチモードファイバを用いてフェムト秒パルス光などの短パルス光が好適に伝送されるように、その入力条件、及びマルチモードファイバでの伝搬モードなどの伝送条件を調整することが可能となる。
【0018】
この場合、設置ステップにおいて、パルス光源及びレンズの間の所定位置に板状部材を設置し、観察ステップにおいて、板状部材を用いて第1の反射像及び第2の反射像を観察することが好ましい。このような構成によれば、レンズを含む入力光学系によるマルチモードファイバへのパルス光の入力条件の調整を、確実かつ簡単な方法で実行することが可能となる。
【0019】
また、パルス光伝送調整方法は、(a)所定波長のパルス光を出射するパルス光源、パルス光を伝送するマルチモードファイバ、及びパルス光源から出射されたパルス光を集光しつつマルチモードファイバへと入力する平凸レンズを所定の位置関係で設置する設置ステップと、(b)パルス光源からマルチモードファイバへとパルス光を出射させ、平凸レンズの平面でパルス光の一部が反射された平面反射像、及び平凸レンズの凸面でパルス光の一部が反射された凸面反射像を観察する観察ステップと、(c)平面反射像及び凸面反射像の観察結果に基づいてマルチモードファイバへのパルス光の入力条件を調整することによって、マルチモードファイバでのパルス光の伝送の伝搬モードを調整する調整ステップとを備えることが好ましい。
【0020】
上記したパルス光伝送調整方法においては、マルチモードファイバを用いたパルス光の伝送について、マルチモードファイバへのパルス光の入力光学系として平凸レンズを設置するとともに、その平凸レンズからのパルス光の反射像を利用してパルス光の入力条件を調整している。これにより、マルチモードファイバを用いてフェムト秒パルス光などの短パルス光が好適に伝送されるように、その入力条件、及びマルチモードファイバでの伝搬モードなどの伝送条件を調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のパルス光伝送装置及びパルス光伝送調整方法によれば、パルス光の伝送にマルチモードファイバを用いるとともに、マルチモードファイバに対するパルス光の入力条件を所定の伝搬モードでの伝送が可能な条件とする入力光学系を用いることにより、マルチモードファイバを用いてフェムト秒パルス光などの短パルス光を好適に伝送することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面とともに本発明によるパルス光伝送装置、及びパルス光伝送調整方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0023】
図1は、本発明によるパルス光伝送装置の第1実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。パルス光伝送装置1Aは、光ファイバを用いてフェムト秒パルス光などのパルス光を伝送する装置である。本実施形態によるパルス光伝送装置1Aは、パルスレーザ光源10と、マルチモードファイバ15と、入力光学系20と、出力光学系25と、パルス光制御部30とを備えている。
【0024】
パルスレーザ光源10は、本伝送装置1Aでの伝送対象となる所定波長のパルス光(所定波長帯域のスペクトル成分を有するパルス光)を出射するパルス光源である。また、このパルス光源10から出射されたパルス光を伝送するための光ファイバとして、マルチモードファイバ15が所定の伝送経路に沿って設置されている。
【0025】
パルス光源10とマルチモードファイバ15との間には、入力光学系20が設けられている。この入力光学系20は、パルス光源10から出射されたパルス光を、所定の入力条件でマルチモードファイバ15へと入力端15aから入力する光学系である。また、入力光学系20を構成する光学要素と、マルチモードファイバ15の入力端15a側の所定部分とは、好ましくは、図1に模式的に示すように、互いに位置決めされた状態で保持機構(制御機構)20aによって一体に保持される。
【0026】
入力光学系20は、マルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件が、マルチモードファイバ15において所定の伝搬モードでのパルス光伝送が可能な条件、好ましくは基本モードだけが伝搬するシングルモードのパルス光伝送が可能な条件となるように構成されている。また、マルチモードファイバ15の出力端15b側には、必要に応じて出力光学系25が設けられる。
【0027】
また、パルス光源10と入力光学系20との間には、パルス光制御部30が設けられている。パルス光制御部30は、マルチモードファイバ15を伝送されるパルス光の伝送条件を制御するための制御手段である。このように、パルス光制御部30でパルス光の伝送条件を制御することにより、伝送装置1Aからの出力パルス光の特性を制御することができる。本実施形態においては、このパルス光制御部30は、マルチモードファイバ15を伝送されるパルス光の分散補償条件を制御する分散補償部31と、パルス光に対して所定の変調を付与するための光変調部32とを含んで構成されている。なお、入力光学系20及びパルス光制御部30の構成等については、具体的には後述する。
【0028】
上記実施形態によるパルス光伝送装置1Aの効果について説明する。
【0029】
図1に示したパルス光伝送装置1Aにおいては、パルス光源10から出射されるパルス光を伝送する光ファイバとして、マルチモードファイバ15を用いている。これにより、シングルモードファイバを用いた場合に比べて、例えば大きいエネルギーのパルス光の伝送など、様々な条件でのパルス光伝送が可能となる。これは、フェムト秒パルス光などのパルス光を産業上の様々な分野に応用する上で非常に有用である。
【0030】
また、このマルチモードファイバ15を用いたパルス光伝送のため、マルチモードファイバ15に対するパルス光の入力条件を所定の伝搬モードでの伝送が可能な条件に設定する入力光学系20を設置している。このような入力光学系20を設けることにより、マルチモードファイバ15を用いてフェムト秒パルス光などの短パルス光を好適に伝送することが可能となる。例えば、マルチモードファイバ15の光軸に対してパルス光の入力軸を充分な精度で一致させ、マルチモードファイバ15の中心近傍の位置にパルス光を入力することにより、基本モードだけが伝搬するパルス光のシングルモード伝送を実現することも可能である。
【0031】
ここで、伝送対象となるパルス光を出射するパルス光源としては、パルス光伝送装置の用途等に応じて様々なものを適用して良いが、特に、パルス幅が1ps以下のパルスレーザ光を出射するパルスレーザ光源を用いることが好ましい。上記構成のパルス光伝送装置1Aは、特にこのようなフェムト秒領域で短パルス幅のパルス光の伝送、例えば、広帯域のスペクトル成分を有するフェムト秒パルス光の伝送に対して有効である。このようなパルスレーザ光源としては、例えば、チタンサファイアレーザがある。また、このようなパルス光源は、単一のパルス光を出射する構成、または、複数のパルス光を合成して出射する構成として良い。
【0032】
また、パルス光源として、レーザ光源を1次光源とし、1次光源から供給されたレーザ光を媒質中で伝搬させることによって発生する2次的な光を伝送対象のパルス光として出射する構成を用いても良い。このような2次的な光の発生に用いられる媒質としては、例えばフォトニック結晶、非線形光学結晶などが挙げられる。
【0033】
また、入力光学系20において制御されるパルス光のマルチモードファイバ15への入力条件としては、具体的には例えば、入力端15aでのパルス光の入力位置(集光位置)の他、集光径、開口数、光強度、伝搬方向、空間分布、または入力する際の波面の傾き、あるいはそれらの組合せがある。また、パルス光の伝送に用いるマルチモードファイバとしては、グレーデッドインデックス型のマルチモードファイバを用いることが好ましい。あるいは、ステップインデックス型のマルチモードファイバを用いても良い。
【0034】
さらに、上記したパルス光伝送装置1Aでは、パルス光源10及びマルチモードファイバ15に対し、入力光学系20に加えて、パルス光制御部30を設けている。このようなパルス光制御部30でパルス光の伝送条件を制御することにより、伝送装置1Aからの出力パルス光として、好適な特性のパルス光を得ることができる。特に、パルス光の伝送においては、マルチモードファイバ15での分散が問題となる。これに対して、パルス光制御部30は、上記したように、マルチモードファイバ15においてパルス光に生じる分散を補償する分散補償手段の機能を有し、伝送条件としての分散補償条件を制御するように構成されている。
【0035】
このパルス光制御部30については、分散補償条件以外の伝送条件についても制御する構成としても良い。そのような制御対象としては、例えばパルス光の波形がある。この場合、制御されるパルス光の波形のパラメータとしては、例えば、パルス光の時間波形の形状自体、パルス幅、パルス強度、などが挙げられる。
【0036】
また、図1の構成では、パルス光制御部30は、パルス光に変調を付与する光変調部32を有している。このような光変調部32を用いることにより、例えばパルス光への所望の情報の付加など、様々なパルス光伝送の制御が可能となる。光変調部32によるパルス光の変調については、具体的には、パルス光源10から出射されるパルス光に対し、その波長毎の振幅(強度)、位相、及び偏光の少なくとも1つを変調する構成とすることが好ましい。
【0037】
なお、このパルス光制御部30については、図1ではマルチモードファイバ15に対して入力側に配置しているが、出力側に配置する構成としても良く、あるいは、入力側及び出力側の両方に配置する構成としても良い。一般には、パルス光制御部30は、マルチモードファイバ15の入力側及び出力側の少なくとも一方においてパルス光を制御する構成であれば良い。例えば、パルス光を変調して情報を付加した状態で伝送する場合、パルス光制御部30のうちでパルス光への情報の付加に用いる部分をマルチモードファイバ15の入力側に、分散補償などの伝送条件の制御等に用いる部分を入力側または出力側に配置する構成を用いることができる。
【0038】
また、パルス光制御部30の具体的な構成及び機能については、図1に示した構成に限定されるものではなく、様々な構成を用いて良い。例えば、光変調部32によるパルス光に対する変調の付与は、不要であれば行わない構成としても良い。また、分散補償部31による分散補償、及び光変調部32による変調の付与は、必ずしも別個に行う構成でなくても良い。したがって、分散補償部31及び光変調部32としては、別々の光学系を用いる構成、あるいは、単一の光学系を用いる構成のいずれも可能である。また、入力光学系20及びパルス光制御部30の全体を、両者の機能を併せ持つ単一の光学系から構成することも可能である。
【0039】
図2は、本発明によるパルス光伝送装置の第2実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。本実施形態によるパルス光伝送装置1Bは、図1に示した構成に加えて、伝送評価部40と、伝送制御部45とを備えている。
【0040】
伝送評価部40は、マルチモードファイバ15によるパルス光の伝送状況を評価する評価手段である。具体的には、伝送評価部40は、パルス光源10から出射されてマルチモードファイバ15の入力端15aへと入力されるパルス光、またはマルチモードファイバ15を伝送されて出力端15bから出力されるパルス光の一方または両方を計測し、その計測結果を参照してマルチモードファイバ15でのパルス光の伝送状況を評価する。この伝送評価部40での伝送状況の評価結果は、伝送制御部45へと入力されている。伝送制御部45は、伝送評価部40によるパルス光の伝送状況の評価結果に基づいて、入力光学系20及びパルス光制御部30の少なくとも一方の動作を制御する制御手段である。
【0041】
このように、伝送評価部40及び伝送制御部45を備えた構成では、マルチモードファイバ15でのパルス光の実際の伝送状況に応じて、精度良くパルス光伝送を制御することが可能となる。例えば、伝送制御部45によってパルス光制御部30の動作を制御した場合、伝送装置1Bからの出力パルス光の波形等を精度良く制御することができる。また、伝送制御部45によって入力光学系20の動作を制御した場合、マルチモードファイバ15でのパルス光の伝送の伝搬モードを精度良く制御することができる。
【0042】
なお、入力光学系20においてマルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件を制御する場合には、マルチモードファイバ15に対するパルス光の入射位置、及び入射角度を制御することが好ましい。このような入力条件の制御は、入力光学系20を構成する各光学要素に対して調整機構を付加することによって実現できる。このような調整機構としては、例えば、光学要素の3次元的な位置や傾きを調整する機構を付加すれば良い。あるいは、入力光学系20側ではなく、マルチモードファイバ15の位置や傾きを調整する構成としても良い。
【0043】
本発明によるパルス光伝送装置の具体的な構成、及びマルチモードファイバでのパルス光の伝送条件を調整するためのパルス光伝送調整方法についてさらに説明する。
【0044】
図3は、パルス光伝送装置に用いられる入力光学系の一例を示す構成図である。本構成例においては、入力光学系20を構成する光学要素として、パルス光源10から出射されたパルス光を集光しつつマルチモードファイバ15へと入力するための平凸レンズ22を用いている。
【0045】
具体的には、図3においては、平凸レンズ22の2つのレンズ面のうち、マルチモードファイバ15側のレンズ面が平面(平坦面)22a、パルス光源10側のレンズ面が凸面22bとなっている。また、パルス光源10と平凸レンズ22との間には、パルス光源10からマルチモードファイバ15へと向かうパルス光が開口部21cを通過するアパーチャ21が設置されており、これらのアパーチャ21及び平凸レンズ22によって入力光学系20が構成されている。
【0046】
このような構成により、パルス光源10からのパルス光をマルチモードファイバ15へと好適な入力条件で入力することができる。また、このような平凸レンズ22は、マルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件、及びマルチモードファイバ15でのパルス光の伝送条件の調整、設定を行う上でも有用である。
【0047】
具体的には、入力光学系20の平凸レンズ22を利用したパルス光伝送調整方法では、まず、パルス光源10、マルチモードファイバ15、及び平凸レンズ22を、それぞれ所定の位置関係となる初期位置に設置する(設置ステップ)。続いて、パルス光源10からマルチモードファイバ15へとパルス光を出射させ、平凸レンズ22の平面22aでパルス光の一部が反射された平面反射像、及び凸面22bでパルス光の一部が反射された凸面反射像を観察する(観察ステップ)。
【0048】
そして、平面反射像、及び凸面反射像の観察結果に基づいて、マルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件を調整する。具体的には、平凸レンズ22の平面22aからの平面反射像の中心位置、及び凸面22bからの凸面反射像の中心位置が、マルチモードファイバ15へと入力されるパルス光の中心軸と一致するように、パルス光源10、平凸レンズ22、及びマルチモードファイバ15の位置関係を調整する。これにより、パルス光の伝送の伝搬モードなど、マルチモードファイバ15でのパルス光の伝送条件が調整される(調整ステップ)。
【0049】
このように、平凸レンズ22からの反射像を利用してパルス光の入力条件を調整する調整方法によれば、マルチモードファイバ15を用いてフェムト秒パルス光などの短パルス光が好適に伝送されるように、その入力条件、及びマルチモードファイバ15での伝搬モードなどの伝送条件を調整することが可能となる。
【0050】
また、平凸レンズ22からのパルス光の反射像の観察方法については、パルス光源10及び平凸レンズ22の間に配置されたアパーチャ21を用いて平面反射像及び凸面反射像を観察することが好ましい。このような構成によれば、平凸レンズ22を含む入力光学系20によるマルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件の調整を、確実かつ簡単な方法で実行することが可能となる。一般には、パルス光源10及び平凸レンズ22の間の所定位置に配置された板状部材を用いて平面反射像及び凸面反射像の観察を行う構成とすることが好ましい。また、このような板状部材については、パルス光の入力条件の調整等を終えた後、取り外しが可能な機構を有する構成としても良い。
【0051】
図4は、図3に示した平凸レンズ22を含む入力光学系20を用いて行われるパルス光伝送調整方法について示す模式図である。この図4では、その中心位置に円形状の開口部21cが設けられたアパーチャ21を、平凸レンズ22側から見た状態で示し、その下流側の面である反射像観察面21a、観察面21a上に投映された平凸レンズ22の平面22aからの平面反射像A、及び観察面21a上に投映された凸面22bからの凸面反射像Bを図示している。また、図中においては、反射像A、Bのそれぞれを、斜線を付して模式的に示している。
【0052】
平凸レンズ22を介したマルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件が好適に調整された状態では、図4に示すように、平面反射像A、及び凸面反射像Bのいずれも、アパーチャ21の中心軸上の位置を中心とする円形状の光像となる。また、これらの反射像A、Bのうち、凸面反射像Bは、反射面となる平凸レンズ22の凸面22bの形状により平凸レンズ22からアパーチャ21へと広がりつつ入射するため、その像の大きさが平面反射像Aよりも大きくなっている。これら2種類の反射像A、Bを利用し、反射像A、Bがアパーチャ21の観察面21a上で同心円状のパターンとなるように調整することにより、マルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件の調整を、簡単な入力光学系20の構成及び調整方法で実現することができる。なお、マルチモードファイバ15へのパルス光の具体的な入力条件については、上記したように、マルチモードファイバ15の中心近傍の位置にパルス光を入力することが好ましい。
【0053】
上記した入力条件でパルス光源10とマルチモードファイバ15とを接続した場合、マルチモードファイバ15における高次伝搬モードでのパルス光の伝送を抑制して、光ファイバとしてマルチモードファイバ15を用いたにもかかわらず、実質的に基本モードだけが伝搬するパルス光のシングルモード伝送が実現可能である。また、パルス光の空間モードについては、マルチモードファイバ15から出力されるパルス光の空間モードを、ガウス型の強度分布に近い良好な分布形状とすることが好ましいと考えられる。したがって、このような空間モードについても考慮しつつ、入力光学系20によるパルス光の入力条件を調整することが望ましい。
【0054】
なお、マルチモードファイバ15の入力端15aの端面が平面形状に研磨されている場合には、平凸レンズ22の平面22a、凸面22bからのパルス光の反射像に加えて、マルチモードファイバ15の入力端15aからの反射像をも入力条件の調整に利用することとしても良い。これにより、入力条件の調整をさらに精度良く行うことができる。
【0055】
また、このように入力条件の調整を行うための入力光学系の構成としては、一般には、入力光学系20が、パルス光を集光しつつマルチモードファイバ15へと入力するためのレンズを有する構成とすれば良い。このような構成によっても、マルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件の調整を、簡単な入力光学系20の構成及び調整方法で実現することができる。この場合のレンズとしては、平凸レンズに限らず、両面が凸面のレンズを用いても良い。
【0056】
また、この場合のレンズからの反射像の観察については、入力光学系は、パルス光源及びレンズの間の所定位置に設置されたアパーチャなどの板状部材を有し、板状部材は、レンズの光出射側(マルチモードファイバ側)の面でパルス光の一部が反射された第1の反射像、及びレンズの光入射側(パルス光源側)の面でパルス光の一部が反射された第2の反射像の観察に用いることが可能に構成されていることとすれば良い。
【0057】
また、上記した例では、パルス光源10から供給されるパルス光が概ね均一な平面波であることを前提としているが、パルス光の波面が不均一である場合には、空間フィルタ等を介して波面を均一とした後にマルチモードファイバ15へと入力することが好ましい。また、平凸レンズなどのレンズを用いた構成の入力光学系20においても、パルス光制御部30については、入力光学系20とは別個の光学系として設置する構成、あるいは入力光学系20によってパルス光制御部30を兼ねる構成のいずれも可能であることは、図1に関して上述した通りである。
【0058】
図5は、パルス光伝送装置に用いられるパルス光制御部の一例を示す構成図である。本構成例においては、パルス光制御部30は、波形整形器36と、伸張器37とを有して構成されている。
【0059】
波形整形器36は、例えば、入力されたパルス光を回折格子やプリズム等の分光素子によって分光し、その各スペクトル成分(波長成分)に対して変調素子によって変調を付与した後にスペクトル成分を合波するように構成される。図5においては、波形整形器36は、パルス光源10からのパルス光を分光する回折格子36a、分光された光を結像する円筒凹面ミラー36b、凹面ミラー36bから入射されるパルス光の各スペクトル成分に対して位相変調を付与する空間光変調器36c、変調された光を集光する円筒凹面ミラー36d、及び集光された光を合波して変調後のパルス光とする回折格子36eから構成されている。
【0060】
また、伸張器37は、回折格子やプリズム等の分光素子によってパルス光の各スペクトル成分に対して2次の位相変調を付与するように構成される。図5においては、伸張器37は、波形整形器36からのパルス光を分光する回折格子37b、分光されたパルス光の各スペクトル成分に対して位相変調を付与するための回折格子37c、及び全反射ミラー37dから構成されている。
【0061】
また、この伸張器37には、波形整形器36の回折格子36eと、伸張器37の回折格子37bとの間に、一部反射ミラー37aが配置されている。この一部反射ミラー37aは、波形整形器36から入力された光を回折格子37bへと透過させるとともに、回折格子37bからの光を反射して入力光学系20へ向けて出力するために用いられる。
【0062】
図5に示した構成のパルス光制御部30を用いたパルス光の波形等の制御について説明する。まず、波形整形器36に入力されたパルス光源10からのパルス光は、回折格子36aによって分光された後、円筒凹面ミラー36bによって各スペクトル成分がフーリエ面上に空間的に分離した状態で結像される。このフーリエ面上に配置された空間光変調器36cでは、これらのパルス光のスペクトル成分に対して、それぞれ独立した位相変調が付与される。変調されたパルス光のスペクトル成分は、円筒凹面ミラー36d及び回折格子36eによって合波される。この波形整形器36では、主として、伸張器37では補正しきれない分の補正が行われる。
【0063】
また、伸張器37に入力された波形整形器36からのパルス光は、回折格子37b、37cによって2次の位相変調が付与された後、全反射ミラー37dによって反射され、再び回折格子37c、37bで回折されて、反射ミラー37aを介して出力される。この伸張器37では、主として、2次の位相分散に対する補正が行われる。なお、このような構成において、全反射ミラー37dを紙面に対して垂直方向にあおることにより、回折格子37b、37cの位置では入力時と出力時とでパルス光の位置が上下に分離され、変調後のパルス光の取り出しが容易となる。この場合、例えば、一部透過ミラー37aを全反射ミラーとし、パルス光の出力光路のみに対して配置する構成としても良い。
【0064】
このように波形整形器36及び伸張器37を有するパルス光制御部30は、分散補償部31及び光変調部32の機能を併せ持っている。また、パルス光制御部30については、図5に示した構成例以外にも、様々な構成を用いて良い。例えば、図5において、波形整形器36と伸張器37との設置順序は逆でも良く、また、いずれか一方のみを設置する構成としても良い。また、パルス光制御部30に用いられる光変調器としては、位相パターンを制御可能な空間光変調器や固定位相パターンの光変調器などの位相変調素子を用いることができる。あるいは、空間光変調器の前後に偏光子を配置することにより、パルス光の各スペクトル成分に対して強度変調を付与することも可能である。
【0065】
図6は、パルス光伝送装置の他の例を示す構成図である。本構成例においては、図5に示した構成に加えて、伝送評価部40として機能するパルス幅計測器41と、伝送制御部45とを備えている。
【0066】
パルス幅計測器41は、マルチモードファイバ15を伝送されて出力端から出力されるパルス光のパルス幅を計測する計測手段である。本構成例では、このパルス幅計測器41による出力パルス光のパルス幅の計測結果に基づいて、マルチモードファイバ15でのパルス光の伝送状況が評価される。伝送制御部45は、図2に関して上述したように、伝送評価部40であるパルス幅計測器41による評価結果に基づいて、入力光学系20及びパルス光制御部30の少なくとも一方の動作を制御する。このような伝送条件の制御は、例えば、マルチモードファイバ15での伝送によって生じる出力パルス光の広がりが小さい場合を好ましい伝送状況とする制御基準に基づいて実行することができる。
【0067】
伝送制御部45によってパルス光制御部30の動作を制御する場合、図6に示した構成では、伝送制御部45が波形整形器36の空間光変調器36cでの位相変調パターンを制御する構成を用いることができる。あるいは、パルス光制御部30の他の光学要素を制御する構成としても良い。
【0068】
また、伝送制御部45によって入力光学系20の動作を制御する場合、伝送制御部45が入力光学系20に設けられた集光レンズ(例えば図3に示した平凸レンズ22)の位置及び傾きを制御する構成を用いることができる。また、パルス光の伝送に用いられるマルチモードファイバ15に制御機構が付加されている場合には、マルチモードファイバ15の入射端の位置及び傾きを制御する構成としても良い。
【0069】
以下、図6に示した構成を参照しつつ、パルス光伝送装置のマルチモードファイバにおけるパルス光の伝送条件、及びその調整の実施例について説明する。
【0070】
ここでは、溝本数1200本/mmの回折格子36a、36e、及び曲率半径500mmの円筒凹面ミラー36b、36dを用いて波形整形器36を構成する。また、光の入射角度が24°となるように設置された溝本数1800本/mmの回折格子37b、37cを用いて伸張器37を構成し、回折格子37bから1300mm程度の空間を伝搬した後に回折格子37cで平行光とされる構成とする。
【0071】
また、一部透過ミラー37aを介してパルス光制御部30から出力されたパルス光に対し、入力光学系20において焦点距離50mmの平凸レンズを設置する。また、パルス光を伝送するマルチモードファイバ15としては、コア径50μm、長さ96mのマルチモードファイバを用いる。また、平凸レンズ及びマルチモードファイバには、それぞれ位置及び傾きを制御する制御機構が付加されている。一方、マルチモードファイバ15を伝送された出力パルス光に対し、パルス幅計測器41として自己相関器を設置し、マルチモードファイバ15の出力端から出力されたパルス光が10倍の対物レンズを介してコリメートされた後に、自己相関器へと導かれる構成とする。
【0072】
自己相関器は、計測対象として入射したパルス光のパルス幅に依存した電気信号を出力する。本実施例では、パルス幅が短くなると自己相関器からの出力信号強度が大きくなるように構成している。なお、伝送評価部40については、パルス幅計測器41である自己相関器に限定されるものではない。例えば、マルチモードファイバ15から出力されるパルス光のスペクトルに対して評価、制御を行う場合には、伝送評価部として分光器を用いることができる。また、パルス光の空間モードに対して評価、制御を行う場合には、伝送評価部としてCCDカメラを用いることができる。
【0073】
自己相関器からの出力信号は、伝送制御部45を構成するコンピュータに入力される。伝送制御部45は、自己相関器からの信号強度が大きくなるように入力光学系20及びパルス光制御部30の動作を制御する。この場合、伝送制御部45による伝送条件の制御の試行回数が多くなるにしたがって、短い出力パルス幅が達成されて、自己相関器からの出力信号強度が大きくなる。
【0074】
また、図3に示したように平凸レンズ22からの反射像を観察する構成において、アパーチャ21での反射像A、BをCCDカメラ等によってモニタし、そのモニタ結果をパルス光の伝送状況の評価結果として伝送条件の制御を行う構成とすることも可能である。
【0075】
図7は、パルスレーザ光源10から出射されるパルス光の自己相関波形を示すグラフであり、横軸は時間(fs)、縦軸は強度を示している。この自己相関波形に示すように、パルス光源10からのパルス光のパルス幅は95fsであった。
【0076】
このパルス光に対して、パルス光制御部30の伸張器37で位相変調の付与を行った。図8は、伸張器37の位相分散特性を示すグラフであり、横軸は波長(nm)、縦軸は位相分散(rad)を示している。また、図9は、伸張器37から出力されるパルス光の時間波形を示すグラフであり、横軸は時間(100ps/DIV)、縦軸は強度を示している。ここでは、図7に示した自己相関波形を有するパルス光に対し、図8に示す位相分散を付与した結果、図9の時間波形に示すように、パルス光のパルス幅が382psまで広げられている。
【0077】
このようにパルス幅が広げられたパルス光をマルチモードファイバ15によって伝送する。図10は、マルチモードファイバ15の位相分散特性を示すグラフであり、横軸は波長(nm)、縦軸は位相分散(rad)を示している。また、図11は、マルチモードファイバ15から出力されるパルス光の自己相関波形を示すグラフであり、横軸は時間(fs)、縦軸は強度を示している。なお、位相分散特性については、同じ長さの合成石英のパラメータにより算出された計算値を示している。
【0078】
図11の自己相関波形に示すように、図10に示すマルチモードファイバ15の位相分散と、図8に示した伸張器37の位相分散とが打ち消しあった結果、出力パルス光のパルス幅は313fsまで圧縮されている。また、このようなパルス幅の圧縮については、入力光学系20によるマルチモードファイバ15へのパルス光の入力条件の制御、及びマルチモードファイバ15での伝搬モードの制御による効果も大きい。
【0079】
ここで、図6に示した構成において、波形整形器36による位相制御を行わない場合、伸張器37によってマルチモードファイバ15の2次位相分散は補正できるが、3次以上の高次の位相分散を補正することが困難である。一方、パルス光を伝送するマルチモードファイバ15が長くなるにつれて、高次の位相分散の影響も大きくなる。
【0080】
図12は、パルス光の時間波形(計算値)を示すグラフであり、横軸は時間(fs)、縦軸は強度を示している。また、図13は、合成石英ブロックの3次位相分散特性を示すグラフであり、横軸は波長(nm)、縦軸は位相分散(rad)を示している。また、図14は、分散付与後のパルス光の時間波形を示すグラフであり、横軸は時間(fs)、縦軸は強度を示している。
【0081】
図12に示すパルス幅75fsのパルス光に対して、長さ100mの合成石英ブロックに対応する図13の位相分散を付与すると、図14に示すように、パルス光の時間波形に歪みが生じる。また、マルチモードファイバ15での伝送中でパルス光に生じる高次の位相分散を正確に見積もることは困難である。これに対して、上述した自己相関器の出力信号強度に基づく伝送制御を行うことにより、このような高次の位相分散の影響を低減することが可能である。
【0082】
図15は、自己相関器の出力信号強度の変化を示すグラフであり、横軸は伝送制御の試行回数、縦軸は自己相関器の出力信号強度を示している。このように、パルス幅計測器41である自己相関器、及び伝送制御部45を用い、自己相関器からの出力信号強度が大きくなるように伝送条件のフィードバック自動制御を行うことにより、伝送制御の試行回数が多くなるにしたがって、自己相関器からの出力信号強度が徐々に大きくなっていることがわかる。
【0083】
図16は、このような自動制御を行った後の出力パルス光の自己相関波形を示すグラフであり、横軸は時間(fs)、縦軸は強度を示している。このように、自己相関器の出力信号強度を参照して伝送条件の自動制御を行うことにより、マルチモードファイバ15において生じる高次の位相分散が補正され、出力パルス光のパルス幅を184fsまで圧縮することができた。
【0084】
なお、上記した位相分散はパルス光の強度には依存しない分散であるが、非線形光学効果によってパルス光の強度波形に依存する複雑な伝搬が生じる場合等においても、上記した自動制御方法によれば、その影響を補正することが可能である。また、マルチモードファイバ15からの出力パルス光の時間波形をストリークカメラ、及び光オシロスコープを用いて計測したところ、いずれの計測結果においても、サテライトパルスが存在しないフェムト秒パルス光のマルチモードファイバ伝送が実現されていることが確認された。
【0085】
また、このようにマルチモードファイバ15を用いてパルス光を伝送する構成においても、自己位相変調によってスペクトル帯域を広げることが可能である。図17は、パルス幅50fs、中心波長812nm、繰返し周波数1kHz、平均強度0.1mWのパルス光を用いた場合に得られる出力パルス光のスペクトルを示すグラフである。また、図18は、同様の条件で平均強度46mWのパルス光を用いた場合に得られる出力パルス光のスペクトルを示すグラフである。これらのグラフにおいて、横軸は波長(nm)、縦軸は強度を示している。
【0086】
これらのグラフに示すように、パルス光を伝送させる光ファイバとしてマルチモードファイバ15を用いた場合でも、上記したように低次の伝搬モードだけで選択的に伝送させつつ、自己位相変調等の非線形光学効果を効率良く生じさせて、スペクトル帯域を広げることが可能である。さらに、パルス光制御部30によって入力パルス光の位相を制御することにより、出力パルス光のスペクトル、もしくは時間波形等を制御することも可能である。
【0087】
本発明によるパルス光伝送装置、及びパルス光伝送調整方法は、上記した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、パルス光を伝送するマルチモードファイバについては、マルチモードファイバを束ねたバンドルファイバを用いても良い。また、パルス光制御部30でのパルス光の変調については、例えばE/O変調器やA/O変調器などのように、時刻に応じて異なる位相変調が与えられる素子を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、光ファイバを用いてフェムト秒パルス光などのパルス光を好適に伝送することが可能なパルス光伝送装置、及びパルス光伝送調整方法として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】パルス光伝送装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】パルス光伝送装置の第2実施形態の構成を示すブロック図である。
【図3】伝送装置に用いられる入力光学系の一例を示す構成図である。
【図4】図3に示した入力光学系を用いたパルス光伝送調整方法について示す模式図である。
【図5】伝送装置に用いられるパルス光制御部の一例を示す構成図である。
【図6】パルス光伝送装置の他の例を示す構成図である。
【図7】パルス光源から出射されるパルス光の自己相関波形を示すグラフである。
【図8】伸張器の位相分散特性を示すグラフである。
【図9】伸張器から出力されるパルス光の時間波形を示すグラフである。
【図10】マルチモードファイバの位相分散特性を示すグラフである。
【図11】マルチモードファイバから出力されるパルス光の自己相関波形を示すグラフである。
【図12】パルス光の時間波形を示すグラフである。
【図13】合成石英ブロックの3次位相分散特性を示すグラフである。
【図14】パルス光の時間波形を示すグラフである。
【図15】自己相関器の出力信号強度の変化を示すグラフである。
【図16】出力パルス光の自己相関波形を示すグラフである。
【図17】出力パルス光のスペクトルを示すグラフである。
【図18】出力パルス光のスペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0090】
1A、1B…パルス光伝送装置、10…パルスレーザ光源、15…マルチモードファイバ、15a…入力端、15b…出力端、20…入力光学系、20a…保持機構、21…アパーチャ、21a…反射像観察面、21c…開口部、22…平凸レンズ、22a…平面、22b…凸面、25…出力光学系、30…パルス光制御部、31…分散補償部、32…光変調部、36…波形整形器、37…伸張器、40…伝送評価部、41…パルス幅計測器、45…伝送制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定波長のパルス光を出射するパルス光源と、
前記パルス光を伝送するマルチモードファイバと、
前記パルス光源から出射された前記パルス光を、所定の伝搬モードで伝送される入力条件で前記マルチモードファイバへと入力する入力光学系と、
前記マルチモードファイバを伝送される前記パルス光の分散補償条件を含む伝送条件を、前記マルチモードファイバの入力側及び出力側の少なくとも一方において制御するパルス光制御手段と
を備えることを特徴とするパルス光伝送装置。
【請求項2】
前記パルス光源は、前記パルス光としてパルス幅が1ps以下のパルスレーザ光を出射するパルスレーザ光源であることを特徴とする請求項1記載のパルス光伝送装置。
【請求項3】
前記パルス光制御手段は、前記マルチモードファイバを伝送される前記パルス光に対して所定の変調を付与するための光変調手段を含むことを特徴とする請求項1または2記載のパルス光伝送装置。
【請求項4】
前記マルチモードファイバによる前記パルス光の伝送状況を評価する伝送評価手段と、
前記伝送評価手段による前記伝送状況の評価結果に基づいて、前記入力光学系及び前記パルス光制御手段の少なくとも一方の動作を制御する伝送制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のパルス光伝送装置。
【請求項5】
前記入力光学系は、前記パルス光を集光しつつ前記マルチモードファイバへと入力するためのレンズを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のパルス光伝送装置。
【請求項6】
前記入力光学系は、前記パルス光源及び前記レンズの間の所定位置に設置された板状部材を有し、前記板状部材は、前記レンズの光出射側の面で前記パルス光の一部が反射された第1の反射像、及び前記レンズの光入射側の面で前記パルス光の一部が反射された第2の反射像の観察に用いることが可能に構成されていることを特徴とする請求項5記載のパルス光伝送装置。
【請求項7】
前記入力光学系は、前記パルス光を集光しつつ前記マルチモードファイバへと入力するための前記レンズである平凸レンズを有することを特徴とする請求項5記載のパルス光伝送装置。
【請求項8】
前記入力光学系は、前記パルス光源及び前記平凸レンズの間の所定位置に設置された板状部材を有し、前記板状部材は、前記平凸レンズの平面で前記パルス光の一部が反射された平面反射像、及び前記平凸レンズの凸面で前記パルス光の一部が反射された凸面反射像の観察に用いることが可能に構成されていることを特徴とする請求項7記載のパルス光伝送装置。
【請求項9】
前記マルチモードファイバは、グレーデッドインデックス型のマルチモードファイバであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載のパルス光伝送装置。
【請求項10】
所定波長のパルス光を出射するパルス光源、前記パルス光を伝送するマルチモードファイバ、及び前記パルス光源から出射された前記パルス光を集光しつつ前記マルチモードファイバへと入力するレンズを所定の位置関係で設置する設置ステップと、
前記パルス光源から前記マルチモードファイバへと前記パルス光を出射させ、前記レンズの光出射側の面で前記パルス光の一部が反射された第1の反射像、及び前記レンズの光入射側の面で前記パルス光の一部が反射された第2の反射像を観察する観察ステップと、
前記第1の反射像及び前記第2の反射像の観察結果に基づいて前記マルチモードファイバへの前記パルス光の入力条件を調整することによって、前記マルチモードファイバでの前記パルス光の伝送の伝搬モードを調整する調整ステップと
を備えることを特徴とするパルス光伝送調整方法。
【請求項11】
前記設置ステップにおいて、前記パルス光源及び前記レンズの間の所定位置に板状部材を設置し、前記観察ステップにおいて、前記板状部材を用いて前記第1の反射像及び前記第2の反射像を観察することを特徴とする請求項10記載のパルス光伝送調整方法。
【請求項1】
所定波長のパルス光を出射するパルス光源と、
前記パルス光を伝送するマルチモードファイバと、
前記パルス光源から出射された前記パルス光を、所定の伝搬モードで伝送される入力条件で前記マルチモードファイバへと入力する入力光学系と、
前記マルチモードファイバを伝送される前記パルス光の分散補償条件を含む伝送条件を、前記マルチモードファイバの入力側及び出力側の少なくとも一方において制御するパルス光制御手段と
を備えることを特徴とするパルス光伝送装置。
【請求項2】
前記パルス光源は、前記パルス光としてパルス幅が1ps以下のパルスレーザ光を出射するパルスレーザ光源であることを特徴とする請求項1記載のパルス光伝送装置。
【請求項3】
前記パルス光制御手段は、前記マルチモードファイバを伝送される前記パルス光に対して所定の変調を付与するための光変調手段を含むことを特徴とする請求項1または2記載のパルス光伝送装置。
【請求項4】
前記マルチモードファイバによる前記パルス光の伝送状況を評価する伝送評価手段と、
前記伝送評価手段による前記伝送状況の評価結果に基づいて、前記入力光学系及び前記パルス光制御手段の少なくとも一方の動作を制御する伝送制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のパルス光伝送装置。
【請求項5】
前記入力光学系は、前記パルス光を集光しつつ前記マルチモードファイバへと入力するためのレンズを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のパルス光伝送装置。
【請求項6】
前記入力光学系は、前記パルス光源及び前記レンズの間の所定位置に設置された板状部材を有し、前記板状部材は、前記レンズの光出射側の面で前記パルス光の一部が反射された第1の反射像、及び前記レンズの光入射側の面で前記パルス光の一部が反射された第2の反射像の観察に用いることが可能に構成されていることを特徴とする請求項5記載のパルス光伝送装置。
【請求項7】
前記入力光学系は、前記パルス光を集光しつつ前記マルチモードファイバへと入力するための前記レンズである平凸レンズを有することを特徴とする請求項5記載のパルス光伝送装置。
【請求項8】
前記入力光学系は、前記パルス光源及び前記平凸レンズの間の所定位置に設置された板状部材を有し、前記板状部材は、前記平凸レンズの平面で前記パルス光の一部が反射された平面反射像、及び前記平凸レンズの凸面で前記パルス光の一部が反射された凸面反射像の観察に用いることが可能に構成されていることを特徴とする請求項7記載のパルス光伝送装置。
【請求項9】
前記マルチモードファイバは、グレーデッドインデックス型のマルチモードファイバであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載のパルス光伝送装置。
【請求項10】
所定波長のパルス光を出射するパルス光源、前記パルス光を伝送するマルチモードファイバ、及び前記パルス光源から出射された前記パルス光を集光しつつ前記マルチモードファイバへと入力するレンズを所定の位置関係で設置する設置ステップと、
前記パルス光源から前記マルチモードファイバへと前記パルス光を出射させ、前記レンズの光出射側の面で前記パルス光の一部が反射された第1の反射像、及び前記レンズの光入射側の面で前記パルス光の一部が反射された第2の反射像を観察する観察ステップと、
前記第1の反射像及び前記第2の反射像の観察結果に基づいて前記マルチモードファイバへの前記パルス光の入力条件を調整することによって、前記マルチモードファイバでの前記パルス光の伝送の伝搬モードを調整する調整ステップと
を備えることを特徴とするパルス光伝送調整方法。
【請求項11】
前記設置ステップにおいて、前記パルス光源及び前記レンズの間の所定位置に板状部材を設置し、前記観察ステップにおいて、前記板状部材を用いて前記第1の反射像及び前記第2の反射像を観察することを特徴とする請求項10記載のパルス光伝送調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−20093(P2006−20093A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196086(P2004−196086)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度、独立行政法人科学技術振興機構、地域結集型共同研究事業、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503304577)財団法人光科学技術研究振興財団 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度、独立行政法人科学技術振興機構、地域結集型共同研究事業、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503304577)財団法人光科学技術研究振興財団 (11)
【Fターム(参考)】
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