説明

パレット搬送方法及びパレット搬送装置

【課題】パレットの搬送速度を搬送する間隔により異ならせて、搬送時間を短縮する。
【解決手段】パレット搬送方法はパレットレール21,41に搭載されたパレット11をパレットレールの長手方向に連続して設けられた複数のパレット搬送手段22,42により搬送する方法である。一のパレット搬送手段22によるパレットの搬送速度を別のパレット搬送手段42によるパレットの搬送速度と異ならせる。一のパレット搬送手段から隣接する別のパレット搬送手段にパレットが移動する際に一のパレット搬送手段と別のパレット搬送手段の双方におけるパレットの搬送速度を同一とする。パレット搬送装置は、パレットを長手方向に沿って移動可能に搭載するパレットレールと、パレットレールの長手方向に連続して設けられパレットの搬送速度を可変可能に構成された複数のパレット搬送手段と、複数のパレット搬送手段を制御するコントローラ61とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレットレールに搭載された1又は2以上のパレットをそのパレットレールに沿って搬送するパレット搬送方法及びパレット搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、製造ラインにおいて、ワークを搬送する装置として、そのワークをコンベアにて搬送し、搬送先の工作機がワークに対して所定の加工を行うベルトコンベアが知られている。しかしながら、このような従来のベルトコンベアにあっては、例えばステータ等の重量の大きいワークをコンベアに載せて搬送する場合、ワークを停止させた際にワークに働く慣性力が大きいため、搬送速度を高めることが難しく、ストッパを介して正確に位置決めすることが難しいという不具合があった。
【0003】
このような不具合を解消するために、本出願人は工作機に対してワークを載せる複数のパレットを四角形の軌道で搬送するパレット搬送装置を提案した(例えば、特許文献1参照。)。この搬送装置では、互いに平行に延びる奥側パレットレールと手前側パレットレールと、奥側パレットレールと手前側パレットレールの各両端部に対峙する二位置間をそれぞれ移動してそれら各端部に対して接続可能とする左パレットレールと右パレットレールと、複数のパレットを奥側パレットレール又は手前側パレットレールに沿って進退させる左パレット送り機構と右パレット送り機構とを備える。そして、複数のパレットを左パレット送り機構と右パレット送り機構の間に挟持して搬送するようにしている。このように、複数のパレットを左パレット送り機構と右パレット送り機構の間に挟持して搬送することにより、ワークの搬送速度と位置決め精度を高めることが期待できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−21629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記パレット搬送装置では、複数のパレットを左パレット送り機構と右パレット送り機構の間に挟持して搬送するので、工作機間において搬送されるパレットにおける搬送速度は全てのパレットにおいて同一であり、各工作機間を移動するパレットにおける搬送速度を各工作機間の搬送する間隔によって異ならせることができないという未だ解決すべき課題が残存していた。
【0006】
即ち、工作機の設置間隔はその大きさ等により異なり、比較的大きな工作機の設置間隔は広がり、比較的小さな工作機の設置間隔は狭まる傾向にある。そして、例えばステータ等の重量の大きいワークを搬送する場合、その比較的重量の大きいワークを搭載したパレットを急発進や急停止させた際にワークに働く慣性力が大きいため、比較的小さな間隔で設置されている工作機の間における搬送速度を高めることは困難であった。その一方、比較的大きな間隔で設置されている工作機の間にあっては、その搬送する間隔が比較的長いことからその間における搬送速度を高めることはできるけれども、比較的大きな間隔で設置されている工作機の間における搬送速度を、比較的小さな間隔で設置されている工作機の間における搬送速度と同一の速度で搬送するとすると、その搬送に比較的多くの時間を要し、この搬送時間を含む複数の工作機における加工時間が増加する不具合があった。
【0007】
本発明の目的は、パレットの搬送速度を搬送する間隔により異ならせて、搬送時間を短縮し得るパレット搬送方法及びパレット搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパレット搬送方法は、パレットレールに搭載されたパレットをパレットレールの長手方向に連続して設けられた複数のパレット搬送手段により搬送する方法である。
【0009】
その特徴ある点は、一のパレット搬送手段によるパレットの搬送速度を別のパレット搬送手段によるパレットの搬送速度と異ならせるところにある。
【0010】
一のパレット搬送手段から隣接する別のパレット搬送手段にパレットが移動する際に一のパレット搬送手段と別のパレット搬送手段の双方におけるパレットの搬送速度を同一とすることが好ましい。
【0011】
本発明のパレット搬送装置は、パレットを長手方向に沿って移動可能に搭載するパレットレールと、パレットレールの長手方向に連続して設けられパレットの搬送速度を可変可能に構成された複数のパレット搬送手段と、複数のパレット搬送手段を制御するコントローラとを備える。そして、コントローラは、一のパレット搬送手段によるパレットの搬送速度を別のパレット搬送手段によるパレットの搬送速度と異ならせるとともに、一のパレット搬送手段から隣接する別のパレット搬送手段にパレットが移動する際に一のパレット搬送手段と別のパレット搬送手段の双方におけるパレットの搬送速度を同一とするように制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパレット搬送方法及びパレット搬送装置では、パレットの搬送速度を可変可能な複数のパレット搬送手段により、一のパレット搬送手段によるパレットの搬送速度を別のパレット搬送手段によるパレットの搬送速度と異ならせることができる。このため、比較的小さな間隔で設置されている工作機の間における搬送速度を低くしつつ、比較的大きな間隔で設置されている工作機の間における搬送速度を高くすることができる。このように、比較的大きな間隔で設置されている工作機の間における搬送速度を高めることにより全体の搬送時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明実施形態のパレット搬送装置を示す図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に、本発明におけるパレット搬送装置10を示す。この実施の形態におけるパレット搬送装置10は、複数のパレット11を搭載して搬送するものであり、第1パレット搬送装置20と、それに連結された第2パレット搬送装置40とを備える。パレット搬送装置10は、パレット11を長手方向に沿って移動可能に搭載するパレットレール21,41を備えるけれども、第1パレット搬送装置20と第2パレット搬送装置40とを備えるこの実施の形態におけるパレットレールは、第1パレット搬送装置20における第1パレットレール21と、その第1パレットレール21に連結された第2パレット搬送装置40における第2パレットレール41から成る。
【0016】
第1パレット搬送装置20と第2パレット搬送装置40は連結板13により連結される。この連結板13は方形状の板状部材から成り、ボルト13aが挿通可能な挿通孔がその周囲に形成される。一方、図示しないが、第1パレットレール21と第2パレットレール41の両端部には、その連結板13の図示しない挿通孔に対応する位置に雌ねじ孔がそれぞれ形成される。そして、第1パレットレール21の端部と第2パレットレール41の端部を付き合わるか又は所定の間隔を空けて対向させ(図1では所定の間隔を空けて対向させた場合を示す。)、その突き合わせ又は対向部分に連結板13を重ね合わせ、その雌ねじ孔に挿通孔を合致させる。そして、挿通孔に挿通させたボルト13aを雌ねじ孔に螺合することにより、その連結板13を第1パレットレール21と第2パレットレール41の双方に固定する。これにより、図1の拡大図に示すように、連結板13により、第1パレットレール21と第2パレットレール41が連結される。
【0017】
ここで、第1及び第2パレット搬送装置20,60はそれぞれ同一構造であり、第1パレット搬送装置20におけるパレットレール21を代表して説明すると、その第1パレットレール21は、図2に示すように、図示しない架台上に直接固定されて設けられた支持板21aと、その支持板21aの上縁にねじ止めにより固定された市販の直線運動ガイドレール21bを備える。一方、パレットレール21,41に搭載されるパレット11は、直線運動ガイドレール21bを跨いでその直線運動ガイドレール21b上を移動可能に構成された直線運動ブロック11aと、そのブロック11aにねじ止めされた台座11bと、その台座11bの下側の第1パレットレール21を挟む両側に設けられた係止部材12とを有する。この直線運動ブロック11aは直線運動ガイドレール21bと対に販売される市販のものであって、図示しないローラリテーナを備えるものが好ましい。このような直線運動ブロック11aを用いることにより、第1パレットレール21の幅方向の移動を禁止しつつパレット11がパレットレール21,41上を移動する抵抗を著しく軽減することができる。そして、パレット11は第1及び第2パレットレール21,41に移動可能に搭載され、図示しないけれども、パレット11における台座11bには、その上部に図示しないワークを収めるワーク支持部が別に取付けられる。なお、係止部材12の詳細は後述する。
【0018】
図1に戻って、パレット搬送装置10は、パレットレール21,41の長手方向に連続して設けられた複数のパレット搬送手段22,42を備える。この実施の形態におけるパレット搬送手段22,42は第1パレット搬送装置20と第2パレット搬送装置40にそれぞれ設けられる。それぞれのパレット搬送手段22,42は同一構造であり、この第1及び第2パレット搬送手段22,42は、第1及び第2パレットレール21,42に沿って無端で循環可能に設けられた循環ベルト23,24,43,44と、それらの循環ベルト23,24,43,44を循環させる駆動動力源26,46とをそれぞれ備える。この実施の形態における循環ベルト23,24,43,44はそれぞれ一対設けられ、それら一対の循環ベルト23,24,43,44がそれぞれ掛け回される第1及び第2駆動プーリ27,47が第1及び第2パレットレール21,41における支持板21a,41aの長手方向の略中央又はその附近に設けられる。そして、パレットレール21,41の長手方向からそれらの循環ベルト23,24,43,44を第1及び第2駆動プーリ27,47に押し付けて掛け回すとともに、それらの循環ベルト23,24,43,44を第1及び第2パレットレール21,41のパレット11が搭載する側に延設するアイドルプーリ31〜34,51〜54がそれぞれ設けられる。
【0019】
第1パレット搬送装置20では、そこに設けられた駆動プーリ27に掛け回す循環ベルト23,24が一対であるため、その一対の循環ベルト23,24を第1パレットレール21のパレット11が搭載する側に延設する為に、アイドルプーリ31〜34は第1パレットレール21の長手方向の両端と、そこに設けられた駆動プーリ27の両側にそれぞれ設けられる。そして、駆動プーリ27の両側に設けられたアイドルプーリ32,33は、一対の循環ベルト23,24を第1パレットレール21における長手方向の両側から駆動プーリ27に押し付けて掛け回すように構成される。また、第1パレットレール21における支持板21aの長手方向の両側に設けられたアイドルプーリ31,34は、一対の循環ベルト23,24を第1パレットレール21に沿わせて第1パレットレール21の端部にまで案内し、支持板21aの中央の駆動プーリ27に掛け回された一対の循環ベルト23,24を支持板21aの両側に引き延ばし、その引き延ばされた各端部を第1パレットレール21の長手方向における両端部で支持するように構成される。
【0020】
一方、第2パレット搬送装置40においても、そこに設けられた第2駆動プーリ47に掛け回す循環ベルト43,44が一対であるため、その一対の循環ベルト43,44を第2パレットレール41のパレット11が搭載する側に延設する為に、アイドルプーリ51〜54は第2パレットレール41の長手方向の両端と、そこに設けられた第2駆動プーリ47の両側にそれぞれ設けられる。そして、第2駆動プーリ47の両側に設けられたアイドルプーリ52,53は、一対の循環ベルト43,44を第2パレットレール41における長手方向の両側から駆動プーリ47に押し付けて掛け回すように構成される。また、第2パレットレール41における支持板41aの長手方向の両側に設けられたアイドルプーリ51,54は、一対の循環ベルト43,44を第2パレットレール41に沿わせて第2パレットレール41の端部にまで案内し、支持板41aの中央の駆動プーリ47に掛け回された一対の循環ベルト43,44を支持板41aの両側に引き延ばし、その引き延ばされた各端部を第2パレットレール41の長手方向における両端部で支持するように構成される。
【0021】
また、このパレット搬送装置10には、第1及び第2パレットレール21,41の長手方向から循環ベルト23,24,43,44を駆動プーリ27,47に押し付けて掛け回すとともに、それらの循環ベルト23,24,43,44を引っ張って所定の張力を与える補助プーリ36〜39,56〜59が設けられる。第1パレット搬送装置20では、そこに設けられた駆動プーリ27に掛け回す循環ベルト23,24が一対であるため、その一対の循環ベルト23,24を第1パレットレール21における長手方向の両側から駆動プーリ27に押し付けて掛け回す為に、補助プーリ36〜39は第1パレットレール21の長手方向の両端と、そこに設けられた駆動プーリ27の両側にそれぞれ設けられる。そして、駆動プーリ27の両側に設けられた補助プーリ37,38は、一対の循環ベルト23,24を第1パレットレール21における長手方向の両側から駆動プーリ27に押し付けて掛け回すように構成される。
【0022】
一方、第2パレット搬送装置40においても、そこに設けられた駆動プーリ47に掛け回す循環ベルト43,44が一対であるため、その一対の循環ベルト43,44を第2パレットレール41における長手方向の両側から駆動プーリ47に押し付けて掛け回す為に、補助プーリ56〜59は第2パレットレール41の長手方向の両端と、そこに設けられた駆動プーリ47の両側にそれぞれ設けられる。そして、駆動プーリ47の両側に設けられた補助プーリ52,53は、一対の循環ベルト43,44を第2パレットレール41における長手方向の両側から駆動プーリ47に押し付けて掛け回すように構成される。
【0023】
この実施の形態における循環ベルト23,24,43,44は、いわゆる歯付きベルトである。図1の拡大図に示す循環ベルト24,43を代表して説明すると、これらの循環ベルト24,43である歯付きベルトは、幅方向に延びる凹凸24a,24b,43a,43bが長手方向に交互に連続するベルト24,43であって、その凹凸24a,24b,43a,43bに係合可能な被凹凸12a,12bがパレット11における係止部材12に形成される。図2に示すように、この係止部材12は台座11bの下側のパレットレール21を挟む両側にそれぞれ設けられるものであって、この両側に設けられた係止部材12に循環ベルト24,43である歯付きベルトに係合可能な被凹凸12a,12bがそれぞれ形成される。パレット11の両側に設けられた係止部材12に被凹凸12a,12bをそれぞれ形成するのは、このパレット11の図2における左右を反対にして搭載した場合にも、このパレット11を循環ベルト24,43に係合させるためである。
【0024】
図1の拡大図に戻って、係止部材12は、長手方向に連続して形成された被凹凸12a,12bが第1パレット搬送装置20における循環ベルト24と第2パレット搬送装置40における循環ベルト43の双方における凹凸24a,24b,43a,43bに同時に係合可能な長さを有し、パレット11における被凹凸12a,12bがそれらの凹凸24a,24b,43a,43bに係合すると、循環ベルト24,43と独立したパレット11の長手方向の移動を禁止するように構成される。このように歯付きベルトである循環ベルト24,43は、第1及び第2パレットレール21,41に搭載されたパレット11が係止可能に構成され、パレット11が係止された循環ベルト23,24,43,44を循環させると、パレット11がそれらの循環ベルト23,24,43,44とともに移動し、循環ベルト23,24,43,44が沿う第1及び第2パレットレール21,41に沿ってそのパレット11を搬送可能に構成される。
【0025】
ここで、図1の拡大図及び図2における符号63は、その循環ベルト24,43が撓むことを防止する為にそれぞれのパレットレール21,41に設けられた支持部材63であって、その循環ベルト24,43が撓むことに起因するそれらの循環ベルト23,43における凹凸23a,23b,43a,43bとパレット11における被凹凸12a,12bとの係合が解除されることを防止するものである。
【0026】
第1パレット搬送装置20における4つのアイドルプーリ31〜34及び4つの補助プーリ36〜39、並びに第2パレット搬送装置40における4つのアイドルプーリ51〜54及び4つの補助プーリ56〜59は、位置調整機構60を介してそれぞれのパレットレール21,41における支持板21a,41aにそれぞれ取付けられる。この位置調整機構60は、図1の拡大図に示すように、それぞれの支持板21a,41aに長手方向に延びて設けられた小レール60aと、その小レール60aに移動可能に設けられた枢支台60bと、支持板21a,41aに取付けられた支持台60cと、その支持台60cに設けられ枢支台60bを小レール60aに沿って移動させるネジ部材60dとを備える。それぞれのプーリ34,51は位置調整機構60における枢支台60bに枢支され、その枢支台60bをネジ部材60dにより移動させてその位置を長手方向において調整することにより、それら全てのプーリ34,51の位置をパレットレール21,41の長手方向に調整可能に構成される。
【0027】
また、循環ベルト23,24,43,44を循環させてパレット11を搬送させる第1及び第2パレット搬送手段22,42は、そのパレット11の搬送速度を可変可能に構成される。この実施の形態では、それぞれの駆動動力源26,46として、駆動プーリ27,47の回転速度を変更して、循環ベルト23,24,43,44の循環速度を可変可能なサーボモータが用いられる。このサーボモータからなる駆動動力源26,46は、第1及び第2パレットレール21,41の支持板21a、41aにそれぞれ取付けられ、それらの回転軸に駆動プーリ27,47がそれぞれ取付けられる。これらのサーボモータ26,46にはコントローラ61からの制御出力が接続され、そのコントローラ61からの指令によりそれぞれのサーボモータ26、46が駆動すると、駆動プーリ27,47が取付けられた回転軸がそれらの駆動プーリ27,47とともに回転し、駆動プーリ27,47に掛け回された循環ベルト23,24,43,44をそれぞれ図の実線矢印で示すように循環可能に構成される。なお、図では駆動動力源としてサーボモータ26を用い場合を例示するが、循環ベルト23,24,43,44の循環速度を可変可能である限り、サーボモータに代えて、エア又は油圧シリンダ等を駆動動力源26,46として用いても良い。
【0028】
次に、上記構成のパレット搬送装置10を用いた本発明のパレット搬送方法について説明する。
【0029】
本発明のパレット搬送方法は、パレットレール21,41に搭載されたパレット11をパレットレール21,41の長手方向に連続して設けられた複数のパレット搬送手段22,42により搬送する方法である。歯付きベルトからなる循環ベルト23,24,43,44を備えるこの実施の形態におけるパレット搬送手段22,42では、パレットレール21,41に搭載されたパレット11は、それらのパレット11に設けられた被凹凸12a,12bがパレットレール21,41に沿って設けられた循環ベルト23,24,43,44の凹凸24a,24b,43a,43bに係合する。これによりパレット11は循環ベルト23,24,43,44に係止し、パレット11が係止した循環ベルト23,24を駆動機構であるサーボモータ26,46を駆動して循環させることにより、パレットレール21,41に沿ってそれらのパレット11を搬送することができる。
【0030】
また、本発明のパレット搬送方法は、一のパレット搬送手段22によるパレット11の搬送速度を、別のパレット搬送手段42によるパレット11の搬送速度と異ならせることを特徴とする。一のパレット搬送手段22における駆動動力源26及び別のパレット搬送手段42における駆動動力源46として、駆動プーリ27,47の回転速度を変更して、循環ベルト23,24,43,44の循環速度を可変可能なサーボモータを用いており、これらのサーボモータ26,46は第1及び第2パレット搬送装置20,40に別々に設けられる。このため、双方のサーボモータ26,46による駆動プーリ27,47の回転速度をそれぞれ異なるものとすることにより、一のパレット搬送手段22における循環ベルト23,24の循環速度と、他のパレット搬送手段42における循環ベルト43,44の循環速度を異ならせることができる。
【0031】
双方のサーボモータ26,46の制御はコントローラ61により行われており、そのコントローラ61により、それぞれのパレット搬送手段22,42における循環ベルト23,24,43,44の循環速度を異ならせることにより、パレット搬送手段22,42毎にパレット11の搬送速度は異なることになる。そして、パレット搬送手段22,42毎にパレット11の搬送速度を異ならせるとパレット11の送りピッチの変更が可能になり、例えば、比較的小さな間隔で設置されている図1の符号1,2,3で示す工作機の間における搬送速度を低くしつつ、比較的大きな間隔で設置されている図1の符号3及び4で示す工作機の間における搬送速度を高くすることが可能になる。よって、比較的大きな間隔で設置されている工作機3及び4の間における搬送速度を高めることにより、パレット11の送りピッチを拡大して工作機3及び4の比較的大きな間隔に合わせることができ、これによりその搬送時間を短縮することができる。
【0032】
更に、本発明のパレット搬送方法は、一のパレット搬送手段22から隣接する別のパレット搬送手段42にパレット11が移動する際に、その一のパレット搬送手段22と別のパレット搬送手段42の双方におけるパレット11の搬送速度を同一とする。即ち、図1の右方向にパレット11が搬送される場合で説明すると、一のパレット搬送手段22では、パレット11が搬送されて第1パレットレール21の端部にまで達すると、パレット11が係止され第1パレットレール21に沿って長手方向に延びていた循環ベルト24はアイドルプーリ36によりその方向を下方に転換する。すると、パレット11とその循環ベルト24の係合は外れ、そのパレット11は第1パレットレール21から第2パレットレール41に移る。そして、第2パレットレール41に移動したパレット11は第2パレットレール41に沿って設けられた循環ベルト43に新たに係止され、その循環ベルト43が循環することにより第2パレットレール41に沿って更に搬送される。
【0033】
ここで、パレット搬送手段22,42はそれぞれ循環ベルト23,24,43,44を備えているけれども、この循環ベルトが幅方向に延びる凹凸24a,24b,43a,43bが長手方向に連続して形成された歯付きベルトであるような場合には、その凹凸24a,24b,43a,43bに係合可能な被凹凸12a,12bをパレット11に形成することにより、比較的容易にパレット11と循環ベルト24の係止状態を解消するとともに循環ベルト43にそのパレット11を新たに係止させることができる。
【0034】
しかし、パレット11が第1パレットレール21から第2パレットレール41に移動するためには、その循環ベルト24,43の凹凸24a,24b,43a,43bは所定のピッチで交互に連続するものとなっていなければならず、その循環ベルト23,24,43,44の循環速度を違えた状態ではそのピッチが常に変化するので、一のパレット搬送手段22から隣接する別のパレット搬送手段42にパレット11を移動させることができない。このため、一のパレット搬送手段22から隣接する別のパレット搬送手段42にパレット11が移動する際に、コントローラ61により、それぞれのパレット搬送手段22,42における循環ベルト23,24,43,44の循環速度を同一とすることにより、一のパレット搬送手段22と別のパレット搬送手段42の双方におけるパレット11の搬送速度を同一とすることができる。すると、循環ベルト24,43の凹凸24a,24b,43a,43bは所定のピッチで交互に連続するものとすることができ、これによりパレット11の移動を確実にすることができる。
【0035】
また、本発明のパレット搬送方法及び装置10では、各パレット11は第1パレットレール21及び第2パレットレール41に搭載された状態で移動するため、重量の大きいワークであっても、高速で搬送することができ、所定位置に停止することが可能であり、生産性を高められる。そして、各パレット11は第1パレットレール21及び第2パレットレール41に沿って設けられた循環ベルト23,24,43,44に係止するので、コントローラ61による循環ベルト23,24,43,44の循環制御を正確にすることにより、パレット11の位置決めを高精度で行うことが可能となる。そして、パレット11の循環ベルト23,24,43,44に係合する位置を変化させることにより、パレット11自体を変更することなく速やかに各パレット11間におけるピッチも変更することができる。
【0036】
また、本発明のパレット搬送装置10及び方法では、全てのアイドルプーリ31〜34,51〜54及び全ての補助プーリ36〜39,56〜59が位置調整機構60を介して第1及び第2パレットレール21,41の長手方向にそれぞれ位置調整可能に構成されているので、第1パレット搬送装置20の駆動プーリ27を挟む一対の循環ベルト23,24のそれぞれの凹凸24a,24bが所定のピッチで交互に連続するようなものでない場合、又は第2パレット搬送装置40の駆動プーリ47を挟む一対の循環ベルト43,44のそれぞれの凹凸43a,43bが所定のピッチで交互に連続するようなものでない場合、この位置調整機構60により駆動プーリ27,47の両側におけるアイドルプーリ32,33,52,53のいずれか一方又は双方の位置を調整することにより、それら循環ベルトの凹凸24a,24b,43a,43bを所定のピッチで交互に連続するものとすることができる。そして、補助プーリ36〜39,56〜59により、それら各循環ベルト23,24,43,44の張力を容易に調整することができる。よって、パレット11を各循環ベルト23,24,43,44の間に確実に移動させることができる。
【0037】
なお、上述した実施の形態では、第1パレットレール21と第2パレットレール41を連結板13により連結したパレットレールを説明したが、第1パレットレール21と第2パレットレール41の連結は他の構造の連結板13により連結しても良く、連結板13を用いることなく第1パレットレール21と第2パレットレール41を連結可能なように構成しても良い。また、このパレットレールは複数の搬送手段22,42が長手方向に連続して設けられる限り、単一のものからなるようなものであっても良い。
【0038】
また、上述した実施の形態では、駆動プーリ27,47がそれぞれのパレットレール21,41の略中央部に設けられる場合を説明したが、図示しないが、第1及び第2パレットレール21,41の長手方向の一端部に駆動プーリ27,47を設け、その他端部にアイドルプーリを設けて循環ベルトを長手方向に沿わせるようにしても良い。
【符号の説明】
【0039】
10 パレット搬送装置
11 パレット
21,41 パレットレール
22 一のパレット搬送手段
42 別のパレット搬送手段
61 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットレール(21,41)に搭載されたパレット(11)を前記パレットレール(21,41)の長手方向に連続して設けられた複数のパレット搬送手段(22,42)により搬送する方法であって、
一のパレット搬送手段(22)による前記パレット(11)の搬送速度を別のパレット搬送手段(42)による前記パレット(11)の搬送速度と異ならせる
ことを特徴とするパレット搬送方法。
【請求項2】
一のパレット搬送手段(22)から隣接する別のパレット搬送手段(42)にパレット(11)が移動する際に前記一のパレット搬送手段(22)と前記別のパレット搬送手段(42)の双方における前記パレット(11)の搬送速度を同一とする請求項1記載のパレット搬送方法。
【請求項3】
パレット(11)を長手方向に沿って移動可能に搭載するパレットレール(21,41)と、
前記パレットレール(21,41)の長手方向に連続して設けられ前記パレット(11)の搬送速度を可変可能に構成された複数のパレット搬送手段(22,42)と、
前記複数のパレット搬送手段(22,42)を制御するコントローラ(61)と
を備え、
前記コントローラ(61)は、一のパレット搬送手段(22)による前記パレット(11)の搬送速度を別のパレット搬送手段(42)による前記パレット(11)の搬送速度と異ならせるとともに、前記一のパレット搬送手段(22)から隣接する前記別のパレット搬送手段(42)に前記パレット(11)が移動する際に前記一のパレット搬送手段(22)と前記別のパレット搬送手段(42)の双方における前記パレット(11)の搬送速度を同一とするように制御する
ことを特徴とするパレット搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate