説明

パワー半導体モジュール

【課題】開発にかかる時間を短縮し、部品製作にかかるコストを低減できるパワー半導体モジュールを提供する。
【解決手段】パワー半導体モジュール200は、パワー半導体素子18を搭載した、銅板と絶縁板を有する絶縁基板16、前記パワー半導体素子18に接続したピン付プリント基板、前記銅板に接続した接続端子、および、前記絶縁基板16と前記ピン付プリント基板を内部に封入する樹脂封止材を少なくとも備えるパワー半導体ユニット28と、複数の前記パワー半導体ユニット28から突出した前記接続端子を電気的に接続するインターフェイス部材と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力用半導体モジュール(以下パワー半導体モジュールと称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置、無停電電源装置、工作機械および産業用ロボット等には、パワー半導体素子を搭載したパワー半導体モジュールが用いられている。
従来のパワー半導体モジュールについて以下に説明する。図11は、従来のパワー半導体モジュールの内部構造を示す要部断面図である。101は放熱用の金属ベース板、102は金属ベース板101の上に搭載してハンダ103で接合したセラミクス基板、104はセラミクス基板102にハンダ105を介しマウントしたパワー半導体素子(IGBTなどのパワーチップ)、106はセラミクス基板と金属ベース板101を収納する樹脂ケース、107は樹脂ケース106内に配置された電極端子である。パワー半導体素子104と電極端子107は、ボンディングワイヤ108で接合されている。樹脂ケース106の側面は、金属ベース板101とセラミクス基板102の上面とともに、パワー半導体素子104を取り囲む空間を形成し、内部に封止材109が充填されている。これにより、パワー半導体素子104、セラミクス基板102、金属ベース板101、電極端子107の相互間の絶縁性が確保されている。
【0003】
パワー半導体モジュール110は、金属ベース板101両端の2箇所または4箇所によるネジ111止めにて、冷却部材112に取付けられ放熱される。またこの場合に、金属ベース板101と冷却部材112の接触面間の空隙を埋めて伝熱性を確保するために、一般にシリコーン系の放熱グリス113を塗布している。また図示していないが、放熱グリス113の代わりに熱伝導シートを用いることもある。ネジ111止めによる力114は、樹脂ケース106内に収納されたリング115を介し金属ベース板101に伝えられる。
【0004】
なお、前記セラミクス基板102は、セラミクス板102aの表裏両面に銅箔102b,102cを貼り合せたDBC基板である。
また、特許文献1〜4には従来の他のパワー半導体モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−64852号公報
【特許文献2】特開2010−165764号公報
【特許文献3】特開平10−146066号公報
【特許文献4】特開2005−73373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のパワー半導体モジュールでは、次の課題があった。
通常、パワー半導体モジュールの電極端子の位置は、顧客(使用者)から指定され、そのニーズにより異なる場合が多い。その結果、既存のパワー半導体モジュールを流用しようとした場合、電気的な特性が満たせていても電極端子の位置が使用者の仕様に合わないため、モジュール全体を新規に設計する必要があった。その結果、その開発期間や部品製作(金型,治工具含む)に膨大なコストがかかっていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、パワー半導体モジュールをパワー半導体ユニットと、インターフェイス部材とで構成した。パワー半導体ユニットは基本機能要素をユニット化したものであり、インターフェイス部材は使用者から指定された位置に電極端子を配置したプリント基板またはバスバーなどのインターフェイス部材である。使用者の要求する電流容量に応じて複数のパワー半導体ユニットを組み合わせ、これらパワー半導体ユニットから突出した接続端子とインターフェイス部材を電気的に接続してパワー半導体モジュールとする。
【0008】
すなわち、本発明のパワー半導体モジュールは、パワー半導体素子を搭載した銅板と絶縁板を有する絶縁基板と、前記パワー半導体素子に接続したピン付プリント基板と、前記銅板に接続した接続端子と、前記絶縁基板と前記ピン付プリント基板を内部に封入する樹脂封止材とを少なくとも備えるパワー半導体ユニットと、さらに、複数の前記パワー半導体ユニットから突出した前記接続端子を電気的に接続するインターフェイス部材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記インターフェイス部材において、パワー半導体素子に電流を供給するアノード側(P側)配線と、半導体素子からの電流を流すカソード側(N側)配線を近接配置したことを特徴とする。
【0010】
また、前記インターフェイス部材において、信号配線用と電力供給配線用に分離したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、新規製品の設計において、主な設計要素がインターフェイス部材だけで良くなるため、開発にかかる時間が大幅に短縮され、また部品製作(金型,治工具含む)にかかるコストも低減された。
【0012】
また、パワー半導体素子に電流を供給するアノード側(P側)配線と半導体素子からの電流を流すカソード側(N側)配線を近接させ配置させることで、配線インダクタンスが相殺されスイッチィング時に生じるスパイクノイズが低減された。
【0013】
さらに、プリント基板を信号配線用と電力供給配線用に分離することで、配線幅を拡げることが可能となり、電流印加時のジュール熱が低減された。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の第1実施例のパワー半導体ユニットの要部断面図である。
【図2】この発明の第2実施例のパワー半導体ユニットの構成図であり、(a)は要部上平面図、(b)は要部断面図である。
【図3】この発明の第2実施例のパワー半導体モジュールの構成図であり、(a)は要部上平面図、(b)は要部断面図である。
【図4】この発明の第2実施例のインターフェイス部材の機能を説明する図である。
【図5】この発明の第2実施例のパワー半導体モジュールの主回路の構成図である。
【図6】この発明の第3実施例のインターフェイス部材の構成図であり、(a)は電力供給配線用基板の要部上平面図、(b)は電力供給配線用基板の要部側面図、(c)は信号配線用基板の要部上平面図、(d)は信号配線用基板の要部側面図、(e)電力供給配線用基板と信号配線用基板を組み合わせたインターフェイス部材の要部側面図である。
【図7】この発明の第4実施例のパワー半導体ユニットの構成図であり、(a)は要部上平面図、(b)は要部下平面図、(c)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図8】この発明の第4実施例のパワー半導体ユニットの斜視図である。
【図9】この発明の第5実施例のパワー半導体モジュールの構成図であり、(a)は要部上平面図、(b)は要部断面図である。
【図10】この発明の第6実施例のインターフェイス部材の構成図であり、(a)は電力供給配線用基板の要部上平面図、(b)は電力供給配線用基板の要部側面図、(c)は信号配線用基板の要部上平面図、(d)は信号配線用基板の要部側面図、(e)電力供給配線用基板と信号配線用基板を組み合わせたインターフェイス部材の要部側面図である。
【図11】従来のパワー半導体モジュールの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態を以下の実施例で説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、この発明の第1実施例のパワー半導体ユニットの要部断面図である。
図1に示すパワー半導体ユニット28aは、半導体素子1つ分の機能を有する1in1と呼ばれる構成を備えており、実施例2以下で説明するインターフェイス部材、すなわちユニット間配線用プリント基板27と結合して本発明のパワー半導体モジュールを構成する。
【0017】
絶縁板1と第1銅板2、第2銅板3からなる絶縁基板4の上面に、はんだ5によりパワー半導体素子6が接合され、さらにパワー半導体素子6の上面に、はんだ7により接続ピン8を有するプリント基板9が取付けられている。第1銅板2にはコレクタ側接続端子10が取付けられ、パワー半導体素子6裏面に電流を供給する。またプリント基板9には、パワー半導体素子6のON/OFFを制御するゲート用接続端子11とパワー半導体素子6表面からの電流を外部に流すエミッタ側接続端子12が取り付けられる。エミッタ側接続端子12はプリント基板9の回路パターンに接続されるとともに、第1銅板2にも固着されている。なお、図示していないが、パワー半導体素子6として、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)とFWD(フリーホイーリングダイオード)を組み合わせ、銅板2、接続ピン8およびプリント基板9上の図示しない回路パターンを介して逆並列接続するようにして用いてもよい。また、パワー半導体素子6としてはSiを用いた半導体素子のほか、SiC(炭化けい素)やGaN(窒化ガリウム)を用いた半導体素子を用いることができる。
【実施例2】
【0018】
図2は、この発明の第2実施例のパワー半導体ユニットの構成図であり、(a)は要部上平面図、(b)は要部断面図である。図3は、この発明の第2実施例のパワー半導体モジュールの構成図であり、(a)は要部上平面図、(b)は要部断面図である。図4は、この発明の第2実施例のインターフェイス部材の機能を説明する図である。さらに、図5は、この発明の第2実施例のパワー半導体モジュールの主回路の構成図である。
【0019】
図2を用い、2in1用パワー半導体ユニット28の構成について説明する(パワー半導体素子18を1組備えるユニットを「1in1」,2組備えるユニットを「2in1」と称する。)。第1実施例の1in1のパワー半導体ユニット28aと同様、絶縁板13、この絶縁板13の両面にそれぞれ固着された第1銅板14および第2銅板15からなる絶縁基板16と、第1銅板14の上面に、はんだ17により接合されたパワー半導体素子18とを備える。2in1用パワー半導体ユニット28は2組のパワー半導体素子18で構成される。第1実施例と同様にパワー半導体素子18として、逆並列接続したIGBTとFWDを用い、これを2組組み合わせて1相分の回路を構成するようにしてもよい。また、絶縁基板16はパワー半導体ユニット28の絶縁基板4と同じ形状のものを共通して用いることができる。パワー半導体素子18ごとに小さな面積の絶縁基板16を用いることで熱によるパワー半導体ユニット28の変形を小さくできる。
【0020】
パワー半導体素子18の上面に、接続ピン20を有するプリント基板21がはんだ19により取付けられ、このプリント基板21上の図示しない回路パターンにより2組のパワー半導体素子18が電気的に接続されている。接続ピン20は、パワー半導体素子18がIGBTであればそのエミッタ電極とゲート電極に、FWDであればアノード電極に接続される。接続ピン20はプリント基板21上の図示しない回路パターンに形成された穴にはんだを用いて、もしくは嵌合されて固着されている。
【0021】
23はパワー半導体素子18裏面に電流を供給するコレクタ側接続端子、22はパワー半導体素子18表面からの電流を外部に流すエミッタ側接続端子、24はコレクタ側配線とエミッタ側配線の中間にある出力電流を流す出力端子、25,26はパワー半導体素子18のON/OFFを制御するゲート用接続端子,エミッタ側電圧を検出するエミッタ信号用端子である。コレクタ側接続端子23は一のパワー半導体素子18、例えば上アームのIGBTが固着された第1銅板14に、出力端子24は他のパワー半導体素子18、例えば下アームのIGBTが固着された異なる第1銅板14に、エミッタ側接続端子22はさらに異なる第1銅板14に、それぞれ固着されている。
【0022】
パワー半導体ユニット28では、コレクタ側接続端子23、エミッタ側接続端子22および出力端子24がこの順に並列して突出するように配置されている。コレクタ側接続端子23とエミッタ側接続端子22の順番はプリント基板21の回路パターンの配置とともに入れ替わってもよい。出力端子24はコレクタ側接続端子23およびエミッタ側接続端子22に対しパワー半導体ユニット28の同じ面の外周側に配置され、突出している。なお、パワー半導体ユニット28のコレクタ側接続端子23、エミッタ側接続端子22、出力端子24がそれぞれ2本であるが、容量に応じ適宜変更してもよい。エミッタ側接続端子22はプリント基板21の回路パターンに接続されるとともに、第1銅板14にも固着されている。第1銅板14に接続することによりエミッタ側接続端子22で発生するジュール熱を冷却部材側へ放熱することができる。
【0023】
そして、パワー半導体ユニット28は絶縁基板16、プリント基板21およびパワー半導体素子18を内部に封入する封止材Rを備えている。パワー半導体ユニット28の形状は概略直方体状である。パワー半導体ユニット28は、以下で説明するインターフェイス部材と結合して本発明のパワー半導体モジュールを構成する。
【0024】
次に図3(a),(b)を用いて、インターフェイス部材、すなわちユニット間配線用プリント基板27と、これを用いた本発明のパワー半導体モジュールを説明する。このモジュールの回路は従来の半導体モジュール(6in1)に対応している。
【0025】
インターフェイス部材としてのユニット間配線用プリント基板27は、上述の2in1用パワー半導体ユニット28を3台接続するための配線を備えている。
29はパワー半導体素子に電流を供給する、第1導電板としてのアノード側(P側)配線、30は半導体素子からの電流を流す、第2導電板としてのカソード側(N側)配線であり、それぞれ2in1用パワー半導体ユニット28のコレクタ側接続端子31(23)とエミッタ側接続端子32(22)が接続されている。33,34は外部からの電力供給用接続端子であり、それぞれカソード側(N側)配線30とアノード側(P側)配線29に接続されている。
【0026】
35,36,37は、各2in1用パワー半導体ユニット28の出力端子24に接続され、アノード側(P側)配線とカソード側(N側)配線の中間にある出力電流を流す外部出力端子であり、複数の第3導電板としての各配線38,39,40で結ばれている。41は各2in1用パワー半導体ユニット28のパワー半導体素子をON/OFFするゲート信号用端子、42は出力電流の状態を検知するエミッタ信号端子であり、各配線43,44,45で結ばれている。
【0027】
次に図3(b)を用いて、アノード側(P側)配線29とカソード側(N側)配線30の配置関係について説明する。
ユニット間配線用プリント基板27は2層構造となっており、アノード側(P側)配線29は下面側、すなわちパワー半導体ユニット28側に配置されカソード側(N側)配線30は上面側に配置されており、樹脂層43を介して積層されている。このように、アノード側(P側)配線29とカソード側(N側)配線30が近接し対向するように積層され配置されているために、配線インダクタンスが相殺され、電流の脈動によるノイズ、もしくはスイッチング時に生じるスパイクノイズが低減される。
【0028】
図4を用いてこの作用を説明する。46は位置AからBに流れる電流経路、47は位置BからAに流れる電流経路である。46には電流が流れることにより電磁界48が発生する。また47には電流が流れることにより電磁界49が発生する。48と49の電磁界は向きが反対となるため、ほぼ同時期に電流が流れた場合、電磁界は互いに打ち消される。スイッチング時に生じるスパイクノイズは、この電磁界の影響によるものである。従って、電流経路が近接し電流の流れる向きが反対の場合は、スパイクノイズは低減される。
【0029】
パワー半導体モジュール200では、3つのパワー半導体ユニット28が、各パワー半導体ユニット28からそれぞれ突出したコレクタ側接続端子23、エミッタ側接続端子22および出力端子24が整列するように、配置されている。ユニット間配線用プリント基板27はこれらの端子に電気的に接続されており、コレクタ側接続端子23に接続されたアノード側(P側)配線29と、エミッタ側接続端子22に接続されたカソード側(N側)配線30と、出力端子24に接続された配線38、39、40と外部出力端子35、36、37とを備えている。アノード側(P側)配線29とカソード側(N側)配線30は樹脂層43を挟んで対向するように配置されており、例えば銅などの金属板である。アノード側(P側)配線29のエミッタ側接続端子22が貫く部分は、相互に接続しないよう切り欠かれている。また、カソード側(N側)配線30のコレクタ側接続端子23が貫く部分は、相互に接続しないよう切り欠かれている。配線38、39、40と外部出力端子35、36、37は、アノード側(P側)配線29とカソード側(N側)配線30の外側、ユニット間配線用プリント基板27の外周に沿って配置されている。
【0030】
パワー半導体モジュール200は、パワー半導体ユニット28のコレクタ側接続端子23、エミッタ側接続端子22および出力端子24と、ユニット間配線用プリント基板27のアノード側(P側)配線29、カソード側(N側)配線30および外部出力端子35、36、37とを上述のように配置したので、アノード側(P側)配線29とカソード側(N側)配線30の間のインダクタンスを低減でき、さらに、使用者のニーズに応じて外部出力端子35、36、37をパワー半導体モジュールの外周に沿って配置することができる。また、予め使用者の異なるニーズに対応できるパターンの配線38,39,40を形成しておき、ニーズに応じて外部出力端子35、36、37を配置、固着してもよい。
【0031】
なお、本実施例においてはユニット間配線用プリント基板27を用いたパワー半導体モジュールについて説明したが、3つのパワー半導体ユニット28をインターフェイス部材としての金属バスバーを用いて接続しパワー半導体モジュールを構成してもよい。
【0032】
パワー半導体モジュール200は、3つのパワー半導体ユニット28とユニット間配線用プリント基板27により図5に示したインバータ回路を構成している。パワー半導体モジュールは、さらに、パワー半導体ユニット28もしくはユニット間配線用プリント基板27に駆動回路、過電流保護回路等のICを備えるようにしてもよい。また、コンバータ回路を含むようにしてもよい。
【0033】
パワー半導体モジュール200は、例えば従来のパワー半導体モジュール110が固定される冷却部材112に、同じようにネジ等で固定されて使用される。第2銅板15が直接、もしくはグリスを介して冷却部材112と接触することによりパワー半導体モジュール200で発生する熱が放熱される。
【実施例3】
【0034】
図6は、この発明の第3実施例のインターフェイス部材の構成図であり、(a)は電力供給配線用基板の要部上平面図、(b)は電力供給配線用基板の要部側面図、(c)は信号配線用基板の要部上平面図、(d)は信号配線用基板の要部側面図、(e)電力供給配線用基板と信号配線用基板を組み合わせたインターフェイス部材の要部側面図である。
【0035】
電力供給配線用プリント基板Pは、樹脂層43を挟んで対向するように配置されたアノード側(P側)配線29およびカソード側(N側)配線30と、これらに接続された電力供給用接続端子33,34を備えている。信号配線用プリント基板Sは、樹脂層43上に配線38、39、40、43、44、45、外部出力端子35、36、37、ゲート信号用端子41、エミッタ信号端子42を備えている。
【0036】
電力供給配線用プリント基板Pと信号配線用プリント基板Sはスペーサ50を介して組み合わされインターフェイス部材を構成する(図6(e)参照)。
インターフェイス部材を信号配線用と電力供給配線用に分離することにより、各配線幅を拡げることができる。第2実施例のユニット間配線用プリント基板27に比べて、電力供給配線用プリント基板Pは、信号配線にて使用していたスペースまで配線幅を拡げることができるので電気抵抗が低くなり、電流が流れる際のジュール熱を低減できる。
【実施例4】
【0037】
図7は、この発明の第4実施例のパワー半導体ユニットの構成図であり、(a)は要部上平面図、(b)は要部下平面図、(c)は(a)のA−A矢視断面図である。図8は、この発明の第4実施例のパワー半導体ユニットの斜視図である。
【0038】
図7、8に示すパワー半導体ユニット28bは第2実施例のパワー半導体ユニット28の変形例である。図2(b)に示したようにパワー半導体ユニット28のゲート用接続端子25、エミッタ信号用端子26は、その端部がプリント基板21に固着されているのに対し、パワー半導体ユニット28bのゲート用接続端子25、エミッタ信号用端子26は、図7に示すようにプリント基板21の回路パターンに固着されるとともに、その端部が絶縁板13上の第1銅板14にも固着されている。ゲート用接続端子25、エミッタ信号用端子26に接続している第1銅板14は端子ごとに分割して形成されており、これに対する第2銅板15も分割して形成されている。ゲート用接続端子25、エミッタ信号用端子26を第1銅板14に接続することにより、パワー半導体ユニット内で発生した熱をこれらの端子を介して冷却部材へ放熱することができる。また、ゲート用接続端子25およびエミッタ信号用端子26が固着している第1銅板14と、これらと同じ形状の第2銅板15とを、絶縁板13を挟んで形成することにより、第2銅板15を一体として形成する場合に比べて絶縁基板16の熱変形を小さくすることができる。
【0039】
なお、パワー半導体ユニット28bの四隅に形成されたネジ穴54aはインターフェイス部材との結合に用いられ、中央に形成されたネジ穴54bは冷却部材との結合に用いられる。
【実施例5】
【0040】
図9は、この発明の第5実施例のパワー半導体モジュールの構成図であり、(a)は要部上平面図、(b)は要部断面図である。
図9に示すパワー半導体モジュール200aは第2実施例のパワー半導体モジュール200の変形例である。パワー半導体モジュール200aは、インターフェイス部材の配線43〜45上に駆動回路51を、配線38〜40上にGMR(巨大磁気抵抗)素子52をそれぞれ備えている。ユニット間配線用プリント基板27に駆動回路51とGMR素子52を搭載する構造により、パワー半導体ユニット28を変更することなく顧客の仕様に応じたパワー半導体モジュール200aを提供することができる。また、GMR素子52を配線38〜40上に搭載することにより、配線38〜40に流れる電流値を測定することができる。GMR素子52は従来同じ目的で用いられているシャント抵抗に比べ小さいので、パワー半導体モジュール200aが小型となる。また、図示していないが、GMR素子をプリント基板21に搭載することによりパワー半導体素子18近傍の温度を測定し、パワー半導体モジュール200aの保護手段として用いることもできる。なお、駆動回路51には保護回路を搭載してもよい。
【実施例6】
【0041】
図10は、この発明の第6実施例のインターフェイス部材の構成図であり、(a)は電力供給配線用基板の要部上平面図、(b)は電力供給配線用基板の要部側面図、(c)は信号配線用基板の要部上平面図、(d)は信号配線用基板の要部側面図、(e)電力供給配線用基板と信号配線用基板を組み合わせたインターフェイス部材の要部側面図である。
【0042】
図10に示すインターフェイス部材は、第3実施例のインターフェイス部材の変形例であり、パワー半導体ユニット28と組み合わせてパワー半導体モジュールを構成する。インターフェイス部材は電力供給配線用基板Pと信号配線用基板Sを備え、信号配線用基板Sの配線43〜45上に駆動回路51を、配線38〜40上にGMR素子52をそれぞれ備えている。このような構成により、アノード側配線29とカソード側配線30の幅を拡げて電気抵抗を小さくしジュール熱を低減でき、パワー半導体ユニット28を変更することなく顧客の仕様に応じたパワー半導体モジュール200aを提供することができる。
【符号の説明】
【0043】
1、13 絶縁板
2、14 第1銅板
3、15 第2銅板
4、16 絶縁基板
5、7、17、19 はんだ
6、18 パワー半導体素子
8、20 接続ピン
9、21 プリント基板
10、23、31 コレクタ側接続端子
11、25 ゲート用接続端子
12、22、32 エミッタ側接続端子
24 出力端子
26 エミッタ信号用端子
27 ユニット間配線用プリント基板
28、28a、28b パワー半導体ユニット
29 アノード側(P側)配線
30 カソード側(N側)配線
33,34 電力供給用接続端子
35、36、37 外部出力端子
38、39、40、43、44、45 配線
41 ゲート信号用端子
42 エミッタ信号端子
46、47 電流経路
48、49 電磁界
200、200a パワー半導体モジュール
R 封止材
P 電力供給配線用プリント基板
S 信号配線用プリント基板
51 駆動回路
52 GMR素子
53 樹脂層
54a,54b ネジ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体素子を搭載した銅板と絶縁板を有する絶縁基板と、前記パワー半導体素子に接続したピン付プリント基板と、前記銅板に接続した接続端子と、前記絶縁基板と前記ピン付プリント基板を内部に封入する樹脂封止材とを少なくとも備えるパワー半導体ユニットと、
複数の前記パワー半導体ユニットから突出した前記接続端子を電気的に接続するインターフェイス部材と、
を備えるパワー半導体モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のパワー半導体モジュールにおいて、前記インターフェイス部材が、前記パワー半導体ユニットに電流を供給するアノード側(P側)配線と、これに近接配置され、前記パワー半導体ユニットからの電流を流すカソード側(N側)配線とを、少なくとも備えることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載のパワー半導体モジュールにおいて、前記インターフェイス部材が、プリント基板を用いて構成されていることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載のパワー半導体モジュールにおいて、前記インターフェイス部材が、信号配線用プリント基板と電力供給配線用プリント基板からなることを特徴とするパワー半導体モジュール。
【請求項5】
請求項1に記載のパワー半導体モジュールにおいて、前記インターフェイス部材が、バスバーを用いて構成されていることを特徴とするパワー半導体モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−119618(P2012−119618A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270367(P2010−270367)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】