説明

パワーアシスト装置及びパワーアシストシステム

【課題】農作物の積み込みや積み下ろし作業といった、農家において日常的になされている作業に好適に用いられるパワーアシスト装置及びパワーアシストシステムを提供する。
【解決手段】パワーアシスト装置及びパワーアシストシステムは、ワイヤー62と電動モーター61とを有するウインチ6を備えたパワーアシスト装置10において、電動モーター61を制御する制御手段32がワイヤー62と連結されたフック3と一体となっているから、荷物をフック3にかけて、制御手段32により電動モーター62を制御して荷物を所望の位置まで昇降させて、所望の位置で荷物をフック3から外すという一連の作業を効率良く行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、収穫された農作物、肥料、機材等を運搬する時の積み込みや積み下ろし作業に好適に用いられる、軽トラック等の車両の荷台に装着可能なパワーアシスト装置及びパワーアシストシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の装置としては、軽トラック等の荷台に取り付けることのできる車載クレーンがある。この車載クレーンは、一般に、荷台上に略垂直に固定される支柱と、当該支柱の上端にその一方の端が枢着されており水平方向に回動可能な第1アーム(ブーム)と、第1アームの他方の端にその一方の端が枢着されており水平方向に回動可能な第2アーム(ブーム)と、車載バッテリーにより作動させうる正逆転可能な電動モーターを有するウインチとを備えている。このような従来の車載クレーンにおいては、電動モーターを制御する制御手段が設けられている。そして、当該制御手段は、電動モーターを遠隔操作するために用いられるものであり、電動モーターから離れた位置に設けられている。具体的には、ウインチのロープの先端側(フックが取り付けられる側)に、ロープから分岐するように制御手段が設けられたもの(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)、及び支柱の荷台への固定部近傍に制御手段が設けられたもの(例えば、非特許文献1参照。)がある。
【0003】
以下、図9に基づいて、従来の車載クレーンについて説明する。同図は、従来の車載クレーンが軽トラックに設置された状態を示す側面図である。同図に示された車載クレーンでは、電動モーター101の制御手段102が、ウインチのロープの先端側に、フック103とは別体として設けられている。この構成によって、作業者は、車載クレーンの搭載されている車から相当程度の距離を隔てた場所にいる場合であっても、制御手段102を用いて電動モーター101を制御することができる。そして、制御手段102をウインチのロープではなく、支柱の下部(荷台に固定してる部分の近傍)に設けた構成の車載クレーンによれば、手が届かない高さにフック103が巻き上げられた状態においても、作業者は制御手段103により電動モーター101を操作することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−284597号公報(第1図)
【特許文献2】特開平6−56388号公報(図1)
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】富士重工業株式会社 SAMBAR 特装車省力化シリーズ カタログ2006年 8頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の車載クレーンを、人力によって持ち上げられない荷物の昇降に用いた場合、作業効率はあまり問題とならないが、人力によって持ち上げられる荷物の昇降に用いた場合、作業効率の低下が大きな問題となる。このため、従来の車載クレーンは、例えば、農作物の積み込みや積み下ろしといった、農家において日常的になされている作業には適していない。なぜならば、従来の車載クレーンは、制御手段102とフック103とが別体のものとして構成されているから、作業者は、作業の際に、頻繁に手を持ち替えることが必要となり、作業効率が低下するからである。
【0007】
すなわち、作業者は、(1)ウインチのワイヤー先端のフック103に荷物をかけて、(2)制御手段102を操作することによりウインチの電動モーター101を駆動し、フック103の荷物を所望の位置に昇降させ、(3)荷物をフック102から外す、という一連の作業をスムーズに行うことができない。つまり、作業者は、(1)の作業において、荷物あるいはフック103を持っていた手を、(2)の作業の際には、電動モーター101を駆動するため、制御手段102に持ち替えることが必要となり、さらに、(3)の作業の際には、制御手段102を持った手を再度持ち替えて、荷物あるいはフック102を持つことが必要になる。このため、特に、人の力によっても持ち上げることができる重さの荷物の積み下ろし作業に従来の車載クレーンを用いると、人力によって作業を行う場合と比較して、その作業効率が大きく低下するという問題が生じる。
【0008】
例えば、農家においては、収穫した農作物を入れた箱や肥料袋などを軽トラックの荷台へ積み込んだり下ろしたりする作業が日常的に行われている。この作業に従来の車載クレーンを用いることは、作業者の身体的な負担を軽減し得るといえる。しかし、上述したとおり、従来の車載クレーンを用いることにより、人力で行う場合に比べて作業効率が大きく低下することから、これらの作業に従来の車載クレーンを用いることは現実的ではなく、これらの作業は人力によりなされているのが現状である。特に高齢化の進む生産農家において日常的になされている上述した作業は、作業者に大きな負担のかかる重労働となっているのが実際の状況である。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、収穫された農作物や肥料の積み下ろしなどの作業を効率良く行うことができるパワーアシスト装置及びパワーアシストシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のパワーアシスト装置は、上記の課題を解決するために、線状体と電動モーターとを有するウインチを備えたパワーアシスト装置において、電動モーターを制御する制御手段が線状体と連結されたフックと一体となっている。ここで、「一体となっている」とは、一つになって分けられない関係にあることをいう。また、「線状体」とは、例えば、ロープやワイヤーなどをいう。
【0011】
上記制御手段は、ボタンを有しており、ボタンが押下されているときは上記電動モーターを駆動し、ボタンが押下されていないときは上記電動モーターを駆動しないものであることが好ましい。この場合、上記ボタンは複数方向に押下可能であり、上記ウインチはボタンが押下される方向と同じ方向に上記フックを移動させるものであることが好ましい。
【0012】
上記フックは、グリップ部を有しているものであることが好ましい。この場合、上記制御手段は上記グリップ部に設けられているものであることが好ましい。また、上記グリップ部は使用の際に鉛直下方となる側が太くなっている部分を有しているものであることが好ましい。この場合、上記制御手段は、上記グリップ部の太くなっている部分よりも、使用の際に鉛直上方となる部分に設けられていることが好ましい。
【0013】
本発明のパワーアシスト装置は、支柱と、支柱の上端に回動可能な状態で枢着されたブームと、ブームに支持された固定滑車と、ブーム長手方向に移動可能に設けられた動滑車と、固定滑車から離れる方向に動滑車を付勢する付勢手段と、上記制御部と上記電動モーターとを接続する導電線とを備えており、導電線が定滑車と動滑車とを経て掛け渡されており、動滑車が固定滑車に近づく方向に移動することにより固定滑車から導電線が引き出され、動滑車が付勢手段により固定滑車から離れる方向に移動することにより導電線が巻き取られるものである。この場合、上記付勢手段としては、巻きバネが好ましい。
【0014】
本発明のパワーアシストシステムは、上記課題を解決するために、本発明のパワーアシスト装置と、上記フックと着脱可能に係合する係合部を有する昇降物保持具とを備えており、昇降物保持具は板を略コの字状に折り曲げた形状のものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のパワーアシスト装置は、上記の手段を備えていることにより、以下の効果を奏することができる。
【0016】
本発明のパワーアシスト装置は、制御手段がフックと一体となっているから、作業者は、(1)荷物をフックにかけ、(2)制御手段により電動モーターを制御して荷物を所望の位置まで昇降させて、(3)所望の位置で荷物をフックから外すという一連の作業を効率良く行うことが可能となる。すなわち、フックを持った手で制御手段を操作することによって電動モーターの駆動を制御してフックを昇降させることができるから、フックと制御手段との間で手を持ち替えることなく、上記一連の作業を効率良く行うことができる。これにより、フックにかけられた荷物を昇降させる際に作業者にかかる負荷をウインチにより軽減させつつ、かつ、作業者の意図する場所に荷物を降ろすことが容易になる。したがって、本発明のパワーアシスト装置は、農作物、肥料、機材などの積み下ろし作業のような、作業効率の観点から、従来人力によってなされていた作業に好適に用いることができ、これら作業の作業者への負担を軽減することができる。
【0017】
本発明のパワーアシスト装置は、上記制御手段がボタンを有する構成とすることにより、作業者は、ボタンを押下して荷物を所望の位置に昇降させ、そこでボタンの押下を止めることにより荷物を停止させることができる。このため、荷物の昇降を効率良くかつ安全に行うことができる。また、上記ボタンを複数方向に押下可能な構成とすることにより、ボタンを押下する方向とフックの移動する方向とを対応させることができる。このため、作業者は、フックを移動させるための操作をより直感的に行うことが可能になるから、作業効率がさらに向上する。
【0018】
本発明のパワーアシスト装置の上記フックがグリップ部を有する構成とすることにより、作業者はグリップ部を握って上記一連の作業を行うことができる。この場合、グリップ部に上記制御手段が設けられている構成とすれば、作業者はグリップを握ったまま上記制御手段を操作することが可能となる。また、作業者は、フックを荷物に引っかけたり、荷物から外したりする際に、フックを鉛直下方に移動させる必要があるが、グリップに鉛直下方となる側が太くなった部分を設けることにより、フックを鉛直下方に移動させる際にグリップ部を握っている手が滑ることを防止することができる。この構成を採用する場合には、上記制御手段は、上記グリップ部の太くなっている部分よりも、使用の際に鉛直上方となる側に設けられていることが好ましい。これにより、太くなっている部分を人差し指から小指までの指と掌とでつかんだ状態で、親指を用いて操作手段を操作することが可能となる。したがって、これらの構成により、作業効率がさらに向上する。
【0019】
本発明のパワーアシスト装置は、固定滑車、動滑車、及び付勢手段を備えることにより、上記フックの昇降に応じて、導電線の引き出し及び巻き取りを行うことが可能となる。そして、動滑車を用いることにより、導電線の引き出し及び巻き取りの長さを動滑車の移動距離よりも長くすることができるから、導電線巻き取り手段をコンパクトに構成することができる。この場合、付勢手段として巻きバネを用いることが好ましい。
【0020】
本発明のパワーアシストシステムは、昇降物保持具を有しているから、例えば、米袋などのように、持ち運びの際に曲がりやすい荷物であっても、昇降物保持具に挟み込むことにより、容易に昇降させることができる。これにより、その積み込み作業を効率良く行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態であるパワーアシスト装置を軽トラックに装着した状態を、軽トラックの側面から見た側面図である。
【図2】本発明の実施形態であるパワーアシスト装置を軽トラックに装着した状態を、軽トラックの上方から見た説明図である。
【図3】フックの側面図である。
【図4】フックの正面図である。
【図5】ウインチの構造及び第2ブーム内の構造を説明する、第2ブームの一部を取り除いた説明図である。
【図6】本発明の実施形態であるパワーアシストシステムを構成する昇降物保持具の斜視図である。
【図7】図6の昇降物保持具の使用方法を説明する斜視図である。
【図8】図6の昇降物保持具の使用方法を説明する断面図である。
【図9】従来の車載クレーンを設けた軽トラックの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔実施の形態1〕 以下、図1〜図5に基づいて、本発明の一実施形態について説明する。一般に、多くの生産農家においては、農作物などの運搬用に軽トラックが用いられている。そこで、本実施の形態においては、本発明のパワーアシスト装置を軽トラックに装着した場合について説明する。本発明のパワーアシスト装置は、農家において既に使用されている軽トラックに容易に装着することができるから、取り付けに要する費用をも含めて経済的なものとして提供することができる。図1は、本発明の実施形態であるパワーアシスト装置を軽トラックに装着した状態を、軽トラックの側面から見た側面図である。同図に示すように、本実施形態のパワーアシスト装置10は、支柱2、フック3、第1ブーム4、第2ブーム5、及びウインチ6を備えている。以下、各部分の構成について説明する。
【0023】
支柱2は、軽トラック20の荷台21の適宜の位置に、荷台21の荷台面に対して垂直となるように固定されるものである。支柱2は、パワーアシスト装置10の最大荷重を満足する所要の剛性及び機械的強度を備えた部材とすれば良い。このことは、後に説明する他の部材についても同様である。本実施形態のパワーアシスト装置10は、生産農家における日常的な作業に用いられるためのものであるから、最大許容負荷(最大荷重)を60kg程度とすれば良く、パワーアシスト装置10を構成する各部材の強度はこれを満足させるものとなっている。ただし、パワーアシスト装置10は、荷物を吊り上げる際に作業者を補助するために用いられるものであるから、最大許容負荷以上の荷物を対象とする作業にも用いることができる。例えば、作業者が10kg分の負担を負えば、その分だけパワーアシスト装置10にかかる負担は軽減されることとなるから、70kgの荷物を本実施形態のパワーアシスト装置10の最大許容負荷範囲内のものとして昇降することが可能である。また、支柱2の高さは、パワーアシスト装置10の最上部が軽トラックの高さの規格を超えない範囲のものとする。これにより、パワーアシスト装置10を取り外すことなく、パワーアシスト装置10が設置された状態のままで、軽トラック20として移動することができる。
【0024】
フック3は、ウインチ6の電動モーター61により、繰り出し及び巻き取りがなされるワイヤー62と連結されており、スイッチボタン32を備えている。スイッチボタン32は、作業者が電動モーター61を制御する手段となっている。このフック3の構成については、図3、4に基づいて、後に説明する。
【0025】
第1ブーム4は、その一方の端部付近において、支柱2の上端に、図示しない軸受けを介して枢着されており、支柱2に対して回動可能となっている。また、第2ブーム5は、その一方の端部付近において、支柱2に枢着されていない側の第1ブーム4の端部に、図示しない軸受けを介して枢着されている。第1ブーム4及び第2ブーム5はいずれも、荷台21の横幅と同程度の長さであり、パワーアシスト装置10を使用しないときには、両者が鉛直方向に重なるように折りたたみ可能に構成されている。また、第1ブーム4及び第2ブーム5は、折りたたまれた状態で、荷台21上の所定の位置に係止される構成となっている。
【0026】
ウインチ6は、第2ブーム5の第1ブーム4と枢着された側の端部付近に設けられており、正逆転可能な電動モーター61と、ワイヤー62とを有している。電動モーター61は、軽トラック20に組み込まれている車載バッテリーからの電力により駆動されるものである。そして、電動モーター61は、正転方向にドラムを駆動する際にワイヤー62を巻き取り、逆転方向に駆動する際にワイヤー62を繰り出す。ワイヤー62は、電動モーター61により回転させられるローラーに連結されている側とは反対側の端において、フック3と連結されている。ウインチ6の電動モーター61は、フック3に設けられたスイッチボタン32により、その駆動の有無及び駆動する方向(正逆)が制御される。また、ウインチ6は、ワイヤー62の過度の巻き取り、過度の繰り出しを防止するための、図示しないセンサーを備えている。そして、センサーが繰り出されたワイヤー62の長さが所定の長さとなったことを検知することにより、電動モーター61が自動的に停止するように構成されている。これにより、フック3が第2ブーム5と接触し、巻き取ることができない状態であるにも関わらず、ワイヤー62が電動モーター61によりさらに巻き取られることにより、パワーアシスト装置10が損傷してしまうことを防止することができる。また、電動モーター61を逆転方向に駆動させ、ワイヤー62の全てが繰り出された後に、逆転方向への駆動であるにも関わらず、ワイヤー62が電動モーター61により巻き取られてしまうことによって、ウインチ6が本来とは反対の動作となってしまうことを防止することができる。
【0027】
図2は、パワーアシスト装置10を軽トラック20に装着した状態を、軽トラックの上方から見た説明図である。同図に示すように、パワーアシスト装置10の支柱2は、軽トラック20の荷台21の前端の端部に固定されている。そして、第1ブーム4及び第2ブーム5は、回動する際に他のブーム及び支柱2と干渉しないように枢着されている。このため、フック3を吊り下げている第2ブーム5の自由端は、非常に広い範囲を移動することができるとともに、図2に破線で示したように、パワーアシスト装置10を使用しないときには、第1ブーム4と第2ブーム5とが重なるように折り畳んで、荷台21の前方にコンパクトに収納することができる。これにより、軽トラック20の荷台21のスペースは、パワーアシスト装置10が装着された状態においても、装着前と同等とすることができる。なお、パワーアシスト装置10においては、ブームを第1ブーム4及び第2ブーム5の2つにより構成しているが、これに限られるものではなく、1つのブームあるいは3つ以上の部分によりブームを構成することもできる。
【0028】
フック3の構成について、図3、図4に基づいて、以下に説明する。図3はフック3の側面図であり、図4はフック3の正面図である。これらの図に示したように、フック3は、スイッチボックス31、スイッチボタン32、グリップ部33、突出部34、鉤部35、及び連結部36を備えている。
【0029】
スイッチボックス31は、作業者によってなされたスイッチボタン32の操作に応じて、ウインチ6の電動モーター61を制御するものである。パワーアシスト装置10においては、後述するように、スイッチボックス31と電動モーター61との接続は、ウインチ6のワイヤー62とは別の導電線によってなされている。本実施の形態においては、簡易な構成により確実な接続を実現するために導電線を用いている。しかし、スイッチボックス32からの信号を電動モーター61に伝達する手段は、これに限られるものではなく、ワイヤー62と一体とされた導電線や、無線信号など、導電線以外の手段を用いてもよい。
【0030】
作業者は、スイッチボックス31に設けられているスイッチボタン32を操作することにより、フック3から手を離すことなく、電動モーター61を制御することができる。このため、例えば、農作物などの荷物を軽トラック20に積み下ろす作業の際、フック3から手を離す必要がなくなるから、作業の効率を向上させることができる。例えば、農作物が入った箱を荷台21へ積みこむ作業では、作業者は、一方の手でフック3を持ちそれを箱の一部に引っかけ、他方の手で箱の他の部分を持つことができる。したがって、従来、人力でなされていた作業の形態を大きく変えることなく、農作物が入った箱を吊り上げるためにウインチの力を利用することができる。これにより、従来、全て人の力でなされていた作業の効率を大きく損なうことなく、積み込み作業をウインチ6によりアシストすることが可能となるから、農作物の入った箱の積み込み作業において、その効率を大きく損なうことなく、その負担を大きく軽減させることができる。
【0031】
スイッチボタン32は、スイッチボックス31から突出した棒状体であり、連結部36側と鉤部35側の二方向に倒すこと(押下すること)ができ、力が加えられていない場合には、スイッチボックス31に対して、略垂直(倒されていない状態)になるように構成されたものである。そして、スイッチボックス31は、スイッチボタン32が倒されている場合にのみ、倒された方向に対応する方向にフック3を移動させるよう、電気的な信号を送出して電動モーター61を駆動する。これにより、作業者は、フックを昇降(移動)させたい方向にスイッチボタン32を倒すことにより、フックの昇降を制御することができるから、作業の効率を向上させることができる。なお、電動モーター61を制御する制御手段としては、上記スイッチボタン32の他に、例えば、連結部36側と鉤部35側に対応した2つのボタンを設けて、何れかのボタンが押下されているときにのみ、対応する方向にフック3を昇降させるように電動モーター61を制御する構成や、フックの移動方向を制御するスイッチ又はボタンと、電動モーター61を駆動するか否かを制御するスイッチ又はボタンとにより電動モーター61を制御する構成などを採用してもよい。
【0032】
フック3は、グリップ部33を有している。このため、作業者は、パワーアシスト装置10により昇降する荷物をフック3に引っかけ、ウインチ6により昇降させ、所望の位置でフック3から荷物を外すという一連の作業を、グリップ部33をつかんで行うことができる。これにより、作業効率を向上させることができる。また、グリップ部33には、その長手方向の中心よりも使用の際に鉛直下方となる側に、突出部34が形成されている。このため、作業を行う際に、作業者の手が滑ることを防止することができるから、作業効率をさらに向上させることができる。そして、スイッチボタン32は、使用される状態において、突出部34よりも鉛直上方となる位置に設けられている。これにより、作業者は、グリップ部33をつかんだ状態のまま、親指を用いてスイッチボタン32を操作することができるから、スイッチボタン32の操作性が非常に良好なものとなる。鉤部35は、フック3に昇降対象の荷物を引っかけるためのものである。また、連結部36は、リング状の形状をしており、この連結部36においてフック3がウインチ6のワイヤー62と連結される。なお、連結部36を、グリップ部33の長手方向の軸を中心として回転可能な構成とすれば、使用にともなってワイヤー62に捩れが生じた場合に、連結部36の回転によって捩れのない状態に戻すことができる。
【0033】
第2ブーム5及びウインチ6の構成につき、図5に基づいて、以下に説明する。図5は、第2ブーム5の一部を取り除いた説明図である。同図は、電動モーター61とスイッチボックス31とを接続する導電線51を、フック3の昇降に対応させて、第2ブーム5の内部に収納する機構を説明するために、第2ブーム5内部の導電線51の巻き取り機構を有する部分について、その部分の覆いを取り除いたものである。
【0034】
ウインチ6は、電動モーター61でワイヤー62の巻き取りと繰り出しとを行うことにより、フック3を昇降させるものである。電動モーター61の駆動は、スイッチボタン32の操作に応じてスイッチボックス31から出された電気信号により、導電線51を介して制御される。
【0035】
第2ブーム5は、その内部に導電線51を収納できるように、内部が空洞である部分(空洞部)を備えている。そして、図5に示したように、当該空洞部には、動滑車52、巻きバネ53、及び定滑車54を備えている。動滑車52は、第2ブーム5の長手方向に移動可能に設けられており、巻きバネ53によって、定滑車54と反対側に付勢されている。定滑車54は、第2ブーム5の自由端付近に設けられている。そして、電動モーター61に接続されている導電線51は、第2ブーム5の自由端付近の固定箇所55にその一部が固定され、動滑車52、定滑車54の順に掛け渡された後、スイッチボックス31に接続されている。
【0036】
上記の構成によれば、動滑車52が定滑車54に近づく方向に移動することにより、第2ブーム5の内部(空洞部)から導電線51が引き出される。また、動滑車52が定滑車54から離れる方向に移動することにより、第2ブーム5の内部に導電線51が巻き取られる。すなわち、動滑車52が第2ブーム5の内部を移動することにより、第2ブーム5の自由端から出ている導電線51の長さを、定滑車54から出ているワイヤー62の長さに対応したものに変化させることができる。そして、動滑車52は、巻きバネ53により定滑車54とは反対方向に付勢されているから、第2ブーム5の定滑車54から出ている導電線51の長さを、電動モーター61の駆動に応じたものとすることができる。また、動滑車52を介して導電線51を付勢しているから、導電線51の繰り出し及び巻き取りの長さを、動滑車52の移動距離の2倍とすることができる。
【0037】
本実施の形態においては、動滑車52を付勢する手段として巻きバネ53を用いている。巻きバネ53を用いることにより、第2ブームの5内部のスペースを有効に活用して、第2ブーム5内部の広い範囲で動滑車52を付勢することが可能となる。このため、動滑車52の移動距離を大きくすることができるから、導電線51の繰り出し及び巻き取り距離を十分なものにすることが容易になる。なお、動滑車52を付勢する手段は、巻きバネ53に限られるものではなく、例えば、コイル形状のバネや、伸縮可能な弾性体などを用いることもできる。
【0038】
〔実施の形態2〕 本発明は、実施の形態1として説明したパワーアシスト装置10と、フック3に荷物をかけるために用いられる昇降物保持具とからなるパワーアシストシステムとして実施することもできる。パワーアシスト装置10(図1、図2参照)については、実施の形態1において説明しているから、以下では、図6〜8に基づいて、昇降物保持具について説明する。
【0039】
本実施の形態のパワーアシストシステムは、特に、米袋や肥料などの積み込みや、積み下ろしに好適に用いられるものである。米や肥料などのような袋入りの荷物(以下、「袋荷」という)を軽トラック20に積み込んだり降ろしたりする作業を、パワーアシスト装置10を用いて行う際には、フック3に引っかけるために、袋荷に紐をかけたり、袋荷を箱に入れたりする作業が必要となり、この作業が作業効率を低下させる原因となる。そこで、本実施の形態のパワーアシストシステムは、パワーアシスト装置10を用いて袋荷を昇降することを容易にさせるため、図6に示した保持具7を備えている。同図に示すように、保持具7は、板を略コの字状に折り曲げた形状をしており、フック3と係合する係合部71と、袋荷の挟み込み及び取り出しの際に用いられる取手部72とを備えている。このため、パワーアシスト装置10を用いた袋荷を昇降する際に、フック3と係合する係合部71が設けられている上方の板と袋を保持する下方の板との間に、袋荷を配置することができる。
【0040】
保持具7の使用方法について、図7及び図8に基づいて、以下に説明する。図7に示すように、作業者は、保持具7の対向している内面の一方が袋荷8の下方に位置するようにして保持具7を袋荷8の下に差し込むことにより、容易に保持具7のコの字形状の板の間に袋荷8を挟み込むことができる。このため、作業者は、積み込まれている袋荷8の中から、希望するものを容易に取り出すことが可能になる。つづいて、図8に示すように、袋8をその内側に挟み込んだ保持具7の係合部71をフック3に引っかける。これにより、作業者は、例えば、一方の手で袋荷8を支えつつ、他方の手でフック3を掴んだままフック3のスイッチボタン62を操作することができる。したがって、作業者は、袋荷8を保持した保持具7を所定の位置にまで昇降させ、移動させることを容易に行うことができる。
【0041】
また、袋荷8の昇降は袋荷8が保持具7に挟まれた状態でなされるから、保持具7から袋荷8を取り出すことも容易に行うことができる。したがって、保持具7とパワーアシスト装置10とからなるパワーアシストシステムによれば、袋荷8の積み込み、積み下ろし作業を、パワーアシスト装置10を用いて効率良く行うことが可能となる。
【0042】
また、袋荷8の一辺に空いたスペースがあれば、作業者はそこから保持具7を容易に差し込むことができる。このため、作業者は、保持具7によれば、対向する二辺から袋荷8の挟み込む構成の従来タイプの保持具を用いた場合に比べて、簡便且つ効率良く袋荷8を取り出すことが可能となる。
【0043】
本実施の形態では、パワーアシスト装置10を保持具7と共に用いるパワーアシストシステムについて説明したが、パワーアシスト装置10を備えたパワーアシストシステムは本実施の形態に限られるものではなく、他に、例えば収穫物の収納箱など、既存の通い箱を吊り下げるのに好適なアタッチメントなどと共に用いるパワーアシストシステムとして構成することもできる。
【符号の説明】
【0044】
2 支柱
3 フック
4 第1ブーム
5 第2ブーム
6 ウインチ
7 保持具
31 スイッチボックス
32 スイッチボタン(制御手段)
33 グリップ部
34 突出部
35 鉤部
51 導電線
52 動滑車
53 巻きバネ(付勢手段)
54 定滑車
55 固定箇所
61 電動モーター
62 ワイヤー(線状体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状体と電動モーターとを有するウインチを備えたパワーアシスト装置において、電動モーターを制御する制御手段が線状体と連結されたフックと一体となっていることを特徴とするパワーアシスト装置。
【請求項2】
上記制御手段は、ボタンを有しており、ボタンが押下されているときは上記電動モーターを駆動し、ボタンが押下されていないときは上記電動モーターを駆動しないものであることを特徴とする請求項1に記載のパワーアシスト装置。
【請求項3】
上記ボタンは複数方向に押下可能であり、上記電動モーターはボタンが押下される方向と同じ方向に上記フックを移動させるものであることを特徴とする請求項2に記載のパワーアシスト装置。
【請求項4】
上記フックは、グリップ部を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパワーアシスト装置。
【請求項5】
上記制御手段は、上記グリップ部に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のパワーアシスト装置。
【請求項6】
上記グリップ部は、使用の際に鉛直下方となる側の方が太くなっている部分を有していることを特徴とする請求項4に記載のパワーアシスト装置。
【請求項7】
上記制御手段は、上記グリップ部の太くなっている部分よりも、使用の際に鉛直上方となる部分に設けられていることを特徴とする請求項6に記載のパワーアシスト装置。
【請求項8】
支柱と、支柱の上端に回動可能な状態で枢着されたブームと、ブームに支持された固定滑車と、ブーム長手方向に移動可能に設けられた動滑車と、固定滑車から離れる方向に動滑車を付勢する付勢手段と、上記制御部と上記電動モーターとを接続する導電線とを備えており、導電線が定滑車と動滑車とを経て掛け渡されており、動滑車が固定滑車に近づく方向に移動することにより導電線が固定滑車から引き出され、動滑車が付勢手段により固定滑車から離れる方向に移動することにより導電線が巻き取られるものであることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のパワーアシスト装置。
【請求項9】
上記付勢手段は、巻きバネであることを特徴とする請求項8に記載のパワーアシスト装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載されたパワーアシスト装置と、上記フックと着脱可能に係合する係合部を有する昇降物保持具とを備えており、昇降物保持具は板を略コの字状に折り曲げた形状のものであることを特徴とするパワーアシストシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−57335(P2011−57335A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206935(P2009−206935)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(302008571)セイコー精機有限会社 (1)
【Fターム(参考)】