説明

パワーユニット

【課題】Vベルト自動変速機(18)の後方に駆動輪(15)が回転可能に支持され、前記Vベルト自動変速機(18)の後部と駆動輪(15)との間に、Vベルト自動変速機(18)の従動軸(52)の回転を減速して駆動輪(15)へ伝達する歯車減速機(19)が設けられているパワーユニット(1)において、前記歯車減速機(19)内のフリクションの低減と、歯車減速機(19)の歯車軸(63)(14)の配置の自由度の増加を図ろうとするものである。
【解決手段】前記歯車減速機(19)を収容する歯車ケース(60)内の最下部に、その内部のオイルを前記歯車減速機(19)の歯車の噛合い部(82)に供給する潤滑用オイルポンプ(67)が設けられた。前記オイルポンプ(67)は、歯車ケース(60)を構成する歯車ケース部材(50R)(60R)の底壁が下方に延出されて形成されたオイルポンプ配置空間(70)に収容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の側方にVベルト自動変速機が設けられ、Vベルト自動変速機の後方に駆動輪が回転可能に支持され、前記Vベルト自動変速機の後部と駆動輪との間に、Vベルト自動変速機の従動軸の回転を減速して駆動輪へ伝達する歯車減速機が設けられているパワーユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、クランク室に近い内燃機関の潤滑必要部には、クランク軸によって駆動されるオイルポンプを介して潤滑が行われているが、クランク室から離れている前記歯車減速機には、オイルポンプは設けられていない(例えば、特許文献1参照。)。また、歯車減速機内部は、歯車の一部を潤滑オイルに浸漬させ、歯車の回転に伴って跳ね掛けられるオイルによって歯車の噛合い部の潤滑が行われていた。歯車による跳ね掛け式の潤滑では、歯車の一部を潤滑オイルに浸漬させるので、歯車による潤滑オイルの攪拌に伴う動力損失が発生し、また、歯車の一部を潤滑オイルに浸漬させるために、歯車軸の配置レイアウトの最適化や潤滑オイル量の削減が課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4425646号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記歯車減速機内の歯車による潤滑オイルの攪拌に伴う動力損失の低減と、歯車減速機の歯車軸の配置の自由度の増加及び潤滑オイル量の削減を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記課題を解決したものであって、請求項1に記載の発明は、
内燃機関(16)の側方にVベルト自動変速機(18)が設けられ、
該Vベルト自動変速機(18)の後方に駆動輪(15)が回転可能に支持されているパワーユニット(1)において、
前記Vベルト自動変速機(18)と駆動輪(15)との間に、Vベルト自動変速機(18)の従動軸(52)の回転を減速して駆動輪(15)へ伝達する歯車減速機(19)が、前記Vベルト自動変速機(18)の一側の変速機ケース部材(50R)を隔壁として、Vベルト自動変速機(18)と隔てて形成され、前記歯車減速機(19)を収容する歯車ケース(60)内に、その内部のオイルを前記歯車減速機(19)の歯車の噛合い部(82)に供給する潤滑用オイルポンプ(67)が設けられたことを特徴とするパワーユニット(1)に関するものである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のパワーユニット(1)において、
前記オイルポンプ(67)は、前記歯車ケース(60)内の最下部に配置されることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のパワーユニットにおいて、
前記オイルポンプ(67)から被潤滑部までのオイル通路(81)は、前記歯車ケース(60)を形成する左右一対の歯車ケース部材(50R)(60R)の合わせ面(77)に溝状に設けられることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項2乃至請求項3の何れかに記載のパワーユニット(1)において、
前記歯車減速機(19)の各歯車軸(63)(14)が、Vベルト自動変速機(18)の従動軸(52)に対して、同じ高さ又はそれより高い高さに配置されることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項3乃至請求項4の何れかに記載のパワーユニット(1)において、
前記オイルポンプ(67)は、歯車ケース(60)内において、歯車ケース部材(60R)の駆動輪(15)の反対側壁面に取付けられ、側面視で、駆動輪(15)に設けられたブレーキドラム(72)の外周の一部に重なるように配置されることを特徴とするものである。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5の何れかに記載のパワーユニット(1)において、
前記歯車ケース(60)を構成する歯車ケース部材(50R)(60R)の底壁が下方に延出されてオイルポンプ配置空間(70)が形成され、オイルポンプ(67)のオイル吸入口(74)は、該空間の下部に開口するよう設けられたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明において、
前記歯車ケース(60)内に歯車減速機専用のオイルポンプ(67)が設けられるので、少量のオイルによって効率よく潤滑が行われ、所要オイル量の低減が図られ、また、前記歯車減速機(19)の歯車軸(63)(14)の配置の自由度が増すので、歯車減速機(19)内の歯車による潤滑オイルの攪拌に伴う動力損失の低減と、歯車減速機(19)の小型化が図られる。
【0012】
請求項2の発明において、
前記歯車ケース(60)の下部にオイルが溜まるので、オイルポンプ(67)のオイル吸入口(74)から低圧ポンプ室(75)までの距離を短縮でき、ポンプ構造の簡素化が図られる。
【0013】
請求項3の発明において、
前記左右一対の歯車ケース部材(50R)(60R)の合わせ面(77)を利用することによって、歯車ケース(60)下部のオイルポンプ(67)から歯車ケース(60)上部までのオイル通路(81)の形成が容易となり、オイルは所望潤滑部の上方から供給されることが可能となるので、潤滑が効果的に行われる。
【0014】
請求項4の発明において、
前記歯車減速機(19)の各歯車軸(63)(14)が、Vベルト自動変速機(18)の従動軸(52)より高い位置にあっても、所望潤滑部の上方からオイルが供給されるので潤滑性能が確保される。したがって、歯車軸(14)が高い位置にあることによって車両の駆動輪(15)の大型化が可能となるので、パワーユニット(1)の低重心が維持されつつ、乗り心地が向上する。
【0015】
請求項5の発明において、
前記歯車ケース部材(60R)の外壁面に設けられたブレーキドラム受けリブ(73)によって、歯車ケース部材(60R)におけるオイルポンプ取付け部の補強が図られ、オイルポンプ取付け部の応力集中が緩和される。
【0016】
請求項6の発明において、
前記オイルポンプ(67)はオイルの収集性が良く、歯車ケース(60)内部において潤滑オイルの効率的な循環が行われるので、潤滑に必要なオイル量が削減される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るパワーユニットを搭載した自動二輪車の左面図である。
【図2】前記パワーユニットの縦断面左面図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】前記パワーユニットの一部をなす歯車減速機の縦断面左面図である。
【図5】図4のV−V−V断面図である。
【図6】図4のVI−VI−VI断面展開図である。
【図7】図4のVII−VII断面図である。
【図8】従来の歯車減速機の縦断面左面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係るパワーユニット1を搭載した自動二輪車2の左面図である。この自動二輪車2には、複数の部分からなる合成樹脂製の車体カバー3が取付けられ、この車体カバー3によって車体フレームや機器類が覆われている。自動二輪車2の車体フレームは、ヘッドパイプと、ヘッドパイプから後下がりに伸びるメインフレームと、一端がメインフレームの後部に接続されて後上がりに伸びる左右一対のリヤフレームと、その他の複数のフレームとから構成されている。ヘッドパイプに回転可能に支承されているフロントフォーク4の下端には前輪5が軸支され、フロントフォーク4の上部には操向ハンドル6が連結されている。パワーユニット1の上方にはエアクリーナ7が設けられている。
【0019】
図2は、パワーユニット1の縦断面左面図である。パワーユニット1の説明に用いる「前・後・左・右」は、パワーユニット1を搭載する自動二輪車2の「前・後・左・右」に対応している。前記パワーユニット1は、その上部に一体形成されたハンガー10と、支持軸11とを介して、前記自動二輪車2のリヤフレームの前部に固定されたブラケットに、懸架されている。パワーユニット1の後端部に設けられたブラケット12と、リヤフレームの後部に固定されたブラケットとの間にはリヤクッション13(図1)が設けられている。これらによってパワーユニット1は、シリンダ軸線を若干前上がりにして揺動可能に懸架されている。パワーユニット1の後部に設けられた後車軸14の右方突出部に自動二輪車2を駆動する駆動輪15(図1)が取り付けられ、パワーユニット1によって駆動される。
【0020】
図2において、パワーユニット1は、前部の内燃機関16と、同内燃機関16の左側から後方へ後車軸14まで延びる伝動装置17とから構成されている。伝動装置17は、Vベルト自動変速機18と歯車減速機19とによって構成されている。
【0021】
内燃機関16はロッカーアーム型頭上弁式4ストロークサイクル単気筒水冷式内燃機関である。前記内燃機関16の殻体はクランクケース20と、その前部に順次前方へ結合されるシリンダブロック21、シリンダヘッド22、およびシリンダヘッドカバー23、から成っている。シリンダヘッド22の上側の吸気ポートに取り付けられるインレットパイプ24にはスロットルボディ25が取付けられ、更にその後方にはエアクリーナ7(図1)が接続される。前記インレットパイプ24には燃料噴射弁26が取付けられている。
【0022】
図3は、図2のIII−III断面図である。図3のパワーユニット1において、クランクケース20は左右半割り式であり、右クランクケース20Rと左クランクケース20Lとからなっている。クランク軸30は、クランクケース20に支持されたボールベアリング31A,31Bに回転可能に支持されている。ピストン32は、シリンダブロック21に形成されたシリンダ孔33に摺動可能に嵌装されている。前記ピストン32は、コネクティングロッド34を介してクランクピン35に接続され、ピストン32が往復すると、クランク軸30が回転駆動される。ピストン32の頂面に対向してシリンダヘッド22の底面に燃焼室36が形成されている。燃焼室36に臨む点火プラグ37がシリンダヘッド22に装着されている。
【0023】
図3のパワーユニット1の右半部において、クランク軸30のボールベアリング31Bの隣接部に形成されているカムチェーン駆動スプロケット38と、カム軸39に設けられているカムチェーン従動スプロケット40との間にカムチェーン41が巻きかけられている。これによって、クランク軸30の回転に応じてカム軸39が駆動される。カム軸39の端部には、ウオータポンプ42が形成され、カム軸39の回転に伴って、このウオータポンプ42から送り出される冷却水はシリンダブロック21やシリンダヘッド22のウオータジャケットの中を流通し、ラジエータ43へ送られる。
【0024】
クランク軸30の右方延長部には、交流発電機44が設けられている。交流発電機ステータ45は、右クランクケース20Rに取付け固定されている。交流発電機ロータ46は、クランク軸30の右端に固定され、クランク軸30と共に回転する。交流発電機ロータ46の右側の、クランク軸30の端部に遠心式冷却ファン47が取付けられている。これは、ラジエータ43に外気を引き込んで、ラジエータ43における冷却水の冷却を促進するものである。前記ラジエータ43の右側は、同ラジエータ43へ冷却風を案内するラジエータカバー48によって覆われている。
【0025】
図3のパワーユニット1の左半部において、Vベルト自動変速機18は、変速機ケース50に収容されている。変速機ケース50は、変速機ケース右側部材50Rと変速機ケース左側部材50Lとからなっている。変速機ケース右側部材50Rは左クランクケース20Lと一体に形成されている。即ち、この一体の部材の前半部は左クランクケース20Lとして作用し、後半部は変速機ケース右側部材50Rとして作用する。変速機ケース左側部材50Lはボルトによって変速機ケース右側部材50Rに結合されている。
【0026】
Vベルト自動変速機18の駆動軸は、変速機ケース50内に延びているクランク軸30の左方延長部30Eである。クランク軸左方延長部30Eに、Vベルト自動変速機18の駆動プーリ51が設けられている。クランクケース20の内部と変速機ケース50の内部とはシール材57によって液密に遮断されている。駆動プーリ51は、固定半体51A、可動半体51B、ウエイトローラ51C、及びランププレート51Dを備えて構成されている。
【0027】
Vベルト自動変速機18の従動軸52は、変速機ケース左側部材50Lと変速機ケース右側部材50Rとにボールベアリング53A,53Bを介して回転自在に枢支されている。この従動軸52に、遠心クラッチ54を介して従動プーリ55が設けられている。従動プーリ55は、固定半体55A、可動半体55B、回転スリーブ55C、及びコイルばね55Dを備えて構成されている。従動プーリ55に設けられている遠心クラッチ54はクラッチアウタ54Aとクラッチインナ54Bとを備えて構成されている。クラッチアウタ54Aは従動軸52に接続され、クラッチインナ54Bは回転スリーブ55Cに接続されている。前記駆動プーリ51と従動プーリ55とに無端状Vベルト56が架渡されている。
【0028】
クランク軸30の回転数が増大すると、駆動プーリ51においては、可動半体51Bとランププレート51Dとの間のウエイトローラ51Cが、遠心力により半径方向外方へ移動し、可動半体51Bが押され、Vベルト56の巻き掛け径が大きくなる。これにより、Vベルト56の張力が高まるので、従動プーリ55側では、コイルばね55Dの付勢力に抗して可動半体55Bが動き、Vベルト56の巻き掛け径が小さくなる。この結果、Vベルト56の巻き掛け径の寸法比に応じて、従動プーリ55の回転数が高まる。従動プーリ55が所定回転数を越えて回転すると、遠心クラッチ54が接続状態となり、従動軸52が回転駆動される。
【0029】
図3において、Vベルト自動変速機18の後部の右側に歯車減速機19が設けられている。歯車減速機19は歯車ケース60に収容されている。歯車ケース60は、変速機ケース右側部材50Rの後部と歯車ケース右側部材60Rとを合わせて構成されている。即ち、歯車減速機19は、前記Vベルト自動変速機18の一側の変速機ケース右側部材50Rを隔壁として、Vベルト自動変速機18と隔てて形成されている。前記歯車減速機19は、Vベルト自動変速機18と駆動輪15との間において、Vベルト自動変速機18の従動軸52の回転を減速して駆動輪15へ伝達するためのものである。歯車ケース右側部材60Rはボルト58等によって変速機ケース右側部材50Rの後部に結合されている。前記従動軸52の右方延長部52Eが歯車ケース60内に延伸している。
【0030】
図4は歯車減速機19の縦断面左面図であり、Vベルト自動変速機18の後部を除いて、歯車ケース60の内部が示されている。歯車減速機19の入力軸は、歯車ケース60内に延びている前記Vベルト自動変速機18の従動軸右方延長部52Eである。従動軸右方延長部52Eと後車軸14との中間に中間軸63が設けられている。
【0031】
図5は図4の歯車減速機19のV−V−V断面図であり、Vベルト自動変速機18の後部も共に図示されている。図5に示される従動軸右方延長部52Eの右端はボールベアリング53Cによって歯車ケース右側部材60Rに回転自在に支持されている。変速機ケース50の内部と歯車ケース60の内部とはシール材61によって液密に遮断されている。
【0032】
図4と図5において、駆動輪15を一体に結合した後車軸14は、変速機ケース右側部材50Rと歯車ケース右側部材60Rと右側支持アーム27とにボールベアリング62A,62B,62Cを介して回転自在に支持されている。中間軸63は変速機ケース右側部材50Rと歯車ケース右側部材60Rにボールベアリング64A,64Bを介して回転自在に支持されている。従動軸52のトルクは従動軸右方延長部52Eの従動軸ピニオン52a、中間軸大径歯車65、中間軸63、中間軸ピニオン63a、及び後車軸大径歯車66を介して後車軸14に伝達される。後車軸14は従動軸52に対して大幅に減速され、後車軸14と結合されている駆動輪15が減速駆動される。
【0033】
図4に示される歯車ケース60内において、中間軸63の下方にオイルポンプ67が設けられている。前記オイルポンプ67のオイルポンプ軸68に、中間軸大径歯車65に噛合うオイルポンプ歯車69が固定されている。オイルポンプ67は、中間軸大径歯車65によって、オイルポンプ歯車69を介して駆動される。このオイルポンプは歯車ケース60内部のオイルを歯車減速機19の歯車の噛合い部82に供給する潤滑用オイルポンプである。歯車ケース60内に歯車減速機専用のオイルポンプ67が設けられるので、少量のオイルによって効率よく潤滑が行われ、所要オイル量の低減が図られる。また、前記歯車減速機19の歯車軸の配置の自由度が増すので、歯車減速機(19)内の潤滑オイルの攪拌に伴う動力損失の低減と、歯車減速機(19)の小型化が図られる。
【0034】
図6は図4のVI−VI−VI断面展開図である。この図は、オイルポンプ軸68を通る断面の展開図である。図4と図6において、歯車ケース60を構成する歯車ケース右側部材60Rと変速機ケース右側部材50Rの底壁が下方に延出されてオイルポンプ配置空間70が形成され、歯車ケース60内の中間軸63の下方、且つ前記歯車ケース60内の最下部に、オイルポンプ67が配置されている。歯車ケース60内の最下部に、オイルポンプ67が配置されているので、歯車ケース60の下部に溜まるオイルからオイルポンプ67の吸込み口までの距離を短縮可能で、ポンプ構造の簡素化が図られる。前記オイルポンプ67の配置によってオイルの収集性が良くなるので、歯車ケース60内部において潤滑オイルの効率的な循環が行われ、潤滑に必要なオイル量が削減される。
【0035】
図6において、前記オイルポンプ67は、駆動輪15に近接する側の歯車ケース部材である歯車ケース右側部材60Rの内壁面、即ち駆動輪15の反対側壁面にボルト71等によって取付けられ、側面視(図4)で、駆動輪15に設けられたブレーキドラム72の外周の一部に重なるように配置されている。したがって、歯車ケース右側部材60Rの外壁面に設けられたブレーキドラム受けリブ73によって、歯車ケース右側部材60Rにおけるオイルポンプ取付け部の補強が図られるので、オイルポンプ取付け部の応力集中が緩和される。
【0036】
図7は図4のVII−VII断面図であり、オイルポンプ67の断面が示されている。図4と図7において、オイルポンプ配置空間70の下部の歯車ケース右側部材60Rの内壁面にオイル吸入口74が開口している。このオイル吸入口74からオイルポンプ67の低圧ポンプ室75へ向かうオイル吸入通路76が歯車ケース右側部材60Rの壁体に設けられている。歯車ケース右側部材60Rの変速機ケース右側部材50Rに対する合わせ面77に、前記オイルポンプ67のオイル吐出口78が開口している。オイルポンプ67の高圧ポンプ室79から前記オイル吐出口78へ向かうオイル吐出通路80が、歯車ケース右側部材60Rの壁体に設けられている。
【0037】
更に、前記オイル吐出口78から前記合わせ面77の上部へ向かう溝状オイル通路81が、歯車ケース右側部材60Rの前記合わせ面77に、溝状に設けられている。前記合わせ面77の上部に、前記溝状オイル通路81から歯車減速機19の2箇所の歯車の噛合い部82へ向かう下向きのオイル噴出孔83が2箇所設けられている。歯車ケース60の下部に溜まったオイルがオイルポンプ67に吸入され、合わせ面77のオイル吐出口78へ吐出され、溝状オイル通路81を介して歯車減速機19の上部へ送られ、オイル噴出孔83から下向きに歯車の噛合い部82へ向けて噴射される。歯車ケース60の合わせ面77を利用したことによって、歯車ケース60の下部から上部までのオイル通路81の形成が容易となり、歯車の噛合い部82へ上方からオイルを供給するので、潤滑が効果的に行われる。
【0038】
図4において、前記歯車減速機19において、Vベルト自動変速機18の従動軸右方延長部52Eに対して、中間軸63は同じ高さ、後車軸14はそれより高い高さに配置されている。歯車減速機19の歯車軸が、Vベルト自動変速機18の従動軸52より高い位置にあっても、歯車の噛合い部82の上方からオイルが供給されるので潤滑性能は確保される。したがって、特に、後車軸14が高い位置にあることによって車両の駆動輪15の大型化が可能となるので、パワーユニット1の低重心が維持されつつ、乗り心地の向上が可能となっている。
【0039】
図4において、歯車ケース60の上部から歯車ケースブリーザホース84が延出している。これは、エアクリーナ7の吸気室へ接続されるものである。歯車ケース60の上部に車速センサ85が設けられている。これは、車速を算出するために、後車軸14に設けられた後車軸大径歯車66の歯先速度を検知する装置である。
【0040】
図4において、破線Aは前述の実施形態の歯車減速機19に潤滑オイルを注入したときのオイルレベルを示す線である。オイルはオイルポンプ配置空間70の略上縁付近まで充填されている。中間軸大径歯車65や後車軸大径歯車66はオイルに浸っていないので、オイル攪拌に伴う動力損失は低減される。
【0041】
図8は従来の歯車減速機19xの縦断面左面図である。歯車ケース60xの内部が示されている。減速歯車の配置は、前記実施形態と略同じである。前記実施形態の部材と対応する従来の部材の符号は、前記実施形態における対応部材の符号に「x」を付して示してある。従来の歯車減速機19xにおいては、前記実施形態において設けられていたオイルポンプ配置空間70やオイルポンプ67が設けられていない。図8の破線Bは従来の歯車減速機19xに潤滑オイルを注入したときのオイルレベルを示す線である。中間軸大径歯車65x及び後車軸大径歯車66xはオイルに浸っている。これらの歯車の回転に伴って跳ね掛けられるオイルによって各歯車の噛合い部の潤滑が行われる。このため、オイル攪拌に伴う動力損失の増加がある。また、図4と図8のオイル充填量を比較すると、従来の歯車減速機19xに比して前記実施形態の方が、格段に所要オイル量が少ないことが推定される。
【符号の説明】
【0042】
1…パワーユニット、14…後車軸、15…駆動輪、16…内燃機関、18…Vベルト自動変速機、19…歯車減速機、50R…変速機ケース右側部材、52…従動軸、60…歯車ケース、60R…歯車ケース右側部材、63…中間軸、67…オイルポンプ、72…ブレーキドラム、73…ブレーキドラム受けリブ、74…オイル吸入口、77…合わせ面、81…溝状オイル通路、82…歯車の噛合い部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(16)の側方にVベルト自動変速機(18)が設けられ、
該Vベルト自動変速機(18)の後方に駆動輪(15)が回転可能に支持されているパワーユニット(1)において、
前記Vベルト自動変速機(18)と駆動輪(15)との間に、Vベルト自動変速機(18)の従動軸(52)の回転を減速して駆動輪(15)へ伝達する歯車減速機(19)が、前記Vベルト自動変速機(18)の一側の変速機ケース部材(50R)を隔壁として、Vベルト自動変速機(18)と隔てて形成され、前記歯車減速機(19)を収容する歯車ケース(60)内に、その内部のオイルを前記歯車減速機(19)の歯車の噛合い部(82)に供給する潤滑用オイルポンプ(67)が設けられたことを特徴とするパワーユニット(1)。
【請求項2】
前記オイルポンプ(67)は、前記歯車ケース(60)内の最下部に配置されることを特徴とする請求項1に記載のパワーユニット(1)。
【請求項3】
前記オイルポンプ(67)から被潤滑部までのオイル通路(81)は、前記歯車ケース(60)を形成する左右一対の歯車ケース部材(50R)(60R)の合わせ面に溝状に設けられることを特徴とする請求項2に記載のパワーユニット。
【請求項4】
前記歯車減速機(19)の各歯車軸(63)(14)が、Vベルト自動変速機(18)の従動軸(52)に対して、同じ高さ又はそれより高い高さに配置されることを特徴とする請求項2乃至請求項3の何れかに記載のパワーユニット(1)。
【請求項5】
前記オイルポンプ(67)は、歯車ケース(60)内において、歯車ケース部材(60R)の駆動輪(15)の反対側壁面に取付けられ、側面視で、駆動輪(15)に設けられたブレーキドラム(72)の外周の一部に重なるように配置されることを特徴とする請求項3乃至請求項4の何れかに記載のパワーユニット(1)。
【請求項6】
前記歯車ケース(60)を構成する歯車ケース部材(50R)(60R)の底壁が下方に延出されてオイルポンプ配置空間が形成され、オイルポンプ(67)のオイル吸入口(74)は、該空間の下部に開口するよう設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載のパワーユニット(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−72470(P2013−72470A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210965(P2011−210965)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】