説明

パレット給排装置およびそれを具えるセル生産システム

【課題】作業ロボットや作業者に対する2枚のパレットの供給および空のパレットの排出を簡易な構成で行うことができるパレット給排装置。
【解決手段】第1使用位置P1へ向けてパレットPLを供給する第1供給手段と、前記第1供給手段の下側に整列して、前記第2使用位置P2へ向けてパレットを供給する第2供給手段と、前記第2供給手段の下側に整列して、パレットを排出する排出手段4と、パレットの、前記第1供給手段からの受取りと前記第1使用位置への保持とその第1使用位置からの排出とを行う第1保持部材7と、パレットの、前記第1保持部材から一時収納場所への受取りと前記第2供給手段から前記第2使用位置への受取りおよび保持と前記一時収納場所および前記第2使用位置から前記排出手段への排出とを行うように揺動する第2保持部材9と、各々パレットの保持および解放を行う第1,第2ストッパ手段とを具えてなるパレット給排装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製品の組立て作業を、1台または少数の作業ロボットや1人または少人数の作業者で、あるいはそれらの作業ロボットや作業者が一緒に行うセル生産の現場等に用いられ、それぞれに部品が載った2枚のパレットを一緒に使用位置に供給するとともに、部品が取り出されて空になったパレットをその使用位置から排出するパレット給排装置に関するものである。また、この発明は、そのパレット給排装置と作業ロボットとを具えるセル生産システムにも関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業者が行うセル生産等の組立て現場では通常、パイプ等から組み立てた棚(いわゆるセル屋台)を用意し、作業者は、複数の部品箱や部品が載ったパレット(部品トレイを含む)をそのセル屋台に自由に配置して組立て作業を行っており、そこでの作業者は、自分が作業しやすいように部品箱やパレットを斜めに配置する等工夫してセル屋台を構成し、部品が取り出されて空になった部品箱やパレットは、作業者自身で容易に整理、整頓することができる。
【0003】
一方、スカラ型ロボットや垂直多関節型ロボット等の作業ロボットに組立てを行わせる場合には、従来は、部品が載ったパレットを、作業ロボットに対して位置決めされたパレット給排装置にセットしてロボットの作動範囲に自動供給し、部品が取り出されて空になったパレットをそのパレット給排装置で排出していた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−019831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来のパレット給排装置では、部品が載ったパレットを作業ロボットの作動範囲に供給する一方で空になったパレットをロボットの作動範囲から排出するために、パレットを使用位置に移動させる水平移動とパレットを使用位置から外す上下移動とを組み合わせて行う必要があり、作動機構の構成が複雑になって装置コストと占有スペースとが嵩むという問題があった。
【0006】
しかも上記従来のパレット給排装置では、1枚のパレットをロボットの作動範囲に供給するのみであるので、それぞれに異なる部品が載った2枚のパレットを一緒に供給するためにはそのパレット給排装置を2台並置する必要があって、この点でも装置コストと占有スペースとが嵩むという問題があった。
【0007】
それゆえこの発明は、先のセル屋台の構成に鑑みて、作業ロボットや人に対する2枚のパレットの供給および空のパレットの排出を簡易な構成で行うことができるパレット給排装置を提供することを目的としている。
【0008】
また、この発明は、上記パレット給排装置および作業ロボットを具えるセル生産システムを提供することをも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上記従来技術の課題を有利に解決するものであり、この発明のパレット給排装置は、部品が載ったパレットを、傾斜した所定の第1使用位置と、前記第1使用位置に対しその傾斜方向の下方で近接する略水平な所定の第2使用位置とにそれぞれ供給し、空になったパレットをそれら第1使用位置および第2使用位置から排出するパレット給排装置において、前記第1使用位置へ向けてパレットを供給する第1供給手段と、前記第1供給手段の下側に整列して位置して前記第2使用位置へ向けてパレットを供給する第2供給手段と、前記第2供給手段の下側に整列して位置してパレットを排出する排出手段と、前記第1供給手段から受け取ったパレットを前記第1使用位置に保持するとともにその第1使用位置から排出する第1保持部材と、前記第1保持部材から排出されたパレットを一時収納場所に受け取る傾斜した受取り姿勢と、前記第2供給手段から受け取ったパレットを前記第2使用位置に保持する略水平な保持姿勢と、前記一時収納場所および前記第2使用位置から前記排出手段へパレットを滑落させる傾斜した排出姿勢との間で揺動する第2保持部材と、前記第2保持部材を揺動駆動する第2保持部材駆動手段と、前記第1保持部材に設けられてパレットを保持および解放する第1ストッパ手段と、前記第2保持部材に設けられてパレットを保持および解放する第2ストッパ手段と、を具えてなるものである。
【0010】
また、この発明のセル生産システムは、この発明のパレット給排装置と、前記パレット給排装置の前記第1使用位置および第2使用位置を作動範囲に含む作業ロボットと、を具えてなるものである。
【発明の効果】
【0011】
かかるこの発明のパレット給排装置にあっては、部品が載ったパレットを、傾斜した所定の第1使用位置と、前記第1使用位置に対しその傾斜方向の下方で近接する略水平な所定の第2使用位置とにそれぞれ供給し、空になったパレットをそれら第1使用位置および第2使用位置から排出するに際し、第1供給手段が第1使用位置へ向けて供給するパレットを、第1保持部材が、第1使用位置に配置するとともに第1ストッパ手段の保持作動でその第1使用位置に保持する。また、第1供給手段の下側に整列して位置する第2供給手段が第2使用位置へ向けて供給するパレットを、第2保持部材駆動手段により揺動駆動される第2保持部材が、略水平な保持姿勢で受け取って第2使用位置に保持する。
【0012】
そして第1使用位置に位置するパレットに載った部品が全て取り出されてパレットが空になると、第2保持部材が、傾斜した受取り姿勢へ揺動して、第1ストッパ手段の解放作動で第1保持部材の第1使用位置から排出されたパレットを一時収納場所に受け取り、その受取り姿勢から逆方向へ傾斜した排出姿勢へ揺動して、第2供給手段の下側に整列して位置する排出手段へ一時収納場所からパレットを滑落させ、排出手段が、そのパレットを排出する。この時、第2保持部材の保持位置にあるパレットも傾斜するが、第2ストッパ手段の保持作動で第2保持部材に保持される。また、第2使用位置に位置するパレットに載った部品が全て取り出されてパレットが空になると、第2保持部材が、傾斜した排出姿勢へ揺動して、第2ストッパ手段の解放作動で保持位置から排出手段へパレットを滑落させ、排出手段が、そのパレットを排出する。
【0013】
従って、この発明のパレット給排装置によれば、第2保持部材を揺動させることで、2枚のパレットの使用位置からの排出を行うので、作業ロボットや人に対する2枚のパレットの供給および空のパレットの排出を簡易な構成で行い得て、装置コストおよび占有スペースを削減することができる。しかも、第1供給手段と第2供給手段と排出手段とが上下に整列していて、第1供給手段と第2供給手段とが、傾斜した第1使用位置と、第1使用位置に対しその傾斜方向の下方で近接する略水平な第2使用位置とにパレットを供給するので、作業ロボットのハンドや作業者の手が容易に届く作業スペース内に場所をとらずに2枚のパレットを配置し得て、この点でも占有スペースを削減することができる。
【0014】
なお、この発明のパレット給排装置においては、前記第1供給手段と前記第2供給手段との少なくとも一方はローラ式コンベヤであり、前記第1保持部材は、前記第1供給手段からパレットを受け取る略水平な受取り姿勢と、受け取ったパレットを前記第1使用位置に保持するとともにその第1使用位置から排出する保持・排出姿勢との間で揺動するものであり、前記パレット給排装置は、前記第1保持部材を揺動駆動する第1保持部材駆動手段を具えるものであると好ましい。ローラ式コンベヤは、複数枚のパレットを並べて置いて順次に第1,第2使用位置に供給できるからであり、第1保持部材も揺動すれば、第1供給手段の構成を多様なものから選択できるからである。
【0015】
また、この発明のパレット給排装置においては、前記ローラ式コンベヤは、傾斜路に沿って複数配置されてパレットおよびそこに載った部品の自重でパレットを移動させるフリーローラと、当該ローラ式コンベヤの出口側端部の位置に対しパレットを保持および解放させる第3ストッパ手段と、を有するものであると好ましい。パレットの移動のための動力が不要であるので、供給手段を簡易かつ安価に構成できるからである。
【0016】
さらに、この発明のパレット給排装置においては、前記排出手段は、パレットの自重でパレットを滑落させる斜面を有する傾斜排出路であると好ましい。パレットの排出移動のための動力が不要であるので、排出手段を簡易かつ安価に構成できるからである。
【0017】
また、この発明のセル生産システムによれば、前記パレット給排装置と、そのパレット給排装置の前記第1使用位置および第2使用位置を作動範囲に含む作業ロボットとを具えているため、パレットを傾斜位置とその下方の略水平位置との2段に供給できるので、作業ロボットがパレットからの部品の取上げおよび所定位置への配置を行う場合に、部品をカメラで見やすく、ハンドで取りやすくでき、しかも作業ロボットの作動範囲内に一度に多くの部品を供給することができ、さらに、第1供給手段と第2供給手段と排出手段とが上下に整列しているので、パレットの供給と空のパレットの排出とを省スペースで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a),(b)および(c)は、この発明のパレット給排装置の一実施例を示す正面図、平面図および側面図である。
【図2】(a)および(b)は、上記実施例のパレット給排装置を示す斜視図および断面図である。
【図3】(a)〜(f)は、上記実施例のパレット給排装置の一連の作動を示す説明図である。
【図4】(a)〜(f)は、上記実施例のパレット給排装置の図3に続く一連の作動を示す説明図である。
【図5】(a),(b)および(c)は、上記実施例のパレット給排装置が1台の作業ロボットと組み合わされたこの発明のセル生産システムの一実施例を示す正面図、平面図および側面図である。
【図6】上記実施例のセル作業システムにおける上記実施例のパレット給排装置を図2(a)と同様の向きで示す斜視図である。
【図7】上記実施例のパレット給排装置が複数台並置された、上記実施例のセル生産システムの一変形例を示す斜視図である。
【図8】上記実施例のパレット給排装置が複数台並置されるとともに1人の作業者も加わった、上記実施例のセル生産システムの他の一変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づく実施例によって詳細に説明する。ここに、図1(a),(b)および(c)は、この発明のパレット給排装置の一実施例を示す正面図、平面図および側面図であり、図2(a)および(b)は、上記実施例のパレット給排装置を示す斜視図および断面図である。
【0020】
この実施例のパレット給排装置は、例えば作業ロボットと組み合わされてセル生産システムを構成し、図1,2に示すように、多数の部品PTが載ったパレットPLを、傾斜した所定の第1使用位置P1と、その第1使用位置P1に対しその傾斜方向の下方で近接する略水平な所定の第2使用位置P2とにそれぞれ供給し、空になったパレットPLをそれら第1使用位置P1および第2使用位置P2から排出するものである。
【0021】
上記機能を担保するべくこの実施例のパレット給排装置は、例えば角パイプ材で棚状に構成されてその一端部(図1(b),(c)および図2(b),(c)では左側端部)に、上記傾斜した第1使用位置P1と、その第1使用位置P1に対しその傾斜方向下方で近接する略水平な上記第2使用位置P2とを設定されたフレーム1と、フレーム1の上部に設けられて上記第1使用位置P1へ向けてパレットPLを供給する、第1供給手段としての第1ローラ式コンベヤ2と、その第1ローラ式コンベヤ2の下側に整列して位置するようにフレーム1に設けられて第2使用位置P2へ向けてパレットPLを供給する、第2供給手段としての第2ローラ式コンベヤ3と、その第2ローラ式コンベヤ3の下側に整列して位置するようにフレーム1に設けられてパレットPLを排出する、排出手段としての傾斜排出路4とを具えている。
【0022】
ここで、第1ローラ式コンベヤ2および第2ローラ式コンベヤ3はそれぞれ、図2(b)に示すように、フレーム1によって形成された傾斜路に沿って多数配置されてパレットPLおよびそこに載った部品PTの自重でパレットPLをその傾斜路の下方へフレーム1による案内下で移動させるフリーローラ5と、当該ローラ式コンベヤ2,3の出口側端部(図1(b),(c)および図2(b),(c)では左側端部)の位置でパレットPLを掛止して保持し、解放指示を受けるとその位置から1枚のみパレットPLを解放する、第3ストッパ手段としてのストッパ機構6とを有しており、かかるストッパ機構6は例えば、スプリングで常時付勢されてパレットPLの端面との掛合位置に突出する掛止部材と、解放指示としての駆動電流の通電を受けるとその掛止部材を後退させてパレットPLの端面との掛合を解除させる電磁ソレノイドとにより構成することができる。一方、傾斜排出路4は、パレットPLの自重でパレットPLを滑落させる浅い樋状の斜面を有している。
【0023】
この実施例のパレット給排装置はまた、上記第1ローラ式コンベヤ2からパレットPLを受け取る略水平な受取り姿勢(図3(f)参照)と、受け取ったパレットPLを第1使用位置P1に保持するとともにその第1使用位置P1から排出する保持・排出姿勢(図3(a),(e)参照)との間で揺動するようにフレーム1に軸支された板状の第1保持部材7と、その第1保持部材7を揺動駆動する、第1保持部材駆動手段としての第1揺動駆動機構8と、その第1保持部材7から排出されたパレットPLを一時収納場所としての下部トレイ9aに受け取る傾斜した受取り姿勢(図3(e)参照)と、上記第2ローラ式コンベヤ3から受け取ったパレットPLを第2使用位置P2に保持する略水平な保持姿勢(図3(a)参照)と、上記下部トレイ9aおよび第2使用位置P2から上記傾斜排出路4へパレットPLを滑落させる傾斜した排出姿勢(図3(f),図4(b)参照)との間で揺動するようにフレーム1に軸支された箱状の第2保持部材9と、その第2保持部材9を揺動駆動する、第2保持部材駆動手段としての第2揺動駆動機構10とを具えている。
【0024】
ここで、第1揺動駆動機構8および第2揺動駆動機構10はそれぞれ例えば、スライド部材に固定されたボールナットおよびそれと螺合したボールねじ軸と、そのボールねじ軸を回転させるサーボモータとを持ち、サーボモータによるボールねじ軸の回転でボールナットを介してスライド部材を進退移動させるボールねじ式直線移動機構11と、そのスライド部材と第1保持部材7または第2保持部材9とを連結するリンク部材12とにより構成される。
【0025】
この実施例のパレット給排装置はさらに、上記第1保持部材7に設けられてパレットPLを保持および解放する、第1ストッパ手段としてのストッパ機構(先の第3ストッパ手段としてのストッパ機構6と同様の構成ゆえそれと同一の符号にて示す)6と、上記第2保持部材9に設けられてパレットPLを保持および解放する、第2ストッパ手段としてのストッパ機構(先の第3ストッパ手段としてのストッパ機構6と同様の構成ゆえそれと同一の符号にて示す)6とを具えている。
【0026】
図3(a)〜(f)は上記実施例のパレット給排装置の一連の作動を示す説明図、また図4(a)〜(f)は上記実施例のパレット給排装置の図3に続く一連の作動を示す説明図であり、図3(a)に示す状態では、第1ローラ式コンベヤ2およびその下の第2ローラ式コンベヤ3上に、各々多数の部品PTを載せたパレットPLがそれぞれ5枚ずつ搭載されて、それらのパレットPLがパレットおよび部品の自重で図では左方へ向けて付勢されており、それらのうちの出口端部側(図では左端)のパレットPLはそれぞれストッパ機構6によってその出口端部に掛止されている。また、第1保持部材7は保持・排出姿勢にあって1枚のパレットPLをストッパ機構6により第1使用位置P1に保持している。さらに、第2保持部材9は略水平な保持姿勢にあって1枚のパレットPLを第2使用位置P2に保持している。
【0027】
この状態で、例えば図示しない作業ロボットや作業者が第1使用位置P1のパレットPL上の部品と第2使用位置P2のパレットPL上の部品とをそれぞれ取り上げて組み合わせることで製品を組み立て、その製品を別のパレットに載せるという作業を繰り返すことにより、図3(b)に示すように、第1使用位置P1および第2使用位置P2のパレットPLがそれぞれ空になると、この実施例のパレット給排装置にあっては、図3(c)に示すように、第2揺動駆動機構10が第2保持部材9を受取り姿勢に揺動させ、次いで図3(d)に示すように、第1保持部材7がその保持・排出姿勢のままストッパ機構6により空のパレットPLを解放して排出し、その第1保持部材7から排出されたパレットPLを第2保持部材9が、図3(e)に示すように、一時収納場所としての下部トレイ9aに受け取る。そして図3(f)に示すように、第2揺動駆動機構10が第2保持部材9を傾斜した排出姿勢に揺動させて、上記下部トレイ9aから傾斜排出路4へ空のパレットPLを滑落させる一方、第1揺動駆動機構8が第1保持部材7を略水平な受取り姿勢に揺動させる。
【0028】
次いでこの実施例のパレット給排装置にあっては、図4(a)に示すように、上記第1ローラ式コンベヤ2のストッパ機構6が出口側端部の1枚のパレットPLを解放して、第1保持部材7が上記略水平な受取り姿勢で第1ローラ式コンベヤ2からそのパレットPLを受け取り、第1保持部材7のストッパ機構6がそのパレットPLを掛止して第1保持部材7上に保持し、次いで図4(b)に示すように、第1揺動駆動機構8が第1保持部材7を保持・排出姿勢に傾動させてその上のパレットPLを第1使用位置P1に位置させる。なお、傾斜排出路4は空のパレットPLを、フレーム1の第1使用位置P1および第2使用位置P2側と反対側の端部(図1(b),(c)および図2(b),(c)では右側端部)まで滑落させて積み上げ、その端部から容易に搬出可能とする。
【0029】
この一方ここでは、第2揺動駆動機構10が第2保持部材9を傾斜した排出姿勢に揺動させるとともに、第2保持部材9のストッパ機構6が第2保持部材9上の空のパレットPLを解放して、図4(c)に示すように、その第2保持部材9上から傾斜排出路4へ空のパレットPLを滑落させ、これも傾斜排出路4で上記反対側の端部に搬送して積み上げ、次いで図4(d)に示すように、第2揺動駆動機構10が第2保持部材9を略水平な保持姿勢に揺動させるとともに、第2保持部材9のストッパ機構6が解放状態となり、さらに上記第2ローラ式コンベヤ3のストッパ機構6が出口側端部の1枚のパレットPLを解放し、これにより図4(e)に示すように、第2保持部材9が上記略水平な保持姿勢で第2ローラ式コンベヤ2からパレットPLを受け取って、そのパレットPLを第2使用位置P2に位置させ、図3(a)の状態に戻る。
【0030】
従って、この実施例のパレット給排装置によれば、第1,第2保持部材7,9を揺動させることで、2枚のパレットPLの使用位置P1,P2での保持とそこからの排出とを行うので、作業ロボットや人に対する2枚のパレットPLの供給および空のパレットPLの排出を簡易な構成で行い得て、装置コストおよび占有スペースを削減することができる。しかも、第1ローラ式コンベヤ2と第2ローラ式コンベヤ3と傾斜排出路4とが上下に整列していて、第1ローラ式コンベヤ2と第2ローラ式コンベヤ3とが、傾斜した第1使用位置P1と、第1使用位置P1に対しその傾斜方向の下方で近接する略水平な第2使用位置P2とにパレットPLを供給するので、作業ロボットのハンドや作業者の手が容易に届く作業スペース内に場所をとらずに2枚のパレットPLを配置し得て、この点でも占有スペースを削減することができる。
【0031】
さらに、この実施例のパレット給排装置によれば、第1ローラ式コンベヤ2と第2ローラ式コンベヤ3とは何れもローラ式コンベヤであるので、複数枚のパレットPLを並べて置いて順次に第1,第2使用位置P1,P2に供給でき、しかもしそれらのローラ式コンベヤ2,3は、傾斜路に沿って複数配置されてパレットPLおよびそこに載った部品PTの自重でパレットPLを移動させるフリーローラ5と、当該ローラ式コンベヤの出口側端部の位置に対しパレットPLを保持および解放させる第3ストッパ手段としてのストッパ機構6とを有するものであるため、パレットPLの移動のための動力が不要であるので、供給手段を簡易かつ安価に構成できる。
【0032】
さらに、この実施例のパレット給排装置によれば、排出手段は、パレットPLの自重でパレットPLを滑落させる斜面を有する傾斜排出路4であるため、パレットPLの排出移動のための動力が不要であるので、排出手段を簡易かつ安価に構成できる。
【0033】
図5(a),(b)および(c)は、上記実施例のパレット給排装置が1台の作業ロボットと組み合わされたこの発明のセル生産システムの一実施例を示す正面図、平面図および側面図、また図6は、上記実施例のセル作業システムにおける上記実施例のパレット給排装置を図2(a)と同様の向きで示す斜視図であり、図中符号SEは、上記実施例のパレット給排装置、WRは作業ロボット、CVはベルトコンベヤの一部を示す。
【0034】
この実施例のセル生産システムは、上記実施例のパレット給排装置SEと、そのパレット給排装置SEの第1,第2使用位置P1,P2側の端部に向き合って配置された台車型作業ロボットWRと、その台車型作業ロボットWRの背面側に配置されたベルトコンベヤCVとを具えており、ここにおける台車型作業ロボットWRは、本願出願人が先に特開2009−279663号公報にて開示したものと略同一の構成を有している。
【0035】
すなわちこの台車型作業ロボットWRは、2台のテレビカメラを持つ頭部21と、2本の作業腕22と、それらの作業腕22を支持する胴部23と、その胴部23の下端部から下方へ延在する支柱24と、を具えている。ここで、頭部21は、頭部21を前後に揺動させる首部ピッチ軸駆動機構および頭部21を左右に回動させる首部ヨー軸駆動機構を有する2自由度の首部関節25を介して胴部23の上端部に取り付けられている。そして胴部23の下端部は、胴部23を左右に回動させる胴部ヨー軸駆動機構を有する1自由度の胴部関節26を介して支柱24の上端部に取り付けられている。
【0036】
また、2本の作業腕22は胴部23の左右両側にそれぞれ設けられ、各作業腕22は、胴部23と作業腕22の上腕との間の肩関節28と、上腕と下腕との間の肘関節29と、下腕とハンド27やそれと交換された工具等のエンドエフェクタとの間の手首関節30とを有しており、各肩関節28は、胴部23に対し作業腕22の全体をヨー軸線周りに左右に回動させる肩ヨー軸駆動機構と、胴部23に対しそのヨー軸線と直交するピッチ軸線周りに作業腕22の全体を前後に揺動させる肩ピッチ軸駆動機構とを有している。
【0037】
さらに、各肘関節29は、上腕に対し下腕をピッチ軸線周りに上下に揺動させる肘ピッチ軸駆動機構を有し、また各手首関節30は、下腕に対して上記エンドエフェクタをピッチ軸線周りに相対的に上下に傾動させる手首ピッチ軸駆動機構と、そのエンドエフェクタをピッチ軸線と直交するヨー軸線周りに相対的に左右に回動させる手首ヨー軸駆動機構と、下腕に対して手首ピッチ軸駆動機構および手首ヨー軸駆動機構をその下腕に沿って延在するロール軸線周りにねじる手首ロール軸駆動機構とを有している。この結果として各作業腕22は6自由度を有し、これらピッチ軸、ヨー軸およびロール軸駆動機構の軸配置により、2本の作業腕22は特異点がなく自由な姿勢を作ることができる。なお、上記対象物認識装置各関節のピッチ軸、ヨー軸およびロール軸の軸駆動機構は各々、周知のように例えばサーボモータ等のモータの出力回転を例えば商品名ハーモニックドライブ等の減速機で減速して出力する、逆入力可能な回動機構で構成されている。
【0038】
さらに、この台車型作業ロボットWRは、支柱24の下端部を移動および固定可能に支持する昇降式キャスタおよび固定脚付きの台車31と、その台車31上に搭載され、対象物に設けられたマークの種類および配置を頭部21の2台のテレビカメラからの画像に基づき識別して対象物の種類および位置を認識して、その対象物の認識情報およびあらかじめ与えられたプログラムに基づき上記各関節の軸駆動装置およびハンド27やそれと交換された工具等のエンドエフェクタを作動させる作動制御装置32とを具えている(詳細は、特開2009−279663号公報参照)。
【0039】
かかる構成によりこの台車型作業ロボットWRは、製品を構成する複数種類の部品を、上記実施例のパレット給排装置SEの第1,第2使用位置P1,P2に配置されたパレットPL上から取り上げて、それらの部品を組み合わせることにより製品を組み立て、その組み立てた製品をベルトコンベヤCV上のパレットPLに搭載するという作業を行うことができる。
【0040】
そして、この実施例のセル生産システムによれば、上記実施例のパレット給排装置SEと、そのパレット給排装置SEの第1使用位置P1および第2使用位置P2を作動範囲に含む作業ロボットWRとを具えているため、パレットPLを傾斜位置とその下方の略水平位置との2段に供給できるので、作業ロボットWRがパレットPLからの部品の取上げおよび所定位置への配置を行う場合に、部品を頭部21のテレビカメラで見やすく、ハンド27で取りやすくでき、しかも作業ロボットWRの作動範囲内に一度に多くの部品を供給することができ、さらに、第1ローラ式コンベヤ2と第2ローラ式コンベヤ3と傾斜排出路4とが上下に整列しているので、パレットPLの供給と空のパレットPLの排出とを省スペースで行うことができる。
【0041】
図7は、上記実施例のパレット給排装置が複数台並置された、上記実施例のセル生産システムの一変形例を示す斜視図であり、この変形例のセル生産システムは、互いに並設された4台の上記実施例のパレット給排装置SEと、それらのパレット給排装置SEの第1,第2使用位置P1,P2側の端部に向き合って配置されるとともに、図中矢印Aで示すようにそれらのパレット給排装置SEの間で移動可能とされた台車型作業ロボットWRと、その台車型作業ロボットWRの背面側に配置されたベルトコンベヤCVとを具えている。
【0042】
かかる変形例のセル生産システムによれば、限られた平面スペースの中で多種類の製品や多数の製品を効率的に生産することができるとともに、生産する製品の種類や生産能力を需要に応じて容易に変更することができる。
【0043】
図8は、上記実施例のパレット給排装置が複数台並置されるとともに1人の作業者も加わった、上記実施例のセル生産システムの他の一変形例を示す斜視図であり、この変形例のセル生産システムは、互いに並設された4台の上記実施例のパレット給排装置SEと、それらのパレット給排装置SEのうちの図では左側の2台のパレット給排装置SEの第1,第2使用位置P1,P2側の端部に向き合って配置された台車型作業ロボットWRと、その台車型作業ロボットWRの背面側に配置されたベルトコンベヤCVとを具えている。そして4台のパレット給排装置SEのうちの図では右側の2台のパレット給排装置SEは、作業者WPへの部品供給に使用されている。
【0044】
かかる変形例のセル生産システムによっても、限られた平面スペースの中で多種類の製品や多数の製品を効率的に生産することができるとともに、生産する製品の種類や生産能力を需要に応じて容易に変更することができ、しかも、上記台車型作業ロボットWRの肩関節28は作業腕22を真横に上げ下ろしする機能を持っていず、上記作動制御装置32は作業腕22を自分の受け持ちの2台のパレット給排装置SEとベルトコンベヤCV以外に移動させないように制御するので、作業者WPは台車型作業ロボットWRと協働して安全に作業を行うことができる。
【0045】
以上、図示例に基づき説明したが、本発明は上述した実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものであり、例えば、上記実施例のパレット給排装置SEでは、第1保持部材7を第1揺動駆動機構8で揺動させているが、第1保持部材7を、パレットPLを第1使用位置P1に配置する傾斜角に固定して、第1揺動駆動機構8を省略しても良く、その場合に第1供給手段は、例えばローラ式コンベヤをその固定した第1保持部材7の傾斜角に一致させもしくは近づけた傾斜角で配置するように構成しても良い。また、上記実施例のパレット給排装置SEでは、第1供給手段および第2供給手段を何れもフリーローラを持つローラ式コンベヤとしたが、何れか一方または双方を、モータ等でローラを回転駆動するローラ式コンベヤとしてもよく、あるいはベルトコンベヤ等の他の搬送手段で構成しても良い。また、排出手段を傾斜排出路としたが、ローラ式コンベヤや他の搬送手段で構成しても良い。
【0046】
そして第1ストッパ手段、第2ストッパ手段および第3ストッパ手段を電磁ソレノイド式のストッパ機構6としたが、エアシリンダや他の駆動手段で掛止部材や制動部材を進退移動させるものでも良い。さらに、第1保持部材駆動手段および第2保持部材駆動手段を何れもボールネジ式直線移動機構を用いて構成したが、何れか一方または双方を、リニアモータやエアシリンダあるいは液圧シリンダを用いて構成しても良く、ロボットの関節等に用いられる回動駆動機構を用いて構成しても良い。そしてこの実施例のパレット給排装置SEは、セル生産の現場で作業者が用いても良い。
【0047】
また、上記実施例のセル生産システムでは台車型作業ロボットWRを用いたが、上記実施例のパレット給排装置SEと組み合わせる作業ロボットはこれに限られるものでなく、通常のスカラ型ロボットや垂直多関節型ロボット等を用いても良い。そしてベルトコンベヤCVの代わりに自走台車等の他の搬送手段を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
かくしてこの発明のパレット給排装置によれば、第2保持部材を揺動させることで、2枚のパレットの使用位置からの排出を行うので、作業ロボットや人に対する2枚のパレットの供給および空のパレットの排出を簡易な構成で行い得て、装置コストおよび占有スペースを削減することができる。しかも、第1供給手段と第2供給手段と排出手段とが上下に整列していて、第1供給手段と第2供給手段とが、傾斜した第1使用位置と、第1使用位置に対しその傾斜方向の下方で近接する略水平な第2使用位置とにパレットを供給するので、作業ロボットのハンドや作業者の手が容易に届く作業スペース内に場所をとらずに2枚のパレットを配置し得て、この点でも占有スペースを削減することができる。
【0049】
また、この発明のセル生産システムによれば、前記パレット給排装置と、そのパレット給排装置の前記第1使用位置および第2使用位置を作動範囲に含む作業ロボットとを具えているため、パレットを傾斜位置とその下方の略水平位置との2段に供給できるので、作業ロボットがパレットからの部品の取上げおよび所定位置への配置を行う場合に、部品をカメラで見やすく、ハンドで取りやすくでき、しかも作業ロボットの作動範囲内に一度に多くの部品を供給することができ、さらに、第1供給手段と第2供給手段と排出手段とが上下に整列しているので、パレットの供給と空のパレットの排出とを省スペースで行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
1 フレーム
2 第1ローラ式コンベヤ
3 第2ローラ式コンベヤ
4 傾斜排出路
5 フリーローラ
6 ストッパ機構
7 第1保持部材
8 第1揺動駆動機構
9 第2保持部材
9a 下部トレイ
10 第2揺動駆動機構
11 ボールねじ式直線移動機構
12 リンク部材
21 頭部
22 作業腕
23 胴部
24 支柱
25 首部関節
26 胴部関節
27 ハンド
28 肩関節
29 肘関節
30 手首関節
31 台車
CV ベルトコンベヤ
PL パレット
PT 部品
P1 第1使用位置
P2 第2使用位置
SE パレット給排装置
WP 作業者
WR 作業ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品が載ったパレットを、傾斜した所定の第1使用位置と、前記第1使用位置に対しその傾斜方向の下方で近接する略水平な所定の第2使用位置とにそれぞれ供給し、空になったパレットをそれら第1使用位置および第2使用位置から排出するパレット給排装置において、
前記第1使用位置へ向けてパレットを供給する第1供給手段と、
前記第1供給手段の下側に整列して位置して前記第2使用位置へ向けてパレットを供給する第2供給手段と、
前記第2供給手段の下側に整列して位置してパレットを排出する排出手段と、
前記第1供給手段から受け取ったパレットを前記第1使用位置に保持するとともにその第1使用位置から排出する第1保持部材と、
前記第1保持部材から排出されたパレットを一時収納場所に受け取る傾斜した受取り姿勢と、前記第2供給手段から受け取ったパレットを前記第2使用位置に保持する略水平な保持姿勢と、前記一時収納場所および前記第2使用位置から前記排出手段へパレットを滑落させる傾斜した排出姿勢との間で揺動する第2保持部材と、
前記第2保持部材を揺動駆動する第2保持部材駆動手段と、
前記第1保持部材に設けられてパレットを保持および解放する第1ストッパ手段と、
前記第2保持部材に設けられてパレットを保持および解放する第2ストッパ手段と、
を具えてなるパレット給排装置。
【請求項2】
前記第1供給手段と前記第2供給手段との少なくとも一方はローラ式コンベヤであり、
前記第1保持部材は、前記第1供給手段からパレットを受け取る略水平な受取り姿勢と、受け取ったパレットを前記第1使用位置に保持するとともにその第1使用位置から排出する保持・排出姿勢との間で揺動するものであり、
前記第1保持部材を揺動駆動する第1保持部材駆動手段を具える、請求項1記載のパレット給排装置。
【請求項3】
前記ローラ式コンベヤは、
傾斜路に沿って複数配置されてパレットおよびそこに載った部品の自重でパレットを移動させるフリーローラと、
当該ローラ式コンベヤの出口側端部の位置に対しパレットを保持および解放させる第3ストッパ手段と、
を有するものである、請求項2記載のパレット給排装置。
【請求項4】
前記排出手段は、パレットの自重でパレットを滑落させる斜面を有する傾斜排出路である、請求項1から3までの何れか1項記載のパレット給排装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか1項記載のパレット給排装置と、
前記パレット給排装置の前記第1使用位置および第2使用位置を作動範囲に含む作業ロボットと、
を具えてなるセル生産システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−219182(P2011−219182A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86775(P2010−86775)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(591210600)川田工業株式会社 (57)
【Fターム(参考)】