パンチ型
【課題】パンチ型でフレキシブルプリント配線板などのフィルム状シートを打ち抜く際に、フィルム状シートにバリが発生することを抑制する。
【解決手段】フレキシブルプリント配線板などのフィルム状シート12の打ち抜き加工に用いられるパンチ型10であって、該パンチ型10の下面11には複数の凹陥部17が該パンチ型10の下面形状に沿って線状に並んで形成されている。そして、打ち抜き時にプリント配線板12にクラックを発生させるクラック発生起点部位18と、下面11のクラック発生起点部位18間における凹陥部17周縁部の剛性強度を高める高剛性部位19とが凹陥部17の配列方向に沿って交互に設けられている。依って、パンチ型10でフレキシブルプリント配線板などのフィルム状シート12を打ち抜く際に、個々のクラック発生起点部位18に剪断カが集中してクラックがスムーズに発生・進展する。
【解決手段】フレキシブルプリント配線板などのフィルム状シート12の打ち抜き加工に用いられるパンチ型10であって、該パンチ型10の下面11には複数の凹陥部17が該パンチ型10の下面形状に沿って線状に並んで形成されている。そして、打ち抜き時にプリント配線板12にクラックを発生させるクラック発生起点部位18と、下面11のクラック発生起点部位18間における凹陥部17周縁部の剛性強度を高める高剛性部位19とが凹陥部17の配列方向に沿って交互に設けられている。依って、パンチ型10でフレキシブルプリント配線板などのフィルム状シート12を打ち抜く際に、個々のクラック発生起点部位18に剪断カが集中してクラックがスムーズに発生・進展する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルム状シートの打ち抜き加工に用いられるパンチ型に関するものであり、特に、フレキシブルプリント配線板の製品形状を打ち抜き加工(方法)する際に用いられるパンチ型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器に使用されるフレキシブルプリント配線板は、フィルム状シートとして複数個の製品が面付けされて形成され、フレキシブルプリント配線板を所定の製品形状に加工する場合には、パンチ型による打ち抜き加工が採択されている。特に、フレキシブルプリント配線板は、電子機器内の可動する部分を接続するケーブルとして用いられることが多く、直線の辺を有する形状の製品となることが多い。従って、このフレキシブルプリント配線板の製品形状を打ち抜き加工する場合は、平面視で長方形または長方形を含む形状を打ち抜くパンチ型が用いられる。
【0003】
図9は、フレキシブルプリント配線板1を打ち抜くときの加工状態を示す。同図において、フレキシブルプリント配線板1はダイス型2上に裁置固定され、該ダイス型2の真上にはパンチ型3が配設されている。そして、パンチ型3をダイス型2側に下降させると、フレキシブルプリント配線板1が打ち抜かれて、図10に例示するように、コ字形等に打ち抜かれた所定形状の加工製品4が得られる。尚、図中の斜線分は打ち披かれた部分を示す(例えば、特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開平9−150399号公報
【特許文献2】実開昭50−91891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術によれば、パンチ型3でフレキシブルプリント配線板1を打ち抜いた際に、次の理由によりフレキシブルプリント配線板1の切断端縁部にバリが発生する。即ち、パンチ型3とダイス型2との間にはクリアランスEがあり、パンチ型3がダイス型2側に下降すると、該ダイス型2上のフレキシブルプリント配線板1にパンチ型3の下面が接触し、該パンチ型3が更に下降することにより、パンチ型3の下面がフレキシブルプリント配線板1に押し込まれて食い込みを開始して、図11(a)に示すように、フレキシブルプリント配線板1の食い込み箇所にダレDが形成される。
【0005】
そして、パンチ型3の剪断荷重が次第に増加してフレキシブルプリント配線板1の食い込み箇所に剪断面を形成し、図11(b)に示すように、フレキシブルプリント配線板1の上下両側から亀裂状切断起点C,Cが発生して進展する(以下、剪断により生じる亀裂状切断を「クラック」と称する)。然る後、図11(c)に示すように、フレキシブルプリント配線榎1の上下両側のクラックC,C同士が互いに貫通して剪断作用が完了し、これと同時にフレキシブルプリント配線板1に破断面が形成される。
【0006】
上記打ち抜き加工の過程において、フレキシブルプリント配線板1にはその上下両側、即ち、パンチ型3側とダイス型2側とからクラックC−Cが進展するが、パンチ型3とダイス型2との間にはクリアランスEがあるため、上下両側のクラックC,Cの位置が互いに一致しない場合がある。このとき、図12(a)及び(b)に示すように、パンチ型3で打ち抜いたフレキシブルプリント配線板1の切断端縁部(孔部周縁部を含む)5にバリ(糸状バリを含む)6,6・・・が発生する。
【0007】
フレキシブルプリント配線板1におけるバリ6,6…とは、回路金属層を有する部分では回路金属の導電物質であり、回路金属層がない部分では絶縁ベースフィルムやカバーフィルムなどの絶縁物質である。これらが発生すると、部品実装時や電子機器に組み込まれるときにバリ6,6…が脱落し、回路の短絡や導通不良を引き起こすことになる。従って、フレキシブルプリント配線板1の品質低下を招くことになり、バリ6,6…が発生する都度、パンチ型3の補修または交換が必要となる。
【0008】
その結果、打ち抜き加工工程における生産性が低下するという問題があった。特に、補強板を貼り合わせたフレキシブルプリント配線板など、厚い材料を打ち抜く場合、クリアランスEを大きくしないとパンチ型寿命が低下するため、クリアランスEを大きく設定する必要がある。クリアランスEを大きくすると、その分上下両側のクラックC,Cの位置が離間するため、よりバリ6,6…が発生しやすくなる。
【0009】
本発明者等は、特許文献2記載のパンチ型におけるバリ発生のメカニズムに関して、鋭意研究の結果、次のような新たな知見を得た。即ち、パンチ型がフレキシブルプリント配線板に食い込んでダイス型に突入すると、パンチ型とダイス型の双方が衝撃的に加圧圧縮され、該衝撃的な加圧圧縮エネルギに比例してフレキシブルプリント配線板が弾性的に変形しながら、フレキシブルプリント配線板におけるパンチ型の食い込み箇所にクラックが生ずる。このクラックが発生する箇所が、フレキシブルプリント配線板の撓みや厚みの違いの偏在などの要因で、パンチ型の食い込み箇所の不特定位置に時間差をおいて生じ、このクラックがパンチ型に沿って進行し、他のクラック発生箇所から進行してきたクラックと合わさって切断される。しかし、他のクラック発生箇所から進行してきたクラックと進行方向がずれると切断端縁部にバリが発生する。この傾向は、直線の辺を有する形状の製品形状を打ち抜き加工する場合に著しく生じる。
【0010】
又、図13に示す刃先の押抜角度が鋭角のパンチ型7を用いてフレキシブルプリント配線板を打ち抜く際には、パンチ型7の先端部8に部分的な変形が生ずる。これはパンチ型7の先端部8の剛性が小さいことに因る。その結果、打ち抜き加工時にパンチ型7の先端部8の部分的な変形に対応して、パンチ型7とフレキシブルプリント配線板との間に生ずるクリアランスが大きくなり、該クリアランスの大きさに応じてフレキシブルプリント配線板の切断端緑部にバリが発生し易くなる。
【0011】
そこで、パンチ型でフレキシブルプリント配線板などのフィルム状シートを打ち抜く際に、フィルム状シートの切断端線部にバリが発生することを抑制するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、フィルム状シートの打ち抜き加工に用いられるパンチ型において、該パンチ型の下面には複数の凹陥部が該パンチ型の下面形状に沿って線状に並んで形成され、打ち抜き時に前記フィルム状シートに切断を発生させる切断発生起点部位と、前記凹陥部周縁部の剛性強度を高める高剛性部位とが前記凹陥部の配列方向に沿って交互に1列以上設けられていることを特徴とするパンチ型を提供する。
【0013】
この構成によれば、パンチ型の下面形状に沿って複数の凹陥部を直線状に連続して設けることにより、クラック発生起点部位と高剛性部位とが交互に1列以上形成されるので、パンチ型でフレキシブルプリント配線板を打ち抜く際に、個々のクラック発生起点部位を特定して剪断力を集中させてクラックがスムーズに発生する。この場合、クラック発生起点部位同士間の下端部には高剛性部位が形成されているので、パンチ型の下面における凹陥部周縁部の剛性が増大して変形する恐れがない。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のパンチ型において、前記凹陥部は、平面視で、円形、楕円形、三角形以上の多角形のいずれかの形状であることを特徴とするパンチ型を提供する。
【0015】
この構成によれば、前記凹陥部は、平面視で、円形、楕円形、三角形以上の多角形のいずれかの形状であるので、クラック発生起点部位と高剛性部位とが交互に1列以上形成することが可能になる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のパンチ型において、前記パンチ型は、平面視で長方形または長方形を含む形状を打ち抜くパンチ型であって、前記複数の凹陥部は前記長方形を形作る部位に設けられることを特徴とするパンチ型を提供する。
【0017】
この構成によれば、特に切断端縁部にバリが発生しやすい傾向にある、直線の辺を有する形状の製品形状を打ち抜き加工する場合において、フレキシブルプリント配線板などのフィルム状シートを打ち抜く際の切断端線部にバリが発生することを抑制することが可能になる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のパンチ型において、前記パンチ型は、平面視で長方形または長方形を含む形状であって、打ち抜き形状の各角部には面取りが施されている形状を打ち抜くパンチ型であることを特徴とするパンチ型を提供する。
【0019】
この構成によれば、特に切断端縁部にバリが発生しやすい傾向にある、直線の辺を有する形状の製品形状を打ち抜き加工する場合において、フレキシブルプリント配線板などのフィルム状シートを打ち抜く際の切断端線部にバリが発生することを抑制することが可能になるとともに、打ち抜き形状の各角部が90°以下の鋭角である場合には、その角部から亀裂が生じる恐れがあり、面取りを施している形状とすることによりこの亀裂を防止することが可能になる。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし請求項4の何れかに記載のパンチ型において、前記フィルム状シートが、フレキシブルプリント配線板を打ち抜くパンチ型を提供する。
【0021】
この構成によれば、特に切断端縁部にバリが発生すると品質を著しく阻害するフレキシブルプリント配線板へのバリ発生を抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本件発明は、パンチ型でフレキシブルプリント配線板などのフィルム状シートを打ち抜くと、複数のクラック発生起点部位を特定して剪断力を集中させてクラックがスムーズに発生し、且つ、クラック発生起点部位同士間の下端部は高剛性部位により変形する恐れがない。斯くして、従来例のようにフレキシブルプリント配線板との間に大きなクリアランスが生ぜず、バリの発生を効率良く抑制することができ、以て、パンチ型の補修または交換の頻度を減少させることが可能となり、打ち抜き加工の生産性が向上して工期短縮が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、パンチ型でフレキシブルプリント配線板などのフィルム状シートを打ち抜く際に、フィルム状シートにバリが発生することを抑制するという目的を達成するために、フィルム状シートの打ち抜き加工に用いられるパンチ型において、該パンチ型の下面には複数の凹陥部が該パンチ型の下面形状に沿って線状に並んで形成され、打ち抜き時に前記フィルム状シートに切断を発生させる切断発生起点部位と、前記凹陥部周縁部の剛性強度を高める高剛性部位とが前記凹陥部の配列方向に沿って交互に1列以上交互に設けられていることにより実現した。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図8に従って説明する。尚、本実施例では、フレキシブルプリント配線板を打ち抜くコ字型に形成されたパンチ型について説明するが、パンチ型の形状は平面視で長方形または長方形を含む形状であれば特に限定されものではなく、設計事項や加工条件に応じてコ字型以外の形状、例えば、口型、L型、I型等の形状であってもよい。
【0025】
図1において、符号9は、被加工品としてのフレキシブルプリント配線板12が裁置固定されるダイス型であり、該ダイス型9の上方にパンチ型10が昇降駆動可能に配設されている。ダイス型9上のフレキシブルプリント配線板12は、前記パンチ型10を下降させることにより所定の製品形状に打ち抜かれる。
【0026】
図2はパンチ型10の下面(以下、「打ち抜き面」という。)11の形状を示す。同図に示すように、パンチ型10の打ち抜き面11はコ字型に形成され、左右方向に延びる横抜き面部14と該横抜き面部14の左右両端部に直角に連設された縦抜き面部15,15とから成る。図示例では、横抜き面部14の幅寸法は縦抜き面部15,15の幅寸法よりも細幅に設定されているが、縦抜き面部15,15の幅寸法よりも広幅又は同幅に設定してもよい。尚、符号13、13は、縦抜き面部15,15の外側部に設けられた位置合わせターゲット用小突起である。
【0027】
図3は、パンチ型10の打ち披き面11を示す要部拡大図である。同図に示すように、該打ち抜き面11には丸型の凹陥部17,17…が複数個連続して形成され、該凹陥部17,17…は打ち抜き面11の打ち抜き面11の長手方向(同図の左右方向)に直線状に1列に並ぶように配列されている。又、凹陥部17,17…の内面形状は略半球状若しくはドーム状の湾曲面を有している。
【0028】
図3に示すように、パンチ型10の打ち抜き面11には複数のクラック発生起点部位18,18…及び高剛性部位19,19…が形成され、該クラック発生起点部位18,18…及び高剛性部位19,19…は、前記凹陥部17,17…の配列方向(同図の左右方向)に沿って交互に並んでいる。前記クラック発生起点部位18,18…は、各凹陥部17,17…における打ち抜き面11の幅方向(同図の上下方向)両側にて互いに対峙するように配設され、パンチ型10でフレキシブルプリント配線板12を所定の製品形状F(図6参照)に打ち抜く際に、該フレキシブルプリント配線板12の食い込み箇所にクラックを発生させる。
【0029】
更に、該凹陥部17,17…の開口面の形状は円形であり、該凹陥部17,17…はパンチ型10の打ち披き面11の辺縁に近接するように設定されている。尚、凹陥部17,17…の開口面の形状は、図4に示すように、(a)楕円形、(b)三角形、(c)四角形、(d)六角形に形成してもよい。また、(e)円形を2列、(f)三角形を2列に配列してもよい。さらに、クラック発生起点部位18,18…が等間隔で配置することができれば、これらの形状を数種類組み合わせることも可能である。
【0030】
また、製品形状が曲線を含むものであり、パンチ型がカーブを描く形状を含む場合、剪断応力はパンチ型のカーブに沿って強く働く傾向があり、比較的バリの発生は少ない。従って、図5に示すように、長方形部とアーチ状曲線部を含む形状を打ち抜くパンチ型であれば、長方形部のみに、該凹陥部17,17…を配列すればよい。
【0031】
図2に示すパンチ型10の構成例では、凹陥部17,17…の個数は合計20個以上であり、例えば、横抜き面部14に14個乃至16個、縦抜き面部15,15に3個乃至5個穿孔されているが、凹陥部17,17…の個数や径寸法は、は設計事項や被加工品としてのフィルム材料に応じて凹陥部17,17…間の最適ピッチとする様適宜決定される。
【0032】
又、凹陥部17,17…間の複数のピッチは互いに同等となるように設定することが好ましい。本実施例では、横抜き面部14の凹陥部17,17…の径寸法は、縦抜き面部15,15の凹陥部17,17…の径寸法よりも小径に設定されているが、横抜き面部14の凹陥部17,17…は、パンチ型10の形状寸法や加工条件等により、縦抜き面部15,15の凹陥部17,17…に対して同径又は大径に設定することもできる。
【0033】
図3において、クラック発生起点部位18,18…は左右方向中央部に最狭部を有し、該最狭部の上下幅は0.1ミリ以下、例えば0.1ミリ乃至0.05ミリに設定することが好ましい。この範囲に最狭部の上下幅を設定すると、打ち抜くフィルム状シートがフレキシブルプリント配線板の場合には、クラックを効率良く発生して加工品質がアップする。
【0034】
又、前記高剛性部位19,19…は、左右隣り合うクラック発生起点部位18,18…同士間の部分、即ち、図3において、左右隣接する凹陥部17,17…の2つの円弧部と打ち抜き面11の上下幅方向両側端部との間に形成され、本実施例における円形の凹陥部17,17…を配列した場合では、上下一対のラッパ形状に近似する形状を有している。そのため、該高剛性部位19,19…は所定値以上の面積を確保できるように構成されている。従って、高剛性部位19,19…により個々の凹陥部17,17…の左右両側部の剛性強度がアップしているため、打ち抜き面11全体の剛性強度が所要値以上に増大している。
【0035】
本実施例のパンチ型10を用いて、図6に示すフレキシブルプリント配線板12を打ち抜くと、複数のクラック発生起点部位18,18…にそれぞれ剪断力が集中してクラックが発生し、凹陥部17,17…の配列方向(図3の左右方向)、にクラックがスムーズに進行する。このとき、パンチ型10の打ち抜き面11は所要の剛性強度を有するため、クラック発生起点部位18,18…同士間には、従来例の如きバリ発生の要因となる弾性変形を惹起させる恐れはない。
【0036】
このように本実施例のパンチ型10は、個々のクラック発生起点部位18,18…を特定し、発生したクラックが凹陥部17,17…の配列方向にクラックがスムーズに進行すること、並び、クラック発生起点部位18,18・‥同士間にバリ発生の要因となる弾性変形が生じ難いこととの相乗作用により、バリの発生を効率良く抑制することができる。図7(a)及び(b)は、本発明のパンチ型10で打ち抜いたフレキシブルプリント配線板12を示し、該フレキシブルプリント配線板12の切断端縁部(孔部周縁部を含む)20にはバリは殆ど発生しなかった。
【0037】
又、本実施例のパンチ型10と上記従来例のパンチ型を用いて、多数のフレキシブルプリント配線板を連続的に打ち抜いて、パンチ型を修理する必要になるまでの打ち抜き回数(パンチ回数)、即ち、打ち抜いたフレキシブルプリント配線板の枚数を調べた。その結果、図8に示すように、従来例のパンチ型の打ち抜き回数は971回であったのに対して、本実施例のパンチ型10の打ち抜き回数は11,146回に増加し、従来例に比べて1,147%もアップした。このことから、本実施例のパンチ型10は高い剛性強度を有するために、従来例に比べて打ち抜き加工における耐久性ないし寿命性が大幅に向上することが判明した。
【0038】
叙上の如く本発明によると、パンチ型10の打ち抜き面11に凹陥部17,17…を直線状に連続的に設けることにより、複数のクラック発生起点部位18,18…と高剛性部位19,19…とを打ち抜き面11の形状に沿って交互に形成される。依って、パンチ型10でフレキシブルプリント配線板を打ち抜く際に、各々のクラック発生起点部位18,18…に剪断力が集中してクラックがスムーズに発生する。
【0039】
この場合、高剛性部位19,19…により打ち抜き面11のクラック発生起点部位18,18…同士間の下端部の剛性が増大しているので、クラック発生起点部位18,18…同士間の下端部が従来例のように弾性変形する恐れがない。斯くして、打ち抜き加工中に、パンチ型10の打ち抜き面11とフレキシブルプリント配線板との間にクリアランスが生じ難いので、フレキシブルプリント配線板の切断端縁部にバリが発生することを効果的に抑制でき、以て、打ち抜き加工の生産性が向上して加工工期を大幅に短縮させることができる。
【0040】
本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る一実施例を示し、パンチ型による打ち抜き加工時の断面図。
【図2】本発明に係る一実施例を示し、パンチ型の打ち抜き加工面の斜視図。
【図3】一実施例に係るパンチ型の凹陥部を拡大して説明する詳細図。
【図4】(a)乃至(f)は夫々パンチ型の凹陥部の他の実施例を示す平面図。
【図5】パンチ型の凹陥部の配列の例を示す平面図。
【図6】一実施例に係るフレキシブルプリント配線板の打ち抜き形状の一例を説明する平面図。
【図7】一実施例のパンチ型で打ち抜いたフレキシブルプリント配線板の要部を示し、(a)はフレキシブルプリント配線板の切断端綾部の説明図、(b)はフレキシブルプリント配線板の孔部周縁部(切断端縁部)の説明図。
【図8】本発明及び従来例のパンチ型の打ち抜き回数を測定した結果を示すグラフ。
【図9】従来例を示し、パンチ型による打ち抜き加工時の断面図。
【図10】フレキシブルプリント配線板の打ち抜き形状の一例を説明する平面図。
【図11】従来例におけるバリ発生のメカニズムを解説する図であり、(a)はフレキシブルプリント配線板にパンチ型が食い込んだ時の説明図、(b)はフレキシブルプリント配線板にクラックが進展する時の説明図、(c)はフレキシブルプリント配線板に破断面が形成された時の説明図。
【図12】従来例のパンチ型で打ち抜いたフレキシブルプリント配線板の要部を示し、(a)はフレキシブルプリント配線板の切断端縁部の説明図、(b)はフレキシブルプリント配線板の孔部周縁部(切断端緑部)の説明図。
【図13】従来例に係る刃先の押抜角度が鋭角のパンチ型の要部を示す斜視図。
【符号の説明】
【0042】
10 パンチ型
11 打ち抜き面
12 フレキシブルプリント配線板(フィルム状シート)
14 横抜き面部
15 縦抜き面郭
17 凹陥部
18 クラック発生起点部位
19 高剛性部位
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルム状シートの打ち抜き加工に用いられるパンチ型に関するものであり、特に、フレキシブルプリント配線板の製品形状を打ち抜き加工(方法)する際に用いられるパンチ型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器に使用されるフレキシブルプリント配線板は、フィルム状シートとして複数個の製品が面付けされて形成され、フレキシブルプリント配線板を所定の製品形状に加工する場合には、パンチ型による打ち抜き加工が採択されている。特に、フレキシブルプリント配線板は、電子機器内の可動する部分を接続するケーブルとして用いられることが多く、直線の辺を有する形状の製品となることが多い。従って、このフレキシブルプリント配線板の製品形状を打ち抜き加工する場合は、平面視で長方形または長方形を含む形状を打ち抜くパンチ型が用いられる。
【0003】
図9は、フレキシブルプリント配線板1を打ち抜くときの加工状態を示す。同図において、フレキシブルプリント配線板1はダイス型2上に裁置固定され、該ダイス型2の真上にはパンチ型3が配設されている。そして、パンチ型3をダイス型2側に下降させると、フレキシブルプリント配線板1が打ち抜かれて、図10に例示するように、コ字形等に打ち抜かれた所定形状の加工製品4が得られる。尚、図中の斜線分は打ち披かれた部分を示す(例えば、特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開平9−150399号公報
【特許文献2】実開昭50−91891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術によれば、パンチ型3でフレキシブルプリント配線板1を打ち抜いた際に、次の理由によりフレキシブルプリント配線板1の切断端縁部にバリが発生する。即ち、パンチ型3とダイス型2との間にはクリアランスEがあり、パンチ型3がダイス型2側に下降すると、該ダイス型2上のフレキシブルプリント配線板1にパンチ型3の下面が接触し、該パンチ型3が更に下降することにより、パンチ型3の下面がフレキシブルプリント配線板1に押し込まれて食い込みを開始して、図11(a)に示すように、フレキシブルプリント配線板1の食い込み箇所にダレDが形成される。
【0005】
そして、パンチ型3の剪断荷重が次第に増加してフレキシブルプリント配線板1の食い込み箇所に剪断面を形成し、図11(b)に示すように、フレキシブルプリント配線板1の上下両側から亀裂状切断起点C,Cが発生して進展する(以下、剪断により生じる亀裂状切断を「クラック」と称する)。然る後、図11(c)に示すように、フレキシブルプリント配線榎1の上下両側のクラックC,C同士が互いに貫通して剪断作用が完了し、これと同時にフレキシブルプリント配線板1に破断面が形成される。
【0006】
上記打ち抜き加工の過程において、フレキシブルプリント配線板1にはその上下両側、即ち、パンチ型3側とダイス型2側とからクラックC−Cが進展するが、パンチ型3とダイス型2との間にはクリアランスEがあるため、上下両側のクラックC,Cの位置が互いに一致しない場合がある。このとき、図12(a)及び(b)に示すように、パンチ型3で打ち抜いたフレキシブルプリント配線板1の切断端縁部(孔部周縁部を含む)5にバリ(糸状バリを含む)6,6・・・が発生する。
【0007】
フレキシブルプリント配線板1におけるバリ6,6…とは、回路金属層を有する部分では回路金属の導電物質であり、回路金属層がない部分では絶縁ベースフィルムやカバーフィルムなどの絶縁物質である。これらが発生すると、部品実装時や電子機器に組み込まれるときにバリ6,6…が脱落し、回路の短絡や導通不良を引き起こすことになる。従って、フレキシブルプリント配線板1の品質低下を招くことになり、バリ6,6…が発生する都度、パンチ型3の補修または交換が必要となる。
【0008】
その結果、打ち抜き加工工程における生産性が低下するという問題があった。特に、補強板を貼り合わせたフレキシブルプリント配線板など、厚い材料を打ち抜く場合、クリアランスEを大きくしないとパンチ型寿命が低下するため、クリアランスEを大きく設定する必要がある。クリアランスEを大きくすると、その分上下両側のクラックC,Cの位置が離間するため、よりバリ6,6…が発生しやすくなる。
【0009】
本発明者等は、特許文献2記載のパンチ型におけるバリ発生のメカニズムに関して、鋭意研究の結果、次のような新たな知見を得た。即ち、パンチ型がフレキシブルプリント配線板に食い込んでダイス型に突入すると、パンチ型とダイス型の双方が衝撃的に加圧圧縮され、該衝撃的な加圧圧縮エネルギに比例してフレキシブルプリント配線板が弾性的に変形しながら、フレキシブルプリント配線板におけるパンチ型の食い込み箇所にクラックが生ずる。このクラックが発生する箇所が、フレキシブルプリント配線板の撓みや厚みの違いの偏在などの要因で、パンチ型の食い込み箇所の不特定位置に時間差をおいて生じ、このクラックがパンチ型に沿って進行し、他のクラック発生箇所から進行してきたクラックと合わさって切断される。しかし、他のクラック発生箇所から進行してきたクラックと進行方向がずれると切断端縁部にバリが発生する。この傾向は、直線の辺を有する形状の製品形状を打ち抜き加工する場合に著しく生じる。
【0010】
又、図13に示す刃先の押抜角度が鋭角のパンチ型7を用いてフレキシブルプリント配線板を打ち抜く際には、パンチ型7の先端部8に部分的な変形が生ずる。これはパンチ型7の先端部8の剛性が小さいことに因る。その結果、打ち抜き加工時にパンチ型7の先端部8の部分的な変形に対応して、パンチ型7とフレキシブルプリント配線板との間に生ずるクリアランスが大きくなり、該クリアランスの大きさに応じてフレキシブルプリント配線板の切断端緑部にバリが発生し易くなる。
【0011】
そこで、パンチ型でフレキシブルプリント配線板などのフィルム状シートを打ち抜く際に、フィルム状シートの切断端線部にバリが発生することを抑制するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、フィルム状シートの打ち抜き加工に用いられるパンチ型において、該パンチ型の下面には複数の凹陥部が該パンチ型の下面形状に沿って線状に並んで形成され、打ち抜き時に前記フィルム状シートに切断を発生させる切断発生起点部位と、前記凹陥部周縁部の剛性強度を高める高剛性部位とが前記凹陥部の配列方向に沿って交互に1列以上設けられていることを特徴とするパンチ型を提供する。
【0013】
この構成によれば、パンチ型の下面形状に沿って複数の凹陥部を直線状に連続して設けることにより、クラック発生起点部位と高剛性部位とが交互に1列以上形成されるので、パンチ型でフレキシブルプリント配線板を打ち抜く際に、個々のクラック発生起点部位を特定して剪断力を集中させてクラックがスムーズに発生する。この場合、クラック発生起点部位同士間の下端部には高剛性部位が形成されているので、パンチ型の下面における凹陥部周縁部の剛性が増大して変形する恐れがない。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のパンチ型において、前記凹陥部は、平面視で、円形、楕円形、三角形以上の多角形のいずれかの形状であることを特徴とするパンチ型を提供する。
【0015】
この構成によれば、前記凹陥部は、平面視で、円形、楕円形、三角形以上の多角形のいずれかの形状であるので、クラック発生起点部位と高剛性部位とが交互に1列以上形成することが可能になる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のパンチ型において、前記パンチ型は、平面視で長方形または長方形を含む形状を打ち抜くパンチ型であって、前記複数の凹陥部は前記長方形を形作る部位に設けられることを特徴とするパンチ型を提供する。
【0017】
この構成によれば、特に切断端縁部にバリが発生しやすい傾向にある、直線の辺を有する形状の製品形状を打ち抜き加工する場合において、フレキシブルプリント配線板などのフィルム状シートを打ち抜く際の切断端線部にバリが発生することを抑制することが可能になる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のパンチ型において、前記パンチ型は、平面視で長方形または長方形を含む形状であって、打ち抜き形状の各角部には面取りが施されている形状を打ち抜くパンチ型であることを特徴とするパンチ型を提供する。
【0019】
この構成によれば、特に切断端縁部にバリが発生しやすい傾向にある、直線の辺を有する形状の製品形状を打ち抜き加工する場合において、フレキシブルプリント配線板などのフィルム状シートを打ち抜く際の切断端線部にバリが発生することを抑制することが可能になるとともに、打ち抜き形状の各角部が90°以下の鋭角である場合には、その角部から亀裂が生じる恐れがあり、面取りを施している形状とすることによりこの亀裂を防止することが可能になる。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし請求項4の何れかに記載のパンチ型において、前記フィルム状シートが、フレキシブルプリント配線板を打ち抜くパンチ型を提供する。
【0021】
この構成によれば、特に切断端縁部にバリが発生すると品質を著しく阻害するフレキシブルプリント配線板へのバリ発生を抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本件発明は、パンチ型でフレキシブルプリント配線板などのフィルム状シートを打ち抜くと、複数のクラック発生起点部位を特定して剪断力を集中させてクラックがスムーズに発生し、且つ、クラック発生起点部位同士間の下端部は高剛性部位により変形する恐れがない。斯くして、従来例のようにフレキシブルプリント配線板との間に大きなクリアランスが生ぜず、バリの発生を効率良く抑制することができ、以て、パンチ型の補修または交換の頻度を減少させることが可能となり、打ち抜き加工の生産性が向上して工期短縮が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、パンチ型でフレキシブルプリント配線板などのフィルム状シートを打ち抜く際に、フィルム状シートにバリが発生することを抑制するという目的を達成するために、フィルム状シートの打ち抜き加工に用いられるパンチ型において、該パンチ型の下面には複数の凹陥部が該パンチ型の下面形状に沿って線状に並んで形成され、打ち抜き時に前記フィルム状シートに切断を発生させる切断発生起点部位と、前記凹陥部周縁部の剛性強度を高める高剛性部位とが前記凹陥部の配列方向に沿って交互に1列以上交互に設けられていることにより実現した。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図8に従って説明する。尚、本実施例では、フレキシブルプリント配線板を打ち抜くコ字型に形成されたパンチ型について説明するが、パンチ型の形状は平面視で長方形または長方形を含む形状であれば特に限定されものではなく、設計事項や加工条件に応じてコ字型以外の形状、例えば、口型、L型、I型等の形状であってもよい。
【0025】
図1において、符号9は、被加工品としてのフレキシブルプリント配線板12が裁置固定されるダイス型であり、該ダイス型9の上方にパンチ型10が昇降駆動可能に配設されている。ダイス型9上のフレキシブルプリント配線板12は、前記パンチ型10を下降させることにより所定の製品形状に打ち抜かれる。
【0026】
図2はパンチ型10の下面(以下、「打ち抜き面」という。)11の形状を示す。同図に示すように、パンチ型10の打ち抜き面11はコ字型に形成され、左右方向に延びる横抜き面部14と該横抜き面部14の左右両端部に直角に連設された縦抜き面部15,15とから成る。図示例では、横抜き面部14の幅寸法は縦抜き面部15,15の幅寸法よりも細幅に設定されているが、縦抜き面部15,15の幅寸法よりも広幅又は同幅に設定してもよい。尚、符号13、13は、縦抜き面部15,15の外側部に設けられた位置合わせターゲット用小突起である。
【0027】
図3は、パンチ型10の打ち披き面11を示す要部拡大図である。同図に示すように、該打ち抜き面11には丸型の凹陥部17,17…が複数個連続して形成され、該凹陥部17,17…は打ち抜き面11の打ち抜き面11の長手方向(同図の左右方向)に直線状に1列に並ぶように配列されている。又、凹陥部17,17…の内面形状は略半球状若しくはドーム状の湾曲面を有している。
【0028】
図3に示すように、パンチ型10の打ち抜き面11には複数のクラック発生起点部位18,18…及び高剛性部位19,19…が形成され、該クラック発生起点部位18,18…及び高剛性部位19,19…は、前記凹陥部17,17…の配列方向(同図の左右方向)に沿って交互に並んでいる。前記クラック発生起点部位18,18…は、各凹陥部17,17…における打ち抜き面11の幅方向(同図の上下方向)両側にて互いに対峙するように配設され、パンチ型10でフレキシブルプリント配線板12を所定の製品形状F(図6参照)に打ち抜く際に、該フレキシブルプリント配線板12の食い込み箇所にクラックを発生させる。
【0029】
更に、該凹陥部17,17…の開口面の形状は円形であり、該凹陥部17,17…はパンチ型10の打ち披き面11の辺縁に近接するように設定されている。尚、凹陥部17,17…の開口面の形状は、図4に示すように、(a)楕円形、(b)三角形、(c)四角形、(d)六角形に形成してもよい。また、(e)円形を2列、(f)三角形を2列に配列してもよい。さらに、クラック発生起点部位18,18…が等間隔で配置することができれば、これらの形状を数種類組み合わせることも可能である。
【0030】
また、製品形状が曲線を含むものであり、パンチ型がカーブを描く形状を含む場合、剪断応力はパンチ型のカーブに沿って強く働く傾向があり、比較的バリの発生は少ない。従って、図5に示すように、長方形部とアーチ状曲線部を含む形状を打ち抜くパンチ型であれば、長方形部のみに、該凹陥部17,17…を配列すればよい。
【0031】
図2に示すパンチ型10の構成例では、凹陥部17,17…の個数は合計20個以上であり、例えば、横抜き面部14に14個乃至16個、縦抜き面部15,15に3個乃至5個穿孔されているが、凹陥部17,17…の個数や径寸法は、は設計事項や被加工品としてのフィルム材料に応じて凹陥部17,17…間の最適ピッチとする様適宜決定される。
【0032】
又、凹陥部17,17…間の複数のピッチは互いに同等となるように設定することが好ましい。本実施例では、横抜き面部14の凹陥部17,17…の径寸法は、縦抜き面部15,15の凹陥部17,17…の径寸法よりも小径に設定されているが、横抜き面部14の凹陥部17,17…は、パンチ型10の形状寸法や加工条件等により、縦抜き面部15,15の凹陥部17,17…に対して同径又は大径に設定することもできる。
【0033】
図3において、クラック発生起点部位18,18…は左右方向中央部に最狭部を有し、該最狭部の上下幅は0.1ミリ以下、例えば0.1ミリ乃至0.05ミリに設定することが好ましい。この範囲に最狭部の上下幅を設定すると、打ち抜くフィルム状シートがフレキシブルプリント配線板の場合には、クラックを効率良く発生して加工品質がアップする。
【0034】
又、前記高剛性部位19,19…は、左右隣り合うクラック発生起点部位18,18…同士間の部分、即ち、図3において、左右隣接する凹陥部17,17…の2つの円弧部と打ち抜き面11の上下幅方向両側端部との間に形成され、本実施例における円形の凹陥部17,17…を配列した場合では、上下一対のラッパ形状に近似する形状を有している。そのため、該高剛性部位19,19…は所定値以上の面積を確保できるように構成されている。従って、高剛性部位19,19…により個々の凹陥部17,17…の左右両側部の剛性強度がアップしているため、打ち抜き面11全体の剛性強度が所要値以上に増大している。
【0035】
本実施例のパンチ型10を用いて、図6に示すフレキシブルプリント配線板12を打ち抜くと、複数のクラック発生起点部位18,18…にそれぞれ剪断力が集中してクラックが発生し、凹陥部17,17…の配列方向(図3の左右方向)、にクラックがスムーズに進行する。このとき、パンチ型10の打ち抜き面11は所要の剛性強度を有するため、クラック発生起点部位18,18…同士間には、従来例の如きバリ発生の要因となる弾性変形を惹起させる恐れはない。
【0036】
このように本実施例のパンチ型10は、個々のクラック発生起点部位18,18…を特定し、発生したクラックが凹陥部17,17…の配列方向にクラックがスムーズに進行すること、並び、クラック発生起点部位18,18・‥同士間にバリ発生の要因となる弾性変形が生じ難いこととの相乗作用により、バリの発生を効率良く抑制することができる。図7(a)及び(b)は、本発明のパンチ型10で打ち抜いたフレキシブルプリント配線板12を示し、該フレキシブルプリント配線板12の切断端縁部(孔部周縁部を含む)20にはバリは殆ど発生しなかった。
【0037】
又、本実施例のパンチ型10と上記従来例のパンチ型を用いて、多数のフレキシブルプリント配線板を連続的に打ち抜いて、パンチ型を修理する必要になるまでの打ち抜き回数(パンチ回数)、即ち、打ち抜いたフレキシブルプリント配線板の枚数を調べた。その結果、図8に示すように、従来例のパンチ型の打ち抜き回数は971回であったのに対して、本実施例のパンチ型10の打ち抜き回数は11,146回に増加し、従来例に比べて1,147%もアップした。このことから、本実施例のパンチ型10は高い剛性強度を有するために、従来例に比べて打ち抜き加工における耐久性ないし寿命性が大幅に向上することが判明した。
【0038】
叙上の如く本発明によると、パンチ型10の打ち抜き面11に凹陥部17,17…を直線状に連続的に設けることにより、複数のクラック発生起点部位18,18…と高剛性部位19,19…とを打ち抜き面11の形状に沿って交互に形成される。依って、パンチ型10でフレキシブルプリント配線板を打ち抜く際に、各々のクラック発生起点部位18,18…に剪断力が集中してクラックがスムーズに発生する。
【0039】
この場合、高剛性部位19,19…により打ち抜き面11のクラック発生起点部位18,18…同士間の下端部の剛性が増大しているので、クラック発生起点部位18,18…同士間の下端部が従来例のように弾性変形する恐れがない。斯くして、打ち抜き加工中に、パンチ型10の打ち抜き面11とフレキシブルプリント配線板との間にクリアランスが生じ難いので、フレキシブルプリント配線板の切断端縁部にバリが発生することを効果的に抑制でき、以て、打ち抜き加工の生産性が向上して加工工期を大幅に短縮させることができる。
【0040】
本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る一実施例を示し、パンチ型による打ち抜き加工時の断面図。
【図2】本発明に係る一実施例を示し、パンチ型の打ち抜き加工面の斜視図。
【図3】一実施例に係るパンチ型の凹陥部を拡大して説明する詳細図。
【図4】(a)乃至(f)は夫々パンチ型の凹陥部の他の実施例を示す平面図。
【図5】パンチ型の凹陥部の配列の例を示す平面図。
【図6】一実施例に係るフレキシブルプリント配線板の打ち抜き形状の一例を説明する平面図。
【図7】一実施例のパンチ型で打ち抜いたフレキシブルプリント配線板の要部を示し、(a)はフレキシブルプリント配線板の切断端綾部の説明図、(b)はフレキシブルプリント配線板の孔部周縁部(切断端縁部)の説明図。
【図8】本発明及び従来例のパンチ型の打ち抜き回数を測定した結果を示すグラフ。
【図9】従来例を示し、パンチ型による打ち抜き加工時の断面図。
【図10】フレキシブルプリント配線板の打ち抜き形状の一例を説明する平面図。
【図11】従来例におけるバリ発生のメカニズムを解説する図であり、(a)はフレキシブルプリント配線板にパンチ型が食い込んだ時の説明図、(b)はフレキシブルプリント配線板にクラックが進展する時の説明図、(c)はフレキシブルプリント配線板に破断面が形成された時の説明図。
【図12】従来例のパンチ型で打ち抜いたフレキシブルプリント配線板の要部を示し、(a)はフレキシブルプリント配線板の切断端縁部の説明図、(b)はフレキシブルプリント配線板の孔部周縁部(切断端緑部)の説明図。
【図13】従来例に係る刃先の押抜角度が鋭角のパンチ型の要部を示す斜視図。
【符号の説明】
【0042】
10 パンチ型
11 打ち抜き面
12 フレキシブルプリント配線板(フィルム状シート)
14 横抜き面部
15 縦抜き面郭
17 凹陥部
18 クラック発生起点部位
19 高剛性部位
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状シートの打ち抜き加工に用いられるパンチ型において、該パンチ型の下面には複数の凹陥部が該パンチ型の下面形状に沿って線状に並んで形成され、打ち抜き時に前記フィルム状シートに切断を発生させる切断発生起点部位と、前記凹陥部周縁部の剛性強度を高める高剛性部位とが前記凹陥部の配列方向に沿って交互に1列以上設けられていることを特徴とするパンチ型。
【請求項2】
前記凹陥部は、平面視で、円形、楕円形、三角形以上の多角形のいずれかの形状であることを特徴とする請求項1記載のパンチ型。
【請求項3】
前記パンチ型は、平面視で長方形または長方形を含む形状を打ち抜くパンチ型であって、前記複数の凹陥部は前記長方形を形作る部位に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載のパンチ型。
【請求項4】
前記パンチ型は、平面視で長方形または長方形を含む形状であって、打ち抜き形状の各角部には面取りが施されている形状を打ち抜くパンチ型であることを特徴とする請求項3記載のパンチ型。
【請求項5】
前記フィルム状シートが、フレキシブルプリント配線板であることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載のパンチ型。
【請求項1】
フィルム状シートの打ち抜き加工に用いられるパンチ型において、該パンチ型の下面には複数の凹陥部が該パンチ型の下面形状に沿って線状に並んで形成され、打ち抜き時に前記フィルム状シートに切断を発生させる切断発生起点部位と、前記凹陥部周縁部の剛性強度を高める高剛性部位とが前記凹陥部の配列方向に沿って交互に1列以上設けられていることを特徴とするパンチ型。
【請求項2】
前記凹陥部は、平面視で、円形、楕円形、三角形以上の多角形のいずれかの形状であることを特徴とする請求項1記載のパンチ型。
【請求項3】
前記パンチ型は、平面視で長方形または長方形を含む形状を打ち抜くパンチ型であって、前記複数の凹陥部は前記長方形を形作る部位に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載のパンチ型。
【請求項4】
前記パンチ型は、平面視で長方形または長方形を含む形状であって、打ち抜き形状の各角部には面取りが施されている形状を打ち抜くパンチ型であることを特徴とする請求項3記載のパンチ型。
【請求項5】
前記フィルム状シートが、フレキシブルプリント配線板であることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載のパンチ型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−167540(P2010−167540A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13659(P2009−13659)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【Fターム(参考)】
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