説明

パントテン酸類含有水性組成物

【課題】本発明は、パントテン酸、パントテン酸誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の成分が安定な状態で含有さている水性組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(i)パントテン酸、パントテン酸誘導体、及び/又はそれらの塩と共に、(ii)アシタザノラスト及び/又はその塩を配合して、水性組成物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パントテン酸類の安定性が改善されている水性組成物に関する。更に、本発明は、パントテン酸類を含有する水性組成物を安定化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パントテン酸やパンテノール等のパントテン酸類には、補酵素の主要構成成分として、糖質、タンパク質、脂質等のエネルギーの代謝を補助する作用があり、細胞の賦活化、新陳代謝の活発化、保湿、抵抗力の増強等の有用生理活性を発揮することが知られている。このような有用生理活性を期待して、パントテン酸類は、粘膜適用製剤、皮膚外用剤、化粧料等に配合され使用されている。その一方、パントテン酸類には、水の存在下では不安定になり易いという欠点がある。そのため、パントテン酸類を水性組成物中に配合して製剤化すると、パントテン酸類の経時的分解に伴って、所期の作用効果が低減乃至消失してしまい、一定した品質を保証できなくなることがある。従って、パントテン酸類を水性組成物中に配合する場合には、パントテン酸類が安定に保持されるように処方することが重要であると考えられている。
【0003】
一方、アシタザノラストは、肥満細胞からのヒスタミン、血小板活性化因子(PAF)及びロイコトリエンB4・D4の遊離抑制作用を介したアレルギー性結膜炎等に対する抗アレルギーや眼圧降下等の薬理作用を有しており、点眼剤を初めとする粘膜適用製剤の有効成分として有用であることが分かっている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、アシタザノラストとパントテン酸類を水性組成物中で併用することについては、これまで報告されておらず、アシタザノラストが、水性組成物中でパントテン酸類の安定化に如何なる影響を及ぼすかについては明らかにされていない。
【特許文献1】特開平1−29312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、パントテン酸、パントテン酸誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の成分が安定な状態で含有さている水性組成物を提供することである。更に、本発明は、パントテン酸、パントテン酸誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の成分を含む水性組成物中で、当該成分を安定化させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、(i)パントテン酸、パントテン酸誘導体、及び/又はそれらの塩と共に、(ii)アシタザノラスト及び/又はその塩を共存させた水性組成物を調製することによって、(i)パントテン酸、パントテン酸誘導体、及び/又はそれらの塩に安定性を付与できることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて、更に改良を重ねることによって完成したものである。
【0006】
即ち、本発明は、下記に掲げる水性組成物を提供する:
項1.(i)パントテン酸、パントテン酸誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種、及び(ii)アシタザノラスト、及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする、水性組成物。
項2. 前記(i)成分が、パントテン酸、パントテン酸の塩、及びパンテノールよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の水性組成物。
項3. 局所粘膜適用剤である、項1又は2に記載の水性組成物。
【0007】
更に、本発明は、下記に掲げる安定化方法を提供する:
項4. (i)パントテン酸、パントテン酸誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性組成物の安定化方法であって、前記水性組成物に、(ii)アシタザノラスト、及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、安定化方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水性組成物は、パントテン酸、パントテン酸誘導体、及び/又はそれらの塩が安定な状態で含有され、優れた安定性を有しているので、これらの成分の薬理作用を有効に発揮できる。更に、本発明の水性組成物に含まれるアシタザノラスト及び/又はその塩は、上記成分の安定化に寄与するのみならず、それ自体の薬理作用をも発揮することができる。従って、本発明の水性組成物は、パントテン酸、パントテン酸誘導体、及び/又はそれらの塩に基づく新陳代謝促進等の生理作用と共に、アシタザノラスト及び/又はその塩に基づく抗アレルギー作用や眼圧低下作用を有効に発揮することができるので、医薬組成物、特に局所粘膜適用製剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書において、水性組成物とは水を含有する組成物のことである。該水性組成物として、例えば、組成物中に水を1重量%、好ましくは5重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、特に好ましくは50重量%以上含有するものが例示される。
【0010】
1.水性組成物
本発明の水性組成物は、(i)パントテン酸、パントテン酸誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の成分(以下、単に「(i)成分」と表記することもある)を含有する。
【0011】
パントテン酸は、ビタミンB群に含まれる化合物であり、別名N‐(2,4‐ジヒドロキシ‐3,3‐ジメチルブチリル)‐β‐アラニンとして公知である。
【0012】
パントテン酸の誘導体としては、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものである限り、特に制限されないが、例えば、パンテノール、パントテニルアルコール、パントテニルエチルエーテル、パンテテインパントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、ベンゾイルパントテニルエチルエーテル、ジカルボエトキシパントテン酸エチルエステル、パンテテイン、パンテチン、ホスホパンテテイン等が挙げられる。これらのパントテン酸の誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
パントテン酸又はパントテン酸誘導体の塩としては、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであることを限度として特に制限されないが、一例として、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が例示される。これらのパントテン酸又はパントテン酸誘導体の塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
本発明において、(i)成分として、パントテン酸、パントテン酸誘導体、及びそれらの塩の内、1種のみを単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0015】
上記(i)成分として、好ましくは、パントテン酸、パントテン酸の塩及びパンテノール、更に好ましくはパントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム及びパンテノール、特に好ましくはパントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム及びパンテノールが挙げられる。
【0016】
本発明の水性組成物中の(i)成分の配合割合は、該組成物の用途や形態等に応じて適宜設定される。通常、組成物中の(i)成分の配合割合として、該成分の総量で0.0005〜2重量%、好ましくは0.001〜1重量%、更に好ましくは0.005〜0.2重量%が例示される。
【0017】
本発明の水性組成物は、上記(i)成分に加えて、アシタザノラスト、及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、単に「(ii)成分」と表記することもある)を含有する。かかる(ii)成分を含有することによって、水性組成物中で上記(i)成分に対して安定性を付与することが可能になる。
【0018】
アシタザノラストとは、3-(1H-テトラゾール-5-イル)オキサニリックアシッド(IUPAC名)、分子式C9H7N5O3で示される公知の化合物である。該化合物は、公知の方法により合成される。
【0019】
本発明で使用されるアシタザノラストの塩については、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されることを限度として、特に制限されるものではない。このような塩としては、具体的には、有機塩基との塩(メチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミンとの塩);アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等);アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等);その他の金属塩(アルミニウム塩等)等の無機塩等が例示される。これらのアシタザノラスト及びその塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0020】
本発明で使用されるアシタザノラスト及びその塩は、1/2水和物や1水和物等の水和物の形態であってもよい。
【0021】
本発明の水性組成物において、上記(ii)成分として、好ましくは、アシタザノラスト・1水和物が挙げられる。
【0022】
本発明の水性組成物における上記(ii)成分の配合割合としては、該水性組成物の形態や用途等によって異なるが、一例として、該水性組成物の総量に対して、該(ii)成分が、0.0005〜2重量%、好ましくは0.001〜1重量%、更に好ましくは0.005〜0.11重量%となる割合で例示される。
【0023】
また、本発明の水性組成物において、上記(i)成分に対してより一層優れた安定性を備えさせるという観点から、上記(i)成分100重量部に対して、上記(ii)成分が1〜5000重量部、好ましくは10〜2000重量部、更に好ましくは50〜1000重量部となる比率を充足することが望ましい。
【0024】
また、本発明の水性組成物に含有される水は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであればよい。例えば、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等を使用できる。これらの定義は第一四改正日本薬局方に基づく。
【0025】
本発明の水性組成物は、更に緩衝剤を含有することができる。本発明の水性組成物に配合できる緩衝剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。かかる緩衝剤の一例として、ホウ酸緩衝剤(ホウ酸、ホウ砂)、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、ε−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などが挙げられる。これらの緩衝剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。使用する緩衝剤の種類によっては、水溶液中で上記(i)成分の不安定化を助長する場合があるが、本発明の水性組成物では、上記(i)成分の安定化を効果的に発揮できるので、従来、上記(i)成分との組み合わせが不向きであった緩衝剤であっても、本発明の水性組成物に配合することが可能である。
【0026】
本発明の水性組成物に緩衝剤を配合する場合、該緩衝剤の配合割合については、使用する緩衝剤の種類や期待される効果等に応じて異なり、一律に規定することはできないが、例えば、水性組成物において、該緩衝剤が0.01〜3重量%、好ましくは0.1〜2重量%、更に好ましくは0.3〜2重量%となる割合が例示される。
【0027】
また、本発明の水性組成物は、生体に許容される範囲内のpHに調節することができる。適切なpHは、該水性組成物の適用部位、剤形等により異なるが、通常4〜8.5、好ましくは4.5〜8、更に好ましくは4.5〜7.5程度である。このようなpHの範囲内であれば、一層効果的に上記(i)成分の安定化を図ることが可能になる。
【0028】
本発明の水性組成物は、更に必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧比に調節することができる。適切な浸透圧比は適用部位、剤型等により異なるが、通常0.4〜2、好ましくは0.5〜1.8、更に好ましくは0.6〜1.6程度である。当該浸透圧比は、第十四改正日本薬局方に基づき0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定する。
【0029】
なお、pHや浸透圧の調節は、前記緩衝剤、或いは後述するpH調整剤、等張化剤、塩類等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。
【0030】
本発明の水性組成物は、本発明の効果を妨げない限り、上記成分の他に、種々の薬理活性成分や生理活性成分を組み合わせて含有してもよい。このような成分の種類は特に制限されず、例えば、充血除去成分、眼筋調節薬成分、抗炎症薬成分又は収斂薬成分、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌薬成分又は殺菌薬成分、糖類、高分子化合物又はその誘導体、セルロース又はその誘導体、前述以外の水溶性高分子、局所麻酔薬成分、ステロイド成分、緑内障治療成分、白内障治療成分等が例示できる。本発明において好適な成分としては、例えば、次のような成分が挙げられる。
【0031】
充血除去成分:例えば、α−アドレナリン作動薬、具体的にはエピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリン、硝酸ナファゾリンなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0032】
眼筋調節薬成分:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン、硫酸アトロピンなど。
【0033】
抗炎症薬成分又は収斂薬成分:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、ε−アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、プラノプロフェン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンなど。
【0034】
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:例えば、アンレキサノクス、イブジラスト、タザノラスト、トラニラスト、イソチペンジル、ジフェテロール、ジフェニルピラリン、トリプロリジン、トリペレナミン、トンジルアミン、メブヒドロリン、フェネタジン、オキサトミド、メキタジン、テルフェナジン、エピナスチン、アステミゾール、エバスチン、セチリジン(cetirizine)、ロラタジン(loratadine)、フェキソフェナジン(fexofenadine)、スプラタスト、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸レボカバスチン、フマル酸ケトチフェン、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウム、マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸エメダスチン、フマル酸クレマスチン、塩酸アゼラスチン、塩酸イプロヘプチン、塩酸オロパタジンなど。
【0035】
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウム、ユビキノン誘導体など。
【0036】
アミノ酸類:例えば、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、グルタミン酸、クレアチニン、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・カリウム混合物、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸マグネシウム、ε−アミノカプロン酸、グリシン、アラニン、アルギニン、リジン、γ−アミノ酪酸、γ−アミノ吉草酸、コンドロイチン硫酸ナトリウムなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0037】
抗菌薬成分又は殺菌薬成分:例えば、硫酸アミノデオキシカナマイシン、硫酸カナマイシン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸シソマイシン、硫酸ストレプトマイシン、トブラマイシン、硫酸ミクロノマイシン、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロラムフェニコール、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾールジエタノールアミン、スルフイソキサゾールモノエタノールアミン、スルフイソメゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウム、塩酸テトラサイクリン、塩酸オキシテトラサイクリン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、レボフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、スルベニシンナトリウム、塩酸セフメノキシム、ベンジルペニシリンカリウム、硫酸ベルベリン、塩化ベルベリン、ホウ酸、コリスチンメタスルホン酸ナトリウム、エリスロマイシン、ラクトビオン酸エリスロマイシン、キタサマイシン、スピラマイシン、硫酸フラジオマイシン、硫酸ポリミキシン、ジベカシン、アミカシン、硫酸アミカシン、アシクロビル、イオドデオキシサイチジン、イドクスウリジン、シクロサイチジン、シトシンアラビノシド、トリフルオロチミジン、ブロモデオキシウリジン、ポリビニルアルコールヨウ素、ヨウ素、アムホテリシンB、イソコナゾール、エコナゾール、クロトリマゾール、ナイスタチン、ピマリシン、フルオロシトシン、ミコナゾールなど。
【0038】
糖類:例えば単糖類、二糖類、具体的にはグルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、リボース、アロース、リブロース、アラビノース、キシロース、リキソース、デオキシリボース、マルトース、トレハロース、スクロース、セロビオース、グルコビオース、ビシアノース、ルチノース、ラクトース、プルラン、ラクツロース、ラフィノース、マルチトール、スタキオース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。
【0039】
高分子化合物又はその誘導体:例えば、アラビアゴム、カラヤガム、キサンタンガム、キャロブガム、グアーガム、グアヤク脂、クインスシード、ダンマルガム、トラガント、ベンゾインゴム、ローカストビーンガム、カゼイン、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ゼラチン、コラーゲン、ペクチン、デンプン、ポリガラクツロン酸、キチンおよびその誘導体、キトサンおよびその誘導体、エラスチン、ヘパリン、ヘパリノイド、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、セラミド、ポリビニルアルコール(完全、または部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタアクリレート、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンイミン、リボ核酸、デオキシリボ核酸、およびその薬学上許容される塩類など。
【0040】
セルロース又はその誘導体:例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロースなど。
【0041】
局所麻酔薬成分:例えば、塩酸オキシブプロカイン、塩酸コカイン、塩酸コルネカイン、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル、塩酸ピペロカイン、塩酸プロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸ヘキソチオカイン、塩酸リドカインなど。
【0042】
ステロイド成分:例えば、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、フルオロメトロン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロキシメステロン(hydroxymesterone)、カプロン酸ヒドロコルチゾン、カプロン酸プレドニゾロン、酢酸コルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、デキサメタゾンメタスルホベンゾエートナトリウム、デキサメタゾン硫酸ナトリウム、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾンリン酸ナトリウム、メタスルホ安息香酸デキサメタゾンナトリウム、メチルプレドニゾロンなど。
【0043】
緑内障治療成分:例えば、イソプロピルウノプロストン、エピネフリン、塩酸アプラクロニジン、塩酸カルテオロール、塩酸ジピベフリン、塩酸ドルゾラミド、塩酸ピロカルピン、塩酸ブナゾシン、塩酸ブプラノロール、塩酸ベタキソロール、塩酸ベフノロール、カルバコール、塩酸レボブノロール、ジピバル酸エピネフリン、臭化ジスチグミン、ニプラジロール、マレイン酸チモロール、ラタノプロストなど。
【0044】
白内障治療成分:例えば、グルタチオン、ピレノキシン、5,12−ジヒドロアザペンタセンジスルホン酸ナトリウム(Sodium5,12-dihydro azapentacene disulfonate)など。
【0045】
各種用途における上記の各種成分の配合量は当該技術分野で既知であり、水性組成物中の上記成分の配合量は、水性組成物の剤型、活性成分の種類等に応じて適宜選択される。例えば、水性組成物全体に対して0.0001〜30w/v%、好ましくは、0.001〜10w/v%程度の範囲から選択できる。
【0046】
また、本発明の水性組成物には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を併用して含有させてもよい。それらの成分または添加物として、例えば、半固形剤や液剤などの調製に一般的に使用される担体(水性溶媒、水性または油性基剤など)、増粘剤、糖類、糖アルコール類、界面活性剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、等張化剤、香料又は清涼化剤、キレート剤、緩衝剤、安定化剤、基剤等の各種添加剤を挙げることができる。
【0047】
以下に本発明の水性組成物に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。
【0048】
増粘剤:例えば、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(完全、又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、コンドロイチン硫酸ナトリウムなど。
【0049】
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリンなど。
【0050】
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。
これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0051】
界面活性剤:例えば、ポリオキシエチレン(以下、POEと略す)−ポリオキシプロピレン(以下、POPと略す)ブロックコポリマー (具体的には、ポロクサマー407など) 、エチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物(具体的には、ポロキサミンなど)、モノオレイン酸POEソルビタン、POE硬化ヒマシ油(具体的には、POE(60)硬化ヒマシ油など)、ステアリン酸ポリオキシルなどの非イオン性界面活性剤;アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型両性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩(具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの陽イオン界面活性剤など。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0052】
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニドなど)、グローキル(ローディア社製 商品名)など。
【0053】
pH調節剤:例えば、塩酸、ホウ酸、アミノエチルスルホン酸、ε−アミノカプロン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、硫酸、リン酸、ポリリン酸、プロピオン酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコノラクトン、酢酸アンモニウム、など。
【0054】
等張化剤:例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリセリン、プロピレングリコールなど。
【0055】
香料又は清涼化剤:例えば、カンフル、ゲラニオール、ボルネオール、メントール、リュウノウ、ウイキョウ油、ケイヒ油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ水、ハッカ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油など。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0056】
キレート剤:例えば、アスコルビン酸、エデト酸四ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸など。
【0057】
安定化剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウムなど。
【0058】
基剤:オクチルドデカノール、オリーブ油、ゴマ油、酸化チタン、臭化カリウム、ダイズ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、綿実油、パラフィン、ヒマシ油、プラスチベース、ラッカセイ油、ラノリン、ワセリン、プロピレングリコールなど。
【0059】
溶解剤、または溶解補助剤:エタノール、グリセリン、塩酸、水酸化ナトリウム、トロメタモール、マクロゴール4000、モノエタノールアミンなど。
【0060】
本発明の水性組成物は、その剤型は任意であり、その用途に応じて種々の形態をとることができる。例えば、液状であってもよく、軟膏等の半固形状であってもよい。好ましくは液状である。
【0061】
本発明の水性組成物の製剤形態としては、具体的には、点眼剤[但し、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む]、人工涙液、洗眼剤[但し、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む]、眼軟膏剤等の眼科用組成物;コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)等];点鼻剤、鼻洗浄液等の鼻腔用組成物;点耳薬;その他の皮膚外用剤等が挙げられる。本発明の水性組成物は、上記(i)成分に基づく各種有用作用と共に、上記(ii)成分に基づく抗アレルギー作用や眼圧低下作用等を発揮できるので、粘膜に局所適用される局所粘膜適用製剤(例えば、点眼剤、洗眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、鼻洗浄液等)として特に有用である。中でも好ましくは、点眼剤、洗眼剤及び点鼻剤であり、更に好ましくは点眼剤である。
【0062】
なお、上記コンタクトレンズ用組成物は、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズを含むあらゆるコンタクトレンズに適用できるが、特に酸素透過性のハードコンタクトレンズ又はソフトコンタクトレンズに対して吸着し難い成分から構成されているため、上記コンタクトレンズ用組成物は、これらのコンタクトレンズに対してより好適に使用される。
【0063】
本発明の水性組成物は、公知の方法により製造できる。
【0064】
本発明の水性組成物を充填する容器としては、特に制限されないが、製剤の光に対する安定性を高めるという観点から、下記のプラスチック容器に充填されることが好ましい。
【0065】
当該プラスチック容器としては、水性組成物の収容容器として使用可能である限り特に制限されるものではないが、水分透過率の低いものが好ましく、更には、各成分が吸着し難いものが好ましい。当該プラスチック容器として、具体的には、硬質プラスチック製の容器が挙げられる。硬質プラスチック製の容器の構成原料として、具体的には、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、硬質塩化ビニル樹脂、スチレン系樹脂、セルロースアセテート系樹脂等が例示できる。
【0066】
オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリマーが挙げられる。
【0067】
ポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分(フタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸成分等)とジオール成分とで構成された樹脂が挙げられる。具体的には、芳香族ポリエステル系樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリC2-4アルキレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート等のポリC2-4アルキレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート;ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)等のポリシクロアルキレンテレフタレート;ビスフェノール類(ビスフェノール−Aなど)とフタル酸類(フタル酸、テレフタル酸)とで構成された樹脂等のポリアリレート、等のホモポリエステルが挙げられる。ポリエステル系樹脂には、前記ホモポリエステル単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステル、前記ホモポリエステルの共重合体(PETとPCTとの共重合体等)等も含まれる。
【0068】
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノール−A等のビスフェノール類をベースとする芳香族ポリカーボネートが挙げられる。
【0069】
スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)等が挙げられる。
【0070】
本発明で使用されるプラスチック容器は、コストパフォーマンス、強度、光透過性、ガス又は水蒸気バリア性(透湿性)等に実害が無い限り、ポリマーアロイ(ポリマーブレンド等)を構成原料とするものであってもよい。好ましいポリマーアロイには、複数の合成樹脂のポリマーブレンド(例えば、PETとPENとのポリマーブレンド等)が含まれる。
【0071】
また、樹脂は、スクイズ性が良好で、繰り返しの押圧に対して耐久性を有する樹脂、透明性または半透明性の樹脂であることが好ましく、必要に応じて黄色、オレンジ色、茶褐色等に着色してもよい。そして、光の透過を阻害できる成分(紫外線吸収剤、赤外線吸収剤など)を樹脂に含有させたり、前記成分を含むコーティング剤を樹脂表面に塗付したりすることにより、本発明の効果と協働させて、さらに安定性を向上させてもよい。
【0072】
上記プラスチック容器の形状については、特に制限されず、水性組成物の剤型や用途に応じて適宜設定することができる。
【0073】
2.水性組成物の安定化方法
前述するように、(i)パントテン酸、パントテン酸誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性組成物において、当該(i)成分の不安定化を、該水性組成物に(ii)アシタザノラスト及び/又はその塩を配合することによって、抑制することができる。従って、本発明は、更に、以下の水性組成物の安定化方法を提供する:(i)パントテン酸、パントテン酸誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性組成物に、(ii)アシタザノラスト及び/又はその塩を配合することを特徴とする、該水性組成物の安定化方法。
【0074】
当該安定化方法において、使用する(i)及び(ii)成分、これらの水性組成物中の各配合割合、水性組成物に配合可能な任意添加成分、水性組成物の形態等については、前記「1.水性組成物」の欄に記載する通りである。
【実施例】
【0075】
以下に、試験例、実施例等に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
試験例1
表1に記載の処方に従い、パンテノール含有水溶液(実施例1−3及び比較例1−3)を調製した。各々のパンテノール含有水溶液を濾過後、ガラスアンプル(容量10mL)に8mL充填し、60℃で所定期間、暗所で保存した。保存前及び保存後において、パンテノール含有水溶液中のパンテノール濃度をHPLCにより測定し、下記式に従ってパンテノール残存率を算出した。
【0076】
【数1】

【0077】
得られた結果を表1に示す。アシタザノラストを含まないパンテノール含有水溶液(比較例1−3)では、パンテノールが分解されていることが観察された。これに対して、アシタザノラストを配合したパンテノール含有水溶液(実施例1−3)では、パンテノールの分解が抑制されており、パンテノールが安定に保持されることが確認された。特に、実施例2及び3の結果から、ホウ酸緩衝剤又はε−アミノカプロン酸の緩衝剤の存在下でも、アシタザノラストによるパンテノールの分解抑制効果が認められた。
【0078】
また、別途、pHを6にすること以外は実施例1及び比較例1と同一の組成にしたパンテノール含有水溶液を調製し、これらを用いて、上記と同様に試験したところ、表1に示す結果と同様に、アシタザノラストによるパンテノールの分解抑制効果が確認された。
【0079】
【表1】

【0080】
試験例2
表2に記載の処方に従い、パントテン酸含有水溶液(実施例4及び比較例4)を調製した。各々のパントテン酸含有水溶液を用いて、上記試験例1と同様の方法で、パントテン酸の保存安定性を評価した。
【0081】
得られた結果を表2に示す。この結果からも、アシタザノラスト含まないパントテン酸含有水溶液ではパントテン酸が顕著に分解されていたが(比較例4)、アシタザノラストを含む水溶液では、パントテン酸の分解が抑制されていることが確認された(実施例4)。
【0082】
【表2】

【0083】
実施例5−24
以下の表3及び4に記載の処方で、点眼剤(実施例5−21;実施例9及び21の点眼剤は、コンタクトレンズ装用中に使用可能なものである)、洗眼剤(実施例22)、コンタクトレンズ装着液(実施例23)、及びコンタクトレンズ消毒剤(実施例24)を調製した。
【0084】
【表3】

【0085】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)パントテン酸、パントテン酸誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種、及び
(ii)アシタザノラスト、及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種
を含有することを特徴とする、水性組成物。
【請求項2】
前記(i)成分が、パントテン酸、パントテン酸の塩、及びパンテノールよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
局所粘膜適用剤である、請求項1又は2に記載の水性組成物。
【請求項4】
(i)パントテン酸、パントテン酸誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する水性組成物の安定化方法であって、前記水性組成物に、(ii)アシタザノラスト、及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、安定化方法。

【公開番号】特開2007−297331(P2007−297331A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126481(P2006−126481)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】